JP6168571B2 - 試料分析方法とその装置 - Google Patents
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Description
ところが、この光イオン化法を採用した質量分析法では、各成分分子の構造因子に対応したフラグメントイオンを得ることができないため、ガスに含まれる各成分分子の構造分析を行うことができない。よって、どのような分子成分が含まれているか未知の試料について、その成分分子を同定する定性分析を行うことができない。
昇温工程では、試料を一定の昇温プログラムにしたがって昇温させる。熱分析工程では、試料に対して熱分析を行う。また、分子イオン化工程では、昇温に伴い試料から発生したガスに含まれる成分分子をイオン化する。そして、分子構造分析工程で、この分子イオン化工程で得られた分子のイオンのうち、選択した任意のイオンを解裂させてその分子の構造因子に対応するフラグメントイオンを生成し、このフラグメントイオンに基づきその分子の構造を分析する。
スキマー型ガス導入インターフェースは、内管とその周囲に同軸状に設けられた外管とによる二重管構造のガス導入インターフェースであり、外管の一端開口を試料室に連通させ、内管の他端開口を分析室に連通し、試料室側を分析室よりも高圧にして各室間に圧力差を形成するとともに、外管と内管の中間部空間を各室の中間の圧力にして、それらの圧力差をもって速やかに試料室内の発生ガスを分析室へと搬送する機能を備えている。
スキマー型ガス導入インターフェースにより試料室と分析室とを繋げることで、両室の間の距離をきわめて短い距離に設定することができ、発生ガスの搬送に伴うロスを無くして効率的且つ高精度な発生ガスの分子構造分析を実現できる。しかも、設備の省スペース化を図ることもできる。
このように同じグラフに各分析データを表示することで、定性されたガス成分の発生挙動と熱分析曲線の相関関係を明確に分離して識別分析することが可能となる。
試料室には、試料が配置される。熱分析装置は、この試料室に配置された試料を一定の昇温プログラムにしたがって昇温するとともに、試料に対して熱分析を行う。スキマー型ガス導入インターフェースは、試料室に配置された試料から昇温に伴い発生したガスを分析室に搬送する。
また、ガス分析装置は、分析室に搬送されてきたガスに含まれる成分分子をイオン化するとともに、当該イオン化して得られた分子イオンのうち、選択した任意のイオンを解裂させてフラグメントイオンを生成し、このフラグメントイオンに基づき当該分子の構造を分析する。
そして、制御・処理装置は、熱分析装置とガス分析装置とを制御して、昇温工程と並行して、熱分析工程、分子イオン化工程および分子構造分析工程を実施するとともに、熱分析装置により得られた熱分析データとガス分析装置により得られたガス分析データとを処理する。
20:熱分析装置、21:熱分析装置本体、22:ガス供給源、23:加熱炉、24:検出部、
30:ガス分析装置、31:分析室、31A:イオン化部、31B:イオントラップ部、32:ガス分析装置本体、33:ターボ分子ポンプ、34:拡散ポンプ、35:イオンゲージ、36:イオン検出部、37:光源、
40:ガス搬送装置、41:内管、42:外管、43:中間室、44:ロータリーポンプ、
50:中央制御・処理装置
〔試料分析装置の構成〕
まず、本発明の実施形態に係る試料分析装置の構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る試料分析装置は、試料Sを配置するための試料室11と、熱分析を実施する熱分析装置20と、試料室11に配置された試料Sから昇温に伴い発生したガスを分析室31に搬送するガス搬送装置40と、分析室31に搬送されてきたガスに含まれる成分分子を分析するガス分析装置30と、熱分析装置20およびガス分析装置30を制御するとともに、これら各装置で得られた分析データを処理する中央制御・処理装置50とを備えている。
熱分析装置20で得られた熱重量測定データや示差熱分析データなどの分析データは、装置に設けた検出部24から中央制御・処理装置50へ送られる。
ガス搬送装置40は、外管42の外部(すなわち、試料室11の内部)を高圧にし、内管41の内部(すなわち、分析室31の内部)を低圧にし、そして中間室43をそれらの中間の圧力に設定することで、互いに圧力が異なる試料室11と分析室31との間の圧力差を維持しつつ、試料室11内で発生したガスを内管41によって分析室31へ搬送する機能を有している。
また、内管41および外管42の試料室11側の端部はオリフィス(すなわち、微細孔)として形成してあり、それに対向する分析室31側の端部をオリフィス効果を奏しない普通の大きさの開口として形成してある。このように、内管41および外管42の試料室11側をオリフィスとし、それと反対の分析室31側を普通の開口としておけば、試料Sから発生したガスをオリフィスによって効率良く収集して、且つ効率良く分析室31へ搬送することができる。
イオン化部31Aは、試料室11から搬送されてきたガスの成分分子を、光イオン化法によってイオン化する構成部である。このイオン化部31Aには、真空紫外光を放射する光源37が設けてあり、ガス搬送装置40を経由して分析室31内に送り込まれたガスに向けて、この光源37からの光を照射する。そのときの光子エネルギーがガスに含まれる成分分子のイオン化エネルギーよりも大きいとき、成分分子が光電子を放出してイオン化する。
光源37としては、レーザ光より低い指向性をもつ真空紫外光を放射する放電管を採用している。例えば、特許文献2(特開2007−250450号公報)や特許文献1の段落「0074」に開示されたものを採用することができる。
図2は電子イオン化法(EI法)による質量分析によって得られた質量スペクトルデータの一例を示している。なお、質量スペクトルとは、質量分析装置によって得られたイオンを質量電荷比(m/z)ごとに分離して記録したものである。電子イオン化法では、分子イオンを電子でたたいて解裂させ、分子の構造因子に対応したフラグメントイオンが生成される。すなわち、図3に示すベンゼンの質量スペクトルデータ、図4に示すキシレンの質量スペクトルデータ、および図5に示すトルエンの質量スペクトルデータが重なり合って図2のような質量スペクトルデータとして表示される。したがって、図2の質量スペクトルデータからは、分子の各構造因子(ベンゼン、キシレン、トルエン)を明瞭に分類して識別することが困難である。
本実施形態では、中央制御・処理装置50にあらかじめ設定されたイオンを選択して、当該選択されたイオンをイオントラップ部31Bで捕獲したとき、コリジョンガスを供給してそのイオンを解裂させ、分子のフラグメントイオンを生成する。生成されたフラグメントイオンをイオン検出部36で質量分析することで、分子の構造因子を解明することが可能となる。
次に、上述した試料分析装置を用いた試料分析方法について説明する。
図8〜図10は、試料分析方法の各工程を説明するための図である。
本実施形態に係る試料分析方法は、昇温工程と、熱分析工程と、分子イオン化工程と、分子構造分析工程とを含んでいる。そして、熱分析工程、分子イオン化工程、および分子構造分析工程の各工程は、昇温工程と並行して実施される。
熱分析工程は、熱分析装置20によって熱分析を実施する工程である。本実施形態では、既述したように熱重量測定(TG)と示差熱分析(DTA)を実施して、検出部24から熱重量測定データと示差熱分析データが中央制御・処理装置50に出力される。
図8に示すように、これら昇温工程および熱分析工程を実施するために、中央制御・処理装置50には、あらかじめ試料名や試料室11内に供給するキャリアガスの供給量、測定温度範囲、昇温速度など、熱分析測定に必要となる条件を設定しておく。これらのあらかじめ設定された測定条件に基づき、中央制御・処理装置50が熱分析装置制御部20Aを経由して熱分析装置20を制御し、昇温工程と熱分析工程が実施され、熱重量測定(TG)と示差熱分析(DTA)の測定データを取得することができる。
図9に示すように、分子イオン化工程と分子構造分析工程を実施するために、中央制御・処理装置50には、あらかじめイオン化モードの選択や、質量走査範囲など、成分分子のイオン化と、イオン化した成分分子の質量スペクトル(MS)の取得に必要となる条件を設定しておく。これらのあらかじめ設定された条件に基づき、中央制御・処理装置50がガス分析装置制御部30Aを経由してガス分析装置30を制御し、分子イオン化工程と分子構造分析工程が実施される。
ガス分析装置30は、あらかじめ設定された質量電荷比(m/z)のイオンを選択して、当該選択されたイオンをイオントラップ部31Bで捕獲する。そして、コリジョンガスを供給してそのイオンを解裂させ、分子のフラグメントイオンを生成する。このようにして生成されたフラグメントイオンをイオン検出部36で質量分析し、分子の構造因子に対応した質量スペクトルデータ(MS/MS)を作成して、中央制御・処理装置50に出力する。
これら分子イオンに対する質量スペクトルデータ(MS)の作成と、さらに分子イオンを解裂させて分子の構造因子に対応した質量スペクトルデータ(MS/MS)を作成する処理工程が、分子構造分析工程に含まれる。
そこで、質量スペクトルデータと分子構造の関係を特定する既存のライブラリを利用して、図12の質量スペクトルデータから発生ガスに含まれる分子の構造因子を同定して定性分析することができる。既存のライブラリとしては、例えばアメリカ国立標準技術研究所 (NIST: National Institute of Standards and Technology)が提供するライブラリがある。このライブラリを利用して、図9の質量スペクトルデータに基づき定性分析をした結果、その分子構造はフェニールベンゼンエイト(Phenyl benzenoate)と同定された。
上述したライブラリを利用して、図13の質量スペクトルデータに基づき定性分析をした結果、その分子構造はウンデセン(Undecene)と同定された。
図10に示すように、中央制御・処理装置50には、あらかじめグラフ表示工程を実施するためのグラフ表示プログラムが組み込まれており、同プログラムに基づいて、中央制御・処理装置50が、熱分析工程で得られた熱分析データと、分子構造分析工程で得られたデータとを、温度を共通の変数として同じグラフに表示する。
このグラフによって、定性されたガス成分の発生挙動と熱分析曲線の相関関係を明確に分離して識別分析することが可能となる。
Claims (1)
- 試料を一定の昇温プログラムにしたがって昇温させる昇温工程と、
前記試料に対して熱分析を行う熱分析工程と、
昇温に伴い前記試料から発生したガスに含まれる成分分子をイオン化する分子イオン化工程と、
前記分子イオン化工程で得られた分子のイオンのうち、選択した任意のイオンを解裂させてその分子の構造因子に対応するフラグメントイオンを生成し、このフラグメントイオンに基づきその分子の構造を分析する分子構造分析工程と、を含み、
試料室に配置された試料に対して前記熱分析工程を実施するとともに、昇温に伴い試料から発生したガスをスキマー型ガス導入インターフェースにより分析室に搬送し、当該分析室で前記分子イオン化工程および分子構造分析工程を実施し、
前記分子イオン化工程および分子構造分析工程は、イオントラップ型質量分析装置を用いて行われ、
前記分子イオン化工程では、前記試料から発生したガスに含まれる成分分子に光を照射して、当該分子をイオン化し、
前記分子構造分析工程では、前記分子イオン化工程で得られた分子のイオンのうち、選択した任意のイオンを捕獲し、当該捕獲したイオンを解裂させてその分子の構造因子に対応するフラグメントイオンを生成し、このフラグメントイオンに基づきその分子の構造を分析し、
前記昇温工程と並行して、前記熱分析工程、分子イオン化工程および分子構造分析工程を実施し、
前記熱分析工程で得られた熱分析データと、前記分子構造分析工程で得られたデータとを、温度を共通の変数として同じグラフに表示するもので、且つ、
前記熱分析工程では、前記試料の昇温に伴う質量変化を分析し、当該質量変化をグラフに表示するとともに、
前記分子構造分析工程で得られたデータについては、前記分子イオン化工程で得られた分子のイオンのうち、選択した任意のイオンを捕獲し、当該捕獲したイオンを解裂させて生成した各フラグメントイオンのサーモグラムを、前記質量変化と同じグラフに表示することを特徴とする試料分析方法。
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