JP6192314B2 - シンチレータ結晶体および放射線検出器 - Google Patents

シンチレータ結晶体および放射線検出器 Download PDF

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Description

本発明は、光導波性を有する相分離構造からなるシンチレータ結晶体に関する。また、その相分離シンチレータ結晶体を用いた放射線検出器に関する。
医療現場等で用いられているフラットパネルディテクタ(FPD)等では、被写体を通過したX線をシンチレータで受け、そのシンチレータが発した光を受光素子アレイで検出している。そのような状況において、シンチレータの発した光が隣接検出器へ広がるのを防止するために、光導波性を示す相分離シンチレータが特許文献1に開示されている。そこでは、一方向性を有する相分離構造に沿って光が導波されることが示されている。
特開2012−131964号公報
相分離シンチレータの導波性は優れているが、結晶体の育成時にグレイン境界部が発生する場合があり、その発生に起因して光導波に不均一性が生じていた。ここでグレインとは、均質構造を有する領域を1つの粒とみなした領域のことをいう。また、グレイン境界部とは、このグレイン部分の境界部分であり、詳細は発明を実施するための形態の中で説明するが、例えば、図4に示される局所的な構造不均一によって形成されている部分である。
このグレイン境界部の発生は、相分離構造を形成する場合において、固液界面に対して略垂直方向に一方向性を有する構造が形成されるという特徴から生じるものであり、固液界面の平滑性が崩れた場合に発生する相分離構造固有の問題である。そして、そのグレイン境界部がランダムに形成されてしまうことから、グレイン境界部の影響によって光導波性に不均一性が生じていた。
本発明は、上述したようなシンチレータの相分離構造の問題点を解決するためになされたものである。
本発明の第一の態様は、同一面内にない二つの面を結ぶ方向に方向性を有する複数の第一の相と、前記第一の相周りに位置する第二の相とを有し、前記複数の第一の相のそれぞれは柱状であるシンチレータ結晶体であって、グレイン境界部を複数有し、前記グレイン境界部の少なくとも一部が周期性を有することを特徴とする、シンチレータ結晶体である。
本発明のその他の態様については以下で説明する実施の形態で明らかにする。
本発明によれば、グレイン境界部の影響により生じる、光の導波の不均一性を軽減することができる放射線検出器に用いることができる、シンチレータ結晶体及びそのシンチレータ結晶体を用いた放射線検出器を提供することができる。
本発明のグレイン境界部の位置を制御した相分離シンチレータ結晶体を表す模式図である。 本発明の相分離シンチレータ結晶体を表す模式図である。 グレイン境界部の透過光学顕微鏡による像を表す図である。 グレイン境界部断面の、落射光による暗視野光学顕微鏡の像を表す図である。 グレイン境界部形成のメカニズムを説明する図である。 本発明において使用する凹凸基板を模式的に表す図である。 本発明の相分離シンチレータ結晶体の製造方法の一例を示す図である。 本発明の相分離シンチレータ結晶体を用いた放射線検出素子の模式図である。 グレイン境界部の影響を説明する光学顕微鏡の像を表す図である。 本発明の相分離シンチレータ結晶体に、X線を照射した場合の画像である。 画像処理の一例を説明するための画像である。
以下、図面等を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
[相分離シンチレータ結晶体について]
まず、相分離シンチレータ結晶体について図2を用いて説明する。本発明の相分離シンチレータ結晶体は、同一面内にない二つの面を結ぶ方向に、一方向性を有する複数の第一の相21と、第一の相21の周囲を取り囲むように周りに位置する第二の相22の二相から構成される。各相は、低屈折率相23と高屈折率相24として識別することができるが、高屈折率相24は第一の相21または第二の相22のいずれでも構わない。高屈折率相24は、シンチレータとして機能することが好ましい。
図2(A)は、第二の相22が高屈折率相24の場合を示す。図2(B)は、第一の相21が低屈折率相23の場合を示す。
第一の相21の形状は柱状である。但し、柱状というのは、円形に限らず、楕円や任意の曲面でもよく、さらに複数の面から構成される多面体側面を有している形状でもよい。また、第一の相21の柱の直径27は、50nm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。また、第一の相21の柱と近接する第一の相21の柱との間の周期28は、500nm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。このサイズは、相分離シンチレータの効果を得るために、受光素子の受光部のサイズよりも小さな直径や周期を有することが求められる。
一般に受光素子のサイズが150μm〜数μmであるために、上記範囲であれば、要件を満たす直径や周期を選択することが可能である。第一の相21の柱は、相分離シンチレータの上記二つの面間で連続であることが好ましいが、途中で切れたり、分岐、結合があっても構わない。
シンチレータの厚み29に関しては、放射線の吸収量や空間分解能に見合うように所望の厚みとすることができる。
以上のような特徴を有する相分離シンチレータは、構造の一方向性(柱に沿う方向)に沿って光を導波する能力を有する。
相分離シンチレータは、共晶組成近傍にて、一方向凝固を行った場合に得られるものである。共晶組成近傍とは、eutectic coupled zoneとして定義される範疇のことであり、概して、共晶組成の±4mol%の範囲のことを指す。共晶組成近近傍で一方向凝固を行えば、共晶組成で一方向凝固を行った場合とほぼ同じの構造が得られる。
また、いくつかの具体例として共晶相分離構造が得られる材料系を挙げると、以下のような材料系が想定される。
組成比や屈折率の比は光導波性に影響するので、用途に従って材料系を選択することが好ましい。また、表1中のCsCuの屈折率が未知であるが、表1中の相分離構造の観察から、NaIの屈折率よりも高いため、1.9程度の屈折率として比を計算した。GdAlOについても、約2.0として計算した。また、この比の算出にあたっては、光の波長依存性を勘案していないので、数値は若干の誤差を含むものである。したがって、屈折率比が表1中の最大値である0.96以下であれば、本発明における全反射モードを活用した光導波性能が有効となるので、相分離シンチレータとしての要件を満たす。なお、全反射モードとは、相分離シンチレータ結晶体内の高屈折率相で光が全反射を繰り返して導波する条件を意味する。ただし、ある光線の導波中すべての事象が全反射である場合に限定せず、一度でも全反射が生じた場合も該当するものとする。
[相分離シンチレータにおけるグレイン境界部について]
従来の相分離シンチレータ結晶体において、発生しているグレイン境界部の状況を図3と図4を用いて説明する。グレイン境界部とは、相分離構造において、異なる方向に一方向性を有する領域同士の境界とその周辺の部分のことを指す。図3(A)は従来の相分離シンチレータにおけるシリンダ方向に略垂直に切り出した試料の透過光学顕微鏡像であり、図4(A)および(B)はシリンダ方向に略平行、かつ、グレイン境界部に略垂直に切り出した試料の落射光による暗視野光学顕微鏡像である。
図3(A)の透過型光学顕微鏡像では、グレイン境界部は暗く見える。これは、裏面より入射した光線がグレイン境界部領域ではまっすぐ光導波しないことで生じている。図4のいずれかの図のように断面を観察するとまっすぐ導波しない要因がはっきりする。つまり、グレイン境界部では、柱状晶が境界部面に向かって形成されており、界面で柱状部分が終端されているのである。
したがって、光線は界面に向かって導波され、界面の近傍で散乱されているので、光が相対的に減り暗く見えることが分かる。また、これは光導波性を特徴とし、かつ、この構造を有するがために発生する相分離シンチレータ固有の問題であることが分かる。
透過光では暗く見えるが、内部発光の場合には、光は等法的に結晶体内で放射されるため、散乱点として作用するグレイン境界部は図10にみられるように相対的に明るく見える。また、グレイン境界部に向う柱の角度については、図4(A)のように垂直に近い角度から、図4(B)のように浅い角度までいずれも本件の範疇として適用可能である。
図5はグレイン境界部の形成メカニズムを説明する図である。グレイン境界部の形成メカニズムは、相分離構造形成時に共晶融液の固液界面の法線方向に柱状晶が成長することが判っている。固液界面が平坦でない場合、図5に示すように、凹部直上方向にグレイン境界部が形成される。よって、図5に示した凹部を意図的に制御してやることでグレイン境界部の位置を制御できる。以下、グレイン境界部の位置制御について述べる。
[グレイン境界部の位置を制御した相分離シンチレータ結晶体]
図1は、本発明におけるグレインの境界部の位置を制御した相分離シンチレータ結晶体の模式図を表す。
グレイン境界部を複数有し、そのグレイン境界部の位置を制御した相分離シンチレータは、図1のように相分離構造の一方向性を有する向き、つまり第一の相21である柱の向き11に略平行に制御され、かつ、周期性を有している。グレイン境界部の影響により生じる、光の導波の不均一性を軽減するためには、グレイン境界部12を位置制御して周期的に配置することが求められるため、相分離シンチレータの結晶体育成時に、固液界面の形状を意図的に制御することが必要である。そこで、育成初期の基板に周期的な凹凸を設けることにより、固液界面の形状を制御することが好ましい。
グレイン境界部が光導波における欠陥となるため、本実施形態では境界部を周期的に形成する。これにより、放射線検出器として撮像した後の画像においてグレイン境界の影響が周期的に現れるので、画像処理によりグレイン境界部の影響を軽減することができる。また、シンチレータによる発光を受光する複数の受光素子の周期とグレイン境界部の周期を合わせることで、画像処理をせずにグレイン境界の影響を軽減することも可能である。周期性とは、撮像エリア内(放射線検出器の受光素子が設けられている範囲)の少なくとも一部において周期構造を有していることであり、エリア全体に必ずしも精密に設けられている時だけに限らない。また、複数の周期が混在してもよく、周期の揺らぎがあってもよい。ただ、周期13の平均値に対して30%以下の揺らぎであることが好ましい。
周期13の範囲は、育成上の制約、つまり基板凹凸にて育成時の固液界面の凹凸を制御可能な範囲から最大値が決定され、本発明の場合500μm以下である。さらに好ましくは300μm以下である。
また、最小値は相分離シンチレータの構造周期から制限を受ける。これは、グレイン境界部への柱状部分の角度が浅い場合(図4(B)のような場合)でも、実用的な相分離シンチレータの厚み(100μm以上)において、片側で相分離シンチレータの構造周期の5周期分が境界部に向かう。すると、グレイン境界部間でグレイン境界部に向かわない柱が10周期分確保しなければ光を効果的に取り出すことができないため、相分離構造において合計20周期分以上の幅でグレイン境界部の周期を定めなければならない。よって、相分離シンチレータの構造周期の下限値が500nm以上であることから、10μm以上の周期であることが好ましい。さらに、典型的な相分離シンチレータの構造周期4μm程度から算定すると、より好ましくはグレイン境界部の周期は80μm以上である。
また、周期性を有する方向については、相分離シンチレータ結晶体面内において、周期性を有する軸が一つ(グレイン境界部はライン状に制御される場合)、二つ(グレイン境界部は網目状に制御される場合)が可能である。軸が二つの場合、軸が直交していれば、グレイン境界部にて囲われた部分は正方形や長方形となり、この部分の形状がひし形やその他多角形であってもよい。多角形の場合は、周期性を有する方向が3つ以上となる。
さらに、グレイン境界部の周期は、上記範疇であれば有効であるが、特に受光素子の少なくとも一軸の周期に対して整数倍又は、整数分の1倍である場合には、撮像後の画像処理なしでもグレイン境界の影響を軽減できるため好ましい。グレイン境界部の周期を受光素子の周期の整数倍又は整数分の1倍とし、且つ、画像処理を行っても良い。
図6は本発明において使用される凹凸基板の模式図である。グレイン境界部の位置を制御するための基板の凹凸に関しては、上記グレイン境界部の周期と同一の周期で設けておけばよい。よって、図6に示すように周期Pが上記の範囲と同一であればよい。凹凸の凹部の深さDについては、図6に示すように、テラス部(凸部(凹部同士の間隙部分)のことを指す。)の幅Wの10%以上であればよい。
また、周期Pに対してテラス部の幅Wの値に制限はないが、好ましくは周期Pの60%以下である。特に、Wの値が周期Pの60%以下の場合、凸上に単一のグレインの発生確率が向上する。もし、グレイン境界部の周期を大きく設定した場合、単一のグレインの発生確率が低下するならば、十分周期Pに対するWの値を小さくすることが好ましい。
[相分離シンチレータ結晶体の製造]
上記にて、凹凸基板を用いてグレイン境界部の位置を制御することについて述べたが、ここでは、本発明の相分離シンチレータ結晶体の製造方法について述べる。
用いる凹凸基板については、育成する相分離シンチレータの材料系に対して、耐反応性・耐腐食性・耐熱性を兼ね備えた材料を用いることが好ましい。特に、ハロゲン化物を含む系に対しては、セラミックス(アルミナ・ジルコニア・マグネシアなど)や耐腐食性の金属(Pt、Pd、Wなど)を用いることが好ましい。また、酸化物を含む系に対しては、耐熱性と耐反応性から貴金属材料を用いることが好ましい。
相分離結晶体の製造方法は、凹凸の設け方により育成の配置が異なるので、以下場合分けして述べる。図7に、本発明の相分離シンチレータ結晶体の製造方法の一例を示す。
まず、凹凸が一方向の場合(ライン状)、固液界面が基板面に対して平行な状態で育成するとライン方向に多数のグレインが発生してしまい、ラインに直交する方向のみしか、グレイン境界部の位置を制御できない。したがって、図7に示すように、ラインに沿う方向73と液面とが、一定の角度74を有していることが好ましい。
具体的には、相分離シンチレータの共晶融液72に対して凹凸基板71をラインに沿う方向73に傾けた状態で浸漬し、引き上げることが好ましい。この時、基板面の角度74の範囲は、ラインに沿う方向73に温度勾配が形成されればよいので、数度〜90度まで許容される。この時、育成される相分離構造の柱の方向は、温度勾配に影響を受けて、基板面に対しておおよそ40度以上の角度で形成される。特に、垂直に近い方が好ましいので、上記基板面を融液72に浸漬する角度は浅い方が好ましい。ただし、面内の温度勾配を考慮すると、より好ましくは5度〜20度の範囲である。
また、育成時の配置は、図7のように融液から引き上げる手法をとっているが、逆の配置で凹凸基板と加熱部が楔状に配置され、その間に融液を保持すれば同様の育成条件を得ることが可能である。その他にも条件の合う手法であれば、適用可能である。
次に、凹凸が二方向の場合について述べる。上述のようにテラス部分が正方形等の場合に該当する。この場合には、基板71と液面が平行であることが好ましい。凸に対して点で核発生することが好ましいからである。前述のように凹凸が一方向の場合には、点で発生してからライン方向に核が均一に横方向に拡大する必要があったから傾きが必要であった。
以上のようにして、本発明のグレイン境界部の位置が制御された相分離シンチレータを作製することが可能である。
[グレイン境界部の位置が制御された相分離シンチレータを用いた放射線検出器]
グレイン境界部の位置が制御された相分離シンチレータは、複数の受光素子と組み合わせて放射線検出器を構成することができる。このとき、受光素子の種類は問わない。グレイン境界部の位置が制御された相分離シンチレータ結晶体は、相分離シンチレータの説明にて述べたように、二つの面を有し、この二つの面を結ぶ方向に光導波性を有する。この二面が平行でなくても良いが、この二面が略平行である場合は、この二面と受光素子の受光面とが略平行、かつ、グレイン境界部がこの二面に略垂直になるように受光素子と相分離シンチレータを組み合わせることが好ましい。また、この二面が略垂直な場合は、この二面のうち一面が受光素子の受光面とほぼ平行に相対するように受光素子と相分離シンチレータを組み合わせることが好ましい。こうすることで、シンチレータで生じた光が受光素子の受光面に向かって導波される。
図8は、本発明の放射線検出素子の模式図であり、グレイン境界部を有する相分離シンチレータが示されている。受光素子アレイ部分は、図中の底面の黒い部分で表してある。図8(A)のように複数の第一の相が放射状に向かう面(第一の相の端部の露出数が少ない方の面)と受光素子の受光面とが相対するようにシンチレータと受光素子を配置しても良い。また、図8(B)のように複数の第一の相が放射状に向かう面でない方の面(第一の相の端部の露出数が多い方の面)と受光素子の受光面とが相対するようにシンチレータと受光素子を配置しても良い。
本発明では、いずれの配置でも適用可能であるが、図8(A)の場合を順方向、(B)の場合を逆方向と定義した場合、順方向で撮像すると受光量が約10%大きいという特徴がある。したがって、受光素子に対して順方向配置で用いることが好ましい。
なお、いずれの配置においても、相分離シンチレータと受光素子の間には接合層や保護層などの必要な層を挿入して用いることが好ましい。また、受光素子に面しない側においては、相分離シンチレータに反射面や吸収面等を設けたりすることも好ましい。
図9は、グレイン境界部の影響を説明するための光学顕微鏡像である。グレイン境界部を有するシンチレータを用いた放射線検出器で撮像した画像は、図9に示すように、グレイン境界部において、光が散乱され明るく見える。しかし、本実施形態のようにシンチレータが有するグレイン境界部が周期的に存在する場合には、フーリエ変換や補間等の画像処理を用いて画像を補正することにより周期成分を除去可能である。よって、グレイン境界部の影響により生じる、光の導波の不均一性を軽減した検出結果を取得することができるため、グレイン境界部が内在する相分離シンチレータであっても実用的に用いることができる。尚、グレイン境界部の周期により検出結果に生じる周期成分は、検出器と接続された画像処理装置により除去すればよい。
本実施例は、グレイン境界部の位置制御に関する。
本発明は、図2に示した構造を形成可能な相分離シンチレータに対して適用可能であるが、以下の実施例では、一例としてCsI−NaClの材料系を用いた場合を取り上げる。
まず、図6に示すようなストライプ状や正方メッシュ状の基板を準備した。周期や幅については、以下の表2に示すようにした。
厚み3mm、25mmの各サイズのアルミナ基板に各々のテクスチャーが形成されたものを準備し、かつ、CsI−NaCl(共晶組成31.5:68.5mol%)の融液をφ50mmのるつぼに準備した。
ライン状の場合は、テクスチャー面を液面に対向する状態で、基板面を液面に対して約15°の角度で浸漬した。正方メッシュ状の場合は、平行に浸漬した。このとき、ライン状のテクスチャー方向は、基板が傾斜している方向と平行とした。その状態から、6mm/hの速度で基板を液面から引き上げることで、基板表面に数mm程度の相分離シンチレータ結晶体が育成された。
また、比較例として、テクスチャー付き基板を用いず、一般的なブリッジマン法で作製した結晶体も準備した。
各々の基板に形成された結晶体を基板から剥がして、評価可能なように研磨して光学顕微鏡にて観察を行った。
比較例では、図3(A)のように透過光学顕微鏡像でグレイン境界部が暗く見えた。このことからも周期性がないことが分かる。本実施例の場合は、図3(B)のようにグレイン境界部がライン状に形成されており、いずれもテクスチャー基板の周期に対応して形成できることが確認できた。また、正方メッシュ状のものでも、正方の刻みに対応したグレイン境界部が形成されていた。ここで、グレイン境界部の暗く見える程度に差があるように見えるが、図4に示す境界部の構造の違い等に起因するものである。
本実施例は、グレイン境界部が有る場合には、境界部の周期性が重要であることを証明するものである。
実施例1で作製された比較例においては、ある場所で図9(A−1)のようなグレイン状態を取っていた。その場合、グレインA(図9(A−2))とグレインB(図9(A−3))にて光を照射した場合に、各々のグレイン内に光が広がっていることが、それぞれの図から確認できる。
ただし、相分離シンチレータ結晶体自体は、全反射モードに近い光線の導波性は非常に高いので、この広がっているように見える光は全反射モードからかけ離れた一部の光線であることに注意が必要である。
以上のことから、グレイン境界部では広がった光が散乱され、光はグレイン境界部を透過し難いことが分かる。よって、グレイン境界部が不均一に形成されている結晶体においては、放射線が入射して光った場所が異なっても、同じグレイン境界部に到達し得た光線は散乱により受光素子側に取り出されてしまうので、どこの光であったかの履歴を知るすべがなく、補正のしようがないと言える。言い換えれば一部の広がってしまう光の広がる領域のサイズがばらばらということが問題である。
次に、本発明のように位置制御されている場合は、図9(B−1)のようなグレイン境界部が周期的に配列しているので、光線はグレイン境界部にて前述同様の現象が生じるが、グレインA(図9(B−2))とグレインB(図9(B−3))にて光を照射しても、両者に明確な差は認められない。よって、少なくともグレイン境界部間に挟まれた領域の光が境界部にて散乱されていることが推定可能であるので、画像補正可能な状態とすることができる。これによって、グレインの境界部の位置制御の重要性が確認できる。
本実施例は、グレイン境界部の構造に関するものである。
グレイン境界部の形成されるメカニズムというのは、図5に示すように、固液界面の法線方向に柱状晶が形成されるということから説明できる。固液界面に起伏があり、図5のようになっていると凹部近傍で柱状晶が凹部直上部分にて衝突する形となり、そこで柱状晶が終端され、グレイン境界部を形成するというものである。この時、基板の凹凸の深さD(図6)で固液界面の起伏の大きさを制御してやると、凹凸で起伏が大きくなった場合は、図4(A)のように境界部に直角に近い角度で柱状晶が終端され、起伏が小さい場合には、図4(B)のように10°程度の浅い角度で終端されていた。
本発明の効果を得るには、グレイン境界部が周期性を有することが必要であるため、いずれの角度でも効果を発揮するが、多くの柱状晶がグレイン境界部に向かわずまっすぐであることが全反射モードを効果的に利用する観点からは有利である。したがって、図3(A)のグレイン境界部が(B)に比べて暗いという比較でも判るように、浅い角度で終端されているものの方がより好ましいことが確認できる。
本実施例は、グレイン境界部の位置を制御した相分離シンチレータを用いた放射線の検出に関する。
実施例1の凹凸がライン状のものと同様に、グレイン境界部の位置を制御した相分離シンチレータ結晶体を準備し、X線照射すると図10(A)、(B)のような2種類の画像を得た。この2画像ではX線照射野をφ1mmとしている。図10(C)に関しては、比較例としてグレイン境界部の位置を制御していない試料に、全面X線を照射した状態の画像となっている。これらから、位置制御されていない試料では、不均一にグレイン境界部が明るく撮像されており、画像処理からグレイン境界部の影響を除去するのは困難であることが見てとれる。
図10(A)と(B)での画像の違いは、図9(A)と(B)のように受光素子面とグレイン境界部にて柱状晶が終端する状態が異なる配置ということである。ここで、図 10(A)の配置を順方向、(B)の配置を逆方向と定義する。いずれの画像でもグレイン境界部が明るく見えるが、不均一の場合と異なり周期的であるため、簡便にフーリエ変換と補間等により補正できる画像であることが確認できる。
最も安易な一例として、図11に示すように元画像(図10(A))をフーリエ変換し(図11(A))、グレイン境界部の周期成分に該当する領域のみ(白く囲われた部分)を逆フーリエ変換する(図11(B))。最後に、元画像(図10(A))から周期性成分のみの画像(図11(B))を引くことで周期性成分の補正された画像(図11(C))を得ることができた。いずれの配置で得られた場合でも問題なくできる。なお、ここで示した画像処理方法にこだわらず精度の良い方法を適用することが好ましい。
さらに、補正された画像をもとに受光した光量を見積もると逆方向配置よりも順方向配置の方が受光素子に入射する光線が10.2%多いことが確認され、受光量の観点からは順方向配置で放射線検出素子を構成することがより好ましいことが確認できた。
本発明の相分離シンチレータ結晶体は、放射線により発光し、かつ、発光した光を導波する特性を有しているため、従来の隔壁を形成することなく、光検出器と組み合わせて用いることで放射線検出器として有用である。特に、X線等の放射線を用いた医療用・産業用・高エネルギー物理用・宇宙用の計測装置等に用いることが可能である。
11 柱の向き
12 グレイン境界部
13 周期
21 第一の相
22 第二の相
23 低屈折率相
24 高屈折率相
27 柱の直径
28 柱間の周期
29 シンチレータの厚み
71 基板
72 融液
73 ラインに沿う方向
74 角度
P 凹凸基板の周期
W テラス部の幅
D 凹部の深さ

Claims (11)

  1. 同一面内にない二つの面を結ぶ方向に方向性を有する複数の第一の相と、前記第一の相の周りに位置する第二の相とを有し、前記複数の第一の相のそれぞれは柱状であるシンチレータ結晶体であって、グレイン境界部を複数有し、前記グレイン境界部の少なくとも一部が周期性を有することを特徴とする、シンチレータ結晶体。
  2. 前記グレイン境界部では、前記第一の相の少なくとも一部が前記グレイン境界部にて終端されていることを特徴とする、請求項1に記載のシンチレータ結晶体。
  3. 前記柱状の第一の相の直径は、50nm以上30μm以下の範囲内にあることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシンチレータ結晶体
  4. 前記柱状の第一の相の周期は、500nm以上50μm以下の範囲内にあることを特徴とする、請求項3に記載のシンチレータ結晶体
  5. 前記第一の相と前記第二の相は、共晶を構成する材料を含み、かつ、前記第一の相と前記第二の相は、共晶組成の±4mol%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシンチレータ結晶体
  6. 前記グレイン境界部の周期は、10μm以上500μm以下の範囲内にあることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシンチレータ結晶体
  7. 前記第一の相と第二の相は、CsI−NaClを含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシンチレータ結晶体
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシンチレータ結晶体と複数の受光素子とを備え、前記シンチレータ結晶体のいずれかの面と前記複数の受光素子の受光面とが相対していることを特徴とする、放射線検出器。
  9. 前記第一の相が放射状に向かう面と前記複数の受光素子の受光面とが相対するように配置されていることを特徴とする、請求項に記載の放射線検出器。
  10. 前記グレイン境界部の周期により、検出結果に生じる周期成分を除去する処理を行う画像処理装置と接続されていることを特徴とする、請求項又はに記載の放射線検出器。
  11. 前記グレイン境界部の周期が、前記複数の受光素子の周期の整数倍又は整数分の1倍であることを特徴とする、請求項乃至10のいずれか1項に記載の放射線検出器。
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