以下、図面を参照して、第1から第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。ただし、図面において、同一又は類似の部材や部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。また、図面相互間において、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
〔第1実施形態〕
[ゴルフスイング練習器具の構成]
まず、図1Aから図4を参照して、第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具の構成について説明する。図1Aは本発明に係るゴルフスイング練習器具の基本態様の平面図である。図1Bは本発明に係るゴルフスイング練習器具の基本態様の変形例の平面図である。図2は第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具の平面図である。図3は第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具の側面図である。図4は第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具において、環状部材の断面外径の説明に供する図である。
図1Aに示すように、基本態様のゴルフスイング練習器具101は、棒状部材11と環状部材50とを備える。環状部材50は棒状部材11の少なくとも一部を囲繞している。棒状部材11は、環状部材50の略中心部を通過するように固定されている。すなわち、棒状部材11は、一端部もしくは両端部が環状部材50から貫通して突き出していることが好ましい。あるいは、図1Bに示すように、棒状部材11の一部は、たとえば、伸縮式の釣り竿やアンテナのように、進退可能に形成されていても構わない。棒状部材11の突き出し部分11Aの後退時には、環状部材50の枠内に棒状部材11が収まった状態となる。
図2および図3に示すように、第1実施形態の棒状部材1は、ゴルフクラブ10によって構成されている。ゴルフクラブ10は、シャフト20の先端部にクラブヘッド30を有し、後端部にグリップ40を有する。ゴルフクラブ10は、アイアンクラブであるか、もしくはウッドクラブであるかを問わない。
当該ゴルフクラブ10は、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100の一部を構成する練習用クラブである。したがって、シャフト20の長さは、ラウンドプレイ用のクラブよりも短く設定してもよい。しかし、シャフト20の長さを短くし過ぎると、スイング時に使用者の身体の一部にクラブヘッド30が接触する虞があるので、当該クラブヘッド30をゴム等の緩衝部材で形成することが好ましい。あるいは、金属製等の剛性のあるクラブヘッド30の周囲が緩衝部材で覆われていても構わない。
環状部材50の外観形状としては、例えば、視覚的に当該環状部材50の中心部を把握しやすい形状であって、特に円形(円環状)であることが好ましい。また、環状部材50の構成部材としては、例えば、合成樹脂やゴム、金属等が挙げられるが、例示の材料に限定されない。さらに、環状部材50は、中空体であるか、もしくは中実体であるかを問わないが、軽量化を図るためには中空体であることが好ましい。
環状部材50は、シャフト20の後端側(グリップ40を含む、以下同じ)に、少なくとも、グリップ領域41の一部を囲繞するように固定される。環状部材50の内径Rは、少なくとも片手のグリップ(握り)が可能な大きさに設定される。例えば、第1実施形態の環状部材50の内径Rは、両手のグリップ(握り)が可能なように設定されているが、後述の第2実施形態のように、片手のみのグリップ(握り)が可能なように設定してもよい(図12および図13参照)。
また、環状部材50は、図3に示すように、当該環状部材50の径方向面がクラブフェイス31のリーディングエッジ32から立ち上がるロフト角の基準面Lと平行になるように、シャフト20に固定される。換言すれば、クラブフェイス31が臨む水平方向(振り抜き方向)Hに対して当該環状部材50の径方向面が垂直(いわゆるクラブフェイスにスクエア)となるように、シャフト20に固定される。ここで、「リーディングエッジ」とは、クラブフェイス31の最下部の地面と接する辺の部分をいう。また、「ロフト角の基準面」とは、クラブフェイス31のロフト角の基準線(0度)が存する面をいう。なお、例えば、サンドウェッジのように、ゴルフクラブ10の種類によっては、クラブフェイス31のリーディングエッジ32が弧状にラウンド形成されている場合もあるが、この場合には、弧状線の弦に相当する直線から立ち上がるロフト角の基準面Lと当該環状部材50の径方向面が平行となるように、シャフト20に固定される。
さらに、環状部材50は、シャフト20の後端側(グリップ40を含む)が当該環状部材50の中心部を経て貫通するように、シャフト20に固定される。環状部材50はシャフト20の後端側に固定されていればよく、当該環状部材50からグリップ40の後端部が外部に突き出ているか否かは問わない。
図4に示すように、環状部材50の断面外径Dは、両手のグリップ(握り)時に両手首から前腕の内側に当該環状部材50の外周面が接触可能な太さを有することが好ましい。環状部材50の外周面と両手首から前腕の内側とが接触することにより、グリップ40の中間部を中心としたゴルフクラブ10の縦方向回動における手元のコック・アンコック動作を触覚的に把握し易くなるからである。その反面、環状部材50の断面外径を太く設定し過ぎると、両手のグリップ(握り)が困難になるので、適度な太さに設定することを要する。使用者の体型等により変化しうるが、具体的には、環状部材50の断面外径Dは、約2.0〜5.0cm程度の太さに設定される。当該数値範囲はあくまでも目安であり、限定されない。
[ゴルフスイング練習器具の作用]
次に、図1Aから図11を参照して、第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100の作用について説明する。
図1Aおよび図1Bに示すように、基本態様のゴルフスイング練習器具101は、環状部材50と棒状部材1とが一体となった練習器具である。図2および図3に示すように、第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100では、棒状部材11として、ゴルフクラブ10を採用している。ゴルフクラブ10のシャフト20の後端側には、少なくともグリップ領域41の一部を囲繞するように、環状部材50が固定されている。
環状部材50は、図3に示すように、当該環状部材50の径方向面がクラブフェイス31のリーディングエッジ32から立ち上がるロフト角の基準面Lと平行になるように、シャフト20に固定される。したがって、シャフト40の後端側に存する環状部材50の径方向面をチェックすれば、クラブフェイス31がどの方向を向いているかを容易に把握することができる(図5から図11参照)。すなわち、スイング中に見失いがちになりやすいクラブフェイス31の向きを、どのポジションにおいても常に明確に意識でき、把握することが可能となる。
また、本実施形態の環状部材50は、円環状を呈している。環状部材50が円環状を呈しているので、当該環状部材50の中心部の位置を視覚的に把握することができる。当該環状部材50の内径は、両手のグリップ(握り)が可能なように設定されている。したがって、左手のグリップ(握り)と右手のグリップ(握り)との間が後述する縦方向の回動動作の中心となる。
本発明者が提唱するスイング理論によれば、ゴルフスイングは、上体の捻りによる胸板の左右回動運動の要素と、身体(胸板)の正中矢状面内における両腕の上下運動の要素との合成によって構成されると考える。ここで、「正中矢状面」とは、身体の中心を上下方向に通り、身体(胸板)の左右中心線に対して垂直となる面をいう。以下、当該スイング理論に基づいて、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100の使用方法について具体的に説明する。なお、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100の使用方法は、右利き用クラブを用いる場合を例示して説明する。
図5はアドレス位置におけるゴルフスイング練習器具の状態の模式図である。図5に示すように、使用者は、まず、アドレス時において、環状部材50の径方向面が身体の正中矢状面と一致するようにゴルフクラブ10を構える。すなわち、環状部材50の径方向面は、身体前面(胸板)に対して垂直の関係に位置する。さらに、環状部材50の径方向面は、クラブフェイス31のリーディングエッジ32から立ち上がるロフト角の基準面Lと平行に位置するとともに、クラブフェイス31の臨む水平方向(振り抜き方向)Hに対してスクエアに位置することになる(図2および図3参照)。
次に、使用者は、アドレス位置からバックスイングを開始する。バックスイングは、まず、上体を右に捻りながら胸板を右回動させる。胸板を右回動させながら、胸板の正中矢状面内において両腕の上昇運動を行う。両腕の上昇運動を行う際に、胸板の正中矢状面と環状部材50の径方向面は一致していなければならない。胸板の正中矢状面と環状部材50の径方向面が一致することにより、クラブフェイス31も自ずと正しい方向に向くことになる。
図6はゴルフスイング練習器具の縦方向の上向き回動動作の説明に供する模式図である。両腕の上昇運動は、図6に示すように、左手の握りを押すとともに、右手の握りを引くような手元のコック動作を起点として、グリップ40の中間部を中心としたシャフト10の縦方向の上向き回動動作を行う。シャフト20の縦方向の上向き回動動作の中心は、環状部材50の中心部を目安として行う。すなわち、両腕の上昇運動において、使用者は、胸板の正中矢状面と環状部材50の径方向面の一致をチェックしたうえで、環状部材50の中心部を目安としてシャフト10の縦方向の上向き回動動作を行うことにより、正しいトップ位置が形成される。
図7はトップ位置におけるゴルフスイング練習器具の状態の模式図である。図7に示すように、トップ位置においても、胸板の正中矢状面内に環状部材50の径方向面が存在することになる。
次に、使用者は、スイングのトップ位置からゴルフクラブ10を振り降ろす動作に移行する。その際、使用者は、捻った上体を左向きへと戻しながら胸板を左回動させる動作から開始し、当該胸板の回動運動に追従させて、胸板の正中矢状面内で両腕を振り降ろす動作を行う。
図8はゴルフスイング練習器具の縦方向の下向き回動動作の説明に供する模式図である。図8に示すように、胸板の正中矢状面内で両腕を振り降ろし、更に左手の握りを引くとともに、右手の握りを押して、グリップ40の中間部を中心としたシャフト10の縦方向の下向き回動動作を行うことになる。すなわち、胸板の左回動運動に伴って胸板の正中矢状面内で両腕を振り降ろすことにより、クラブヘッド30に縦方向下向き回動による力が自然と発生する。
また、胸板の正中矢状面と環状部材50の径方向面との一致を常に意識することにより、使用者は両脇を締めようと意識しなくとも、必然的に両脇を締める動作を行うことができる。両脇が締まると、軸の振れが防止され、胸板の左回動運動とも相俟って、インパクト時にクラブヘッド30に大きな遠心力を発生させることができる。本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100によれば、遠心力を利用したクラブヘッド30の使い方を簡単に習得することができる。また、遠心力が発生することで、高速で回転する独楽のようにさらに軸振れがなくなり、スイング軌道の安定化が期待できる。
図9はインパクト位置におけるゴルフスイング練習器具の状態の模式図である。図9に示すように、このインパクト時においても、身体の正中矢状面と環状部材50の径方向面との一致を意識することにより、クラブフェイス31の臨む水平方向(振り抜き方向)Hに対してクラブフェイス31がスクエアに位置することになる。
図10はインパクト後の振り抜き動作におけるゴルフスイング練習器具の状態の模式図である。図10に示すように、使用者は、インパクトの後、そのままフォロースルーして振り抜けば、身体の正中矢状面と環状部材50の径方向面とが一致しているので、正しいフィニッシュ位置を容易に形成することができる。
図11はフィニッシュ直前位置におけるゴルフスイング練習器具の状態の模式図である。図11に示すように、フィニッシュ直前位置は、ゴルフクラブ10の振り抜きによって上体を起こすため、トップ位置とは必ずしも左右対称な姿勢にならない。しかしながら、図7および図10に示すように、トップ位置とフォロー位置の双方において、胸板の正中矢状面と環状部材50の径方向面とが一致している。
本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100において、身体(胸板)の正中矢状面内における両腕の上下運動は、スイングのガイドラインを形成する。すなわち、身体(胸板)の正中矢状面と環状部材50の径方向面との一致を意識しながら両腕の上下運動を行うことにより、当該ガイドラインから逸脱しないようにスイングを規律することができる。換言するなら、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100の構造は、スイングの方向づけの指標となる。また、両腕の上下運動の際に環状部材50の中心を意識しながら縦方向回動動作を行うことにより、手元のコック・アンコック動作を自然に身に付けることができる。
以上説明したように、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100によれば、身体(胸板)の正中矢状面と環状部材50の径方向面との一致を常に意識しながら、正中矢状面内における両腕の正しい上下運動を行うことにより、スイングが正しいか否かを客観的に自己診断することができる。すなわち、自己のスイングをビデオ撮影して事後的に映像診断することを要さず、リアルタイムでスイング修正することができる。
環状部材50の形状が特に円形(円環状)であるがゆえに、中心軸周りでクラブヘッド30を回動させるという動作を誰もが意識しやすくなる。クラブヘッド30を正しく回動させるという動作を繰り返し行うことで、遠心力を利用したスイングが身に付く。また、この環状部材50を正しく上向き縦回動させると、ゴルフクラブ10が横に寝ることなく、高いトップ位置が自然に形成される。これにより、高いトップ位置から自然落下させるという重力を利用したスイングが身に付く。よって、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具100を正しく回動させることにより、遠心力や重力という自然な力を最大限利用しうるように、ゴルフクラブ10の使い方を矯正することができる。
ここで、胸板の回動によって生じる横方向の遠心力と、両腕の縦方向回動によって生じる縦方向の遠心力とは、中心軸が異なっている。したがって、遠心力の方向が異なるが、横方向の回動と縦方向の回動との順序やタイミング、向きを上手に調整することにより、双方の遠心力によって生じる慣性力(円運動の接線方向に生じる力)をゴルフボールの打ち出し方向に一致させることができる。
また、円形(円環状)の環状部材50を正しく縦方向回動させる動きは、スイングにとって有益かつ単純な動きを誰もが把握しやすいように規制案内してくれる。これは、単にトップやフィニッシュ位置での静止の形を真似るだけのスイング指導とは全く異質のものである。重力による自然落下や遠心力は、一連のスイング動作の中でしか習得できないからである。一連の動きの中で遠心力の発動を感じながら、この単純な動作を反復練習することによって正しいスイングの再現性が高くなる。したがって、多大な費用や労力を払うことなく、使用者自身で、極めて容易に理想のゴルフスイングを身に付けることができる。
さらに、環状部材50の断面外径を適度な太さに設定して、両手のグリップ(握り)時における両手首から前腕の内側に当該環状部材50の外周面を接触させることにより、グリップ40の中間部を中心としたゴルフクラブ10の縦方向回動における手元のコック・アンコック動作が触覚的に把握し易くなる(図4参照)。
〔第2実施形態〕
次に、図12および図13を参照して、第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図12は第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具の一例の平面図である。図13は第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具の他例の平面図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する内容については説明を省略する。
第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具200は、環状部材250の内径が片手のグリップ(握り)のみが可能な大きさに設定されている点が、第1の実施形態と異なる。具体的には、図12に例示したゴルフスイング練習器具200では、右利きのゴルフクラブ10において、環状部材250が左手グリップ(握り)42を囲繞するように装着されている。右手グリップ(握り)43は、当該環状部材50外の先端側に配置される。
図12に例示したゴルフスイング練習器具200では、両手の上下運動を行う場合、環状部材250の先端部を中心として縦方向回動動作を行う。スイング練習時においては、必ずしも右手を添えることを要さず、左手のみの練習を行うことができる。また、右手のみの練習についても同様である。
他方、図13に例示したゴルフスイング練習器具200では、右利きのゴルフクラブ10において、環状部材250が右手グリップ(握り)43を囲繞するように装着されている。左手グリップ(握り)42は、当該環状部材50外の後端側に配置される。
図13に例示したゴルフスイング練習器具200では、両手の上下運動を行う場合、環状部材250の後端部を中心として縦方向回動動作を行う。スイング練習時においては、必ずしも左手を添えることを要さず、右手のみの練習を行うことができる。また、左手のみの練習についても同様である。
なお、図12および図13における環状部材250の位置は例示であって、グリップ領域41の一部を囲繞していればよく、図示する位置に限定されない。
第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具200は、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第2実施形態に係るゴルフスイング練習器具200によれば、環状部材250の内径が片手のグリップ(握り)のみが可能な大きさに設定されているので、片手のみのスイング練習に適しているという有利な効果を奏する。
〔第3実施形態〕
次に、図14Aおよび図14Bを参照して、第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図14Aは第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具の要部平面図である。図14Bは第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具の要部側面図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する内容については説明を省略する。
図14Aおよび図14Bに示すように、第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具300は、環状部材350の外周面が凹凸部351を有する点が、第1実施形態と異なる。環状部材350の凹凸部351の凸部352の断面外径Wは、両手のグリップ(握り)時に両手首から前腕の内側に当該環状部材350の外周面の凸部352が接触可能な太さを有することが好ましい。環状部材350の外周面が凹凸部351を有するので、両腕の上下運動時において、環状部材350の外周面の凸部352と両手首から前腕の内側とが断続的に接触することになる。環状部材350の外周面の凸部352と両手首から前腕の内側とが断続的に接触するので、使用者はグリップ40の中間部を中心としたゴルフクラブ10の縦方向回動動作を意識しやすくなる。
第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具300は、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第3実施形態に係るゴルフスイング練習器具300によれば、環状部材350の外周面が凹凸部351を有する。したがって、当該環状部材350の凸部352が両手首から前腕の内側と断続的に接触することにより、ゴルフクラブ10の縦方向回動動作が意識しやすくなるという有利な効果を発揮する。
〔第4実施形態〕
次に、図15を参照して、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図15は第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具の要部平面図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する内容については説明を省略する。
図15に示すように、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具400は、環状部材450の外周部に、フリンジ部材451が設けられている点が、第1実施形態と異なる。フリンジ部材451は、例えば、環状部材450の外周部の最外側に等間隔で複数設けられることが好ましい。上体を捻ることによる胸板の回動運動と両腕の上下運動とにより環状部材450に遠心力が付与されると、複数のフリンジ部材451が当該環状部材450の移動方向と反対の接線方向へ向けて拡がることになる。複数のフリンジ部材451が当該環状部材450の接線方向へ向けて拡がることにより、使用者は両腕の上下運動時における縦方向回動動作を触覚的および視覚的に把握することができる。また、フリンジ部材451が環状部材450に接触する音を聞くことにより、使用者は両腕の上下運動時における縦方向回動動作を聴覚的に把握することができる。
フリンジ部材451の振れ具合を観ながら、胸板の横方向回動によって生じる力の方向と両腕の縦方向回動によって生じる力の方向とが、インパクトゾーンにおいてともに水平方向(振り抜き方向)に一致するように、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具400を使用することで、正しいゴルフスイングが身に付きやすい。
フリンジ部材451の構成材料としては、例えば、天然繊維や合成繊維を編んだ紐部材や、金属製や合成樹脂製の鎖部材等の揺動可能な部材が挙げられるが、例示の材料に限定されない。
第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具400は、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具400は、環状部材450の外周部にフリンジ部材451が設けられている。したがって、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具400によれば、上体を捻ることによる胸板の回動運動と両腕の上下運動とにより環状部材450に遠心力が付与され、当該遠心力によってフリンジ部材451が接線方向へ向けて拡がるので、ゴルフクラブ10の縦方向回動動作が五感を通して把握しやすくなるという有利な効果を発揮する。また、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具400によれば、フリンジ部材451の振れ具合の観察により、胸板の横方向回動によって生じる力と両腕の縦方向回動によって生じる力の方向とを一致させやすく、正しいゴルフスイングが身に付きやすいという有利な効果を発揮する。
〔第5実施形態〕
次に、図16を参照して、第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図16は第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具における環状部材の一部を破断した要部平面図である。図17は第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具におけるシャフトの一部を破断した要部平面図である。なお、図16および図17において、部材厚みのハッチングは省略して図示する。また、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する内容については説明を省略する。
図16および図17に示すように、第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具500は、環状部材550の内部に、流動体560が密閉封入されている点が、第1実施形態と異なる。すなわち、環状部材550の内部には、シャフト20の後端部が貫通する部分を除いて、密閉空間551が形成されている(図16参照)。また、シャフト20の先端側にはクラブヘッドが存在し、後端側にはグリップ40が存在するので、当該シャフト20の内部は密閉空間521となっている(図17参照)。当該シャフト20内の密閉空間521は、クラブヘッド側へ向けて順次もしくは段階的に縮径された略中空円柱状の空間となっている。基本態様の棒状部材11の場合には、当該棒状部材11の両端部が閉塞され、同様に密閉空間が形成される(図示せず)。当該密閉空間551には、流動体560が密閉封入されている。
流動体560としては、例えば、水や潤滑油等の流体や合成樹脂粒状体等の集合物などが挙げられるが、例示の材料に限定されない。流動体560は、水と油や、水と粒状体のように、二種以上の流動体を組み合わせても構わない。流動体560は、密閉空間551で流動しうるように、密閉空間551に空気層561が残存するように充填される。
環状部材50の内部に流動体560を封入した場合、上体を捻ることによる胸板の回動運動と両腕の上下運動とにより環状部材450に遠心力が付与されると、環状部材550の密閉空間551で流動体560が当該環状部材450の周方向に沿って流動することになる。環状部材450内で流動体560が周方向に沿って流動することにより、使用者は両腕の上下運動時における縦方向回動動作を触覚的および聴覚的に把握することができる。
また、本実施形態において、環状部材50の構成部材として、透明樹脂等の透明部材を採用してもよい。透明部材は、無色透明であるか、有色透明であるか、または半透明であるかを問わない。環状部材50を透明部材で形成した場合には、環状部材50内における流動体560の流動状態を視覚的に把握することができる。透明樹脂としては、例えば、PET(polyethylene terephthalate)、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)、PI(polyimide)、PS(polystyrene)、またはAS(Acrylonitrile Styrene)などが挙げられるが、これらの材料に限定されない。
流動体560の動きを触覚的、聴覚的、および視覚的(環状部材50が透明部材の場合;本実施形態において、以下同じ)に感じながら、胸板の横方向回動によって生じる力と両腕の縦方向回動によって生じる力との双方の力の方向が一致するように本実施形態に係るゴルフスイング練習器具400を使用することで、正しいゴルフスイングが身に付きやすい。
なお、環状部材50とシャフト20との双方の密閉空間551,521に流動体560を封入してもよいが、環状部材50内とシャフト20内とでは密閉空間551,521の形状が異なるため、当該密閉空間551,521における流動体560の挙動が異なる。よって、双方の構成を混在させない方が、両腕の上下運動時における縦方向回動動作を触覚的および聴覚的に把握しやすい。しかしながら、環状部材50とシャフト20との双方の密閉空間551,521に流動体560を封入する構成を排除するものではない。
第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具400は、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第5実施形態に係るゴルフスイング練習器具500は、環状部材550の密閉空間551内に流動体560が密閉封入されている。したがって、第4実施形態に係るゴルフスイング練習器具500によれば、上体を捻ることによる胸板の回動運動と両腕の上下運動とにより環状部材550に遠心力が付与され、当該遠心力によって密閉空間551内を流動体560が周方向に沿って流動するので、ゴルフクラブ10の縦方向回動動作が触覚的、聴覚的、および視覚的に把握しやすくなるという有利な効果を発揮する。
次に、図18を参照して、第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図18は第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具の要部平面図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、重複する内容については説明を省略する。
図18に示すように、第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具600は、環状部材650の内側に内環状部材651が設けられている点が、第1実施形態と異なる。内環状部材651は、外側の環状部材650よりも小径に形成されている。本実施形態の内環状部材651は、外側の環状部材650と同心に設けられているが、これに限定されず、中心をずらして配置しても構わない。
内環状部材651は、外側の環状部材650の内側において、グリップ領域41の一部を囲繞するように設けられている。また、内環状部材651は、シャフト20の後端側が該内環状部材651の中心部を経て貫通するように、シャフト20に固定されている。さらに、内環状部材651は、外側の環状部材650と同様に、当該内環状部材651の径方向面がクラブフェイス31のリーディングエッジ32から立ち上がるロフト角の基準面Lと平行となるように固定されている(図3参照)。外側の環状部材650の内側に内環状部材651が存するので、使用者は当該内環状部材651を握った変形練習を行うことができる。
本実施形態では、外側の環状部材650と内環状部材651との間に、接合部材652が設けられている。接合部材652は、略均等間隔で放射線状に複数配置されている。接合部材652は必須の部材ではないが、外側の環状部材650と内環状部材651との位置ずれを防止することができる。また、内環状部材651を握る他、当該接合部材652を握った変形練習も可能であるので、外側の環状部材650と内環状部材651との間に接合部材652を設けることが好ましい。
なお、本実施形態では、環状部材650内に一の内環状部材651が設けられ、二重の環状部材650,651となっているが、これに限定されず、三重以上の複数の内環状部材を同心円状に設けても構わない。
第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具600は、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具600は、環状部材650内に内環状部材651が設けられている。したがって、第6実施形態に係るゴルフスイング練習器具600によれば、内環状部材651や接合部材652を握った変形練習が可能であるという有利な効果を発揮する。
〔第7実施形態〕
次に、図19から図23を参照して、第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具について説明する。図19から図23に示すように、第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具700は、スイングの練習時にゴルフクラブ10に装着して使用する形式の練習器具である。すなわち、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具700は、ラウンドプレイ可能な通常のゴルフクラブ10に着脱可能に装着される。したがって、本実施形態に係るゴルフスイング練習器具700は、スイング練習時にゴルフクラブ10に装着され、ラウンドプレイ時にゴルフクラブ10から取り外される。
本実施形態に係るゴルフスイング練習器具700の本体は、環状部材750からなる。環状部材750は、シャフト20の後端側に、着脱可能に装着される。本実施形態では、ラウンドプレイ可能な通常のゴルフクラブ10を使用するからである。環状部材750の着脱可能な装着構造としては、例えば、ねじ止め構造、半割構造、またはソケット構造等が挙げられるが、着脱可能であれば例示の装着構造に限定されない。
まず、図19を参照して、ねじ止め構造の環状部材について説明する。図19は第7実施形態におけるねじ止め構造の環状部材の平面図である。
図19に示すように、ねじ止め構造の環状部材751には、シャフト20の後端側が通過する対向位置に、一対の筒体部61A,61Bが形成されている。これらの筒体部61A,61Bの内径は、シャフト20の後端側を挿通させるに十分な大きさを有している。各筒体部61A,61Bには、当該筒体部61A,61Bをその径方向に貫通するように不図示の雌ねじ部が形成され、各雌ねじ部には、例えば、蝶ボルト62A,62Bが螺合される。すなわち、ねじ止め構造の環状部材51は、筒体部61A,61B内にシャフト20の後端側を挿通させて、各雌ねじ部に蝶ボルト62A,62Bをねじ込んで進出させることにより、シャフト20の後端側を押圧・保持するようになっている。なお、蝶ボルト62A,62Bではなく、例えば、六角ボルト等の他の形式の締結部材を採用してもよい。
また、図20Aから図21を参照して、半割構造の環状部材について説明する。図20Aは第7実施形態における一方の半割環状部材の内面側の平面図である。図20Bは第7実施形態における他方の半割環状部材の内面側の平面図である。図21は第7実施形態における半割構造の環状部材の装着状況の説明に供する側面図である。
図20Aから図21に示すように、半割構造の環状部材752は、シャフト20の後端側を一対の半割環状部材752A,752Bで挟んで一体化させる構造を有する。各半割環状部材752A,752Bの合わせ面には、シャフト20の後端側を挿通させるための半円筒状の凹部71A,71Bが形成されている。当該環状部材752の着脱構造としては、例えば、一方の半割環状部材752Aに係合凹部72Aが形成され、他方の半割環状部材752Bに係合爪72Bが形成されている。図21に示すように、半円筒状の凹部71A,71B内にシャフト20の後端側を挿通させた状態で、一方の半割環状部材752Aの係合凹部72Aに、他方の半割環状部材752Bの係合爪72Bを係合させることにより、これらの半割環状部材752A,752Bは環状部材52として一体化される。なお、半割環状部材752Aと半割環状部材752Bとの係合手段は、係合凹部72Aと係合爪72Bに限定されない。
さらに、図22を参照して、ソケット構造の環状部材について説明する。図22は第1実施形態におけるソケット構造の環状部材の平面図である。
図22に示すように、ソケット構造の環状部材753は、一部に相対向した不連続部(切断部)54を有する。当該環状部材753の着脱構造としては、例えば、不連続部54の一方の端部に嵌合凸部54Bが形成され、他方の端部に該嵌合凸部54Bを挿入嵌合するための嵌合凹部54Aが形成されている。嵌合凸部54B、および該嵌合凸部54Bと径方向で相対向する部位には、シャフト20の後端側を挿通させるための貫通孔81A,81Bが形成されている。
嵌合凸部54Aには、その長手方向に沿って不図示のスリットが形成され、当該スリットを拡げることにより、シャフト20の後端側が挿通しやすくなるように工夫されている。スリットの末端には、裂け防止のための円形の止め孔が形成されている。貫通孔81A,81Bにシャフト20の後端側を挿通させた状態で、不連続部54の一方の端部の嵌合凹部54Bに、他方の端部の嵌合凸部54Aを挿入嵌合させることにより、環状部材753は一体化される。
次に図23を参照して、ソケット構造の環状部材の変形例について説明する。図23は第1実施形態におけるソケット構造の環状部材の変形例の平面図である。
図23に示すように、ソケット構造の環状部材753の変形例として、例えば、不連続部54の一方の端部に嵌合凸部54Bに雄ねじ部91Bを形成するとともに、他方の端部の嵌合凹部54Aに回転可能なナット部91Aを形成し、当該雄ねじ部91Bにナット部91Aを螺合するように構成しても構わない。
第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具700は、ゴルフクラブ10に装着した場合において、基本的に第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様の作用効果を奏する。特に、第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具700の本体は環状部材750であり、シャフト20の後端側に着脱可能に設けられる。したがって、第7実施形態に係るゴルフスイング練習器具700によれば、ラウンドプレイ可能な通常のゴルフクラブ10に装着して使用することができ、汎用性に富む。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
上記の実施形態では、右利き用クラブを用いる場合を例示して説明したが、第1から第7実施形態のゴルフスイング練習器具100〜700は、左利き用クラブとして構成しても、同様の作用効果を奏することができるのは言うまでもない。
また、図1Aに例示した基本態様のゴルフスイング練習器具101は、棒状部材11と、該棒状部材11の少なくとも一部を囲繞するように環状部材50と、から構成される。当該基本態様のゴルフスイング練習器具101は、ゴルフクラブ10と異なり、クラブヘッドを有しないためクラブフェイスの確認ができないが、当該環状部材50の径方向面をクラブフェイスとみなして使用することで、第1実施形態に係るゴルフスイング練習器具100と同様にスイング練習を行うことができる。
さらに、図1Bに示したように、棒状部材11の一部を進退可能に形成した場合には、棒状部材11の突き出し部分11Aを環状部材50の枠内に収まるように後退させておき、両腕の下向き縦方向回動動作によって、当該突き出し部分11Aを進出させて突き出させることができる。これにより、両腕の下向き縦方向回動動作(いわゆるリリース)が、視覚的にかつ触覚的に把握しやすくなる。
そして、棒状部材11の構成部材として、可撓性を有する部材を採用することが好ましい。棒状部材11が可撓性を有すれば、スイングの際に棒状部材11が釣り竿のように撓るので、スイングにおける横方向回動動作および縦方向回動動作が視覚的に把握しやすくなる。