前記課題を解決するためになされた本発明は、電話回線に接続された親機との間で無線回線を通じて電波を送受信するコードレス電話の子機であって、前記子機は、所定の情報端末と接続するインタフェースを備え、待ち受け時において、前記親機の送信タイミングと非同期に受信タイミングを設定するとともに、前記情報端末を前記電話回線に接続する際に、前記親機との間で送受信の同期を確立するようにしたものである。
これによって、子機の受信タイミングを送信タイミングと非同期としたことで、当該非同期の期間、即ち待ち受け期間において、子機は親機から制御データを何ら受け取ることなく、単に間欠的な受信動作のみを実行するため、情報端末と接続された子機の消費電力を大幅に低減することが可能となる。
また、本発明は、待ち受け状態において、前記子機は、前記親機の送信タイミング周期よりも長い周期で前記受信タイミングを設定し、前記情報端末が前記子機および前記親機を介して発信する際、前記親機の送信タイミング周期よりも長い受信期間を設定し、前記受信期間に前記親機から送信された制御データに基づき、前記親機との間で送受信の同期を確立するようにしたものである。
これによって、子機は親機の送信タイミングの周期よりも長い期間の受信期間を設定することで、子機は親機が送信する制御データを確実に受信して、親機との間で同期を確立することが可能となる。
また、本発明は、待ち受け状態において、前記子機は、前記親機の送信タイミング周期よりも長い周期で前記受信タイミングを設定し、前記情報端末が前記親機および子機を介して着信する際、前記受信タイミング周期よりも長い送信期間に前記親機から送信された制御データに基づき、前記親機との間で送受信の同期を確立するようにしたものである。
これによって、親機は送信期間において連続的に起動信号(制御データ)を送信することで、子機は親機が送信する起動信号を確実に受信して、親機との間で同期を確立することが可能となる。
また、本発明は、前記子機は、前記親機と時分割多元接続によって送受信を実行するようにしたものである。
これによって、音声データ等を送受信するスロットを複数設定できるため、子機のそれぞれに情報端末を接続することが可能となる。
また、本発明は、前記子機は前記親機とは別体で構成され、前記インタフェースは、前記子機と前記情報端末とを無線回線で接続する前記親機および子機は別体で構成され、前記インタフェースは、前記子機と前記情報端末とを無線回線で接続するようにしたものである。
これによって、例えばストラップを用いて情報端末に子機を付随させ、簡易に持ち運ぶことが可能となる。
また、本発明は、前記子機は前記親機とは別体で構成され、前記インタフェースは、前記子機と前記情報端末とを有線回線で接続するようにしたものである。
これによって、情報端末から子機に電力を供給することができ、子機をより小さく構成することが可能となる。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態のコードレス電話システムにおける親機100と第1子機201と第2子機202と情報端末300との関係を示す説明図である。図1に示すように、コードレス電話システムは1台の親機100と例えば2台の子機200(第1子機201および第2子機202。以降、子機200をそれぞれ区別して扱わない場合は、子機200と呼称する)とで構成される。子機200の個数は2台に制限されず、例えば3台以上でコードレス電話システムを構成してもよい。
親機100はケーブル1aによって図示しない電話回線(有線の公衆回線)に接続されており、電話回線を介して他の電話機との間で音声データをやりとりする。
親機100は無線回線を介して第1子機201と通信を行い、親機100と第1子機201との間で音声データ等の送受信を行う。これによって、第1子機201は親機100を経由して電話回線にアクセスすることができる。一方、第2子機202(特許請求の範囲における「子機」に相当)は、第1子機201と同様に親機100との間で音声データ等の送受信を行う一方、Bluetooth(登録商標)インタフェースを備え、これによって情報端末300と接続されている。Bluetooth(登録商標)は、多数の端末間で通信を行う際のアーキテクチャのひとつで、対等の者(Peer、ピア)同士が通信をする(ピアツーピア)ための通信方式、通信モデルであり、モデルとしてはUSB(Universal Serial Bus)に近いとされている。Bluetooth(登録商標)は2.4GHz帯の電波を使い、時分割多重で機器間の通信を行う。
以降、Bluetooth(登録商標)を「近距離無線通信」あるいは「近距離無線」と呼称する。また、USBを「シリアルバス」と呼称し、更にシリアルバスに関連する構成要素を、例えば「シリアルバス通信部」のように呼称する。
情報端末300は、近距離無線通信インタフェースを介して第2子機202との間で音声データ等を送受信し、この音声データ等は更に第2子機202と親機100との間で送受信され、結果的に情報端末300は、第2子機202および親機100を介して電話回線に接続する。即ち、情報端末300は電話回線に向けて発信を行い、電話回線を介して着信を行う。なお、以降「発信」とは、いわゆる発呼のことをいい、「着信」とは、いわゆる着呼のことをいう。
図2(a)は、第1実施形態のコードレス電話システムの親機100の全体斜視図、(b)は、第1子機201の全体斜視図、(c)は、第2子機202の全体斜視図、(d)は、情報端末300の全体斜視図である。以降、図2(a)、(b)、(c)、(d)を用いて、第1実施形態に係るコードレス電話システムの親機100および第1子機201、第2子機202、および情報端末300の概要について説明する。
第1実施形態では、主にDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式に準拠したディジタルコードレス電話システムを例示して説明する。DECTは2011年に策定されたディジタルコードレス電話機の標準規格であり、1.9GHz帯(1,895,616KHz〜1,902,528KHz)の周波数を使用し、通信方式はTDMA−WB(時分割多元接続方式)を採用している。DECTでは他機器との電波干渉による通信障害を低減できることや、使用する周波数帯である1.9GHzは無線LANや電子レンジと干渉しないので、ファクスや電話による通話品質を維持できるとされている。またDECTは、広帯域の音声データ等を通信できる方式として知られ、周波数チャネルの使用状況を常時モニタリングし、装置自身が最適なチャネルを選択することで効率良く周波数帯域を利用できる。
図2(a)に示すように、ユーザは通常の固定電話と同様に、親機100の表示部6と操作部7とを使って通話する相手方の電話番号の呼び出しやキー入力を行い、電話回線と接続された他の電話機との間で音声データをやりとりする。親機100には話者の音声を入力するマイクロフォン8と通話する相手の声を再生するスピーカ9とが設けられており、ユーザはハンズフリーの状態で相手方と会話をすることができる。このように、親機100にはいわゆるハンドセットが設けられていないが、有線あるいは無線でハンドセットを備えていてもよい。
図2(b)に示すように、第1子機201においても、ユーザは表示部14と操作部15とを使って通話する相手方の電話番号をキー入力等する。第1子機201にも送信すべき音声を取得するマイクロフォン16と、受信信号を復調した音声を出力する通話用スピーカ17と、リンガ用スピーカ18とが設けられている。ユーザは親機100を経由して音声データを送受信する。
図2(c)に示すように、第2子機202はスイッチ58以外の表示部や操作部といったユーザインタフェースを備えておらず、もっぱら後述する情報端末300から入出力された音声データを親機100に中継する機能に特化されている。なお、後述するように、待ち受け時における第2子機202の消費電力は極めて小さいため、長期間の電池駆動が可能であることから、スイッチ58を備えていなくてもよい。なお、第2子機202におけるアンテナ(第2子機アンテナ)53、および情報端末300におけるアンテナ(近距離無線通信アンテナ)57は、いずれも筐体内に内蔵されている。
第2子機202は、ユーザによって容易に持ち歩けるよう特に小型に構成されている(具体的なサイズは、50×25×7mm程度である)。図示するように、ストラップ等を用いて第2子機202を情報端末300に付随させてもよい。このようにすることで、第2子機202を情報端末300とともに簡易に持ち運ぶことが可能となる。また、第2子機202のみをバッグの中に入れておくような利用態様としてもよい。
図2(d)に示すように、情報端末300は、タッチパネル42と、通話用スピーカ43と、マイクロフォン44と、操作部45と、カメラ46と、アンテナ47と、リンガ用スピーカ48とで構成される。ただし、アンテナ47は情報端末300に内蔵され、リンガ用スピーカ48は、情報端末300の背面に配置されていて図面には表れていない。
第1実施形態においては、情報端末300としていわゆるスマートフォンを例示して説明を行う。上述した構成要素は情報端末300のユーザインタフェースを表しており、情報端末300のユーザは、通話用スピーカ43とマイクロフォン44とを用いて3G携帯無線回線を介して他者と通話する。また、ユーザはカメラ46を用いて静止画あるいは動画を撮影する。これら通常の操作において、ユーザは主にタッチパネル42を用いるが、一部の操作においては物理的なスイッチで構成された操作部45が用いられる。
親機100はアンテナ(親機アンテナ)5を有し、第1子機201に備えられたアンテナ(第1子機アンテナ)13または第2子機202に備えられたアンテナ(第2子機アンテナ)53との間で、所定の周波数の搬送波に重畳したディジタル音声データを相互に送受信する。これによって、親機100と第1子機201および第2子機202とはワイヤレスで音声データ等を送受信する。
一方、ユーザが情報端末300のタッチパネル42を操作して、所定のアプリケーションソフトを起動すると、情報端末300は上述した第2子機202と親機100とを介して電話回線に接続される。親機100が着信すると、その旨は情報端末300に伝えられ、情報端末300ではリンガ用スピーカ48を鳴動して、ユーザにその旨を伝える。なお、上述した第1子機201と第2子機202との間においても、同様に音声データがやりとりされ、ユーザは第1子機201と情報端末300との間で通話をすることもできる。
図3は、コードレス電話システムの親機100の概略を示すブロック構成図である。親機100は既に説明したアンテナ5、ユーザインタフェースとしての表示部6、操作部7、監視指示ボタン7a、マイクロフォン8、スピーカ9の他に、外部インタフェースとして電話回線インタフェース1を備えており、電話回線インタフェース1およびケーブル1aを介して電話回線に接続する。また、親機100にはフラッシュメモリ等で構成された記憶部3が設けられ、例えば、使用頻度の高い接続先の電話番号や、親機100を留守番電話として使用する際に、相手方から送信された音声データをディジタル化して記憶する。
また、親機100には信号処理部(制御手段)10が設けられ、信号処理部10はアナログマルチプレクサ10a、コーデック10b、CPUブロック10f、符号化/復号化部10d、フレーム処理部10e、CPUブロック10fに搭載されたディジタルスピーチプロセッサ(音声処理装置)10c、アンプモジュール25で構成される。なお、信号処理部10は制御手段として親機100の全体を制御している。以降、信号処理部10の構成要素について説明する。
アナログマルチプレクサ10aは、電話回線インタフェース1を介して入力された音声信号、マイクロフォン8で受信した音声信号、スピーカ9へ出力される音声信号(音声信号はいずれもアナログ信号)の入出力チャネルから1つのチャネルを選択する。
コーデック10bは、いわゆるオーディオコーデックであり、具体的にはディジタル信号とアナログ信号とを相互に変換するDA変換器およびAD変換器で構成される。コーデック10bによって、電話回線インタフェース1を介して親機100に入力されたアナログ音声信号およびマイクロフォン8で取得されたアナログ音声信号は、AD変換器によってディジタル音声データに変換される。他方、後に説明するディジタルスピーチプロセッサ10cでディジタル処理を施されたディジタル音声データは、コーデック10bでDA変換器によってアナログ音声信号に変換され、このアナログ音声信号がスピーカ9から出力される。
CPUブロック10fは図示しないCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ワークメモリとしてのRAM(read only memory)、これらを結合するバス等で構成され、親機100全体の動作を制御する。そして、CPUブロック10fには音声データ処理を実行するディジタルスピーチプロセッサ10cが搭載されている。ディジタルスピーチプロセッサ10cはコーデック10bによってAD変換されたディジタル音声データ、または後述の符号化/復号化部10dによって復号されたディジタル音声データに対して、ノイズやエコーのキャンセルや、特定音声周波数の強調処理、暗号化/復号化等を実行する。
なお、これらの音声データ処理は、一般的には畳み込み演算によるフィルタリング処理を基本とすることが多く、これらの信号処理に特化したDSP(Digital Signal Processor)等で処理を行ってもよく、もちろん図示しないCPUとディジタルスピーチプロセッサ10cとを1つのプロセッサで構成してもよい。また、信号処理部10全体を1つのDSPで構成しても構わない。
符号化/復号化部10dは、ディジタルスピーチプロセッサ10cの出力のうちアンテナ5を介して無線通信(送信)に供されるディジタル信号を符号化し、他方、アンテナ5を介して受信した信号(ここでは、既にディジタル化されている)を復号化する。符号化/復号化部10dは、例えばADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)方式を採用している。
フレーム処理部10eは、図示しないTDD/TDMA(Time Division Duplex/Time Division Multiple Access)プロセッサを備えている。TDD/TDMAプロセッサは、周期的に設けられたフレーム内をスロット(チャネル)と呼ばれる単位に分割して、同一周波数において複数の通信を可能にする(時分割多元接続)。このように同一周波数を共有して、ごく短い間にデータ送受信を行うため、実質的に送信と受信とを同時に実行しているかのように見せることができる。更に、TDMAでは、周波数帯域を分割するFDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)を併用することにより、多数のチャンネルを確保し、かつ周波数の干渉を避けることができる。このようにフレーム処理部10eは、短時間のうちに送信(Tx)と受信(Rx)とを周期的に切り替えている。なお、DECTで用いられるフレームの構造については、後に説明する。
また、フレーム処理部10eには図示しないDA変換器とAD変換器とが内蔵されている。フレーム処理部10eは、ディジタルスピーチプロセッサ10cから符号化/復号化部10dを介して入力されたディジタル信号(送信信号)をDA変換器によってアナログ信号に変換してアンプモジュール25に出力し、他方、無線部12のLNA36からアンプモジュール25を介して入力されたアナログ信号(受信信号)をAD変換器によってディジタル信号に変換して符号化/復号化部10dに出力する。このように、フレーム処理部10eと無線部12との間には、アンプモジュール25を含むアナログ信号のインタフェースが構成されている。
無線部12では、アンプモジュール25が出力した送信信号(アナログ信号)を図示しない送信回路を介してアンテナ5から放出し、他方、アンテナ5によって受信された受信信号(アナログ信号)を図示しない受信回路を介してアンプモジュール25に出力する。
図4は、コードレス電話システムの第1子機201の概略を示すブロック構成図である。第1子機201は、着信した際の相手先番号や発信(発呼)の際のダイヤル情報を確認する表示部14と、ダイヤル情報の入力等を行う操作部15と、話者の音声を入力するマイクロフォン16と、通話する相手の声を再生する通話用スピーカ17と、短縮ダイヤル情報、音声ガイド等を記憶した記憶部11と、リンガ用スピーカ18、親機100や他の子機200(第2子機202)との間で電波を送受するアンテナ13、信号処理部10、無線部12とで構成されている。
第1子機201は一般的に可搬性を持たせるため小型に設計されるが、基本的な機能は図3を用いて説明した親機100と同等である。即ち、第1子機201の信号処理部10および無線部12の構成および機能は、親機100で説明した信号処理部10と無線部12とで実質的に同じである。よって第1子機201におけるこれらの詳細な説明は省略する。
ただし、第1子機201の信号処理部10のフレーム処理部10eには、同期制御部10sが設けられている。同期制御部10sは、親機100の送信タイミングおよび第1子機201の受信タイミングを整合させる。即ち、例えば電源投入当初において、第1子機201は自律的に所定のタイミングで受信動作を開始し、その際に、同期制御部10sが親機100の同期要求(同期がとれたタイミングからどれだけずれているかの相対値がデータとして含まれる)を受信すると、そのずれを補正するように受信タイミングを決定し、フレーム処理部10eは、この補正された受信タイミングに応じて信号処理のハードウェアの調停等を行う。これによって、親機100が第1子機201を特定して送信する1フレーム期間中のスロットの送信タイミングに合わせて第1子機201の受信タイミングが計られる。
図5は、コードレス電話システムの第2子機202の概略を示すブロック構成図である。図5に示すように、第2子機202は記憶部11と、無線部12と、アンテナ53と、スイッチ58と、電源部59と、タイマ部60,62と、第1クロック61と、第2クロック63と、信号処理部10と、無線部12と、近距離無線通信部54とから構成されている。第2子機202の信号処理部10および無線部12の構成は第1子機201と同様である。
近距離無線通信部54は、無線制御部54aと、制御データバッファ54bと、音声データ送信バッファ54cと、音声データ受信バッファ54dとで構成される。近距離無線通信部54は、信号処理部10と制御データをやりとりし、ディジタルスピーチプロセッサ10cから出力された送信用の音声データを入力し、逆に無線制御部54aで受信した音声データをディジタルスピーチプロセッサ10cに出力する。
第2子機202から情報端末300に送信する音声データは、一旦音声データ送信バッファ54cに格納され、一方、情報端末300から受信した音声データは、一旦音声データ受信バッファ54dに格納される。無線制御部54aは、音声データ送信バッファ54cに格納された音声データを制御データバッファ54bに格納された制御データとともに取り出し、アナログ変調を行ってアンテナ57から送信する。また、無線制御部54aは、アンテナ57を介して情報端末300のアンテナ47から送信された音声データおよび制御データを受信し、これらをディジタル化した後に制御データバッファ54bおよび音声データ受信バッファ54dに格納する。このように、近距離無線通信部54は、第2子機202の側において、第2子機202と情報端末300との間で音声データ等を送受信する機能を備える。即ち、第2子機202は、親機100と情報端末300とを中継するアダプタ(DECTアダプタ)として機能する。そして、このDECTアダプタは、DECTと他の近距離無線通信方式との間で、それぞれの規格に整合するようにデータ形式の変換を行う機能を備えている。
なお、第2子機202のフレーム処理部10eにも、同期制御部10sが設けられている。同期制御部10sは、親機100の送信タイミングおよび第1子機201の受信タイミングを整合させる。ただし、第1子機201とは異なり、第2子機202の同期制御部10sは、第2子機202に接続された情報端末300によって発信または着信が行われる際に親機100との同期を確立しようとする。そして、ユーザによる通話が完了すると、再度非同期の状態に戻る。
なお、第1実施形態では、第2子機202に近距離無線通信部54を備えるとして説明するが、第1子機201に近距離無線通信部54を備えていてもよい。第1子機201が近距離無線通信部54を備えていれば、同期制御部10sのハードウェアは同等であり、第1子機201は表示部14、操作部15といったユーザインタフェースを備えているから、これらによるコマンド入力によって、同期を確立する時期を変更すれば、第1子機201を第2子機202として利用することができる。
電源部59は図示しない充電式のバッテリで構成され、スイッチ58を介して電源電圧が第2子機202に供給される。第2子機202では、通話時は第2クロック63が出力するクロック信号をタイマ部62によって分周した信号が信号処理部10に供給され、信号処理部10を構成するハードウェアの動作タイミングが図られる。一方、スイッチ58をONにした直後等の待機時には、クロック信号として第1クロック61が用いられる。この第1クロック61は通話時に用いられる第2クロック63より低周波数(低速クロック)である。更に待機時においては、信号処理部10からタイマ部60に分周レートが設定され、第1クロック61またはこれを分周したクロック信号が信号処理部10に出力される。このようにクロック信号の周波数を低くすることで、第2子機202はバッテリの消耗を極力低減している。なお、電源部59を構成するバッテリとして乾電池(一次電池。ボタン電池を含む)を用いてもよい。
図6は、情報端末300の概略を示すブロック構成図である。図6に示すように、情報端末300は制御部72と、近距離無線通信部70と、ユーザインタフェース部73とで構成されている。
近距離無線通信部70は無線制御部70aと、制御データバッファ70bと、音声データ送信バッファ70cと、音声データ受信バッファ70dとで構成される。情報端末300の近距離無線通信部70は、第2子機202に設けられた近距離無線通信部54と双対の関係にある構成要素である。情報端末300から第2子機202に送信する音声データは、一旦音声データ送信バッファ70cに格納され、一方、第2子機202から受信した音声データは、一旦音声データ受信バッファ70dに格納される。無線制御部70aは、音声データ送信バッファ70cに格納された音声データを制御データバッファ70bに格納された制御データとともに取り出し、アナログ変調を行ってアンテナ47から送信する。また、無線制御部70aは、アンテナ47を介して第2子機202のアンテナ57から送信された音声データおよび制御データを受信し、これらをディジタル化した後に制御データバッファ70bおよび音声データ受信バッファ70dに格納する。このように、近距離無線通信部70は、情報端末300の側において、情報端末300と第2子機202との間で音声データ等を送受信する機能を備える。
制御部72は、音声データ処理部72aと、再生バッファ72bと、録音バッファ72cと、アプリケーション処理部72dとで構成される。制御部72は、図示しないCPU(MPU)、制御プログラムを格納したEEPROM、ワークメモリとしてのRAM、これらを結合するバス等で構成され、情報端末300全体の動作を制御する。
音声データ処理部72aは、既に説明したディジタルスピーチプロセッサ10c(図3参照)と同様の機能を有し、ディジタル化された音声データに対して、ノイズやエコーのキャンセルや、特定音声周波数の強調処理、暗号化/復号化等を実行する。再生バッファ72bは、例えばFIFO(First In, First Out)で構成され、音声データ処理部72aが出力した音声データを一時的に蓄積して、所定のタイミングで順次出力する。また録音バッファ72cは、これもFIFOで構成され、音声データ処理部72aに入力するための音声データを一時的に蓄積する。アプリケーション処理部72dは、後述するアプリケーションソフトを実行する。当該アプリケーションソフトは上述した図示しないCPUによって実行される。
ユーザインタフェース部73は、リンガ用スピーカ48と、タッチパネル42と、操作部45と、DA変換部75と、AD変換部76と、通話用スピーカ43と、マイクロフォン44とで構成される。
第2子機202から送信された音声データおよび制御データは、アンテナ47を介して無線制御部70aで受信され、ディジタル化された音声データが生成される。音声データは音声データ受信バッファ70dに格納され、制御データは制御データバッファ70bに格納される。制御部72は、音声データ受信バッファ70dから音声データを取り出し、これを音声データ処理部72aで処理して、再生バッファ72bに出力する。DA変換部75は、再生バッファ72bの出力をアナログ音声信号に変換して、図示しない増幅器を介して通話用スピーカ43に出力する。
制御部72は、制御データバッファ70bから制御データを取り出し、これを解析することで、第2子機202の状態、例えば親機100が着信したか否かを検出することができる。
一方、マイクロフォン44によって録音されたアナログ音声信号は、図示しないイコライザや増幅器を介してAD変換部76に入力される。AD変換部76は、このアナログ音声信号をディジタル化した音声データを録音バッファ72cに出力する。録音バッファ72cに蓄積された音声データは、音声データ処理部72aで処理された後、音声データ送信バッファ70cに出力され、音声データは無線制御部70aでアナログ変調されてアンテナ47から送信される。
送信の際に、アプリケーション処理部72dは、制御データを生成して、制御データバッファ70bに書き込む。制御データは無線制御部70aによって第2子機202に対して送信される。ここで、アプリケーション処理部72dが書き込む制御データには、情報端末300の状態、例えばユーザがタッチパネル42を用いてダイヤル情報を入力したか否かといった情報が含まれる。親機100や第2子機202はこの制御情報を入手することで、情報端末300によるダイヤル情報およびその入力の有無を検出する。
図7は、情報端末300のソフトウェア78とハードウェア79との関連を示す構成図である。このソフトウェア78は、情報端末300の制御部72、特にアプリケーション処理部72d(図6参照)によって実行される。図7に示すように、情報端末300のソフトウェア78は、アプリケーション78aと、標準ライブラリ78bと、カーネル78cとで構成され、これらのソフトウェア群が直接的、あるいは間接的にハードウェア79を制御している。
アプリケーション78aには、下位プログラムの起動および停止を制御する状態管理プログラム80と、情報端末300の画面表示を制御する画面表示プログラム81と、後にフローチャートを用いて説明する近距離無線通信制御プログラム85と、送受信される音声データの再生と録音を管理する音声処理プログラム90とで構成される。これらのアプリケーション78aは所定のOS(Operating System)の下で動作を管理される。なお、第1実施形態におけるアプリケーション78aは、「第2子機202と情報端末300との接続および音声データの送受信を管理するアプリケーション」である(以下、「接続アプリ」と呼称する)。ユーザは情報端末300のタッチパネル42を操作して、通話を始める際にアプリケーション78aを起動し、通話を完了した後に終了させる。なお、「通話を始める」には、情報端末300から発信を行う場合と、情報端末300で着信を受ける場合の2つのケースがある。
ここで、標準ライブラリ78bとは、ある特定の機能を持ったプログラムを、他のプログラムから利用できるように部品化(関数化)し、複数のプログラム部品を一つのファイルにまとめたものをいう。また、ドライバとは、ハードウェア(レジスタ)に割り当てたアドレスに制御値を書き込んで、ハードウェアを直接制御する要素を指す。
画面表示プログラム81は、標準ライブラリ78bとして画面表示ライブラリ82とタッチパネルライブラリ83とを使用する。画面表示ライブラリ82は例えば座標変換や色変換を行い、タッチパネルライブラリ83は例えばタッチ操作やホバー操作の検出やこれら操作によって指定される座標を取得する。そして、これらのライブラリは、ディスプレイドライバ84を介してディスプレイ機能を有するタッチパネル42を制御する。
近距離無線通信制御プログラム85は、標準ライブラリ78bとして近距離無線通信接続管理ライブラリ86と近距離無線通信データ転送ライブラリ87とを使用する。近距離無線通信接続管理ライブラリ86および近距離無線通信データ転送ライブラリ87には、例えば、接続関数、レジストリアクセス関数、状態取得関数などが含まれ、これらをコールすることで、近距離無線通信ドライバ88を介して近距離無線通信部70(図6参照)の初期化、情報設定、レジストリ登録、送受信間の相手の問い合わせ、サービス情報取得等が行われた後に、第2子機202と情報端末300との間で通信が実行される。
音声処理プログラム90は、標準ライブラリ78bとして音声再生ライブラリ91と音声録音ライブラリ92とを使用する。音声再生ライブラリ91は例えば音声データ処理部72aのレジスタに格納されている音声データを一括して再生バッファ72bに書き込む。一方、音声録音ライブラリ92は例えば録音バッファ72cに格納されている音声データを一括して取り出して音声データ処理部72aに渡す。そして、オーディオドライバ93は、通話用スピーカ43を駆動して音声を再生し、マイクロフォン44を駆動して音声を取得する。
図8は、情報端末300における発信および着信動作を説明するフローチャートである。図8のフローチャートは、上述した制御部72に含まれる図示しないCPUによって、状態管理プログラム80、近距離無線通信制御プログラム85、音声処理プログラム90などが実行される過程を示している。
ユーザは、情報端末300から発信を行う場合または情報端末300で着信を受ける場合のいずれかにおいて、第2子機202のスイッチ58(図2(d)、図5参照)をONにするとともに、情報端末300のタッチパネル42を操作して、「接続アプリ」を起動する(ST1)。タッチパネル42に対するユーザの操作は制御部72(図6参照)を構成するCPUに検出され、CPUは当該操作に基づき「接続アプリ」をワークメモリ上に展開し、処理を開始する。これによって情報端末300は、まず待ち受け状態となる(ST2)。ここでいう待ち受け状態とは、発信および着信のいずれも可能な状態をいう(詳細は後述)。
次に、CPUは第2子機202を介して親機100に着信があったか否かを確認する(ST3)。待ち受け状態において、電話回線を介して親機100(図1、図3参照)が着信すると、親機100は、第2子機202に対して起動信号を送信し、その後、第2子機202は親機100との同期を確立する(詳細は後述)。同期が確立した旨(同期確立通知)は、第2子機202の近距離無線通信部54を介して情報端末300の近距離無線通信部70に送信され、これによってCPUは、着信した旨を認識する。
CPUは着信した旨を認識すると(ST3でYes)、着信検知を行う(ST4)。ここでいう着信検知とは、第2子機202を経由して親機100から送信された制御データ(後述する)を情報端末300で取得し、この制御データを解析して着信情報を検出することをいう。着信情報には、例えば情報端末300のリンガ用スピーカ48(図6参照)を鳴動させる鳴動コマンドが含まれる。
CPUは上述したコマンドに従って、リンガ用スピーカを鳴動させる(ST5)。その後、CPUは操作部45(図6参照)を介して通話開始指示の有無を確認し(ST6)、通話開始指示があった場合(ST6でYes)は、通話を開始する(ST10)。一方、通話開始の指示がない場合(ST6でNo)は、ST5へ処理を移す。なお、通話開始指示とは、ユーザが情報端末300のタッチパネル42等を操作して、CPUに通話を開始させる指示をいう。
CPUは、ST3において着信がないと判断した場合(ST3でNo)、発信操作があるか否かを確認する(ST7)。ここでいう発信操作とは、ユーザが情報端末300のタッチパネル42を用いて、通話をする相手の電話番号(ダイヤル情報)を入力する操作をいう。
発信操作があった場合(ST7でYes)、CPUは更に、通話開始指示の有無を確認する(ST8)。通話開始の指示があった場合(ST8でYes)、CPUは情報端末300の近距離無線通信部70(図6参照)から第2子機202の近距離無線通信部54へダイヤル情報を送信する(ST9)。このダイヤル情報は第2子機202から親機100へと送信されて、親機100はダイヤル情報に基づき電話回線に向けて発信を実行する。
その後、情報端末300を用いて通話が開始される(ST10)。通話が開始された後の通話処理では、情報端末300側からみたときにST11〜ST15に示す音声データの送信処理とST16〜ST20に示す音声データの受信処理とが並列処理される。ただし、ここでいう並列処理とは、完全な同時性を指すものでなく、送信処理と受信処理とが時分割に同期されて実行される状態を意味する。
以降、送信処理および受信処理について、図6を併用して説明する。
まず、送信処理では、マイクロフォン44からアナログ音声信号を取得する(ST11)。取得されたアナログ音声信号は、図示しない増幅器で増幅された後に、AD変換部76によってディジタル化されて音声データに変換される。そして、音声データは録音バッファ72cに一時的に保存される(ST12)。音声はマイクロフォン44によって連続的に取り込まれてAD変換されるが、情報端末300から第2子機202への音声データの送信および第2子機202から親機100への音声データの送信は、時分割多重で間欠的に行われるため、録音バッファ72cはこれらのタイミング差を吸収する。
録音バッファ72cに保存された音声データは、音声データ処理部72aで上述したディジタル信号処理を施される(ST13)。信号処理を施されたディジタル音声データは、近距離無線通信部70の音声データ送信バッファ70cに一時的に保存され(ST14)、その後、無線制御部70aでアナログ変調されてアンテナ47を介して第2子機202へと送信される(ST15)。第2子機202は受信した音声データを親機100に送信する。
次に受信処理では、無線制御部70aはアンテナ47を介して、第2子機202から音声信号を取得(受信)する(ST16)。取得された音声信号は無線制御部70aでディジタル化された音声データに変換され、音声データ受信バッファ70dに一時的に保存される(ST17)。その後、音声データは音声データ処理部72aで上述したディジタル信号処理を施され(ST18)、再生バッファ72bに一時的に保存される(ST19)。
再生バッファ72bに保存されたディジタル音声データはDA変換部75でアナログ音声信号に変換され、図示しない増幅器で増幅された後に通話用スピーカ43で再生される(ST20)。第2子機202から情報端末300へ音声データの送信および親機100から第2子機202への音声データの送信は、時分割多重で間欠的に行われるが、音声は通話用スピーカ43で連続的に再生されるため、再生バッファ72bはこれらのタイミング差を吸収する。
これらの送信処理または受信処理が行われるごとに、CPUは、通話終了指示の有無を確認する(ST21)。通話終了指示がない場合(ST21でNo)、CPUはST11またはST16のいずれかに処理を移す。上述したように、送信処理および受信処理は同期をとって時分割で処理されるから、通常はST11、ST16は交互に実行される。なお、通話終了指示とは、ユーザが情報端末300のタッチパネル42等を操作して、CPUに通話を終了させる指示をいう。
一方、通話終了指示があった場合(ST21でYes)または、ユーザによるダイヤル等の発信操作がない場合(ST7でNo)、CPUは「接続アプリ」の終了指示の有無を確認する(ST22)。なお、「接続アプリ」の終了指示とは、ユーザが情報端末300のタッチパネル42等を操作して、CPUにアプリケーションを終了させる指示をいう。
「接続アプリ」の終了が指示されている場合(ST22でYes)、CPUは終了処理を実行する(ST23)。終了処理において、CPUは、情報端末300と第2子機202との間で行っていた送受信を停止し、アプリケーションが使用していたワークメモリの開放等を行う。一方、「接続アプリ」の終了が指示されていない場合(ST22でNo)、CPUは処理をST2に移して、待ち受け状態となる。
図9は、DECTのフレーム構成を説明する説明図である。DECTでは10ms周期の1フレームに24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)を含んで構成される。通常は、スロット1(S1)〜スロット12(S12)は親機100から子機200への通信に使用され、スロット13(S13)〜スロット24(S24)は子機200から親機100への通信に使用される。親機100と子機200との間の通信では、スロット1(S1)およびスロット13(S13)、スロット2(S2)およびスロット14(S14)のように5ms離れた位置関係にあるスロットを組み合わせて(ペアスロット)、1つの通信チャネルとして使用する。
そして、親機100から子機200へ送信が行われる12スロットの中の少なくとも1つのスロット(例えばスロット1(S1))は制御データを送るための制御スロットとされている。制御データは、フレーム内の1つのスロットで親機100から常時(周期的に)送信される。なお、親機100から子機200への制御通信中に電波干渉が発生したときなどに備えて、遊休中のスロット(例えば、スロット1(S1)を制御スロットとして使用している場合は、スロット2(S2)〜スロット12(S12))について、そのスロットが他機器により使用されているか否かを検出し、実際にスロット1(S1)で電波干渉等が発生した場合は、制御スロットをスロット2(S2)に移してもよい。そして、これと連動して、制御スロットに対する応答スロット(制御スロットに対する応答に用いられるスロット。子機200から親機100へのデータ送信の際に使用する)はスロット14(S14)に設定される。このように制御スロットとしてどのスロットを利用するかは、親機100と子機200とのネゴシエーションによって決定される。
各スロットはそれぞれ416.67μs(=10ms/24)幅で規定され、各スロットでは同期信号フィールド30と、制御データフィールド31と、CRC1フィールド32と、情報データフィールド33と、CRC2フィールド34とが規定されている。
同期信号フィールド30は、ビット同期を取るためのデータ列とスロット同期を取るためのデータ列とから構成される固定データを含んでいる。CRC1フィールド32には、制御データフィールド31のデータ列に基づいて算出されたCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号が書き込まれ、制御データフィールド31の伝送誤りを検出する。CRC2フィールド34は、同様にして情報データフィールド33の伝送誤りを検出する。CRCによって誤りが検出された場合、子機200は親機100に再送要求を行うことができる。
制御データフィールド31(A−fieldと呼称されることがある)は、親機100から子機200に制御データを渡すためのフィールドであり、発信・着信時および待ち受け時等に必要な制御データをやりとりする。具体的には、制御データには識別情報(いわゆるID)、機器能力、通信品質、呼設定や切断、伝送誤りが検出された際の再送制御データなどが含まれる。
そして、第1実施形態において、制御データには、上述した「同期確立通知」や「鳴動コマンド」が含まれている。従って、第2子機202は制御スロットにおいて受信したデータのうち制御データフィールド31を参照することで制御データを取得し、親機100からの指示を認識する。そしてこれらの指示は、第2子機202から近距離無線通信によって情報端末300にも送信される。
一方、情報データフィールド33(B−fieldと呼称されることがある)は、音声データ、画像データのパケットを格納するフィールドである。
親機100と子機200との間で音声データを送受信する際は、情報データフィールド33に音声データが書き込まれるが、制御スロットにおいては同期信号フィールド30、制御データフィールド31、CRC1フィールド32が有効であって、情報データフィールド33およびCRC2フィールド34は使用されない。逆に言えば、コードレス電話システムが着信していなくても(待ち受け状態であっても)、親機100は子機200に対してフレーム期間毎の制御スロットにおいて制御データを送信し、子機200は当該制御データを受信している。
そして、子機200は親機100に対して必要に応じて、当該制御スロットに対応した応答スロットを用いて親機100にデータを送信する。第1実施形態では、これを利用することで、第2子機202は、上述した「ダイヤル情報」を親機100に送信することができる。
図10は、情報端末300から発信する際の第2子機202と親機100との送受信内容を示す説明図である。なお、図9を用いて説明したように、実際のペアスロットは5ms離間しているが、図10では、これを簡略化して記載している(図11も同じ)。
以降、図10を用いて、電話回線に対して情報端末300から発信する際に、情報端末300と第2子機202と親機100との間で行われる送受信の過程を詳細に説明する。第1実施形態では、親機100と第2子機202との間の送受信はDECT規格に基づき行われ、一方、第2子機202と情報端末300との間の送受信は近距離無線通信の制御プロファイルに準拠して行われる。第2子機202と情報端末300との間の音声データ等の送受信は公知技術を用いており、説明を省略する(図11を用いた説明も同じ)。
以下、待ち受け期間、同期サーチ期間、通話期間に分けて親機100および第2子機202の動作を中心に説明する。
<待ち受け期間>
待ち受け期間において、親機100は10ms毎のフレーム周期(第1周期)で制御スロットとして期間TxP(n)(n=1,2,3...。以下同じ)を設定して、この期間に制御データを周期的に送信する。そして、制御スロットに対する応答期間(応答スロット)として期間RxP(n)を設定して、この期間に制御データに応答する応答データを受信する。このように応答期間も10msのフレーム周期毎に設けられている。なお、実際は音声データを送受信する際においても、制御スロットおよび応答スロットが使用され、この際、制御データおよび応答データの情報データフィールド33(図9参照)には音声データが書き込まれる。
既に説明したように、第1子機201は電源投入当初において親機100との間で既に同期を確立しており、待ち受け期間においても同期が維持されている。ただし、第1子機201では期間RxC1(n)に受信タイミングが設定され、図示するように当該期間は例えば640ms周期に設けられている。即ち、待ち受け期間において第1子機201は親機100の送信タイミングに合わせて受信タイミングを設定するものの、受信タイミングの周期は親機100の送信タイミングの周期(第1周期)より大きくされている。このように間欠的に受信タイミングを設定することによって第1子機201の消費電力は低く抑えられている。
一方、待ち受け期間において、第2子機202は、期間RxC2(1)、RxC2(2)として示すように、受信タイミングを親機100の送信タイミングとは非同期に設定して受信を行う。具体的には、第2子機202に電源が投入された後に、親機100から受信タイミングの相対的なずれを補正するための補正データを受信すると、第2子機202は、同期を外すタイミングで受信タイミングを設定する。即ち、第2子機202は、親機100との間で送受信のタイミングを同期させないように受信タイミングをシフトさせるのである。しかも、第2子機202の受信期間RxC2(1)、RxC2(2)の生成周期は、図示するように例えば2sec程度の長周期に設定される(第2周期)。
第2子機202の受信タイミングを親機100の送信タイミングと非同期にすることで、第2子機202は親機100から受信した制御データを解釈しなくてすむ。このため第2子機202では待ち受け期間中に信号処理部10(図5参照)が動作することはなく、第1子機201と比較して、大幅な低消費電力化が実現される。なお、第2子機202は電源投入直後に、親機100と非同期の状態を意図的に生成しなくてもよい。即ち、第2子機202は電源投入後に、所定時間経過後をスタートタイミングとして、予め設定された受信周期(例えば、上述したように2sec)で間欠受信を実行するようにしてもよい。
上述したように、DECTでは1フレーム(10ms)を24分割してスロットを構成するため、第2子機202が受信を開始する最初の受信タイミングをランダムに設定すれば、親機100の送信タイミングと同期するのは1/24の確率となる。しかも、この場合には同期信号フィールド30(図9参照)を用いた調整がなされないため、親機100と第2子機202とが同期する確率は更に低くなる。また、仮に両者が同期したとしても、第2子機202が制御データを受信するのは2secに1回であるうえ、待ち受け期間において、第2子機202が制御データを受信した場合は、受信タイミングを例えば1msシフトする処理を行えば、親機100と第2子機との同期を確実に外すことができる。
なお、待ち受け期間において、第2子機202は情報端末300との間でも、近距離無線通信の制御プロファイルに準拠して音声データや制御データの送受信が実行される。この近距離無線通信規格では、通信に要する消費電力は数mWとされており、第2子機202全体の消費電力に及ぼす影響は極めて小さい。
<同期サーチ期間>
以降、同期サーチ期間における親機100および第2子機202の動作を中心に説明する。なお、以降の説明では簡単のために同期を確立する主体を第2子機202として説明するが、実際は、第2子機202の信号処理部10に設けられた同期制御部10s、フレーム処理部10e、CPUブロック10f等が協調することで同期が確立される(情報端末300によって着信を受ける場合の「起動期間」についても同じ)。
同期サーチ期間において、ユーザはまず情報端末300のタッチパネル42を用いて発信ダイヤルを入力する。このダイヤル情報は近距離無線通信の制御プロファイルに基づき第2子機202に送信される。第2子機202はダイヤル情報を受信すると、受信期間として期間RxC2(3)を設定する。この受信期間は例えば100msに設定され、親機100の送信タイミングの周期10msよりも大きくされている。
この期間RxC2(3)の間に、第2子機202は親機100から制御データを受信する。もともと親機100の送信タイミングの周期は10msと決まっているので、第2子機202は、例えば期間TxP(10)に制御データを受信すると、制御データを受信したタイミングを起点として10msの周期でイベントを発生させ、これに基づいて信号処理部10(図5参照)は受信タイミング(受信期間)を決定する。そして、親機100の送信期間TxP(12)および第2子機202の受信期間RxC2(4)にやり取りされる制御データと、その後に第2子機202が送信期間TxC2(1)に応答する応答データとによって同期が確立し、それまでの非同期受信は同期受信へと遷移する。
ここで、親機100は応答データを期間RxP(12)で受信する。応答データの制御データフィールド31にはダイヤル情報が含まれており、これによって親機100は情報端末300で入力された電話番号を取得して、電話回線に向かって発信を実行する。
<通話期間>
その後、通話が開始される。通話時においては、親機100と第2子機202との間では同期がとられ、10ms周期(第1周期)で音声データ等の送受信が行われる。具体的には、期間TxP(13)に親機100は情報データフィールド33(図9参照)に音声データを書き込んで送信し、これは期間RxC2(5)で第2子機202に受信され、第2子機202は情報データフィールド33から音声データを取り出す。この音声データは、その後情報端末300に渡される。一方、情報端末300は第2子機202に対して音声データを送信する。これを受信した第2子機202は、期間TxC2(2)に音声データを送信し、これは期間RxP(13)に親機100で受信される。これによって、親機100と第2子機202との間では、高速に音声データの送受信が行われて、明瞭な音声による通話が確保される。音声データ(制御データフィールドも含まれる)の送受信は、通話が終了するまで行われる。通話の終了はユーザが「接続アプリ」で通話終了を選択することで実行される。
通話終了の旨は、情報端末300から第2子機202に送信され、これを受信した第2子機202は、その旨を応答データに含ませて親機100に送信する。これを受信した親機100によって電話回線との接続が切断される。その後、第2子機202はタイマ部60(図5参照)の設定を変更し、第2子機202の受信タイミングは、上述したように長周期となり、更に親機100の送信タイミングとは非同期に設定される。
以降、情報端末300によって着信が行われる過程について主に説明する。図11は、情報端末300に着信する際の第2子機202と親機100との送受信内容を示す説明図である。以降、図11を用いて、電話回線を介して親機100が着信した際に親機100と第2子機202と情報端末300との間で行われる送受信の過程を説明する。
以下、起動期間、着信通知期間に分けて親機100および第2子機202の動作を中心に説明する。なお、待ち受け期間および通話期間についての動作は図10を用いて説明したものと同様であるので、説明を省略する。
<起動期間>
親機100は電話回線を介して着信すると、それまで10ms周期(第1周期)に行っていた送信を停止し、起動信号送信期間TxP(8)を設定する。そして起動信号送信期間TxP(8)において起動信号を連続して送信する。上述したように、第2子機202は待ち受け期間において、2sec周期(第2周期)で親機100の送信タイミングとは非同期に受信を行っているが、親機100は、少なくとも2secを超える期間にわたって起動信号を送信し続ける。第1実施形態では、スロット幅0.417ms×24スロット×210回=2.1secの間、起動信号が送信される。ただし、この第2周期は、待ち受け期間における第2子機202の受信タイミングの周期に依存しており、上述の2secの数値自体は重要でない。例えば第2子機202の受信タイミングの周期が1.5secであれば、起動信号は1.6sec程度の間送信されればよい。
上述した起動信号は制御データの一種であり、起動信号送信期間TxP(8)では、親機100は全てのスロットを制御スロットとして、この期間に制御データ(起動信号)を連続して送信する。ただし、このとき各制御データには、同期が確立された際に親機100が用いようとするスロット(チャネル)との相対的なずれを補正する補正データが含まれる。即ち、スロット1(S1)〜スロット24(S24)について、異なる補正データが書き込まれて送信される。この制御データを受信することで、第2子機202は、親機100と同期をとるために応答スロットの設定タイミング(即ち、受信タイミング)を知ることができる。
第2子機は2sec周期で受信を繰り返し、親機100はこれを越える期間にわたって制御データを送信し続けるから、起動信号送信期間TxP(8)において、第2子機202は制御データを少なくとも1回受信することができる。制御データを受信した第2子機202は、制御データに含まれる補正データを参照して、直ちにタイマ部60(図5参照)の設定を変更し、これに基づいて信号処理部10(図5参照)は受信タイミングを生成する。
第2子機202の受信期間RxC2(3)〜RxC2(6)に受信する制御データによって同期の準備(補正データの設定)が行われ、最終的には親機100が起動信号送信期間TxP(8)を終了した後に、親機100が設定する期間TxP(9)および第2子機202が設定する期間RxC2(7)のタイミングが一致して、同期が確立する。ただし、上述のRxC2(3)〜RxC2(6)は例示であって、第2子機202が起動信号送信期間TxP(8)におけるどのタイミングで制御データを受信したかにより、同期の過程は異なる。
さて、親機100が設ける起動信号送信期間TxP(8)は、専ら制御データの送信のみを実行する期間である。従って起動信号送信期間中、親機100は子機200から送信された応答データを受信することができない。このため、本例ではRxC2(3)〜RxC2(7)の間は第1子機201、第2子機202とも音声データの送受信ができない期間が発生する。この期間を短縮するには、例えば、起動信号送信期間TxP(8)を複数に分割して、各分割期間の終了時に親機100が受信期間を設ける構成が考えられる。
<着信通知期間>
同期が確立した際に、第2子機202は期間RxC2(7)に受信した制御データを解析し、これに「鳴動コマンド」が含まれることを確認すると、近距離無線通信を介して当該コマンドを情報端末300に送信する。これを受信した情報端末300は、リンガ用スピーカ48(図6参照)を鳴動させる。なお、親機100がTxP(9)で送信した制御データは第1子機201においても、期間RxC1(7)で受信され、第1子機201でもリンガ用スピーカ18が鳴動する。
ここで、リンガが鳴動している間、第2子機202は親機100との同期を維持しつつ、RxC2(8)〜RxC2(9)として示すように、受信期間を例えば640msの周期(第3周期)に設定する。この640msの周期は、上述した第1周期(10ms)よりも長く、第2周期(2sec)よりも短い。第2子機202では、ユーザが通話開始を指示するまで、640ms周期の受信タイミングが設けられる。
なお、ここでは640msという数値自体は重要でない。640msは上述した第1子機201の受信タイミングの周期であり、これは、ユーザが第1子機201または第2子機202に対して何らかの操作した際に、親機100からのレスポンスが最大で640ms遅延することを意味している。従って、第3周期はユーザの利便性の上で不便を感じない周期とすればよいが、10ms(第1周期)とすると消費電力が大きくなり、2sec(第2周期)とするとレスポンス低下が顕著であるため、第3周期は第1周期と第2周期との中間の値とされている。
ここで、親機100と第2子機202との間では(その後に通話に移行するため)同期関係は維持されている。このように将来的な1:1の同期を確保するために、着信通知期間における第2子機202の受信タイミングの周期は、親機100によって設定される送信タイミングの周期の1/n(n:2以上の整数)に設定され、第1実施形態では1/64の間欠受信となっている。
その後、ユーザが情報端末300を用いて応答操作を行うと、着信応答をした旨は近距離無線通信を用いて第2子機202で受信され、更に制御スロットである期間TxP(14)に対する応答スロットである期間TxC2(1)で親機100に送信される。親機100は、着信応答をRxP(13)で受信すると、通話処理を実行する。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
図12は、第2実施形態に係るコードレス電話システムの第2子機202の概略を示すブロック構成図である。第1実施形態では、第2子機202と情報端末300とは近距離無線通信で接続されていたが、第2実施形態では両者を有線回線、特にシリアルバスインタフェースで接続する。
図12に示すように、第2子機202は記憶部11と、無線部12と、アンテナ53と、スイッチ58と、タイマ部60,62と、第1クロック61と、第2クロック63と、信号処理部10と、無線部12と、シリアルバス通信部55と、シリアルバス接続部56とから構成されている。第2子機202の信号処理部10および無線部12の構成は第1子機201と同様である。
シリアルバス通信部55は、通信制御部55aと、制御データバッファ55bと、音声データ送信バッファ55cと、音声データ受信バッファ55dとで構成される。シリアルバス通信部55は、信号処理部10と制御データをやりとりし、ディジタルスピーチプロセッサ10cから出力された送信すべき音声データを入力し、逆に受信した音声データをディジタルスピーチプロセッサ10cに出力する。
第2子機202および情報端末300はシリアルバスケーブル95で物理的に接続され、第2子機202はシリアルバスケーブル95を介して情報端末300から電力の供給を受ける。即ち、第2子機202は、いわゆるバスパワーで動作する。これによって第2子機202にはバッテリが不要となることから、第2子機202をより小型・軽量化することが可能となる。
第2子機202から情報端末300に送信する音声データは、一旦音声データ送信バッファ55cに格納され、一方、情報端末300から受信した音声データは、一旦音声データ受信バッファ55dに格納される。通信制御部55aは、音声データ送信バッファ55cに格納された音声データを制御データバッファ55bに格納された制御データとともに取り出し、シリアルバス接続部56およびシリアルバスケーブル95を介して送信する。また、通信制御部55aは、逆に情報端末300から音声データおよび制御データを受信し、音声データ受信バッファ55dに格納する。このように、シリアルバス通信部55は、第2子機202の側において、第2子機202と情報端末300との間で音声データ等を送受信する機能を備える。
また、第2実施形態では、第2子機202にシリアルバス通信部55を備えているが、第1子機201にシリアルバス通信部55を備えていてもよい。
シリアルバスケーブル95およびスイッチ58を介して電力が第2子機202に供給される。タイマ部60,62、第1クロック61、第2クロック63の構成や機能については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
このように構成された第2子機202を情報端末300に設けられたシリアルバスインタフェース(図示せず)に接続することで、親機100と第2子機202と情報端末300とが有機的に結合されて、情報端末300は親機100と第2子機202とを介して、電話回線と接続される。他の要素の構成および機能については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
以上、本発明に係るコードレス電話システムについて特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。
例えば、各実施形態では、情報端末300としてスマートフォンを例示して説明したが、本発明はスマートフォンに限らずタブレット等の情報端末300全般に応用することができる。更に、情報端末300は可搬性である必要もない。即ち、デスクトップPC(Personal Computer)やサーバクライアントシステム等においても本発明は有用である。
また、第1実施形態では、情報端末300と第2子機202とを電波を用いた近距離無線通信で接続し、第2実施形態ではこれらをシリアルバスケーブル95で接続した例を示したが、本発明は、これらを接続するインタフェースの如何にかかわらず適用することができる。即ち、情報端末300と第2子機202とを、例えば赤外線通信インタフェース、近接場型の無線通信(Near Field Communication)を用いて接続してもよい。
また、各実施形態では、親機100と第2子機とはDECT方式によって音声データ等の送受信を行うものとして説明したが、本発明は、時分割多元接続方式を採用するPHS(Personal Handy-phone System)、sPHS(Super PHS)等にも適用することができる。
また、各実施形態では、情報端末300と接続された第2子機202を1台として説明したが、複数の第2子機202を備え、第2子機202のそれぞれに情報端末300を接続するような構成としてもよい。第1実施形態で説明したように、本発明に係るコードレス電話システムは時分割多元接続を行っているため、複数の第2子機202と送受信するスロットを独立して設定することができるからである。