JP6183513B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、滞留熱安定性が改善された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。本発明はまた、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性、寸法安定性、透明性等に優れるために、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等、幅広い用途に使用されている。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、成形過程で熱を受けることにより劣化し、樹脂の分解による分子量の低下、黄変といった問題が起こる。芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量の低下で、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の優れた耐衝撃性等の機械特性が損なわれ、また、黄変は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の透明性を利用した用途においては商品価値を損なう重大な問題となる。
一方で、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する場合、射出成形機のシリンダー内に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を充填してから溶融樹脂を射出するまでの保持時間を長く確保できることは、生産計画(成形サイクル)の自由度を大きくすることができ、また、予期せぬトラブル発生時にも余裕をもって対応できるなど、樹脂組成物の滞留熱安定性は、工業的な生産において非常に重要な改善項目である。
従来、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性を改善するために、熱安定剤を配合することが行われており、例えば、特許文献1には、熱安定剤としてスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤を配合することで黄変を抑制することが記載されている。
特開2013−139097号公報
特許文献1の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であれば、ある程度の黄変抑制効果は得られるが、十分ではなく、更なる滞留熱安定性の改善が望まれる。
本発明は、滞留熱安定性に優れ、高温条件下での滞留による分子量低下や黄変が抑制された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するべく、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する熱安定剤について鋭意研究を重ねた結果、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤とスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤とを併用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、安定剤(B)として、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)0.005〜0.03質量部と、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)0.005〜0.05質量部とを含有し、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)とスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)の含有重量比が、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1):スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)=1:0.5〜1.8であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[2] [1]において、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)が、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン環を有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] [1又は2において、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)が下記一般式(II)で表されることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006183513
(式(II)中、R10A及びR10Bはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で5分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(5)、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(20)としたときに、下記式(1)で算出されるYI値の増加量ΔYIが0.3以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
ΔYI=YI(20)−YI(5) (1)
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットに含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(0)、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる成形品に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(20)としたときに、下記式(2)で算出される粘度平均分子量の低下量ΔMvが1000以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
ΔMv=Mv(0)−Mv(20) (2)
] [1]ないし[]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
] 自動車用照明カバーである[]に記載の成形品。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は滞留熱安定性に優れ、高温条件下での滞留による分子量低下や黄変の問題が殆どない。
このため、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、例えば射出成形による成形品の製造において、成形サイクルの自由度を大きくとることができ、生産ラインの状況に柔軟に対応して効率的な成形を行うことが可能となる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形品は、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等、幅広い用途に有用であるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は滞留熱安定性に優れ、成形時、成形機内の滞留時間が長い場合であっても、樹脂の分解による分子量低下や黄変の問題が少なく、耐衝撃性等の機械特性、色相に優れた成形品を得ることができることから、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品は、特に、耐衝撃性等の機械特性や透明性、色相が重視されるレンズカバー、照明カバー等の分野において好適に使用される。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物よりなる成形品は、とりわけ自動車用照明カバーとして好適に使用される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔芳香族ポリカーボネート樹脂組成物〕
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、安定剤(B)として、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)0.005〜0.1質量部と、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)0.005〜0.1質量部とを含有することを特徴とする。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は分岐を有するものになる。
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル及びイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、15,000〜30,000であることが好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が15,000未満である場合、得られる成形品の機械的強度が不足し、十分な機械的強度を有するものを得ることができない場合がある。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が30,000を超える場合、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が大きくなるため、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する際に優れた流動性を得ることができず、また、樹脂の剪断による発熱量が大きくなり、熱分解により樹脂が劣化する結果、優れた色相を有する成形品を得ることができない場合がある。
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量はより好ましくは17,000〜28,000であり、さらに好ましくは18,000〜25,000である。
ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
[安定剤(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤(B)として、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)(以下「(B−1)成分」と称す場合がある。)と、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)(以下「(B−2)成分」と称す場合がある。)とを含有することを特徴とする。
<スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)>
スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)としては、スピロ環骨格を有するフェノール系化合物であればよく、特に制限はないが、スピロ環として下記式(Ia)で表される2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン環を有するものが好ましく、特に下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
Figure 0006183513
(式(I)中、R1A,R1B,R3A,R3B,R4A,R4Bは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5A,R5Bは、それぞれ独立に、アルキレン基を表す。)
上記一般式(I)において、R1A,R1B,R2A,R2Bは、好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖又は分岐の低級アルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
3A,R3B,R4A,R4Bは好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はt−ブチル基である。
また、R5A,R5Bは、好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1〜4の低級アルキレン基であり、より好ましくはエチレン基である。なお、R5A,R5Bのアルキレン基は、更に置換基としてアルキル基を有していてもよい。
一般式(I)において、R1A=R1B、R2A=R2B、R3A=R3B、R4A=R4B、R5A=R5Bで、スピロ環の中心炭素原子に対して、左右対称の化合物であることが好ましい。
このようなスピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)としては、具体的には下記構造式(I−1)で表される3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが挙げられる。
Figure 0006183513
上記の(B−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)>
スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)としては、スピロ環骨格を有するホスファイト系化合物であればよく、特に制限はないが、例えば、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
Figure 0006183513
(式(II)中、R10A及びR10Bはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
上記一般式(II)中、R10A,R10B表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。R10A,R10Bがアリール基である場合、以下の一般式(II−a)、(II−b)、又は(II−c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。
Figure 0006183513
(式(II−a)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。式(II−b)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
前記一般式(II)で表されるスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(II−1)は、下記一般式(II−1)で表される化合物であってもよい。
Figure 0006183513
(式(II−1)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、R19〜R22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
上記一般式(II−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが好ましく、また、a〜dは、0であることが好ましい。
スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)としては、例えば、下記構造式(II−A)で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトや、下記構造式(II−B)で表されるビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
Figure 0006183513
上記の(B−2)成分は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
<安定剤(B)の含有量>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、上記の(B−1)成分の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.005〜0.1質量部である。(B−1)成分の含有量が0.005質量部未満であると、十分な滞留熱安定性の改善効果を得ることができない。(B−1)成分の含有量が0.1質量部を超えると、成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の光透過率が低下するおそれがある。(B−1)成分の含有量は好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.008〜0.08質量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.05質量部である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、上記の(B−2)成分の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.005〜0.1質量部である。(B−2)成分の含有量が0.005質量部未満であると、十分な滞留熱安定性の改善効果を得ることができない。(B−2)成分の含有量が0.1質量部を超えると、成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の光透過率が低下するおそれがある。(B−2)成分の含有量は好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.008〜0.08質量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.05質量部である。
(B−1)成分と(B−2)成分とは、これらを併用することによる滞留熱安定性改善効果をより確実に得るために、両者をバランスよく用いることが好ましく、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(B−1)成分と(B−2)成分との含有重量比は、(B−1)成分:(B−2)成分=1:0.5〜2の範囲であることが好ましく、1:0.6〜1.8の範囲であることがより好ましく、1:0.7〜1.6の範囲であることがさらに好ましい。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(B−1)成分と(B−2)成分の合計の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.01〜0.15質量部であることが好ましく、0.02〜0.12質量部であることがより好ましく、0.03〜0.1質量部であることがさらに好ましい。
[脂肪酸エステル(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び安定剤(B)の他、離型剤として脂肪酸エステル(C)を含んでいてもよい。
脂肪酸エステル(C)は脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物である。
脂肪酸エステル(C)を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸が挙げられる。ここで、脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノカルボン酸又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸及びアゼライン酸などが挙げられる。
一方、上記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらのアルコールの中でも、炭素数30以下の一価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコール又は多価アルコールがさらに好ましい。ここで、脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
上記アルコールとしては、例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記脂肪酸エステル(C)としては、例えば蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、硬化油、ブチルステアレート、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
上記脂肪酸エステル(C)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が上記の脂肪酸エステル(C)を含む場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.03〜0.3質量部であることが好ましい。脂肪酸エステル(C)の含有量が0.03質量部未満である場合、得られる成形品の離型性が不十分になる傾向がある。一方、脂肪酸エステル(C)の含有量が0.3質量部を超える場合は、成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、得られる成形品の光透過率が低下するおそれがある。上記脂肪酸エステル(C)の含有量は、より好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し0.06〜0.25質量部であり、さらに好ましくは0.08〜0.2質量部である。
[紫外線吸収剤(D)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤(D)を含有することが好ましい場合がある。紫外線吸収剤(D)を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性を向上させることができる。
紫外線吸収剤(D)としては、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
サリシレート化合物としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
オギザニリド化合物としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には、クラリアントジャパン社製「PR−25」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「B−CAP」等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤(D)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が紫外線吸収剤(D)を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001〜3質量部、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。紫外線吸収剤(D)の含有量が上記下限未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が上記上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
[その他の成分]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分としてさらに酸化防止剤、離型剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば最終成形品を成形するまでの任意の段階で、各成分を一括又は分割して配合し、溶融混練する方法が挙げられる。各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を使用する方法などが挙げられる。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形方法には特に制限はないが、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられ、好ましくは射出成形法である。
なお、成形時の樹脂の熱劣化を抑制し、初期色相に優れたものを得るために、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で成形を行ってもよい。
〔成形品〕
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形品は、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等、幅広い用途に有用であるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は滞留熱安定性に優れ、成形時、成形機内の滞留時間が長い場合であっても、樹脂の分解による分子量低下や黄変の問題が少なく、耐衝撃性等の機械特性、色相に優れた成形品を得ることができることから、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品は、特に、耐衝撃性等の機械特性や透明性、色相が重視されるレンズカバー、照明カバー等の分野において好適に使用される。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物よりなる成形品は、とりわけ自動車用照明カバーとして好適に使用される。
[ΔYI]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、滞留熱安定性に優れ、熱滞留過程での黄変が抑制される。例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で5分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(5)、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(20)としたときに、下記式(1)で算出されるYI値の増加量ΔYIが好ましくは0.3以下であるような、耐熱黄変性に優れるものである。このΔYIはより好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下である。
ΔYI=YI(20)−YI(5) (1)
なお、成形品のYI値は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
[ΔMv]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、滞留熱安定性に優れ、熱滞留過程での樹脂の分解による分子量低下が小さいものである。例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットに含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(0)、このペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる成形品に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(20)としたときに、下記式(2)で算出される粘度平均分子量の低下量ΔMvが好ましくは1000以下というような耐熱分解性に優れるものである。このΔMvはより好ましくは900以下、さらに好ましくは700以下である。
ΔMv=Mv(0)−Mv(20) (2)
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下、実施例、参考例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 芳香族ポリカーボネート樹脂:界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量21,500)
[安定剤(B)]
<フェノール系安定剤(B−1)>
ADEKA社製「アデカスタブAO−80」:前記構造式(I−1)で表される3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが挙げられる。(表1,2中、「AO−80」と記載する。)
<その他のフェノール系安定剤>
ADEKA社製「アデカスタブAO−60」:下記構造式で表されるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート(表1,2中、「AO−60」と記載する。)
Figure 0006183513
<ホスファイト系安定剤(B−2)>
ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」:前記構造式(II−A)で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(表1,2中、「PEP−36」と記載する。)
Properties&Characteristics社製「Doverphos S−9228」:前記構造式(II−B)で表されるビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(表1,2中、「S−9228」と記載する。)
<その他のホスファイト系安定剤>
ADEKA社製「アデカスタブ2112」:下記構造式で表されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(表1,2中、「2112」と記載する。)
Figure 0006183513
<脂肪酸エステル(C)>
コグニスジャパン社製「ロキシオールVPG861」:ペンタエリスリトールテトラステアレート(表1,2中、「VPG861」と記載する。)
<紫外線吸収剤(D)>
シプロ化成社製「シーソーブ709」:2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(表1,2中、「シーソーブ709」と記載する。)
[実施例1〜6、参考例7,8及び比較例1〜9]
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
表1,2に示す成分を表1,2に示す割合となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物を得た。この混合物を、フルフライトスクリューとベントとを備えた単軸押出機(いすず化工機社製「VS−40」)に供給し、スクリュー回転数80rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
<特性評価>
上記のようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物について、以下の評価を行い、結果を表1,2に示した。
(1)YI値
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを120℃で4〜8時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(FANUC社製「ROBOSHOT−S−2000i 150B」)を使用して射出温度340℃、シリンダー内滞留時間5分、金型温度80℃で、70mm×40mm×2mm厚さの成形品を成形した。この成形品について、日本電色工業(株)製色彩計「SE−2000」を使用して厚さ2mmのYI値を測定した。このYI値を「YI(5)」とする。
別に、シリンダー内滞留時間を20分としたこと以外は上記と同様に射出成形を行って、同様に厚さ2mmのYI値を測定した。このYI値を「YI(20)」とする。
下記式(1)よりΔYIを算出した。
ΔYI=YI(20)−YI(5) (1)
(2)ΔMv
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットについて、以下の方法で粘度平均分子量」を測定した。この値を「Mv(0)」とする。
別に、上記YI(20)の測定時と同様に、シリンダー内滞留時間20分で射出成形を行って成形品を得、この成形品について、同様に粘度平均分子量を測定した。この値を「MV(20)」とする。
下記式(2)よりΔMvを算出した。
ΔMv=Mv(0)−Mv(20) (2)
<粘度平均分子量の測定方法>
溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−40.83の式から算出した。ここで極限粘度([η])とは各溶液濃度(C)(g/dl)での比粘度(ηsp)を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 0006183513
Figure 0006183513
Figure 0006183513
表1,2より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、滞留熱安定性に優れ、熱滞留過程での分子量低下、及び黄変が抑制されていることが分かる。
これに対して、フェノール系安定剤とホスファイト系安定剤が共に本発明の規定を満たさない比較例1〜3や、フェノール系安定剤及びホスファイト系安定剤のうちの一方が本発明の規定を満たさない比較例4〜6、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)とスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)のうちの一方のみを用いた比較例7〜9では、滞留熱安定性が劣り、熱滞留過程での分子量低下、及び黄変の問題がある。

Claims (7)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、
    安定剤(B)として、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)0.005〜0.03質量部と、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)0.005〜0.05質量部と
    を含有し、
    スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)とスピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)の含有重量比が、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1):スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)=1:0.5〜1.8であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 請求項1において、スピロ環骨格を有するフェノール系安定剤(B−1)が、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン環を有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2において、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤(B−2)が下記一般式(II)で表されることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006183513
    (式(II)中、R10A及びR10Bはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
  4. 請求項1ないしのいずれか1項において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で5分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(5)、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる2mm厚さの成形品について測定したYI値をYI(20)としたときに、下記式(1)で算出されるYI値の増加量ΔYIが0.3以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    ΔYI=YI(20)−YI(5) (1)
  5. 請求項1ないしのいずれか1項において、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットに含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(0)、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを340℃で20分間保持した後に射出成形して得られる成形品に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量をMv(20)としたときに、下記式(2)で算出される粘度平均分子量の低下量ΔMvが1000以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    ΔMv=Mv(0)−Mv(20) (2)
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  7. 自動車用照明カバーである請求項に記載の成形品。
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