以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
本実施形態による消音器1は、ホルン用の消音器である。以下、本明細書では、ベルにおける管楽器の管の径が徐々に小さくなる方向を後方と呼び、ベルにおける管楽器の管の径が徐々に大きくなる方向を前方と呼ぶ。
図1(A)は、この発明の第1実施形態による消音器1の構成を示す縦断面図であり、図1(B)は、同消音器1を前方から見たときの同消音器1の構成を示す正面図であり、図1(C)は、同消音器1をホルンに装着して吹奏したときの同消音器1の構成を示す斜視図である。図1(A)および(C)は、消音器1をホルンに装着した状態を示す。
図1に示すように、消音器1は、本体部10と、支持部32と、パイプ31と、マイクロフォン33と、信号出力部35と、音程調節部36とを有する。本体部10は、胴部11と底部12とから構成されている。
胴部11は、略円錐管形状の中空の管体である。胴部11内には、空洞13が形成される。消音器1をホルンに装着したとき、胴部11の回転軸(以下、単に軸という)は、ベル3の軸に重なる。胴部11は、前端である大径側端11aから後端である小径側端11bに向かってホルンのベル3の内壁に沿うようにして外径および内径が小さくなっている。小径側端11bは開口している。小径側端11b近傍の胴部11の外壁には、柔軟な素材からなる取り付け部14が胴部11の軸の周りに亙って設けられている。小径側端11b近傍の胴部11は、取り付け部14を介してベル3の内壁に固定される。
本体部10の前端には、底部12がある。底部12は、皿状をなしている。底部12は、その外面が外側方向(前方)に突出する突曲面となるように湾曲している。底部12の皿の底の部分は、胴部11の軸近傍に位置している。底部12は、その縁における端面が胴部11の軸に垂直になるように配置されている。底部12の縁の部分は、胴部11の大径側端11aに接合している。底部12は、胴部11の大径側端11aを閉塞する閉塞部である。底部12は、胴部11がベル3の内壁に固定されたとき、ベル3の端面近傍に位置する。
底部12には、本体部10内の空間と本体部10外の空間とを連通させる排気孔15が設けられている。排気孔15は、本体部10内の呼気を本体部10外に排気する役割を担う。排気孔15の径は、マウスピースの最小内径と同径以上である。マウスピースから吹き込まれた呼気は、ホルン内を通過し、消音器1の胴部11の小径側端11bから空洞13に導かれ、底部12の排気孔15から消音器1の外部の空間に排出される。
底部12の中心近傍における底部12の内壁には、支持部32が設けられている。支持部32は、円筒状をなしている。支持部32の内側には、円筒状のパイプ31の一端が挿入されている。パイプ31は、支持部32に固定されている。パイプ31は、底部12近傍から胴部11の小径側端11b方向に胴部11の軸に沿って配置されている。パイプ31の他端には、マイクロフォン33が取り付けられている。マイクロフォン33には、信号線34の一端が接続されている。信号線34は、パイプ31内に挿通されている。信号線34の他端は、底部12の中心に設けられたジャックなどの信号出力部35に接続されている。パイプ31のマイクロフォン33側端近傍には、音程調節部36が設けられている。音程調節部36は、ベル3の内壁に沿うようにしてパイプ31のマイクロフォン33側端に向かって外径および内径が小さくなっている。音程調節部36の大径側端36aは、開口している。音程調節部36の小径側端36bは、パイプ31のマイクロフォン33側端に固定されて閉塞している。
本実施形態による消音器1の特徴は、底部12の外壁(すなわち、本体部10の前端の外壁)にある。底部12の外壁には、ガイド部21が設けられている。ガイド部21は、消音器1を装着したホルンを支持する手の位置を案内するためのものである。ガイド部21は、底部12の外壁の一部を窪ませて形成したものである。ガイド部21は、その全領域においてほぼ一様に窪んでいる。ガイド部21と他の部分との境界近傍におけるガイド部21は、滑らかに窪んでいる。ガイド部21は、当該ガイド部21に手を当てたときに、手の厚さの半分程度がその窪みに収容される程度に窪んでいる。例えば、ガイド部21の深さ(窪みの深さ)は、5mm程度である。
本実施形態による消音器1の使用態様を説明しつつ、以下、ガイド部21の構成を詳細に説明する。消音器1の使用に際し、ユーザ(吹奏者)は、胴部11の小径側端11b側から消音器1をホルンのベル3内に挿入する。取り付け部14がベル3の内壁に当接することにより、消音器1は、ホルンに装着される。このとき、ユーザは、ホルンを構えたときに信号出力部35の上方に排気孔15が位置する姿勢となるように消音器1をホルンに装着する。消音器1のこの姿勢を、以下、便宜的に、装着姿勢と呼ぶ。
消音器1を装着した後、ユーザは、ホルンを支持して構える(図1(C)参照)。このとき、ユーザの右手は、消音器1の底部12の外壁に当たる。ガイド部21は、ホルンを適切な支え方で支持するときのユーザの右手が当たる位置に設けられている。
図1(B)は、装着姿勢でホルンに装着された消音器1の底部12を正面から見た状態を示している。この図1(B)を参照してガイド部21の位置を具体的に説明する。ガイド部21は、底部12の中心の信号出力部35と上方の排気孔15を各々避けて設けられている。より詳細に説明すると、底部12の外壁における排気孔15の縁の部分は、窪んでおらず、その排気孔15の縁が形成する前方の開口面は、底部12の外壁が形成する前方に突出した突曲面に含まれるようになっている。同様に、底部12の外壁における信号出力部35に隣接する部分は、窪んでおらず、その信号出力部35に隣接する部分が形成する前方の端面は、底部12の外壁が形成する前方に突出した突曲面に含まれるようになっている。ガイド部21は、底部12の外壁における排気孔15の縁と、底部12の外壁における信号出力部35に隣接する部分との両方を含まない位置であり、かつ、後述の位置、における底部12の外壁を窪ませることにより形成される。ガイド部21は、向かって信号出力部35の左上側、左側、左下側、下側、右下側の全域(以下、便宜のため、左下側の領域という)に亙って設けられている。また、ガイド部21は、信号出力部35と排気孔15との間の位置を通って左下側の領域から右側に延びている(以下、便宜のため、信号出力部35と排気孔15との間の領域という)。ガイド部21の信号出力部35と排気孔15との間の領域は、底部12の右縁に至っていない。
ユーザは、ホルンを支持するに際し、底部12の外壁を右手で触り、ガイド部21の位置を確認する。ガイド部21は窪んでいるため、ユーザは、ガイド部21と他の部分との境界を容易に認識することができ、ガイド部21の位置および形状を容易に認識することができる。そして、ユーザは、認識したガイド部21の位置および形状に従って、当該ガイド部21に右手を当てる。すなわち、ユーザの右手は、ガイド部21によって適切な支持位置へ案内される。
より具体的に説明すると、ガイド部21の信号出力部35と排気孔15との間の領域には、右手の親指が案内され、親指の内側がこの領域に当接する。一方、ガイド部21の左下側の領域には、右手の人差し指、中指、薬指および小指と手のひらが案内され、人差し指、中指、薬指および小指の各々の内側と手のひらがこの領域に当接する。
ユーザは、ガイド部21に各指の内側と手のひらを当てつつ、人差し指の指先、中指の指先、薬指の指先および小指の指先を胴部11とベル3との隙間に差し入れる。このとき、ユーザは、胴部11とベル3との隙間に、各指の指先からそれらの第1関節程度まで(以下、便宜のため、指の先という)を差し入れる。そして、ユーザは、ガイド部21に当てた各指および手のひらで消音器1をベル3内に押し込みつつ、胴部11とベル3との隙間に差し入れた人差し指、中指、薬指および小指の各々の指の先で消音器1を引き上げる。このようにして、ユーザは、消音器1を介してホルンを支持して構える。
このように、本実施形態による消音器1は、胴部11と、胴部11の前端を閉塞する底部12とから構成される本体部10を有している。底部12の外壁には、ホルンを支持する右手の位置を案内するガイド部21が設けられている。ガイド部21は、底部12の外壁の一部を窪ませることにより形成されている。このため、ユーザは、ガイド部21と他の部分との境界を容易に認識することができ、ガイド部21の位置を容易に認識することができる。ユーザは、ガイド部21により案内された位置に手を当ててホルンを支持することにより、適切な支え方でホルンを支持することができる。このため、不自然な支え方でホルンを支持することを回避することができ、不自然な支え方をして身体に負担がかかるのを回避することができる。従って、本実施形態による消音器1を使用することにより、消音器を装着したホルンの吹奏に支障が生じないようにすることができる。
また、ガイド部21は、本体部10内の空間と本体部10外の空間とを連通させる排気孔15を避けて設けられている。このため、排気孔15がホルンを支える右手によって塞がれることを回避することができる。排気孔15を介して排気される呼気を妨げないため、吹奏感が悪い状態で吹奏することを回避することができる。
また、ホルンの構造上、ユーザは、ホルンを構えるときにベル3内を直接見ることができない。本実施形態による消音器1では、底部12の外壁の一部を窪ませることによりガイド部21が形成されているため、ベル3内の消音器1を直接見なくても、底部12の外壁を手で触ることによりガイド部21を認識することができる。このため、ユーザは、ベル3内の消音器1を見ることなく、容易に適切な支え方でホルンを支持することができる。さらに、ユーザは、ベル3内の消音器1を見ることなく、排気孔15を避けてホルンを支持することができる。
<第2実施形態>
第1実施形態による消音器1は、消音器1を右手で押し込みつつ、その消音器1を引き上げるようにしてホルンを支持するユーザに好適な消音器であった。消音器が装着されたホルンの適切な支え方は、ユーザの手や指の大きさなどにより、第1実施形態に示した支え方の他にも種々考えられる。本実施形態による消音器1Aは、ホルンのベル3の端部を右手で引き上げるようにしてホルンを支持するユーザに好適な消音器である。
図2(A)は、この発明の第2実施形態による消音器1Aを前方から見たときの同消音器1Aの構成を示す正面図であり、図2(B)は、同消音器1Aをホルンに装着して吹奏したときの同消音器1Aの構成を示す斜視図である。本実施形態による消音器1Aは、底部12に代えて底部12Aを設けた点において第1実施形態による消音器1と異なる。底部12Aは、その外壁にガイド部21に代えてガイド部21Aが設けられている点において第1実施形態の底部12と異なる。
ガイド部21Aは、底部12Aの外壁を窪ませてなる部分である点、および排気孔15を避けて設けられる点において第1実施形態のガイド部21と同様である。ガイド部21Aは、当該ガイド部21Aが設けられる位置が第1実施形態のガイド部21と異なる。
本実施形態による消音器1Aの使用態様を説明しつつ、以下、ガイド部21Aの構成を詳細に説明する。消音器1Aの使用に際し、ユーザは、第1実施形態による消音器1と同様に、消音器1Aを装着姿勢でベル3内に装着する。
消音器1Aを装着した後、ユーザは、ホルンを支持して構える(図2(B)参照)。本実施形態によるガイド部21Aは、消音器1Aを装着したホルンを支持する手の位置を案内するためのものである点において第1実施形態によるガイド部21と同様であるが、ガイド部21が案内する手の部位とは異なる手の部位を案内する点において第1実施形態によるガイド部21と異なる。
図2(A)は、装着姿勢でホルンに装着された消音器1Aの底部12Aを正面から見た状態を示している。この図2(A)を参照してガイド部21Aの位置を具体的に説明する。ガイド部21Aは、向かって信号出力部35の下方に設けられている。ガイド部21Aと他の部分との境界は、信号出力部35から下方に向けて底部12Aの縁まで延ばした線の垂直2等分線近傍にあり、ガイド部21Aは、その垂直2等分線の下側のほぼ全域にある。
ユーザは、ホルンを支持するに際し、底部12Aの外壁を右手で触り、ガイド部21Aの位置を確認する。ガイド部21Aは窪んでいるため、第1実施形態と同様に、ユーザの右手は、ガイド部21Aによって適切な支持位置へ案内される。本実施形態では、ガイド部21Aには、右手の親指とその親指の付け根近傍の手のひらが案内され、親指の内側と親指の付け根近傍の手のひらがこのガイド部21Aに当接する。
ユーザは、ガイド部21Aに親指と親指の付け根近傍の手のひらを当てつつ、人差し指、中指、薬指および小指の各々の指の先(すなわち、各指の指先から第1関節程度まで)をベル3における下側の端部に掛ける。そして、ユーザは、ガイド部21Aに当てた親指およびその付け根近傍の手のひらで消音器1Aをベル3内に押し込みつつ、ベル3の端部に掛けた人差し指、中指、薬指および小指の各々の指の先でベル3を下側から引き上げる。このようにして、ユーザは、ホルンを支持して構える。
このように、本実施形態のガイド部21Aは、ホルンを支持する手の親指と親指の付け根近傍の手のひらの位置を案内する。ユーザが適切な支え方でホルンを支持することになる点において第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
<第3実施形態>
本実施形態による消音器1Bは、ベル3の端部近傍におけるベル3の内壁と消音器1Bとの両方に手を押し当ててホルンを支持する支え方を行うユーザに好適な消音器である。
図3(A)は、この発明の第3実施形態による消音器1Bを前方から見たときの同消音器1Bの構成を示す正面図であり、図3(B)は、同消音器1Bに手を当てたときの同消音器1Bの構成を示す正面図である。本実施形態による消音器1Bは、底部12に代えて底部12Bを設けた点において第1実施形態による消音器1と異なる。底部12Bは、その外壁にガイド部21に代えてガイド部21Bpおよび21Biが設けられている点において第1実施形態の底部12と異なる。なお、ガイド部21Bpおよび21Biを区別しないで説明する場合は、ガイド部21Bと表記する。
ガイド部21Bは、底部12Bの外壁を窪ませてなる部分である点、および排気孔15を避けて設けられる点において第1実施形態のガイド部21と同様である。ガイド部21Bは、当該ガイド部21Bが設けられる位置が第1実施形態のガイド部21と異なる。
本実施形態による消音器1Bの使用態様を説明しつつ、以下、ガイド部21Bの構成を詳細に説明する。消音器1Bの使用に際し、ユーザは、第1実施形態による消音器1と同様に、消音器1Bを装着姿勢でベル3内に装着する。
消音器1Bを装着した後、ユーザは、ホルンを支持して構える(図3(B)参照)。本実施形態によるガイド部21Bは、消音器1Bを装着したホルンを支持する手の位置を案内するためのものである点において第1実施形態によるガイド部21と同様であるが、ガイド部21が案内する手の部位とは異なる手の部位を案内する点において第1実施形態によるガイド部21と異なる。
図3(A)および(B)は、装着姿勢でホルンに装着された消音器1Bの底部12Bを正面から見た状態を示している。この図3(A)および(B)を参照してガイド部21Bの位置を具体的に説明する。ガイド部21Bpおよび21Biは、略楕円形状をなしている。ガイド部21Bpは、信号出力部35と底部12Bの左縁との中間近傍に位置している。ガイド部21Bpにおける下側部分は、その上側部分に比べ若干中央に寄っている。一方、ガイド部21Biは、信号出力部35と底部12Bの右縁との中間近傍に位置している。ガイド部21Biにおける下側部分は、その上側部分に比べ若干中央に寄っている。ガイド部21Biは、ガイド部21Bpに比べ、若干上方に位置している。
ガイド部21Bpの寸法は、親指の指の先(指先から第1関節程度まで)が当該ガイド部21Bpの窪みに収まる寸法となっている。例えば、ガイド部21Bpの短径は20mm程度であり、ガイド部21Bpの長径は30mm程度であり、ガイド部21Bpの中心の深さは5mm程度である。
ガイド部21Biの寸法は、人差し指の指の先(指先からその第1関節程度まで)が当該ガイド部21Biの窪みに収まる寸法となっている。例えば、ガイド部21Biの短径は15mm程度であり、ガイド部21Biの長径は25mm程度であり、ガイド部21Biの中心の深さは5mm程度である。
ユーザは、ホルンを支持するに際し、底部12Bの外壁を右手で触り、ガイド部21Bの位置を確認する。ガイド部21Bは窪んでいるため、第1実施形態と同様に、ユーザの右手は、ガイド部21Bによって適切な支持位置へ案内される。本実施形態では、ガイド部21Bpには、親指pの指の先が案内され、親指pの指の先の内側がこのガイド部21Bpに当接する。同様に、ガイド部21Biには、人差し指iの指の先が案内され、人差し指iの指の先の内側がこのガイド部21Biに当接する。ユーザは、各ガイド部21Bの寸法、位置および姿勢(下側部分が上側部分に比べ中央に寄っているなどの姿勢)により、各ガイド部21Bに対応する指を容易に認識することができる。また、案内された各指の姿勢(換言すると、各指が指し示す方向)は、各ガイド部21Bの位置および姿勢により、必然的に決定される。
ユーザは、ガイド部21Bpに親指pの指の先を当て、かつ、ガイド部21Biに人差し指iの指の先を当てつつ、中指の内側を底部12Bの下側の縁近傍に当て、薬指の内側と小指の内側とをベル3の端部近傍におけるベル3の内壁に当てる。そして、ユーザは、ガイド部21Bに当てた親指pおよび人差し指iで消音器1Bをベル3内に押し込みつつ、薬指および小指をベル3の内壁に押し当てる。このようにして、ユーザは、ホルンを支持して構える。
このように、本実施形態のガイド部21Bは、ホルンを支持する手の親指の指の先の位置および人差し指の指の先の位置を各々案内する。ユーザが適切な支え方でホルンを支持することになる点において第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
<第4実施形態>
本実施形態による消音器1Cは、右手の5指で消音器1Bをベル3内に押し込んでホルンを支持する支え方を行うユーザに好適な消音器である。
図4(A)は、この発明の第4実施形態による消音器1Cを前方から見たときの同消音器1Cの構成を示す正面図であり、図4(B)は、同消音器1Cに手を当てたときの同消音器1Cの構成を示す正面図である。本実施形態による消音器1Cは、底部12Bに代えて底部12Cを設けた点において第3実施形態による消音器1Bと異なる。底部12Cは、その外壁にガイド部21Bpおよび21Biに代えてガイド部21Cp、21Ci、21Cm、21Caおよび21Cchが設けられている点において第3実施形態の底部12Bと異なる。なお、ガイド部21Cp、21Ci、21Cm、21Caおよび21Cchを区別しないで説明する場合は、ガイド部21Cと表記する。
ガイド部21Cは、底部12Cの外壁を窪ませてなる部分である点、ユーザの指の先の位置を案内する点、および排気孔15を避けて設けられる点において第3実施形態のガイド部21Bと同様である。ガイド部21Cは、当該ガイド部21Cが設けられる位置が第3実施形態のガイド部21Bと異なる。
本実施形態による消音器1Cの使用態様を説明しつつ、以下、ガイド部21Cの構成を詳細に説明する。消音器1Cの使用に際し、ユーザは、第3実施形態による消音器1Bと同様に、消音器1Cを装着姿勢でベル3内に装着する。
消音器1Cを装着した後、ユーザは、ホルンを支持して構える(図4(B)参照)。本実施形態によるガイド部21Cは、消音器1Cを装着したホルンを支持する手の位置を案内するためのものである点において第3実施形態によるガイド部21Bと同様である。ガイド部21Cは、当該ガイド部21Cが案内する指の数が第3実施形態によるガイド部21Bと異なる。
図4(A)および(B)は、装着姿勢でホルンに装着された消音器1Cの底部12Cを正面から見た状態を示している。この図4(A)および(B)を参照してガイド部21Cの位置を具体的に説明する。ガイド部21Cp、21Ci、21Cm、21Caおよび21Cchは、各々略楕円形状をなしている。ガイド部21Cpは、信号出力部35と底部12Cの左縁との中間近傍に位置している。ガイド部21Cpにおける下側部分は、その上側部分に比べ若干中央に寄っている。一方、ガイド部21Ciは、信号出力部35の右側の信号出力部35に比較的近い位置に設けられており、ガイド部21Cmは、ガイド部21Ciよりも右側に設けられており、ガイド部21Caは、ガイド部21Cmよりも右側に設けられており、ガイド部21Cchは、ガイド部21Caよりも右側に設けられている。ガイド部21Ci、21Cm、21Caおよび21Cchの各々の下側部分は、その上側部分に比べ若干中央に寄っている。また、ガイド部21Ciは、ガイド部21Cpに比べ若干上方に位置しており、ガイド部21Cmは、ガイド部21Ciに比べ若干上方に位置しており、ガイド部21Caは、ガイド部21Cmに比べ若干下方に位置しており、ガイド部21Cchは、ガイド部21Caに比べ若干下方に位置している。
ガイド部21Cpの寸法およびガイド部21Ciの寸法は、第3実施形態のガイド部21Bpの寸法およびガイド部21Biの寸法と同様である。
ガイド部21Cmの寸法は、中指の指の先(指先から第1関節程度まで)が当該ガイド部21Cmの窪みに収まる寸法となっている。例えば、ガイド部21Cmの短径は15mm程度であり、ガイド部21Cmの長径は25mm程度であり、ガイド部21Cmの中心の深さは5mm程度である。
ガイド部21Caの寸法は、薬指の指の先(指先から第1関節程度まで)が当該ガイド部21Caの窪みに収まる寸法となっている。例えば、ガイド部21Caの短径は15mm程度であり、ガイド部21Caの長径は25mm程度であり、ガイド部21Caの中心の深さは5mm程度である。
ガイド部21Cchの寸法は、小指の指の先(指先から第1関節程度まで)が当該ガイド部21Cchの窪みに収まる寸法となっている。例えば、ガイド部21Cchの短径は15mm程度であり、ガイド部21Cchの長径は20mm程度であり、ガイド部21Cchの中心の深さは5mm程度である。
ユーザは、ホルンを支持するに際し、底部12Cの外壁を右手で触り、ガイド部21Cの位置を確認する。ガイド部21Cは窪んでいるため、第3実施形態と同様に、ユーザの右手は、ガイド部21Cによって適切な支持位置へ案内される。本実施形態では、ガイド部21Cpには、親指pの指の先が案内され、親指pの指の先の内側がこのガイド部21Cpに当接する。ガイド部21Ciには、人差し指iの指の先が案内され、人差し指iの指の先の内側がこのガイド部21Ciに当接する。ガイド部21Cmには、中指mの指の先が案内され、中指mの指の先の内側がこのガイド部21Cmに当接する。ガイド部21Caには、薬指aの指の先が案内され、薬指aの指の先の内側がこのガイド部21Caに当接する。ガイド部21Cchには、小指chの指の先が案内され、小指chの指の先の内側がこのガイド部21Cchに当接する。第3実施形態と同様に、ユーザは、各ガイド部21Cの寸法、位置および姿勢により、各ガイド部21Cに対応する指を容易に認識することができ、案内された各指の姿勢は、各ガイド部21Cの位置および姿勢により必然的に決定される。
ユーザは、ガイド部21Cに当てた5指で消音器1Cをベル3内に押し込む。これにより、ユーザは、消音器1Cを介してホルンを支持して構える。
このように、本実施形態のガイド部21Cは、ホルンを支える手の親指の指の先の位置、人差し指の指の先の位置、中指の指の先の位置、薬指の指の先の位置および小指の指の先の位置を各々案内する。ユーザが適切な支え方でホルンを支持することになる点において第3実施形態と同様である。
従って、本実施形態においても、第3実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、5指のすべてについて各々の指の先の位置を案内するガイド部21Cを設けていたが、5指のすべてについてのガイド部21Cを設けなくても良い。指の先の位置を案内するガイド部が少なくとも1つの指について設けられていると、そのガイド部の寸法、位置および姿勢により、当該ガイド部に対応する指の種類、その指の位置、およびその指の姿勢が決定され、他の指は、当該ガイド部に案内された指との関係により、その指の位置および姿勢が限られることとなる。従って、指の種類、指の先の位置および指の姿勢を決定することとなるガイド部を少なくとも1つの指について設けるようにすれば、ユーザは、適切な支え方でホルンを支えることができる。
<他の実施形態>
以上、この発明の第1〜第4実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記第1〜第4実施形態による消音器1〜1Cのガイド部21〜21Cは、底部12〜12Cの外壁の一部を窪ませて形成したものであった。しかし、ガイド部21〜21Cは、このようにして形成したものでなくても良い。以下の(1A)〜(1K)において、ガイド部の他の態様の例を説明する。
(1A)ガイド部は、底部の外壁の一部を一様に突出させて形成したものであっても良い。この態様においても、底部の外壁を触ることにより、突出しているガイド部と他の部分との境界を容易に認識することができ、突出しているガイド部の位置を容易に認識することができる。従って、第1〜第4実施形態と同様の効果を奏する。
(1B)ガイド部は、底部の外壁に細かな凹凸が設けられたものであっても良い。この細かな凹凸は、例えば、ゴルフボールの表面のような細かな窪みであっても良いし、点字のような細かな突起であっても良いし、これら細かな窪みと細かな突起を組み合わせたものであっても良い。この態様においても、底部の外壁を触ることにより、細かな凹凸により形成されたガイド部の位置を容易に認識することができる。従って、第1〜4実施形態と同様の効果を奏する。
(1C)ガイド部は、底部の外壁の一部を一様に窪ませて、さらに、その窪ませた部分に細かな凹凸を形成したものであっても良い。また、ガイド部は、底部の外壁の一部を一様に突出させて、さらに、その突出させた部分に細かな凹凸を形成したものであっても良い。この態様では、ガイド部をより容易に認識することができる。
(1D)ガイド部は、消音器の製造時に形成されても良いし、消音器の製造後に形成されても良い。消音器の製造後にガイド部が形成される例として、ガイド部と他の部分を区別する穴空きシールや凹凸のあるシールのようなものを用意し、ユーザがそのシールを既存の消音器の底部の外壁に貼り付ける、という態様が挙げられる。この態様では、そのシールが貼り付けられた底部の外壁を触ることにより、シールの穴の部分や凹凸の部分を容易に認識することができる。また、消音器の製造後にガイド部が形成される他の例として、使用すると筆跡が盛り上がるペンのようなものを用意し、ユーザがそのペンを既存の消音器の底部の外壁に使用する、という態様が挙げられる。この態様では、そのペンが使用された底部の外壁を触ることにより、盛り上がった筆跡部分をガイド部として容易に認識することができる。このように、消音器の製造後にガイド部が付加されるようにすると、第1〜第4実施形態と同様の効果に加え、既存の消音器を流用することができるという効果およびガイド部の位置をユーザ毎に細かく調整することができるという効果も奏する。
(1E)底部の外壁の一部の材質を他の部分の材質と異ならせることによりガイド部を形成しても良い。例えば、底部におけるガイド部はウレタンなどの柔らかい材質により形成され、他の部分は硬い材質により形成されるという具合である。この態様では、柔らかい材質により形成されたガイド部に手や指を押し当てるとその押し当てた部分は凹む一方、硬い材質により形成された他の部分に手や指を押し当ててもその押し当てた部分は変化しない。このため、底部の外壁を触ったときの感触や当該外壁の変形により、ガイド部の位置を容易に認識することができる。従って、第1〜4実施形態と同様の効果を奏する。
(1F)底部の外壁に凹凸を設け、かつ、底部の外壁の材質を異ならせることによりガイド部を形成しても良い。この態様においても、第1〜4実施形態と同様の効果を奏する。
(1G)底部の外壁の一部の摩擦係数を他の部分の摩擦係数と異ならせることによりガイド部を形成しても良い。例えば、底部の外壁の摩擦係数よりも摩擦係数が大きな材料を底部の外壁の一部に塗布することによりガイド部を形成する、という具合である。この態様では、ガイド部は他の部分に比べ滑り難くなる。このため、底部の外壁を触ったときの手の滑りやすさにより、ガイド部の位置を容易に認識することができる。このように、ガイド部の摩擦係数を他の部分よりも大きくすると、第1〜4実施形態と同様の効果に加え、消音器を介してホルンを支持する手が滑り難くなるため、より確実にホルンを支持することができるようになるという効果も奏する。
(1H)底部の外壁の一部の材質を他の部分の材質と異ならせることにより、当該底部の外壁の一部の摩擦係数を他の部分の摩擦係数と異ならせるようにしてガイド部を形成しても良い。この態様においても上記変形例(1G)と同様の効果を奏する。
(1I)消音器の製造後に、底部の外壁の一部の摩擦係数を他の部分の摩擦係数と異ならせることによりガイド部を形成しても良い。例えば、底部の外壁よりも摩擦係数が大きく、かつ、ガイド部の形状に加工されたゴムシートなどを用意し、ユーザがそのゴムシートなどを両面粘着テープなどを介して底部に貼り付ける、という具合である。この態様においても上記変形例(1G)と同様の効果を奏する。また、この態様では、既存の消音器を流用することができるという効果およびガイド部の位置をユーザ毎に細かく調整することができるという効果も奏する。
(1J)底部の外壁に凹凸を設け、かつ、底部の外壁の摩擦係数を異ならせることによりガイド部を形成しても良い。例えば、底部の外壁の一部を一様に窪ませ、かつ、その窪ませてなる部分に摩擦係数が大きいゴムシートなどを貼り付けることによりガイド部を形成する、という具合である。この態様では、第1〜4実施形態と同様の効果に加え、より確実にホルンを支持することができるようになるという効果も奏する。
(1K)底部の外壁に凹凸を設け、かつ、底部の外壁の材質を異ならせることにより底部の外壁の摩擦係数を異ならせるようにしてガイド部を形成しても良い。この態様においても上記変形例(1J)と同様の効果を奏する。
(2)上記各実施形態による消音器1〜1Cでは、底部12〜12Cの外壁(本体部の前端の外壁)にガイド部21〜21Cを設けていた。しかし、ガイド部は、底部近傍の胴部の外壁に設けられても良く、底部の外壁と底部近傍の胴部の外壁との両方に設けられても良い。ここで言う底部近傍の胴部の外壁とは、底部から指の先(指先から第1関節程度まで)の長さ程度に後退した位置と当該底部との間における胴部の外壁を言う。また、底部の外壁と底部近傍の胴部の外壁とを合わせた部分のことを、便宜のため、本体部の前端部の外壁と言う。すなわち、ガイド部は、本体部の前端部の外壁に設けられていれば良い。
より詳細に説明する。第1実施形態では、胴部11とベル3との隙間に人差し指、中指、薬指および小指の各々の指の先を差し入れて消音器1を引き上げていた。本変形例におけるガイド部は、例えば、第1実施形態のようにして当該隙間に差し入れた人差し指等の指の先が当たる位置における胴部の外壁に設けられる。ユーザは、人差し指等で底部近傍の胴部の外壁を触ることで、ガイド部を容易に認識でき、ユーザの右手は、適切な支持位置へ案内される。このため、この態様においても、上記各実施形態と同様に、消音器を装着したホルンの吹奏に支障が生じないようにすることができる。また、例えば、底部の外壁に第1実施形態によるガイド部を設け、かつ、底部近傍の胴部の外壁に人差し指等の指の先の位置を案内する前述のガイド部を設けるようにしても良い。このようにすると、ユーザの右手は、より容易および確実に適切な支持位置へ案内される。
(3)上記各実施形態では、消音器1〜1Cの装着時に底部12〜12Cがベル3の端面近傍に位置していた。しかし、消音器の装着時に本体部の一部(例えば、本体部の前端部(変形例(2)参照))がベルの端面から突出する消音器にガイド部を設けても良い。この態様のガイド部は、ベルの端面から突出している本体部の前端部の外壁に排気孔を避けて設けられる。このため、上記各実施形態と同様に、ユーザが適切な支え方でホルンを支持することができ、排気孔が手によって塞がれることを回避することができる。
(4)上記各実施形態による消音器1〜1Cは、マイクロフォン33、信号線34および信号出力部35を有していた。しかし、これらマイクロフォン33等の電装部品を有さない消音器にガイド部を設けても良い。この態様においても上記各実施形態と同様の効果を奏する。この態様では、信号出力部35を避けてガイド部を設ける必要は元々ない。
(5)上記各実施形態による消音器1〜1Cは、呼気を排気する排気孔15が底部12に設けられている消音器の底部12にガイド21を設けたものであった。しかし、底部に呼気を排気する排気孔がなく胴部の外壁とベルの内壁との隙間に呼気を排気するための排気口を設けた消音器の底部にガイド部を設けても良い。この態様では、胴部の外壁とベルの内壁との隙間の排気口が手によって塞がれる虞は元々なく、ユーザに適切な支え方でホルンを支持させることができることにかわりはない。従って、この態様の消音器を使用することにより、消音器を装着したホルンの吹奏に支障が生じないようにすることができる。
(6)消音器が装着されたホルンの適切な支え方は、ユーザの手や指の大きさなどにより、上記各実施形態に示した支え方の他にも種々考えられる。このため、ガイド部は、上記各実施形態に示した位置に設けられるものに限られない。
(7)上記各実施形態では、ホルン用の消音器1〜1Cについて説明した。しかし、それ以外の管楽器に用いる消音器においても同様な技術的思想で消音器を設計することができる。例えば、メロフォンに用いる消音器が挙げられる。メロフォンの吹奏者は、通常、左手でベルの端部近傍を支持しながら吹奏する。メロフォンに消音器を装着して吹奏すると、ベルの端部近傍を支持する左手が消音器に接触することがある。このため、メロフォン用の消音器では、メロフォンを適切な支え方で支持するときの吹奏者の左手が当たる位置にガイド部を設けるようにすれば良い。このようにガイド部を設けることにより、上記各実施形態によるホルン用の消音器1〜1Cと同様の効果を奏する。