JP6179932B2 - めっき液中の金属錯体定量化方法および金属錯体定量化装置 - Google Patents

めっき液中の金属錯体定量化方法および金属錯体定量化装置 Download PDF

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Description

この発明は、めっき液中に存在する金属錯体を定量化するための方法、およびそのための装置に関する。特に、水溶性のキレート剤を使用してめっき液中の金属錯体を定量化するための方法、およびそのための装置に関する。
プリント回路基板の製造においては、ファイン化及び多層化に対応すべく、より高度のめっきプロセス制御が求められている。例えば硫酸銅電気めっき浴において、めっき液中の銅が電解で溶解・析出するときに、一価の銅イオンが発生する。そのため、めっき条件によっては不均化反応(2Cu→Cu2++Cu)により銅パーティクルを生成し、これがスライムとなり、めっき表面にざらつきを生じる。この対策のために光沢剤が使用されるが、この光沢剤の過剰添加を招く原因のひとつになる。また、プリント回路基板のスルーホールやビアを銅めっきによって構成する場合は、層の厚さが一定とならず電気特性にも影響を与えるという問題がある。即ち、銅めっき液中の一価銅濃度はめっき製品の不良率に直接影響する。
この問題を解決すべく、特許文献1には、ネオクプロイン試薬を硫酸銅めっき液に添加し、めっき液の吸光度によりめっき液中の一価銅濃度をモニターしつつめっき浴を行う方法が開示されている。この方法の測定原理を示す。まず、ネオクプロイン試薬が一価銅と選択的に反応し、燈色のCu−ネオクプロイン錯体を形成する。この錯体はメンブランフィルターに補足され二価銅と分離される。この補足された錯体を有機溶媒により溶出し、その吸光度を測定することにより一価銅の濃度を測定する。
また特許文献1の方法以外にも、従来よりクプロイン試薬、バソクプロイン試薬を用いて同様の方法で一価銅の濃度を測定する技術が従来から知られており、用いられている。
特開2008−144186号公報
銅めっき液等のめっき液には各種有機成分が添加されており、これら有機成分の多くは金属に配位して金属錯体を形成している。めっきの生成段階においては、めっき液中に存在する金属錯体が重要な役割を果たしているが、これらの金属錯体を簡便に定量化する手法が確立されておらず、めっき液の調製に際しては、めっきの生成量の変化を確認して各種有機成分の量を制御するという方法を採らなければならないケースもあった。
本発明はこのような背景のもとになされたものであり、その目的は、めっき液中に存在する金属錯体を簡便に定量化することにある。
本発明は以下の手段により上記課題を解決する。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
手段1に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
めっき液(例えば硫酸銅めっき液)を含むサンプル溶液および水溶性のキレート試薬を混合した吸光度測定用溶液(例えばpH4〜10のサンプル溶液およびバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液)の吸光度を測定する吸光度測定工程と、
測定された吸光度に基づいたカーブフィッテングにより吸光度曲線を決定する吸光度曲線決定工程と、
を含むことを特徴とする。
手段2に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段1に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
前記吸光度曲線は複数の指数関数からなる多項式によって構成されることを特徴とする。
手段3に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段2に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
前記複数の指数関数各々を分子量の異なる複数の錯体各々の濃度に対応させることを特徴とする。
手段4に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段2または3に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
各指数関数は、その指数部に含まれる時間変数の増加に伴い所定値に収束する時間関数であることを特徴とする。
手段5に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段4に記載した金属錯体定量化方法であって、
各指数関数に係る収束速度を規定する定数の変動を、分子量の異なる複数の錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする。
手段6に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段4または5に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
分子量が異なる複数の錯体の数をn(n≧2)としたときに、前記吸光度曲線に係る多項式Yを以下の式により規定することを特徴とする。
Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))…+A×(1−exp(−(t+t)/T))
ここで、tは時間変数、tは呈色反応開始時間に係る定数、A…Aは各錯体の濃度に係る定数、T…Tは各錯体の呈色反応速度定数の逆数に係る定数である。
手段7に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段6に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
前記吸光度測定工程において測定された吸光度の測定値および時間を、前記多項式のYおよびtに当てはめることにより、各定数を算出することを特徴とする。
手段8に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段7に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
…Tの変動を、各項に係る錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする。
手段9に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段7または8に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
前記各定数が算出された吸光度曲線について、収束される吸光度を以下の式により算出することを特徴とする。
Y=A…+A
手段10に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段1〜9から選択される1項に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
決定された吸光度曲線に基づいて、前記吸光度が測定されていない非測定期間における吸光度を推定することを特徴とする。
手段11に係るめっき液中の金属錯体定量化方法は、
手段1〜10から選択される1項に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
前記めっき液は銅めっき液であることを特徴とする。
手段12に係るめっき液中の金属錯体定量化装置(例えば一価銅濃度測定装置1)は、
銅めっき液(例えば硫酸銅めっき液)を含むサンプル溶液および水溶性のキレート試薬を混合した吸光度測定用溶液(例えばpH4〜10のサンプル溶液およびバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液)の吸光度を測定する吸光度測定手段(例えば制御部37)と、
測定された吸光度に基づいたカーブフィッテングにより吸光度曲線を決定する吸光度曲線決定手段(例えばシステム制御部40)と、
を含むことを特徴とする。
手段13に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段12に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
前記吸光度曲線は複数の指数関数からなる多項式によって構成されることを特徴とする。
手段14に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段13に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
前記複数の指数関数各々を分子量の異なる複数の錯体各々の濃度に対応させることを特徴とする。
手段15に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段13または14に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
各指数関数は、その指数部に含まれる時間変数の増加に伴い所定値に収束する時間関数であることを特徴とする。
手段16に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段15に記載した金属錯体定量化装置であって、
各指数関数に係る収束速度を規定する定数の変動を、分子量の異なる複数の錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする。
手段17に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段15または16に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
分子量が異なる複数の錯体の数をn(n≧2)としたときに、前記吸光度曲線に係る多項式Yを以下の式により規定することを特徴とする。
Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))…+A×(1−exp(−(t+t)/T))
ここで、tは時間変数、tは呈色反応開始時間に係る定数、A…Aは各錯体の濃度に係る定数、T…Tは各錯体の呈色反応速度定数の逆数に係る定数である。
手段18に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段17に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
前記吸光度測定手段により測定された吸光度の測定値および時間を、前記多項式のYおよびtに当てはめることにより、各定数を算出することを特徴とする。
手段19に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段18に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
…Tの変動を、各項に係る錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする。
手段20に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段18または19に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
前記各定数が算出された吸光度曲線について、収束される吸光度を以下の式により算出することを特徴とする。
Y=A…+A
手段21に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段12〜20から選択される1項に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
決定された吸光度曲線に基づいて、前記吸光度が測定されていない非測定期間における吸光度を推定することを特徴とする。
手段22に係るめっき液中の金属錯体定量化装置は、
手段12〜21から選択される1項に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
前記めっき液は銅めっき液であることを特徴とする。
本発明によれば、銅めっき液中に存在する金属錯体を簡便に定量化することが可能となる。また、金属に配位して金属錯体を形成している各種有機成分の量を個別に定量化し、制御することも可能となり、めっき条件の解析や制御に資するものである。
図1は、BCSの構造式を示す図である。 図2は、一価銅標準溶液を分光光度測定したときの波長と吸光度の関係を示す図である。 図3は、一価銅濃度と吸光度との関係をあらわす検量線を示す図である。 図4は、硫酸銅めっき液を分光光度測定したときの波長と吸光度の関係を示す図である。 図5は、硫酸銅めっき液の吸光度の時間推移を示す図である。 図6は、硫酸銅めっき液をMALDI−MSにより質量分析したときのスペクトルを示す図である。 図7は、一価銅−PEG(ポリエチレングリコール)錯体のモデルを示す図である。 図8は、BCSによる一価銅の呈色反応の時間変化のモデルを示す図である。 図9は、硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液の吸光度を長期間モニタリングした結果を示す図である。 図10は、銅めっき液の吸光度(T値)を、呈色反応が生じた直後に急激に増大する成分(F値)と、呈色反応後緩やかに増大する成分(H値)に分けたモデルを示す図である。 図11は、一価銅の濃度測定装置の一例を示す図である。 図12は、カーブフィッティングによる一価銅濃度の推定方法を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を実験例等にもとづいて説明する。以下に示す実施の形態では、銅めっき液中の一価銅濃度を定量化するために吸光度を測定しているが、その吸光度の時間推移を示す吸光度曲線を取得することによって、銅めっき液中に含まれる金属錯体全体としての定量化と共に、分子量が異なる金属錯体別の定量化を行うものである。また、後述する図3に示すように、一価銅濃度と吸光度は1対1に対応していることから、本実施の形態において吸光度を測定することは、これに対応する一価銅濃度の測定も兼ねているものとする。また、銅めっき液中の金属錯体は後述する水溶性のキレート試薬と反応して呈色反応を示すことから、本実施の形態において吸光度を測定することは、金属錯体を定量化する概念も含むものとする。なお、本発明は銅めっき液を対象とした一価銅錯体の定量化に限定されるものではなく、例えば亜鉛めっき等の銅めっき以外のめっき液を対象として、そのめっき液に含まれる金属錯体を同様の手法、同様の装置により定量化することが可能である。
[1:銅めっき液]
以下の例では、銅めっき液として硫酸銅めっき液を用いる。但し、本発明は硫酸銅めっき液に限らず、酸性浴及びアルカリ浴に使用される銅めっき液全般を対象とするものである。例えばシアン化銅めっき液やピロ燐酸銅めっき液等も対象となる。通常、銅めっき液のpHはBCS試薬で測定可能なpH域4〜10から外れている場合が多いが、各種銅めっき液を中和してBCS試薬と混合することで測定が可能となる。また、後述する実施形態に示すように、緩衝液を用いることによりpH調整を容易化することができる。短時間でのpH調整が可能となり、一価銅濃度を継続的にモニタリングする場合等に有用である。
[2:キレート試薬]
本例では、キレート試薬として水に易溶であるバソクプロインスルホン酸二ナトリウム(Bathocuproinedisulfonic acid, disodium salt)(以下「BCS」と略記する。)試薬を使用している。BCSはCu(I)と選択的に橙黄色の錯体を形成することより、銅の比色試薬として使用される。バソクプロインをスルホン化して水溶性としたもので、水に易溶であるものを使用する。後述する実験では、図1に示すBCSを使用する。BCSは水溶液中、pH4〜10でCu(I)に対しBCS2分子で1:2の組成の橙黄色のキレートを形成する(λmax=485nm,ε=1.2×10)。重金属イオン類が共存してもCu(I)としか選択的に錯形成しない。一方、水に易溶であるために、吸光度の測定のために、有機溶媒による抽出操作、または溶出操作を必要としない。このことから、後に示す呈色反応による吸光度の時間変化の測定が可能となった。
(検量線の作成)
硫酸銅めっき溶液を還元することにより一価銅標準溶液を調整し、BCS試薬の検量線を作成した。BCS試薬はpH4〜10の領域でほぼ一定の吸光度が得られるが、pH4〜7、好ましくはpH4〜5.5で安定な吸光度を示すので、pHをこの範囲内に調整した。BCS(株式会社同仁化学研究所製、所在地:熊本県)を用いて、モル濃度10−2mol/dmのBCS水溶液を調整した。試薬特級硫酸銅(II)5水和物を用いてモル濃度10−3mol/dmの硫酸銅水溶液を調整した。この水溶液を分取し(0〜2.5mL)、還元剤である10%塩酸ヒドロキシルアミン5mLと2%クエン酸5mLを加え、25%アンモニア水でpHを7〜8に調整した。これに60%過酸化水素水を加えてpH4〜5の一価銅標準溶液を調整後、モル濃度10−2mol/dmのBCS水溶液を5mL添加し、水を加えて全量100mLの吸光度測定用溶液を調整した。
このようにして得られた吸光度測定用溶液の吸光度を、分光光度計U−3310(株式会社日立製作所製、所在地:東京都)を用いて測定した。硫酸銅水溶液を加えていない吸光度測定用溶液(上記硫酸銅水溶液の分取量が0のもの)をブランク溶液とした。また、上記硫酸銅水溶液の分取量を異ならせた多くの吸光度測定用溶液を用意した。これら各吸光度測定用溶液に関して、波長400nm〜600nm付近の吸光度を測定した。測定結果のうち、代表的なものを図2に示す。図2には、Cu(I)のイオン濃度が0mol/dmであるブランク溶液の吸光度曲線(a)、及びCu(I)のイオン濃度が各々0.6×10−5mol/dm、3.0×10−5mol/dm、5.0×10−5mol/dmである吸光度測定用溶液の吸光度曲線(b)、(c)、(d)を示す。
吸光度が最大となる485nmの波長において、図3に示すように一価銅濃度0〜5.0×10−5mol/dmの範囲で吸光度との関係を示す直線の検量線(r値0.9999)が得られた。そのモル吸光度係数は1.26×10であり、試薬のモル吸光度係数1.2×10(485nm)とほぼ一致した。この結果から、BCSを使用した吸光度測定によって、硫酸銅水溶液中のCu(I)のイオン濃度を高精度に定量することが可能であることを確認した。ここで、吸光度は上昇を開始してから1分以内で一定の値を示した。即ち、呈色反応が生じてから1分以内に収束し、1時間経過後でも変化は認められなかった。なお本例では波長が485nmである光の吸光度を測定しているが、直線の検量線を取得可能な他の波長を用いるようにしても良い。ここで本実施の形態において「吸光度が収束する」とは、所定時間あたりの吸光度の上昇値が、一定値以下(例えば10分あたり0.01以下)となることを意味するものとする。
[3.呈色用緩衝液]
硫酸銅めっき液は酸濃度が極めて高く、BCS試薬による比色測定では、pHを4以上に調整する必要がある。一方、pHが7以上になると、水酸化銅の白色沈殿が生じてしまい、吸光度が不安定になるため、緩衝液を使用する必要がある。緩衝液によって硫酸銅めっき液をpH4〜7程度に調整することが好ましく、pH4〜5.5に調整することが特に好ましい。後述する実験では銅イオンとの相互作用が小さく、比較的単純な酢酸−NaOH系の緩衝液を用いた。
試薬として、1mol/dmのNaOH水溶液、1mol/dmの酢酸(容量分析用)、及び10−2mol/dmのBCS溶液を用いた。100mLビーカーに水20mL、酢酸水溶液10mL、めっき液1mL、BCS溶液2mLを加え、よく振り混ぜ、pHを測定する。これに濁りや沈殿が生じないように徐々にNaOH水溶液を加え、pHを4〜4.5(測定値は4.23)に調整した。この際使用したNaOH水溶液の添加量は7.2mLであった。この溶液を50mLメスフラスコに移して水で全量を50mLに希釈した。この溶液のpHを測定して、pHが4以上であることを確認した。このように、50mLメスフラスコに、水20mL、酢酸水溶液10mL、NaOH水溶液7.2mL、BCS試薬2mLを投入して、水で50mLに調整したものを呈色用緩衝液とした。
なお、本実施形態においては緩衝液(上記呈色用緩衝液からBCS試薬を除いた溶液)とBCS試薬を混合したものを呈色用緩衝液とし、この呈色用緩衝液を硫酸銅めっき液と混合することによって吸光度測定用溶液を調整している。即ち、硫酸銅めっき液を含むpH4〜5.5のサンプル溶液の調整及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬の混合を同時に行うようにしている。しかし、吸光度測定用溶液の調整方法はこの方法に限られるものではなく、例えば硫酸銅めっき液に緩衝液を混合してサンプル溶液を調整した後、調整したサンプル溶液にBCS試薬を混合するようにしても良く、硫酸銅めっき液にBCS試薬を混合した後、さらに緩衝液を混合するようにしても良い。
[4.吸光度の測定]
呈色用緩衝液を分光光度計の参照用セルとサンプル用セルにそれぞれ2.5mL移した。サンプル用セルに硫酸銅めっき液50μLを注入して吸光度測定用溶液を調整した。その吸光度測定用溶液の1mL程度をピペットで吸い上げ、排出することで撹拌した。ここでセル中の硫酸銅めっき液は51倍に希釈されたことになる。吸光度測定用溶液調整後20分までの吸光度に関して、波長範囲350〜700nm、スキャンスピード200nm/minで吸収スペクトルを測定した。銅めっき液試料として、実際の硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている添加剤成分の異なる2種類の硫酸銅めっき液(以下、A液、B液と称する)を用意した。
これらのA液及びB液について、それぞれ新液(A−1液,B−1液)及び稼働液(A−2液,B−2液)を用意した。新液であるA−1液を所定期間電気めっき浴工程で使用した後の状態のものがA−2液である。また、新液であるB−1液を所定期間電気めっき浴工程で使用した後の状態のものがB−2液である。各々に関して吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。新液と稼働液では吸収スペクトルに明確な差違が認められ、稼働液中には一価銅が比較的多量に存在していることが確認された。一方、新液中には一価銅は殆ど含まれていない。前述した検量線に基づいて、A−2液中の一価銅濃度が1.2mmol/dm、B−2液中の一価銅濃度が0.2mmol/dmであることが確認された。
図5には、A−1液及びA−2液の吸光度の時間変化を示す。稼働液であるA−2液に関しては、吸光度は、上昇開始から1〜5分以内で急激に上昇し、その後も徐々に上昇していることが確認された。新液であるA−1液では、吸光度の値が小さく、時間変化はほとんど認められなかった。この吸光度測定用溶液調整直後の吸光度の時間変化については、B液でも同様の傾向が認められた。稼働液であるA−2液及びB−2液における吸光度の時間変化は、前述した一価銅標準溶液の吸光度の時間変化と比較して大きな差違があることが把握された。一価銅標準溶液では、吸光度の値は上昇開始から1分以内で一定となり、その後、1時間経過しても変化は生じなかった。なお、A−2液に関しては、吸光度の上昇開始から1〜5分経過した後は上昇が徐々に緩やかになり、数時間経過した時点では吸光度の上昇が収束していた(10分あたりの上昇値が0.01以下となった)。このときの収束値は、0.36であった。
これらの実験結果より、一価銅を含む標準溶液に対しては1分程度で収束するBCS試薬の反応が、所謂稼働液に関しては、吸光度測定用溶液調整から長時間(上記の例では数時間)を経なければ当該稼働液の一価銅濃度を正確に測定することができないという問題があることがわかった。しかしながら一価銅濃度はめっき製品の不良率に直接影響する値であり、短時間でのフィードバックが必要なケースが多くある。この問題を解決すべく、本発明者らは、以下のように銅めっき液中の一価銅の状態分析を行った。
[5.銅めっき液中の一価銅の状態分析]
銅めっき液中の一価銅の状態分析のために、銅めっき液の新液B−1と稼働液B−2について、プロトン核磁気共鳴(H−NMR(H-Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy))及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization-Mass Spectrometry)による成分分析を行った。MALDI−MSにはAXIMA−TOF2(株式会社島津製作所製、所在地:京都府)を用い、マトリックスにはカーボンを用いた。試料としては、銅めっき液を中和し、遠心分離後、上澄み液を凍結乾燥したものを使用した。B−1液及びB−2液のH−NMRによる成分分析によって、銅めっき液中にはポリエチレングリコール(PEG(polyethylene glycol))が多量に存在することが確認された。PEGは通常、硫酸銅めっき液に抑制剤として添加されている。さらに、高分子量まで測定可能なMALDI−MSによる成分分析によって、鎖長の異なるPEGが一価銅に配位した[H(OCHCHOH+Cu]をn=4〜43で検出することができた。図6に示すように、[H(OCHCHOH+Cu](n=4〜43)の各質量対電荷比(Mass/Charge)に対応する強度(Intensity)の上方に「○」を表示させた。n=4〜43に対応する各位置に強度の明確なピークがあらわれている。このようにして、めっき液中のCu(I)−PEG錯体[H(OCHCHOH+Cu](n=4〜43)の各々の存在比率を比較することができる。
この結果は、一価銅がPEGの配位した錯体として安定に存在することを示している。図7にはCu(I)−PEG錯体のモデルを示す。本手法のように、MALDI−MSによるPEGが添加された硫酸銅めっき液の成分分析において、[H(OCHCHOH+Cu]の各質量対電荷比に対応する信号強度を特定可能な態様で表示することで、nの異なる、即ち鎖長の異なるPEGに配位されたCu(I)−PEG錯体の各々の存在比率を把握することができる。硫酸銅電気めっき液の中には抑制剤としての高分子のPEG以外にも、平滑剤、促進剤など、比較的分子量の小さい有機成分が存在している。これらの銅めっき液中での作用については、現在でも検討が進められている。銅めっき液中の一価銅は、これらの分子量の小さい有機分子との錯体(以下「小錯体」と称す)や、分子量が比較的大きなPEG等との錯体(以下「大錯体」と称す)を形成することにより、比較的安定にめっき液中で存在していると推定される。
図5及び図6に示した実験データに基づいて、BCS試薬による一価銅の呈色反応の時間変化のモデルを図8に示す。BCS等のキレート試薬は、銅めっき液中の一価銅の錯体(前述したPEGとの錯体等)と比較して、安定な錯体を形成するので呈色反応が進行する。ここで、小錯体の一価銅には容易にBCSが接触できるのに対し、大錯体であるCu(I)−PEG錯体では、大きなPEG分子に一価銅が取り囲まれているため、立体障害によってBCSが容易に一価銅に接触できずに呈色反応が抑制されていると考えられる。
このため、呈色反応の初期には、小錯体の一価銅とBCSとの反応が早く、急激に呈色を示すが、大錯体の一価銅との反応は容易には進まないために、初期の反応が終わると徐々にしか呈色反応は進まないことになる。これが図5に示した吸光度の時間変化となってあらわれたと推定される。BCSによる呈色反応に時間変化が生じることは、一価銅の定量分析に相当の時間を要することになり、銅電気めっき浴工程を管理する際の問題点となる。そこで本発明者らは、呈色反応の時間変化を一価銅の小錯体と大錯体のモデルに基づいて検討した。
図8(a)に示すように、BCSと混合させる前のめっき液中には、一価銅(Cu)、小錯体(small Cu(I) complex)、及び大錯体(Cu(I)-PEG complex)が混在している。この状態のめっき液にBCSを混合させると、図8(b)に示すように反応の初期段階で、錯体を形成していない一価銅にBCSが配位し、比較的接触しやすい小錯体の一価銅にもBCSが配位する。即ち、初期段階では錯体を形成していない一価銅及び小錯体の一価銅に容易にBCSが配位することで急激な呈色反応が生じる。一方、大錯体に関しては、鎖長の長いPEGが一価銅に配意しているためBCSが一価銅に接触し難い。従って図8(c)に示すように、錯体を形成していない一価銅及び小錯体の一価銅へのBCSの配位が終了した後、一定時間を経てから大錯体の一価銅へのBCSの配位が終了して呈色反応が終了すると推定される。
図5に示したように、BCSと硫酸銅めっき液を混合させてから1〜5分以内に急激に吸光度が上昇し、その後徐々に吸光度の上昇が緩やかになり、数時間を経過すると吸光度の上昇が概ね収束する。これはまず、錯体を形成していない一価銅及び接触しやすい小錯体の一価銅へBCSが配位し、この配位が概ね1〜5分程度で終了し、その後徐々に大錯体へのBCSの配位が進行し、大錯体へのBCSの配意が概ね数時間程度で終了するためと推定される。
なお、ポリエチレングリコールに限らず、一価銅と大錯体を形成しうる添加剤が存在する場合、同様に吸光度が上昇を開始してから数分後までは吸光度が急激に上昇し、その後徐々に吸光度の上昇が緩やかになり、数時間で収束に向かう現象が生じうる。
ここで、一価銅と大錯体を形成する物質としては、銅めっき液に添加剤として含まれるポリマー等がある。例えば、銅めっき液に添加剤として含まれるポリオキシエチレン系又はポリオキシプロピレン系のノニオン系界面活性剤(ポリエチレングリコール)であり、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオレインエーテル等が挙げられる。また、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルセルロース等が一価銅と大錯体を形成しうる。但し、これらの物質に限定されるものではなく、ポリマー以外の物質、界面活性剤以外の物質であって一価銅と錯体を形成するものが該当する。
このようにポリエチレングリコールのような大錯体形成原因物質が存在することが、呈色反応が生じてから一定時間吸光度が収束せずに上昇を続ける原因であることを解明した。また、この大錯体形成原因物質による影響は初期の反応後に、徐々に増加するものでありその増加量は同一の稼働液においては安定していることがわかった。本実施形態では、収束前の吸光度に基づいて一価銅の濃度を測定することを可能としている。
[6.実証実験]
図9は、硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液の吸光度を長期間モニタリングした結果を示す図である。一価銅の分析について、実際にプリント回路基板の硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液(前述したA液)のモニタリングを実施した。生産ラインに使用されている硫酸銅めっき液についてほぼ1ヶ月の期間、生産ライン稼働中又は稼働直後の一価銅濃度、及び休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度を測定した。通常、生産ライン稼働中に電解めっき槽に流している電流は、週末等の休暇時等に停止させている。図中のONで示す期間は電流を流している期間(稼働期間)であり、図中のOFFで示す期間は電流を停止している期間(休止期間)である。休止期間においてめっき浴は電気的に休止した状態に保たれている。図中の曲線aは、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度を示しており、曲線bは、吸光度の上昇開始から2分後の吸光度を示している。曲線cは前記両吸光度の差、即ち吸光度の上昇開始から2分〜20分迄の18分間に上昇した吸光度を示している。
まず図9に示すようにモニタリング0日目に、稼働を終えた直後の硫酸銅めっき液の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.20、同2分後の吸光度bが0.14、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング3日目に休止期間(off期間)終了直前(on期間開始直前)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.21、同2分後の吸光度bが0.15、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング5日目に稼働中(on期間中)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.20、同2分後の吸光度bが0.14、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング10日目に休止期間(off期間)終了直前(on期間開始直前)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.21、同2分後の吸光度bが0.15、両者の差cが0.06であった。
このようにして、稼働中又は稼働直後の吸光度、及び休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度を交互に測定した結果、図9に示すように、休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度aは、その前後の稼働期間中又は稼働期間直後に測定された吸光度よりも高いという特徴がみられた。全ての測定データについてこの傾向があてはまる。また、最も長い最後の休止期間(モニタリング21日目〜31日目)において、吸光度の上昇値が最も高い。これは休止期間中には例外なく一価銅濃度が上昇したことを示すものである。従来より、硫酸銅電気めっき浴工程において稼働開始日はめっき不具合の発生頻度が比較的高いことが経験的に知られていた。図9に示す実験結果は、この事実を裏付けるものである。
ここで呈色反応開始から2分後と20分後の吸光度の差については、曲線cが示すように稼働期間、休止期間にかかわらず、モニタリング期間中ほぼ一定値であった。これは前述した大錯体において、一価銅は大きな有機分子(PEG)に囲まれて比較的安定に存在しており、めっき浴の状態(on、off)に影響を受けにくいためと考えられる。一方、前述した小錯体では、立体障害が比較的小さいためにめっき浴中の溶存酸素などとの一価銅の反応が起こりやすく、その存在量については相対的にめっき浴の状態(on、off)の影響をうけやすいと考えられる。
これらの実験結果と、「稼働開始日はめっき不具合の発生頻度が比較的高い」という事実を勘案すれば、生産ラインで使用されている硫酸銅めっき液に関しては、稼働条件に影響を受けやすい、吸光度の上昇開始から数分後(本例では2分後)の吸光度の測定が重要であり、且つ十分である。即ち、一価銅濃度は時間経過によって変動するが、吸光度が収束するのを待つことなく、収束前の時点の吸光度を測定すれば十分である。これにより、硫酸銅電気めっき浴における一価銅の濃度測定を短時間で行うことができる。
ここで呈色反応開始から2分後から20分後までの期間に増加した吸光度は、曲線cが示すように稼働期間、休止期間にかかわらず、モニタリング期間中ほぼ一定値(0.05)であった。さらに、呈色反応開始から2分後から2時間経過し、十分に収束しているときの吸光度変化量は0.10であった、この結果より、吸光度の上昇開始から2分後から、収束時までの吸光度の上昇幅を予め取得しておくことで、上昇開始から2分後に測定した吸光度(例えば0.15)に、上記取得した吸光度を加算した吸光度(例えば0.25)を収束時の吸光度として推定し、これに基づいて一価銅濃度を推定することが可能である。
ここで、吸光度の上昇開始から数分後(本例では2分後)の吸光度、即ち吸光度が収束していない期間において吸光度を測定する場合、一価銅を再酸化させるためのエアバブリングを行うか否かの判定基準を設けておくと良い。例えば本例の場合には、吸光度の上昇開始から2分後の吸光度が0.15以上の場合には当該稼働液に対してエアバブリングを行うようにすると良い。吸光度の上昇が収束し実際の一価銅濃度を測定することができるまで、反応開始後2時間程度を要することがある。しかしここで、2分後から2時間後の吸光度変化量についてその間の上昇幅が0.10であることを予め取得しておくとき、2分後の吸光度が0.15を超えている場合、2時間経過時の吸光度は0.25を超えていると推定することができる。即ち、吸光度の上昇開始から数分後の基準値(本例では2分後の0.15)を設定することで、当該基準値に基づいてエアバブリングの有無を判定可能であるため、吸光度の収束を待つことなく一価銅の濃度管理を迅速に行うことが可能となる。
ここで上記に示した例は、実測された吸光度に基づいて非測定期間における吸光度を推定する方法の一例であるが、これに限らず、以下に示すようなカーブフィッティングによって吸光度曲線を算出することで、非測定期間における吸光度を推定するようにしても良い。
[7.カーブフィッテング]
図10は、めっき液の吸光度(T値)を、数分以内に急激に増大する成分(F値)と、数十分以上かけて緩やかに増大する成分(H値)に分けたモデルを示す図である。図10に示すように、本発明者らは錯体の形成に伴う吸光度(以下T値と称する)の時間変化は、数分以内に急激に増大する成分(以下F値と称する)と、数十分かけて緩やかに増大する成分(以下H値と称する)に分けられると推定している。そして、前者は錯体を形成しない一価銅及び小錯体の一価銅とBCSとの反応、後者は大錯体の一価銅とBCSとの反応に各々対応すると推定した。また、図9に示した実験結果により、吸光度変化が急激な成分(F値)は電解めっき槽の稼働状態に影響され、吸光度変化が緩やかな成分(H値)は電解めっき槽の稼働状態にかかわらずほぼ一定であった。
これらの理論および前述した実験結果を踏まえて、実測した吸光度に基づくカーブフィッティングにより吸光度曲線を決定する方法を構築した。その理論を以下に示す。
ここで、呈色反応の反応式を式(1)とする。
Cu(I)+2BCS→キレート …式(1)
本例における呈色反応では、BCS試薬濃度がCu(I)濃度の10000倍以上となっているため、呈色反応中におけるBCS試薬濃度は一定と考えることができる。例えば以下の(1)〜(4)に示す典型的な条件を設定する。
(1)緩衝液中のBCS試薬の濃度が0.392[mol/l]
(2)緩衝液2.5mlに銅めっき液50μlを加えて呈色反応を生じさせる
(3)吸光度Aは、最大で0.3程度
(4)モル吸光係数ε=1.26×10
このとき、Cu(I)の濃度をCとすると、A=ε×Cとなる。従って、呈色反応液中でのCu(I)の濃度は、C=2.3×10−5[mol/l]であり、BCS試薬の濃度は、Cu(I)の濃度の17050倍となる。このため、呈色反応中におけるBCS試薬の濃度は、ほぼ一定であるとみなすことができる。
そのため、反応速度式には、BCS試薬濃度の項はなく、Cu(I)濃度のみがあらわれることになる。ここで、Cu(I)の初期濃度を C[mol/l]、キレートの濃度をX[mol/l]とした場合に、式(2)の一次反応式が成立する。
dX/dt=K(C−X) …式(2)
ここで、Kは反応速度定数である。
このときキレート濃度は下記の式(3)によりあらわされる。
X=C(1−exp(−Kt)) …式(3)
ここで、銅めっき液中の一価銅の状態として、前述したように、錯体を形成しない一価銅および小錯体と、大錯体とに分類される。そして、BCS試薬との反応速度は両者で大きく異なる。錯体を形成しない一価銅および小錯体の反応定数をK、初期濃度をC[mol/l]、これから得られるキレート濃度をXとし、大錯体の反応定数をK、初期濃度をC[mol/l]、これから得られるキレート濃度をXとすると、式(4)および式(5)が成立する。
=C(1−exp(−Kt)) …式(4)
=C(1−exp(−Kt)) …式(5)
さらに全体のキレート生成量X[mol/l]は、式(6)によりあらわされる。
X=X+X
=C(1−exp(−Kt))+C(1−exp(−Kt)) …式(6)
ここで、吸光度Aとキレート生成量Xとの関係は、モル吸光係数ε=1.26×10とした場合に、式(7)によりあらわされる。
A=εX …式(7)
その結果、吸光度の時間変化は式(8)により表される。
A=εC(1−exp(−Kt))+εC(1−exp(−Kt)) …式(8)
サンプリングされた吸光度および所定タイミングからの経過時間(A,t)の実測値を、式(8)に当てはめて、錯体を形成しない一価銅および小錯体の反応定数K、大錯体の反応定数K、錯体を形成しない一価銅および小錯体の初期濃度C[mol/l]、大錯体の初期濃度C[mol/l]を算出する。これにより吸光度曲線が決定される。
このように、実測されたデータに基づくカーブフィッティングによって吸光度曲線を取得することが可能であり、これによれば、銅めっき液中に存在する金属錯体を簡便に定量化することが可能となる。また、呈色反応速度の相違により錯体を区分し、吸光度曲線の式には区分した錯体各々に対応する項を設けることで、錯体をその区分毎に定量化することが可能となる。ここで、分子量(鎖長)が異なる金属錯体に関する呈色反応速度の相違を前提とすることにより、金属に配位して金属錯体を形成している各種有機成分の量を個別に定量化することも可能となり、めっき条件の解析や制御に有効である。例えば、大錯体の反応定数Kがめっき液により変動する場合には、Kが大きいほど、銅めっき液中のPEGの平均鎖長が小さいと判断することができる。そして、同じめっき浴でめっき液をモニタリングしていたときにKが大きくなってきたときには、めっき浴中のPEGが劣化して、鎖長が短くなっていると推定することも可能である。そして、PEGの劣化によりめっき生成の抑制作用が弱められるとして、必要なめっき制御を実行するといった措置をとることも可能となる。また、小錯体の反応定数Kがめっき液により変動する場合には、錯体を形成しない一価銅および小錯体が、さらに呈色反応速度の異なる複数の区分にわけられ、その割合が変動していると推定することができる。
さらにカーブフィッティングにより得られた吸光度曲線について、tを十分に大きな値(t→∞)とすることで、式(9)が得られる。
A=εC+εC …式(9)
この式(9)により収束後の吸光度を算出することが可能であり、吸光度が収束したときの一価銅濃度も算出可能となる。すなわち、吸光度収束前の実測値に基づいて得られた吸光度曲線によって、吸光度収束時の一価銅濃度を推定可能となる。
上記の例では、呈色反応速度の相違に基づいて錯体を形成しない一価銅および小錯体と、大錯体の2つの区分に分類したが、これに限らず、さらに、錯体を形成しない一価銅および小錯体をその鎖長に応じて異なる区分とする(例えば錯体を形成しない一価銅と小錯体とを異なる区分とする)ようにしても良く、大錯体の中でもその鎖長に応じて異なる区分を設けるようにしても良い。すなわち、式(8)および(9)は2項の例であるが、これを3項以上にしても良い。
[8.一価銅濃度測定装置]
(一価銅濃度測定装置の構成)
図11は、一価銅濃度測定装置の一例を示す機能ブロック図である。この一価銅濃度測定装置1は、電解めっき槽10から硫酸銅めっき液をサンプリングし、測定セル31に供給するサンプリング部20と、前述した呈色用緩衝液を測定セル31に供給する呈色用緩衝液供給部21と、分光光度計30を有し、分光光度計30の制御部37と接続されるシステム制御部40を含む装置である。本例における一価銅濃度測定装置1は、サンプリングした硫酸銅めっき液の吸光度を測定し、測定した吸光度に基づいて一価銅濃度を測定可能であると共に、測定した吸光度に基づいてカーブフィッティングにより吸光度曲線を決定することが可能である。
電解めっき槽10は、槽内の硫酸銅めっき液にエアバブリングを行うバブリング装置14を底部に備えている。本例では、このバブリング装置14もシステム制御部40と接続されている。また、電解めっき槽10には循環路11が設けられている。この循環路11の経路に設けられたポンプ13によって漕内の硫酸銅めっき液が循環路11内を循環しており、その流量はバルブ12によって調節される。さらにこの循環路11は、循環路11内を流れる硫酸銅めっき液をサンプリングするためのサンプリング部20を介して測定セル31と接続されている。例えば、サンプリング部20は硫酸銅めっき液に対して耐蝕性を有し、一定量をサンプリングするチュービングポンプと、サンプリングした硫酸銅めっき液に固形分が混入するのを防ぐための耐蝕性のフィルター等から構成される。
分光光度計30は、吸光度測定用溶液の吸光度を測定するための手段である。例えば、図11に示すように、吸光度測定用溶液が収容される測定セル31と、測定セル31内の吸光度測定用溶液の吸光度を測定する測定部とから構成される。暗所内に設置される測定セル31内では、サンプリング部20によりサンプリングされた所定量の硫酸銅めっき液と、呈色用緩衝液供給部21から供給された適正量の呈色用緩衝液が混合されることで吸光度測定用溶液が調整される。ここで用いられる呈色用緩衝液は、例えば酢酸−NaOH系の緩衝液にBCS試薬を混合して希釈したpH4〜5.5のものである。
分光光度計30の測定部は、例えばランプよりなる発光源32と、この発光源32からの光を分光するための分光部をなす例えば回折格子33と、この回折格子33から出射スリット34を通った単色光の中から例えば波長485nmの単色光を取り出す光学フィルター35と、この光学フィルター35より測定セル31内を透過した光を検知して電気信号に変換するための検知器36と、この信号を増幅して当該波長の吸光度を演算する制御部37とからなる。測定された当該波長の吸光度は表示部38に表示され、システム制御部40に送信される。システム制御部40は、バブリング装置14及び分光光度計30の制御部37との間で制御信号等の送受を行う。
(一価銅濃度測定装置の作用)
例えば、休止期間が明けて硫酸銅電気めっき浴工程を実行する前に、循環路11内を流れる硫酸銅めっき液をサンプリング部20によってサンプリングし、サンプリング部20から所定量の硫酸銅めっき液を測定セル31に供給する。一方、呈色用緩衝液供給部21からは所定量の呈色用緩衝液を測定セル31に供給する。呈色用緩衝液が測定セル31に供給されることで吸光度測定用溶液が調整され、呈色反応が生じる。測定セル31は、上下方向の振動を発生するための撹拌機能付き恒温槽(図示せず)内に設置されている。撹拌による振動で吸光度測定用溶液が撹拌され、恒温槽によって一定温度に保たれている。測定部において吸光度測定用溶液の吸光度の測定が行われる。この吸光度は例えば以下のようにして測定される。
発光源32より発光した光は、光路中に設けられた回折格子33、出射スリット34、及び光学フィルター35を介して、400〜600nmのうちの特定波長(485nm)の単色光とされた後、測定セル31を透過する。この測定セル31を透過した透過光は検知器36によって検知されて電気信号に変換され、制御部37で増幅されて吸光度が演算される。この吸光度は表示部38に表示することが可能である。また、演算された吸光度はシステム制御部40に送信され、システム制御部40に記憶されている一価銅濃度と吸光度の関係を示す検量線(例えば図3)に基づいて、一価銅濃度が演算される。演算された一価銅濃度はシステム制御部40に測定日時と共に記憶され、当該システム制御部40のディスプレイに表示される。
ここで分光光度計30においては、測定された吸光度を逐次システム制御部40に送信している。例えば10秒毎に測定した吸光度をシステム制御部40に送信している。この吸光度の送信は、吸光度の上昇が収束するまでの期間(例えば120分間)継続される。そして、システム制御部40は分光光度計から受信した120分間の測定データを記憶装置に蓄積している。システム制御部40は、測定された吸光度が基準値を超えているとエアバブリング命令を送信し、これを受信したバブリング装置14はエアバブリングを行って一価銅を再酸化させて、吸光度(即ち一価銅濃度)を低減させる。
エアバブリングから一定時間経過すると、硫酸銅めっき液を再度サンプリングして吸光度を測定する。測定された吸光度が基準値以下になるまで上記処理を繰り返す。このように、一価銅濃度測定装置によって一価銅濃度を測定し、基準値以上であればエアバブリングによって一価銅濃度を低減させ、硫酸銅電気めっき浴工程を実行可能な状態にすることで、濃度管理を行っている。
(一価銅濃度の推定と金属錯体の定量化)
上記のようにして吸光度を測定してエアバブリング等の要否を判断することができるが、最終的な一価銅濃度、即ち吸光度の上昇が収束した時点における一価銅濃度を取得するには、あくまで吸光度の収束を待たなければならないという問題がある。本システムでは、前述したシステム制御部40によって、吸光度の上昇が収束していない期間に測定された吸光度データを用いてカーブフィッティングを行い、吸光度曲線を決定して、収束した吸光度を推定することを可能とするものである。これにより、実測データ(例えば呈色反応開始から20分以内に測定した吸光度)に基づいて非測定期間(例えば呈色反応開始から120分経過以降の)吸光度を推定することを可能とするものである。また、算出された吸光度曲線によって、銅めっき液中の金属錯体を定量化し、さらに呈色反応速度が異なる区分に分類した錯体毎の定量化も可能となる。
図12に示すように、システム制御部40には、分光光度計30によって測定された吸光度が、各データの測定時間と関連付けられた時系列データとして記憶されている。すなわち、吸光度(Y)と測定時間(t)との組み合わせとなる実測データ(Y、t)がサンプリング数だけ記憶されている。システム制御部40では、これらの実測データに基づくカーブフィッテングにより吸光度曲線を決定する。ここで、以下の式を用いるものとする。この実施形態においてシステム制御40は、以下の呈色反応速度式により吸光度曲線を規定する。
Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))…+A×(1−exp(−(t+t)/T)) …式(10)
ここで、tは時間変数である。tは呈色反応開始時間に係る定数である。A…Aは呈色反応速度により区分される各錯体の濃度(各錯体が呈色反応に寄与する前の初期濃度ともいえる)に係る定数、T…Tは各錯体の呈色反応速度定数の逆数に係る定数である。ここでtは、キレート試薬と銅めっき液を撹拌することにより呈色反応が開始される時間と、吸光度の測定開始時間とのタイムラグを補正するために設けた定数である。
また、式(10)においてt=∞とすることにより、
Y=A+…+A …式(11)
が得られる。これは収束後の吸光度を示す値となるため、収束時の吸光度に対応する一価銅濃度も、以下の式(12)により算出可能となる。
一価銅濃度=(A+…+A)/ε …式(12)
このように、本実施形態によれば、呈色用緩衝液を混合後、吸光度収束前に得られたデータに基づいて吸光度曲線を決定し、その吸光度曲線に基づいて吸光度の収束値を推定することが可能となる。さらに、検量線を参照し、算出した収束値に対応する一価銅濃度を計算し、当該一価銅濃度を推定値としてディスプレイ等の表示手段に表示する。すなわち、呈色反応開始後から短時間で一価銅濃度を推定することが可能となり、吸光度が収束するまで待機する必要がない。本装置では短時間に複数回の測定が要求されるケースが多いため、その効果は特に大きく、休日明けなどに硫酸銅電気めっき浴工程を早期に再開することが可能である。このようにして吸光度測定用溶液調整後の、吸光度が収束していない早い段階で、当該吸光度測定用溶液の最終的な一価銅濃度を推定することができる。
この実施形態においては、上記の式(10)においてn=2とした式(13)によるカーブフィッティングを実行するものとする。すなわち、呈色反応速度の相違により区分した2つの錯体を想定した定量化を実行する。
Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))+A×(1−exp(−(t+t)/T)) …式(13)
式(13)について、複数の実測データ(Y、t)の組み合わせをあてはめることで、各定数が算出される。算出された各定数は結果は以下のようになった。なお、R値=0.99887であり、式(13)により規定した吸光度曲線は実測値と高い相関を示した。
=0.11185
=9.11625
=0.15517
=0.31142
=0.32628
例えば、上記結果から次のような解析を行うことも可能となる。長い錯体がPEGに配意した大錯体に係る呈色反応速度と、短い錯体がPEGに配意した小錯体に係る呈色反応速度とに区分した場合に、Aから大錯体の初期濃度、Aから小錯体の初期濃度が把握され、Tから大錯体の呈色反応状況、Tから小錯体の呈色反応状況が把握される。所定の銅めっき液を定期的にモニタリングしている場合に、Tが徐々に低下するようであれば、金属イオンの配位している有機成分、例えばPEGの鎖長が徐々に短くなっており、めっきの抑制効果が低下していることを推定することができる。このような場合には、PEGを追加する等の措置を採ることも可能となる。すなわち、各錯体の呈色反応速度に係るT…Tの変動を、各錯体を構成する有機成分の状態変動に対応させることが可能であり、その変化により、有機成分の状態変化を推定することができ(例えば有機成分がPEGである場合に、Tが徐々に低下していることにより鎖長の長いPEGの存在比率が低下しているとの推定が可能であり)、これにより有機試薬の管理を行うことができる。
本実施形態においては、吸光度測定前に、予めBCS試薬と緩衝液を混合して呈色用緩衝液を作成しておき、サンプリング部20によってサンプリングした硫酸銅めっき液と、呈色用緩衝液を測定セル31内で混合することで吸光度測定用溶液を調整した。しかし、これに限らず、まず銅めっき液と緩衝液を混合しておく緩衝部を吸光光度計30外部に設けておき、当該緩衝部において混合された混合液(無呈色)を測定セル31に供給し、当該測定セル31にキレート試薬としてBCS試薬を供給することで吸光度測定用溶液を調整するようにしても良い。また、測定セル31の前段に吸光度測定用溶液調整部を設けておき、当該吸光度測定用溶液調整部においてサンプリングした硫酸銅めっき液と呈色用緩衝液を混合した直後に測定セル31に供給するようにしても良い。また、銅めっき液のpHが当初から至適pHである場合(例えばpH4〜5.5程度の場合)には、緩衝液との混合は不要であり、BCS試薬と銅めっき液を測定セル31で混合することで吸光度を測定することができる。
1…一価銅濃度測定装置
10…電解めっき槽
14…バブリング装置
20…サンプリング部
21…呈色用緩衝液供給部
30…分光光度計
40…システム制御部

Claims (19)

  1. 一価銅イオンが含まれるめっき液を含むサンプル溶液およびバソクプロインジスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液の吸光度を測定する吸光度測定工程と、
    測定された吸光度に基づいたカーブフィッテングにより時間と吸光度の関係を示す吸光度曲線を決定する吸光度曲線決定工程と、
    決定された吸光度曲線に基づいて、前記吸光度が測定されていない非測定期間における吸光度を推定する吸光度推定工程と、
    前記非測定期間における吸光度の推定結果に応じて、測定される吸光度の収束を待機することなく、前記めっき液に対してバブリングを行うバブリング工程と、
    を含むことを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
  2. 請求項1に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    前記吸光度曲線は複数の指数関数からなる多項式によって構成されることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
  3. 請求項2に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    前記複数の指数関数各々を分子量の異なる複数の錯体各々の濃度に対応させることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
  4. 請求項2または3に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    各指数関数は、その指数部に含まれる時間変数の増加に伴い所定値に収束する時間関数であることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
  5. 請求項4に記載した金属錯体定量化方法であって、
    各指数関数に係る収束速度を規定する定数の変動を、分子量の異なる複数の錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする金属錯体定量化方法。
  6. 請求項4または5に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    分子量が異なる複数の錯体の数をn(n≧2)としたときに、前記吸光度曲線に係る多項式Yを以下の式により規定することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
    Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))…+A×(1−exp(−(t+t)/T))
    ここで、tは時間変数、tは呈色反応開始時間に係る定数、A…Aは各錯体の濃度に係る定数、T…Tは各錯体の呈色反応速度定数の逆数に係る定数である。
  7. 請求項6に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    前記吸光度測定工程において測定された吸光度の測定値および時間を、前記多項式のYおよびtに当てはめることにより、各定数を算出することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
  8. 請求項7に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    …Tの変動を、各項に係る錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする金属錯体定量化方法。
  9. 請求項7または8に記載しためっき液中の金属錯体定量化方法であって、
    前記各定数が算出された吸光度曲線について、収束される吸光度を以下の式により算出することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化方法。
    Y=A…+A
  10. 一価銅イオンが含まれるめっき液を含むサンプル溶液およびバソクプロインジスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液の吸光度を測定する吸光度測定手段と、
    測定された吸光度に基づいたカーブフィッテングにより時間と吸光度の関係を示す吸光度曲線を決定する吸光度曲線決定手段と、
    決定された吸光度曲線に基づいて、前記吸光度が測定されていない非測定期間における吸光度を推定する吸光度推定手段と、
    前記非測定期間における吸光度の推定結果に応じて、測定される吸光度の収束を待機することなく、前記めっき液に対してバブリングを行うバブリング手段と、
    を含むことを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  11. 請求項10に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    前記吸光度測定手段、前記吸光度曲線決定手段、前記吸光度推定手段、及び前記バブリング手段と、を制御する共通の制御手段を含むことを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  12. 請求項10または11に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    前記吸光度曲線は複数の指数関数からなる多項式によって構成されることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  13. 請求項12に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    前記複数の指数関数各々を分子量の異なる複数の錯体各々の濃度に対応させることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  14. 請求項12または13に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    各指数関数は、その指数部に含まれる時間変数の増加に伴い所定値に収束する時間関数であることを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  15. 請求項14に記載した金属錯体定量化装置であって、
    各指数関数に係る収束速度を規定する定数の変動を、分子量の異なる複数の錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする金属錯体定量化装置。
  16. 請求項14または15に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    分子量が異なる複数の錯体の数をn(n≧2)としたときに、前記吸光度曲線に係る多項式Yを以下の式により規定することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
    Y=A×(1−exp(−(t+t)/T))…+A×(1−exp(−(t+t)/T))
    ここで、tは時間変数、tは呈色反応開始時間に係る定数、A…Aは各錯体の濃度に係る定数、T…Tは各錯体の呈色反応速度定数の逆数に係る定数である。
  17. 請求項16に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    前記吸光度測定手段により測定された吸光度の測定値および時間を、前記多項式のYおよびtに当てはめることにより、各定数を算出することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
  18. 請求項17に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    …Tの変動を、各項に係る錯体各々を形成する有機成分の状態変動に対応させることを特徴とする金属錯体定量化装置。
  19. 請求項17または18に記載しためっき液中の金属錯体定量化装置であって、
    前記各定数が算出された吸光度曲線について、収束される吸光度を以下の式により算出することを特徴とするめっき液中の金属錯体定量化装置。
    Y=A…+A
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