JP6170587B2 - 焼結軸受 - Google Patents
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Description
銅粉としては、第一銅粉Cu1としての扁平銅粉(箔状銅粉とも呼ばれる)と、第二銅粉Cu2としての通常銅粉の二種類が用いられる。
鉄粉Feとしては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等の公知の粉末が広く使用可能である。本実施形態では、含油性に優れた還元鉄粉を使用する。還元鉄粉は、略球形でありながら不規則形状でかつ多孔質状をなし、表面に微小な凹凸を有する海綿状となることから、海綿鉄粉とも呼ばれる。鉄粉としては、平均粒径60μm〜150μm(望ましくは80μm〜120μm)程度、見かけ密度2.0g/cm3〜3.0g/cm3(望ましくは2.4g/cm3〜2.6g/cm3)程度、アスペクト比1〜3程度のものを使用する。なお、鉄粉に含まれる酸素量は0.2重量%以下とする。本実施形態において使用された鉄粉の顕微鏡写真を図6に示している。
金型成形面に扁平銅粉を付着させるため、扁平銅粉には予め流体潤滑剤を付着させておく。この流体潤滑剤は、原料粉末の金型充填前に扁平銅粉に付着させていればよく、好ましくは原料粉の混合前、さらに好ましくは原料銅粉を搗砕する段階で原料銅粉に付着させる。搗砕後、他の原料粉体と混合するまでの間に扁平銅粉に流体潤滑剤を供給し、攪拌する等の手段で扁平銅粉に流体潤滑剤を付着させてもよい。金型成形面上の扁平銅粉の付着量を確保するため、扁平銅粉に対する流体潤滑剤の配合割合は、重量比で0.1重量%以上とし、また扁平銅粉同士の付着による凝集を防止するため、上記配合割合は0.8重量%以下とする。望ましくは上記配合割合の下限は0.2重量%以上とし、上限は0.7重量%とする(例えば0.3重量%とする)。流体潤滑剤としては、脂肪酸、特に直鎖飽和脂肪酸が好ましい。この種の脂肪酸は、Cn-1H2n-1COOHの一般式で表される。この脂肪酸としては、Cnが12〜22の範囲のもので、具体例として例えばステアリン酸を使用することができる。
低融点金属粉は、焼結温度よりも低融点の金属粉であり、本発明では、融点が700℃以下の金属粉、例えば錫、亜鉛、リン等の粉末が使用される。この中でも焼結時の蒸散が少ない錫粉、特に水アトマイズ錫粉が好ましい。錫粉としては、平均粒径20μm〜60μm(望ましくは30μm〜40μm)程度、見かけ密度1.5g/cm3〜2.5g/cm3(望ましくは1.8g/cm3〜2.2g/cm3)程度のものが使用される。低融点金属粉は銅に対して高いぬれ性を持つため、原料粉に配合することで、液相焼結が進行し、鉄組織と銅組織や銅組織同士の結合強度が強化される。低融点金属の配合量が増えるほど金属組織の強度は高まるが、本発明のように扁平銅粉を使用した場合、低融点金属の量が多すぎると、上記のとおり扁平銅粉が球形化し、軸受面での銅の面積が低下する不具合が生じる。従来の銅系焼結軸受や銅鉄系焼結軸受では、銅に対して10重量%程度の低融点金属を配合するのが一般的であるが、本発明では、上記の理由から銅に対する低融点金属の割合を重量比で10重量%未満(望ましくは8.0重量%以下)とする。
固体潤滑剤粉は、軸2との摺動による金属接触時の摩擦低減のために添加され、例えば黒鉛が使用される。この時、黒鉛としては、扁平銅粉に対する付着性が得られるように、鱗状黒鉛を使用するのが望ましい。固体潤滑粉としては平均粒径20μm〜60μm(望ましくは30μm〜40μm)程度、見かけ密度0.1g/cm3〜0.6g/cm3(望ましくは0.2g/cm3〜0.4g/cm3)程度のものが使用される。固体潤滑剤粉としては、黒鉛の他に二硫化モリブデン粉も使用することができる。二硫化モリブデン粉は層状結晶構造を有していて層状に剥離するため、鱗状黒鉛と同様に扁平銅粉に対する付着性が得られる。
上記各粉末を配合した原料粉は、銅粉を18重量%以上40重量%以下、低融点金属粉(例えば錫粉)を1重量%以上4重量%以下、固体潤滑剤粉(例えば黒鉛粉)を0.5〜2.5重量%配合し、残部を鉄粉とするのが望ましい。
以上に述べた各粉末の混合は、2回に分けて行うのが望ましい。先ず、一次混合として、鱗状黒鉛粉および予め流体潤滑剤を付着させた扁平銅粉を公知の混合機で混合する。次いで、二次混合として、一次混合粉に鉄粉、通常銅粉、および低融点金属粉を添加して混合し、さらに必要に応じて黒鉛粉も添加・混合する。扁平銅粉は、各種原料粉末の中でも見かけ密度が低いため、原料粉中に均一に分散させるのが難しいが、一次混合で見かけ密度が同レベルの扁平銅粉と黒鉛粉とを予め混合しておくと、扁平銅粉に付着した流体潤滑剤等により、図3に示すように、扁平銅粉Cu1と黒鉛粉Cが互いに付着して層状に重なり、扁平銅粉の見かけ密度が高まる。そのため、二次混合時に原料粉末中に扁平銅粉を均一に分散させることが可能となる。一次混合時に、別途潤滑剤を添加すれば、扁平銅粉と黒鉛粉の付着がさらに促進されるため、二次混合時に扁平銅粉をより均一に分散させることが可能となる。ここで添加する潤滑剤としては、上記流体潤滑剤と同種または異種の流体状潤滑剤の他、粉末状のものも使用可能である。例えば上述した金属セッケン等の成形助剤は一般に粉状でありながら、ある程度の付着力を有するので、扁平銅粉と黒鉛粉の付着より促進させることができる。
二次混合後の原料粉末は成形機の金型6に供給される。図7示すように、金型6は、コア6a、ダイ6b、上パンチ6c、および下パンチ6dからなり、これらによって区画されたキャビティに原料粉末が充填される。上下パンチ6c,6dを接近させて原料粉体を圧縮すると、原料粉末が、コア6aの外周面、ダイ6bの内周面、上パンチ6cの端面、および下パンチ6dの端面からなる成形面によって成形され、円筒状の圧粉体9が得られる。
その後、圧粉体9は焼結炉にて焼結される。焼結条件は、黒鉛に含まれる炭素が鉄と反応しない(炭素の拡散が生じない)条件とする。鉄―炭素の平衡状態では、723℃に変態点があり、これを超える鉄と炭素の反応が始まって、鋼組織中にパーライト相γFeが生じるが、焼結では900℃を超えてから炭素(黒鉛)と鉄の反応が始まり、パーライト相γFeが生じる。パーライト相γFeは硬い組織(HV300以上)で相手材に対する攻撃性が強いため、過剰にパーライト相が析出すると軸2の摩耗を進行させるおそれがある。
以上に述べた第一の実施形態では、鉄組織を全てフェライト相で形成しているが、かかる構成では、軸受の使用条件(例えば高面圧で使用する場合)等により、表面層が摩耗してベース部S2が露出した際に軸受面の耐摩耗性が不十分となる場合がある。
1a 軸受面
2 軸
6 金型
9 圧粉体
61 成形面
Cu1 扁平銅粉(第一銅粉)
Cu2 通常銅粉(第二銅粉)
L 扁平銅粉の長さ
t 扁平銅粉の厚さ
Claims (8)
- 鉄粉で形成された鉄組織および銅粉で形成された銅組織を有する焼結軸受であって、
銅の含有量が均一になったベース部と、ベース部の表面を覆い、ベース部よりも銅の含有量が多い表面層とを備え、
銅粉として、アスペクト比が鉄粉よりも大きい、アスペクト比20以上の扁平状の第一銅粉と、平均粒径が第一銅粉の平均粒径よりも大きい第二銅粉とを用い、
鉄粉の平均粒径を60μm〜150μm、第一銅粉の平均粒径を20μm〜50μm、第二銅粉の平均粒径を50μm〜100μmとし、鉄粉の平均粒径を第一銅粉の平均粒径および第二銅粉の平均粒径よりも大きくしたことを特徴とする焼結軸受。 - 鉄粉で形成された鉄組織および銅粉で形成された銅組織を有する焼結軸受であって、
銅の含有量が均一になったベース部と、ベース部の表面を覆い、ベース部よりも銅の含有量が多い表面層とを備え、
銅粉として、アスペクト比が鉄粉よりも大きい、アスペクト比20以上の扁平状の第一銅粉と、見かけ密度が第一銅粉の見かけ密度よりも大きい第二銅粉とを用い、
鉄粉の平均粒径を60μm〜150μm、第一銅粉の平均粒径を20μm〜50μm、第二銅粉の平均粒径を50μm〜100μmとし、鉄粉の平均粒径を第一銅粉の平均粒径および第二銅粉の平均粒径よりも大きくしたことを特徴とする焼結軸受。 - 鉄組織をフェライト相で形成した請求項1または2に記載の焼結軸受。
- 鉄組織を、フェライト相と、フェライト相の粒界に存在するパーライト相とで形成した請求項1または2に記載の焼結軸受。
- 表面層の表面に面積比で60%以上の銅組織を形成した請求項1〜4何れか1項に記載の焼結軸受。
- さらに低融点金属粉を含有する請求項1〜5何れか1項に記載の焼結軸受。
- 銅に対する低融点金属粉の割合を、重量比で10%未満にした請求項6に記載の焼結軸受。
- さらに固体潤滑剤粉を含有する請求項1〜7何れか1項に記載の焼結軸受。
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