以下、本発明の各実施形態及び変形例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る自動車部材として自動車車体の骨格部材であるサイドシルを例示する。図1A〜図1Cは、本実施形態に係るサイドシル1を示す図である。なお、図1Aは上面図であり、図1Bは図1AのA−A線断面図であり、図1Cは下面図である。
なお、図1AのA−A線断面図である図1Bには、後述の第2溶融凝固部N2、第3溶融凝固部N3、第5溶融凝固部N5、及び第6溶融凝固部N6は現れないはずであるが、断面における各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図1Bでは上記の溶融凝固部N2、N3、N5、及びN6を表示している。
また、サイドシル1の上面図である図1Aには、第1溶融凝固部N1、第2溶融凝固部N2、及び第3溶融凝固部N3は現れないはずであるが、上側からサイドシル1を見たときの各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図1Aでは各溶融凝固部N1、N2、及びN3を表示している。
また、サイドシル1の下面図である図1Cには、第4溶融凝固部N4、第5溶融凝固部N5及び第6溶融凝固部N6は現れないはずであるが、下側からサイドシル1を見たときの各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図1Cでは各溶融凝固部N4、N5、及びN6を表示している。
図1A〜図1Cに示すように、サイドシル1は、断面矩形状の閉鎖空間を内部に有する長尺かつ中空の筒状体である。すなわち、サイドシル1は、長手方向に垂直な断面が中空断面である。 そして、サイドシル1は、車両外側に向かって配置されるサイドシルアウターパネル10(第1部材)と、車両内側に向かって配置されるサイドシルインナーパネル20(第2部材)と、第1ジョイントプレート30(第1接合板)と、第2ジョイントプレート40(第2接合板)とを備えている。
サイドシルアウターパネル10は、高張力鋼板をハット形状にプレス成形することにより得られたハット形鋼板である。そして、このサイドシルアウターパネル10は、互いに平行な一対のフランジ(第1フランジ14及び第2フランジ15)と、これら一対のフランジから連続して立ち上がる一対の壁部(第1壁部12及び第2壁部13)と、これら一対の壁部を接続してかつ一対のフランジに平行なウェブ11とを備えている。これらのウェブ11、第1壁部12、第2壁部13、第1フランジ14、及び第2フランジ15は、サイドシル1の長手方向Xに沿って延びる矩形状の平らな部位である。
第1壁部12は、第1フランジ14の短手方向と第1壁部12の短手方向が直交するように、第1フランジ14の短手方向における一端縁から垂直に立ち上がっている。また、第2壁部13は、第2フランジ15の短手方向と第2壁部13の短手方向とが直交するように、第2フランジ15の短手方向における一端縁から垂直に立ち上っている。
なお、図1Bでは、第1壁部12が第1フランジ14に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第1壁部12は、第1フランジ14に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。同様に、図1Bでは、第2壁部13が第2フランジ15に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第2壁部13は、第2フランジ15に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。
ウェブ11は、ウェブ11の短手方向が、第1壁部12の短手方向及び第2壁部13の短手方向の各々に対して直交するように、第1壁部12と第2壁部13とを接続している。
なお、図1Bでは、ウェブ11が、第1壁部12及び第2壁部13に対して直角に接続されているように図示しているが、実際には、ウェブ11は、第1壁部12及び第2壁部13を、所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して接続している。
上記のように構成されたサイドシルアウターパネル10では、第1フランジ14及び第2フランジ15の各々は、サイドシル1の幅方向外側を向いている。すなわち、第1フランジ14及び第2フランジ15の各々は、外向きフランジである。また、本実施形態に係るサイドシルアウターパネル10では、第1壁部12の幅(短手方向における長さ)は、第2壁部13の幅と同じであり、第1フランジ14の幅は、第2フランジ15の幅と同じである。なお、第1壁部12の幅は、第2壁部13の幅と異なっていてもよいし、第1フランジ14の幅は、第2フランジ15の幅と異なっていてもよい。
サイドシルインナーパネル20は、高張力鋼板をハット形状にプレス成形することにより得られたハット形鋼板であり、互いに平行な一対のフランジ(第1フランジ24及び第2フランジ25)と、これら一対のフランジから連続して立ち上がる一対の壁部(第1壁部22及び第2壁部23)と、これら一対の壁部を接続してかつ一対のフランジに平行なウェブ21とを備えている。
これらのウェブ21、第1壁部22、第2壁部23、第1フランジ24、及び第2フランジ25は、サイドシル1の長手方向Xに沿って延びる矩形状の平らな部位である。
第1壁部22は、第1壁部22の短手方向が第1フランジ24の短手方向と直交するように、第1フランジ24の短手方向における一端縁から垂直に立ち上っている。また、第2壁部23は、第2壁部23の短手方向が第2フランジ25の短手方向と直交するように、第2フランジ25の短手方向における一端縁から垂直に立ち上っている。
なお、図1Bでは、第1壁部22が第1フランジ24に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第1壁部22は、第1フランジ24に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。同様に、図1Bでは、第2壁部23が第2フランジ25に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第2壁部23は、第2フランジ25に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。
ウェブ21は、ウェブ21の短手方向が、第1壁部22の短手方向及び第2壁部23の短手方向の各々に対して直交するように、第1壁部22と第2壁部23とを接続している。
なお、図1Bでは、ウェブ21が、第1壁部22及び第2壁部23に対して直角に接続されているように図示しているが、実際には、ウェブ21は、第1壁部22及び第2壁部23を、所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して接続している。
上記のように構成されたサイドシルインナーパネル20では、第1フランジ24及び第2フランジ25の各々は、サイドシル1の幅方向外側を向いている。すなわち、第1フランジ24及び第2フランジ25の各々は、外向きフランジである。また、本実施形態に係るサイドシルインナーパネル20では、第1壁部22の幅は、第2壁部23の幅と同じであり、第1フランジ24の幅は、第2フランジ25の幅と同じである。なお、第1壁部22の幅は、第2壁部23の幅と異なっていてもよいし、第1フランジ24の幅は、第2フランジ25の幅と異なっていてもよい。
本実施形態に係るサイドシルインナーパネル20の長さ及び板厚は、サイドシルアウターパネル10の長さ及び板厚と同じである。サイドシルインナーパネル20のウェブ21の幅は、サイドシルアウターパネル10のウェブ11の幅と同じである。サイドシルインナーパネル20の第1フランジ24の幅は、サイドシルアウターパネル10の第1フランジ14の幅と同じである。なお、サイドシルインナーパネル20の板厚と、サイドシルアウターパネル10の板厚とは、互いに異なっていてもよい。
サイドシル1では、サイドシルアウターパネル10の第1フランジ14とサイドシルインナーパネル20の第1フランジ24とが重ね合わされた状態でスポット溶接されていると共に、サイドシルアウターパネル10の第2フランジ15とサイドシルインナーパネル20の第2フランジ25とが重ね合わされた状態でスポット溶接されている。このようにサイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とが接合されることにより、サイドシル1では、断面矩形状の閉鎖空間が長手方向Xに沿って形成される。換言すれば、サイドシル1では、長手方向Xに垂直な断面が中空矩形断面となっている。
なお、サイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とをスポット溶接する場合、サイドシルアウターパネル10の板厚とサイドシルインナーパネル20の板厚とが大きく異なると、内部を冷却しているスポット溶接電極との接触による抜熱状態がサイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とで異なることとなる。この場合、スポット溶接によって、溶融凝固部が板厚の大きい方に偏って形成されることがあり、スポット溶接部の品質が低下する虞がある。そこで、スポット溶接部の品質低下を避ける観点からは、サイドシルアウターパネル10の板厚と、サイドシルインナーパネル20の板厚とが同じであることが好ましい。
また、サイドシルアウターパネル10の強度(引張強度)と、サイドシルインナーパネル20の強度とが異なる場合、スモールオーバーラップ等の軸圧壊変形が生じた際に、接合部分でせん断変形が生じてスポット溶接部が破断しやすくなる。そのため、このような観点からは、サイドシルアウターパネル10の強度と、サイドシルインナーパネル20の強度とは同じであることが好ましい。
すなわち、上記2つの観点からは、サイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とは同じ鋼板(引張強度および板厚が同じ鋼板)であることが好ましい。
第1ジョイントプレート30は、長手方向Xに延びる矩形状の平らな鋼板である。なお、この第1ジョイントプレート30は、鋼板に限られず、スポット溶接可能な板材であればよい。ただし、上述した、スモールオーバーラップ等の軸圧壊変形時におけるスポット溶接部の破断を抑制する観点から、第1ジョイントプレート30の強度は、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20の強度と同じあることが好ましい。また、第1ジョイントプレート30の板厚は、上述した、スポット溶接部の品質低下を回避する観点から、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20の板厚と同じであることが好ましい。
すなわち、第1ジョイントプレート30は、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20と同じ鋼板であることが好ましい。
第1ジョイントプレート30は、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22の内壁面に当接した状態でスポット溶接され、これら内壁面に接合されている。換言すれば、第1ジョイントプレート30は、サイドシル1の幅方向(フランジの幅方向)から見た場合に、サイドシルアウターパネル10の第1フランジ14と、サイドシルインナーパネル20の第1フランジ24との境界線を覆うように、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22にスポット溶接により接合されている。なお、第1ジョイントプレート30は、ウェブ11及び21と非接触である。すなわち、第1ジョイントプレート30の幅方向における両端面と、ウェブ11及び21との間には、隙間が生じている。
ここで、上述のように壁部とウェブとの間には所定の曲率半径(3〜15mm)を有するR部が設けられているため、平らな板材である第1ジョイントプレート30を壁部に溶接するためには、必然的に上記の隙間が生じることになる。また、第1ジョイントプレート30は、平らな板材とした方が、衝突変形時に接合箇所の変形に追従して変形し易くなる。すなわち、上記の隙間を生じさせることにより、第1ジョイントプレート30のスポット溶接破断が抑制される利点がある。
本開示において、「内壁面」とは、サイドシル1の内部空間(本実施形態では、断面矩形状の閉鎖空間)に面する壁面を指す。なお、内部空間の断面形状は、サイドシル1の形状に応じて決まるものであり、矩形に限られない。
第2ジョイントプレート40は、長手方向Xに延びる矩形状の平らな鋼板である。なお、第2ジョイントプレート40は、鋼板に限られず、スポット溶接可能な板材であればよい。ただし、第1ジョイントプレート30と同様の理由により、第2ジョイントプレート40は、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20と同じ鋼板であることが好ましい。
第2ジョイントプレート40は、サイドシルアウターパネル10の第2壁部13の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23の内壁面に当接した状態でスポット溶接され、これら内壁面に接合されている。換言すれば、第2ジョイントプレート40は、サイドシル1の幅方向から見た場合に、サイドシルアウターパネル10の第2フランジ15と、サイドシルインナーパネル20の第2フランジ25との境界線を覆うように、サイドシルアウターパネル10の第2壁部13及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23にスポット溶接により接合されている。なお、第2ジョイントプレート40は、ウェブ11及び21と非接触である。すなわち、第2ジョイントプレート40の幅方向における両端面と、ウェブ11及び21との間には、隙間が生じている。
上述のように、第1ジョイントプレート30は、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22の内壁面に接合されている。そして、第2ジョイントプレート40は、サイドシルアウターパネル10の第2壁部13の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23の内壁面に接合されている。そのため、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40は、互いに離間して非接触である。互いに離間して非接触であることにより、衝突変形時に各ジョイントプレートが独立して接合箇所の変形に応じて変形できるため(接合箇所の変形に追従して変形できるため)、ジョイントプレートのスポット溶接破断が生じにくくなる。これに対して、仮に第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40が一体である場合には、例えば、第1ジョイントプレート30の変形が第2ジョイントプレート40の変形に影響を及ぼすため(第1ジョイントプレート30に生じた応力が第2ジョイントプレート40に伝わるため)、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40のスポット溶接破断が生じ易くなる。
図1A及び図1Bに示すように、サイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とがスポット溶接によって接合された結果、サイドシルアウターパネル10の第1フランジ14とサイドシルインナーパネル20の第1フランジ24との境界面BS1(重ね合わせ面)において、スポット状の第1溶融凝固部N1(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第1フランジ14と第1フランジ24は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第1溶融凝固部N1を介して接合されている。
また、第1ジョイントプレート30とサイドシルアウターパネル10の第1壁部12とがスポット溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート30と第1壁部12の内壁面との境界面BS2において、スポット状の第2溶融凝固部N2(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第1ジョイントプレート30と第1壁部12の内壁面は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第2溶融凝固部N2を介して接合されている。
さらに、第1ジョイントプレート30とサイドシルインナーパネル20の第1壁部22とがスポット溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート30と第1壁部22の内壁面との境界面BS3において、スポット状の第3溶融凝固部N3(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第1ジョイントプレート30と第1壁部22の内壁面は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第3溶融凝固部N3を介して接合されている。
一方、図1B及び図1Cに示すように、サイドシルアウターパネル10とサイドシルインナーパネル20とがスポット溶接によって接合された結果、サイドシルアウターパネル10の第2フランジ15とサイドシルインナーパネル20の第2フランジ25との境界面BS4において、スポット状の第4溶融凝固部N4(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第2フランジ15と第2フランジ25は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第4溶融凝固部N4を介して接合されている。
また、第2ジョイントプレート40とサイドシルアウターパネル10の第2壁部13とがスポット溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート40と第2壁部13の内壁面との境界面BS5において、スポット状の第5溶融凝固部N5(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第2ジョイントプレート40と第2壁部13の内壁面は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第5溶融凝固部N5を介して接合されている。
さらに、第2ジョイントプレート40とサイドシルインナーパネル20の第2壁部23とがスポット溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート40と第2壁部23の内壁面との境界面BS6において、スポット状の第6溶融凝固部N6(ナゲット)がサイドシル1の長手方向Xに沿って複数形成されている。換言すると、第2ジョイントプレート40と第2壁部23の内壁面は、サイドシル1の長手方向Xに沿って形成された複数の第6溶融凝固部N6を介して接合されている。
第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の各々は、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20よりも長さ(長手方向Xにおける全長)が短くかつ、長手方向Xにおける一端面がサイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20の一端面(衝撃荷重が入力される端部)に対して面一になっていてもよい。
なお、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の長さは、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20の長さと同じであってもよいが、サイドシル1の重量及び製造コストを低減する観点から、必要最小限とすることが好ましい。すなわち、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の長さは、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重がサイドシル1内を伝播する範囲に応じた長さであることが好ましく、例えば100mm以上600mm以下であることが好ましい。また、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の長さは、サイドシル1の全長に対して、5〜75%であることが好ましい。
また、上記の観点からは、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の幅についても必要最小限とすることが好ましい。そして、例えば、第1ジョイントプレート30の幅は、第1壁部12及び第1壁部22にスポット溶接可能な最小幅とすることが好ましい。ここで、上述のように、第1フランジ14及び第1壁部12間、及び、第1フランジ24及び第1壁部22間には所定の曲率半径を有するR部(不図示)がそれぞれ設けられている。そして、スポット溶接に用いられるスポット溶接電極の本体の直径は15mm程度である。また、溶接部のナゲット径を考慮すると,フランジ幅は15mm程度が必要である。
これらを考慮し、第1ジョイントプレート30の幅寸法は、第1フランジ14及び第1壁部12間のR部の曲率半径(mm)と、第1フランジ24及び第1壁部22間のR部の曲率半径(mm)と、30mm(=15mm×2)との和に等しいことが好ましい(第2ジョイントプレート40の幅についても同様)。
また、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の幅を最小にすることにより、衝突変形時に第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40が接合箇所の変形に追従して変形し易くなるため、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40のスポット溶接破断が生じにくくなる利点がある。
図1Aに示すように、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅(第1壁部12の短手方向の長さ)をWL(mm)とし、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22の幅(第1壁部22の短手方向の長さ)をWS(mm)としたとき、下記の式(1)を満足するように、第1壁部12の幅WL、及び第1壁部22の幅WSが設定されていることが好ましい。
0<WS/WL<0.8 ・・・式(1)
サイドシルインナーパネル20の第1壁部22の幅WSをサイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅WLで除算して得られる値(“WS/WL”)が1.0より小さい場合、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22の幅WSが、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅WLより小さくなる。この場合、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20は、互いに非対称なハット形状を有することになる。以下では、このようなサイドシル1の構造を非対称ハット構造と呼称する。
詳細は実施例で説明するが、上記の式(1)を規定する理由は、以下の通りである。
式(1)の上限値を満たさない場合(WS/WL≧0.8):サイドシル1のサイドシルアウターパネル10のウェブ11に荷重が入力され、サイドシル1に三点曲げ変形が生じた場合、フランジ重ね合わせ部がウェブ11に近くなってしまい、フランジがサイドシル1の内方に向かって変形しやすくなる。そのため、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量が低くなる。
式(1)の下限値を満たさない場合(WS/WL=0):寸法的にありえないため、サイドシル1を非対称ハット構造にすることができない。そのため、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量が低くなる。
式(1)を満たす場合:サイドシル1のサイドシルアウターパネル10のウェブ11に荷重が入力され、サイドシル1に三点曲げ変形が生じた場合、フランジ重ね合わせ部がウェブ11から遠くなるため、フランジがサイドシル1の内方に向かって変形しにくくなる。そのため、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量が向上する。
上記のように第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を備えると共に、上記の式(1)を満たす非対称ハット構造を有するサイドシル1によれば、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。
なお、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅WL(mm)、及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22の幅をWS(mm)は、スポット溶接可能な幅以上に設定されている。すなわち、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅WLは、第1ジョイントプレート30と同様の理由により、第1フランジ14及び第1壁部12間のR部の曲率半径(mm)と、第1壁部12及びウェブ11間のR部の曲率半径(mm)と、15mmとの和以上に設定されている。
詳細は実施例で説明するが、本発明者らによる検証の結果、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を備えず、上記の式(1)を満たす非対称ハット構造を有するサイドシル(以下、このサイドシルを比較例サイドシルと称する)では、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることはできるが、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が特定の条件で入力されたときに、スポット破断が発生しやすくなり、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量が低下することが判明した。
すなわち、比較例サイドシルでは、サイドシルアウターパネル10に対して先に軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力されるような前面衝突が発生したときに、第1フランジ14及び24の境界面BS1と、第2フランジ15及び25の境界面BS4とのそれぞれに大きなせん断力が作用し、このせん断力によって衝撃荷重の入力端に近い順にスポット破断(第1溶融凝固部N1及び第4溶融凝固部N4の破断)が発生する。
これに対して、本実施形態に係るサイドシル1では、第1ジョイントプレート30が、第1壁部12及び22の内壁面に接合されているので、第1壁部12及び22が第1ジョイントプレート30を介して接続され、第1フランジ14及び24の接合状態を強固にすることができる。また、第2ジョイントプレート40が、第2壁部13及び23の内壁面に接合されているので、第2壁部13及び23が第2ジョイントプレート40を介して接続され、第2フランジ15及び25の接合状態を強固にすることができる。また、接合箇所毎に、互いに離間した個別の接合板(第1ジョイントプレート30、第2ジョイントプレート40)を用いているので、例えば、第1ジョイントプレート30に入力された荷重が、第2ジョイントプレート40に伝わることを防止することができる。そのため、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の各々が、接合箇所の変形に対して追従して変形することができるため、第1ジョイントプレート30と、第1壁部12及び22との間のスポット破断(第2溶融凝固部N2及び第3溶融凝固部N3の破断)、及び、第2ジョイントプレート40と、第2壁部13及び23との間のスポット破断(第5溶融凝固部N5及び第6溶融凝固部N6の破断)が抑制される。
したがって、サイドシルアウターパネル10に対して先に軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力されても、スポット破断を抑制できる。
以上のように、本実施形態によれば、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40をサイドシル1の内壁面における特定箇所に接合することにより、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重がサイドシル1に入力された際の、衝撃荷重が入力される端部に近い順に発生するスポット破断を抑制することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、サイドシルアウターパネル10、及びこのサイドシルアウターパネル10にスポット溶接されるサイドシルインナーパネル20を複雑な形状にプレス成形する必要がないので、製造歩留まりを低下させることなく製造でき、且つスポット破断に起因する衝撃エネルギー吸収量の低下を抑制可能なサイドシル1を提供することができる。
さらに、本実施形態に係るサイドシル1によれば、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を備えると共に、上記の式(1)を満たす非対称ハット構造を有するので、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。
なお、上記のように、第1壁部12及び22の内壁面に第1ジョイントプレート30を接合し、第2壁部13及び23の内壁面に第2ジョイントプレート40を接合することにより、スポット破断の抑制効果を得られるが、スポット破断をさらに抑制するために、第1溶融凝固部N1、第2溶融凝固部N2、及び第3溶融凝固部N3の位置関係と、第4溶融凝固部N4、第5溶融凝固部N5、及び第6溶融凝固部N6の位置関係とを以下のように設定することが好ましい。
図2Aは、図1Aに示す領域C1の拡大図である。図2Aに示すように、サイドシル1の長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N1の間における第1壁部12及び22の領域D1に、1つの第2溶融凝固部N2と1つの第3溶融凝固部N3とが配置されていることが好ましい。ここで、領域D1とは、図2Aに示すように、垂線Y1と垂線Y2とに挟まれた領域を意味する。なお、垂線Y1は、隣り合う2つの第1溶融凝固部N1の一方における長手方向Xの両端部のうち、他方の第1溶融凝固部N1に近い端部を通り、かつ第1フランジ14及び24の長手方向Xに直交する線である。また、垂線Y2は、他方の第1溶融凝固部N1における長手方向Xの両端部のうち、前記一方の第1溶融凝固部N1に近い端部を通り、かつ第1フランジ14及び24の長手方向Xに直交する線である。
サイドシル1に対し、サイドシル1の端部から長手方向Xに沿って荷重が入力された際の、溶接部の破断要因の一つは、衝突時に、隣り合う2つの溶接部間の材料が変形することで、溶接部に応力が負荷されるためである。よって、上記領域D1に第2溶融凝固部N2と第3溶融凝固部N3とが配置されることで、溶接部間の変形を抑制することができ、その結果、スポット破断をさらに抑制することができる。
なお、衝突時の変形によって第2溶融凝固部N2と第3溶融凝固部N3とに均等に応力を負荷させるため(すなわち、負荷される応力を低減するため)、第2溶融凝固部N2の長手方向Xの位置と第3溶融凝固部N3の長手方向Xの位置とが同一であることがより好ましい。
ここで、図2Aに示すように、垂線Y1と垂線Y2との間の距離(長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N1間の最短距離)をLf1としたとき、互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N1間の中点P0から長手方向Xの一方の側へ0.8×Lf1/2だけ離れた位置P1と、中点P0から長手方向Xの他方の側へ0.8×Lf1/2だけ離れた位置P2との間における第1壁部12及び22の領域に、1つの第2溶融凝固部N2と1つの第3溶融凝固部N3とが配置されていることがさらに好ましい。
なお、長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N1の間における第1壁部12及び22の領域D1に、第2溶融凝固部N2の少なくとも一部と、第3溶融凝固部N3の少なくとも一部とが位置していてもよい。また、第2溶融凝固部N2及び第3溶融凝固部N3の長手方向Xの位置を、第1溶融凝固部N1の長手方向Xの位置に一致させてもよい。
図2Bは、図1Cに示す領域C2の拡大図である。図2Bに示すように、サイドシル1の長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N4の間における第2壁部13及び23の領域D2に、1つの第5溶融凝固部N5と1つの第6溶融凝固部N6とが配置されていることが、図2Aで説明した理由と同様の理由により好ましい。ここで、領域D2とは、図2Aと同様に、垂線Y1’と垂線Y2’とに挟まれた領域を意味する。なお、垂線Y1’は、隣り合う2つの第4溶融凝固部N4の一方における長手方向Xの両端部のうち、他方の第4溶融凝固部N4に近い端部を通り、かつ第2フランジ15及び25の長手方向Xに直交する線である。また、垂線Y2’は、他方の第4溶融凝固部N4における長手方向Xの両端部のうち、前記一方の第4溶融凝固部N4に近い端部を通り、かつ第2フランジ15及び25の長手方向Xに直交する線である。
なお、第5溶融凝固部N5の長手方向Xの位置と第6溶融凝固部N6の長手方向Xの位置とが同一であることがより好ましい。
ここで、図2Bに示すように、垂線Y1’と垂線Y2’との間の距離(長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N4間の最短距離)をLf2としたとき、互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N4間の中点P0’から長手方向Xの一方の側へ0.8×Lf2/2だけ離れた位置P1’と、中点P0’から長手方向Xの他方の側へ0.8×Lf2/2だけ離れた位置P2’との間における第2壁部13及び23の領域に、1つの第5溶融凝固部N5と1つの第6溶融凝固部N6とが配置されていることがさらに好ましい。
上記のように、第1溶融凝固部N1、第2溶融凝固部N2、及び第3溶融凝固部N3の位置関係と、第4溶融凝固部N4、第5溶融凝固部N5、及び第6溶融凝固部N6の位置関係とを適正化することにより、境界面BS1及びBS4に作用するせん断力をより効果的に低減でき、その結果、スポット破断の発生をさらに抑制することができる。
なお、長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N4の間における第2壁部13及び23の領域D2に、第5溶融凝固部N5の少なくとも一部と、第6溶融凝固部N6の少なくとも一部とが位置してもよい。また、第5溶融凝固部N5及び第6溶融凝固部N6の長手方向Xの位置を、第4溶融凝固部N4の長手方向Xの位置に一致させてもよい。
また、サイドシル1では、各構成部材がスポット溶接によって互いに接合されている場合を例示したが、各構成部材が互いにスポット状接合されていればよい。
ここで、スポット状接合とは、抵抗溶接であるスポット溶接、円状、長円状、楕円状、C字状、または多重円状などの溶接部の最大径が15mm以下のレーザ溶接、円状、長円状、楕円状、C字状、または多重円状などの接着部の最大径が15mm以下の接着剤接合、並びに、円状、長円状、楕円状、C字状、または多重円状などの溶接部の最大径が15mm以下のアーク溶接を含む概念である。
[第1実施形態の変形例]
図3は、サイドシル1を示す上面図であって、本実施形態の第1変形例を示す図である。本実施形態では、図1Aに示すように、矩形状の第1ジョイントプレート30を用いる場合を示した。これに対して、図3に示すように、円弧状の切欠き部35aが、長手方向Xに沿って間隔をあけて複数形成された第1ジョイントプレート35を用いてもよい。この構成によれば、第1ジョイントプレートの重量を低減することができる。また、図3に示すように、上面視した場合に切欠き部35aが第1溶融凝固部N1に対向するように、第1ジョイントプレート35を配置することにより、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20の軸圧壊変形に対して第1ジョイントプレート35が追従して変形しやすくなる。そのため、スポット溶接の破断をさらに抑制することができる。
なお、切欠き部35aの形状は円弧に限られず、矩形や三角形であってもよい。ただし、第1ジョイントプレート35がサイドシル1に追従して変形し易くなるために、切欠き部35aは、第1ジョイントプレート35の幅方向内側に向かって先細りとなる形状であることが好ましい。
図4は、図1AのA−A線断面図であって、本実施形態の第2変形例を示す図である。本実施形態では、図1Bに示すように、サイドシル1に、一枚の鋼板をプレス成形によって折り曲げて製造されたハット形のサイドシルアウターパネル10を用いる場合を示した。これに対して、図4に示すように、プレス成形によって折り曲げられた2枚の鋼板51及び56から構成されたサイドシルアウターパネル50を用いてもよい。
図4に示すように、サイドシルアウターパネル50は、鋼板51のフランジ52と鋼板56のフランジ57とを重ね合わせてスポット溶接することにより製造することができる。そのため、サイドシルアウターパネル50では、鋼板51のフランジ52と鋼板56のフランジ57との間に、第7溶融凝固部N7が形成されている。そして、本実施形態の場合と同様、サイドシルアウターパネル50には、フランジ52とフランジ57との境界線を覆うように、第3ジョイントプレート53がスポット溶接により接合されている。これにより、第3ジョイントプレート53とサイドシルアウターパネル50との重ね合わせ面には、第8溶融凝固部N8及び第9溶融凝固部N9が形成されている。
本実施形態の第2変形例によれば、サイドシルアウターパネルが2枚の鋼板から構成されている場合であっても、第7溶融凝固部N7の破断を抑制することができる。
なお、図4には、第2溶融凝固部N2、第3溶融凝固部N3、第5溶融凝固部N5、第6溶融凝固部N6、第8溶融凝固部N8、及び第9溶融凝固部N9は現れないはずであるが、断面における各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、上記の溶融凝固部N2、N3、N5、N6、N8、及びN9を表示している。
図5は、図1AのA−A線断面図であって、本実施形態の第3変形例を示す図である。本実施形態では、図1A及び図1Bに示すように、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12及び第2壁部13の幅(第1壁部12及び第2壁部13の短手方向の長さ)が互いに同一であり、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22及び第2壁部23の幅(第1壁部22及び第2壁部23の短手方向の長さ)が互いに同一である場合を示した。これに対して、図5に示すように、サイドシル1は、第1壁部12及び第2壁部13の幅が互いに異なるサイドシルアウターパネル60、及び第1壁部22及び第2壁部23の幅が互いに異なるサイドシルインナーパネル65から構成された非対称ハット構造を有していてもよい。
なお、図5には、第2溶融凝固部N2、第3溶融凝固部N3、第5溶融凝固部N5、第6溶融凝固部N6は現れないはずであるが、断面における各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、上記の溶融凝固部N2、N3、N5、及びN6を表示している。
図6は、図1AのA−A線断面図であって、本実施形態の第4変形例を示す図である。本実施形態では、図1Bに示すように、第1壁部12及び第2壁部13が第1フランジ14及び第2フランジ15から垂直に立ち上るとともに、第1壁部22及び第2壁部23が第1フランジ24及び第2フランジ25から垂直に立ち上る場合を示した。これに対して、図6に示すように、第1壁部12及び第2壁部13が、第1フランジ14及び第2フランジ15に対して所定の角度θ(例えば、91°〜135°)で立ち上がるサイドシルアウターパネル70と、第1壁部22及び第2壁部23が、第1フランジ24及び第2フランジ25に対して所定の角度θ(例えば、91°〜135°)で立ち上がるサイドシルインナーパネル75とを用いてもよい。なお、この場合、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40に代えて、断面V字状の第1ジョイントプレート77及び断面V字状の第2ジョイントプレート78を用いることにより、第1壁部12及び第1壁部22の内壁面、および第2壁部13及び第2壁部23の内壁面にジョイントプレートを接合することができる。
なお、図6には、第2溶融凝固部N2、第3溶融凝固部N3、第5溶融凝固部N5、第6溶融凝固部N6は現れないはずであるが、断面における各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、上記の溶融凝固部N2、N3、N5、及びN6を表示している。
図7は、図1AのB−B線断面図であって、本実施形態の第5変形例を示す図である。本実施形態では、図1Aに示すように、サイドシル1が長手方向Xに沿って延びる直線形状の場合を示した。これに対して、図7に示すように、サイドシル1の長手方向Xにおける中央部が湾曲していてもよい。すなわち、図7に示すように、中央部が湾曲したサイドシルアウターパネル80と、サイドシルアウターパネル80と同じ曲率で湾曲したサイドシルインナーパネルと、これらに接合された、湾曲した第1ジョイントプレート87及び第2ジョイントプレート88とからサイドシル1が構成されていてもよい。なお、サイドシルアウターパネル80の中央部が湾曲している場合に限られず、例えば、サイドシルアウターパネル80の端部が湾曲していてもよい。すなわち、サイドシルアウターパネル80の少なくとも一部が湾曲していてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においても、本発明に係る自動車部材としてサイドシルを例示する。図8A〜図8Cは、本実施形態に係るサイドシル2を示す図である。なお、図8Aはサイドシル2の上面図であり、図8Bは図8AのC−C線断面図であり、図8Cはサイドシル2の下面図である。
本実施形態に係るサイドシル2は、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40が、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20に対して連続溶接されている点で、上記第1実施形態に係るサイドシル1と異なっている。
図8A及び図8Bに示すように、サイドシル2の第1ジョイントプレート30は、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22の内壁面にレーザ溶接によって連続溶接されている。
図8B及び図8Cに示すように、サイドシル2の第2ジョイントプレート40は、サイドシルアウターパネル10の第2壁部13の内壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23の内壁面にレーザ溶接によって連続溶接されている。
第1ジョイントプレート30とサイドシルアウターパネル10の第1壁部12とが連続溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート30と第1壁部12の内壁面との境界面BS2において、サイドシル2の長手方向Xに沿って1つの第2溶融凝固部M2が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第2溶融凝固部M2が、サイドシル2の長手方向Xに沿って形成されている。
また、第1ジョイントプレート30とサイドシルインナーパネル20の第1壁部22とが連続溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート30と第1壁部22の内壁面との境界面BS3において、サイドシル2の長手方向Xに沿って1つの第3溶融凝固部M3が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第3溶融凝固部M3が、サイドシル2の長手方向Xに沿って形成されている。
一方、第2ジョイントプレート40とサイドシルアウターパネル10の第2壁部13とが連続溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート40と第2壁部13の内壁面との境界面BS5において、サイドシル2の長手方向Xに沿って1つの第5溶融凝固部M5が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第5溶融凝固部M5が、サイドシル2の長手方向Xに沿って形成されている。
また、第2ジョイントプレート40とサイドシルインナーパネル20の第2壁部23とが連続溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート40と第2壁部23の内壁面との境界面BS6において、サイドシル2の長手方向Xに沿って1つの第6溶融凝固部M6が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第6溶融凝固部M6が、サイドシル2の長手方向Xに沿って形成されている。
上記第1実施形態と同様に、本実施形態においても、図8Aに示すように、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の幅をWLとし、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22の幅をWSとしたとき、下記の式(1)が成立するように、第1壁部12の幅WL及び第1壁部22の幅WSが設定されていることが好ましい。
0<WS/WL<0.8 ・・・式(1)
上記のように第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を備えると共に、上記の式(1)を満たす非対称ハット構造を有するサイドシル2によれば、上記第1実施形態のサイドシル1と同様に、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。
すなわち、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40の接合手段が連続溶接であっても、上記第1実施形態と同様にスポット破断を抑制することができる。なお、サイドシル2のように、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40をレーザ溶接する場合、これらジョイントプレートをスポット溶接する場合と比較して、これらジョイントプレートの幅を小さくすることができる。
[第2実施形態の変形例]
本実施形態では、図8A〜図8Cに示すように、1つの第2溶融凝固部M2、1つの第3溶融凝固部M3、1つの第5溶融凝固部M5、及び1つの第6溶融凝固部M6の各々が連続的に形成される場合を示した。しかしながら、図9に示すように、これら溶融凝固部が、長手方向Xに沿って間欠に形成されていてもよい。すなわち、複数の第2溶融凝固部M2、複数の第3溶融凝固部M3、複数の第5溶融凝固部M5、及び複数の第6溶融凝固部M6が、長手方向Xに沿って所定の間隔をあけて形成されていてもよい。この場合、溶融凝固部M2、M3、M5、M6の総体積が小さくなるため、溶接によるサイドシル2の熱変形を低減することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る自動車部材として、自動車車体の骨格部材であるフロントサイドメンバを例示する。図10A〜図10C、及び図11は、本実施形態に係るフロントサイドメンバ3を示す図である。なお、図10Aは、フロントサイドメンバ3の上面図であり、図10Bは図10AのD−D線断面図であり、図10Cはフロントサイドメンバ3の下面図である。そして、図11は、フロントサイドメンバ3をクロージングプレート200の側から見た側面図である。
なお、図10AのD−D線断面図である図10Bには、後述の第2溶融凝固部N20、第3溶融凝固部N30、第5溶融凝固部N50、及び第6溶融凝固部N60は現れないはずであるが、断面における各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図10Bでは上記の溶融凝固部N20、N30、N50、及びN60を表示している。
また、フロントサイドメンバ3の上面図である図10Aには、第1溶融凝固部N10、第2溶融凝固部N20、及び第3溶融凝固部N30は現れないはずであるが、上側からフロントサイドメンバ3を見たときの各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図10Aでは各溶融凝固部N10、N20、及びN30を表示している。
また、フロントサイドメンバ3の下面図である図10Cには、第4溶融凝固部N40、第5溶融凝固部N50及び第6溶融凝固部N60は現れないはずであるが、下側からフロントサイドメンバ3を見たときの各溶融凝固部(ナゲット)の配置関係を理解しやすくするために、図10Cでは各溶融凝固部N40、N50、及びN60を表示している。
図10A〜図10C及び図11に示すように、フロントサイドメンバ3は、断面矩形状の閉鎖空間を内部に有する長尺かつ中空の筒状体である。すなわち、フロントサイドメンバ3は、長手方向に垂直な断面が中空断面である。そして、フロントサイドメンバ3は、車両内側に向かって配置されるサイドメンバインナーパネル100(第1部材)と、車両外側に向かって配置されるクロージングプレート200(第2部材)と、第1ジョイントプレート300(第1接合板)と、第2ジョイントプレート400(第2接合板)とを備えている。
サイドメンバインナーパネル100は、高張力鋼板をハット形状にプレス成形することにより得られたハット形鋼板である。そして、このサイドメンバインナーパネル100は、互いに平行な一対のフランジ(第1フランジ140及び第2フランジ150)と、これら一対のフランジから連続して立ち上がる一対の壁部(第1壁部120及び第2壁部130)と、これら一対の壁部を接続するウェブ110とを備えている。これらのウェブ110、第1壁部120、第2壁部130、第1フランジ140、及び第2フランジ150は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って延びる矩形状の平らな部位である。
第1壁部120は、第1フランジ140の短手方向と第1壁部120の短手方向とが直交するように、第1フランジ140の短手方向における一端縁から垂直に立ち上っている。また、第2壁部130は、第2フランジ150の短手方向と第2壁部130の短手方向とが直交するように、第2フランジ150の短手方向における一端縁から垂直に立ち上っている。
なお、図10Bでは、第1壁部120が第1フランジ140に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第1壁部120は、第1フランジ140に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。同様に、図10Bでは、第2壁部130が第2フランジ150に対して直角に連続するように図示しているが、実際には、第2壁部130は、第2フランジ150に対して所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して連続している。
ウェブ110は、ウェブ110の短手方向が、第1壁部120の短手方向及び第2壁部130の短手方向の各々に対して直交するように、第1壁部120と第2壁部130とを接続している。
なお、図10Bでは、ウェブ110が、第1壁部120及び第2壁部130に対して直角に接続されているように図示しているが、実際には、ウェブ110は、第1壁部120及び第2壁部130を、所定の曲率半径(例えば3〜15mm)を有するR部を介して接続している。
上記のように構成された本実施形態に係るサイドメンバインナーパネル100では、第1壁部120の幅(短手方向長さ)は、第2壁部130の幅と同じであり、第1フランジ140の幅は、第2フランジ150の幅と同じである。なお、第1壁部120の幅は、第2壁部130の幅と異なっていてもよいし、第1フランジ140の幅は、第2フランジ150の幅と異なっていてもよい。
クロージングプレート200は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに延びる矩形状の平らな鋼板である。このクロージングプレート200は、鋼板に限られず、スポット溶接可能な板材であればよいが、上記第1実施形態で説明した理由と同様の理由により、サイドメンバインナーパネル100と同じ鋼板(引張強度及び板厚が同じ鋼板)であることが好ましい。そして、クロージングプレート200は、その短手方向(幅方向)に沿って、第1フランジ接合部210と、第2フランジ接合部220と、これらの間の中央接合部230とに区分けされている。
第1フランジ接合部210の幅は、サイドメンバインナーパネル100の第1フランジ140の幅と同じである。第2フランジ接合部220の幅は、サイドメンバインナーパネル100の第2フランジ150の幅と同じである。すなわち、第1フランジ接合部210の幅は、第2フランジ接合部220の幅と同じである。中央接合部230の幅は、サイドメンバインナーパネル100のウェブ110の幅と同じである。
フロントサイドメンバ3では、サイドメンバインナーパネル100の第1フランジ140と、クロージングプレート200の第1フランジ接合部210とが重ね合わされた状態でスポット溶接されていると共に、サイドメンバインナーパネル100の第2フランジ150と、クロージングプレート200の第2フランジ接合部220とが重ね合わされた状態でスポット溶接されている。このようにサイドメンバインナーパネル100とクロージングプレート200とが接合されることにより、フロントサイドメンバ3では、断面矩形状の閉鎖空間が長手方向Xに沿って形成される。
第1ジョイントプレート300は、長手方向Xに延びる断面L形状の鋼板である。この第1ジョイントプレート300は、鋼板に限られず、スポット溶接可能な板材であればよいが、上記第1実施形態で説明した理由と同様の理由により、サイドメンバインナーパネル100と同じ鋼板であることが好ましい。
第1ジョイントプレート300は、フロントサイドメンバ3の幅方向(フランジの幅方向)から見た場合に、サイドメンバインナーパネル100の第1フランジ140とクロージングプレート200の第1フランジ接合部210との境界線を覆うように、サイドメンバインナーパネル100の第1壁部120の内壁面、及びクロージングプレート200の中央接合部230の内壁面に当接し、これら内壁面にスポット溶接されている。なお、第1ジョイントプレート300は、ウェブ110と非接触である。すなわち、第1ジョイントプレート300の端面と、ウェブ110との間に隙間が生じている。
本開示において、「内壁面」とは、フロントサイドメンバ3の内部空間(本実施形態では、断面矩形状の閉鎖空間)に面する壁面を指す。なお、内部空間の断面形状は、フロントサイドメンバ3の形状に応じて決まるものであり、矩形に限られない。
第2ジョイントプレート400は、長手方向Xに延びる断面L形状の鋼板である。この第2ジョイントプレート400は、鋼板に限られず、スポット溶接可能な板材であればよいが、上記第1実施形態で説明した理由と同様の理由により、サイドメンバインナーパネル100と同じ鋼板であることが好ましい。
第2ジョイントプレート400は、フロントサイドメンバ3の幅方向から見た場合に、サイドメンバインナーパネル100の第2フランジ150とクロージングプレート200の第2フランジ接合部220との境界線を覆うように、サイドメンバインナーパネル100の第2壁部130の内壁面及びクロージングプレート200の中央接合部230の内壁面に当接し、これら内壁面にスポット溶接されている。なお、第2ジョイントプレート400は、ウェブ110と非接触である。すなわち、第2ジョイントプレート400の端面と、ウェブ110との間には隙間が生じている。
また、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400間に隙間が生じている。すなわち、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400は、互いに離間して非接触である。
互いに離間して非接触であることにより、衝突変形時に各ジョイントプレートが独立して接合箇所の変形に応じて変形できるため(接合箇所の変形に追従して変形できるため)、ジョイントプレートのスポット溶接破断が生じにくくなる。これに対して、仮に第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400が一体である場合には、例えば、第1ジョイントプレート300の変形が第2ジョイントプレート400の変形に影響を及ぼすため(第1ジョイントプレート300に生じた応力が第2ジョイントプレート400に伝わるため)、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400のスポット溶接破断が生じ易くなる。
図10A、図10B、及び図11に示すように、サイドメンバインナーパネル100とクロージングプレート200とがスポット溶接によって接合された結果、サイドメンバインナーパネル100の第1フランジ140と、クロージングプレート200の第1フランジ接合部210との境界面BS10において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第1溶融凝固部N10(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第1フランジ140とクロージングプレート200は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第1溶融凝固部N10を介して接合されている。
また、第1ジョイントプレート300とサイドメンバインナーパネル100の第1壁部120とがスポット溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート300と、第1壁部120の内壁面との境界面BS20において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第2溶融凝固部N20(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第1ジョイントプレート300と第1壁部120の内壁面は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第2溶融凝固部N20を介して接合されている。
さらに、第1ジョイントプレート300とクロージングプレート200の中央接合部230とがスポット溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート300と中央接合部230の内壁面との境界面BS30において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第3溶融凝固部N30(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第1ジョイントプレート300と中央接合部230の内壁面は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第3溶融凝固部N30を介して接合されている。
一方、図10C、図10B、及び図11に示すように、サイドメンバインナーパネル100とクロージングプレート200とがスポット溶接によって接合された結果、サイドメンバインナーパネル100の第2フランジ150とクロージングプレート200の第2フランジ接合部220との境界面BS40において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第4溶融凝固部N40(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第2フランジ150と第2フランジ接合部220は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第4溶融凝固部N40を介して接合されている。
また、第2ジョイントプレート400とサイドメンバインナーパネル100の第2壁部130とがスポット溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート400と第2壁部130の内壁面との境界面BS50において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第5溶融凝固部N50(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第2ジョイントプレート400と第2壁部130の内壁面は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第5溶融凝固部N50を介して接合されている。
さらに、第2ジョイントプレート400とクロージングプレート200の中央接合部230とがスポット溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート400と中央接合部230の内壁面との境界面BS60において、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿ってスポット状の第6溶融凝固部N60(ナゲット)が複数形成されている。換言すると、第2ジョイントプレート400と中央接合部230の内壁面は、フロントサイドメンバ3の長手方向Xに沿って形成された複数の第6溶融凝固部N60を介して接合されている。
第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400の長さは、上記第1実施形態で説明した理由と同様の理由により、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重がフロントサイドメンバ3内を伝播する範囲に応じた長さであることが好ましく、例えば100mm以上600mm以下であることが好ましい。また、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400の長さは、フロントサイドメンバ3の全長に対して、5〜75%であることが好ましい。
上記のように互いに離間した個別の接合板(第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400)を備えるフロントサイドメンバ3によれば、上記第1実施形態と同様に、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力された際の、衝撃荷重が入力される端部に近い順に発生するスポット破断を抑制でき、その結果、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。
なお、第1壁部120の内壁面及び中央接合部230の内壁面に第1ジョイントプレート300を接合し、第2壁部130の内壁面及び中央接合部230の内壁面に第2ジョイントプレート400を接合することにより、スポット破断の抑制効果を得られるが、スポット破断をさらに抑制するためには、上記第1実施形態と同様に、第1溶融凝固部N10、第2溶融凝固部N20及び第3溶融凝固部N30の位置関係と、第4溶融凝固部N40、第5溶融凝固部N50、及び第6溶融凝固部N60の位置関係とを以下のように設定することが好ましい。
図12Aは、図10Aに示す領域C10の拡大図である。図12Aに示すように、フロントサイドメンバ3の長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N10の間における第1壁部120及びクロージングプレート200の中央接合部230の領域D3に、1つの第2溶融凝固部N20と1つの第3溶融凝固部N30とが配置されていることが好ましい。ここで、領域D3とは、図12Aに示すように、垂線Y1と垂線Y2とに挟まれた領域を意味する。なお、垂線Y1は、隣り合う2つの第1溶融凝固部N10の一方における長手方向Xの両端部のうち、他方の第1溶融凝固部N10に近い端部を通り、かつ第1フランジ140及びクロージングプレート200の長手方向Xに直交する線である。また、垂線Y2は、他方の第1溶融凝固部N10における長手方向Xの両端部のうち、前記一方の第1溶融凝固部N10に近い端部を通り、かつ第1フランジ140及びクロージングプレート200の長手方向Xに直交する線である。
フロントサイドメンバ3に対し、フロントサイドメンバ3の端部から長手方向Xに沿って荷重が入力された際の、溶接部の破断要因の一つは、衝突時に、隣り合う2つの溶接部間の材料が変形することで、溶接部に応力が負荷されるためである。よって、上記領域D3に第2溶融凝固部N20と第3溶融凝固部N30とが配置することで、溶接部間の変形を抑制することができ、その結果、スポット破断をさらに抑制することができる。
なお、衝突時の変形によって第2溶融凝固部N20と第3溶融凝固部N30とに均等に応力を負荷させるためには(すなわち、負荷される応力を低減するためには)、第2溶融凝固部N20の長手方向Xの位置と第3溶融凝固部N30の長手方向Xの位置とが同一であることが好ましい。
ここで、図12Aに示すように、垂線Y1と垂線Y2との間の距離(長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N10間の最短距離)をLf1としたとき、互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N10間の中点P0から長手方向Xの一方の側へ0.8×Lf1/2だけ離れた位置P1と、中点P0から長手方向Xの他方の側へ0.8×Lf1/2だけ離れた位置P2との間における領域に、1つの第2溶融凝固部N20と1つの第3溶融凝固部N30とが配置されていることがより好ましい。
なお、長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第1溶融凝固部N10の間における上記領域D3に、第2溶融凝固部N20の少なくとも一部と、第3溶融凝固部N30の少なくとも一部とが位置してもよい。また、第2溶融凝固部N20及び第3溶融凝固部N30の長手方向Xの位置を、第1溶融凝固部N10の長手方向Xの位置に一致させてもよい。
図12Bは、図10Cに示す領域C20の拡大図である。図12Bに示すように、フロントサイドメンバ3の長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N40の間における第2壁部130及びクロージングプレート200の中央接合部230の領域D4に、1つの第5溶融凝固部N50と1つの第6溶融凝固部N60とが配置されていることが、図12Aで説明した理由と同様の理由により好ましい。ここで、領域D4とは、図12Aと同様に、垂線Y1’と垂線Y2’とに挟まれた領域を意味する。なお、垂線Y1’は、隣り合う2つの第4溶融凝固部N40の一方における長手方向Xの両端部のうち、他方の第4溶融凝固部N40に近い端部を通り、かつ第2フランジ150及びクロージングプレート200の長手方向Xに直交する線である。また、垂線Y2’は、他方の第4溶融凝固部N40における長手方向Xの両端部のうち、前記一方の第4溶融凝固部N40に近い端部を通り、かつ第2フランジ150及びクロージングプレート200の長手方向Xに直交する線である。
なお、第5溶融凝固部N50の長手方向Xの位置と第6溶融凝固部N60の長手方向Xの位置とが同一であることが好ましい。
ここで、図12Bに示すように、垂線Y1’と垂線Y2’との間の距離(フロントサイドメンバ3の長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N40間の最短距離)をLf2としたとき、互いに隣り合う第4溶融凝固部N40間の中点P0’から長手方向Xの一方の側へ0.8×Lf2/2だけ離れた位置P1’と、中点P0’から長手方向Xの他方の側へ0.8×Lf2/2だけ離れた位置P2’との間における領域に、1つの第5溶融凝固部N50と1つの第6溶融凝固部N60とが配置されていることがより好ましい。
上記のように、第1溶融凝固部N10、第2溶融凝固部N20、及び第3溶融凝固部N30の位置関係と、第4溶融凝固部N40、第5溶融凝固部N50、及び第6溶融凝固部N60の位置関係とを適正化することにより、境界面BS10及びBS40に作用するせん断力をより効果的に低減でき、その結果、スポット破断の発生をさらに抑制することができる。
なお、長手方向Xにおいて互いに隣り合う2つの第4溶融凝固部N40の間における上記領域D4に、第5溶融凝固部N50の少なくとも一部と、第6溶融凝固部N60の少なくとも一部とが位置してもよい。また、第5溶融凝固部N50及び第6溶融凝固部N60の長手方向Xの位置を、第4溶融凝固部N40の長手方向Xの位置に一致させてもよい。
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ3を構成する各構成部材がスポット溶接によって互いに接合されている場合を例示したが、各構成部材が互いにスポット状接合されていればよい。スポット状接合の概念は、上記第1実施形態で説明した概念と同じである。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態においても、本発明に係る自動車部材としてフロントサイドメンバを例示する。図13A〜図13C、及び図14は、本実施形態に係るフロントサイドメンバ4を示す図である。なお、図13Aは、フロントサイドメンバ4の上面図であり、図13Bは、図13AのE−E線断面図であり、図13Cはフロントサイドメンバ4の下面図である。また、図14は、フロントサイドメンバ4をクロージングプレート200の側から見た側面図である。
本実施形態に係るフロントサイドメンバ4は、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400が、サイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200に対して連続溶接されている点で、上記第3実施形態に係るフロントサイドメンバ3と異なっている。
図13A及び図13Bに示すように、フロントサイドメンバ4の第1ジョイントプレート300は、サイドメンバインナーパネル100の第1壁部120の内壁面、及びクロージングプレート200の中央接合部230の内壁面にレーザ溶接によって連続溶接されている。
図13B及び図13Cに示すように、フロントサイドメンバ4の第2ジョイントプレート400は、サイドメンバインナーパネル100の第2壁部130の内壁面、及びクロージングプレート200の中央接合部230の内壁面にレーザ溶接によって連続溶接されている。
第1ジョイントプレート300とサイドメンバインナーパネル100の第1壁部120とが連続溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート300と第1壁部120の内壁面との境界面BS20において、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って1つの第2溶融凝固部M20が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第2溶融凝固部M20が、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って形成されている。
また、第1ジョイントプレート300とクロージングプレート200の中央接合部230とが連続溶接によって接合された結果、第1ジョイントプレート300と中央接合部230の内壁面との境界面BS30において、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って1つの第3溶融凝固部M30が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第3溶融凝固部M30が、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って形成されている。
一方、第2ジョイントプレート400とサイドメンバインナーパネル100の第2壁部130とが連続溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート400と第2壁部130の内壁面との境界面BS50において、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って1つの第5溶融凝固部M50が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第5溶融凝固部M50が、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って形成されている。
また、第2ジョイントプレート400とクロージングプレート200の中央接合部230とが連続溶接によって接合された結果、第2ジョイントプレート400と中央接合部230の内壁面との境界面BS60において、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って1つの第6溶融凝固部M60が連続的に形成されている。すなわち、1つのビード状の第6溶融凝固部M60が、フロントサイドメンバ4の長手方向Xに沿って形成されている。
上記のように第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を備えるフロントサイドメンバ4によれば、上記第3実施形態と同様に、軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力された際の、衝撃荷重が入力される端部に近い順に発生するスポット破断を抑制でき、その結果、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。
以下、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
[サイドシルの衝撃吸収性能の検証]
サイドシルの衝撃吸収性能を検証するために、図15(a)〜(e)に示す5種類のサイドシルE1〜E5を用意した。なお、図15では、説明の便宜上、サイドシルE1〜E5の各構成要素に対して、上記第1及び第2実施形態の説明で使用した符号を付している。
図15(a)に示すサイドシルE1は、比較例1として用意されたサイドシルである。このサイドシルE1は、第1実施形態のサイドシル1から第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を削除したサイドシルであって、“WS/WL=1.0”の条件を満たす構造(対称ハット構造)を有するサイドシルである。
図15(b)に示すサイドシルE2は、比較例2として用意されたサイドシルである。このサイドシルE2は、第1実施形態のサイドシル1から第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を削除したサイドシルであって、“WS/WL<0.8”の条件を満たす非対称ハット構造を有するサイドシルである。
図15(c)に示すサイドシルE3は、発明例1として用意されたサイドシルである。このサイドシルE3は、第1実施形態のサイドシル1と同じ構造、すなわちサイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20にスポット溶接された第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を有し、且つ“WS/WL<0.8”の条件を満たす非対称ハット構造を有するサイドシルである。
ただし、サイドシルE3では、第2溶融凝固部N2及び第3溶融凝固部N3の長手方向Xの位置を、第1溶融凝固部N1の長手方向Xの位置に一致させている。また、第5溶融凝固部N5及び第6溶融凝固部N6の長手方向Xの位置を、第4溶融凝固部N4の長手方向Xの位置に一致させている。このような溶融凝固部の配置を、便宜上、「適正化無し」と称す。
図15(d)に示すサイドシルE4は、発明例2として用意されたサイドシルである。このサイドシルE4は、第1実施形態のサイドシル1と同じ構造、すなわちサイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20にスポット溶接された第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を有し、且つ“WS/WL<0.8”の条件を満たす非対称ハット構造を有するサイドシルである。
ただし、サイドシルE4では、第2溶融凝固部N2及び第3溶融凝固部N3の長手方向Xの位置を、中点P0の長手方向Xにおける位置と一致させている。また、第5溶融凝固部N5及び第6溶融凝固部N6の長手方向Xの位置を、中点P0’の長手方向Xにおける位置と一致させている。すなわち、サイドシルE4では、図2Aに示す領域D1に、第2溶融凝固部N2、及び第3溶融凝固部N3が配置され、図2Bに示す領域D2に、第5溶融凝固部N5、及び第6溶融凝固部N6が配置されていることになる。このような状態を、便宜上、「適正化有り」と称す。
図15(e)に示すサイドシルE5は、発明例3として用意されたサイドシルである。このサイドシルE5は、第2実施形態のサイドシル2と同じ構造、すなわちサイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20に連続溶接された第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を有し、且つ“WS/WL<0.8”の条件を満たす非対称ハット構造を有するサイドシルである。
対称ハット構造を有するサイドシルE1では、サイドシルアウターパネル10のウェブ11(サイドシルインナーパネル20のウェブ21)の幅を100としたとき、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12(第2壁部13)の幅WLを50に設定するとともに、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22(第2壁部23)の幅WSを50に設定した(すなわち、WS/WL=1.0とした)。
非対称ハット構造を有するサイドシルE2〜E5では、サイドシルアウターパネル10のウェブ11(サイドシルインナーパネル20のウェブ21)の幅を100としたとき、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12(第2壁部13)の幅WLを75に設定するとともに、サイドシルインナーパネル20の第1壁部22(第2壁部23)の幅WSを25に設定した(すなわち、WS/WL=0.33とした)。
サイドシルE1〜E5では、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20として、板厚1.4mm、引張強度980MPa、及び全長350mmの鋼板をハット形にプレス成形したものを使用した。サイドシルE3〜E5では、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40として、板厚1.4mm、引張強度980MPa、及び全長350mmの平らな鋼板を使用した。
サイドシルE1〜E5の製造に際しては、フランジ境界面において第1溶融凝固部N1及び第4溶融凝固部N4が長手方向Xに沿って40mm間隔で形成されるように(図2A及び図2Bに示すLf1及びLf2が40mmとなるように)、スポット溶接を行った。また、スポット溶接によって形成された溶融凝固部(N1〜N6)のナゲット径が4√t(t:板厚)となるようにスポット溶接条件を設定した。また、レーザ溶接によって連続的に形成された溶融凝固部(M2、M3、M4、M5)の長さが350mmとなるようにレーザ溶接条件を設定した。
(1)3点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量の解析
サイドシルE1〜E5のうち、対称ハット構造を有する比較例1のサイドシルE1と、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2と、非対称ハット構造を有する発明例1のサイドシルE3とを用いて、3点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量の数値解析試験を行った。なお、この試験に限り、サイドシルE1、E2、及びE3の全長を1000mmとし、また、E2については、WS/WLを0.9とし、E3については、WS/WLが0.33、0.5、0.75の3水準とした。
図16に示すように、サイドシルE1のサイドシルアウターパネル10のウェブ11に対して、板厚1.4mm、及び引張強度590MPaの鋼板からなるBピラー500を接合した。サイドシルE1の両端の拘束条件を全周完全拘束とし、Bピラー500の車両上方端の拘束条件を回転変位の許容及び初期位置から車両上方のみの変位許容とした。
図16及び図17に示すように、サイドシルE1を水平に配置した状態でBピラー500に対して、速度20km/h、及びストローク170mmの条件で剛体(インパクタ)600を衝突させることにより、サイドシルE1に三点曲げ変形を生じさせ、そのときの衝撃エネルギー吸収量EA(kJ)を解析した。同様の側面衝突を模擬した試験をサイドシルE2及びE3についても行った。
図18は、サイドシルE1、E2、及びE3のそれぞれについて解析した三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量EAの解析結果を示す。図18に示すように、非対称ハット構造を有するサイドシルE3(図18における3つの発明例)の衝撃エネルギー吸収量EAは、対称ハット構造を有するサイドシルE1(図18におけるWS/WL=1.0の比較例)の衝撃エネルギー吸収量EAよりも高いことが確認された。また、非対称ハット構造を有するサイドシルE3は、非対称ハット構造を有するサイドシルE2(図18におけるWS/WL=0.9の比較例)に対しても衝撃エネルギー吸収量EAが高いことが確認された。すなわち、非対称ハット構造を有するサイドシルであっても、WS/WL≧0.8の場合(上記の式(1)を満足しない場合)には、衝撃エネルギー吸収量EAが低下することが確認された。
この理由について、図19及び図20を用いて説明する。図19は、対称ハット構造のサイドシルを示す模式図であって、(a)が上記サイドシルに荷重が入力される前の状態を示し、(b)が上記サイドシルに荷重が入力された後の状態を示している。また、図20は、非対称ハット構造のサイドシルを示す模式図であって、(a)が上記サイドシルに荷重が入力される前の状態を示し、(b)が上記サイドシルに荷重が入力された後の状態を示している。
図19及び図20に示すように、側面衝突による衝撃荷重Fがサイドシルアウターパネル10に入力されると、フランジの重ね合わせ部はサイドシルの幅方向内側に変形する。この際、フランジが荷重入力位置に近いと、フランジの変形が大きくなる。そして、図19に示す対称ハット構造のサイドシルは、図20に示す非対称ハット構造のサイドシルに比べて、フランジが荷重入力位置に近くなっている。そのため、図19に示す対称ハット構造のサイドシルでは、フランジの変形が大きくなり、衝撃エネルギー吸収量EAが小さくなる。一方、図20に示す非対称ハット構造のサイドシルでは、フランジが荷重入力位置から遠いため、フランジの変形が小さくなり、衝撃エネルギー吸収量EAが大きくなる。
以上のように、非対称ハット構造を有する発明例1のサイドシルE3によれば、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができる。なお、この効果は、非対称ハット構造を有する発明例2のサイドシルE4及び発明例3のサイドシルE5、さらに比較例2のサイドシルE2でも得ることができる。ただし、図18に示したように、上記の式(1)を満足するサイドシルE3〜E5では、上記の効果が顕著になる。
(2)軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の解析
続いて、サイドシルE1〜E5を用いて、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の数値解析試験を行った。具体的には、サイドシルE1〜E5の長手方向の一端部を固定した後、サイドシルE1〜E5の長手方向の他端部に対して、平板状の剛体700を平行な状態または10°傾斜させた状態で衝突させた。サイドシルE1〜E5に対する剛体700の衝突速度は20km/hとした。
図21(a)〜(h)に示す解析条件のそれぞれについて、剛体700の衝突によってサイドシルE1〜E5の長手方向Xに沿って150mmの範囲で軸圧壊変形を生じさせた場合におけるスポット破断の有無を調査すると共に、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量EA(kJ)を解析した。表1は、スポット破断の有無の試験結果を示す。図22は、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量EA(kJ)の解析結果を示すグラフである。なお、図21における(a)〜(h)の解析条件は、図22及び表1に示す条件a〜hに対応している。
表1に示すように、図21(a)の解析条件では、対称ハット構造を有する比較例1のサイドシルE1に対して剛体700を平行な状態(サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20に同時に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。また、図21(b)の解析条件では、対称ハット構造を有する比較例1のサイドシルE1に対して剛体700を10°傾斜させた状態(サイドシルアウターパネル10に先に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。
このように、対称ハット構造を有する比較例1のサイドシルE1の場合、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40が無くとも、スポット破断が発生せず、軸圧壊変形に対する衝突エネルギー吸収量の低下を抑制できることが確認された。ただし、上記のように、対称ハット構造を有する比較例1のサイドシルE1の場合、三点曲げ変形に対する衝撃エネルギー吸収量が低下するので、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めるというサイドシルに要求される条件を満足できない。
図21(c)の解析条件では、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2に対して剛体700を平行な状態(サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20に同時に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図21(d)の解析条件では、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2に対して剛体700を10°傾斜させた状態(サイドシルインナーパネル20に先に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図21(e)の解析条件では、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2に対して剛体700を10°傾斜させた状態(サイドシルアウターパネル10に先に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたところ、スポット破断が多数発生した。
このように、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2の場合、サイドシルアウターパネル10及びサイドシルインナーパネル20に対して同時に衝撃荷重が入力される条件(第1衝撃入力条件)、又はサイドシルインナーパネル20に対して先に衝撃荷重が入力される条件(第2衝撃入力条件)の下では、第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40が無くとも、スポット破断が発生せず、軸圧壊変形に対する衝突エネルギー吸収量の低下を抑制できることが確認された。しかしながら、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2の場合、サイドシルアウターパネル10に対して先に衝撃荷重が入力される条件(第3衝撃入力条件)の下では、スポット破断が多数発生し、その結果、軸圧壊変形に対する衝突エネルギー吸収量が大きく低下することが確認された。
このような解析結果が得られた理由は、幅の大きいサイドシルアウターパネル10に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下では、第1及び第2衝撃入力条件と比較して、フランジ境界面(第1フランジ14及び24の境界面BS1、及び、第2フランジ15及び25の境界面BS4)に大きなせん断力が作用することにより、衝撃荷重の入力端に近い順にスポット破断(第1溶融凝固部N1及び第4溶融凝固部N4の破断)が発生するためと考えられる。
このように、非対称ハット構造を有する比較例2のサイドシルE2は、上記第1衝撃入力条件、及び第2衝撃入力条件の下では、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めるというサイドシルに要求される条件を満足するが、上記第3衝撃入力条件の下では、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めるという要求を満足できない。
図21(f)の解析条件では、非対称ハット構造を有する発明例1のサイドシルE3に対して剛体700を10°傾斜させた状態(サイドシルアウターパネル10に先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件)で衝突させたところ、スポット破断の発生数はゼロではなかったが、比較例2のサイドシルE2に対して第3衝撃入力条件の下で衝撃荷重を入力した場合と比較して、スポット破断の発生数を大きく低減でき、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量も向上できた。
このように、非対称ハット構造を有し、且つ第1ジョイントプレート30及び第2ジョイントプレート40を有する発明例1のサイドシルE3の場合、サイドシルアウターパネル10に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下でも、スポット破断の発生を抑制でき、その結果、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の低下を抑制できることが確認された。
このような解析結果が得られた理由は、発明例1のサイドシルE3では、第1ジョイントプレート30が、第1フランジ14と第1フランジ24との境界線を覆うように第1壁部12及び22に接合され、且つ第2ジョイントプレート40が、第2フランジ15と第2フランジ25との境界線を覆うように第2壁部13及び23に接合されているので、サイドシルアウターパネル10に対して先に軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力されても、フランジ境界面(BS1及びBS4)に作用するせん断力を低減できるためと考えられる。
図21(g)の解析条件では、非対称ハット構造を有する発明例2のサイドシルE4に対して剛体700を第3衝撃入力条件で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図21(h)の解析条件では、非対称ハット構造を有する発明例3のサイドシルE5に対して剛体700を第3衝撃入力条件で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。
このように、発明例2のサイドシルE4及び発明例3のサイドシルE5の場合、サイドシルアウターパネル10に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下でも、スポット破断は発生せず、発明例1のサイドシルE3と比較して、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を向上できることが確認された。
以上のように、発明例1〜3のサイドシルE3〜E5によれば、衝撃荷重の入力条件に関係なく、スポット破断の発生を抑制でき、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の低下を抑制することができる。従って、発明例1〜3のサイドシルE3〜E5によれば、軸圧壊変形及び三点曲げ変形という二つの異なる変形モードに対する衝撃エネルギー吸収量を高めるというサイドシルに要求される条件を満足することができる。
(3)ナゲット位置(SP位置)とスポット破断有無の調査
続いて、溶融凝固部N2、N3、N5、及びN6の、サイドシル1の長手方向Xにおける位置(ジョイントプレートのSP位置)と、スポット破断との関係をさらに詳細に調査した。一例として、これら溶融凝固部の位置を変えたサイドシルE4を8種類製造し、図21(g)の解析条件で軸圧壊変形を生じさせた場合におけるスポット破断の有無を調査した。
具体的には、サイドシルE4の長手方向において、2つの溶融凝固部N1間の中点P0を通る垂線(図2A参照)から溶融凝固部N2及びN3の中心位置までの距離(mm)、及び、2つの溶融凝固部N4間の中点P0’を通る垂線(図2B参照)から溶融凝固部N5及びN6の中心位置までの距離(mm)が、以下の表2に示す各値となるように、サイドシルE4を8種類製造した。なお、これらサイドシルE4では、図2Aに示す領域D1に溶融凝固部N2及びN3が配置され、図2Bに示す領域D2に、溶融凝固部N5及びN6が配置されている。これらサイドシルE4のそれぞれに対して、図21(g)の解析条件で軸圧壊変形を生じさせた場合におけるスポット破断の有無を調査した。
表2に示すように、これらサイドシルE4では、スポット破断が生じなかった。これに対して、表1で示したように、SP位置を適正化していない場合には、スポット破断の発生数がゼロではなかった(表1の条件fを参照)。したがって、上記の領域D1及びD2に、溶融凝固部N2、N3、N5、及びN6を配置することにより、スポット破断をさらに抑制できることを確認できた。
[フロントサイドメンバの衝撃吸収性能の検証]
フロントサイドメンバの衝撃吸収性能を検証するために、図23(a)〜(d)に示す4種類のフロントサイドメンバF1〜F4を用意した。図23では、説明の便宜上、フロントサイドメンバF1〜F4の各構成要素に対して、上記第3及び第4実施形態の説明で使用した符号を付している。
図23(a)に示すフロントサイドメンバF1は、比較例1として用意されたフロントサイドメンバである。このフロントサイドメンバF1は、第3実施形態のフロントサイドメンバ3から第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を削除したフロントサイドメンバである。
図23(b)に示すフロントサイドメンバF2は、発明例1として用意されたフロントサイドメンバである。このフロントサイドメンバF2は、第3実施形態のフロントサイドメンバ3と同じ構造、すなわちサイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200にスポット溶接された第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を有するフロントサイドメンバである。
ただし、フロントサイドメンバF2では、第2溶融凝固部N20及び第3溶融凝固部N30の長手方向Xの位置を、第1溶融凝固部N10の長手方向Xの位置に一致させている。また、第5溶融凝固部N50及び第6溶融凝固部N60の長手方向Xの位置を、第4溶融凝固部N40の長手方向Xの位置に一致させている。このような溶融凝固部の配置を、便宜上、「適正化無し」と称す。
図23(c)に示すフロントサイドメンバF3は、発明例2として用意されたフロントサイドメンバである。このフロントサイドメンバF3は、第3実施形態のフロントサイドメンバ3と同じ構造、すなわちサイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200にスポット溶接された第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を有するフロントサイドメンバである。
ただし、フロントサイドメンバF3では、第2溶融凝固部N20及び第3溶融凝固部N30の長手方向Xの位置を、中点P0の長手方向Xにおける位置と一致させている(図12A参照)。また、第5溶融凝固部N50及び第6溶融凝固部N60の長手方向Xの位置を、中点P0’の長手方向Xにおける位置と一致させている(図12B参照)。すなわち、フロントサイドメンバF3では、図12Aに示す領域D3に、第2溶融凝固部N20及び第3溶融凝固部N30が配置され、図12Bに示す領域D4に、第5溶融凝固部N50及び第6溶融凝固部N60が配置されていることになる。このような状態を、便宜上、「適正化有り」と称す。
図23(d)に示すフロントサイドメンバF4は、発明例3として用意されたフロントサイドメンバである。このフロントサイドメンバF4は、第4実施形態のフロントサイドメンバ4と同じ構造、すなわちサイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200に連続溶接された第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を有するフロントサイドメンバである。
フロントサイドメンバF1〜F4では、サイドメンバインナーパネル100として、板厚1.4mm、引張強度980MPa、及び全長350mmの鋼板をハット形にプレス成形したものを使用した。また、フロントサイドメンバF1〜F4では、クロージングプレート200として、板厚1.4mm、引張強度980MPa、及び全長350mmの平らな鋼板を使用した。また、フロントサイドメンバF2〜F4では、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400として、板厚1.4mm、引張強度980MPa、及び全長350mmの鋼板をL字形状にプレス成形したものを使用した。
フロントサイドメンバF1〜F4の製造に際しては、フランジ境界面において第1溶融凝固部N10及び第4溶融凝固部N40が長手方向Xに沿って40mm間隔で形成されるように(図12A及び図12Bに示すLf1及びLf2が40mmとなるように)、スポット溶接を行った。また、フロントサイドメンバF1〜F4において、スポット溶接によって各部に形成された溶融凝固部(N10〜N60)のナゲット径が4√t(t:板厚)となるようにスポット溶接条件を設定した。また、フロントサイドメンバF4において、レーザ溶接によって連続的に形成された溶融凝固部(M20、M30、M40、M50)の長さが350mmとなるようにレーザ溶接条件を設定した。
そして、フロントサイドメンバF1〜F4を用いて、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の数値解析試験を行った。具体的には、フロントサイドメンバF1〜F4の長手方向の一端部を固定した後、フロントサイドメンバF1〜F4の長手方向の他端部に対して、平板状の剛体800を平行な状態、または10°傾斜させた状態で衝突させた。フロントサイドメンバF1〜F4に対する剛体800の衝突速度は20km/hとした。
図24(a)〜(f)に示す解析条件のそれぞれについて、剛体800の衝突によってフロントサイドメンバF1〜F4の長手方向Xに沿って150mmの範囲で軸圧壊変形を生じさせた場合におけるスポット破断の有無を調査すると共に、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量EA(kJ)を解析した。表3は、スポット破断の有無の試験結果を示す。図25は、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量EA(kJ)の解析結果を示すグラフである。
表3に示すように、図24(a)の解析条件では、比較例1のフロントサイドメンバF1に対して剛体800を平行な状態(サイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200に同時に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図24(b)の解析条件では、比較例1のフロントサイドメンバF1に対して剛体800を10°傾斜させた状態(クロージングプレート200に先に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図24(c)の解析条件では、比較例1のフロントサイドメンバF1に対して剛体800を10°傾斜させた状態(サイドメンバインナーパネル100に先に衝撃荷重が入力される条件)で衝突させたところ、スポット破断が多数発生した。
このように、比較例1のフロントサイドメンバF1の場合、サイドメンバインナーパネル100及びクロージングプレート200に対して同時に衝撃荷重が入力される(第1衝撃入力条件)、又はクロージングプレート200に対して先に衝撃荷重が入力される条件(第2衝撃入力条件)の下では、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400が無くとも、スポット破断が発生せず、軸圧壊変形に対する衝突エネルギー吸収量の低下を抑制できることが確認された。しかしながら、比較例1のフロントサイドメンバF1の場合、サイドメンバインナーパネル100に先に衝撃荷重が入力される条件(第3衝撃入力条件)の下では、スポット破断が多数発生し、その結果、軸圧壊変形に対する衝突エネルギー吸収量が大きく低下することが確認された。
このような解析結果が得られた理由は、幅の大きいサイドメンバインナーパネル100に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下では、第1及び第2衝撃入力条件と比較して、フランジ境界面(第1フランジ140と第1フランジ接合部210との境界面BS10と、第2フランジ150と第2フランジ接合部220との境界面BS40)に大きなせん断力が作用し、このせん断力によって衝撃荷重の入力端から順にスポット破断(第1溶融凝固部N10及び第4溶融凝固部N40の破断)が発生するためと考えられる。
第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を備えていない比較例1のフロントサイドメンバF1は、上記第1衝撃入力条件及び第2衝撃入力条件の下では、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができるが、上記第3衝撃入力条件の下では、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を高めることができない。
図24(d)の解析条件では、発明例1のフロントサイドメンバF2に対して剛体800を10°傾斜させた状態(サイドメンバインナーパネル100に先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件)で衝突させたところ、スポット破断の発生数はゼロではなかったが、比較例1のフロントサイドメンバF1に対して第3衝撃入力条件の下で衝撃荷重を入力した場合と比較して、スポット破断の発生数を大きく低減でき、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量も向上できた。
このように、第1ジョイントプレート300及び第2ジョイントプレート400を備える、発明例1のフロントサイドメンバF2の場合、サイドメンバインナーパネル100に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下でも、スポット破断の発生を抑制でき、その結果、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の低下を抑制できることが確認された。
このような解析結果が得られた理由は、発明例1のフロントサイドメンバF2では、第1ジョイントプレート300が、第1フランジ140と第1フランジ接合部210との境界線を覆うように第1壁部120及び中央接合部230に接合され、且つ第2ジョイントプレート400が、第2フランジ150と第2フランジ接合部220との境界線を覆うように第2壁部130及び中央接合部230に接合されているので、サイドメンバインナーパネル100に対して先に軸圧壊変形を伴う衝撃荷重が入力されても、フランジ境界面(BS10及びBS40)に作用するせん断力を低減できるためと考えられる。
図24(e)の解析条件では、発明例2のフロントサイドメンバF3に対して剛体800を第3衝撃入力条件で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。図24(f)に示す解析条件では、発明例3のフロントサイドメンバF4に対して剛体800を第3衝撃入力条件で衝突させたが、スポット破断は発生しなかった。
このように、発明例2のフロントサイドメンバF3、及び発明例3のフロントサイドメンバF4では、サイドメンバインナーパネル100に対して先に衝撃荷重が入力される第3衝撃入力条件の下でも、スポット破断は発生せず、発明例1のフロントサイドメンバF2と比較して、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量を向上できることが確認された。
以上のように、発明例1〜3のフロントサイドメンバF2〜F4によれば、衝撃荷重の入力条件に関係なく、スポット破断の発生を抑制でき、軸圧壊変形に対する衝撃エネルギー吸収量の低下を抑制することができる。
以上、本発明の第1〜第4実施形態、変形例、及び実施例について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上記第1実施形態では、第1ジョイントプレート30がサイドシルアウターパネル10の第1壁部12及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22にスポット溶接され、第2ジョイントプレート40がサイドシルアウターパネル10の第2壁部13及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23にスポット溶接された構造を有するサイドシル1を例示した。
これに対して、第1ジョイントプレート30がサイドシルアウターパネル10の第1壁部12及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22にスポット溶接され、第2ジョイントプレート40がサイドシルアウターパネル10の第2壁部13及びサイドシルインナーパネル20の第2壁部23に連続溶接された構造を採用してもよい。すなわち、第1ジョイントプレート30の接合構造については第1実施形態で説明した接合構造(スポット溶接による接合構造)を採用し、第2ジョイントプレート40の接合構造については第2実施形態で説明した接合構造(連続溶接による接合構造)を採用してもよい。
また、例えば、上記第3実施形態では、第1ジョイントプレート300がサイドメンバインナーパネル100の第1壁部120及びクロージングプレート200の中央接合部230にスポット溶接され、第2ジョイントプレート400がサイドメンバインナーパネル100の第2壁部130及びクロージングプレート200の中央接合部230にスポット溶接された構造を有するフロントサイドメンバ3を例示した。
これに対して、第1ジョイントプレート300がサイドメンバインナーパネル100の第1壁部120及びクロージングプレート200の中央接合部230にスポット溶接され、第2ジョイントプレート400がサイドメンバインナーパネル100の第2壁部130及びクロージングプレート200の中央接合部230に連続溶接された構造を採用してもよい。すなわち、第1ジョイントプレート300の接合構造については第3実施形態で説明した接合構造(スポット溶接による接合構造)を採用し、第2ジョイントプレート400の接合構造については第4実施形態で説明した接合構造(連続溶接による接合構造)を採用してもよい。
また、例えば、上記第1実施形態では、第1ジョイントプレート30が矩形状である場合を示した。しかしながら、第1ジョイントプレート30を、円形状、楕円形状、または長円形状としてもよい。
また、例えば、上記第1実施形態では、一枚の第1ジョイントプレート30を設ける場合を示した。しかしながら、複数の第1ジョイントプレート30を設けてもよい。
また、例えば、上記第2実施形態では、第2溶融凝固部M2の形状が直線状である場合を示した。しかしながら、第2溶融凝固部M2の形状を曲線状または波状としてもよい。
また、例えば、上記第1実施形態では、サイドシルアウターパネル10の第1フランジ14及び第2フランジ15、及び、サイドシルインナーパネル20の第1フランジ24及び第2フランジ25がサイドシル1の幅方向外側を向く外向きフランジである場合を示した。しかしながら、例えば、第1フランジ14及び24が、サイドシル1の幅方向内側を向く内向きフランジとしてもよい。そして、この場合、第1ジョイントプレート30を、サイドシルアウターパネル10の第1壁部12の外壁面、及びサイドシルインナーパネル20の第1壁部22の外壁面に接合すればよい。