以下、本開示に係る受信装置の実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して説明する。本実施形態の受信装置は、無線LANの通信規格(例えばIEEE802.11ad)に対応した情報通信端末であり、例えばスマートフォン又はタブレット端末である。但し、本実施形態の受信装置は、スマートフォン又はタブレット端末に限定されない。
図1は、本実施形態の受信装置100の内部構成を簡略に示すブロック図である。図2は、本実施形態の受信装置100の内部構成を簡略に示すブロック図である。図1に示す受信装置100は、受信アンテナAntが接続された高周波信号処理回路RFCと、アナログデジタル変換部104と、信号検出部DTSと、ゲイン制御部GCNTと、電力推定部111と、復調部112と、復号部113と、誤り検出部114とを含む。
高周波信号処理回路RFCは、低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)101と、周波数変換部(MIX:mixer)102と、可変増幅器(VGA:Variable Gain Amplifier)103とを有する。信号検出部DTSは、電力演算部105と、相関演算部106と、信号検出判定部107とを有する。ゲイン制御部GCNTは、待受けゲイン設定部108と、ゲイン探索範囲設定部109と、ゲイン決定部110とを有する。
以下、図1又は図2に示す受信装置100の各部の動作について説明する。
受信アンテナAntは、受信装置100の通信相手である外部(例えば不図示の送信装置)から送信された高周波信号(例えばミリ波)を受信する。受信アンテナAntにおいて受信された高周波信号は高周波信号処理回路RFCに入力される。
高周波信号処理回路RFCは、ゲイン制御部GCNTにより決定されたゲイン(合算ゲインG)を用いて、受信アンテナAntにおいて受信された高周波信号を増幅する。高周波信号処理回路RFCは、受信装置100における局部発振信号(ローカル信号、不図示)を用いて、受信アンテナAntにおいて受信された高周波信号をベースバンド信号に変換する。ベースバンド信号は、アナログデジタル変換部104に入力される。
低雑音増幅器101は、ゲイン決定部110により決定された低雑音増幅器101のゲインを用いて、受信アンテナAntにおいて受信された高周波信号を増幅して周波数変換部102に出力する。
周波数変換部102は、受信装置100における局部発振信号(ローカル信号、不図示)を用いて、低雑音増幅器101により増幅された高周波信号の周波数をダウンコンバートし、高周波信号をベースバンド信号に変換して可変増幅器103に出力する。
可変増幅器103は、ゲイン決定部110により決定された可変増幅器103用のゲインを用いて、周波数変換部102から出力されたベースバンド信号を増幅してアナログデジタル変換部104に出力する。
アナログデジタル変換部104は、可変増幅器103により増幅されたアナログのベースバンド信号を量子化することにより、デジタルのベースバンド信号にAD(Analog Digital)変換して電力演算部105、相関演算部106及び復調部112に出力する。
受信装置100は、後述する待受けゲイン設定部108が待受けゲインGsを設定した後に、受信信号の待受け状態に移行する。以下、受信信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104において量子化された受信信号を「量子化受信信号」と定義する。また、待受けゲイン設定部108における待受けゲインGsの設定処理の詳細については、図6を参照して後述する。
信号検出部DTSは、受信信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104からの出力、即ち、量子化受信信号の電力演算値と量子化受信信号の相互相関値とを基に、信号の検出の有無を判定する。信号検出部DTSは、信号を検出したと判定すると、信号を検出したことを通知するキャリアセンス信号を出力する。
具体的には、信号検出判定部107は、第1の信号検出の判定基準として、電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力演算値を用い、第2の信号検出の判定基準として、相関演算部106により演算された量子化受信信号と予め保持している既知系列(後述参照)との相互相関値とを用いる。信号検出判定部107は、量子化受信信号の電力演算値と、量子化受信信号と既知系列(後述参照)との相互相関値とを用いて、信号の検出の有無を判定する。信号検出判定部107は、信号を検出した場合の検出方法(即ち、電力検出又は相関検出のどちらにより信号が検出されたと判定したか)を示す信号検出情報をゲイン探索範囲設定部109に通知する。
また、信号検出判定部107は、信号を検出したと判定すると、信号を検出したことを通知するキャリアセンス信号を出力し、更に、検出された信号が後述する自システムからの信号であると判定した場合には、検出された信号を復調させるための制御信号を復調部112に出力する。信号検出判定部107の具体的な判定動作の詳細については、図7を参照して後述する。
以下、電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力演算値によって、信号の検出が判定された場合の信号検出方法を「電力検出」と定義し、相関演算部106により演算された量子化受信信号と予め保持している既知系列(後述参照)との相互相関値によって、信号の検出が判定された場合の信号検出方法を「相関検出」と定義する。
電力演算部105は、待受けゲインGsが設定された後に、例えば量子化受信信号の振幅を二乗して一定時間のサンプル(例えば16サンプル)を平均化することにより、量子化受信信号の電力Prqを演算して信号検出判定部107、待受けゲイン設定部108、ゲイン決定部110及び電力推定部111に出力する(図4(B)参照)。図4(B)は、電力検出の説明図である。電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力Prqが所定の電力閾値Prq_thを超える場合に、信号検出判定部107は、信号を検出したと判定する。
なお、信号検出判定部107は、量子化受信信号の電力Prqを用いた電力検出により、自システム(例えば受信装置100と同一の通信規格(IEEE802.11ad)に対応した送信装置、以下同様。)から送信された信号以外に、他システム(例えば受信装置100と異なる通信規格に対応した送信装置、以下同様。)からの干渉信号も検出できる。
図4(B)では、受信装置100が信号を受信したタイミングにおいて、信号と熱雑音とを合わせた合算電力値が、受信信号の時間長に対して、比較的短時間に立ち上がるので、信号検出の瞬時性が高く、即ち、信号の検出に要する時間が短い。例えば、量子化受信信号の電力が熱雑音の電力に対して十分に大きく、通信相手との通信路における受信強度の強さを示す受信SNR(Signal-to-Noise Ratio)が高い場合には、信号と熱雑音とを合わせた合算電力値の立ち上がりが早い。但し、受信SNRが低くなるにつれ、量子化受信信号の電力が熱雑音の電力より相対的に小さくなるため、信号と熱雑音とを合わせた合算電力値の立ち上がりが遅くなり、信号検出のタイミングが遅くなる。
相関演算部106は、量子化受信信号と予め保持している既知系列(トレーニング系列)との間の相互相関値を演算し、相互相関値を信号検出判定部107に出力する。トレーニング系列とは、例えばIEEE802.11adでは、図3に示すパケットの先頭に付加されるプリアンブルPRBを構成するゴレイ系列(Golay Sequence)であるが、ゴレイ系列に限定されない。図3は、本実施形態の受信装置100が受信するパケットの構造と、パケットに付加される誤り検出符号との説明図である。
受信装置100の通信相手である送信装置(不図示)は、先頭にプリアンブルPRBを付加したパケットを送信する。プリアンブルPRBは、複数のトレーニング系列A1,A2〜ANが結合された構成である。
相関演算部106は、複数のトレーニング系列A1〜ANを保持し、量子化受信信号のプリアンブルPRB内の複数のトレーニング系列A1〜ANと予め保持している複数のトレーニング系列A1〜ANとの間の相互相関値Rrqを演算する(図4(A)参照)。図4(A)は、相関検出の説明図である。相関演算部106により演算された量子化受信信号とトレーニング系列A1〜ANとの相互相関値Rrqのピークが、図4(A)に示す相関閾値Rrq_thを超える場合に、信号検出判定部107は、信号を検出したと判定する。
なお、自システムからの信号、つまり、自システムに含まれる通信相手である送信装置からの信号が受信装置100において受信された場合には、相関演算部106により演算された相互相関値Rrqのピークは相関閾値Rrq_thを超えるが、他システムからの干渉信号が受信装置100において受信された場合には、相関閾値Rrq_thを超える相互相関値Rrqのピークは出現しない。これにより、信号検出判定部107は、相関演算部106における相関検出により、量子化受信信号が自システムからの信号であるか、又は他システムからの干渉信号、つまり、自システムのパケットフォーマットと異なる信号であるかを判定できる。
また、相関演算部106は、トレーニング系列として相互相関値のサイドローブの抑圧特性が高い既知系列を用いることにより、相互相関値RrqのピークのSNRを向上できる。例えば、IEEE802.11adにおいて用いられるゴレイ系列は、相互相関値Rrqのサイドローブの抑圧特性が高い。
サイドローブを理想的に抑圧できる系列であれば、相互相関値RrqのピークのSNRは、論理上、量子化受信信号のSNRの系列長倍になる。例えば、系列長が128シンボルであれば、SNRが128倍になる。量子化受信信号のSNRが小さい場合でも、相互相関値RrqのピークのSNRは大きいので、相互相関値Rrqを用いた信号検出精度は高い。
一方、トレーニング系列を構成するシンボルが、受信装置100によって全て受信されるまで、相関演算部106における相互相関値Rrqのピークは出現しない。例えば図4(A)では、トレーニング系列A1〜ANそれぞれを構成するシンボル数が128シンボルである場合には、相互相関値Rrqのピークの出現は、量子化受信信号の受信開始時から128シンボル後となる。即ち、相関検出を用いた信号検出の判定には、待機時間が必要となる。
ゲイン制御部GCNTは、受信信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104において量子化された熱雑音の電力を監視する。以下、受信信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104において量子化された熱雑音を「量子化雑音信号」と定義する。
ゲイン制御部GCNTは、後述する電力推定部111により推定された量子化前の信号の電力の推定値Prと、後述する誤り検出部114の誤り検出結果とを用いて、信号検出判定部107により検出された信号、即ち、量子化受信信号の電力Prqに応じたAGC処理におけるゲイン探索範囲を調整する。
ゲイン制御部GCNTは、信号検出判定部107により信号の検出が判定された後に、量子化受信信号のレベルの変動幅がアナログデジタル変換部104のダイナミックレンジに収まるように、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインを制御する。
待受けゲイン設定部108は、受信信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104から出力された量子化雑音信号の電力Pnを監視する。待受けゲイン設定部108は、量子化雑音信号の電力Pnが所定の待受電力目標値Pn_targetとなるように、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインを決定する。
待受電力目標値Pn_targetは、例えばアナログデジタル変換部104の出力振幅が最大となる電力の所定割合(例えば3割)とする。以下、待受け状態における低雑音増幅器101のゲインと可変増幅器103のゲインとの和を「待受けゲインGs(Standby Gain)」という。
待受けゲイン設定部108は、量子化雑音電力Pnが待受電力目標値Pn_targetとなるように待受けゲインGsを大きな値に調整する。待受けゲインGsを大きな値に調整するのは、量子化前の受信信号の電力が小さくても、低雑音増幅器101及び可変増幅器103において増幅することで、アナログデジタル変換部104の量子化分解能以上の大きさに調整し、量子化受信信号の電力Prqを電力検出するためである。待受けゲイン設定部108の具体的なAGCの動作の詳細については、図8を参照して後述する。
ゲイン探索範囲設定部109は、電力推定部111により推定された量子化前の信号の電力の推定値Prと、後述する誤り検出部114の誤り検出結果とを用いて、信号検出判定部107により検出された信号、即ち、量子化受信信号の電力Prqに応じたAGC処理におけるゲイン探索範囲を調整して設定する。AGC処理におけるゲイン探索範囲とは、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインのゲイン探索範囲である。ゲイン制御部GCNTのゲイン探索範囲設定部109の具体的な動作については、図9〜図14を参照して後述する。
ゲイン決定部110は、後述するゲイン探索範囲設定部109により設定されたゲイン探索範囲において、待受けゲイン設定部108により設定された待受けゲインGs(後述参照)と電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力Prqとを用いて、AGC処理を実行する。
言い換えると、ゲイン決定部110は、ゲイン探索範囲設定部109により設定されたゲイン探索範囲において、信号検出判定部107により検出された信号、即ち、量子化受信信号の電力Prqが所定の受信電力目標値Prq_targetとなるように、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインを決定する。以下、低雑音増幅器101のゲインと可変増幅器103のゲインとの和を「合算ゲインG」という。
ゲイン決定部110は、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインを決定した後、低雑音増幅器101のゲインを低雑音増幅器101に設定し、更に、可変増幅器103のゲインを可変増幅器103に設定する。受信電力目標値Prq_targetは、例えばアナログデジタル変換部104の出力振幅が最大となる電力の所定割合(例えば6割)とする。なお、受信電力目標値Prq_targetは、後述する待受電力目標値Pn_targetより高い。
ゲイン決定部110は、量子化受信信号の電力Prqが受信電力目標値Prq_targetより小さければ合算ゲインGを大きくし、量子化受信信号の電力Prqが受信電力目標値Prq_targetより大きければ合算ゲインGを小さくする。AGC処理の規定時間以内に量子化受信信号の電力Prqが受信電力目標値Prq_targetに達しなければ、AGC処理がタイムアウトしたとして、ゲイン決定部110は、AGC処理を強制的に終了する。ゲイン決定部110の具体的なAGC処理の動作の詳細については、図8を参照して後述する。
電力推定部111は、ゲイン制御部GCNTにおけるAGC処理、即ち、ゲイン決定部110における合算ゲインGの決定と、低雑音増幅器101及び可変増幅器103への各ゲインの設定とが完了した後に、ゲイン決定部110により決定された合算ゲインGと、電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力Prqとを用いて、アナログデジタル変換部104において量子化される前の信号の電力を推定する。電力推定部111は、電力の推定値Prをゲイン制御部GCNTのゲイン探索範囲設定部109に出力する。
ここで、電力推定部111における受信信号の電力の推定値Prは、例えばAGCが完了(収束)した後の量子化受信信号の電力Prqと、AGCが収束した後の合算ゲインGとを用いて、数式(1)により示される。
復調部112は、信号検出判定部107が出力した制御信号に応じて、アナログデジタル変換部104により量子化された量子化受信信号を復調し、復調結果を復号部113に出力する。復調部112は、信号検出部DTS及びゲイン制御部GCNTにおけるAGCが収束した後に、ヘッダHEDの領域、ペイロードPLDの領域の順に復調する。
復号部113は、復調部112の復調結果に対して所定の誤り訂正復号処理を実行し、送信装置から送信された情報ビットIBTを復元して後段に出力する。
誤り検出部114は、復号部113により復元された情報ビットIBTのヘッダ情報に対して所定の誤り検出処理を実行する。誤り検出部114は、ヘッダ情報に対する誤り検出結果をゲイン探索範囲設定部109に通知する。
本実施形態では、誤り検出部114がヘッダ情報及びペイロード情報の受信誤りを検出できるように、送信装置(不図示)は、情報ビットIBTに所定の誤り検出符号ERDを付加してから受信装置100に送信する。誤り検出符号ERDには、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号が用いられる。
本実施形態では、誤り検出符号ERDは、図3に示すパケットにおいてヘッダHEDに対応して付加される。図3に示すヘッダHEDは、ペイロードPLDの復調に必要となる制御情報が格納されたフィールドである。ペイロードPLDは、プリアンブルPRB及びヘッダHEDに格納される制御情報以外の情報データ、例えば、画像データである。
本実施形態では、送信装置(不図示)は、外部雑音による受信誤りの耐性を高めるために、所定の誤り検出符号ERDをヘッダHEDに対して付加し、更に、ヘッダHEDに格納されるヘッダ情報を変調する。例えば、送信装置は、誤り検出符号ERDとして、符号化率の低い誤り訂正符号化を実行し、ヘッダ情報の変調として、多値数の小さい変調方式を用いる。
例えば、IEEE802.11adでは、ヘッダHEDの誤り耐性を高めるためのヘッダフォーマットが用いられる。このため、ヘッダHEDは外部雑音による誤り耐性が高いため、外部雑音による受信誤りの発生確率は低い。即ち、ヘッダHEDの領域に対する受信誤りが発生した場合には、復調部112の復調の開始が遅れたことによる受信誤りである確率が高い。
また、本実施形態では、送信装置は、誤り検出符号ERDが付加されたヘッダ情報に対して、ペイロード情報に対して実行する誤り訂正符号よりも訂正能力が高い第一の誤り訂正符号を付加する。送信装置は、ペイロード情報に対しては、ヘッダ情報に対して付加する誤り訂正符号よりも訂正能力が低い第二の誤り訂正符号を付加する。
(受信装置100における受信処理の全体的な動作の概要)
次に、本実施形態の受信装置100の受信処理の全体的な動作手順について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態の受信装置100における受信処理の全体的な動作手順の一例を説明するフローチャートである。
図5において、受信装置100は、先ず待受けゲイン設定部108において、待受けゲインGsを設定する(S1)。待受けゲイン設定部108における待受けゲインGsの設定処理の詳細については、図6を参照して説明する。受信装置100は、待受けゲインGsを設定した後、送信装置(不図示)からの信号を待ち受ける(S2)。
受信装置100は、信号検出判定部107が送信装置からの信号を検出しなければ(S3、NO)、信号を検出するまで、待ち受け期間となる(S2)。
一方、受信装置100は、信号検出判定部107が送信装置からの送信信号を初めて検出、つまり、受信した場合には(S3及びS4、YES)、ゲイン探索範囲設定部109において、初回受信信号(所望信号の初回受信)に応じたAGC処理のゲイン探索範囲を設定する(S5)。ゲイン探索範囲設定部109における初回受信信号に応じたAGC処理のゲイン探索範囲の設定処理の詳細については、図9を参照して説明する。なお、送信装置からの送信信号とは、図3のパケット及び誤り検出符号を含む信号である。
また、受信装置100は、初回受信信号に応じたAGC処理のゲイン探索範囲を設定した後、又は、信号検出判定部107が同一の送信装置からの送信信号を2回目以降に検出した場合には(S3−YES、S4−NO)、ゲイン決定部110において、アナログデジタル変換部104により量子化された量子化受信信号に対してAGC処理を実行する(S6)。ゲイン決定部110におけるAGCの詳細については、図8を参照して説明する。
受信装置100は、アナログデジタル変換部104により量子化された量子化受信信号に対してAGC処理を実行した後、復調部112において量子化受信信号を復調し(S7)、復号部113において量子化受信信号の復調結果を復号する(S8)。
受信装置100は、量子化受信信号の復調結果を復号した後、ゲイン探索範囲設定部109において、次に受信される信号(パケット)に応じたAGC処理のゲイン探索範囲を調整して決定する(S9)。
受信装置100は、ステップS9に示すゲイン探索範囲を調整した後、同一の送信装置からの送信信号の待ち受けを継続する場合には(S2、YES)、同一の送信装置からの送信信号の待ち受けを継続しなくなるまで、ステップS2〜ステップS9の各処理を繰り返す。受信装置100が同一の送信装置からの送信信号の待ち受けを継続しない場合に(S10、NO)、図5に示す受信装置100の動作は終了する。
(受信装置100における待受けゲインGsの設定処理の詳細)
次に、本実施形態の受信装置100における待受けゲインGsの設定処理の詳細について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態の受信装置100における待受けゲインGsの設定処理の動作手順の一例を説明するフローチャートである。
図6において、待受けゲイン設定部108は、待受けゲインGsの初期値を設定する(S11)。待受けゲイン設定部108は、待受けゲインGsの初期値を設定した後、信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104により量子化された量子化雑音信号の電力Pnを監視する。具体的には、待受けゲイン設定部108は、電力演算部105が演算した量子化雑音信号の電力Pnを測定する(S12)。
待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnが所定の待受電力目標値Pn_targetとなるように、低雑音増幅器101及び可変増幅器103の各ゲインを決定する。
例えば、待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnと所定の待受電力目標値Pn_targetとが等しいと判定した場合には(S13、YES)、待受けゲインGsの値は適正であるとして、図6に示す待受けゲインの設定処理を終了する。ここで、“A==B? ”とはAとBの値が等しいかどうかを判定する条件分岐を表す。以降、同様の使い方をする。
また、待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnと所定の待受電力目標値Pn_targetとが等しくないと判定した場合には(S13、NO)、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnが所定の待受電力目標値Pn_targetより小さいか否かを判定する(S14)。
待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnが所定の待受電力目標値Pn_targetより小さいと判定した場合には(S14、YES)、待受けゲインGsの値に所定の待受けゲイン増加値ΔGsを加算し(S15)、再度、電力演算部105が演算した量子化雑音信号の電力Pnを測定する(S12)。
一方、待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnが所定の待受電力目標値Pn_targetより大きいと判定した場合には(S14、NO)、待受けゲインGsの値から所定の待受けゲイン増加値ΔGsを減算し(S16)、再度、電力演算部105が演算した量子化雑音信号の電力Pnを測定する(S12)。
以上により、待受けゲイン設定部108は、ステップS12において測定した量子化雑音信号の電力Pnと所定の待受電力目標値Pn_targetとが等しいと判定するまで、ステップS14〜ステップS16の各処理を繰り返す。
(受信装置100における信号の検出処理の詳細)
次に、本実施形態の受信装置100における信号の検出処理の詳細について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態の受信装置100における信号の検出処理の動作手順の一例を説明するフローチャートである。図7に示すフローチャートの説明の前提として、図6に示す待受けゲインGsが待受けゲイン設定部108により設定されている。
図7において、信号検出判定部107は、待受けゲインGsが設定された後、信号の待受け状態において、アナログデジタル変換部104により量子化された量子化受信信号の電力Prq、即ち、電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力Prqを測定する(S21)。
信号検出判定部107は、ステップS21において測定された量子化受信信号の電力Prqが、所定の電力閾値Prq_thを超えているか否かを判定する(S22)。
信号検出判定部107は、ステップS21において測定された量子化受信信号の電力Prqが、所定の電力閾値Prq_thを超えていると判定した場合には(S22、YES)、電力検出により信号を検出したと判定する(S23)。信号検出判定部107は、電力検出により信号を検出した旨の信号検出情報をゲイン探索範囲設定部109に出力する(S24)。これにより、図7に示す信号検出判定部107の動作は終了する。
一方、信号検出判定部107は、ステップS21において測定された量子化受信信号の電力Prqが所定の電力閾値Prq_thを超えていないと判定した場合には(S22、NO)、ステップS25において相関演算部106が算出した相互相関値Rrqを取得する。なお、相関演算部106は、量子化受信信号のプリアンブルPRBに付加されているトレーニング系列A1〜ANと相関演算部106が予め保持しているトレーニング系列A1〜ANとの間の相互相関値Rrqを算出している(S25)。
信号検出判定部107は、ステップS25において相関演算部106が算出した相互相関値Rrqが所定の相関閾値Rrq_thより大きいか否かを比較する(S26)。
信号検出判定部107は、ステップS25において相関演算部106が算出した相互相関値Rrqが所定の相関閾値Rrq_thより大きいと判定した場合には(S26、YES)、相関検出により信号を検出したと判定する(S27)。信号検出判定部107は、相関検出により信号を検出した旨の信号検出情報をゲイン探索範囲設定部109に出力する(S24)。これにより、図7に示す信号検出判定部107の動作は終了する。
一方、信号検出判定部107は、ステップS25において相関演算部106が算出した相互相関値Rrqが所定の相関閾値Rrq_thより小さいと判定した場合には(S26、NO)、信号を検出しなかった旨の信号検出情報をゲイン探索範囲設定部109に出力する(S24)。これにより、図7に示す信号検出判定部107の動作は終了する。
(受信装置100におけるAGC処理の詳細)
次に、本実施形態の受信装置100におけるAGC処理の詳細について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態の受信装置100におけるAGC処理の動作手順の一例を説明するフローチャートである。図8に示すフローチャートの説明の前提として、図7に示すフローチャートにおいて、図7に示すフローチャートに従って、信号が検出された旨の信号検出情報がゲイン決定部110に入力されている。
図8において、ゲイン決定部110は、信号が検出された旨の信号検出情報を信号検出判定部107から取得した後、電力演算部105により演算された量子化受信信号の電力値Prqを取得する(S31)。
ゲイン決定部110は、ステップS31において測定された量子化受信信号の電力Prqと所定の受信電力目標値Prq_targetとが等しいか否かを判定する(S32)。ゲイン決定部110は、ステップS31において測定された量子化受信信号の電力Prqと所定の受信電力目標値Prq_targetとが等しいと判定した場合には(S32、YES)、図8に示すAGC処理を終了する。
一方、ゲイン決定部110は、ステップS31において測定された量子化受信信号の電力Prqと所定の受信電力目標値Prq_targetとが等しくないと判定した場合には(S32、NO)、所定の規定時間(例えばプリアンブルPRBの符号長に応じた時間)以内に、ステップS31において測定された量子化受信信号の電力Prqを所定の受信電力目標値Prq_targetに一致させることが困難である場合には(S33、YES)、AGC処理がタイムアウトしたとして、AGC処理を強制的に終了する。
また、ゲイン決定部110は、未だ所定の規定時間が経過していない場合には(S33、NO)、ステップS31において測定した量子化受信信号の電力Prqが所定の受信電力目標値Prq_targetより小さいか否かを判定する(S34)。
ゲイン決定部110は、ステップS31において測定した量子化受信信号の電力Prqが所定の受信電力目標値Prq_targetより小さいと判定した場合には(S34、YES)、合算ゲインGの値に所定のゲイン増加値ΔGを加算したゲインを新たに合算ゲインGとして設定する(S35)。ゲイン決定部110は、LNA101、VGA103のゲインが新たに設定した合算ゲインGとなるよう制御する。同一プリアンブルPRB内の次のシンボル、例えば、トレーニング系列A1〜ANに含まれるシンボルは、前述したように設定した新たな合算ゲインGで信号増幅され、アナログデジタル変換部104で量子化される。量子化受信信号は、電力演算部105に入力され、電力演算部105は、量子化受信信号の電力Prqを演算する(S31)。
一方、ゲイン決定部110は、ステップS32において測定した量子化受信信号の電力Prqが所定の受信電力目標値Prq_targetより大きいと判定した場合には(S34、NO)、合算ゲインGの値から所定のゲイン増加値ΔGを減算したゲインを新たに合算ゲインGとして設定する(S36)。ゲイン決定部110は、LNA101、VGA103のゲインが新たに設定した合算ゲインGとなるよう制御する。同一プリアンブルPRB内の次のシンボル、例えば、トレーニング系列A1〜ANに含まれるシンボルは、前述したように設定した新たな合算ゲインGで信号増幅され、アナログデジタル変換部104で量子化される。量子化受信信号は、電力演算部105に入力され、電力演算部105は、量子化受信信号の電力Prqを演算する(S31)。
以上により、ゲイン決定部110は、ステップS31において測定した量子化受信信号の電力Prqと所定の受信電力目標値Prq_targetとが等しいと判定するまで、ステップS33〜ステップS36の各処理を繰り返す。
(受信装置100の起動後の初回受信信号に応じたゲイン探索範囲の設定処理の詳細)
次に、本実施形態の受信装置100の起動後の初回受信信号に応じてゲイン探索範囲の設定処理の詳細について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の受信装置100における初回受信信号に応じたゲイン探索範囲の設定処理の動作手順の一例を説明するフローチャートである。図9に示すフローチャートの説明の前提として、図7に示すフローチャートに従って、電力検出又は相関検出により信号が検出された旨の信号検出情報がゲイン探索範囲設定部109に入力されている。
図9において、ゲイン探索範囲設定部109は、信号検出判定部107が出力した信号検出情報を基に、電力検出又は相関検出のどちらにより信号が検出されたかを判定する(S41)。
ゲイン探索範囲設定部109は、電力検出により信号が検出されたと判定した場合には(S41、YES)、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする(S42)。例えば、ゲイン探索範囲設定部109は、ゲイン決定部110における合算ゲインGの制御範囲を最大範囲に調整することにより、ゲイン探索範囲を広くする。合算ゲインGの制御範囲の最大範囲とは、例えば低雑音増幅器101のゲインと可変増幅器103のゲインとの和である合算ゲインGの最小値をGmin、合算ゲインGの最大値をGmaxとすると、[Gmin,Gmax]の範囲である。
即ち、量子化受信信号の電力Prqが電力閾値Prq_thを超える程に大きい場合には、量子化受信信号の受信SNRが大きく、電力の立ち上がりが早い(図4(B)参照)。従って、相関検出により信号が検出されるタイミングよりも、電力検出により信号が検出されるタイミングの方が早い。
従って、電力検出により信号が検出されるタイミングが相関検出により信号が検出されるタイミングよりも早い場合には、ゲイン探索範囲設定部109は、受信装置100と通信相手である送信装置(不図示)との間の通信路の受信強度が強電界であると推定できる。つまり、合算ゲインGは現在の設定値から大きく下げられる必要があるので、ゲイン探索範囲設定部109は、AGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。
なお、受信装置100と通信相手である送信装置(不図示)との間の通信路とは、受信装置100が受信する送信装置からの送信信号の受信強度によって推定される。
一方、ゲイン探索範囲設定部109は、相関検出により信号が検出されたと判定した場合には(S41、NO)、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を、合算ゲインGの値が大きくなる範囲となるように狭くする(S43)。例えば、合算ゲインGの値が大きくなる範囲とは、合算ゲインGの制御範囲の制限率をRn(例えば0.3程度の値)とすると、[Rn×Gmax,Gmax]の範囲である。
即ち、量子化受信信号の電力Prqが電力閾値Prq_thを超えない場合には、量子化受信信号の受信SNRが小さい。この場合には、電力検出による信号の検出が困難となり、相関検出により信号が検出されると考えられる。
従って、相関検出により信号が検出されるタイミングが電力検出により信号が検出されるタイミングよりも早い場合には、ゲイン探索範囲設定部109は、受信装置100と通信相手である送信装置(不図示)との間の通信路の受信強度が弱電界であると推定する。つまり、合算ゲインGは現在の設定値から大きく下げられる必要は無いので、ゲイン探索範囲設定部109は、AGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。
これにより、ゲイン決定部110におけるAGC処理の収束までに要する時間が短くなり、更に、所定のプリアンブルPRBに対応した限られた時間の中で、相関検出により信号が検出されるまでに要する時間が長かった場合でも、ゲイン決定部110は、AGC処理を高速に収束できる。即ち、復調部112における復調の開始が遅延しない。
このように、受信装置100は、起動(立ち上げ)後の初回のパケットの受信、つまり、送信装置からの送信信号の初回受信において、信号検出判定部107が電力検出又は相関検出のどちらの方法により信号を検出するかを判定し、先に信号が検出された信号検出方法に従って、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を設定する(表1参照)。表1は、信号検出方法とゲイン探索範囲とを対応付けたテーブルである。
ここで、信号検出方法に基づいてAGC処理の合算ゲインGのゲイン探索範囲が設定されると、受信装置100と送信装置との間の通信路における受信強度が中電界である場合に、ゲイン探索範囲が適切にならない可能性がある。例えば、中電界では、強電界と比較して、電力検出によって信号が検出されるまでに要する時間が長くなり、相関検出によって信号が検出されるまでに要する時間と同程度になる。なお、電力検出が先に実行されるか、相関検出が先に実行されるかは、発生する熱雑音に依存する。
この場合に、電力検出によって信号が検出され、ゲイン探索範囲設定部109が合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くすると、AGC処理の収束までに要する時間が長くなる。従って、電力検出によって信号が検出されるまでに要する時間とAGC処理の収束までに要する時間との両方が長くなり、復調部112における復調の開始が遅れ、復号部113により復元された情報ビットIBTにエラーが発生する可能性がある。
そこで、中電界における復調開始の遅れを回避するために、ゲイン探索範囲設定部109は、次に受信するパケットに備えて、電力推定部111が推定した電力の推定値Prと、誤り検出部114が出力したヘッダ領域の誤り検出結果とを用いて、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を決定して設定する(図10参照)。
(受信装置100の2回目以降に受信する信号に対するゲイン探索範囲の設定)
次に、本実施形態の受信装置100が受信する同一の送信装置からの送信信号であって、2回目以降の受信信号に対応したAGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲の設定処理の詳細について、図10を参照して説明する。図10は、本実施形態の受信装置100における2回目以降の受信信号に応じたゲイン探索範囲の設定処理の動作手順の一例を説明するフローチャートである。
図10において、ゲイン探索範囲設定部109は、受信信号が検出された旨の信号検出情報を信号検出判定部107から取得した後、電力推定部111から出力された量子化受信信号の電力の推定値Prを測定する(S51)。また、誤り検出部114は、復号部113により復元された情報ビットIBTのヘッダ情報に対して所定の誤り検出処理を実行する(S52)。誤り検出部114は、ヘッダ情報に対する誤り検出結果をゲイン探索範囲設定部109に通知する。
ゲイン探索範囲設定部109は、誤り検出部114の誤り検出結果を用いて、ヘッダ情報に対する受信誤りが検出されたか否かを判定する(S53)。
ゲイン探索範囲設定部109は、ヘッダ情報に対する受信誤りが検出されなければ(S53、NO)、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより小さいか否かを判定する(S54)。
なお、強電界閾値Pr_thは、受信装置と送信装置との間の通信路が強電界であるか否かを示す閾値である。ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより大きい場合には、受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は強電界である。一方、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより小さい場合には、受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は強電界ではなく中電界又は弱電界である。なお、強電界閾値Pr_thは、例えば量子化受信信号のSNRが10[dB]程度となる電力とするが、限定されない。
ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより大きいと判定した場合には(S54、NO)、ヘッダ情報の受信誤りも検出されず、電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより大きいので受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は強電界であるとして、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする(S55)。ステップS55の後、ゲイン探索範囲設定部109は、2回目以降の受信信号に対するゲイン探索範囲の設定処理を終了する。
一方、ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより小さいと判定した場合には(S54、YES)、ヘッダ情報の受信誤りは検出されないが、電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより小さいので受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は中電界であるとして、AGC処理における合算ゲインGの現在のゲイン探索範囲を維持する、即ち、変更しない(S56)。ステップS56の後、ゲイン探索範囲設定部109は、2回目以降の受信信号に対するゲイン探索範囲の設定処理を終了する。
また、ゲイン探索範囲設定部109は、ヘッダ情報に対する受信誤りが検出されたと判定した場合には(S53、YES)、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより小さいか否かを判定する(S57)。
ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより大きいと判定した場合には(S57、NO)、ヘッダ情報の受信誤りが検出されたが、電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより大きいので受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は強電界であるとして、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする(S58)。ステップS58の後、ゲイン探索範囲設定部109は、2回目以降の受信信号に対するゲイン探索範囲の設定処理を終了する。
一方、ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS51において測定された量子化受信信号の電力の推定値Prが所定の強電界閾値Pr_thより小さいと判定した場合には(S57、YES)、ヘッダ情報の受信誤りが検出され、更に、電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより小さいので受信装置100と送信装置との間の通信路の受信強度は弱電界であるとして、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする(S59)。ステップS59の後、ゲイン探索範囲設定部109は、2回目以降の受信信号に対するゲイン探索範囲の設定処理を終了する。なお、図10において決定したゲイン探索範囲は、次の受信信号(パケット)に対して有効となる。
送信装置からの送信信号(パケット)のヘッダHEDには、誤り訂正能力の高い第一の誤り訂正符号が付加されている。従って、外部雑音による受信誤りが発生し難いと考えられる。つまり、ヘッダHED内に格納されたヘッダ情報に受信誤りが検出された場合には、AGC処理が規定時間以内での収束が困難であるため、復調部112における復調の開始タイミングの遅延が起因している可能性がある。
このため、ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS53においてヘッダ情報の受信誤りがあり、更に、ステップS51において推定された電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより小さいと判定した場合には、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。これにより、ゲイン決定部110は、AGC処理の収束時間を短縮できるので、復調部112における復調の開始の遅延の発生を抑制できる。
また、ゲイン探索範囲設定部109は、ステップS53においてヘッダ情報の受信誤りが無く、更に、ステップS51において推定された電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thより小さいと判定した場合には、AGC処理における合算ゲインGの現在のゲイン探索範囲を維持する。
これにより、ゲイン探索範囲設定部109は、前回受信されたパケットではヘッダ情報の受信誤りが検出された場合には、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くしたことを記憶できる。また、ゲイン探索範囲設定部109は、前回受信されたパケットでは受信誤りが検出されていない場合には、前回受信されたパケットに対応して用いたゲイン探索範囲を継続して使用できる。
また、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界である場合には、電力推定部111における電力の推定値Prの推定精度は高いが、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界でない場合には、電力推定部111における電力の推定値Prの推定精度は低い。電力の推定値Prの推定精度が低いと、電力推定部111が量子化される前の受信信号の電力の推定値がばらつく。
このため、ゲイン探索範囲設定部109は、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界であると判定すれば、誤り検出部114におけるヘッダ情報の受信誤りの有無に拘わらず、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。これにより、ゲイン探索範囲設定部109は、受信装置100の通信相手である送信装置が移動した場合、又は、受信装置100の通信相手が他の通信相手に切り替わった場合にも、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を適切に決定できる。
また、送信装置からの送信信号(パケット)のヘッダHEDには、他のデータよりも強力な誤り訂正符号を付加されているが、外部雑音による誤り発生確率はゼロではない。従って、ゲイン探索範囲設定部109は、ヘッダ情報の受信誤りが検出された場合でも、量子化される前の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thを超える程度の強電界である場合には、外部雑音に起因すると判定できる。これにより、ゲイン探索範囲設定部109は、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲の不要な変更を回避できる。
表2は、誤り検出部114におけるヘッダ情報の受信誤りの有無の検出結果と、電力推定部111における量子化前の受信信号の電力の推定値Prとに対応した、AGC処理における合算ゲインGのゲイン探索範囲を表す。
図11は、従来技術における強電界、中電界、弱電界毎の信号検出の動作を時系列に示すタイミングチャートである。図12は、本実施形態の受信装置100における強電界時の信号検出の動作を時系列に示すタイミングチャートである。図13は、本実施形態の受信装置100における中電界時の信号検出の動作を時系列に示すタイミングチャートである。図14は、本実施形態の受信装置100における弱電界時の信号検出の動作を時系列に示すタイミングチャートである。
図11〜図14において、時刻t0はプリアンブルPRBの最初の既知系列(トレーニング系列A1)が受信装置において受信される時刻であり、時刻t1はプリアンブルPRBの最後の既知系列(トレーニング系列AN)が受信装置において受信される時刻である。また、図11〜図14において、受信装置は、時刻t1までにAGC処理を収束させる必要があり、時刻t1までにAGC処理の収束が困難である場合には復調の開始が遅延することになる。
図11では、受信装置と送信装置との間の通信路が強電界、中電界、弱電界に拘わらず、AGC処理におけるゲインのゲイン探索範囲は広いので、強電界では、AGC処理は時刻t1までに収束するが、中電界及び弱電界では、AGC処理が時刻t1までに収束しないため、復調の開始が遅延し、情報ビットの受信誤りが検出される。
(受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路:強電界)
図12では、受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路が強電界である場合には、電力検出により信号が検出されるタイミングが相関検出により信号が検出されるタイミングより先であり、ゲイン探索範囲設定部109は、ゲイン探索範囲を広くする。また、ゲイン決定部110は、AGC処理を時刻t1までに収束できる。電力推定部111による量子化前の信号の電力の推定値Prも強電界閾値Pr_thを超え、復調部112における信号の復調もエラーなく実行され、情報ビットIBTが正しく復元される。このため、ゲイン探索範囲設定部109は、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。
同じ送信装置からの2回目以降の送信信号を受信装置100が受信する場合でも、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界であれば、受信装置100の動作は同様であるため、説明を省略する。ゲイン探索範囲設定部109は、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。
ここで、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が中電界となった場合には、電力検出により信号が検出されるタイミングと相関検出により信号が検出されるタイミングとが同程度になる。
しかし、過去の通信においてAGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲が広く設定されているため、ゲイン決定部110におけるAGC処理が時刻t1までの収束が困難であり、AGC処理が規定時間内に収束しないので、復調部112における復調の開始が遅延し、ヘッダ情報の受信誤りが検出される。なお、AGC処理が規定時間内に収束しないので、受信装置100は受信応答(Ack:Acknowledgment)の送信が困難となり、送信装置は受信装置100に対して同一のパケットを再送する。
また、ゲイン探索範囲設定部109は、電力推定部111により推定された量子化前の信号の電力の推定値Prは強電界閾値Pr_thを超えないので、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界ではないと判定し、次の受信信号(パケット)に備えて、AGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。また、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が弱電界となった場合の説明は、図14を参照して後述する。
(受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路:中電界)
図13では、受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路が中電界である場合には、電力検出により信号が検出されるタイミングが相関検出により信号が検出されるタイミングより先であり、ゲイン探索範囲設定部109は、ゲイン探索範囲を広くする。但し、受信装置100と送信装置との間の通信路が強電界である場合に比べて、ゲイン決定部110におけるAGC処理の開始タイミングが遅延するので、時刻t1までにAGC処理の収束が困難であり、復調部112における復調の開始が遅延する。ゲイン探索範囲設定部109は、電力推定部111における量子化前の信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_th未満となるので、AGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。
受信装置100と送信装置との間の通信が2回目以降では、初回の通信時にゲイン探索範囲が狭く設定されたので、ゲイン決定部110におけるAGC処理は時刻t1までに収束する。このため、復調部112は時刻t1から復調を開始でき、ヘッダ情報の受信誤りは検出されない。ただ、ゲイン探索範囲設定部109は、電力推定部111における量子化前の信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_th未満となるので、AGCにおける合算ゲインGの現在のゲイン探索範囲を維持し、変更しない。つまり、ゲイン探索範囲設定部109は、AGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くした状態を維持する。
ここで、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が強電界となった場合には、電力検出により信号が検出されるタイミングが相関検出により信号が検出されるタイミングよりも先になるが、過去の通信においてゲイン探索範囲が狭く設定されたので、ゲイン決定部110におけるAGC処理が規定時間内での収束が困難であり、強制的に終了する。この場合には、アナログデジタル変換部104により量子化された受信信号は飽和した状態である。
ただし、ゲイン探索範囲設定部109は、ヘッダ情報の受信誤りは検出されないが、電力推定部111における量子化前の信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thを超えるので、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。なお、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が弱電界となった場合には、受信装置100の動作は同様であり、ゲイン探索範囲設定部109は、過去の通信と同様に、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くするため、説明を省略する。
(受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路:弱電界)
図14では、受信装置100と送信装置との間の初回通信時の通信路が弱電界である場合には、相関検出により信号が検出されるタイミングが電力検出により信号が検出されるタイミングより先であり、ゲイン探索範囲設定部109は、ゲイン探索範囲を狭くする。また、ゲイン決定部110は、AGC処理を時刻t1までに収束できる。電力推定部111による量子化前の信号の電力の推定値Prは強電界閾値Pr_th未満であるが、復調部112における信号の復調もエラーなく実行され、情報ビットIBTが正しく復元される。このため、ゲイン探索範囲設定部109は、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。
受信装置100と送信装置との間の通信が2回目以降でも、受信装置100と送信装置との間の通信路が弱電界であれば、受信装置100の動作は同様であるため、説明を省略する。ゲイン探索範囲設定部109は、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCの合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くする。
ここで、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が強電界となった場合には、電力検出によって信号が検出されるタイミングが、相関検出によって信号が検出されるタイミングよりも先になるが、過去の通信においてゲイン探索範囲が狭く設定されているため、ゲイン決定部110におけるAGC処理は規定時間内での収束が困難であり、強制的に終了する。この場合には、アナログデジタル変換部104により量子化された受信信号は飽和した状態である。
ただし、ゲイン探索範囲設定部109は、ヘッダ情報の受信誤りは検出されないが、電力推定部111における量子化前の信号の電力の推定値Prが強電界閾値Pr_thを超えるので、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くする。
なお、受信装置100の通信相手(送信装置)が切り替わり、新しい通信相手(他の送信装置)と受信装置100との間の通信路が中電界となった場合には、受信装置100の動作は同様であり、ゲイン探索範囲設定部109は、過去の通信と同様に、次に受信される信号(パケット)に対応するAGCにおける合算ゲインGのゲイン探索範囲を狭くするため、説明を省略する。
以上により、本実施形態の受信装置100は、受信アンテナAntにおいて受信された量子化される前の受信信号の電力の推定値Prと、量子化された受信信号のヘッダHEDに格納されたヘッダ情報の受信誤りの検出結果とを用いて、次に受信される信号(パケット)に対応するAGC処理の合算ゲインGのゲイン探索範囲を広くするか、現在のゲイン探索範囲を維持するか、ゲイン探索範囲を狭くする。
これにより、受信装置100は、受信装置100の通信相手(送信装置)が移動した場合でも他の通信相手(他の送信装置)に切り替わった場合でも、受信アンテナAntにおいて受信された量子化される前の受信信号の電力の推定値Prと、量子化された受信信号のヘッダHEDに格納されたヘッダ情報の受信誤りの検出結果とを用いて、次に受信される信号(パケット)に対応するAGC処理の合算ゲインGのゲイン探索範囲を適応的に調整できる。
従って、受信装置100は、受信装置100と通信相手(送信装置)との通信路が強電界、中電界及び弱電界のうち、いずれにおいても、ゲイン決定部110におけるAGC処理を所定の規定時間内に収束でき、ヘッダ情報の受信誤りの発生を抑制できるので、受信信号の検出精度の劣化を抑制できる。
また、受信装置100は、ゲイン探索範囲設定部109においてゲイン探索範囲を変更するが、待受けゲイン設定部108において設定した待受ゲインGsを変更しない。従って、受信装置100は、受信装置100から距離の異なる複数の送信装置との間の通信において、通信相手の切り替えに伴って生じる信号伝搬の減衰量が変化しても、通信相手から送信された信号を高精度に検出できる。
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した本実施形態では、受信装置100を、例えばハードウェア資源を用いて構成する場合を例示して説明したが、受信装置100の一部の構成については、ハードウェア資源と協働するソフトウェアを用いて構成しても良い。
また、上述した本実施形態の受信装置100の各部(構成要素)は、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。LSIは個別に1チップ化されても良いし、一部又は全ての構成要素を含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いて実現しても良い。LSIの製造後に、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサを用いても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、その技術を用いて受信装置100の各部を集積化しても良い。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。