JP6201970B2 - 精錬用炉体鉄皮温度の管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内部に耐火物が施工され、溶融金属を保持・精錬する転炉やアーク炉などの精錬用炉体の外殻を形成する鉄皮の温度管理方法に関し、詳しくは、施工された耐火物を張り替えるための修理などによって精錬用炉体が一旦休止し、精錬用炉体の炉体内部温度のみならず、精錬用炉体の鉄皮の温度が使用時の温度以下に低下するときの鉄皮の温度管理方法に関する。
鉄鋼製造工程における転炉、アーク炉、RH真空脱ガス炉などの精錬用炉体は、その外殻を形成する鉄皮と、この鉄皮の内面側に施工される耐火物とで構成されている。これらの精錬用炉体は、融点が1500℃以上である溶鋼を保持することから、1550℃を超える高温条件下での使用が要求されている。そのために、精錬用炉体は、一般的に、高温での耐食性や耐摩耗性に優れるワーク耐火物(「内張耐火物」ともいう)と、その背面側の永久耐火物との2層の耐火物ライニング構造で施工されている。つまり、ワーク耐火物が溶銑や溶鋼などの溶融鉄と直接接触して炉体を保護し、永久耐火物は炉体の断熱効果を高めるように構成されている。
しかしながら、ワーク耐火物は、高温での耐食性や耐摩耗性に優れるとはいえども、溶鋼や溶融スラグと直接接触することから徐々に損耗する。したがって、内壁として耐火物を有する精錬用炉体は、一定期間稼働してワーク耐火物の残存厚みが所定値となった時点で休炉し、耐火物の張り替え(交換)が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
例えば、鉄鋼製造工程で使用される転炉では、ワーク耐火物の損耗量が大きいことから、2〜3ヶ月の間隔で耐火物の張り替えが行われている。転炉では、炉体傾動装置、炉上ホッパーへの原料供給装置、上吹きランス駆動装置などの点検・修理のために、定期的に修理(「炉修」という)が行われており、この炉修に合わせて耐火物の張り替えも行われる。通常、耐火物の張り替えは、ワーク耐火物のみが張り替えられ、溶鋼やスラグと直接接触することがなく損傷の少ない永久耐火物は張り替えられない。但し、永久耐火物も、損傷が確認された場合には、張り替えられる場合がある。また、炉内全面のワーク耐火物が張り替えられることもあるが、通常は損耗量の大きい部位に限定される。
ところで、転炉やアーク炉などの精錬用炉体は、操業形態がバッチ方式であり、原料装入から精錬後の溶鋼の炉体からの出湯までを1サイクルとし、このサイクルを繰り返して行っている。このサイクルに伴って、転炉やアーク炉の鉄皮温度は昇降を繰り返す。つまり、原料装入後の精錬の経過に伴って鉄皮温度が上昇し、精錬によって製造した溶鋼の出湯によって鉄皮温度が低下するという繰り返しの温度変化を受ける。この温度変化により、転炉やアーク炉の鉄皮には熱応力が繰り返し作用し、この長年に亘る繰り返しの熱応力によって精錬用炉体の鉄皮は疲労し、鉄皮を構成する鋼材の材料特性値が劣化する。
したがって、例えば、長年使用した転炉では、その鉄皮を構成する鋼材の材料特性値の劣化に起因して、鉄皮に亀裂が発生したりする。精錬用炉体の鉄皮に亀裂が生じた場合には、そのままでは使用することができず、肉盛り溶接などによって亀裂を補修したり(例えば、特許文献2を参照)、鉄皮の一部分を切り取り、この部位に新鉄皮を溶接したりすること(例えば、特許文献3を参照)が必要になる。
特開2006−117973号公報 特開2003−240447号公報 特開2003−193122号公報
従来、精錬用炉体の鉄皮における亀裂発生を防止することが切望されているにも拘わらず、有効な手段はなく、また、どのような時点で亀裂が発生するのかも解明されておらず、亀裂発生は必然的なものと認識され、鉄皮に亀裂が発生した場合には、前述したように、やむなく肉盛り溶接などによって亀裂を補修しており、補修費用の増大や精錬用炉体の生産性低下をもたらしていた。
このような状況下、本発明者は、精錬用炉体の鉄皮における亀裂は、長年に亘る繰り返しの熱応力によって精錬用炉体の鉄皮を構成する鋼材の材料特性値が劣化し、ワーク耐火物の張り替えなどのために精錬用炉体が一旦休止して精錬用炉体の鉄皮の温度が使用時の温度以下に低下する際の熱応力に、前記鉄皮を構成する劣化した鋼材が耐えきれず、発生することを知見した。従来、この知見は何れの文献にも報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉やアーク炉などの精錬用炉体の外殻を形成する鉄皮での亀裂発生を防止することのできる精錬用炉体鉄皮温度の管理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]鋼材からなる鉄皮の内側に耐火物の施工された精錬用炉体の炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させる際に、前記鉄皮の温度を、該鉄皮を構成する鋼材に必要とされる強度を充足するために必要とする下限温度以上に保持することを特徴とする、精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
[2]前記下限温度は、熱履歴を受けた前記鉄皮を構成する鋼材のシャルピー試験での吸収エネルギー値が当該鋼材に必要とされる値以上となる温度であることを特徴とする、上記[1]に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
[3]前記精錬用炉体の炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させることに起因して前記鉄皮に発生する熱応力が前記鋼材の材料規格に規定する引張強度の最小値の50%以上となる鉄皮の部位のみを、前記下限温度以上に保持することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
[4]前記鉄皮の温度を下限温度以上に保持する手段が、断熱材による保温、電気ヒーターによる加熱または保温、ガスバーナーによる加熱または保温の3種類の手段のうちのいずれか1種または2種以上の手段であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[3]のいずれか1項に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
[5]前記精錬用炉体が、鋼の精錬工程に使用される精錬炉であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
本発明によれば、転炉などの精錬用炉体を、炉修などによって一旦休止し、炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させる際に、精錬用炉体の鉄皮の温度を、該鉄皮を構成する鋼材に必要とされる強度を充足するために必要とする下限温度以上に保持するので、鉄皮に発生する熱応力が軽減するのみならず、鉄皮に発生する熱応力に対して鉄皮を構成する鋼材の材料強度が勝り、その結果、炉体鉄皮での亀裂発生を未然に防止することが実現される。これにより、亀裂の補修作業がなくなることにより、精錬用炉体の補修費を削減することができるのみならず、補修を行う必要がないことから、精錬用炉体の稼働率を高めることが可能となる。
転炉鉄皮における亀裂発生状況の調査結果を示す図である。 ワーク耐火物の解体を伴う炉修において、転炉鉄皮の表面温度の推移を測定した結果を示す図である。 転炉鉄皮の外面側の熱応力解析の結果を示す図である。 転炉鉄皮の内面側の熱応力解析の結果を示す図である。 亀裂の発生した転炉鉄皮から採取した試験片の吸収エネルギーの測定結果を示す図である。 亀裂の発生した転炉鉄皮から採取した試料片における温度と吸収エネルギーとの関係の調査結果を示す図である。 電気ヒーターの転炉鉄皮表面への取り付け位置を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
本発明者らは、過去数年間に亘り、定期的に行う転炉の炉修の都度、使用開始から10年以上経過した転炉における鉄皮の亀裂発生状況を調査した。この転炉は、溶鋼収容量が250トンで、その鉄皮は、厚みが90mmであり、JIS G 3103に規定されるボーラー及び圧力容器用モリブデン鋼鋼板(SB450M)で形成されたものである。この転炉を用いて、溶銑の脱炭精錬や脱燐精錬、更には、ステンレス鋼用のクロム含有溶銑の製造が行われる。
転炉鉄皮における亀裂発生状況の調査結果を図1に示す。長年に亘る熱疲労の蓄積に起因して鉄皮を構成する鋼材が脆化し、図1に示すように、鉄皮に亀裂が発生することが確認された。また、亀裂は、出鋼口付近の直胴部、及び、直胴部の上部側の絞り部に発生することが確認された。転炉では、溶銑の脱炭精錬により、排ガス温度が炉内の溶銑や溶鋼の温度よりも高くなり、亀裂の発生した、前記出鋼口付近の直胴部及び絞り部は、特に、排ガスによる熱影響の大きい部位に該当する。図1には、亀裂の見つかった時期及びその亀裂の長さ(総長さ)を記載している。尚、図1は、転炉を四方から見た図であり、「東」及び「西」は転炉の左右のトラニオン軸側であり、「南」は出鋼側、「北」は溶銑の装入側である。
また、図1に示すように、転炉鉄皮に亀裂が発生する時期は、外気温度が低くなる冬場に集中しており、外気温度が高い夏場には発生しないことが確認できた。
転炉における精錬の形態は、何れの精錬もバッチ方式の精錬を繰り返して行う形態であり、転炉鉄皮の温度は、繰り返して行われる精錬によって昇降を繰り返す。但し、前チャージの精錬と後チャージの精錬との間隔時間は短く、使用中の転炉において、放熱部(強制的に水冷している部位以外の領域)の転炉鉄皮の表面温度が200℃よりも低下することはない。
本発明者は、転炉鉄皮の亀裂発生時期が外気温度の低くなる冬場に集中しているという事実から、転炉鉄皮での亀裂の原因は、転炉鉄皮の温度が低下したときに生じる熱応力であり、且つ、転炉鉄皮の温度が或る限界温度よりも低下した場合に生じる熱応力に起因するとの仮説を立て、この仮説の妥当性を検討した。
前述したように、使用中の転炉では転炉鉄皮の放熱部の表面温度が200℃よりも低下することはなく、発生する熱応力は小さい。また、定期的に行う、耐火物の張り替えを伴わない炉修の際には、転炉は一旦休止するが、休止時間は長くても24時間程度であり、その際に、転炉鉄皮は内面側に施工された耐火物から熱を受け、転炉鉄皮の温度降下は少なく、転炉鉄皮の表面温度は200℃程度まで低下するが、この場合も発生する熱応力は小さい。
種々調査した結果、耐火物の張り替えを伴う炉修では、鉄皮温度がほぼ常温まで低下することを確認した。図2に、ワーク耐火物の解体を伴う炉修において、転炉鉄皮の表面温度の推移を測定した結果を示す。図2において、「○印」は転炉の出鋼口に対して向かって左横方向に約600mm離れた位置の表面温度、「●印」は出鋼口に対して向かって斜め右横方向下方に約2000mm離れた位置の表面温度である。この炉修では、永久耐火物は取り外さず、ワーク耐火物のみを取り外し、また、転炉直胴部のスラグラインよりも上方の全てのワーク耐火物を取り外している。
図2に示すように、鉄皮表面温度は、炉修前の最後の精錬が終了した時点では330〜380℃であり、最後の精錬が終了してから20時間経過した時点では200℃を超えていたが、ワーク耐火物(成形煉瓦)を取り外すことによって急速に低下した。そして、鉄皮表面温度は、ワーク耐火物の取り外し直後は70〜80℃程度であり、その後は、外気温度によって冷却されて50℃程度になることがわかった。これは、ワーク耐火物が取り外される前は、ワーク耐火物の含有熱によって鉄皮温度の降下速度は遅いが、ワーク耐火物を取り外すことで、ワーク耐火物からの熱供給が無くなり、転炉鉄皮は外気によって急速に冷却されることに基づく。尚、図2に示す鉄皮温度の測定は、夏場(7月)に行った結果であり、外気温度の低下する冬場では、鉄皮温度は50℃よりも低下することを確認している。
そこで、図2に示す鉄皮温度の測定結果に基づいて、熱応力解析を実施した。図3に、転炉鉄皮の外面側の熱応力解析の結果を示し、また、図4に、転炉鉄皮の内面側の熱応力解析の結果を示す。図3、4において、符号1は転炉鉄皮、2は炉口鉄皮、3は補強用円周方向リブ、4は補強用横方向リブ、5は補強用縦方向大型リブ、6は補強用縦方向小型リブである。補強用円周方向リブ3よりも上部側が絞り部で、補強用円周方向リブ3の下部側が直胴部である。図3の視野では、補強用縦方向大型リブは2個配置され、補強用縦方向小型リブ6は4個配置されている。また、「正」及び「負」の符号付きの数値は熱応力の値であり、「正」の数値は引張熱応力、「負」の数値は圧縮熱応力を示す。転炉鉄皮1の亀裂は引張熱応力によって発生する。
応力解析の結果、転炉鉄皮1の外面側には、主に圧縮の熱応力が発生し、補強用円周方向リブ3には281MPa(MPa=N/mm2)の圧縮熱応力、補強用横方向リブ4と転炉鉄皮1との溶接部には364MPaの圧縮熱応力が発生することがわかった。但し、転炉鉄皮1の外面側であっても、補強用縦方向大型リブ5と転炉鉄皮1との溶接部には294MPaの引張熱応力、補強用円周方向リブ3と転炉鉄皮1との溶接部には246MPaの引張熱応力が発生することがわかった。
また、転炉鉄皮1の内面側には、主に引張の熱応力が発生し、補強用縦方向大型リブ5の背面位置で278MPaの引張熱応力、補強用横方向リブ4の背面位置で243MPaの引張熱応力、補強用円周方向リブ3と転炉鉄皮1との溶接部の背面位置で245MPaの引張熱応力が発生することがわかった。
これらの引張熱応力と、転炉鉄皮1を構成する鋼材の強度とを比較すると、JIS G 3103に規定されるSB450Mの引張強度は450〜590MPaであるのに対して、引張熱応力は高々294MPaである。ここで、SB450Mの引張強度として材料規格に規定する引張強度の最小値の450MPaと仮定すれば、引張熱応力は引張強度の高々65%(=294/450)である。
つまり、引張熱応力は、鋼材の材料規格に規定する引張強度(規格値)に対して十分に低く、転炉鉄皮1を構成する鋼材は、この鋼材が健全な状態であるならば、発生する引張熱応力に十分に耐えることができ、引張熱応力に起因する亀裂は転炉鉄皮1に発生しない。但し、転炉鉄皮1は、長年に亘る熱疲労の蓄積に起因して脆化しており、転炉鉄皮1の材料特性は劣化する。
JIS B 8265「圧力容器の構造-一般事項」は、圧力容器における基準靱性要求値(吸収エネルギー値)として、引張強度が450MPaの鋼材の場合には、吸収エネルギーの要求値が18J以上であることを規定している。この吸収エネルギーの要求値(=18J)に対し、脆化した転炉鉄皮を構成する鋼材の吸収エネルギー値がどの程度であるかを調査した。
亀裂の発生した転炉鉄皮1から全厚みに亘る試料を切り出して採取し、この試料を用いてシャルピー試験(試験温度;25℃)を実施し、鉄皮を構成する鋼材の靱性値(吸収エネルギー値)を測定した。転炉鉄皮1から切り出した試料を加工し、シャルピー試験片のVノッチ位置が、鉄皮外面から1.0mm離れた位置、鉄皮の厚み中心位置、及び、鉄皮内面から1.0mm離れた位置となる3種類の試験片を作製し、それぞれの試験片の吸収エネルギーを測定した。
図5に、それぞれの試験片の吸収エネルギーの測定結果を示す。図5には、鉄皮からの熱流束と稼働中の転炉鉄皮の表面温度測定値と鉄皮の熱伝導度とから伝熱計算によって算出される転炉鉄皮の温度を、各試験片の位置別に併せて示す。図5において、試験片Aが、Vノッチ位置が鉄皮内面から1.0mm離れた位置の試験片、試験片Bが、Vノッチ位置が鉄皮の厚み中心位置の試験片、試験片Cが、Vノッチ位置が鉄皮外面から1.0mm離れた位置の試験片である。
図5に示すように、吸収エネルギーは、試験片Cでは25J程度であるが、試験片Bでは19J程度となり、鉄皮内面側の試験片Aでは10J程度であり、400℃以上の高温となる炉内側から脆化が進行し、靱性値が劣化していることがわかった。
JIS B 8265で規定する吸収エネルギーの要求値(=18J)に対して、試験片Aの吸収エネルギーの実測値は極めて低い。また、鋼材の吸収エネルギー値は、鋼材の温度と相関関係があり、鋼材自体の温度が降下するほど低下する。
これらのことから、発生する引張熱応力はそれほど高くはないものの、長年に亘る熱疲労の蓄積に起因して転炉鉄皮の靱性が劣化し、更に、鉄皮自体の温度が低下することで、転炉鉄皮の吸収エネルギー値が低下し、この転炉鉄皮では耐火物の張り替えを伴う炉修時の鉄皮温度の低下に伴って発生する熱応力に耐えきれず、転炉鉄皮に亀裂が発生することが結論付けされた。
これらの結果に基づき、更に、転炉鉄皮における亀裂発生の防止方法を検討した。その結果、鋼材の吸収エネルギー値は鋼材の温度に依存しており、鋼材の温度が高いほど吸収エネルギー値は高くなることを利用し、耐火物の張り替えを伴う炉修においても、転炉鉄皮の温度を、JIS B 8265で規定する吸収エネルギーの要求値(=18J)を確保できる温度以上に制御することで、材料特性が脆化した転炉鉄皮であっても、発生する引張熱応力に十分に耐え、転炉鉄皮の亀裂を防止できることを見出した。
そこで、更に亀裂の発生した転炉鉄皮から採取した試料を用いて、−10℃から100℃の試験温度でシャルピー試験を実施し、脆化した転炉鉄皮における温度と吸収エネルギーとの関係を調査した。シャルピー試験片のVノッチ位置は、鉄皮内面から1.0mm離れた位置(図5の試験片Aと同じ位置)である。
図6に調査結果を示す。図6に示すように、吸収エネルギーは試験温度の低下に伴って減少し、亀裂の発生した転炉鉄皮を構成する鋼材(SB450M)では、50℃未満になると、JIS B 8265で規定する吸収エネルギーの要求値(=18J)を満足できなくなることがわかった。つまり、長年に亘る熱疲労の蓄積された、SB450Mで構成される転炉鉄皮の場合、その温度が50℃未満になると、鉄皮自体の吸収エネルギーが低下し、熱応力に起因する亀裂が転炉鉄皮に発生することがわかった。換言すれば、長年に亘る熱疲労の蓄積された、SB450Mで構成される転炉鉄皮の場合、その温度を50℃以上に維持すれば、熱応力に起因する亀裂の発生を防止できるとの知見が得られた。
本発明は上記検討結果に基づいてなされたものであり、本発明に係る精錬用炉体鉄皮温度の管理方法は、鋼材からなる鉄皮の内側に耐火物の施工された精錬用炉体の炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させる際に、前記鉄皮の温度を、該鉄皮を構成する鋼材に必要とされる強度を充足するために必要とする下限温度以上に保持することを特徴とする。
本発明を適用する精錬用炉体としては、外殻を鉄皮とし、鉄皮の内面側に耐火物が施工され、施工された耐火物で溶融金属を直接収容する精錬用炉体であり、且つ、操業がバッチ方式で行われる精錬用炉体である。具体的には、鋼の精錬工程に使用される転炉、アーク炉、RH真空脱ガス装置などである。圧延工程で使用される加熱炉などは、本発明の適用外である。
また、本発明において、精錬用炉体の炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させるとは、炉修などによって精錬用炉体を一旦休止し、その後、その精錬用炉体を再稼働する場合の休止期間が該当する。炉修以外であっても、何らかの理由で精錬用炉体を一旦休止する場合も該当する。
精錬用炉体の休止中に、精錬用炉体の鉄皮を、該鉄皮を構成する鋼材に必要とされる強度を充足するために必要とする下限温度以上に保持する手段としては、断熱材による保温、電気ヒーターによる加熱または保温、ガスバーナーによる加熱または保温の3種類の手段のうちのいずれか1種または2種以上の手段であることが好ましい。特に、安価で且つ確実に加熱または保温することが可能であることから、電気ヒーターを採用することが望ましい。
鉄皮を加熱または保温する際に、精錬用炉体の鉄皮の全面を加熱または保温の対象としても構わないが、鉄皮での亀裂発生を効率的に防止する観点から、精錬用炉体の休止中に鉄皮に発生する引張熱応力が、鉄皮を構成する鋼材の材料規格に規定する引張強度の最小値の50%以上となる鉄皮の部位のみを、望ましくは60%以上となる鉄皮の部位のみを、加熱または保温の対象とすることが好ましい。この場合、鉄皮に発生する熱応力は、鉄皮表面温度の測定結果に基づいて熱応力解析を実施し、予め、熱応力分布を把握しておくことが必要である。
精錬用炉体の鉄皮は、一般的に、ボイラ及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板(JIS G 3103)、溶接構造用圧延鋼材(JIS G 3106)、圧力容器用鋼板(JIS G 3115)などで構成され、また、その引張強度も種々の強度のものが使用される。JIS B 8265には、圧力容器を構成する鋼材のシャルピー試験(「衝撃試験」ともいう)の吸収エネルギーは、母材(鋼材)の材料規格に規定する引張強度の最小値に応じ、表1に規定する値以上が必要であることが規定されている。
Figure 0006201970
したがって、本発明においては、精錬用炉体の鉄皮を構成する鋼材の材料規格に規定する引張強度の最小値に応じて表1に示す吸収エネルギーの要求値を把握し、この吸収エネルギーの要求値が確保される温度(「下限温度」という)以上に、休止期間中の精錬用炉体の鉄皮温度を保持することが必要となる。
鉄皮を構成する鋼材は熱影響によって脆化し、その吸収エネルギーは鋼材の脆化に伴って低下する。したがって、前記下限温度を設定する際には、鉄皮を構成する脆化した鋼材から試料を切り出し、この試料からシャルピー試験用の試験片を作製し、この試験片を用いてシャルピー試験を行い、図6に示すような、温度と吸収エネルギーとの関係を求めることが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、転炉などの精錬用炉体を、炉修などによって一旦休止し、炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させる際に、精錬用炉体の鉄皮の温度を、該鉄皮を構成する鋼材に必要とされる強度を充足するために必要とする下限温度以上に保持するので、つまり、鉄皮を構成する鋼材の強度を基準値以上に確保するので、鉄皮に発生する熱応力が軽減するのみならず、鉄皮に発生する熱応力に対して鉄皮を構成する鋼材の材料強度が勝り、その結果、炉体鉄皮での亀裂発生を未然に防止することが実現される。
溶鋼収容量が250トンで、鉄皮厚みが90mmであり、鉄皮をJIS規格のSB450Mで構成した転炉に本発明を適用した。この転炉における耐火物の張り替えを伴う炉修での転炉鉄皮の表面温度の推移を図2に示し、また、そのときの転炉鉄皮に作用する熱応力を図3及び図4に示す。
鉄皮に発生する引張熱応力が、鉄皮を構成する鋼材の材料規格に規定する引張強度の最小値(=450MPa)の50%以上となる位置は、図3では、補強用縦方向大型リブ5と転炉鉄皮1との溶接部(引張熱応力;294MPa、引張熱応力/引張強度最小値=65%(=294/450))、及び、補強用円周方向リブ3と転炉鉄皮1との溶接部(引張熱応力;246MPa、引張熱応力/引張強度最小値=55%(=246/450))の2箇所である。
また、図4では、補強用縦方向大型リブ5の背面位置(引張熱応力;278MPa、引張熱応力/引張強度最小値=62%(=278/450))、補強用横方向リブ4の背面位置(引張熱応力;243MPa、引張熱応力/引張強度最小値=54%(=243/450))、補強用円周方向リブ3と転炉鉄皮1との溶接部の背面位置(引張熱応力;245MPa、引張熱応力/引張強度最小値=54%(=245/450))の3箇所である。
図3及び図4の結果に基づき、これらの部位を50℃以上に加熱・保持するために、転炉のワーク耐火物を解体する前に電気ヒーター(ニクロム電熱線)を鉄皮表面に取り付けて鉄皮を加熱した。
図7に、電気ヒーター7の転炉鉄皮表面への取り付け位置を示す。図7に示すように、補強用横方向リブ4の上方側の転炉鉄皮1の表面、相対する2つの補強用縦方向大型リブ5の内側の転炉鉄皮1の表面、及び、相対する2つの補強用縦方向大型リブ5で囲まれた、補強用円周方向リブ3の上方側の転炉鉄皮1の表面に電気ヒーター7を取り付けた。尚、図7に示す符号10は転炉である。
電気ヒーター7に通電することで、鉄皮温度を、電気ヒーター7の中心部では約80℃に加熱維持でき、電気ヒーター7を中心として約400mm離れた位置では50℃以上に加熱維持することができた。鉄皮の裏面側も同等の温度であった。
炉修の都度、転炉鉄皮温度を50℃以上に確保することで、それ以降、転炉鉄皮の亀裂発生は皆無となった。
1 転炉鉄皮
2 炉口鉄皮
3 補強用円周方向リブ
4 補強用横方向リブ
5 補強用縦方向大型リブ
6 補強用縦方向小型リブ
7 電気ヒーター
10 転炉

Claims (6)

  1. 鋼材からなる鉄皮を有する精錬用炉体の炉体内部温度を、前記鉄皮の内側に施工された耐火物を張り替えるための修理によって使用時の温度よりも低下させる際に、前記鉄皮の温度を、該鉄皮を構成する鋼材必要とされる靭性要求値を充足するために必要とする下限温度以上に保持することを特徴とする、精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
  2. 前記下限温度は、操業により熱履歴を受けた前記鉄皮を構成する鋼材のシャルピー試験での吸収エネルギー値が当該鋼材に必要とされる値以上となる温度であることを特徴とする、請求項1に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
  3. 前記精錬用炉体の炉体内部温度を使用時の温度よりも低下させることに起因して前記鉄皮に発生する熱応力が前記鋼材の材料規格に規定する引張強度の最小値の50%以上となる鉄皮の部位のみを、前記下限温度以上に保持することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
  4. 前記鉄皮の温度を下限温度以上に保持する手段が、断熱材による保温、電気ヒーターによる加熱または保温、ガスバーナーによる加熱または保温の3種類の手段のうちのいずれか1種または2種以上の手段であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
  5. 前記精錬用炉体が、鋼の精錬工程に使用される精錬炉であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
  6. 鋼材SB450Mからなる鉄皮を有する転炉の炉体内部温度を、前記鉄皮の内側に施工された耐火物を張り替えるための修理によって使用時の温度よりも低下させる際に、前記鉄皮の温度を50℃以上に保持することを特徴とする、精錬用炉体鉄皮温度の管理方法。
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