JP6174060B2 - 延性を示す、金属ガラスをベースにした複合体の構造形成のメカニズム - Google Patents
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Description
本出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれている、2008年10月21日に出願した米国仮特許出願第61/107,037号の利益を主張するものである。
高純度元素(即ち、99%以上の純度)を使用して、目標とする合金の15g合金原料を、Table 1(表1)に示される原子比に従い計量した。次いで原材料を、アーク溶解システムの銅製の炉内に入れた。原料を、遮蔽ガスとして高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。インゴットを数回反転させ、再溶融して確実に均質にした。次いで混合後、インゴットを、幅約12mm、長さ30mm、厚さ8mmのフィンガーの形に鋳造した。次いで得られたフィンガーを、穴の直径が約0.81mmの石英坩堝内のメルトスピニングチャンバに入れた。インゴットを、RF誘導を使用して1/3atmのヘリウム雰囲気中で融解し、次いで典型的には16または10.5m/秒の接線速度で移動する直径245mmの銅ホイール上に排出した。生成された、得られたリボンは、Table 2(表2)に示されるように、典型的には約1.25mmの幅と、0.04から0.08mmの厚さとを有していた。
インゴット形態の合金の密度は、空気中および蒸留水中の両方で計量可能な特別に構成された天秤を使用して、Archimedes法を使用して測定した。各合金ごとに、アーク溶解した15gのインゴットの密度を、Table 3(表3)に記載し、7.73g/cm3から7.85g/cm3まで様々であることがわかった。実験結果は、この技法の精度が±0.01g/cm3であることを明らかにした。
熱分析を、DSC−7オプションを備えたPerkin Elmer DTA−7システムで、凝固したままのリボン構造に対して行った。示差熱分析(DTA)および示差走査熱量測定(DSC)を、10℃/分の加熱速度で行い、サンプルは、超高純度アルゴンの流動を使用することによって酸化から保護した。Table 4(表4)において、ガラスから結晶質への転移に関連したDSCデータは、16m/秒および10.5m/秒の2つの異なるホイール接線速度でメルトスパンされた合金に関して示されている。冷却速度は、高いホイール接線速度で増大することに留意されたい。図1および2では、16および10.5m/秒でメルトスパンされた各サンプルごとに、対応するDTAプロットが示されている。図示されるように、サンプルの大部分は、ガラスから結晶質への転移を示し、アズスパン(as−spun)状態ではかなりの割合の金属ガラスを含有することが実証される。PC7E4A9合金は、低いガラス形成能力を示すことがわかり、16m/秒で加工した場合はただ1つの小さなガラスピークを示し、10.5m/秒で加工した場合はガラスピークはなかった。ガラスから結晶質への転移は、約420から約480℃の温度の範囲内で、および約−3から約−127J/gの転移エンタルピーで、1段階でまたは2段階で生じる。
アズスパンリボンを、短いセグメントに切断し、リボンの4から6個の小片をオフカットSiO2単結晶(ゼロバックグラウンドホルダ)上に置いた。リボンを、その光沢面(自由面)または無光沢面(ホイール面)がホルダ上で上を向くように据えた。少量のケイ素粉末も同様にホルダ上に置き、次いでケイ素の高さがリボンの高さに一致するように押圧し、後で詳述する相分析で任意のピーク位置の誤差を一致させる。X線回折走査は、20から100°の2θで、ステップサイズ0.02°および走査速度2°/分で行った。X線管の設定は、銅標的で、40kVおよび44mAで測定した。図3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12において、X線回折走査は、それぞれ、16m/秒でメルトスパンされたPC7E4A9、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E4A9、16m/秒でメルトスパンされたPC7E4C3、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E4C3、16m/秒でメルトスパンされたPC7E6H9、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E6H9、16m/秒でメルトスパンされたPC7E6J1、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E6J1、16m/秒でメルトスパンされたPC7E7、および10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E7の、リボンの自由面(上部曲線)およびホイール面(下部曲線)の両方に関して示されている。添加されたケイ素はX線走査で大半を占める可能性があるが、ガラスおよび結晶質含量の割合と、形成された相とは、ホイール速度に応じて、またホイール面から自由面へのリボンの断面を通して変化することが明らかであり、このときいくつかのサンプル表面は100%のガラスを示し、その他のサンプルは100%の結晶化度を示す。伝導性熱伝達により、ホイール面が最も早く冷却されるが、厚さに応じて、自由面がリボンの中心よりも早く冷却でき、これはメルトスピニングが、リボンの自由表面での放射および伝導性熱伝達の両方を可能にするヘリウム分圧で行われる点に起因することに、留意されたい。このとき、相はX線回折走査で同定されていないが、初期結果は、1つまたは複数のFCC相が存在することを示しているようである。
透過電子顕微鏡法(TEM)用の試料を、機械的薄層化およびイオンミリングの組合せによって、メルトスパンリボンから生成した。リボンを、ファイングリットサンドペーパを使用して、その当初の厚さから約10ミクロンへと機械的に薄くし、その後、フェルトパッド上にある5ミクロンおよび0.3ミクロンのアルミナ粉末を使用して、いずれの場合も潤滑剤として水を一緒に用いて研摩した。次いで3mmのリボン切片を、レーザブレードを使用して切断し、得られた切片は、支持リングが取扱いのために構造的完全性を提供するので、2液性エポキシで銅支持リング上に取り付けた。次いで切片に、4.5kVで動作するGatan精密イオン研摩システム(PIPS)を使用して、イオンミリングを行った。入射角は、イオンミリングプロセス中、10分ごとに9度から8度まで減少させ、最終的には7度にした。得られた薄い領域は、200kVで動作するJEOL 2010 TEMを使用して、試験をした。Table 1(表1)に列挙される各合金ごとに、16m/秒および10m/秒の両方でメルトスパンされたサンプルのリボンの厚さの中心付近で、TEM顕微鏡写真を撮った。図13、14、15、16、17、18、19、20、21、および22において、TEM顕微鏡写真は、それぞれ、16m/秒でメルトスパンされたPC7E4A9、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E4A9、16m/秒でメルトスパンされたPC7E4C3、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E4C3、16m/秒でメルトスパンされたPC7E6H9、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E6H9、16m/秒でメルトスパンされたPC7E6J1、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E6J1、16m/秒でメルトスパンされたPC7E7、および10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E7のリボンの、中心領域を示している。さらにこれらの図では、選択された領域の電子回折パターンが、記述される特定の領域の形状に対応することが示されている。TEM研究は、100%非晶質領域、ガラス母材中の単離された結晶質沈殿物、ガラス母材中に成長する多相結晶質クラスタ、10から100nmのナノ結晶質微結晶を含む完全結晶質領域、ガラス母材と相互に混合された約2種の非常に微細な(即ち、<15nm)結晶質相を有する固有の3相ナノスケールミクロ成分(事例#3も参照)という構造の多様性を示す。
機械的性質の試験を、主に、定性的180°曲げ試験および引張り試験を主に使用することにより行った。下記のセクションは、技術的アプローチおよび測定データについて詳述する。
リボンが完全に平らに曲がる能力は、比較的高い歪みを得ることができるが伝統的な曲げ試験では測定することのできない、特殊な状態を示す。リボンがそれ自体の周りに完全に折り曲げられる場合、このリボンは、複合的メカニックから得られるように119.8%程度に高くすることができる、比較的高い歪みを経験する。実際、歪みは、リボンの引張り側で約57%から約97%の歪みの範囲にあってもよい。180°に曲げる間(即ち、平ら)、4タイプの挙動:タイプ1の挙動−破断なしに曲げることができず、タイプ2の挙動−ホイール面を外側に向けた状態の一面で曲げることができ、タイプ3の挙動−自由面を外側に向けた状態の一面で曲げることができ、タイプ4の挙動−両面で曲げることができるという挙動が観察された。Table 6(表6)では、特定の挙動タイプを含む180°曲げ結果の概要が、16および10.5m/秒の両方で処理された研究済みの合金に関して示されている。図23には、4種の異なるタイプの曲げ挙動の実施例を示す、180°曲げた後の様々なリボンサンプルの光学写真が示されている。
金属リボンの機械的性質を、ミクロスケール引張り試験を使用して、室温で得た。試験は、MTEST Windows(登録商標)ソフトウェアプログラムによりモニタされ制御される、Fullam製の商用引張りステージで実施した。変形は、把持システムを通したステッピングモータにより適用し、一方、負荷は、1つの把持顎の端部に接続されたロードセルにより測定した。変位は、ゲージ長の変化を測定するために2つの把持顎に取着された、線形可変差動変圧器(LVDT)を使用して得られた。
測定された高い伸び、およびメルトスパン合金で観察された4つの全く異なるタイプの曲げ挙動を含む、本発明の結果を認めるために、ミクロ構造形成のための下記のメカニズムが開発された。これらのモデルは、結果を調整するために開発され、しかし、いかなる方法によっても、潜在的により複雑な相互作用の特定の詳細の特徴を限定すると解釈されないことに留意されたい。さらに、ミクロ構造形成のメカニズムおよび特定の構造的特徴は、ニッケル、コバルト、マグネシウム、チタン、モリブデン、希土類などの種々の卑金属で作製された広く様々な金属ガラスの化学的性質に関連する可能性がある。
図25には、タイプ1の挙動での材料応答を示す、モデル連続冷却転移(CCT)ダイアグラムが示されている。図示されるように、ホイール面、自由面、および中心領域は、ガラス失透曲線の鼻端(nose)が消え得るように、十分ゆっくりと冷却される。したがって、結晶質相は、従来の核生成および成長を通して形成される。核生成が開始される前に高い過冷却が実現される場合、ナノ結晶質粒度が実現され得ることに留意されたい。結晶化が完了すると、出発時の化学的性質の過飽和はなくなり、したがってスピノーダル分解相を形成することはできない。したがって、材料応答は、脆性であり180°試験で曲げることはできないと予測することができる。
図26には、タイプ2の挙動での材料応答を示す、モデル連続冷却転移(CCT)ダイアグラムが示されている。図示されるように、ホイール面は、ガラス失透転移を失っているが、スピノーダル転移を通して冷却される。したがってミクロ構造は、非晶質母材中に結晶質相の均一で比較的微細な(即ち、<15μm)分布を有するスピノーダル分解ミクロ成分を形成する。ホイール面での材料応答は、ホイール面が外側に向いたときに(即ち、緊張状態)、高い塑性および完全に平らに曲がる能力を示すと予測することができる。リボンの自由面および中心は、ガラス形成領域を冷却し失い、核生成前に実現された全体の過冷却に応じてナノスケールであってもよい完全結晶質構造を形成することがわかる。過飽和は結晶化後になくなる可能性があるので、スピノーダル分解反応は生じず、予測される材料応答は脆性である。したがって、リボンが、自由面が外側に向いた状態で曲げられると(即ち、緊張状態)、材料は、破壊して脆性応答を示すと予測される。
図27には、タイプ3の挙動での材料応答を示す、モデル連続冷却転移(CCT)ダイアグラムが示されている。図示されるように、ホイール面は冷却され、ガラス失透およびスピノーダル分解曲線の両方の開始点(即ち、鼻端)の両方を失っていることがわかる。この構造は、金属ガラスのみであることがわかる。ホイール面が外側に向けられた状態(即ち、緊張状態)で予測される材料応答は、脆性であり、平らに曲がる能力がない。後続のアニーリングによって、図に示されるように初期ガラス核生成と同様により低い温度でスピノーダル分解が生じる場合には、スピノーダル分解を引き起こすことが可能になり、アニーリングを通した延性および曲げ性を大幅に改善する可能性があることに留意されたい。自由面に関しては、図示されるように、冷却され、かつガラス失透曲線の鼻端が失われ、過飽和状態が保持される。次いでスピノーダル分解反応を通して冷却され、ガラス母材中に多数のナノスケール相を有するスピノーダル分解ミクロ成分を形成する。予測される材料応答は、高い塑性であり、自由面を外側に向けた状態(即ち、緊張状態)では180°曲がる能力(即ち、平ら)を有する。図に示されるような中心領域に関しては、冷却され、かつガラス形成領域が失われ、完全失透転移に移行する。過飽和が失われるので、スピノーダル反応は生じず、予測される応答は脆性である。中心領域で実現される冷却速度は、実際に、有意な幅を示す勾配であり、したがって、完全失透、部分スピノーダル分解、または完全スピノーダル分解からのリボンの中心で、構造の多様性が実現される可能性があることに留意されたい。また、この内容は、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7Eサンプルの中心領域で観察される構造のばらつきを説明することにも留意されたい(図22参照)。
図28には、タイプ4の挙動での材料応答を示す、モデル連続冷却転移(CCT)ダイアグラムが示されている。図示されるように、ホイール面、自由面、および中心領域は冷却され、ガラス失透転移の鼻端を失っている。次いでホイール面、自由面、および中心領域は、スピノーダル分解曲線を通して冷却され、ガラス母材中に相互分散されたナノスケールの多数の結晶質相からなる好ましいスピノーダルミクロ成分が形成される。あるいは、最もゆっくり冷却される中心領域は、部分的に失透し、混合構造を形成することに留意されたい。得られたリボンが、自由面を外側にした状態(即ち、緊張状態)またはホイール面を外側にした状態(即ち、緊張状態)で180°曲げられた場合、予測される材料応答は、高い塑性であり、破断することなく平らに折り曲げられる能力である。
(事例1)
高純度元素を使用して、PC7E4C3の化学的性質を有する15gの負荷量を、Table 1(表1)の原子比に従い計量した。元素の混合物を、銅製の炉内に入れ、カバーガスとして超高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。混合後、得られたインゴットを、メルトスピニングに適したフィンガー形状に鋳造した。次いでPC7E4C3の鋳造フィンガーを、穴の直径が名目上0.81mmである石英坩堝内に入れた。インゴットを、RF誘導により加熱し、次いで16および10.5m/秒のホイール接線速度で移動する、高速移動の245mm銅ホイール上に排出した。リボン構造についてさらに試験をするために、走査電子顕微鏡法(SEM)を、選択されたPC7E4C3リボンサンプルに関して行った。メルトスパンリボンを、金属組織学的バインダクリップを使用して保持されるいくつかのリボンを有する標準の金属組織マウントに取り付けた。リボンを含有するバインダクリップを型の中に設置し、エポキシを注ぎ、硬化させた。得られた金属組織マウントを、標準の金属組織学的手法に従い、適切な媒体を使用して研削および研摩した。サンプルの構造を、17.5kVの電子ビームエネルギー、2.4Aのフィラメント電流、800のスポットサイズ設定を有するZeiss EVO−60走査電子顕微鏡を使用して観察した。図29に示されるように、隔離された多孔質点以外、ミクロ構造フィーチャは見出されなかった。これは明らかに、後方散乱電子検出に固有の解像限界によって分解できない、極めて微細なスケールのミクロ構造を示している。次いでリボンのサンプルを、1000℃で1時間アニールして、分解されていない構造を粗くする試みをした。図30に示されるように、ミクロ構造は分解できないままであり、比較的高度なミクロ構造安定性を示すと考えられる。
高純度元素を使用して、PC7E7合金の15gの負荷量を、Table 1(表1)の原子比に従い計量した。元素の混合物を、銅製の炉内に入れ、カバーガスとして超高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。混合後、得られたインゴットを、メルトスピニングに適したフィンガー形状に鋳造した。次いでPC7E7の鋳造フィンガーを、穴の直径が名目上0.81mmである石英坩堝内に入れた。インゴットを、RF誘導により加熱し、次いで16m/秒のホイール接線速度で移動する、高速移動の245mm銅ホイール上に排出した。リボンを小片に切断し、次いで緊張状態で試験をし、1つの試験から得られた引張り試験の応力/歪みデータを図31に示す。測定した引張り強さは、全伸びが9.71%のときに2.57GPaであることがわかった。図32には、23mmという大きなゲージ長を使用して引張り試験がなされた、PC7E7リボンの別の小片の、SEM後方散乱電子顕微鏡写真が示されている。図には、写真の右手側に亀裂が存在し(黒色)、亀裂先端の前に大きな塑性ゾーンを示す多数の剪断帯が存在することに留意されたい。緊張状態にある亀裂先端を鈍化する能力は、主に金属ガラスであるサンプルの新しい特徴と考えられる。亀裂先端の前の領域にあるそれらの間の剪断帯は、方向を変化させており、場合によっては分裂しており、特定の結晶質ミクロ構造フィーチャと移動剪断帯との間に特定の動的相互作用を示すことに留意されたい。これら特定の相互作用点は、TEM研究により合金中に形成されることが示される、特定のスピノーダルミクロ成分から生じ得ると考えられる。
高純度元素を使用して、PC7E7合金の15gの負荷量を、Table 1(表1)の原子比に従い計量した。元素の混合物を、銅製の炉内に入れ、カバーガスとして超高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。混合後、得られたインゴットを、メルトスピニングに適したフィンガー形状に鋳造した。次いでPC7E7の鋳造フィンガーを、穴の直径が名目上0.81mmである石英坩堝内に入れた。インゴットを、RF誘導により加熱し、次いで10.5m/秒のホイール接線速度で移動する、高速移動の245mm銅ホイール上に排出した。次いで典型的なリボンの小片をTEMに合わせて選択し、3つの連続した短いセグメントに切断した。各セグメントごとに、リボンを、ファイングリットサンドペーパを使用してその当初の厚さから約10ミクロンへと機械的に薄くし、その後、潤滑剤として水を用いることにより、フェルトパッド上にある5ミクロンおよび0.3ミクロンのアルミナ粉末を使用して研摩した。3つのサンプルの薄層化は、図33に示されており、ホイール表面(即ち、縁部から5μm)、リボンの中心領域、および自由表面(即ち、縁部から5μm)が露出するように行われた。次いで3mmのリボン切片を、レーザブレードを使用して切断し、2液性エポキシで銅支持リング上に取り付けたが、これは支持リングが取扱いのために構造的完全性を提供するからである。次いで切片に、4.5kVで動作するGatan精密イオン研摩システム(PIPS)を使用してイオンミリングを行った。入射角は、10分ごとに9度から8度まで減少させ、最終的には7度にした。得られた薄い領域は、200kVで動作するJEOL 2010 TEMを使用して、試験をした。図34には、ホイール面、自由面、およびリボンの中心の、10.5m/秒でメルトスパンされたPC7E7のTEM顕微鏡写真が示されている。図示されるように、最も速く冷却されるホイール面は、完全に結晶質ではなく半結晶質の性質を有するように見える、少量の非常に微細なクラスタを有するほぼ完全なガラスである。即ち、クラスタの存在が顕微鏡写真に見られる可能性がありかつそれらは異なる化学的性質を有するが、明確なブラッグ回折点は、選択された領域の回折パターンに見られず、初期クラスタが完全に結晶質ではなく部分的にしか結晶質ではないことを示している。これは、スピノーダル分解の初期段階で予測され、今後の化学的性質のさらなる乱れが、結晶質クラスタおよび全く異なる結晶質相をもたらすことに留意されたい。リボンの自由面は、全体が、スピノーダル分解生成物(即ち、スピノーダルミクロ成分)に一致した、非晶質母材中に周期的に配列されたナノスケール(<10nm)結晶質相からなる。リボンの中心は、主に、スピノーダルミクロ成分の特定領域を有する非晶質領域からなることがわかっており、この領域ではスピノーダル分解転移が不完全であることを示す可能性がある。
高純度元素を使用して、PC7E7合金の15gの負荷量を、Table 1(表1)の原子比に従い計量した。元素の混合物を、銅製の炉内に入れ、カバーガスとして超高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。混合後、得られたインゴットを、メルトスピニングに適したフィンガー形状に鋳造した。次いでPC7E7の鋳造フィンガーを、穴の直径が名目上0.81mmである石英坩堝内に入れた。インゴットを、RF誘導により加熱し、次いで10.5m/秒のホイール接線速度で移動する、高速移動の245mm銅ホイール上に排出した。次いでリボンのサンプルを、2%臭素水溶液でエッチングした。エッチングしたサンプルの構造を、Carl Zeiss SMT Inc.製のEVO−60走査電子顕微鏡を使用して観察した。典型的な動作条件は、電子ビームエネルギー17.5kV、フィラメント電流2.4A、およびスポットサイズ設定800であった。図35には、10.5m/秒でのエッチング済みPC7E7サンプルに関する、SEM後方散乱電子顕微鏡写真が示されている。得られた構造との、得られたエッチング相互作用の正確な性質は、わかっていない。おそらく、侵襲性エッチング液は、主に、結晶質領域またはスピノーダルミクロ成分を含有する結晶質領域(即ち、ガラス母材中のスピノーダル形成結晶質相)と反応した。したがって、エッチングされた構造は、引張り試験で動的剪断帯と相互に作用し得る結晶質領域/ミクロ成分の分布を明らかにすることができる。
高純度元素を使用して、標的合金の15gの合金原料を、Table 9(表9)に示される原子比に従い計量した。原料となる材料を、アーク溶解システムの銅製の炉内に入れた。原料を、遮蔽ガスとして高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。インゴットを数回反転させ、均質性が確実になるように再溶融した。次いで混合後、インゴットを、幅約12mm、長さ30mm、および厚さ8mmのフィンガーの形に鋳造した。次いで得られたフィンガーを、穴の直径が約0.81mmの石英坩堝内のメルトスピニングチャンバに入れた。インゴットを、RF誘導を使用して1/3atmのヘリウム雰囲気中で融解し、次いで10.5m/秒の接線速度で移動する直径245mmの銅ホイール上に排出した。アズスパンリボンサンプルの曲げ試験(180°)を、各サンプルに関して行い、その結果を表10(表10)で相関させた。示されるように、列挙された特定条件で加工されたときの合金に応じて、曲げ応答は変化することが見出され、下記の4タイプの挙動:タイプ1の挙動−破断なしに曲げることができず、タイプ2の挙動−ホイール面を外側に向けた状態の一面で曲げることができ、タイプ3の挙動−自由面を外側に向けた状態の一面で曲げることができ、タイプ4の挙動−両面で曲げることができるという挙動が観察された。Table 11(表11)には、全伸び、降伏強さ、極限引張り強さ、ヤング率、弾性率、および靭性係数を含む引張り試験結果の概要が、10.5m/秒でメルトスパンされたときのTable 8(表8)の各合金ごとに示されている。メルトスピニングプロセスから生じる偶発的なマクロ欠陥によって、性質を低下させる局在化応力がもたらされる可能性があるので、全く異なる各サンプルについて3重に測定したことに留意されたい。Table 11(表11)に示される結果は、機械コンプライアンス用に調節されていない。
鉄含有添加剤(ferroadditives)を含む商用純度原料を使用して、標的合金の15gの合金原料を、Table 13(表13)に示される原子比に従い計量した。原料となる材料を、アーク溶解システムの銅製の炉内に入れた。原料を、遮蔽ガスとして高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。インゴットを数回反転させ、均質性が確実になるように再溶融した。次いで混合後、インゴットを、幅約12mm、長さ30mm、および厚さ8mmのフィンガーの形に鋳造した。各インゴットごとに、アルキメデスの原理を使用して密度を測定し、その結果をTable 14(表14)に示す。示されるように、密度は、7.28から7.81g/cm3まで変化することがわかった。次いで得られたアーク溶解インゴットを、穴の直径が約0.81mmの石英坩堝内のメルトスピニングチャンバ内に入れた。インゴットを、RF誘導を使用して空気中で融解し、次いで、融解物過熱150℃およびチャンバ圧力280mbarで、25m/秒の接線速度で移動する直径245mmの銅ホイール上に排出した。典型的には0.7から1.5mmの幅の長いリボン長が得られた。次いで生成されたリボンの厚さをマイクロメータで測定し、その結果をTable 14(表14)に記載した。示されるように、厚さは合金の化学的性質に左右され、37から55μmまで変化することがわかった。アズスパンリボンサンプルの曲げ試験(180°)を、各サンプルに関して行い、その結果をTable 9(表9)で相関させた。示されるように、列挙された特定条件で加工されたときの合金に応じて、曲げ応答は変化することがわかったが、主な応答は、タイプ4の挙動であった(即ち、両面で曲げることができる。)。
鉄含有添加剤を含む商用純度原料を使用して、C01F03およびC01B03合金の15gの合金原料を、Table 13(表13)に示される原子比に従い計量した。次いで原料となる材料を、アーク溶解システムの銅製の炉内に入れた。原料を、遮蔽ガスとして高純度アルゴンを使用して、インゴットへとアーク溶解した。インゴットを数回反転させ、均質性が確実になるように再溶融した。次いで混合後、インゴットを、幅約12mm、長さ30mm、および厚さ8mmのフィンガーの形に鋳造した。性質の可変性を示すため、合金を、Table 17(表17)に示される種々のパラメータを使用してリボンに加工した。C01F03合金は、MS45およびMS58パラメータを使用して加工し、一方、C01B03合金は、MS45、MS50、およびMS55パラメータを使用して加工したことに留意されたい。熱分析を、DSC−7オプションを備えたPerkin Elmer DTA−7システムを使用して、10℃/分の加熱速度でTable 13(表13)の凝固したままのリボンに対して行い、サンプルは、超高純度アルゴンの流動を使用することによって酸化から保護した。Table 19(表19)には、DSC分析の結果が示されている。示されるように、開始温度、ピーク温度、およびエンタルピーは、プロセスパラメータに応じて変えることができる。
Claims (4)
- 鉄を53.6原子%から60.9原子%;
ニッケルを13.6から15.5原子%;
コバルトを2.4から2.9原子%;
ホウ素を12から14.1原子%;
炭素を1から4原子%;
ケイ素を3.9から15.4原子%;および
クロムを1.6から2.9原子%、および
不可避的不純物
からなる合金成分を融解するステップと、
メルトスピニング、ジェットキャスティング、Taylor−Ulitovsky、メルトオーバーフロー、プラナーフローキャスティング、またはツインロールキャスティングによって、前記合金を形成し、臨界冷却速度以上の速度で前記合金を冷却する段階と、を含み、
前記合金がスピノーダル分解を受け、ガラス母材中に1種または複数のスピノーダルミクロ成分を形成し、
前記合金が異なる化学組成および物理的性質を有する異なる相に分離され、前記スピノーダルミクロ成分が、ガラス母材中に50nm未満の長さスケールを示す、
合金中にスピノーダルミクロ成分を形成する方法。 - 前記合金が、メルトスピニングによって冷却される、請求項1に記載の方法。
- 前記合金がリボンに形成される、請求項1または2に記載の方法。
- 前記合金が、1μmから2000μmの厚さを有する製品に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
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