JP6202498B2 - 無機ナノシート分散液、及び無機ナノシート分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
[無機ナノシート分散液の概要]
本発明の実施の形態に係る無機ナノシート分散液は、無機材料から剥離して得られる無機ナノシートにより構成される秩序構造を有する無機ナノシート配向ドメインと、無機ナノシートの分散媒である溶媒とを含む無機ナノシート分散液である。そして、本実施の形態に係る無機ナノシート分散液は、無機ナノシートの溶媒中における濃度が低濃度(例えば、1wt%以下程度の濃度)の状態でも構造色を発する。更に、この無機ナノシート分散液は、様々な角度から観察しても、同一の構造色を発する。以下、無機ナノシート分散液を様々な角度から観察した場合に構造色が実質的に変化しないことを、「構造色に角度依存性がない」と表す。
本発明の実施の形態に係る無機ナノシート分散液は、所定の波長の構造色を発する無機ナノシート分散液であって、無機材料から剥離して得られる複数の無機ナノシートとその対イオン、溶媒、共存物質(例えば、塩、高分子電解質、コロイド粒子等)を含み、これら複数の無機ナノシートによる秩序構造(すなわち、配向秩序構造、又は二次元周期や三次元周期をもつ位置秩序構造)を有する複数の無機ナノシート配向ドメインと、複数の無機ナノシートの分散媒である溶媒とを含んで構成される。そして、この無機ナノシート分散液は、液晶相として挙動する。
本実施の形態に係る無機ナノシートは、積層構造若しくは層状構造を有する無機材料を剥離させることによって得られる単位構造としての薄板形状の無機結晶である。無機ナノシートの組成及び形状は、無機材料の種類に応じて決定される。すなわち、無機ナノシートの組成は出発物質である無機材料の組成を反映しており、無機ナノシートの形状は出発物質である無機材料の結晶学的構造を反映している。したがって、無機ナノシートは、例えば、数nmの厚さ(例えば、フルオロヘクトライト等の粘土鉱物においては約1nm)及び数十nm以上数百μm以下程度の横幅を有する。これにより無機ナノシートは、異方性が極めて大きな形状(すなわち、非常に高いアスペクト比を有する形状)を有することになる。ここで、本実施の形態に係る無機ナノシートの「粒径」は以下のように定義する。
図2は、本発明の実施の形態に係る無機ナノシート配向ドメインの模式的な図の一例を示す。
無機ナノシート分散液において、無機ナノシートの分散媒である溶媒は、無機ナノシートの出発原料を粘土鉱物とした場合、例えば、純水を用いることができる。また、溶媒としては、無機ナノシート分散液が発する構造色を制御することを目的として、無機ナノシートの出発原料である無機材料の種類に応じ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ノルマルホルムアミド等の他の極性溶媒、又は無極性溶媒を用いることもできる。
構造色を発する無機ナノシート分散液において、無機ナノシートは液晶相を形成する。無機ナノシート分散液の液晶性は、分散媒中において複数の無機ナノシートの主面が実質的に同一方向に向いた状態で定常的に配向して無機ナノシート配向ドメインを形成することで発現する。液晶相が形成されるか否かは、主として無機ナノシートの粒径と無機ナノシートの濃度によって決定される。すなわち、無機ナノシートの粒径及び無機ナノシートの濃度が、溶媒中で無機ナノシートの液晶相が形成される範囲内である場合、液晶相が形成される。
無機ナノシート分散液は、無機ナノシートの出発原料の種類、分散媒の種類、無機ナノシートの粒径、及び溶媒中における無機ナノシートの濃度を調整することにより、所望の構造色を発する。出発原料の種類及び溶媒の種類が固定されている場合、無機ナノシート分散液の構造色は、無機ナノシートの粒径及び無機ナノシートの濃度が無機ナノシートの液晶相が溶媒中で形成される範囲内であれば、無機ナノシートの粒径及び無機ナノシートの濃度を当該範囲内で様々に変化させることで様々な波長に調整できる。
本実施の形態に係る無機ナノシート分散液の製造方法は、概略、以下の各工程を備える。すなわち、層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる剥離工程と、剥離して得られた無機ナノシートの粒径を所定の粒径に制御する粒径制御工程と、粒径が制御された無機ナノシートの溶媒中における濃度を所定の濃度に調整する濃度調整工程とを備える。なお、粒径制御工程は、製造する無機ナノシート分散液に用いる無機ナノシート原料の種類によっては省略することができる。
まず、層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる。例えば、層状無機化合物を所定の溶媒に添加する。すると、層状無機化合物の層間に溶媒が侵入し、溶媒中で層状無機化合物の層間が膨潤する。これにより、層状無機化合物から無機ナノシートが剥離する。剥離した無機ナノシートは、溶媒中で分散コロイドを形成する。
次に、得られた無機ナノシートの粒径を所定の粒径に制御する。具体的には、無機ナノシートの分散コロイドに所定の振動数の弾性振動波を照射する。例えば、無機ナノシートの分散コロイドに、予め定められた時間、予め定められた振動数の超音波を照射する。これにより、無機ナノシートの粒径を所定の粒径範囲内の粒径に制御する。ここで、無機ナノシートの粒径が小さくなりすぎると無機ナノシート分散液の液晶性が喪失される場合があるので、粒径制御工程においては、無機ナノシートの粒径を無機ナノシートの液晶相が溶媒中で形成される範囲内の粒径に制御することが好ましい。
そして、所定の粒径に制御された無機ナノシートの溶媒中における濃度を調整する。すなわち、少なくとも無機ナノシートの液晶相が形成される濃度以上であって、所望の構造色が発色する濃度に、無機ナノシートの溶媒中における濃度を調整する。これにより、本実施の形態に係る無機ナノシート分散液が得られる。
本実施の形態に係る無機ナノシート分散液は、所定の面間隔のラメラ構造を含む無機ナノシート配向ドメインを有するので、面間隔に応じた波長の構造色を発色する。また、無機ナノシート分散液は、無機ナノシート配向ドメインが溶媒中でランダムな配向をしているので、構造色に角度依存性がない。これにより、本実施の形態に係る無機ナノシート分散液によれば、所望の構造色を発色し、様々な角度から観察しても構造色に実質的な変化がない無機ナノシート分散液を提供できる。
まず、KCa2Nan−3NbnO3n+1(ただし、n=3)を以下のように合成した。出発原料は、炭酸カリウム(東京化成工業株式会社製)、炭酸カルシウム(東京化成工業株式会社製)、及び酸化ニオブ(東京化成工業株式会社製)を用いた。具体的に、炭酸カリウムと炭酸カルシウムと酸化ニオブとが1.1:2:3のモル比になるようにそれぞれ秤量し、混合して混合物を得た。そして、この混合物を1200℃で12時間焼成し、KCa2Nb3O10の粉末試料を合成した。この粉末試料はXRDにて同定した。
次に、第1の単相試料、第2の単相試料、及び第3の単相試料のそれぞれを10Mの硝酸に添加し、各試料に1週間の酸処理を施した。この酸処理により、各試料の層間イオンがプロトンにイオン交換された。これにより、HCa2Nan−3NbnO3n+1(ただし、n=3)の第1試料、HCa2Nan−3NbnO3n+1(ただし、n=4)の第2試料、及びHCa2Nan−3NbnO3n+1(ただし、n=5)の第3試料を得た。続いて、得られた各試料の溶液それぞれについて遠心分離機(HITACHI製CF−15RXII)を用い、回転速度15000rpmで1時間、遠心分離した。これにより、各試料中の過剰な硝酸を除去した。次に、過剰な硝酸を除去して得られた各試料を1日間、乾燥させた。これにより得られた3種類の層状ペロブスカイト化合物はXRDにて同定した。
得られた第1試料、第2試料、及び第3試料をそれぞれ、テトラブチルアンモニウム(TBAOH)水溶液(ただし、TBAOH:水のモル比は1:1である)中に添加し、1週間、振盪撹拌した。これにより、第1試料、第2試料、及び第3試料それぞれから無機ナノシートを剥離させた。続いて、振盪撹拌後に得られた溶液を複数の遠沈管に均等に入れた。そして、遠心分離機(HITACHI製CF−15RXII)を用い、回転速度1500rpmで10分間、遠沈管の溶液を遠心分離した。これにより、溶液中から未剥離の沈殿物を除去し、第1試料、第2試料、及び第3試料それぞれから剥離した無機ナノシートを含む上澄み液を回収した。
次に、第1試料、第2試料、及び第3試料のそれぞれから剥離した無機ナノシートを含む上澄み液のそれぞれを、回転速度15000rpmで1時間、更に遠心分離した。これにより無機ナノシートを全て沈降させた。その後、沈降した無機ナノシートを採取し、採取した無機ナノシートに純水を加えて撹拌することで洗浄操作を実行した。この洗浄操作により、残存する余剰のテトラブチルアンモニウムイオンの一部が除去された。この洗浄操作を所定回数、繰り返し実行した。第1試料、第2試料、及び第3試料のそれぞれについて、洗浄操作の回数を変化させることでテトラブチルアンモニウムイオン濃度を変化させた試料を作製した。
10 無機ナノシート配向ドメイン
w 横幅
t 厚さ
L サイズ
d 面間隔
Claims (8)
- 構造色を発する無機ナノシート分散液であって、
液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する無機ナノシートと、
前記無機ナノシートの分散媒である溶媒と、
前記無機ナノシートを含み、複数の前記無機ナノシートによる秩序構造を有し、前記溶媒中においてランダムな配向を有する無機ナノシート配向ドメインと
を含み、
前記無機ナノシート分散液中の前記無機ナノシートの濃度が、前記液晶相を形成する濃度範囲内の濃度である無機ナノシート分散液。 - 前記無機ナノシート分散液が液晶相である請求項1に記載の無機ナノシート分散液。
- 前記秩序構造が、ラメラ構造である請求項1又は2に記載の無機ナノシート分散液。
- 角度依存性のない構造色を発する無機ナノシート分散液であって、
液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する無機ナノシートと、
前記無機ナノシートの分散媒である溶媒と、
前記無機ナノシートを含み、複数の前記無機ナノシートによる秩序構造を有する無機ナノシート配向ドメインと
を含み、
前記無機ナノシート分散液中の前記無機ナノシートの濃度が、前記液晶相を形成する濃度範囲内の濃度である無機ナノシート分散液。 - 前記無機ナノシート配向ドメインが、前記構造色に応じた面間隔を有する前記秩序構造を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機ナノシート分散液。
- 構造色を発する無機ナノシート分散液の製造方法であって、
層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる剥離工程と、
液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する前記無機ナノシートを溶媒に添加し、前記溶媒中における前記無機ナノシートの濃度を予め定められた濃度に調整することで、前記無機ナノシートを含み複数の前記無機ナノシートによる秩序構造を有する無機ナノシート配向ドメインを形成する濃度調整工程と
を備え、
前記無機ナノシート配向ドメインが、前記溶媒中においてランダムな配向を有する無機ナノシート分散液の製造方法。 - 剥離して得られる前記無機ナノシートの粒径を予め定められた粒径に制御する粒径制御工程
を更に備える請求項6に記載の無機ナノシート分散液の製造方法。 - 角度依存性のない構造色を発する無機ナノシート分散液の製造方法であって、
層状無機化合物から無機ナノシートを剥離させる剥離工程と、
液晶相を形成する粒径範囲内の粒径を有する前記無機ナノシートを溶媒に添加し、前記溶媒中における前記無機ナノシートの濃度を予め定められた濃度に調整する濃度調整工程と
を備える無機ナノシート分散液の製造方法。
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