JP6177159B2 - 熱延コイル材の冷却方法、及び熱延コイル材の製造方法 - Google Patents
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Description
圧延材が軟鋼の場合、水冷手段で目標の巻き取り温度まで冷却する過程で変態は完了する。一方、高炭素鋼や近年開発が進んでいるハイテン鋼でC、Si、Mnを多く含む材料については、コイル材に巻き取った時点では変態が完了しないか、もしくは変態がほとんど進行していないことが明らかになってきた。
係る状況は、例えば高強度冷延鋼板において、顕著に発生することが知られている。
このようなコイル材の徐冷技術としては、例えば、特許文献1に熱延鋼板コイルの冷却法が開示されている。この技術では、コイル材における結晶粒の成長、AlN、MnS、鉄炭化物の析出、粗大化に着目して、「高温巻取り後のコイル放冷中の保温装置」を設置している。保温装置はコイル材を覆う保温カバーを有しており、この保温カバーを被せ、コイル外周部温度が(巻取り温度−250)℃になるまでの領域を平均冷却速度5℃/分以下で冷却することとしている。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、熱延後に巻き取られたコイル材を適切に冷却することで、フェライト主体であって軟質で均一な組織とする熱延コイル材の冷却方法、及び熱延コイル材の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の熱延コイル材の冷却方法は、熱間圧延された圧延材を巻取ってなるコイル材の冷却方法であって、
(i) 圧延材の鋼種成分によって定まるベイナイト変態温度を基に決まる温度TA以上の巻取温度CTにて圧延材をコイル材へと巻き取り、
(ii) 前記圧延材の鋼種成分と巻取温度CTとを基に、コイル材がフェライト・パーライト組織になるまでの保持時間taを求め、
(iii) コイル材に対する伝熱計算を行うことで、コイル材の外周部の温度低下状況を算出し、算出された温度低下状況を基に、前記コイル材が当該コイル材の鋼種成分によって定まるマルテンサイト変態温度TB以下となるまでの時間tbを求め、
(iv) 時間ta>時間tbとなる場合、コイル材の巻取り後、時間tb経過する以前に、コイル材を保温し、時間ta>時間tbとならない場合、コイル材を保温しない
ことを特徴とする。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の実施形態に係る冷却方法が行なわれる熱間圧延ライン1の概略を示す。図1に示すように、連続仕上圧延機2や水冷手段3を備えた熱間圧延ライン1で圧延された圧延材Wは、通常400〜600℃程度の温度において巻き取り機で巻き取られてコイル材Sとなり、その後、熱延コイル搬送コンベア(搬送手段)により熱延コイル置場4に搬送されて、そこで室温まで冷却される。なお、熱延コイル搬送コンベアにコイル材Sが載置されて搬送される。
本発明の冷却方法は、熱間圧延された圧延材Wを巻取ってなるコイル材Sの冷却方法であって、ベイナイト変態温度TA以上での巻き取りを行う「コイル材巻き取り工程」と、保持時間taを算出する「時間ta算出工程」と、コイル材Sがマルテンサイト組織に到達する時間を算出する「時間tb算出工程」と、コイル材Sを保温する「保温工程」の4つの工程を有する。
図2には、対象とされている熱延鋼材のTTT線図が示されている。
図2に示す如く、熱延鋼材の巻き取り温度をCTとした場合、この温度及び熱延鋼材の鋼種成分から、当該熱延材がフェライト・パーライト組織になるまでの時間taを求める。
本実施形態の場合、温度TAをベイナイト変態温度Bsとしている。ベイナイト変態温度Bsは、Steven & Haynesの式(W. STEVEN and A. G. HAYNES, J. Iron Steel Inst. 183 (1956) 349; Iron and Steel, 29 (1956), 634.)を用い求めることとする。
一方、時間taは、図2のようなTTT線図(実測線図又は計算線図)を用いて算出する。求めた時間taは、巻き取り温度CTで巻き取ったコイル材Sを時間ta以上保温状態のままで保持することで、当該コイル材Sはフェライト・パーライト組織になることを意味する。
このようにして得られた温度TBに、コイル材Sが到達する時間tbを求める。
コイル材Sの温度低下履歴は、本実施形態では数値シミュレーションにより求めた。シミュレーション計算の概略は以下の通りである。
以上述べた熱延コイル材Sの冷却方法を用いて熱延後のコイル材Sを冷却し、所望とする製品特性を備えた熱延圧延鋼板を製造する方法について、説明を行う。
巻き取り機で巻き取られたコイル材Sは、熱延コイル搬送コンベアにより熱延コイル置場4に搬送されて、そこで室温まで冷却される。この際、時間ta算出工程で求めた時間taが、時間tb算出工程で求めた時間tbより長い場合、コイル材Sの巻取り後、時間tb経過する以前に、コイル材Sを保温するようにする(保温工程)。コイル材Sの保温は、断熱材で構成された保温カバーをコイル材Sに被せるなどの手法が採用可能である。なお、保温を止める時間はta以上とすることが好ましい。
なお、コイル材Sの保温方法は、セラミックファイバー断熱材50mmをコイル材Sの周囲に巻くことにした。また、時間taに関しては、巻き取り温度CTがTA以下となる場合、taは存在しないこととした。
例えば、屋外から吹き込む風の影響でコイル材Sが予想よりも速く冷却される場合や、コイル材Sを保管する環境の温度が急激に変化するなどして予想以上の速度で冷却が進行するような場合には、上述した冷却方法で得られた時間tbが経過するより前に保温を開始したとしても、マルテンサイト変態が実際よりも速く起こってしまうといったことが起こり得る。このような場合には、保温を実施することを判断したタイミングにおける予測よりコイル材Sが早く冷えてしまい、保温実施時にはマルテンサイト変態温度TB以下までコイル材Sの温度が低下する可能性がある。そのため、時間tbが経過するより前に保温を開始したとしても、コイル材Sの一部がマルテンサイト変態を起こし、材質や強度の均一性が損なわれる可能性が出てくる。
この領域Pの決定は、計測された温度TC1及びTC2とマルテンサイト変態温度TBとの温度差に基づいて行われる。
すなわち、コイル材Sの内部では径方向に沿って温度が一定の変化率で変化していると考えれば、計測された内周部の温度TC1及び外周部の温度TC2の計測データを用いて、コイル材Sの径方向における単位長さ当たりの温度変化率α(℃/mm)を求めることができる。このようにして温度変化率αが得られたら、計測された温度TC1及びTC2とマルテンサイト変態温度TBとの温度差δTを計算により求める。例えば、外周部の温度TC2がマルテンサイト変態温度TBより低い場合であれば、外周部の温度TC2とマルテンサイト変態温度TBとの温度差δTをまず計算により求める。求められた温度差δTを温度変化率αで除したものが、マルテンサイト変態温度TBよりも低い温度を示す領域Pとなる。このようにして求められた領域Pは、コイル材の巻外から径内側に向かって不良部がどの程度の厚み(径方向に沿った長さ)存在するかを示しており、巻外から巻芯側にP(m)の厚みだけコイル材をカットすれば、硬質な不良部が製品コイルに含まれることを防止することが可能となる。
このようにしてカットして取り除かれるコイル材Sの領域Pが決定されたら、保温後のコイルを適宜カットできるラインに送り、決定されたコイル材Sの領域Pをカットして取り除く。このようにすれば硬質な不良部を取り除くことができ、不良部を含まないコイル材を製品として得ることが可能となる。
2 連続仕上圧延機
3 水冷手段
4 熱延コイル置場
S コイル材
W 圧延材
Claims (2)
- 熱間圧延された圧延材を巻取ってなるコイル材の冷却方法であって、
(i) 圧延材の鋼種成分によって定まるベイナイト変態温度を基に決まる温度TA以上の巻取温度CTにて圧延材をコイル材へと巻き取り、
(ii) 前記圧延材の鋼種成分と巻取温度CTとを基に、コイル材がフェライト・パーライト組織になるまでの保持時間taを求め、
(iii) コイル材に対する伝熱計算を行うことで、コイル材の外周部の温度低下状況を算出し、算出された温度低下状況を基に、前記コイル材が当該コイル材の鋼種成分によって定まるマルテンサイト変態温度TB以下となるまでの時間tbを求め、
(iv) 時間ta>時間tbとなる場合、コイル材の巻取り後、時間tb経過する以前に、コイル材を保温し、時間ta>時間tbとならない場合、コイル材を保温しない
ことを特徴とする熱延コイル材の冷却方法。 - 請求項1に記載の冷却方法を用いて熱延コイル材を製造するに際しては、
前記熱間圧延されたコイル材を保温する前に、前記コイル材の内周部の温度と前記コイル材の外周部の温度との少なくとも一方を計測し、
前記計測された温度がマルテンサイト変態温度TBを下回る場合には、前記計測された温度とマルテンサイト変態温度TBとの温度差に基づいて、前記マルテンサイト変態温度TBを下回るコイル材の領域Pを求め、
前記保温後に、前記求めたコイル材の領域Pを切断して取り除き、前記領域Pが取り除かれたコイル材を製品とする
ことを特徴とする熱延コイル材の製造方法。
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