JP6166939B2 - 不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法 - Google Patents

不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、不飽和イソシアネート化合物と、活性水素を有する化合物とを反応させることにより得られる安定性に優れた不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物に関する。特に製造工程、輸送中、貯蔵中およびフォーミュレーション中に起こる粘度上昇、ゲル化等に対して安定な不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物に関する。
不飽和イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とを反応させて得られる不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物に関しては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールと、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと(以下、カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)という。)を反応させて得られるものがコンタクトレンズ(特許文献1参照。)や固体電解質用固体ソルベントの材料(特許文献2参照。)、あるいは生理活性物質の固体化材料(特許文献3〜4参照。)として用いられる旨の提案がなされている。
また、末端アミノプロピル基をもつポリ(ジメチルシロキサン)とカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)を反応させて得られる不飽和ウレア化合物が、放射線硬化性接着性オルガノポリシロキサン組成物として提案されており(特許文献5参照。)、さらにはイミダゾールのようなブロック剤でカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)のイソシアナト基をブロックしたものは低温硬化性一液ウレタン塗料用等に使用できる等の報告もなされている(非特許文献1参照。)。
市販されていて入手が容易な不飽和イソシアネート化合物のうち、メタクリロイルイソシアネート(以下、MAIという。)は、メタクリル酸アミドとオキザリルクロライドとの反応により合成されており、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、AOIという。)は、2−ビニルオキサゾリンまたは2−アミノエチルアクリレート塩酸塩とホスゲンとの反応により合成されており、カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)はイソプロペニルオキサゾリンまたは2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩とホスゲンとの反応により合成されている。
(メタ)アクリル酸エステルの生成物は、ろ過等によりその中に含まれる副生物、触媒残渣等を除く操作が一般的に行われており、そのろ過速度は速いものである方が好ましい。例えば粗(メタ)アクリル酸エステルを、中性塩類の水溶液で洗浄することにより高分子量副生物を除去して製品の濾過性を改善する方法(特許文献6参照。)や、反応に使用した触媒を凝集しろ過により取り除くことによって、生成物の濾過性を向上させ生産性を上げる方法(特許文献7参照。)等が提案されている。
しかし、いずれの方法も、濾過性を損ねる不純物を精製除去して製品純度およびろ過速度を上げることを目的とした技術が開示されているに過ぎず、精製後の製品品質の判定指標として濾過速度を利用する旨の記載は見られない。
不飽和イソシアネート化合物は既に述べたように、ポリオール、ポリアミンあるいはある種のブロック剤等と反応させて各種の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を製造することができる。しかし時として工程中に予期せぬ粘度上昇が発生して、製造中のみならず、輸送中、貯蔵中、あるいはフォーミュレーション中にしばしばトラブルを引き起こすことがあった。これらのトラブルの原因については明確に判明してはいないが、本発明者らは、原料の一つである不飽和イソシアネート化合物の品質が影響していることを見出した。
しかしその外観や主だった不純物の含量に大きな差が見られない場合には、原料として用いる不飽和イソシアネート化合物がトラブルの原因となるような品質であるか否かを予め判別することができなかった。
具体的には、不飽和イソシアネート化合物の品質を判定するパラメータとしては、純度・色相・加水分解性塩素の含有量等等が一般的である。
しかしこのような方法で分析され一定の規格を満たした不飽和イソシアネー化合物であっても、それを用いて不飽和ウレタン・不飽和ウレア化合物・不飽和アミド化合物を製造した際に急激な粘度上昇等が起こることもあり、これを予知するのは困難であった。
原料の不飽和イソシアネート化合物の使用開始後にトラブルが発生すると、各工程において低温で長時間かけて操作を行う等の対策をとることにより生産性が低くなったり、不良率が上がったりする等、品質やコストに影響がおよぶ事となり、さらには最終製品として実用に耐えないような場合もあった。これらの事情により、原料となる不飽和イソシアネート化合物が、各種の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物または不飽和アミド化合物を製造する際にトラブルを発生させることのない品質であるか否かを、予め判別する技術が望まれていた。
特開平6−322051号公報 特開平6−187822号公報 特開昭60−234582号公報 特開昭60−234583号公報 特開平6−184256号公報 特開平08−040980号公報 特開2011−37762号公報
T.Regulskiら、Org.Coat.Appl.Polym.Sci.Proc.(1983)vol.48,pp.1003−1007.
本発明は、不飽和イソシアネート化合物と、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等と反応して得られる不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を安定に製造でき、かつ製品化した後の輸送、貯蔵等の場合においても粘度の上昇やゲル化の起きない安定な製品を開発することを目的とする。
本発明者らは、外見上はほとんど差が見られず、主だった不純物に大きな差異が見られない不飽和イソシアネート化合物であっても、これを原料として使用し、ポリオール、ポリアミン、ポリチオールあるいはある種のブロック剤等と反応させて不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を製造する際に、時として予期せぬ粘度上昇が発生し、製造中、輸送中、貯蔵中、あるいはフォーミュレーション中にしばしばトラブルを引き起こす場合があることに注目した。そして種々検討を重ねた結果、濾過速度を規定した不飽和イソシアネート化合物が最適に用いられ、上記のトラブルを事前に回避することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]1)孔径0.5μmのポリテトラフルオロエチレン製メンブランフィルターを用い、圧力30kPaにて吸引濾過したとき、前記メンブランフィルター1cmあたりの濾過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)の不飽和イソシアネート化合物と、2)活性水素基を有する化合物と、を反応させてなることを特徴とする、不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物。
[2]前記不飽和イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートである[1]に記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物。
[3]前記活性水素を有する化合物が、ポリオール、ポリアミンまたはポリカルボン酸である[1]または[2]に記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物。
[4]不飽和イソシアネート化合物を孔径0.5μmのポリテトラエチレン製メンブランフィルターを用い、吸引圧力30kPaで吸引ろ過し、そのろ過速度を測定する工程と、前記吸引ろ過の結果ろ過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)の範囲である不飽和イソシアネート化合物を選択する工程と、当該不飽和イソシアネート化合物と、活性水素基を含有する化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする、不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
[5]前記不飽和イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートである[4]に記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
[6]前記活性水素を有する化合物が、ポリオール、ポリアミンまたはポリカルボン酸である[4]または[5]に記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
本発明によれば、不飽和イソシアネート化合物とポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等と反応して得られる不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を安定に製造でき、かつ製品化した後の輸送、貯蔵等の場合においても粘度の上昇やゲル化の起きない安定な製品を開発できる。
[不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物]
本発明の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物は、1)孔径0.5μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブランフィルターを用い、圧力30kPaにて吸引濾過したとき、1cmあたりの濾過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)の不飽和イソシアネート化合物と、2)活性水素基を有する化合物と、を反応させてなる。
本発明に使用される不飽和イソシアネート化合物は、分子内にエチレン性不飽和基及びイソシアナト基の両方を含む化合物を意味する。
尚、本明細書および本特許請求の範囲において、「(メタ)アクリロイル基」とは、α位に水素原子が結合したアクリロイル基、またはα位にメチル基が結合したアクリロイル基を意味する。
不飽和イソシアネート化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物、水酸基を含む(メタ)アクリレート(例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート)とジイソシアネート化合物のアダクト、特に二つのイソシアナト基の反応性の異なる2,4−トリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートとの1:1アダクト等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート化合物、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート化合物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート化合物、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの不飽和イソシアネート化合物のうち、反応の選択性の点から(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートがより好ましく、中でも入手の容易さおよび取扱い上の便利さからカレンズAOI(登録商標、昭和電工社製)およびカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)が特に好ましい。
本発明に使用する濾過速度が規定された不飽和イソシアネート化合物は、特に製造方法を限定する必要はないが、たとえば、特開昭54−005921号公報に記載の方法等によって製造できる。また、市販のものを用いてもよい。市販のものとしては、カレンズカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)(登録商標)(昭和電工社製 メタアクリロイルオキシエチルイソシアネート)、カレンズAOI(登録商標)(昭和電工社製 アクリロイルオキシエチルイソシアネート)等が挙げられる。
本発明に使用される活性水素基を有する化合物における活性水素基としては、水酸基、アミノ基(環状アミン、アミド、イミドを含む)・メルカプト基およびカルボキシル基などが挙げられる
水酸基を有する化合物としては、例えばエタノール、n−もしくはiso−プロパノール、ブタノール、もしくは異性体、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等の脂肪族アルコール化合物;フェノール、クレゾール、p−ノニルフェノール、サリチル酸メチル等のフェノール化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルヘキサノール、トリシクロ[5,2,3,02,6 ]デカンジメタノール、ジシクロヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール;ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、ピロガロール、キシレングリコール、ビスフェノール−A(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール;ジプロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;エポキシ樹脂;フェノキシ樹脂;ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの(共)重合体等の高分子ポリオール;フタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、アジピン酸、ダイマー酸等の有機酸と前記ポリオールとの末端水酸基含有反応生成物;前記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等アルキレンオキサイドとの付加反応生成物;ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等のグルコース誘導体;ペンタエリスリトールのカルボン酸(ギ酸、酢酸、安息香酸等)オルトエステルのような複素環を含むアルコール類;2−メルカプトエタノールのように水素基とメルカプト基を同時にもつもの;ジメチルケトンオキシム、ジエチルケトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム系化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有化合物の中でも、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ポリオールがより好ましい。
アミノ基を有する化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン等のモノアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3−または1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂肪族ポリアミン;m−またはp−キシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、2,4−または2,6−トリレンジアミン等芳香族ポリアミン;キトサンのようなグリコサミン類;ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシクロキサン、ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン等のシリコーン化合物等が挙げられる。
また、イミダゾール、ε−カプロラクタム、フタル酸イミド等の複素環化合物;アミド類;イミド類も含まれる。
上記アミノ基含有化合物の中でも、ポリアミン化合物が好ましく、脂肪族ポリアミンがより好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;こはく酸、アジピン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の脂肪族・芳香族ポリカルボン酸;ポリアミック酸、アクリル酸の(共)重合物等の高分子ポリカルボン酸等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有化合物の中でも、ポリカルボン酸が好ましく、脂肪族・芳香族ポリカルボン酸がより好ましい。
さらには、これら活性水素を有する化合物のフッ素置換体、塩素置換体等のハロゲン置換体を使用しても良い。これらはそれぞれ単独で用いることも、また2種以上を混合して用いても良い。
濾過速度の測定は、市販のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブランフィルター(孔径0.5μm)を装着した濾過装置に試料を注入し、大気圧下で、吸引側の圧力を30kPaとして吸引濾過したとき、1cmあたりの濾過量を測定することによってできる。なお、圧力30kPaとは状況によって多少の振れ幅をもちうるものであり、29.0〜31.0kPa程度の範囲をとりうる。
なお、不飽和イソシアネート化合物の濾過速度を測定する際には、不飽和イソシアネート化合物が純度98%以上の状態とした上で測定するものとする。
不飽和イソシアネートは、上記の条件下にて吸引濾過したときの濾過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)であれば、それを原料としウレタン等を製造したときにも、ゲル化等の問題を起こさず、良好な生成物を得ることができる。ろ過速度は、好ましくは0.02〜0.08g/(sec・cm)であると良い。この範囲にある不飽和イソシアネートであれば、ゲル化しないのみならず、生成物の急激な粘度上昇を抑制しながらウレタン化合物等を得ることができる。更に好ましくは、0.04g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)である。
[不飽和ウレタン、不飽和ウレア、または不飽和アミド化合物の製造方法]
本発明の不飽和ウレタン、不飽和ウレア、または不飽和アミド化合物の製造方法は、1)孔径0.5μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブランフィルターを用い、圧力30kPaにて吸引濾過したとき、1cmあたりの濾過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)の不飽和イソシアネート化合物と、2)活性水素基を有する化合物と、を反応させる工程を有する。
不飽和イソシアネート化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を製造する工程は、以下のような条件で行うことが好ましい。
尚、本発明の製造方法における好ましい不飽和イソシアネート化合物及び活性水素を有する化合物については、[不飽和ウレタン、不飽和ウレア、または不飽和アミド化合物]で述べたものと同様であるためその説明を省略する。
不飽和イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物との使用割合は、イソシアナト基/活性水素基の比が、好ましくは0.005〜1.5の範囲内であり、より好ましくは0.01〜1.0の範囲内である。活性水素を有する化合物がモノアルコール、ジオール等の化合物の場合、イソシアナト基/活性水素基の比は、ほぼ1/1が特に好ましく、活性水素を有する化合物が高分子ポリオールの場合、イソシアナト基/活性水素基の比は、0.01〜0.5が特に好ましい。
反応速度を調節するために、公知の反応触媒を適宜添加することができる。反応触媒の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジルコニウムアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)と2−エチルヘキサン酸の混合物、等が挙げられる。これらの反応触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応触媒の添加量は、不飽和イソシアネート化合物に対して好ましくは0.025〜2.5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。ウレタン化触媒の添加量が0.025質量%以上の場合、反応性が著しく低下する場合がない。ウレタン化触媒の添加量が2.5質量%以下の場合、反応時に副反応が起きる可能性がない。
反応時における反応温度は、好ましくは−10〜100℃であり、より好ましくは0〜80℃である。
必要に応じて重合防止剤を加えてもよく、重合防止に一般に用いられるフェノール系、ヒドロキノン系化合物を使用することができる。その具体例としては、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2、4、6−トリ−tert−ブチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されない。
その他、反応に際し、目的に応じて、公知の光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料充填剤、反応性希釈剤等の種々の物質を添加してもよい。
本発明の製造方法は、製造時に温度を上げて反応速度を高めることができるため生産性の面でも優れている。またこのようにして得られた不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物は、輸送中、貯蔵中、あるいはフォーミュレーション中に起こる粘度上昇やゲル化が起こりにくいため、製品の不良化が低減できるので、塗料・コーティング、粘・接着剤、フォトレジスト、コンタクトレンズ、固体電解質、生理活性物質の固体化等、各種の分野の材料として好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明するが、これらはあくまでも本発明の内容の理解をより容易にするためのものであって、本発明がこれらの実施例のみに制限されるものではない。
<調整例1>
使用する不飽和イソシアネート化合物として、市販のメタアクリロイルオキシエチルイソシアネート(製品名:カレンズカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)(登録商標)昭和電工株式会社製)の5ロット(以下、MOI1〜MOI5とする)を用いた。各ロットの保管条件(保管時間、温度、湿度、日射、気密等)にはばらつきがあったが、色、濁り、流動性等の見た目には差異がなかった。
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)1〜5の各ロットについて、下記分析1〜4のとおりに分析した。
<分析1>
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)1〜5について、各々のカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)純度、加水分解性塩素の含有量、および色相について測定を行った。その結果を表1に示す。
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)純度については、ガスクロマトグラフィー(GC)分析により各成分を分離し、内部標準法により含量を定量した。加水分解性塩素については、JIS K1603−3に準じて、その含量を測定した。色相については、標準色度液を調整し、比色管を用いて判定した。
<分析2>
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)1〜5の粘度を測定した。ウベローデ式粘度計にて、25℃での動粘度(cm/sec)を測定し、密度(1.096g/cm)を乗じて粘度(mPa・sec)を算出した。 結果を表1に示す。
<分析3>
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)のろ過速度の測定を行った。カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)のろ過速度とはフィルター1cmあたりが1秒間にろ過することができるカレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)の量を表すものであり、以下の条件にて測定・算定した。
まず孔径0.5μm、25mm径(濾過面積4.9cm)のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)メンブランフィルター(アドバンテック東洋社 T050A025A)をセットしたろ過装置に、約30gの試料をセットし、温度25℃の環境下において、大気圧下、吸引側の圧力30kPaで吸引濾過し、カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)全量が吸引され切るまでの時間を測定した。ろ過速度(g/(sec・cm)) = 試料重量(g)÷試料が吸引され切るまでの時間(sec)÷4.9cmとして、ろ過速度を求めた。
結果を表1に示す。
<分析4>
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)中に、ろ紙にて除去することができる物質が含有されているかを以下の試験により確認した。先ず、カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)30gを、ろ紙(アドバンテック社製、40φ、No.5C、ポアサイズ1μm。予め乾燥状態での重量を測定済。)をセットした桐山ロート(40φ)に入れ、窒素雰囲気下、アスピレータにて吸引ろ過した。次いで、吸引後のろ紙を30mlのヘキサンで洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥後、再度重量を測定した。
カレンズMOI(登録商標、昭和電工社製)1〜5のいずれについても、ろ過前後で用いたろ紙の重量に変化はなかった。また、ろ紙上に異物の存在は確認されなかった。
Figure 0006166939
分析1、2、4いずれの既存の分析方法や見た目によっては、MOI1〜5のあいだに大幅な差異はみられなかった。しかしながら分析3の方法によると、MOIのろ過速度には差異がみられることが分かった。
[実施例1〜4、比較例1(ポリオールとMOIとの反応生成物の例)]
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量500ミリリットルの4つのフラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量660)165g、MOI1 77.5gを仕込み、温度を80℃に保って5時間反応させて不飽和ウレタン化合物1を合成した。同様の操作にてMOI2〜5からも、不飽和ウレタン化合物2〜5を合成した。
得られたそれぞれの不飽和ウレタン化合物について、25℃においてSV型粘度計(ADエーアンドデイ社製SV型粘度計(SV−10型))を用いて測定した粘度の結果を、表2に示す。
Figure 0006166939
表2に示すとおり、ろ過速度がおおよそ0.006g/(sec・cm)であるMOI5では、原料の段階では取扱いに問題はなかったものの、ウレタンを製造した際にはゲル化を起こしてしまうという問題が発生した。一方、ろ過速度が0.01g/(sec・cm)以上のMOI2〜5では、問題なくウレタンを調整することができた。
更に、MOI1〜3では得られたウレタンの粘度に差異は見られなかった。すなわち、MOIのろ過速度と得られるウレタンの粘度の間には、因果関係は見られない。ろ過速度が0.016g/(sec・cm)であるMOI4では、得られたウレタンの粘度はMOI1〜3に比べ、ある程度上昇するという傾向がみられた。
[実施例5、比較例2(ポリオールとAOIとの反応生成物の例)]
(実施例5)
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量500ミリリットルの4つのフラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量660)165g、および濾過速度が0.035g/(sec・cm)のAOI 70.5gを仕込み、温度を80℃に保って5時間反応させて不飽和ウレタン化合物を合成した。得られた反応生成物は無色透明の液体で、粘度は低く、取扱い上問題はないものであり、室温で1週間保存しても変化は認められなかった。
(比較例2)
濾過速度が0.008gg/(sec・cm)のAOIを用いた以外は実施例5と同様にして反応させた。使用したAOIは、実施例5で用いたものと外見上大きな差は見られなかったが、得られた反応生成物の粘度が高く、一部ゲル化し、使用上、支障をきたすものであった。
[実施例6、比較例3(ポリオールとMOIとの反応生成物の例)]
(実施例6)
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた容量500ミリリットルの4つのフラスコに、ペンタエリスリトール72.4g、および濾過速度が0.037g/(sec・cm)のMOI3を 300gを仕込み、温度を80℃に保って5時間反応させて不飽和ウレタン化合物を合成した。得られた反応生成物は無色透明の液体で、粘度は低く、取扱い上問題はないものであり、室温で1週間保存しても変化は認められなかった。
(比較例3)
濾過速度が0.006g/(sec・cm)のMOI5を用いた以外は実施例6と同様にして反応させた。使用したMOIは、実施例6で用いたものと外見上大きな差は見られなかったが、得られた反応生成物の粘度が高く、使用上、支障をきたすものであった。
[実施例7、比較例4(オキシム系化合物とMOIとの反応生成物の例)]
(実施例7)
攪拌器、コンデンサ、及び温度計を備えた2LセパラブルフラスコにMEKオキシム(メチルエチルケトンオキシム)616 g、BHT(2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール)1.0gを入れ10℃に冷却した。続いて、内温20〜25℃に調整しながら、濾過速度が0.037g/(sec・cm)のMOI3 1086gを4時間かけて滴下した。滴下終了後に内温25℃で2時間攪拌することで、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]オキシカルボニルアミノ)エチルを合成した。得られた反応生成物は無色透明の液体で、粘度は低く、取扱い上問題はないものであり、室温で1週間保存しても変化は認められなかった。
(比較例4)
濾過速度が0.006g/(sec・cm)のMOI5を用いた以外は実施例7と同様にして反応させた。使用したMOIは、実施例7で用いたものと外見上大きな差は見られなかったが、得られた反応生成物の粘度が高くサンプリングの際に糸を引き、使用上、支障をきたすものであった。
以上の実施例・比較例に見るとおり、本発明によれば、不飽和イソシアネートがAOIである場合や、活性水素基を有する化合物がペンタエリスリトールの場合等においても、原料の不飽和イソシアネートの濾過速度によって、不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物を製造した際にゲル化等の問題が発生するか否かが予知できることが確認された。

Claims (3)

  1. 不飽和イソシアネート化合物を孔径0.5μmのポリテトラエチレン製メンブランフィルターを用い、吸引圧力30kPaで吸引ろ過し、そのろ過速度を測定する工程と、前記吸引ろ過の結果ろ過速度が0.01g/(sec・cm)〜0.08g/(sec・cm)の範囲である不飽和イソシアネート化合物を選択する工程と、当該不飽和イソシアネート化合物と、活性水素基を含有する化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする、不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
  2. 前記不飽和イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートである請求項に記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
  3. 前記活性水素を有する化合物が、ポリオール、ポリアミンまたはポリカルボン酸である請求項またはに記載の不飽和ウレタン化合物、不飽和ウレア化合物、または不飽和アミド化合物の製造方法。
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