JP6175101B2 - 微細フェライト粒界析出型マルテンサイト組織を有する鋼製品 - Google Patents

微細フェライト粒界析出型マルテンサイト組織を有する鋼製品 Download PDF

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Description

本発明は、オーステナイト粒界に、微細なフェライトとセメンタイトなどの炭化物とが分かれて析出され、塊状のフェライトと塊状の炭化物とがネット状に粒界に析出し、生地にはマルテンサイト組織を有する鋼製品等に関する。
鋼材をオーステナイト領域にまで加熱して冷却した場合、連続冷却条件でも等温冷却条件でも臨界冷却速度以下に遅く冷却すれば、オーステナイト粒界にパーライトがネット状に析出し、また臨界冷却速度より早く冷却すれば、ネット状組織は析出しないでマルテンサイト組織に変態する。これが、これまで鋼材組織に関して認識されている基本的事項である。
上記オーステナイト粒界にネット状に析出したパーライトは、フェライトとセメンタイトが層状に析出したものである。また、鋼材を均一なオーステナイト組織にするには高い温度と時間が必要である。
マルテンサイト組織を有する鋼材は、靭性が大きく低下するため、焼戻し処理を行い靭性のある製品として使用するのが一般的である。この場合、靭性と強度のどちらを必要とし優先するかで焼戻し処理温度を調整し、これにより用途に応じた性能を有する鋼製品として使用している。
したがって、靭性と強度との両方を満足する鋼製品は得られないというのが現在の熱処理の姿である。即ち、従来の熱処理(焼戻し)では、マルテンサイト組織全体をトルースタイト、ソルバイト組織などの微細パーライト組織に変換しマルテンサイト組織を無くしてしまうため、強度が低下することはやむを得ないことであった。
例えば特許文献1には、電気抵抗溶接を行ったボールスタッドを、通電加熱により600〜650℃に加熱して通電焼き戻しをすることにより、溶接部の硬さを下げ靭性を付与することが記載されている。
また特許文献2には、ワークを誘導加熱法などで焼入れし、これを焼き戻しステーションに送り、誘導加熱により300℃程度以下の温度で焼き戻しを行い、ワークの割れなどの製品欠陥を生じにくくすることが記載されている。
また、本件出願人は、先に特許文献3において、圧入接合における熱処理方法及びこれによる接合構造を開示した。これは電極などの冶具を用い、圧入接合により第一の鋼材(孔部を穿設)に軸体を固相接合し、さらに焼き鈍し、浸炭などの熱処理を行うものである。
特開2004−278666 特開2008−223055 国際公開2006/033316
さて、上記各特許文献1〜3に記載の焼き戻し等の熱処理は、焼入れ組織であるマルテンサイト組織全体をトルースタイト、ソルバイトなどのセメンタイトとフェライトの微細な層状組織(微細パーライト)に変換し、マルテンサイト組織をなくするものである。
このため、従来の熱処理では靭性は回復する一方、硬度(強度)は低下するという特性を有する問題があり、これは一般に知られた熱処理の特徴である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱処理の信頼性に優れ、高い靭性と延性及び高い硬度及び強度を有する組織、即ち塊状の微細フェライトと鉄炭化物とがネット状に粒界に析出したマルテンサイト組織を有する鋼製品を提供することを目的とする。
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る鋼製品は、オーステナイト粒界に、微細なフェライトと鉄炭化物とが分かれて析出し、かつ上記鉄炭化物と比べて上記フェライトが大部分を占め、さらに上記フェライトと上記鉄炭化物とがそれぞれ塊状となってネット状に粒界に析出し、生地にはこれら析出物に囲まれたマルテンサイト組織が存在する組織を、有する特徴がある。
また本発明に係る鋼製品は、上記組織を、固相拡散接合による接合部に有することを特徴とする。さらに本発明に係る構成品として、上記接合部は、通電加熱により鋼材の孔部に他の鋼材を圧入して接合された接合部であることを特徴とする。
また、本発明に係る鋼製品は、上記鋼材として、炭素量0.18〜1.20%、好ましくは0.32〜0.90%の鋼材又は浸炭処理をした鋼材を用いたものである。
本発明者らは、上記特許文献3に係る抵抗加熱方式の圧入製造方法及び熱処理に関し、さらに種々の実験を重ねているうちに、硬度(強度)の低下が少なくて高い強度が維持され、且つ靭性及び延性に優れた特性を有する鋼製品及びその製造方法を開発するに至った。
この製造方法では、接合条件と接合後の熱処理方法を工夫することによって、従来の熱処理で得られなかった有用な組織を有する鋼製品を得ることができた。
即ち上記鋼製品は、マルテンサイト組織を残したまま、微細なフェライト及びセメンタイトなどの炭化物がそれぞれ塊状になってネット状に粒界に析出したマルテンサイト組織を有するという特徴を備えている。
上記炭化物は鉄炭化物であり、FeC(セメンタイト)だけでなく、Fe20、Fe、Fe、等が含まれたものである。
この組織は、後述する鋼製品の接合部の組織写真に見られるように、非常に延性に富むフェライト、そして少量のセメンタイトなどの炭化物の析出物が結晶粒界に塊状となってネット状に析出した組織、これらの析出物に囲まれたマルテンサイト組織によって構成されている。
上記鋼製品の金属組織は、マルテンサイトの組織の生地に、フェライトの塊及び炭化部の塊が混合してネット状に連なって粒界に析出した組織であり、また炭化物の塊に比べてフェライトの塊の部分が多くを占めている。この鋼製品は、上記フェライトのネット状組織により延性、靭性などの特性が得られ、またマルテンサイト組織が生地に存在している。
例えば、強く、崩れにくい石垣は硬くて強い大きな石だけでなく、石同士の隙間を埋める目地が存在してはじめて、優れた石垣ができる。この強く、崩れにくい石垣と同じように、マルテンサイトの周囲にフェライトを中心としたネット状の析出物が存在することによって、硬度及び強度などと延性、靭性を併せ持った優れた特性が得られるのである。
このような金属組織は、従来知られていたパーライトのようにフェライトと炭化物とがサンドイッチ状に層状構造を形成しているものとは異質である。
このネット状の析出物には脆いセメンタイトのような炭化物が少なく、また生地にはマルテンサイトがそのまま存在している。このため、上記鋼製品の組織は硬度及び強度(接合強度)、延性及び靭性を兼ね備えたものとなっている。
なお一般には、マルテンサイトの粒界に硬く脆いセメンタイトがネット状に析出した組織が知られているが、セメンタイトは延性が殆どないため、このような組織を持つものは割れが発生し易く、強度を要求される部材には用いられず用途も限られる。
本発明に係る鋼製品の製造方法は、鋼材又は鋼材の一部をA3又はA1変態点以上に加熱(急速)して、鋼材組織をオーステナイト組織に変化させた後、急速冷却をする。この冷却時に、冷却速度を制御することにより、鋼材の連続冷却変態図(CCT線図:Continuous Cooling Transformation diagram)において、冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線(Ps線)上を通過するように調整し、さらにマルテンサイト変態点を通過して冷却することである。
この冷却速度を制御する方法として、本発明では再加熱の手段及び接合部の温度低下を抑制する手段を採用する。
鋼材の冷却過程において、通常は最初に微細パーライト(フェライトとセメンタイトの層状組織)が析出する。本発明に係る冷却過程においても、微細フェライトとセメンタイトなどの炭化物とがオーステナイト粒界に析出するが、これは層状ではなく、それぞれ塊状になってネット状に析出しており、これは上記通常のものとは大きな違いである。
この後冷却が進行するに伴って、素地全体(未変態部)がマルテンサイト変態によってマルテンサイトに変化する。このような冷却過程を経ることによって、マルテンサイトの粒界にネット状の析出物が存在する本発明に係る鋼製品の組織が得られる。
この鋼製品の製造プロセスでは、拡散接合後の焼戻し処理工程は必要ではなく、特に焼戻し工程を追加しないで、強度と靭性を有する材質を得ることができることも本発明の製造方法の優れた特徴の一つである。
本発明に係る鋼製品の製造方法は電気抵抗熱を用いる方法であり、鋼材又は鋼材の一部をオーステナイト組織にするために、一次通電による抵抗熱によりA3又はA1変態点以上に急速加熱した後、2秒以内、又は連続冷却変態図において、オーステナイトからパーライトまたはフェライト、またはセメンタイトが析出される析出線の最短(時間)析出部分を通過する冷却曲線としての臨界冷却曲線が、上記析出線を通過する時間よりも短時間の冷却時間をおく。
そして、この冷却時間の後二次通電による再加熱を行って温度を連続冷却変態図のパーライト析出線以上の温度に上昇又は保持させ、つまりオーステナイトからマルテンサイトに至る変態過程において、鋼材の温度を急速に上昇させた後、冷却し、この冷却時に、冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線(Ps線)上を通過し、さらにマルテンサイト変態点(Ms線)を通過して冷却することである。
上記一次通電は金属組織をオーステナイト組織にするものであり、二次通電は、冷却曲線がPs線を通過するように金属組織の冷却を遅らせるための通電である。この二次通電により、上記オーステナイト組織を微細フェライトとセメンタイト等の炭化物とがネット状に析出した組織に変化させる。
一次通電後に二次通電を行わない場合、鋼製品に係る金属組織は、連続冷却変態図における冷却曲線がPs線を通過しないでPs線を避け、このPs線の時間軸の短時間側(左側)を通り、即ち上記臨界冷却曲線の左側を通り、Ps線近傍或いはこれ以下の温度に冷却される。
このため、一次通電後、2秒以内の冷却時間後、又は連続冷却変態図において、オーステナイトからパーライトまたはフェライト、またはセメンタイトが析出される析出線の最短析出部分を通過する臨界冷却曲線が、上記析出線を通過する時間よりも短時間に二次通電を行い、これにより金属組織を一旦Ps線以上の温度に再加熱し、冷却曲線を連続冷却変態図における時間軸の長時間方向(右側)、即ち上記臨界冷却曲線の右側を通るように移動させて冷却を遅延させ、冷却曲線がPs線を通過するようにする。
上記冷却に関し、冷却曲線が上記臨界冷却曲線の右側を通るように冷却速度を制御し冷却することにより、冷却曲線が最初にPs線を横切るため、オーステナイト組織に塊状の微細フェライトとセメンタイト等の炭化物とがネット状に析出する。この冷却速度制御は、本発明に係る鋼製品を製造するための基本的な技術思想である。
また、本発明に係る鋼製品1の製造方法は、第一の鋼材4と第二の鋼材6との接合部2を、一次通電による抵抗熱によりA3又はA1変態点以上に急速加熱して固相拡散接合を行った後、2秒以内の冷却時間をおき、この後上記接合部に、二次通電による再加熱を行って、温度を連続冷却変態図のパーライト析出線以上の温度に上昇又は保持させ、オーステナイトからマルテンサイトに至る変態過程において、鋼材の温度を(急速に)上昇(又は保持)させた後冷却し、この冷却時に、冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線(Ps線)上を通過し、さらにマルテンサイトの変態点(Ms線)を通過して冷却することである。
これから、上記一次通電は固相拡散接合を行うための通電であり、かつ接合部の金属組織をオーステナイト組織にするための通電といえる。また上記二次通電により、冷却曲線がPs線を通過し、この二次通電によりオーステナイト組織がフェライト等の炭化物がネット状に析出した組織に変化する。
本発明に係る鋼製品1の製造方法は、第一の鋼材4の孔部5内に第二の鋼材6を所定の圧力で押圧するとともに、これら両鋼材間に一次通電を行って両鋼材の接合部2をA3又はA1変態点以上に急速加熱し、上記両鋼材の接合部2を軟化させて上記第二の鋼材6を上記第一の鋼材4の孔部5に圧入して固相拡散接合を行った後、2秒以内の冷却時間をおき、この後上記接合部2に二次通電による再加熱を行って、温度を連続冷却変態図のパーライト析出線以上の温度に上昇又は保持させ、オーステナイトからマルテンサイトに至る変態過程において、鋼材の温度を(急速に)上昇(又は保持)させた後冷却し、この冷却時に、冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線上を通過し、さらにマルテンサイトの変態点を通過して冷却することである。
また本発明に係る鋼製品の製造方法は、上記二次通電の電流値を、上記一次通電の電流値の1/2以上としたことである。
上記二次通電の電流値が一次通電の電流値の1/2以上であれば、接合後の冷却曲線が時間軸の長時間方向に移動してPs線を通過することから、接合部2における上記ネット状組織が明瞭に析出される。
上記二次通電による再加熱によって、接合部2の冷却曲線がPs線を通過するように冷却速度を遅らせることができ、これにより接合部に上記鋼製品の組織として「塊状のフェライトと塊状のセメンタイトが網状に析出した鋼材の組織」ができるのは、組織が急速加熱に伴う不安定なオーステナイト組織の生成、塑性変形を伴う急速な圧入、急速な冷却などを伴うためであり、これは上記圧入による固相拡散接合という非平衡で且つ特異な状態にあるため、上記塊状のフェライト及びセメンタイトが連なったネット状組織が生じたものと考えられる。
このようなメカニズムであれば、上記二次通電により冷却曲線を時間軸の長時間方向に移動させる製造方法以外にも、上記圧入による固相拡散接合という非平衡で且つ特異な条件の下で、接合部2の冷却曲線の冷却速度を臨界冷却速度より遅延させる等の制御によっても、上記と同様の鋼材の組織を得ることが可能と考えられる。この冷却曲線の冷却速度を制御する方法として、接合部の温度低下を抑制する手段を用いる。
なお、一次通電のみの圧入による固相拡散接合では、加熱時間が短かく、冷却速度も冷却(水冷)された電極等により非常に速いため上記鋼製品の組織を得るのは容易ではない。
本発明に係る鋼製品1の製造方法は、鋼材又は鋼材の一部を、通電による抵抗熱によりA3又はA1変態点以上に急速加熱するとともに、温度低下の抑制手段により上記鋼材の冷却速度を遅らせ、連続冷却変態図における冷却曲線が臨界冷却曲線より遅くなるように制御し、上記冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線上を通過し、さらにマルテンサイト変態点を通過して冷却することである。
ここで上記「臨界冷却曲線」とは、連続冷却変態図(CCT線図)においてオーステナイトからパーライトまたはフェライト、またはセメンタイトが析出される析出線の最短(時間)析出部分を通過する冷却曲線のことをいう。また、「臨界冷却速度」は、上記臨界冷却曲線に係る冷却速度である。
また、本発明に係る鋼製品1の製造方法は、第一の鋼材4と第二の鋼材6との接合部2を、通電による抵抗熱によりA3又はA1変態点以上に急速加熱して固相拡散接合を行うとともに、温度低下の抑制手段により上記接合部2の冷却速度を遅らせ、連続冷却変態図における冷却曲線が時間軸の長時間方向に移動するように制御し、上記冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線(Ps線)上を通過し、さらにマルテンサイト変態点を通過して冷却することである。
また、本発明に係る鋼製品1の製造方法は、第一の鋼材4の孔部5内に第二の鋼材6を所定の圧力で押圧するとともに、これら両鋼材間に通電を行って両鋼材の接合部2をA3又はA1変態点以上に急速加熱し、上記両鋼材の接合部2を軟化させて上記第二の鋼材を上記第一の鋼材の孔部5に圧入して固相拡散接合を行うとともに、温度低下の抑制手段により上記接合部2の冷却速度を遅らせ、連続冷却変態図における冷却曲線が上記臨界冷却曲線より遅くなるように制御し、上記冷却曲線が連続冷却変態に係るパーライト析出線上を通過し、さらにマルテンサイト変態点を通過して冷却することである。
本発明に係る鋼製品1の製造方法は、上記温度低下の抑制手段として、上記鋼材(接合部材)及び/又は上記鋼材(接合部材)を保持する電極(受け電極9及び加圧電極8)の温度を予め加熱により高めておくことである。
上記温度低下の抑制手段としては以下の方法がある。
上記抑制手段として、予め加熱等の手段により接合部材(第一の鋼材4、第二の鋼材6等)の温度を高めて保持しておき、この接合部材を用いて接合を行う。例えば、温度を一定に保持した恒温槽で接合部材を保管し、これを使用する。
この場合、接合部材の接合時に接合部の温度は上昇するが、接合後は、接合部材の接合部2以外の温度が予め高められていることから、接合部2の熱が周辺に奪われる(熱伝導)熱量が抑制され、接合部の温度低下も抑制され接合部2の冷却速度を遅らせる。
また上記抑制手段として、接合部材を保持する電極を加熱等の手段により高めておき、当該電極に接合部材を保持して接合を行う。例えば、電極内部を流通する冷却水を温めておき、この冷却水を用い電極を所定温度に保持して使用する。この場合、接合部2から熱伝導により電極に奪われる熱量が抑制され、接合部の冷却速度が遅延される。
また、鋼材(特に第二の鋼材6)の内、電極(特に加圧電極8)に保持された部位と、接合部との間の距離を長くした場合には、接合部2の熱が電極に伝達しにくくなり接合部2の温度低下が抑制される。通電電流量に影響のない範囲で、電極と接合部材との接触部分を少なくし、電極への熱伝導量を低減して接合部2の温度低下を抑制することもできる。
他に、上記抑制手段として、接合時に(接合前から接合後にかけて)、接合部材の接合部2の近傍に温風、又は熱風を吹き付け、接合後の接合部2の温度低下を抑制し、接合部の冷却速度を遅らせる。この温風、熱風の吹き付けには、温風器等が利用できる。
また上記抑制手段として、接合部材を保持した電極と接合部2との間に距離をおき、接合部から電極にかけての熱伝導を抑制し、或いは接合部材自体を冷却され難い形状(中空等)に形成し、接合部からの熱伝導を抑制する。
このように、上記抑制手段としては上記種々の方法があるが、要は接合部2の温度低下を抑制することができる手段であれば良く、これにより接合部の温度低下が抑制できる。
本発明に係る鋼製品1の製造方法は、上記鋼材として、炭素量0.18〜1.20%(好ましくは0.32〜0.90%)の鋼材又は浸炭処理、浸炭浸窒処理をした鋼材を用いることである。なお、このような炭素量等の鋼材は、上記第一の鋼材4及び第二の鋼材6の一方又は双方に用いる。
本発明に係る鋼製品によれば、微細なフェライト及び鉄炭化物がそれぞれ塊状にネット状に粒界に析出したマルテンサイト組織を有するものであり、また、上記組織を鋼材同士の接合部に有するものとしたから、熱処理の信頼性に優れ高い靭性、延性及び高い強度、硬度を有する組織が得られるという効果がある。
また、本発明に係る鋼製品の製造方法によれば、鋼材、鋼材の一部、又は第一の鋼材と第二の鋼材の接合部に、微細なフェライト及び鉄炭化物がそれぞれ塊状にネット状に粒界に析出したマルテンサイト組織が生成されることから、熱処理の信頼性に優れ高い靭性、延性及び高い強度、硬度を有する組織が得られるという効果がある。
実施の形態に係り、製造中の鋼製品の接合状態を示す図である。 実施の形態に係り、鋼材を電極に保持させた状態を示す図である。 実施の形態に係り、製造装置における電極機構の系統図である。 (a)は鋼製品(二次通電熱処理有り)の接合部(右側が第一の鋼材(浸炭処理鋼)側、左側が第二の鋼材(S20C)側)における組織写真であり、(b)は(a)の一部(枠内)を拡大したものである。 (a)は図4の組織写真の一部(第一の鋼材(浸炭処理鋼)側)を抽出したものであり、(b)は(a)の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)である。 図5の組織の電子線マイクロアナライザー写真(EPMA写真)であり、FE−EPMAによる炭素のマッピング結果を示す。(C(炭素)の元素分析をして濃度分布状態を表示)。(元写真はカラーであるが、ここではモノクロ化して組織の説明を補足した。) 図6のネット状析出物について画像処理を行った結果(画像処理写真)を示す図であり、(a)は、炭素量が少ない部分(図6で「フェライト」と矢示)を抽出した画像、(b)は、炭素量が多い部分(図6で「炭化物」と矢示)を抽出した画像を示す。(元の写真はカラー表示で抽出し区別しているが、ここではモノクロ化して該当箇所を○で囲んで区別した。) (a)は鋼製品(二次通電熱処理無し)の接合部(右側が第一の鋼材(浸炭処理鋼)側、左側が第二の鋼材(S20C)側)における組織写真であり、(b)は(a)の一部(枠内)を拡大したものである。 鋼材の接合部から約0.5mm離れた部位の温度を熱電対で測定した結果を示すグラフである。 実施の形態に係り、鋼製品の製造工程における鋼材の連続冷却変態図(CCT線図)を示したものである。 鋼製品の接合部の組織写真を示すもので、(a)(b)は第二の製造方法、(c)は第一の製造方法によるものであり、それぞれ上段に全体写真を、下段に部分の拡大写真を示す。 鋼製品(二次通電の有無)における硬度の分布(接合部近傍)を示すグラフである。 第一の製造方法における冷却時間について、せん断剥離強度に及ぼす冷却時間の影響に関し、冷却時間を変化させた場合の鋼製品のせん断剥離強度と冷却時間との関係をグラフに示したものである。 二次通電の有無が炭素量によってどのような影響を与えるかを調べるため、第二の鋼材にS35C、及びS45Cを用いて製造した鋼製品の接合部近傍の組織写真を示したものである。 二次通電の各パターン1〜4のそれぞれについて、鋼材の接合部における通電開始からの時間とそのときの接合部の温度を測定した結果を示すグラフである。接合部の温度測定は、非接触温度計(ジャパンセンサー株式会社製のファイバ型放射温度計)により行った。 二次通電の各パターン1〜4につき、各鋼製品の接合部(略中央から左側が第一の鋼材(浸炭処理鋼)側、右側が第二の鋼材(S35C)側)における組織写真を示すもので、(a)はパターン1、(b)はパターン2、(c)はパターン3、(d)はパターン4を示す。
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第一の実施の形態に係り、微細フェライト及びセメンタイトなどの炭化物粒界析出型マルテンサイト組織を鋼材同士の接合部2に有する鋼製品1及びその製造状態(終了時)を示したものである。また図2は、上記鋼製品を製造する途中の状態を示したものである。
上記鋼製品1は、板状(プレート)の第一の鋼材4、及びこの第一の鋼材4の孔部5に接合される軸状(シャフト)の第二の鋼材6からなる。
上記第一の鋼材4は所定の厚さを有し、この第一の鋼材4に設けられた孔部5は断面の直径が一定の円形であり、第一の鋼材4の板面から垂直方向に孔部5の内壁面部が形成されている。
ここでは、第一の鋼材4の板厚を3.2mmとし、孔部5の内径を11.15mmとしている。この第一の鋼材4の板厚は、1mm以上が適当であるが、板厚の上限は孔部5の内径(第二の鋼材6の太さ)或いは電源トランス12の容量などに依存する。
上記第二の鋼材6は断面が一定の円柱状(又は円筒状)であり、平坦な上面部及び下面部を有している。また、第二の鋼材6の下面部の周囲は角部が切除されて面取部26が形成されている。
ここでは第二の鋼材6は、外径が11.55mmである。この第二の鋼材6の外径は、第一の鋼材4の板厚の2倍以上、或いは孔部の深さの2倍以上が適当である。
上記第二の鋼材6の挿入部分25の外径(直径)は、第一の鋼材4の孔部5の内径より僅かに大きく、圧入代はこれらの差となる。この圧入代により、第二の鋼材6の挿入部分25の外周部位が、第一の鋼材4の孔部5の内壁面部と接して擦られて接合界面を形成し、全周に及ぶ圧入接合が行われる。この時、接合部は全周でなく、複数個の部分接合で構成される圧入接合でもよい。また、第一の鋼材4の孔部5の上縁部、及び第二の鋼材6の下面部の縁部の何れか或いは両方に面取り加工を施している。
圧入の条件として所定の圧入代(d)と、圧入深さ(h)を設定する。この圧入代(d)は直径に対するものであり、ここでd=第二の鋼材6の外径(D2)−第一の鋼材4の孔部5の内径(D1)となる。また、圧入深さ(h)はh=第二の鋼材6の挿入部分の圧入(侵入)の深さとなる。
この実施の形態では、圧入代(d)は、0.4mm(11.55−11.15mm)としている。圧入代は、圧入が可能な範囲であれば良い。圧入代の範囲は0.1mm〜0.7mmが実用的であるが、0.3mm〜0.5mmの範囲であればバリも少なくまた高い強度も得られて良好である。
また、圧入深さ(又は第一の鋼材の板厚)は1mm〜6mmの範囲が実用的で良好であり、孔部5の内径(略第二の鋼材6の外径)は4mm〜50mmの範囲が電源の容量等からして好ましい。
他に、上記第一の鋼材4に替えて、孔部5が垂直方向に穿設された鋼材(直方体等種々の形状)を用いることができる。第二の鋼材6は平坦な上面部及び下面部を有しているのが好ましいが、第二の鋼材の下面部(挿入部分)は、第一の鋼材の接合予定部(孔部)の面形状に合わせた曲面形状をしていても良く、上面部も通電ができる形状であれば、平面以外の形状でも良い。
また上記第二の鋼材6(挿入部分)は、上記孔部5とは断面を相似形状とした場合には全周が接合される形態となるが、相似形状としない第二の鋼材を採用することも可能である。この場合、第二の鋼材として例えば断面多角形状(角部が円弧状の四角形等)のものを用い、第一の鋼材との接合部は全周でなく、複数個の部分接合で構成される形態としてもよい。
何れにしても、第一の鋼材4の孔部5と第二の鋼材6との間(全周或いは一部)に上記圧入代は必要である。
図3は、上記鋼製品の製造装置の系統図を示したものである。
上記製造装置は、受け電極9、この受け電極9を保持する下部プラテン11、加圧電極8、この加圧電極8を保持する上部プラテン10、電源供給用の電源トランス12(TR)、及び電極に対して電源の供給遮断等の制御を行うサイリスタ14(SCR)等を有している。また、上記製造装置は他に、位置決め機構及び加圧機構(図示せず)などを有している。
上記受け電極9及び加圧電極8は、何れもクローム銅製であり、また上記下部プラテン11及び上部プラテン10は何れも真鍮製である。
上記受け電極9は、円柱形状で、上面部30の中央には所定の深さの円形の穴部32(或いは貫通孔部)が形成されている。この穴部32は、上記第二の鋼材6を上記第一の鋼材4に圧入接合したときに、第一の鋼材4の孔部5の周辺が圧入方向に変形するのでこの逃げを形成するために設けたものである。
上記穴部32の穴の大きさ(D:直径)は、第二の鋼材6よりも少し大きく形成する。これは、第二の鋼材6が受け電極9の穴部32に接触しないようにするためである。また、穴部32の穴の大きさ(D:直径)は、上記第一の鋼材4の孔部5の内径より少し大きめとするのが望ましい。
また上記受け電極9の内部には、冷却水が通過する冷却回路34が形成されている。この冷却回路34は、受け電極9を上から見た場合に、上記穴部32を囲む状態でコの字状に形成され、また受け電極9の上下間の上部寄りの位置に水平状に形成されている。
上記下部プラテン11は、上面部に受け電極9を載置し保持する保持部40、及びこの保持部40から延設される導通部42を有している。この導通部42は、電源トランス12の出力端子と電気的に接続されている。また、保持部40の下面部は製造装置の支持部に載置固定されている。
そして、この下部プラテン11の内部には、冷却水が通過する冷却回路44が形成されている。この冷却回路44は、導通部42から保持部40に至り、この保持部40をコの字状に廻って導通部42に戻る形状に形成されている。この下部プラテン11は、受け電極9の冷却にも寄与する。
上記加圧電極8は、円柱形状であり、下面部の中央には所定の深さの円形の保持穴部46が形成されている。
また、加圧電極8の内部には、冷却水が通過する冷却回路48が形成されている。この冷却回路48は、加圧電極8を上から見た場合に、上記保持穴部46を囲む状態でコの字状に形成され、また加圧電極8の上下間の中央部に水平状に形成されている。この加圧電極8の保持穴部46は、上記第二の鋼材6を保持する。
上記上部プラテン10は、下面部に加圧電極8を取り付ける加圧保持部50、及びこの加圧保持部50から延設される導通部52を有している。この導通部52は、電源トランス12の出力端子と電気的に接続されている。
また上部プラテン10の内部には、冷却水が通過する冷却回路54が形成されている。この冷却回路54は、導通部52から加圧保持部50に至り、この加圧保持部50をコの字状に廻って導通部52に戻る形状に形成されている。この上部プラテン10は、加圧電極8の冷却にも寄与する。
また、加圧保持部50の上面部は、製造装置のプレス機構(油圧式など)のアクチュエータ部に固定されており、このアクチュエータ部は制御部からの指示で加圧保持部50を上下に移動させ、一定の加圧力を伴って降下移動する。
さて、上記各冷却回路は、直列に連結され、給水装置から給水バルブ56を通過した冷却水は、順に加圧電極8の冷却回路48、上部プラテン10の冷却回路54、受け電極9の冷却回路34、及び下部プラテン11の冷却回路44を通過して各部を冷却し、排水バルブ58を通過して排水される。また、電源トランス12及びサイリスタ14についても、上記冷却水が内部に形成された冷却回路を通過して各部を冷却する。
勿論、上記各冷却回路は、各電極毎、各プラテン毎に独立に、また電極とプラテンに分けてそれぞれ独立に連結することは可能である。
上記通電に用いる電源は、直流、交流、或いは大容量のコンデンサーを利用した直流電流等を用いることができる。また、制御部(図示せず)からの制御により、上記プレス機構の加圧力の加減調整、電源トランス12からの受け電極9及び加圧電極8に対する通電の開始停止制御(サイリスタ14による)、及び冷却回路の冷却水の流量の調節及び開閉制御等を行うことができる。
ここで、上記製造装置を用いた鋼製品1の製造方法に関し、その工程を説明する。
先ず、上記鋼製品の製造用鋼材には、第一の鋼材4の材料として浸炭処理をした鋼材を、また第二の鋼材6の材料として炭素鋼(S20C)を用いる。
製造に際しては、予め製造装置(制御部)に対して接合条件を設定する。この接合条件として、加圧力、加圧時間、一次及び二次通電による通電加熱時間、一次及び二次通電電流値、冷却時間及び電流の通電パターンなどがある。
この実施の形態では、上記加圧力を9.0kNとしている。この加圧力は、通電前に加圧したとき圧入が生じない加圧力を最大とし、また通電開始直後に短絡による火花放電を起さない加圧力を最小とする。このため、最適な加圧力は上記最大の加圧力の60%〜90%が適切である。
また、ここでは上記一次通電による通電加熱時間を0.25秒、一次通電電流値を22kA、二次通電による通電加熱時間を0.2秒、二次通電電流値を15kAとし、また一次通電停止後から二次通電開始までの冷却時間を0.2秒に設定している。
製造工程の開始前に、制御部からの指示に基づき給水バルブ56及び排水バルブ58を開いて給水装置から各冷却回路に送る冷却水の給水を開始する。
そして、図2に示すように、各電極に、それぞれ第一の鋼材4と第二の鋼材6を保持させる。受け電極9に対しては、その上面部30に第一の鋼材4を載置する。このとき、受け電極9の穴部32の中心に、第一の鋼材4の孔部5の中心が位置するように位置決めをして配置する。この際、第一の鋼材4が所定の位置に収まるよう、位置決め部材などを用いてもよい。
また、加圧電極8には第二の鋼材6を保持させる。この第二の鋼材6を、加圧電極8の保持穴部46に差し込み物理的に狭持保持させる。このように、保持穴部46で第二の鋼材6を狭持することで、第二の鋼材6自体の電気抵抗の影響を軽減する。
次に、プレス機構による加圧の工程により、第二の鋼材6は、加圧電極8に保持された状態で上部プラテン10により所定の位置決め位置に移動させる。そして、プレス機構は上部プラテン10を押圧し、加圧電極8に保持された第二の鋼材6を加圧力とともに降下させ、やがて第二の鋼材6は第一の鋼材4の孔部5と係合し、第二の鋼材6は第一の鋼材4の孔部5に対して一定の加圧力を伴った状態が維持される。
そして、制御部からの指示により、サイリスタ14が作動(電源供給)し加圧電極8と受け電極9間に一次通電が開始される。これにより、第二の鋼材6と第一の鋼材4の孔部5との接合部2に大容量の電流が流れ、電気抵抗熱の発生とともに接合部2が軟化し第二の鋼材6の圧入が開始され、第二の鋼材6の挿入部25が第一の鋼材4の孔部5内を降下移動する。
この場合、第二の鋼材6が第一の鋼材4の孔部5に圧入され、このとき両鋼材の接合界面にしごきの作用が生じ圧入接合が行われ、第一の鋼材4に第二の鋼材6を接合した接合品(鋼製品の製造途中のもの)が得られる。これは、上記接合界面には第一の鋼材4と第二の鋼材6との各壁面同士の間が滑り方向の移動によりしごかれ、これにより表面の酸化物層などの不純物質層が削られて表面が清浄化され、この清浄な組織に固相状態の拡散接合(固相拡散接合)が行われる。
上記製造方法では、上述したように一定の加圧力による圧入接合が行われ、瞬時に接合部が発熱され短時間で第二の鋼材6の先端部は第一の鋼材4の孔部5に圧入され接合を完了する。
上記圧入時は、一次通電により第一の鋼材4の孔部5と第二の鋼材6との接合部2は高温となる。一次通電停止後は、第一の鋼材と第二の鋼材との接合部2は冷却される。上記一次通電の停止後、接合品の状態はそのままとし上記冷却時間をおいて直ぐに二次通電による熱処理を行う。
ここで、一次通電の停止は圧入接合の終了と同時期であり、一次通電は上記拡散接合に要する通電であり、この一次通電による拡散接合終了後の通電が二次通電となる。
上記二次通電の通電停止後は、接合品をそのまま空冷して鋼製品を得る。
このように上記実施形態に係る鋼製品の製造方法(ここでは「第一の製造方法」という。)は、第一の鋼材4の孔部内5に第二の鋼材6を所定の圧力で押圧するとともに、これら両鋼材間に一次通電を行って両鋼材の接合部2の組織をオーステナイト化するためにA3又はA1変態点以上の温度に急速加熱し、上記両鋼材の接合部2を軟化させて上記第二の鋼材6を上記第一の鋼材4の孔部5に圧入して固相拡散接合を行った後、0.2秒の冷却時間をおき、この後上記接合部2に二次通電を行って温度を連続冷却変態図(図10)のパーライト析出線(Ps線)以上の温度に急速に上昇させた後、空冷することである。
この空冷時に、冷却曲線が連続冷却変態に係るPs線上を通過し、さらにマルテンサイトの変態点(Ms線)を通過して冷却する。
また、二次通電による熱処理を行った上記第一の製造方法の他に、比較のため、ここでは別途二次通電を行わない製造方法(ここでは「第二の製造方法」という。)により鋼製品1を製造した。この、第二の製造方法における製造条件(二次通電を除く)、材料等は全て二次通電を行った第一の製造方法と同じである。
この二次通電を行わない製造工程では、一次通電の停止後は、接合品(製造途中の鋼製品)はそのまま冷却する。そして、加圧機構による加圧を除荷し、さらに鋼製品を各電極から取り外す。
図4(a)(b)及び図5(a)(b)は、上記第一の製造方法(二次通電による熱処理)により得られた鋼製品の接合部(近傍)の組織写真である。
図4(b)は図4(a)の一部(枠内)を拡大したものであり、図中、左寄りに見られる境界(接合部2)から右側が第一の鋼材4(浸炭処理をしたプレート材)の部分、左側が第二の鋼材6(S20Cの軸体)の部分である。図5(a)は、図4(b)の内で第一の鋼材4の部分を示したものであり、図5(b)は図5(a)のSEM写真である。
ここで、上記鋼製品1の組織写真によれば、第一の鋼材4の組織は、マルテンサイト組織を残したまま、微細なフェライト及びセメンタイトなどの炭化物がそれぞれ塊状にネット状に粒界に析出したマルテンサイト組織からなる鋼組織(ここでは「フェライト及び炭化物のネット状析出組織」という。)を有している点が特徴的である。
図6は、上記図5に表された組織のEPMA写真(元はカラー写真)であり、FE−EPMAによる炭素濃度分布のマッピング結果を示したものである。この写真において、炭素量が少ない部分は「フェライト」と矢示表示した黒い部分(以下「フェライト部」という)、多い部分は「炭化物」と矢示(元は赤)表示した部分(以下「炭化物部」という。)である。
ここで、上記図5の組織の材料は鋼材を浸炭処理したものであるから、この組織は鉄と炭素の化合物でありその他の元素は微量である。
図6に示されるネット状の析出物は、オーステナイト粒界にフェライトと鉄炭化物が析出したものであり、炭素が多く存在する「炭化物部」と、炭素が存在しない部分「フェライト部」に分かれたものである。このため上記「フェライト部」は、マルテンサイトが分解して生じたフェライトからなる組織である。
また、この図6の写真でわかるように、ネット状組織を構成している部分は大部分が黒く炭素が検出されていないフェライトと炭素濃度が高いセメンタイトなどの炭化物でそれぞれ塊状に構成され、特にフェライトによる組織が大部分を占めていることがわかる。
上記ネット状組織は、主にフェライトの塊同士が連続的或いは離散的にネット状に析出され、このネット状の輪の中に、部分的に炭化物の塊が介在した形態である。このネット状の輪を形成する塊状の組織は、大部分がフェライトで構成され、一部がセメンタイトなどの炭化物で構成されている。
さらに従来知られていたパーライトのようにフェライトと炭化物とがサンドイッチ状に層状構造を形成していないことも示されている。ネット状析出物に囲まれた灰色のまだら部分がマルテンサイト組織である。
このように上記ネット状組織は、マルテンサイトの組織の生地に、多くのフェライトの塊及び一部の炭化部の塊が混合してネット状に析出された組織である。このネット状組織は、上記フェライトの塊が析出した組織により延性及び靭性などの特性が得られ、またマルテンサイト組織が生地となって残存していることから硬度、強度などの特性が得られている。
上記図6の写真で「炭化物部」がセメンタイトなどの炭化物であることを証明するため、このEPMAのデータを用いて解析を行った。この写真によれば、黒色部で表示されるフェライト部の画面全体に占める面積は5.0%、炭化物部で表示される炭化物と推定する部分の画面全体に占める面積は1.1%である。この結果を用いて炭化物部の炭素濃度を解析すると炭素濃度は約8%であった。この数値からこの部分の析出物はグラファイトではなく、セメンタイトなどの鉄炭化物であることが特定できた。なお、上記EPMAの面分析データの解析は第三者機関により行った。
図7(a)(b)は、上記図6のネット状析出物について画像処理を行った結果を示すものである。同図(a)は、上記炭素が存在しない「フェライト部」を抽出(○で囲んだ部分)した画像、同図(b)は、上記炭素が多く存在する「炭化物部」を抽出(○で囲んだ部分)した画像をそれぞれ示している。
この分析結果からも、面積率は上記「フェライト部」が5.0%、上記「炭化物部」が1.1%であることが判明した。
ここで、上記図5の浸炭処理をした材料の炭素濃度は共析鋼濃度と略同じ7.7%であり、この炭素が全量「炭化物部」に移動したと考えられるから、この「炭化物部」の炭素濃度は上記のように約8%である。この炭素濃度の値は、Fe3Cなどの鉄カーバイト(鉄炭化物)と同じであり、このため「炭化物部」は鉄炭化物が析出された組織である。
したがって、上記鋼製品1の接合部は、図5(b)に見られるように、析出物の大部分は靭性、延性に富むフェライト組織であって、脆い炭化物の析出物は少なく、かつ板状ではなく、塊状に析出し、割れなどの起因になりにくい形状を有していることもわかる。また素地はマルテンサイト組織がそのまま存在している。
このように、上記鋼製品1の接合部近傍(1.0mm以下)の組織は、マルテンサイトの存在により強度が維持され、粒界への微細フェライトの析出により、歪み及び応力が緩和され靭性及び延性が回復し、この組織は相反する性能を両立させるものである。
通常の焼戻し組織では、マルテンサイト組織全体を再加熱によりトルースタイト、ソルバイトなどの微細パーライト組織に変換させたものであり、マルテンサイトを無くしてしまっているため、延性が回復しているが、強度は低下する。
なお、図4(a)(b)に示す第二の鋼材6の部分は、上記微細フェライトなどが粒界に析出した組織は少ないが、本発明の組織を薄く有していることがわかる。これは、第一の鋼材4として炭素量の少ない炭素鋼S20C(炭素量0.2%)を用いているためである。
図8(a)(b)は、上記第二の製造方法により得られた鋼製品の接合部における組織写真である。この組織は、フェライト及び炭化物のネット状析出組織は見られず、殆どが焼入れによるマルテンサイト組織であり、これは硬くて脆いものである。
ここで、上記第一の製造方法に係り、上記一次通電及び二次通電に伴う上記鋼製品1の製造過程における鋼材の接合部近傍の温度の変化、及びこれに基づく鋼材の連続冷却変態図について説明する。
図9は、上記鋼材の接合部から約0.5mm離れた部位の温度を熱電対で測定した結果の一例を示したものである。なお、ここでの測定条件は、一次通電は22kA(電流値)×0.25秒(通電加熱時間)、二次通電は22kA×0.25秒であり、また冷却時間は0.5秒である。
接合部の寸法
第一の鋼材 板厚:3.2mm 孔径:17.2mm 材質:浸炭処理鋼
第二の鋼材 外径:17.5mm 内径:10.7mm 材質:炭素鋼(S20C)
なお、一次通電及び二次通電の各電流を流している時間は、ノイズ等の発生により、熱電対による温度の測定はできない。このため、一次通電、及び二次通電の停止直後から熱電対による温度測定を開始した。
図9において、点線は一次通電のみの場合の接合部の温度の変化を示したものである。また、実線は一時通電、冷却時間及び二次通電を行った場合の温度の変化を示したものである。これから、一次通電により接合部の温度は800℃を越えており、また二次通電による接合部の温度は700℃近くに達している。
なお、通電加熱時間が短時間であるため、上記熱電対による温度測定が実際の温度に十分に追随できなかったと思われ、実際にはより高めの温度であったことが推測できる。
図10は共析鋼の連続冷却変態図(CCT線図)であり、Ps線は、オーステナイト状態に加熱された鋼製品を連続冷却したときに、オーステナイトの粒界にパーライトが最初に析出する温度を示したものであり、Pf線はパーライトの析出が終了する温度を示した線である。パーライトはPs線とPf線の間の温度で析出し、Pf線を越えるとパーライトの析出が終了する。したがって、本発明における微細なフェライト及びセメンタイトなどの炭化物の析出はこの線の間の温度領域で生じる。上記第一の製造方法(二次通電あり)、第二の製造方法(二次通電なし)及び冷却速度を遅くした第三の製造方法による鋼製品1の製造過程における鋼材の冷却曲線を図10に書き加えた。
ここで、冷却曲線(A)は第一の方法を、冷却曲線(B)は第二の方法を、冷却曲線(C)は第三の方法の時の冷却状態を示している。なおこの冷却曲線は接合部から約0.5mm離れた位置で、熱電対を用いて測定した温度データであり、接合時における鋼製品(接合部近傍)の発熱・冷却の遷移を示している。
なお図10中、臨界冷却速度として矢示されている冷却曲線は、オーステナイトからパーライトが析出される析出線の最短(時間)析出部分を通過する臨界冷却曲線である。
上記製造過程において、圧入接合後に二次通電を行なうことは、鋼製品1の接合部2の冷却曲線(A)は発熱及び冷却の単一のサイクルではなく、発熱及び冷却のサイクルを二度繰り返すことになる。
これにより上記冷却曲線(A)は、一次通電による加熱温度からそのまま冷却されるのではなく、二次通電により再度温度が上昇することになる。この二次通電による冷却曲線の上昇により、その後の冷却曲線(A)は同図に示されるような冷却経路をたどり、さらに冷却曲線はPs線を通過しそのまま降下する。
この冷却曲線(A)の経路において、オーステナイトに変態した組織は上記Ps線を通過した点でパーライトとではなく、微細な塊状のフェライト及びセメンタイトなどの炭化物を粒界に析出させ、さらに温度が低下し、Ms線上を通過した点で、残りのオーステナイトはマルテンサイト変態を生じマルテンサイトに変化する。
従来の連続冷却変態図では、上記冷却曲線がPs線を通過した時、フェライトが最初に析出し、次いで微細パーライトが析出するという事例があるが、この実施の形態に係る鋼製品のように、マルテンサイト粒界にフェライトに炭化物を含む塊状の析出物が生成される事例は見かけない。
また図10にも示すように、上記二次通電による熱処理を行なわない場合には、冷却曲線(B)はそのまま下降し上記Ps線上を通過することはなく、Ms線に至る。この場合、上記図8(a)(b)にも示すように上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織は析出しないですべてがマルテンサイト組織になる。
上記鋼製品1の製造過程では、一次通電後、0.2秒の冷却時間後に二次通電による熱処理を行っており、この二次通電により、冷却曲線(A)が時間軸の長時間方向(右方向)へ移動しPs線を通過する曲線を描くことになる。
しかし、上記一次通電後の冷却時間が長いと、冷却曲線(D)のように、二次通電を行っても温度の上昇は低く、Ps線を通過する曲線を描くことにならないため、この場合の冷却曲線は、二次通電のない形状とあまり変わりない。
このように上記鋼製品(鋼材)の熱処理として、一次通電後に二次通電を行うことにより、冷却曲線(A)が時間軸の長時間方向(右方向)へ移動しPs線を通過し、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が析出するマルテンサイト組織が生成する。
また上記鋼製品(鋼材)に対する上記二次通電は、冷却曲線を上記移動させるものであるから、この二次通電は1回或いは複数回行なってもよいと考えられ、或いは上記二次通電に代えて、冷却曲線(C)のように一次通電後の冷却の速度を少し緩やかに制御し、冷却曲線を時間軸の長時間方向へ移動させればPs線を通過し、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が析出されることになる。
この発明を特定する事項として、従来のパーライト析出線(Ps線)という言葉を敢えて用いたのは、本発明においてもPs線でフェライトと炭化物とが析出する点では従来と同じであり、本発明では析出が塊状である一方、従来では層状に析出するという析出形状の違いのみにあるからである。詳細に調査すれば、本発明のPs線と従来のPs線では多少の違いが出てくると思われるが、本質的な問題はないと判断されるため、従来のPs線を用いた。
ここで、上記鋼製品1の靭性及び強度について検証するため、せん断剥離強度試験及び組織写真による検証を行ったのでその結果について説明する。このせん断剥離試験は上記鋼製品の接合方向(第一の鋼材4の孔部に第二の鋼材6を圧入する方向)と逆方向に負荷を加えて第二の鋼材6を剥離させる押し込み剥離試験によるものである。
この試験は、比較のため、上記第一の製造方法により製造された鋼製品と、上記第二の製造方法による二次通電を行わない鋼製品について行った。
試験条件は以下の通りである。
接合部の寸法
第一の鋼材 板厚:3.2mm 孔径:17.2mm 材質:浸炭処理鋼
第二の鋼材 外径:17.5mm 内径:10.7mm(中空軸のみ)
材質:炭素鋼(S20C)
接合条件 一次通電:22kA×0.25秒
二次通電:18kA×0.17秒
冷却時間:0.5秒
図11(a)(b)(c)は、上記製造方法による鋼製品の接合部の組織写真を示したものであり、それぞれ上段に全体写真を、下段に部分の拡大写真を示す。各写真において、接合線の左側の組織は第一の鋼材を、右側の組織は第二の鋼材をそれぞれ示す。
同図(a)は第二の製造方法(第二の鋼材6として中実軸を使用)、同図(b)は、第二の製造方法(第二の鋼材6として中空軸を使用)、同図(c)は第一の製造方法(第二の鋼材6として中空軸を使用)によるものである。
上記組織写真より、同図(c)の第一の製造方法による鋼製品は、接合部に上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が析出されている。また、同図(a)(b)の第二の製造方法による鋼製品には、接合部に焼入れによりマルテンサイト組織が形成されている。
表1は、上記せん断剥離強度試験の結果を示したものである。表中、(a)は第二の製造方法(第二の鋼材6として中実軸を使用)、(b)は、第二の製造方法(第二の鋼材6として中空軸を使用)、(c)は第一の製造方法(第二の鋼材6として中空軸を使用)によるものである。ここで変形量とは、せん断剥離試験において変形開始から最高接合強度までの変形量(mm)を表したものである。
表1に示す試験結果より、二次通電による熱処理を行った鋼製品は、二次通電を行わない鋼製品に比べて、せん断剥離強度が高くなると同時に変形量も大きく向上している。これの結果から二次通電による熱処理を行った鋼製品1の接合部2は、強度に加えて延性(靭性)にも優れた組織が生成されていることがわかる。
次に、せん断剥離強度のバラツキ(製品の均一性)に関する試験を行ったのでその結果について説明する。
表2は、一次通電のみの上記第二の製造方法、及び一次と二次通電による上記第一の製造方法につき、それぞれ鋼製品を複数(ここでは6つ)製造し、各鋼製品の試験結果を示したものである。
試験条件は以下の通りである。
接合部の寸法
第一の鋼材 板厚:3.2mm 孔径:15.8mm 材質:浸炭処理鋼
第二の鋼材 外径:16.1mm 内径:10.0mm(中空軸)
材質:炭素鋼(S20C)
接合条件 冷却時間:0.5秒
上記表2から、一次通電のみの場合には、強度のバラツキが多く見られる。これは、接合部の組織が殆どマルテンサイト組織であるため、延性と靭性に乏しいためである。
これに対して、上記二次通電を行ったものは強度のバラツキが殆んど生じていない。これは、接合部の組織が延性と靭性を有するネット状組織に囲まれたマルテンサイト組織となっているためである。この結果、製品の品質も安定していることを示している。
これらのことから、上記二次通電を行ったものは、強度と靭性の両者を併せ持つ優れた性能を持つ組織であることに加えて、製品品質の均一化にも寄与する。
図12は、鋼製品の接合部近傍における硬度の分布(接合部近傍)を測定したものである。この測定は、上記第一の製造方法(二次通電有り)による鋼製品と上記第二の製造方法(二次通電無し)による鋼製品について行った。またこの測定では、第一の鋼材4は浸炭浸窒処理をした鋼材(SPHC)を用い、第二の鋼材6は炭素鋼(S20C)を用いた。第一の鋼材4(プレート)は板厚3.2mmであり、第二の鋼材6(シャフト)は外径(φ)11.5mmである。他の試験条件は上記表1に係る条件と同じである。
測定ポイントは、鋼製品1の接合部2の境界(0.0mm)を中心に、第二の鋼材側(右方向)へ2.0mmまでの十数ポイントにおける硬度(Hv)、第一の鋼材側(左方向)へ2.0mmまでの十数ポイントにおける硬度(Hv)を測定したものである。
上記測定結果より、二次通電の無い場合には硬度は高くなる。これは、接合部にマルテンサイト焼入れ組織が生成されているためである。
一方、二次通電を行なった場合は、硬度は上記二次通電の無い場合より少し低下しているが、これは一般的な焼き戻しによるトルースタイト組織を析出した状態の硬度(点線で表示)よりも硬度は高くなっている。
これからすれば、この実施の形態に係る鋼製品1(フェライト及び炭化物のネット状析出組織)によれば、一般的な焼き戻しによる組織よりも硬度が高く強度的にも優れた組織であることを示している。
次に、上記第一の製造方法における一次通電と二次通電との間の上記冷却時間について、せん断剥離強度に及ぼす冷却時間の影響に関する試験を行ったので、その結果について説明する。
ここでは、第一の製造方法において冷却時間を変えて鋼製品を製造し、各冷却時間により製造した鋼製品のせん断剥離強度を測定した。
試験条件は以下の通りである。
接合部の寸法
第一の鋼材 板厚:3.2mm 孔径:17.0mm 材質:浸炭処理鋼(SPHC)
第二の鋼材 外径:17.4mm 内径:10.7mm 材質:炭素鋼(S20C)
接合条件 一次通電:22kA×0.25秒
二次通電:18kA×0.17秒
図13は、上記冷却時間を変えた場合の、各冷却時間(0.01秒〜10.0秒)と、その冷却時間により製造した鋼製品のせん断剥離強度(kN)との関係をグラフに示したものである。
またここでは、二次通電を行わない鋼製品についても、同様のせん断剥離強度試験を行った。
先ず、グラフに示すように、二次通電による熱処理を行った鋼製品は、何れの冷却時間により製造したものであっても、二次通電を行わない場合のせん断剥離強度(17.1kN)を上回っており、二次通電の効果が得られている。
また、上記冷却時間が2秒以内であれば、せん断剥離強度は高く(25.0kN)強度的には良好であり、このため鋼製品の接合部には、上記マルテンサイトの粒界にフェライト及び炭化物のネット状析出組織が生成されているものと考えられる。
この冷却時間が2秒を越えると、せん断剥離強度は22kN以下となり、二次通電による熱処理の効果が十分得られていない。
これは、上記一次通電後の冷却時間が2秒を超えるような場合には、温度低下により接合部の電気抵抗が低下するため、二次通電を行っても温度の上昇は低く、この場合の冷却曲線は、二次通電のない曲線形態とあまり変わらなく、またPs線上を通過することもないためと考えられる。
特に、上記冷却時間が1.5秒以内であればせん断剥離強度は十分高く(25.0kN〜30.0kN前後)強度的には優れている。さらに、冷却時間が0.5〜1.5秒の範囲では、せん断剥離強度が高く(30.0kN前後)、このため鋼製品の接合部には、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織の析出程度が著しいものと考えられ有効である。これらせん断剥離強度が高いのは、表1にも示されるように、接合部の組織における硬度の向上によるものである。
なお、参考資料によれば、「炭素当量0.2%以上の鋼材の場合、溶接部に焼が入り硬化する。…焼戻し処理は溶接通電後の冷却時間を十分に与え、マルテンサイト変態を完了させないと焼戻し効果が少ない」とあり、事例として焼戻し処理をするために最適な冷却時間を4秒(板厚3.2mmの場合)としており(溶接全書「抵抗溶接」、産報出版P70〜72)、本発明のように、炭素当量が高い場合は、冷却時間は長めにするのが一般的であり、本発明のように冷却時間を短くすることは殆ど事例がない。
次に、上記第一の製造方法に関し、一次通電(電流値)による鋼材の接合部近傍の温度の高低とせん断剥離強度との関係を調べたので、その試験結果について説明する。なお、ここでの試験は一次通電による温度に関するものであるため、二次通電は行っていない。
表3は、一次通電の電流値、接合部の温度計測値、接合品のせん断剥離強度などの試験結果を示したものである。
試験条件は以下の通りである。
接合部の寸法
第一の鋼材 板厚:3.2mm 孔径:φ17.2mm 材質:SPHC浸炭処理材
第二の鋼材 外径:φ17.5mm 内径:φ10.5mm 材質:S20C
圧入代:0.3mm
温度測定位置:接合部から約0.5mm離れた位置で、かつ第一の鋼材の中心部の位置に熱電対を配置して測定。
接合条件 一次電流値を16〜21KA×0.25秒に変化
上記表3から、一次電流値が20kAを越えるあたりから接合部の剥離強度は飽和状態に至っていることがわかる。この時の接合部近傍の温度は710℃であり、これは浸炭部のオーステナイト化温度である約730℃に近い温度であり、この浸炭部の組織は、同等の鋼製品(図11(a)(b))に見られるようにマルテンサイトに変態している。従って、実際の温度は730℃以上(A1変態点以上)になったと推定できる。
また接合後のS20C材は、一部マルテンサイト化している。炭素量0.2%のS20C材は、その一部にマルテンサイト変態が生じていることは、この部分が約820℃以上(A3変態点以上)の高温に至っていたことを示している。
上記接合部の温度データは、接合線から約0.5mmの位置で熱電対により測定した結果である。なお、接合部の加熱は1秒以下という短時間の通電加熱時間であるから、熱電対による温度測定が実際の温度に十分に追随できなかったと思われ、実際にはより高めの温度であったことが推測できる。
また、一次電流値20kAの場合、接合部に微細フェライトと炭化物によるネット状析出物が存在するマルテンサイト組織を確認できた。これから、接合部の組織をオーステナイト化するために一次通電による接合部の温度は、オーステナイト状態に加熱し得るA3又はA1変態点以上は必要である。
次に、第二の鋼材6に炭素鋼としてS35C、及びS45Cを用いて製造した鋼製品について説明する。第一の鋼材4には浸炭処理鋼を用いた。
また、この鋼製品は、二次通電の有無が炭素量にどのような影響を与えるかを調べるため、第一の製造方法(二次通電による熱処理有り)及び第二の製造方法(二次通電無し)により製造した。
なお、他の試験条件は、上記表2(中空軸+二次通電)に係る試験と同様である。
図14は、上記鋼製品の接合部近傍における第二の鋼材6としてS35C及びS45Cの組織写真を、二次通電なし及びありについて示したものである。
上記組織写真によれば、何れ(S35C,S45C)についても、二次通電による熱処理を行なった場合には、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が生成されていることがわかる。また、両者(S35C,S45C)とも二次通電を行なわない場合には、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織は見られない。
また、炭素鋼S45C(炭素量0.42〜0.48%)の方が、炭素鋼S35C(炭素量0.32〜0.38%)よりも、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織の生成がより顕著である。
上記炭素鋼S35Cの場合、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が析出されており、また上述したように炭素鋼S20C(炭素量0.18〜0.23%)でも上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が見られる。
これから、鋼製品(接合部)に上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織を析出させるためには、炭素量0.18%以上(S20C相当)、好ましくは炭素量0.32%以上(S35C相当)必要である。また、浸炭(浸窒)処理鋼については上述したように、上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が見られる。
また、炭素鋼の炭素量が1.2%(過共析鋼)を超えると溶接割れが生じ易い問題がある。炭素量が0.9%以内であれば、溶接割れ発生の恐れは少ない。
これから、鋼製品の材料として、第一の鋼材4及び第二の鋼材6の一方或いは双方に、炭素鋼(炭素量0.18〜1.2%(好ましくは0.18〜0.9%、或いは0.32〜0.9%))或いは浸炭処理鋼、浸炭浸窒処理鋼を使用することにより、接合部に上記フェライト及び炭化物のネット状析出組織が生成される。
次に、第二の実施の形態について説明する。
この実施の形態については、鋼製品の製造状態、製造装置、及び鋼製品の製造方法及びその工程等(図1,2,3及びそれらの説明等)、基本的な事項は第一の実施の形態と同様であり、ここでは同様の符号を用いて詳しい説明は省略する。
この実施の形態では、試験により、鋼材同士の圧入接合(一次通電)後、所定の時間をおいて二次通電を行い、この二次通電を加減して接合部の冷却速度を遅らせるように制御し、そのときの接合部2の組織を検証した。
上記接合部2の冷却速度を遅らせる方法として、ここでは固相拡散接合の際、二次通電の電流値及び通電加熱時間を変化させることで冷却速度を制御した。
具体的には、二次通電の電流値及び通電加熱時間などのパターンとして4パターンを規定し、各パターンについて圧入接合を行い、そのときの接合部2の温度を測定し、また接合部の組織を写真で調べた。なお、接合部の温度は非接触温度計により測定した。
試験条件として、一次通電の電流値を20.5kA、通電加熱時間を0.25秒(15/60Hz)とし、また加圧力は7.8kNとした。一次通電停止後から、二次通電開始までの冷却時間をここでは1秒とした。
接合部材(第一の鋼材4及び第二の鋼材6)は、自然環境下(常温)で保存したものを使用し、また電極の冷却には通常の冷却水(水道水等)を使用した。
また上記二次通電のパターンとして、パターン1は電流値10kA、通電加熱時間0.17秒(10/60Hz)、パターン2は電流値11kA、通電加熱時間0.17秒、パターン3は電流値13kA、通電加熱時間0.17秒、パターン4は電流値11kA、通電加熱時間0.2秒(12/60Hz)とした。
このように、二次通電の電流値は、一次通電の電流値の1/2程度又は1/2以上の値とし、また二次通電の通電加熱時間は一次通電の通電加熱時間の2/3程度又は2/3以上とした。
接合部材については、第一の鋼材4の材料として浸炭処理をした鋼材(SPHC:板厚3.2mm、孔部5の内径11.1mm)を用い、また第二の鋼材6の材料として炭素鋼(S35C:外径φ11.5mm)を用いた。ここでの圧入代(d)は、0.4mm(11.5−11.1mm)である。
鋼製品の製造に際しては、上記各パターンの二次通電に基づき、第一の実施の形態と同様の圧入による固相拡散接合を行った。
また鋼製品の製造に際しては、第一の実施の形態と同様に各電極(受け電極9、加圧電極8)にそれぞれ第一の鋼材4と第二の鋼材6を保持させ、プレス機構により上部プラテン10を押圧し、第二の鋼材6を第一の鋼材4の孔部5に係合させ、加圧電極8と受け電極9間に一次通電を開始する。
これにより、第二の鋼材6と第一の鋼材4の孔部5との接合部2が軟化して圧入が開始され、両鋼材の接合界面にしごきの作用が生じ、表面の酸化物層などの不純物質層が削られて表面が清浄化された組織に固相拡散接合が行われる。
上記圧入時は、通電により上記接合部2は高温となる。一次通電停止後は、1秒間の冷却時間をおいて直ぐに二次通電による再加熱を行う。二次通電の通電停止後は、接合品を空冷して鋼製品を得る。この二次通電は、上記各パターン1〜4について行ない、それぞれのパターンについて鋼製品を製造する。
図15は、鋼製品1の製造に関し、圧入接合時(一次通電)及び二次通電による再加熱時の接合部2における時間−温度の関係を示すグラフであり、上記二次通電の各パターン1〜4について示している。
上記鋼製品の製造過程において、圧入接合後の二次通電により、接合部2の冷却曲線は発熱及び冷却のサイクルを再度繰り返し、上記二次通電によって冷却曲線が時間軸の長時間方向(右方向)へ移動し、この移動によりCCT線図におけるPs線上を通過し、さらにマルテンサイトの変態点(Ms線)を通過する。
図15からすれば、一次通電による接合部2の温度上昇後の温度低下途中に、二次通電により温度が上昇しさらに低下するが、パターン1,2の場合は、温度低下が急で冷却速度の低下が速く、またパターン3,4の場合は、温度低下が緩やかであり冷却速度が抑制され遅くなっている。なお、パターン2はパターン1に比べて、温度の低下がやや緩やかである。
図16(a)(b)(c)(d)は、上記二次通電の各パターンにおける接合部2の組織写真であり、(a)はパターン1、(b)はパターン2、(c)はパターン3、(d)はパターン4を示す。各写真の接合部の組織は、略中央より左側が第一の鋼材4としての浸炭処理鋼(SPHC)、右側が第二の鋼材6としての炭素鋼(S35C)である。
この組織写真からすれば、ネット状組織は、特に図16(c)(パターン3)、図16(d)(パターン4)では明瞭に析出(特に浸炭処理鋼)しており、これは接合部2の冷却速度の遅延が大きくなるほど顕著である。また、図16(b)(パターン2)についても、ネット状組織が見られる。
上記図16(b)(c)(d)等の組織写真に見られるネット状組織は、第一の実施の形態に係る組織写真(図4等)と形態は同様であり、また鋼製品の製法も第一の実施の形態と同様であることからこれと同様の上記「フェライト及び炭化物のネット状析出組織」が生じているものと判断できる。
また、上記4パターン1〜4の鋼製品について、接合強度(せん断剥離強度)を測定した結果、何れについても35kN程度の強度が得られていることが確認されている。
上記組織写真では、パターン1と比べてパターン2〜4に係る接合部の組織の方が、ネット状組織が明瞭に析出されており、特に最も二次電流値が高いパターン3に係る組織についてはネット状組織が顕著に析出されている。ここで、パターン1に係る二次通電は、僅かであるが電流値が一次通電の1/2以下であり、またパターン2〜4に係る二次通電は、何れも電流値が一次通電の1/2以上である。
これから、二次通電の電流値が一次通電の電流値の1/2以上あれば、接合部にネット状組織が明瞭に析出され、強度及び硬度、靭性及び延性に優れた鋼製品が得られると考えられる。二次通電の電流値については、通電過熱時間が同じ場合、パターン2とパターン3との比較で見られるように、電流値が高い方(パターン3)が、ネット状組織が明瞭に析出されている。
なお、一次通電により接合部近傍の金属組織の温度は上昇して電気抵抗が大きくなるため、二次電流値は小さくても電気抵抗熱は十分に得られる。
また二次通電の通電加熱時間については、電流値が同じ場合、パターン2とパターン4との比較で見られるように、通電加熱時間が長い方(パターン4)が、ネット状組織が明瞭に析出されている。また、二次通電の通電加熱時間については、一次通電の通電加熱時間の2/3以上あれば十分である。
上記各実施の形態に係る製造方法及び鋼製品は、自動車、オートバイ、産業用機械などの要素部品及びその製造に用いることができ、例えばトランスミッションのコントロールレバーコンポーネント、シフトレバーコンポーネント、スプロケット、ギヤ(シャフト付)等、第一の鋼材に第二の鋼材を接合した形態の部品、或いはエンジンの部品及びその製造に好適である。
1 鋼製品
2 接合部
4 第一の鋼材
5 孔部
6 第二の鋼材

Claims (1)

  1. オーステナイト粒界に、微細なフェライトと鉄炭化物とが分かれて析出し、かつ上記鉄炭化物と比べて上記フェライトが大部分を占め、さらに上記フェライトと上記鉄炭化物とがそれぞれ塊状となってネット状に粒界に析出し、生地にはこれら析出物に囲まれたマルテンサイト組織が存在する組織を、固相拡散接合による接合部に有し、
    上記接合部は鋼材の孔部に他の鋼材を圧入して接合された接合部であり、かつ、上記鋼材として、炭素量0.18〜1.20%の鋼材又は浸炭処理をした鋼材を用いたことを特徴とする鋼製品。
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