JP6189574B1 - 家畜用乳頭口保護パッチ - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献3には、「乳牛の乾乳期において、乳房炎に感染しやすい乾乳期の初めの約2日〜9日程度の間、及び分娩前約2日〜9日程度の間、乳頭を乳頭シール剤に浸漬して乳頭に乳頭口を閉塞する薄膜を形成した状態に保持しておく」という手段が提案されている。かかる手段により、乳房炎起因菌の感染が物理的に阻止され、乳牛の乳房炎を予防することができるというものである。このような特許文献3には、乳頭シール剤中の膜形成成分として、ウレタンゴム、ラテックスゴム、ブタジエン樹脂、ポリビニルアルコール、液状ブチルゴム、液状ゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、酢酸ビニルゴム等のゴム材料が例示されている。即ち、これらのゴム材料をトルエン、キシレンなどの溶媒に溶解せしめ、この溶液(乳頭シール剤)に乳頭を浸漬することにより、ゴム材料の膜を乳頭に形成するのである。
しかしながら、乳頭は、先端の乳頭口に近づくほど細くなっているという形態を有しているため、上記のような可撓性フィルムを乳頭に巻き付けた場合、肝心の乳頭口部分での密着性を十分に確保できない場合が多く、乳頭口とフィルムとの間に空隙が生じ易いという問題がある。このような空隙の形成は、当然、乳頭口の保護性を低下させ、この空隙部分から細菌等の原因菌が侵入するおそれがあり、さらには、フィルムが乳頭から剥がれ易くなってしまう。
本発明の他の目的は、乳頭口を覆うように乳頭に密着保持させる作業を容易に行うことが乳頭の保護材料を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記の保護材料を用いて家畜の乳頭を保護する方法を提供することにある。
(1)前記積層体の粘着剤層とは反対側の表面に、剥離性の保護フィルムが積層されており、前記粘着剤層表面には、離型シートが貼り付けられていること、
(2)前記弾性シートが、ポリウレタン製であること、
(3)前記弾性シートが着色されていること、
が好適である。
(1)前記円の直径または楕円の長軸は、5〜40mm、特に10〜40mmの長さを有していること、
という態様が態様され、さらに、
(2)前記積層体には、その外周部から、中心部に向かって延びている少なくとも一つの切り込み部が形成されていること、
という態様も好適に採用される。
(1)前記積層体は、線対称の平面形状を有しており、且つ該線対称の軸となる縦軸線と該縦軸線に直交し且つ該積層体の縦軸方向最大長さを2等分する横軸線との交点を中心とする円形もしくは楕円形の乳頭口貼付け部と、該乳頭口貼付け部から外方に延びている複数の乳頭側面貼り付け部とを有しており、該乳頭口貼付け部は、少なくとも前記縦軸線または横軸線を間に挟んだ複数個所で外部に露出していること、
(2)前記積層体は、直線同士が交わるコーナー部を有していない平面形状を有していること、
(3)前記乳頭口貼付け部を形成している円の直径または楕円形の長軸が、5〜40mm、特に10〜40mmの長さを有していること、
(4)前記乳頭側面貼り付け部は、外方に向かって広がった形状を有していること、
(5)前記積層体の平面形状について、矩形状の仮想外接四辺形を形成した時、該外接四辺形の長辺の長さが30〜200mmの範囲にあり且つ短辺の長さが20〜150mmの範囲にあること、
が好適である。
かかる方法においては、上記の乳頭口保護パッチを貼り付ける前に、殺菌消毒剤を乳頭口に塗布するか、又は殺菌消毒剤を乳管に注入することが好適である。
また、乳頭に貼り付けられた保護パッチ(積層体)は、乳頭に対する密着性に優れているばかりか、適度な弾性を有しており、家畜の動作に伴う乳頭の変形に追随するように伸縮する。従って、乳頭に貼り付けられた保護パッチが非常に剥がれ難く、細菌等による感染をし易いといわれている一定の期間、乳頭口を確実に保護することができる。
さらに、この乳頭口保護パッチは、乳頭口を覆うように乳頭に貼り付けられるものであり、乳頭に巻きつけて固定するものではない。このため、乳頭の先端部分である乳頭口と保護パッチの間に十分な密着性が確保されており、乳頭口と保護パッチとの間に空隙を生じ難く、細菌等の感染から乳頭口を確実に保護することができる。
さらに、この保護パッチには、殺菌剤や保湿剤、漏乳検出剤等の機能性付与剤の層を設けることにより(或いは機能性付与剤を粘着剤層に配合することにより)、酪農家のニーズに応じた機能を付与することが可能である。
本発明において、上記の積層体1は、2倍伸張引張応力が0.1〜5N、特に0.2〜3N、最も好ましくは0.2〜1.0Nの範囲にあることが重要である。
この2倍伸張引張応力は、この積層体1の長さを2倍の長さに伸張させるために必要な応力であり、後述する実施例で示すように、引張試験機を用いて測定される。この応力には方向性はなく、何れの方向に2倍の長さに伸張させた場合にも、上記範囲の値を示すということである。
なお、2倍伸長引張応力を限定した理由は、以下の通りである。粘着剤層を有する積層体1は、乳頭に貼付する際、若干引延ばして貼付する場合がある。また、乳頭に貼付された後、家畜が動き回ったり、乳頭の大きさが変化して、貼付後の積層体1が引延ばされる場合がある。このように引延ばされることを考慮して、積層体1が2倍に伸長した時の応力を限定した。つまり、2倍に伸長した積層体1の応力を限定すれば、引延ばされることを想定した積層体1の乳頭への形状追随性を評価できる。
上記の積層体1を構成する弾性シート2は、この上に粘着剤層3を設けて積層体1としたときに、2倍伸張引張応力が上記範囲となるような弾性材料により形成される。
このような弾性材料としては、これに限定されるものではないが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、酢酸ビニル系エラストマー、軟質塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマーの中でも、後述する保護フィルム5に対する粘着保持性に優れ、さらには、上記範囲の2倍伸張引張応力が得られるように物性を調整することが容易であることから、ポリウレタンが好適である。即ち、所定の範囲の2倍伸張引張応力を確保するためには、上記ポリマーについて、そのモノマー組成(共重合比)、結晶性、分子量、可塑剤含量などを適宜の範囲に調整し、且つ物性に応じてシートの厚みを調整すればよい。このような物性調整や厚み調整により2倍伸張引張応力を調整した場合、ポリウレタンにより弾性シート2を形成したときには、厚みを過度に薄くせずに、所定の2倍伸張引張応力を得ることができる。例えば、積層体1の厚みを前述した範囲内として2倍伸張引張応力を所定の範囲内とするためには、ポリウレタンを用いて弾性シート2を形成することもが最も好適である。このようなポリウレタン製の弾性シート2は、特に後述する保護フィルム5を格別に粘着剤などを使用せずに、直接粘着固定し得るという点でも有利である。
また、ポリウレタン製の弾性シート2を用いることにより、以下の利点もある。乳頭へ貼付した積層体1の最外面にある弾性シート2は、それ自体に粘着性があり、弾性シート2の面同士が接着し易い。そのため、積層体1に浮き・シワが入ったとしても、浮き・シワが入った部分の弾性シート2を、弾性シート2の乳頭に密着している部分に押圧するなどして接着させることにより、両者が強固に接着して、浮き・シワを低減できる。その結果、乳頭からの剥がれを少なくできるものと考えられる。
さらには、弾性シート2を着色し、弾性シート2の色の違う複数の積層体1を準備することにより、以下のような使い方も可能となる。牛などは、通常、一頭に4つの乳頭が存在する。例えば、そのうち細菌等で完成されて治療が必要と思われる乳頭に貼付する積層体1と、正常な乳頭に貼付される積層体1との色を変えることにより、効率のよい治療が可能となる。また、治療が必要と思われる家畜と、健常な家畜とで、乳頭に貼付する積層体1の色を変えることもできる。
さらに、家畜の乳頭に積層体1を貼付した日によって積層体1の色を変えれば、例えば、牛などの家畜であれば、乾乳期に入ってから何日たったか等の管理がし易くなる。
つまり、色分けした積層体1を使用することにより、各家畜の状態を把握することもできるようになる。
粘着剤層3は、上述した弾性シート2の一方の面に積層され、乳頭に対する貼付け面となるものである。
このような粘着剤層3は、弾性シート2に加え、乳頭に対しても接着性を示し、使用後には乳頭から速やかに引き剥がすことが可能な粘着力を示すようなものである限り、公知の粘着剤により形成されていればよい。
このような粘着剤は、絆創膏等に使用されているものであり、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系のものがあるが、特に家畜の乳頭に対して安全であり且つかぶれ等が生じないという点で、(メタ)アクリレート系の粘着剤が好適である。
弾性シート2の他方の面に積層されている保護フィルム5は、保管時での弾性シート2の変形を防止し、また、貼り付け作業時での弾性シート2同士の接着を防止し、貼り付け作業を容易に行うために設けられるものである。
即ち、本発明の乳頭パッチ10は、離型シート7を粘着剤層3から引き剥がし、保護フィルム5が設けられたままの状態で粘着剤層3の少なくとも一部を乳頭に貼付け、この状態で保護フィルム5が積層体1気相体1(弾性シート2)から引き剥がされ、次いで、手での押圧等により、粘着剤層3の全体が乳頭に粘着固定される。勿論、積層体1の大きさによっては、粘着剤層3の全体を乳頭に貼り付けた後、保護フィルム5が積層体1から引き剥がされる。
また、前記の通り、保護フィルム5は、粘着剤を介さずに弾性シート2と接合していることが好ましい。また、保護フィルム5の弾性シート2からはみ出している部分5aは、粘着剤を介さずに下記に詳述する剥離シート7と接合していることが好ましい。積層体1を乳頭に貼付する際には、先ず、下記に詳述する剥離シート7を剥がして、粘着剤層3を直接乳頭へ貼り付ける。その後、保護フィルム5を剥がすが、この際、剥がす保護フィルム5に粘着剤が付着していないことにより、保護フィルム5の剥離が容易になり、手などに保護フィルム5が付くことなく、操作性をより向上できる。
離型シート7は、製造時や保管時等において、粘着剤層3同士の接着を防止するためのものであり、乳頭への貼り付け作業時には引き剥がされるものである。
従って、この離型シート7は、未使用時に粘着剤層3に保持されているが容易に引き剥がし可能なものであればよく、例えばシリコーンペーパなどの離型紙である。
また、この離型シート7は、粘着剤層3を確実に覆うために、粘着剤層3よりも若干大きいものであるが、引き剥がし作業を容易に行うために、図1に示されているように、中央部分に切り込み線7aが設けられており、中央部分で完全に分断されていることが望ましい。すなわち、剥離シート7が中央部分で完全に分断できることにより、以下のような貼付の仕方が可能となる。先ず、一方の剥離シート7を積層体1(保護フィルム5付き)から剥がし、剥がした部分の粘着剤層3を乳頭に貼り付ける。次いで、もう一方の剥離シート7を積層体1(保護フィルム5付き)から剥がし、もう一方の剥がした部分の粘着剤層3を乳頭に貼り付ける。このような多段階での貼付が可能となる。一回で剥離シート7を全て剥がして操作する場合には、家畜が動いたりした場合に、粘着剤層3同士が接着する可能性が高くなるが、多段階で貼付することにより、粘着剤層3同士が接着する可能性を低減できる。この多段階での貼付方法は、柔らかい弾性シート2を使用する本発明の積層体1を使用する場合に、特に適している。
そして、このような多段階の操作を行う場合であっても、保護フィルム5が粘着剤を有さない場合には、該保護フィルム5の剥離が容易となり、操作性を向上できる。
上述した構造を有する本発明の乳頭パッチ10は、殺菌消毒剤、保湿剤、漏乳検査剤、忌避剤などの薬剤により所定の機能が加えられたものであってよい。
上記の薬剤は、上述した弾性シート2や粘着剤層3の機能を損なわない限りにおいて、弾性シート2や粘着剤層3中に配合されていてもよいし、弾性シート2や粘着剤層3の表面にコートされていてもよく、さらには、粘着剤層3がブリーディング性を有していることから、弾性シート2と粘着剤層3との界面に、これらの薬剤を塗布しておくこともできる。
ヨウ素化合物としては、例えばヨウ素、ポピドンヨウ素、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨードホルムなどが挙げられる。
このような忌避剤は、一般に、弾性シート2の表面(粘着剤層3とは反対側の面)に塗布される。かかる忌避剤の使用により、アブやハチなどの牛に危害を加える昆虫から乳頭を保護することができる。
上述した本発明の乳頭パッチ10は、離型シート7が及び保護フィルム5が剥がされた状態で、図2に示されているように、積層体1を、粘着剤層3を介して乳頭口を覆うように貼り付けて使用され、これにより、乳頭口を保護し、乳頭口からの細菌等の感染を防止し、乳房炎などの疾病を予防する。
このような乳頭への貼り付けに先立って、前述した殺菌消毒剤を乳頭口に塗布する或いは殺菌消毒剤を乳管に注入するという手段も採用することができる。
上述した本発明の乳頭パッチ10は、積層体1の形状(平面形状)によって、乳頭口貼り付けタイプ(α)と乳頭側面貼り付けタイプ(β)に分類されることは、既に述べたとおりである。
乳頭口貼り付けタイプ(α)の乳頭パッチ10は、図3に示されているように、積層体1が、円形(図3(a)参照)或いは楕円形(図3(b)参照)の平面形状を有しており、このような積層体1は、前述したように、弾性シート2と粘着剤層3とから形成されており、さらに、弾性シート2の上には保護フィルム5が積層され、粘着剤層3には離型シート7が貼り付けられて販売される。
例えば、この積層体1は、円の直径d或いは楕円の長軸dの長さが5〜40mm、特に10〜40mmの長さを有している。また、楕円形の場合には、その短軸d’の長さは、該長軸dの長さの50〜90%程度の長さであることが好ましく、絶対値であれば、短軸d’の長さは2.5mm以上であることが好ましく、さらには4mm以上であることが好ましい。
また、このような切り込み13の形成により乳頭に対する粘着力が低下しないように、切り込み13の各々の大きさ(面積)を適宜のものとすると同時に、乳頭に対する粘着力にムラが生じないように、複数の切り込み13は、対称的に配置されていることが望ましい。
乳頭側面貼り付けタイプ(β)の乳頭パッチ10は、積層体1が全体として、非円形且つ非楕円形の平面形状を有しているが、その代表的な平面形状が図5に示されている。
尚、図5及び以降で説明する他の図において、中心部に位置する乳頭口貼付け部21と側面貼り付け部23とは異なるハッチングで示されているが、これは作図上判り易くするためであって、実際は、乳頭口貼付け部21と側面貼り付け部23とが明確に区分けされているものではなく、これらは、積層体1の全体の形状から認識されるものである。
また、離型シート7が剥がされた積層体1は、乳頭口貼付け部21を乳頭口に貼り付けた状態で、保護フィルム5を引き剥がしながら側面貼り付け部23を折り曲げながら乳頭側面に粘着固定される。従って、乳頭への貼り付け性も良好である。
即ち、このように側面貼り付け部23を形成することは、隣り合う乳頭口貼付け部23の間に適当な間隔が形成されていることを意味し、これにより、隣り合う側面貼り付け部23が互いにくっつかないように折り曲げられ、貼り付け作業性が良好なものとなる。
即ち、上記のような大きさの仮想外接四辺形Qを形成できるということは、この乳頭パッチ10は、乳頭の側面に巻きつけて粘着固定するものではなく、乳頭口に乳頭口貼付け部21を貼り付けた状態で側面貼り付け部23を折り曲げて乳頭側面に粘着固定されるものであること意味している。巻き付けて固定するタイプのものは、所謂長尺形状となるために、上記のような大きさの仮想外接四辺形Qを形成することはできない。
このような形態を有する本発明の保護パッチ10は、乳頭の側面に巻き付けて固定するものではないため、乳頭口に貼り付けられている部分にシワなどが発生し難く、乳頭口と積層体1(粘着剤層3)の間での空隙形成を有効に抑制することができ、乳頭口をしっかりと保護することができる。
これに対して、図6における積層体1は、全体として花弁状の形態を有しており、3つの同じ形状の側面貼り付け部23が形成されている。
図7における積層体1も、全体として花弁状の形態を有しているが、この場合は、4つの同じ形状の側面貼り付け部23が形成されており、全体として点対称の形状を有している。
図8における積層体1は、乳頭口貼付け部21が楕円形であり、2つの大きな側面貼り付け部23aと、2つの小さな側面貼り付け部23bとが形成されている。
図9における積層体1は、全体としてアンカー形状を有しており、矩形状に延びている側面貼り付部23aと、この側面貼り付部23aに対向する位置に、大きな裾広がりの側面貼り付け部23bが形成されている。
図10における積層体1は、全体としてH型形状を有しており、中心部分に円形の乳頭口貼付け部21が形成され、横軸線Yに沿って、矩形に近い形状の2つの側面貼り付け部23が、互いに対向する位置に形成されている。
なお、当然のことではあるが、図6〜図10で例示した形状の積層体1においても、矩形状の仮想外接四辺形(図6〜10においてQで示されている)において、その長辺Q1の長さが30〜200mmの範囲にあり、且つ短辺Q2の長さが20〜100mmの範囲にあることが好適である。
上記の仮想外接四辺形Qが所定の大きさとなる範囲で、貼り付け作業を行い易く、また、所定の保護期間経過後において、乳頭からの引き剥がし作業が行い易いように、側面貼り付け部23の数や大きさが適宜のものに設定される。
また、図5〜図10で例示したような乳頭側面貼り付けタイプ(β)において、矩形状の仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体1の面積は、40〜98%となることが好ましい。積層体1の面積が100%に近づくほど、短形状の該外接四辺形Qと同じ形状になるが、積層体1がこの面積範囲を満足することにより、作業性が向上し、かつ貼付後の浮き・シワ等の発生を抑制することができる。さらに作業性を向上させ、貼付後の積層体1の状態をよりよく保つためには、矩形状の仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体1の面積は、55〜95%となることがより好ましく、55〜80%となることが最も好ましい。
図5〜図10は代表例であるが、乳頭側面貼り付けタイプ(β)の積層体1を用いることにより、家畜の個体差によらず、10日以上、好ましくは2週間程度、乳頭に密着して剥離し難く、確実に乳頭口を保護することができる。その結果、例えば、牛においては、乾乳期の感染をより確実に防ぐことが可能となる。
このような保護パッチ10(積層体1)は、例えば、図11に示されているように、乳頭口貼付け部21が乳頭口を覆うように乳頭口に粘着固定され、側面貼り付け部23は、折り曲げられ、乳頭側面に粘着固定される。また、図11に示されているように、側面貼り付け部23が大きく広がった形態のものでは、乳頭側面において、この側面貼り付け部23がオーバーラップした部分25が形成され、しっかりと乳頭側面に粘着固定されることとなる。このオーバーラップした部分25の最大幅Lは、乳頭の大きさ、形状等により最適値が異なるため、一概に限定できない。ただし、操作性が良好で、より確実に密着性を高め、シワを少なくするためには、該最大幅Lは、2mm以上45mm以下となることが好ましく、3mm以上30mm以下となることがより好ましく、3mm以上15mm以下となることがさらに好ましい。このオーバーラップした部分25は、乳頭に積層体1を貼付する際に、該積層体1を少し引伸ばして貼付することにより、形成することもできる。
尚、実施例及び比較例で行った各種測定は、以下の方法で行った。
測定装置として、島津製作所製引張試験機(型番;EZ Test/EZ−SX)を用いた。
JIS K7127:1999に準じ、チャック間距離20mm、引張速度50mm/min、サンプル幅(積層体の幅)20mmの条件で、試料片の積層体について、2倍伸張時の引張応力及び引張弾性率を測定した。
なお、積層体は粘着剤層を有しているため、粘着剤層同士を張り合わせた2枚の積層体について、2倍伸張時の引張応力値の半分の値を、1枚の積層体の引張応力として求めた。
図12に示すような哺乳バケツ用乳首(天然ゴム製)を疑似乳頭として用い、上記方法で作製した乳頭口保護パッチを疑似乳頭先端部に貼付し、貼付直後、および貼付後(7日後)の乳頭口上でのシワの状態を目視評価した。
尚、図12における数値の単位はmmである。
上述のように、疑似乳頭先端部に乳頭口保護パッチを貼付後(7日後)の疑似乳頭先端部を、酪農家より入手した牛舎の敷料に使用されている土状物に約10秒間浸漬させた。
その後、試料片である乳頭口保護パッチを疑似乳頭先端部が汚染されないように慎重に剥離し、乳頭口保護パッチを貼付けていた乳頭口に当たる部分約1cm2を綿棒(Promedia ST−25、エルメックス社製)によりふき取り、10mLの生理食塩水に綿棒を浸漬させた。
その内の1mLを培地(好気性菌用培地、6400AC、3M社製)に滴下し、37℃で48時間培養した。培養後、培地中のコロニー数をカウントし、1個の細菌が1個のコロニーを形成すると仮定し、コロニー数から上記10mLの生理食塩水中の細菌数を、下記式より算出した。
コロニー数×10=細菌数
求めた細菌数を以下の基準に従い評価した。一般的には、1000個/cm2未満であれば清潔に保たれていると判断できる。その結果を以下の基準で判断した。
◎:細菌数が100個/cm2未満。
細菌数が極めて少なく、パック内部が極めて清浄に保たれている。
○:細菌数が100個/cm2以上1000個/cm2未満。
細菌数が少なく、パック内部が清潔に保たれている。
△:細菌数が1000個/cm2以上10000個/cm2未満。
細菌数はやや多めだが、外部の細菌数よりは少ない。
×:10000個/cm2以上。
細菌数が多く、パックによる細菌数低減効果が確認できない。
なお、外部の細菌数(土の中にいる細菌数)は、ばらつきがあるものの概ね10000個/cm2以上である。
ホルスタイン種の乳牛3頭を用い、各乳牛の乳頭4か所の先端部(乳頭口)に、試料片である保護パッチ(積層体)を図2に示すように貼付し、粘着維持性を評価した。
尚、今回試験を実施したホルスタイン種の牛3頭は、全て乾乳牛である。また、乳牛の個体差を考慮し、保護パッチを貼りつける乳牛を7日後に入れ替えて粘着維持性を評価した。なお、保護パッチを貼りつける前に、乳頭先端部に付着した汚れや皮脂をウェットティッシュで拭き取りを行った。
保護パッチの付着状態を、下記の基準に従って4段階で評価した。
3:乳頭からの保護パッチの剥離や浮が見られない。
2:保護パッチの端部が浮いた状態にある。
1:保護パッチの端部が完全に剥離している。
0:保護パッチ全体が完全に剥離している。
実施例及び比較例において、以下の表1に示す積層体A、B、Cを、保護パッチとして用いた。
なお、積層体A、B、Cの粘着剤層は、何れもアクリル系粘着剤を用いて形成されている。
以下の実験は、タイプ(α)の乳頭パッチの評価のために行ったものである。
表1における積層体Aをカッティングし、直径dが15mmの円形の乳頭口保護パッチ(タイプ(α)の乳頭パッチ)を作製した。
この乳頭パッチについて、疑似乳頭を用いての乳頭貼付試験を行ったところ、貼付直後、貼付後(7日後)であってもシワは観察されなかった。さらに、前述した方法で、疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表3に示した。
尚、比較のために、積層体Aを直径50mmの円形に切り出し、これを疑似乳頭に貼り付けたところ、若干乳頭曲面貼付部にシワが発生した。このシワは、最外層の弾性シート2同士を接着させることにより目立たなくした。
実施例1−1で作製された円形の積層体に、図4のように切り込み部を4箇所入れた乳頭パッチ(タイプ(α))を作製した。切り込み部は、切り込み長さ2mm、切り込み幅1mmとして、切り込み部が等間隔になるように配置した。得られた乳頭パッチを使用して、疑似乳頭での貼付試験及び細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
積層体Bを使用した以外は、実施例1−1と同様に乳頭パッチを作製し、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
積層体Aをカッティングして、直径30mmの円形の乳頭パッチ(タイプ(α))を作製した以外は、実施例1−1と同様に、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
積層体Cを使用した以外は、実施例1−1と同様に乳頭パッチを作製し、疑似乳頭での貼付試験結果及び疑似乳頭での細菌数測定を行い、その結果を表2に示した。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表3に示した。
以下の実験は、タイプ(β)の乳頭パッチの評価のために行ったものである。
表1における積層体Aを使用して、図5に示す線対称形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは80mm、短辺Q2の長さは55mm、とした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は77%であった。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例1−1と同様に、疑似乳頭貼付試験を行い、その結果を表4に示した。尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約8mmであった。
また、実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表5に示した。
この実施例2−1の貼り付け作業性を基準として、他の実施例についての貼り付け作業性の評価も行ったが、その評価基準は、以下のとおりである。
◎:実施例2−1と同レベルで貼付け作業を容易に行うことができた。
〇:実施例2−1ほどではないが、問題なく貼付け作業を行うことができた。
△:乳頭への貼り付けは問題なく行うことができたが、乳頭側面部に対する貼付け作業性に難があった。
尚、比較のために、側面貼り付け部23の最大幅(短辺Q2)の長さを少し短くし、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25が形成されず、側面貼り付け部23間に7mm程度の隙間が形成するような大きさとしたとき、この保護パッチについて実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行うと、7日を過ぎると、乳頭からの剥離が生じるようになった。
表1における積層体Aを使用して、図6に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは20mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは90mm、短辺Q2の長さは80mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は62%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは45mmとした。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約13mmであった。
表1における積層体Aを使用して、図7に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは20mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは90mm、短辺Q2の長さは90mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は67%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは45mmとした。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約11mmであった。
表1における積層体Aを使用して、図8に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、楕円形の乳頭口貼付け部21の長軸dの長さは35mm、仮想外接四辺形の辺Q1及びQ2の長さは何れも90mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は80%であった。
また、側面貼り付け部23aの最大幅wは50mm、側面貼り付け部23bの最大幅wは25mmとした。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表5に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約14mmであった。
表1における積層体Aを使用して、図9に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1は100mm、短辺Q2は80mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は50%であった。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約5mmであった。
表1における積層体Bを使用して、図5に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは80mm、短辺Q2の長さは55mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は77%であった。
また、側面貼り付け部3の最大幅wは40mmとした。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約8mmであった。
<実施例2−7>
表1における積層体Aを使用して、図10に示す形状の乳頭パッチを作製した。ここで、円形の乳頭口貼付け部21の直径dは25mm、仮想外接四辺形の長辺Q1の長さは100mm、短辺Q2の長さは60mmとした。なお、仮想外接四辺形Qの面積を100%としたとき、積層体Aの面積は92.5%であった。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
尚、図11のように疑似乳頭に貼り付けたとき、そのオーバーラップ部25の最大幅は約9mmであった。
表1における積層体Cを使用した以外は、実施例2−1と全く同様の形状の乳頭パッチ(図5の形態)を作製した。
この乳頭パッチについて、図11に示されているように、疑似乳頭に貼付け、実施例2−1と同様に、疑似乳頭貼付試験、並びに実際の乳牛を用いてのパッチ粘着維持性評価を行い、その結果を表4及び表6に示した。
2:弾性シート
3:粘着剤層
5:保護フィルム
7:離型シート
10:乳頭口保護パッチ
21:乳頭口貼付け部
23:乳頭側面貼り付け部
25:オーバーラップ部
Q:外接四辺形
X:対称軸線(縦軸)
Y:縦軸と直交する横軸線
Claims (13)
- 家畜の乳頭口を含む部分に貼り付けられる乳頭口保護パッチであって、弾性シートと該弾性シートの一方の面に積層された粘着剤層との積層体を含み、該積層体の2倍伸張引張応力が0.1〜5Nの範囲にあることを特徴とする乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体は、円形または楕円形の平面形状を有しており、該円の直径または該楕円の長軸は、5〜40mmの長さを有している請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体には、その外周部から、前記円または楕円の中心に向かって延びている少なくとも一つの切り込み部が形成されている請求項2に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体は、少なくとも線対称の平面形状を有しており、且つ該線対称の軸となる縦軸線と該縦軸線に直交し且つ該積層体の縦軸方向最大長さを2等分する横軸線との交点を中心とする円形もしくは楕円形の乳頭口貼付け部と、該乳頭口貼付け部から外方に延びている複数の乳頭側面貼り付け部とを有しており、該乳頭口貼付け部は、少なくとも前記縦軸線または横軸線を間に挟んだ複数個所で外部に露出している請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体は、直線同士が交わるコーナー部を有していない平面形状を有している請求項4に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記乳頭口貼付け部を形成している円の直径または楕円形の長軸が、5〜40mmの長さを有している請求項5に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記乳頭側面貼り付け部は、外方に向かって広がった形状を有している請求項4に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体の平面形状について、矩形状の仮想外接四辺形を形成した時、該外接四辺形の長辺の長さが30〜200mmの範囲にあり且つ短辺の長さが20〜150mmの範囲にある請求項4に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記積層体の粘着剤層とは反対側の表面に、剥離性の保護フィルムが積層されており、前記粘着剤層表面には、離型シートが貼り付けられている請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記弾性シートが、ポリウレタン製である請求項1に記載の乳頭口保護パッチ。
- 前記弾性シートが着色されている請求項1に記載の乳頭保護口保護パッチ。
- 請求項1に記載の乳頭口保護パッチの粘着剤層側の面を家畜の乳頭口を覆うように乳頭に貼り付けることを特徴とする家畜の乳頭口を保護する方法。
- 請求項1に記載の乳頭口保護パッチを貼り付ける前に、殺菌消毒剤を乳頭口に塗布するか、又は殺菌消毒剤を乳管に注入する請求項12に記載の家畜の乳頭を保護する方法。
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