次に、この発明を、図を参照して具体的に説明する。図1に、この発明を適用した車両用自動変速機のギヤトレーンの一例を示してある。この図1に示す自動変速機1は、4つの遊星歯車機構および8つの係合機構を備えていて、12速の前進の変速段および1速の後進段を設定することが可能なように構成されている。
図1において、自動変速機1は、車両の駆動力源(図示せず)と駆動輪(図示せず)との間に設けられている。駆動力源から出力された動力が、トルクコンバータ2を介して、入力軸3に伝達されるようになっている。その入力軸3に近い方から(図1での左側から)順に、第1遊星歯車機構P1、第2遊星歯車機構P2、第3遊星歯車機構P3、および第4遊星歯車機構P4の4つの遊星歯車機構が配置されている。また、それら第1遊星歯車機構P1、第2遊星歯車機構P2、第3遊星歯車機構P3、および第4遊星歯車機構P4は、入力軸3と同一軸線上に直列に配置されている。この図1に示す例では、上記の第1遊星歯車機構P1、第2遊星歯車機構P2、第3遊星歯車機構P3、および第4遊星歯車機構P4が、この発明における“4つの遊星歯車機構”に相当する。
なお、この自動変速機1では、上記のトルクコンバータ2を省くこと、もしくは、トルクコンバータ2を小型化することができる。その理由は、前述のように、この自動変速機1は、前進で12速の多くの変速段を設定することができる。そのため、従来の5速や6速程度の自動変速機と比較して設定可能な変速比の幅を、低速段側すなわち変速比が大きい変速段側に拡げることができる。したがって、従来のものよりも、トルクの増幅作用がより大きな変速段を設定することができる。そのような大きな減速段が設定できる分、トルクコンバータ2によるトルクの増幅作用が不要になる。もしくは、トルクコンバータ2によるトルクの増幅作用が少なくて済む。その結果、トルクコンバータ2を省くこと、もしくは小型化することが可能になる。
第1遊星歯車機構P1は、ダブルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第1サンギヤSp1と、その第1サンギヤSp1に対して同心円上に配置された第1リングギヤRp1と、これら第1サンギヤSp1および第1リングギヤRp1に噛み合っている2つのピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第1キャリアCp1とによって構成されている。
第2遊星歯車機構P2は、シングルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第2サンギヤSp2と、その第2サンギヤSp2に対して同心円上に配置された第2リングギヤRp2と、これら第2サンギヤSp2および第2リングギヤRp2に噛み合っているピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第2キャリアCp2とによって構成されている。
第3遊星歯車機構P3は、シングルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第3サンギヤSp3と、その第3サンギヤSp3に対して同心円上に配置された第3リングギヤRp3と、これら第3サンギヤSp3および第3リングギヤRp3に噛み合っているピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第3キャリアCp3とによって構成されている。
第4遊星歯車機構P4は、シングルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第4サンギヤSp4と、その第4サンギヤSp4に対して同心円上に配置された第4リングギヤRp4と、これら第4サンギヤSp4および第4リングギヤRp4に噛み合っているピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第4キャリアCp4とによって構成されている。
上記の各遊星歯車機構P1,P2,P3,P4は、隣り合う遊星歯車機構同士で互いに連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構P1の第1サンギヤSp1と、第2遊星歯車機構P2の第2サンギヤSp2とが連結されている。また、第1遊星歯車機構P1の第1キャリアCp1と、第2遊星歯車機構P2の第2リングギヤRp2とが連結されている。また、第2遊星歯車機構P2の第2キャリアCp2と、第3遊星歯車機構P3の第3リングギヤRp3とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P3のキャリアCp3と、第4遊星歯車機構P4の第4リングギヤRp4とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P3の第3サンギヤSp3と、第4遊星歯車機構P4の第4サンギヤSp4とが連結されている。そして、第4遊星歯車機構P4の第4キャリアCp4が出力軸4に連結されている。出力軸4は、例えばプロペラシャフト(図示せず)やデファレンシャルギヤ(図示せず)およびドライブシャフト(図示せず)等を介して駆動輪に連結されている。
この図1に示す例では、上記の4つの遊星歯車機構P1,P2,P3,P4のうち、第1遊星歯車機構P1が、この発明における第1遊星歯車機構に相当し、その第1遊星歯車機構P1の第1サンギヤSp1、第1リングギヤRp1、および第1キャリアCp1が、それぞれ、この発明における第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素に相当する。また、第2遊星歯車機構P2が、この発明における第2遊星歯車機構に相当し、その第2遊星歯車機構P2の第2サンギヤSp2、第2キャリアCp2、および第2リングギヤRp2が、それぞれ、この発明における第4回転要素、第5回転要素、および第6回転要素に相当する。また、第3遊星歯車機構P3が、この発明における第3遊星歯車機構に相当し、その第3遊星歯車機構P3の第3サンギヤSp3、第3キャリアCp3、および第3リングギヤRp3が、それぞれ、この発明における第7回転要素、第8回転要素、および第9回転要素に相当する。そして、第4遊星歯車機構P4が、この発明における第4遊星歯車機構に相当し、その第4遊星歯車機構P4の第4サンギヤSp4、第4キャリアCp4、および第4リングギヤRp4が、それぞれ、この発明における第10回転要素、第11回転要素、および第12回転要素に相当する。
入力軸3と第1遊星歯車機構P1との間に、入力軸3と第1遊星歯車機構P1の第1サンギヤSp1とを選択的に連結するクラッチC1が設けられている。このクラッチC1は、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
入力軸3と第1遊星歯車機構P1との間には、入力軸3と第1遊星歯車機構P1の第1リングギヤRp1とを選択的に連結するクラッチC2が設けられている。このクラッチC2は、上記のクラッチC1と同様、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
入力軸3と第1遊星歯車機構P1との間には、入力軸3と第1遊星歯車機構P1の第1キャリアCp1および第2遊星歯車機構P2の第2リングギヤRp2とを選択的に連結するクラッチC3が設けられている。このクラッチC3は、上記のクラッチC1,C2と同様、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
第1遊星歯車機構P1の第1キャリアCp1および第2遊星歯車機構P2の第2リングギヤRp2には、それら第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2の回転を選択的に止めるブレーキB1が設けられている。このブレーキB1は、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
第1遊星歯車機構P1の第1リングギヤRp1には、第1リングギヤRp1の回転を選択的に止めるブレーキB2が設けられている。このブレーキB2は、上記のブレーキB1と同様、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
第3遊星歯車機構P3の第3キャリアCp3および第4遊星歯車機構P4の第4リングギヤRp4には、それら第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4の回転を選択的に止めるブレーキB3が設けられている。このブレーキB3は、上記のブレーキB1,B2と同様、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P3との間に、入力軸3と第3遊星歯車機構P3の第3キャリアCp3とを選択的に連結するクラッチD1が設けられている。このクラッチD1は、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。また、このクラッチD1は、相対回転する回転部材同士を互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグクラッチによって構成されている。
入力軸3と第3遊星歯車機構P3との間には、入力軸3と第3遊星歯車機構P3の第3サンギヤSp3とを選択的に連結するクラッチD2が設けられている。このクラッチD2は、上記のクラッチD1と共に、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。また、このクラッチD2は、上記のクラッチD1と同様、相対回転する回転部材同士を互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグクラッチによって構成されている。
この図1に示す例では、上記の入力軸3が、この発明における“第1回転部材”に相当し、第3キャリアCp3が、この発明における“第2回転部材”に相当する。さらに、第3キャリアCp3は、この発明において、後述するリヤ変速部Rrの“第1要素”に相当している。したがって、クラッチD1が、この発明における“第1ドグクラッチ”に相当する。また、上記の第3サンギヤSp3が、この発明における“第3回転部材”に相当する。さらに、第3サンギヤSp3は、後述するリヤ変速部Rrの“第2要素”に相当している。したがって、クラッチD2が、この発明における“第2ドグクラッチ”に相当する。そして、上記のように摩擦クラッチによって構成された各クラッチC1,C2,C3、摩擦ブレーキによって構成された各ブレーキB1,B2,B3、および、ドグクラッチによって構成された各クラッチD1,D2の8つの係合機構が、この発明における“複数の係合機構”に相当する。
上記のような“複数の係合機構”のうち、各クラッチC1,C2,C3および各ブレーキB1,B2,B3が、この発明における“他の係合機構”に相当する。特に、クラッチC1は、第1サンギヤSp1(第1回転要素)および第2サンギヤSp2(第2回転要素)と入力軸3とを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第1摩擦クラッチ”に相当する。クラッチC2は、第1リングギヤRp1(第2回転要素)と入力軸3とを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第2摩擦クラッチ”に相当する。クラッチC3は、第1キャリアCp1(第3回転要素)および第2リングギヤRp2(第6回転要素)と入力軸3とを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第3摩擦クラッチ”に相当する。また、ブレーキB1は、第1キャリアCp1(第3回転要素)および第2リングギヤRp2(第6回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、この発明における“第1摩擦ブレーキ”に相当する。ブレーキB2は、第1リングギヤRp1(第2回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、この発明における“第2摩擦ブレーキ”に相当する。ブレーキB3は、第3キャリアCp3(第8回転要素)および第4リングギヤRp4(第12回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、すなわち第3遊星歯車機構P3および第4遊星歯車機構P4の各回転要素のうちの少なくとも1つを選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキである。したがって、ブレーキB3が、この発明における“第3摩擦ブレーキ”に相当する。
上記のように構成された自動変速機1は、各クラッチC1,C2,C3、各ブレーキB1,B2,B3、および各クラッチD1,D2の各係合機構をそれぞれ操作することにより、12速の前進の変速段と1速の後進の変速段とを設定することができる。各変速段に対応する各係合機構の係合および開放の状態を図2の表に示してある。図2において、“+”は係合状態を表し、空欄は開放状態を表している。“*”は、クラッチD1およびクラッチD2のいずれか一方が係合状態である、もしくはクラッチD1およびクラッチD2の両方が係合状態であること表している。また、各変速段を設定した状態における各遊星歯車機構P1,P2,P3,P4の状態を図3の共線図に示してある。図3において、左側の4本の縦線(線分)が、第1遊星歯車機構P1と第2遊星歯車機構P2とから構成されるフロント変速部Frにおける各回転要素(第1サンギヤSp1,第1リングギヤRp1,第1キャリアCp1,第2サンギヤSp2,第2リングギヤRp2,第2キャリアCp2)を表している。これら左側の4本の縦線は、第1遊星歯車機構P1および第2遊星歯車機構P2における各回転要素間のギヤ比に応じた間隔を空けて平行に配置されている。一方、右側の4本の縦線(線分)が、第3遊星歯車機構P3と第4遊星歯車機構P4とから構成されるリヤ変速部Rrにおける各回転要素(第3サンギヤSp3,第3リングギヤRp3,第3キャリアCp3,第4サンギヤSp4,第4リングギヤRp4,第4キャリアCp4)を表している。これら右側の4本の縦線も、第3遊星歯車機構P3および第4遊星歯車機構P4における各回転要素間のギヤ比に応じた間隔を空けて平行に配置されている。そして、上記の左側の4本の縦線および右側の4本の縦線にそれぞれ直行し、“0”が記されている横線が、回転数が“0”である基線となっている。上記の各縦線上でこの基線からの長さを示す点が、各回転要素のそれぞれの回転数を表している。なお、直線Linは、入力軸3の回転数を示す横線である。
図2に示すように、第1速(1st)は、クラッチC1、ブレーキB2、およびクラッチD2を係合し、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB1、ブレーキB3、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第1速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf1とリヤ変速部Rrの直線Lr1とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2に入力されたトルクは、ブレーキB2が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3が第2キャリアCp2と共に入力軸3と反対の方向に回転することにより、回転数が大幅に引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。したがって、駆動力源の回転数を大幅に減速したトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、変速比が最大となる第1速が設定される。
第2速(2nd)は、ブレーキB2、ブレーキB3、およびクラッチD2を係合し、クラッチC1、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB1、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第2速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf2とリヤ変速部Rrの直線Lr2とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、ブレーキB3が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第1速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第1速よりも変速比が小さい第2速が設定される。
第3速(3rd)は、ブレーキB1、ブレーキB2、およびクラッチD2を係合し、クラッチC1、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB3、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第3速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf3とリヤ変速部Rrの直線Lr3とによって示される。具体的には、ブレーキB1およびブレーキB2が共に係合されることにより、フロント変速部Frの各回転要素の回転数が全て“0”になる。それに伴って、フロント変速部Frの第2キャリアCp2と連結されているリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3の回転数も“0”になる。
一方、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第2速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第2速よりも変速比が小さい第3速が設定される。
第4速(4th)は、クラッチC3、ブレーキB2、およびクラッチD2を係合し、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB3、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第4速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf4とリヤ変速部Rrの直線Lr4とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC3を介してフロント変速部Frの第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2に入力されたトルクは、ブレーキB2が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第3速の場合における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第3速よりも変速比が小さい第4速が設定される。
第5速(5th)は、クラッチC1、ブレーキB1、およびクラッチD2を係合し、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB2、ブレーキB3、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第5速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf5とリヤ変速部Rrの直線Lr5とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2に入力されたトルクは、ブレーキB1が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第4速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第4速よりも変速比が小さい第5速が設定される。
第6速(6th)は、クラッチC2、ブレーキB1、およびクラッチD2を係合し、クラッチC1、クラッチC3、ブレーキB2、ブレーキB3、およびクラッチD1を開放することにより設定される。この第6速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf6とリヤ変速部Rrの直線Lr6とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC2を介してフロント変速部Frの第1リングギヤRp1にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。第1リングギヤRp1に入力されたトルクは、ブレーキB1が係合されていることにより、回転数が引き下げられて第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第5速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第5速よりも変速比が小さい第6速が設定される。
第7速(7th)は、クラッチC1およびクラッチC2を係合し、ブレーキB1、ブレーキB2、およびブレーキB3を開放し、クラッチD1もしくはクラッチD2のいずれか一方を係合することにより設定される。例えば、この第7速は、上記の第6速の状態からシフトアップする場合に、開放されているクラッチC1を係合するとともに、係合されているブレーキB1を開放することによって設定することができる。この場合、クラッチC2およびクラッチD2は、それぞれ係合されている状態が維持され、クラッチD1およびブレーキB2ならびにブレーキB3は、それぞれ開放されている状態が維持される。あるいは、この第7速は、後述する第8速の状態からシフトダウンする場合に、開放されているクラッチC1を係合するとともに、係合されているブレーキB1を開放することによって設定することができる。この場合は、クラッチC2およびクラッチD1は、それぞれ係合されている状態が維持され、クラッチD2およびブレーキB2ならびにブレーキB3は、それぞれ開放されている状態が維持される。
図1に示す構成の自動変速機1において、この第7速は、変速比が“1”になるいわゆる直結段として設定されている。この第7速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf7とリヤ変速部Rrの直線Lr7とによって示される。例えば、第1速から第6速までの減速段側から第7速へシフトアップする場合は、クラッチD1を開放した状態に維持するとともにクラッチD2を係合した状態に維持した状態で、第7速が設定される。この場合は、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC2を介してフロント変速部Frの第1リングギヤRp1にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD2を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にトルクが入力される。入力軸3のトルクが第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2と第1リングギヤRp1とに同時に入力されることにより、第1遊星歯車機構P1および第2遊星歯車機構P2の全ての回転要素が入力軸3と同じ回転数で回転する。それに伴って、第2遊星歯車機構P2の全ての回転要素も入力軸3と同じ回転数で回転することになる。すなわち、フロント変速部Frの全体が入力軸3と一体になって回転する。したがって、入力軸3からフロント変速部Frに入力されたトルクは、そのまま第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
なお、例えば、後述する第8速から第12速までの増速段側から第7速へシフトダウンする場合には、クラッチD1を係合した状態に維持するとともにクラッチD2を開放した状態に維持した状態で、第7速が設定される。この場合は、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC2を介してフロント変速部Frの第1リングギヤRp1にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。
一方、リヤ変速部Rrでは、クラッチD2が係合されている場合には、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4にも入力軸3からのトルクが入力される。もしくは、クラッチD1が係合されている場合には、第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にも入力軸3からのトルクが入力される。いずれの場合であっても、第3遊星歯車機構P3のいずれか2つの回転要素に、入力軸3のトルクが同時に入力される。そのため、第3遊星歯車機構P3の全ての回転要素が入力軸3と同じ回転数で回転する。それに伴って、第4遊星歯車機構P4の全ての回転要素も入力軸3と同じ回転数で回転することになる。すなわち、リヤ変速部Rrも全体が入力軸3と一体になって回転する。したがって、入力軸3のトルクがそのまま第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、入力軸3の回転数と同じであり、上記の第6速の場合における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数のままのトルクが出力軸4に伝達されて、第6速よりも変速比が小さく、かつ変速比が“1”である第7速が設定される。
第8速(8th)は、クラッチC2、ブレーキB1、およびクラッチD1を係合し、クラッチC1、クラッチC3、ブレーキB2、ブレーキB3、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この第8速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf6とリヤ変速部Rrの直線Lr8とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC2を介してフロント変速部Frの第1リングギヤRp1にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。第1リングギヤRp1に入力されたトルクは、ブレーキB1が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第7速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第7速よりも変速比が小さい第8速が設定される。
第9速(9th)は、クラッチC1、ブレーキB1、およびクラッチD1を係合し、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB2、ブレーキB3、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この第9速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf5とリヤ変速部Rrの直線Lr9とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。第1リングギヤRp1に入力されたトルクは、ブレーキB1が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第8速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第8速よりも変速比が小さい第9速が設定される。
第10速(10th)は、クラッチC3、ブレーキB2、およびクラッチD1を係合し、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB3、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この第10速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf4とリヤ変速部Rrの直線Lr10とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC3を介してフロント変速部Frの第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2に入力されたトルクは、ブレーキB2が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第9速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第9速よりも変速比が小さい第10速が設定される。
第11速(11th)は、ブレーキB1、ブレーキB2、およびクラッチD1を係合し、クラッチC1、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB3、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この第10速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf3とリヤ変速部Rrの直線Lr11とによって示される。具体的には、ブレーキB1およびブレーキB2が共に係合されることにより、フロント変速部Frの各回転要素の回転数が全て“0”になる。それに伴って、フロント変速部Frの第2キャリアCp2と連結されているリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3の回転数も“0”になる。
一方、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、上記の第10速における第4キャリアCp4の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第10速よりも更に変速比が小さい第11速が設定される。
第12速(12th)は、クラッチC1、ブレーキB2、およびクラッチD1を係合し、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB1、ブレーキB3、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この第12速の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf1とリヤ変速部Rrの直線Lr12とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC1を介してフロント変速部Frの第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD1を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4にトルクが入力される。第1サンギヤSp1および第2サンギヤSp2に入力されたトルクは、ブレーキB2が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4に入力されたトルクは、第3リングギヤRp3が第2キャリアCp2と共に入力軸3の回転方向と反対の方向に回転することにより、回転数が大幅に引き上げられた状態の第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。したがって、駆動力源の回転数を大幅に増速したトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、変速比が最小となる第12速が設定される。
図1に示す構成の自動変速機1では、第1速から第6速までの減速側の変速段と、第8速から第12速までの増速側の変速段とで、クラッチD1およびクラッチD2の係合状態が入れ替わっている。すなわち、第1速から第6速までの減速側の変速段では、クラッチD1を開放し、クラッチD2を係合することが必須になっている。それに対して、第8速から第12速までの増速側の変速段では、クラッチD1を係合し、クラッチD2を開放することが必須になっている。前述したように、クラッチD1およびクラッチD2はドグクラッチによって構成されているため、それらクラッチD1およびクラッチD2を係合もしくは開放する操作を行う場合には、クラッチD1およびクラッチD2により係合させる回転部材同士の回転数を同期させる必要がある。もしくは、クラッチD1およびクラッチD2を無負荷の状態にする必要がある。これに対してこの発明における自動変速機1は、第7速を設定した場合に、クラッチD1およびクラッチD2により係合させる回転部材同士の回転数が同期する、もしくは、クラッチD1およびクラッチD2がいずれも無負荷の状態になるように構成されている。
上記のように、この自動変速機1は、第7速で変速比が“1”となる直結段となるように構成されている。そのため、第7速を設定した状態では、第1遊星歯車機構P1、第2遊星歯車機構P2、第3遊星歯車機構P3、および第4遊星歯車機構P4の全てが、入力軸3と一体になって回転する。したがって、第7速を設定した状態では、クラッチD1によって選択的に入力軸3と連結される第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4も、いずれも入力軸3と同じ回転数で回転する。同様に、クラッチD2によって選択的に入力軸3と連結される第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4も、いずれも入力軸3と同じ回転数で回転する。
このように、この発明における自動変速機1は、第7速が、ドグクラッチであるクラッチD1およびクラッチD2をいずれも係合もしくは開放の状態を維持しつつ、それらドグクラッチD1,D2以外の他の係合機構(具体的にはクラッチC1およびブレーキB1)の係合もしくは開放の状態を切り替えることにより設定される。そして、その第7速で、クラッチD1で係合する回転部材同士の回転数、およびクラッチD2で係合する回転部材同士の回転数が、全て一致するように構成されている。別の言い方をすると、この発明における自動変速機1では、ドグクラッチであるクラッチD1およびクラッチD2が、図3に示すような各遊星歯車機構P1,P2,P3,P4についての共線図において回転数が同一の1本の線(すなわち入力軸3の回転数を表す直線Lin)に示されるように配置されている。この自動変速機1で設定する第7速は、上述の通り、変速比が“1”となる変速段である。また、この自動変速機1で設定する第7速は、変速比がより大きい第1速から第6速までの減速側の変速段と、変速比がより小さい第8速から第12速までの増速側の変速段との間の変速段である。
したがって、この発明における自動変速機1では、第7速を設定することにより、クラッチD1およびクラッチD2によって連結する各回転部材同士の回転数が全て一致する。そのため、クラッチD1およびクラッチD2のうち、例えば、開放しているいずれか一方のクラッチD1(もしくはD2)においては、その後に係合させる2つの回転部材の回転数が同期した状態になる。また、係合しているいずれか一方のクラッチD2(もしくはD1)においては、開放している他方のクラッチD1(もしくはD2)を係合させて、一旦クラッチD1およびクラッチD2の両方を係合させた状態にすることにより、その後に開放させる2つの回転部材の間に負荷が掛からない状態になる。したがって、第7速を設定することにより、クラッチD1およびクラッチD2は、いずれも、係合もしくは開放させる操作が可能な状態になる。その状態で、クラッチD1を係合し、クラッチD2を開放することにより、第8速から第12速までの増速側の変速段を設定することが可能な状態になる。あるいは、クラッチD1を開放し、クラッチD2を係合することにより、第1速から第6速までの減速側の変速段を設定することが可能な状態になる。そのため、この発明における自動変速機1によれば、例えばシンクロメッシュ機構などの特別な装置や機構を設けることなく、クラッチD1およびクラッチD2によって連結する回転部材の回転数を一致させることができる。あるいは、そのためだけの特別な制御を行うことなく、クラッチD1およびクラッチD2によって連結する回転部材の回転数を一致させることができる。また、クラッチD1およびクラッチD2以外の他の係合機構を、上記のようなクラッチD1およびクラッチD2の操作のためだけに係合させることがないので、それら他の係合機構の耐久性の低下を抑制することができる。
上記のようにして設定される第1速から第12速までの前進段に対して、後進段(Rev)は、クラッチC3、ブレーキB2、およびブレーキB3を係合し、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、クラッチD1、およびクラッチD2を開放することにより設定される。この後進段の状態は、図3の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf4とリヤ変速部Rrの直線Lr13によって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC3を介してフロント変速部Frの第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2にトルクが入力される。それら第1キャリアCp1および第2リングギヤRp2に入力されたトルクは、ブレーキB2が係合されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2キャリアCp2から出力される。第2キャリアCp2から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp3に伝達される。
一方、第3リングギヤRp3に入力されたトルクは、ブレーキB3が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第4キャリアCp4から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp4の回転数は、入力軸3の回転数よりも小さくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速し、かつ入力軸3の回転方向と反対の方向に回転するトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、後進段が設定される。
なお、上記の後進段は、いずれかの前進段が設定されている状態から、一旦、自動変速機1をニュートラルの状態にした後に設定される。もしくは、自動変速機1でニュートラルが設定されている状態から後進段が設定される。自動変速機1のニュートラルの状態は、クラッチC1,C2,C3,D1,D2、およびブレーキB1,B2,B3を全て開放することにより設定することができる。したがって、後進段を設定する際には、クラッチD1およびクラッチD2は、一旦、無負荷の状態になる。そのため、後進段を設定するために、ドグクラッチによって構成されているクラッチD1およびクラッチD2を開放することは可能である。
図4に、この発明を適用した変速機のギヤトレーンの他の例を示してある。この図4に示すギヤトレーンは、4つの遊星歯車機構と9つの係合機構とにより、12速の前進の変速段および1速の後進の変速段を設定することが可能な変速機を構成した例である。
図4において、自動変速機10は、第1遊星歯車機構P11、第2遊星歯車機構P12、第3遊星歯車機構P13、および第4遊星歯車機構P14の4つの遊星歯車機構を備えている。それら4つの遊星歯車機構は、入力軸3に近い方から(図4での左側から)、第1遊星歯車機構P11、第2遊星歯車機構P12、第3遊星歯車機構P13、および第4遊星歯車機構P14の順に直列に配置されている。この図4に示す例では、上記の第1遊星歯車機構P11、第2遊星歯車機構P12、第3遊星歯車機構P13、および第4遊星歯車機構P14が、この発明における“4つの遊星歯車機構”に相当する。
第1遊星歯車機構P11は、ダブルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第1サンギヤSp11と、その第1サンギヤSp11に対して同心円上に配置された第1リングギヤRp11と、これら第1サンギヤSp11および第1リングギヤRp11に噛み合っている2つのピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第1キャリアCp11とによって構成されている。
第2遊星歯車機構P12は、ダブルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第2サンギヤSp12と、その第2サンギヤSp12に対して同心円上に配置された第2リングギヤRp12と、これら第2サンギヤSp12および第2リングギヤRp12に噛み合っている2つのピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第2キャリアCp12とによって構成されている。
第3遊星歯車機構P13は、シングルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第3サンギヤSp13と、その第3サンギヤSp13に対して同心円上に配置された第3リングギヤRp13と、これら第3サンギヤSp13および第3リングギヤRp13に噛み合っているピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第3キャリアCp13とによって構成されている。
第4遊星歯車機構P14は、シングルピニオン形の遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、第4サンギヤSp14と、その第4サンギヤSp14に対して同心円上に配置された第4リングギヤRp14と、これら第4サンギヤSp14および第4リングギヤRp14に噛み合っているピニオンギヤ(図示せず)を自転および公転が可能なように保持している第4キャリアCp14とによって構成されている。
上記の各遊星歯車機構P11,P12,P13,P14は、隣り合う遊星歯車機構同士で互いに連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構P11の第1キャリアCp11と、第2遊星歯車機構P2の第2サンギヤSp12とが連結されている。また、第2遊星歯車機構P12の第2リングギヤRp12と、第3遊星歯車機構P13の第3リングギヤRp13とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P13の第3キャリアCp13と、第4遊星歯車機構P14の第4リングギヤRp14とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P13の第3サンギヤSp13と、第4遊星歯車機構P14の第4サンギヤSp14とが連結されている。そして、第1遊星歯車機構P11の第1サンギヤSp11が入力軸3に連結されている。また、第4遊星歯車機構P14の第4キャリアCp14が出力軸4に連結されている。
この図4に示す例では、上記の4つの遊星歯車機構P11,P12,P13,P14のうち、第1遊星歯車機構P11が、この発明における第1遊星歯車機構に相当し、その第1遊星歯車機構P11の第1サンギヤSp11、第1リングギヤRp11、および第1キャリアCp11が、それぞれ、この発明における第1回転要素、第2回転要素、および第3回転要素に相当する。また、第2遊星歯車機構P12が、この発明における第2遊星歯車機構に相当し、その第2遊星歯車機構P12の第2サンギヤPp12、第2リングギヤRp12、および第2キャリアCp12が、それぞれ、この発明における第4回転要素、第5回転要素、および第6回転要素に相当する。また、第3遊星歯車機構P13が、この発明における第3遊星歯車機構に相当し、その第3遊星歯車機構P13の第3サンギヤPp13、第3キャリアCp13、および第3リングギヤRp13が、それぞれ、この発明における第7回転要素、第8回転要素、および第9回転要素に相当する。そして、第4遊星歯車機構P14が、この発明における第4遊星歯車機構に相当し、その第4遊星歯車機構P14の第4サンギヤPp14、第4キャリアCp14、および第4リングギヤRp14が、それぞれ、この発明における第10回転要素、第11回転要素、および第12回転要素に相当する。
入力軸3と第2遊星歯車機構P12との間に、入力軸3と第2遊星歯車機構P12の第2サンギヤSp12とを選択的に連結するクラッチC11が設けられている。このクラッチC11は、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
また、入力軸3と第2遊星歯車機構P12との間には、入力軸3と第2遊星歯車機構P12の第2キャリアCp12とを選択的に連結するクラッチC12が設けられている。このクラッチC12は、上記のクラッチC11と同様、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
第1遊星歯車機構P11と第2遊星歯車機構12との間には、第1遊星歯車機構P11の第1キャリアCp11と第2遊星歯車機構P12の第2キャリアCp12とを選択的に連結するクラッチC13が設けられている。このクラッチC13は、上記のクラッチC11,C12と同様、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。
第1遊星歯車機構P11の第1リングギヤRp11には、第1リングギヤRp11の回転を選択的に止めるブレーキB11が設けられている。このブレーキB11は、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
第1遊星歯車機構P11の第1キャリアCp11には、第1キャリアCp11の回転を選択的に止めるブレーキB12が設けられている。このブレーキB12は、上記のブレーキB11と同様、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
第2遊星歯車機構P12の第2キャリアCp12には、第2キャリアCp12の回転を選択的に止めるブレーキB13が設けられている。このブレーキB13は、上記のブレーキB11,B12と同様、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
第3遊星歯車機構P13の第3キャリアCp13および第4遊星歯車機構P14の第4リングギヤRp14には、それら第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14の回転を選択的に止めるブレーキB14が設けられている。このブレーキB14は、上記のブレーキB11,B12,B13と同様、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。
そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P13との間に、入力軸3と第3遊星歯車機構P13の第3キャリアCp13とを選択的に連結するクラッチD11が設けられている。このクラッチD11は、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。また、このクラッチD11は、相対回転する回転部材同士を互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグクラッチによって構成されている。
また、入力軸3と第3遊星歯車機構P13との間には、入力軸3と第3遊星歯車機構P13の第3サンギヤSp13とを選択的に連結するクラッチD12が設けられている。このクラッチD12は、上記のクラッチD11と共に、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。また、このクラッチD12は、上記のクラッチD11と同様、相対回転する回転部材同士を互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグクラッチによって構成されている。
この図4に示す例では、上記の入力軸3が、この発明における“第1回転部材”に相当し、第3キャリアCp13が、この発明における“第2回転部材”に相当する。さらに、第3キャリアCp13は、この発明において、後述するリヤ変速部Rrの“第1要素”に相当している。したがって、クラッチD11が、この発明における“第1ドグクラッチ”に相当する。また、上記の第3サンギヤSp13が、この発明における“第3回転部材”に相当する。さらに、第3サンギヤSp13は、後述するリヤ変速部Rrの“第2要素”に相当している。したがって、クラッチD12が、この発明における“第2ドグクラッチ”に相当する。そして、上記のように摩擦クラッチによって構成された各クラッチC11,C12,C13、摩擦ブレーキによって構成された各ブレーキB11,B12,B13,B14、および、ドグクラッチによって構成された各クラッチD11,D12の9つの係合機構が、この発明における“複数の係合機構”に相当する。
上記のような“複数の係合機構”のうち、各クラッチC11,C12,C13および各ブレーキB1,B2,B3,B14が、この発明における“他の係合機構”に相当する。特に、クラッチC11は、第2サンギヤSp12(第4回転要素)と入力軸3とを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第1摩擦クラッチ”に相当する。クラッチC12は、第2キャリアCp12(第6回転要素)と入力軸3とを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第2摩擦クラッチ”に相当する。クラッチC13は、第1キャリアCp11(第3回転要素)と、第2サンギヤSp12(第4回転要素)ならびに第2リングギヤRp12(第5回転要素)ならびに第2キャリアCp12(第6回転要素)のうちのいずれか2つとを選択的に連結する摩擦クラッチであり、この発明における“第3摩擦クラッチ”に相当する。この図6に示す例では、クラッチC13は、第1キャリアCp11(第3回転要素)と第2サンギヤSp12(第4回転要素)および第2キャリアCp12(第6回転要素)とを選択的に連結するように構成されている。また、ブレーキB11は、第1リングギヤRp11(第2回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、この発明における“第1摩擦ブレーキ”に相当する。ブレーキB12は、第1キャリアCp11(第3回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、この発明における“第2摩擦ブレーキ”に相当する。ブレーキB13は、第2キャリアCp12(第6回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、この発明における“第3摩擦ブレーキ”に相当する。ブレーキB14は、第3キャリアCp13(第8回転要素)および第4リングギヤRp14(第12回転要素)を選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキであり、すなわち第3遊星歯車機構P13および第4遊星歯車機構P14の各回転要素のうちの少なくとも1つを選択的に回転不可能な状態に固定する摩擦ブレーキである。したがって、ブレーキB14が、この発明における“第4摩擦ブレーキ”に相当する。
上記のように構成された自動変速機10は、各クラッチC11,C12,C13、各ブレーキB11,B12,B13,B14、および各クラッチD11,D12の各係合機構をそれぞれ操作することにより、12速の前進の変速段と1速の後進の変速段とを設定することができる。各変速段に対応する各係合機構の係合および開放の状態を図5の表に示してある。図5において、前述の図2と同様に、“+”は係合状態を表し、空欄は開放状態を表している。“*”は、クラッチD11およびクラッチD12のいずれか一方が係合状態である、もしくはクラッチD11およびクラッチD12の両方が係合状態であること表している。また、各変速段を設定した状態における各遊星歯車機構P11,P12,P13,P14の状態を図6の共線図に示してある。図6において、左側の6本の縦線(線分)が、第1遊星歯車機構P11と第2遊星歯車機構P12とから構成されるフロント変速部Frにおける各回転要素(第1サンギヤSp11,第1リングギヤRp11,第1キャリアCp11,第2サンギヤSp12,第2リングギヤRp12,第2キャリアCp12)を表している。これら左側の4本の縦線は、第1遊星歯車機構P11および第2遊星歯車機構P12における各回転要素間のギヤ比に応じた間隔を空けて平行に配置されている。一方、右側の4本の縦線(線分)が、第3遊星歯車機構P13と第4遊星歯車機構P14とから構成されるリヤ変速部Rrにおける各回転要素(第3サンギヤSp13,第3リングギヤRp13,第3キャリアCp13,第4サンギヤSp14,第4リングギヤRp14,第4キャリアCp14)を表している。これら右側の4本の縦線も、第3遊星歯車機構P13および第4遊星歯車機構P14における各回転要素間のギヤ比に応じた間隔を空けて平行に配置されている。そして、上記の左側の4本の縦線および右側の4本の縦線にそれぞれ直行し、“0”が記されている横線が、回転数が“0”である基線となっている。上記の各縦線上でこの基線からの長さを示す点が、各回転要素のそれぞれの回転数を表している。なお、直線Linは、入力軸3の回転数を示す横線である。
図5に示すように、第1速(1st)は、ブレーキB11、ブレーキB13、およびブレーキB14を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB12、クラッチD11、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この第1速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf102とリヤ変速部Rrの直線Lr101とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。第2サンギヤSp12に伝達されたトルクは、ブレーキB13が係合されていることにより、第2キャリアCp12よりも回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。この場合の第2リングギヤRp12の回転方向は、依然、入力軸3の回転方向と反対の回転方向である。
一方、第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。そして、第3リングギヤRp13に伝達されたトルクは、ブレーキB14が係合されていることにより、第3リングギヤRp13の回転方向と反対の方向に回転する第4キャリアCp14から出力される。すなわち、入力軸3と同じ方向に回転する第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、入力軸3の回転数に対して大幅に小さくなっている。したがって、駆動力源の回転数を大幅に減速したトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、変速比が最大となる第1速が設定される。
上記のように設定される第1速から後述する第2速へシフトアップする場合は、先ず、ブレーキB14の係合状態を維持しつつ、ブレーキB13が徐々に開放させられる。また、クラッチC13が徐々に係合させられる。ブレーキB13が開放され、クラッチC13が係合されることにより、第2キャリアCp12および第2サンギヤSp12の回転数が、入力軸3と反対の方向に回転している第1キャリアCp11の回転数に向けて徐々に引き上げられる。第2キャリアCp12および第2サンギヤSp12の回転数が入力軸3と反対の回転方向に徐々に引き上げられるのに伴い、第2リングギヤPp12およびそれに連結している第3リングギヤRp13の回転数も入力軸3と反対の回転方向に徐々に引き上げられる。ブレーキB14が係合されている状態で第3リングギヤRp13の回転数が入力軸3と反対の回転方向に引き上げられることにより、第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14の回転数が、入力軸3と同じ回転方向に徐々に引き上げられる。その後、第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14の回転数は、所定の時点で入力軸3の回転数に一致する。すなわち、クラッチD12によって係合させられる入力軸3の回転数と第3サンギヤSp13の回転数とが同期し、開放状態のクラッチD12を係合させることが可能な状態になる。その状態でクラッチD12が係合させられる。その後、ブレーキB14が開放させられるとともに、クラッチC13が完全に係合させられ、ブレーキB13が完全に開放させられる。それにより、第3リングギヤRp13が、入力軸3と反対の回転方向で、第1キャリアCp11の回転数と同じ回転数で回転する状態になり、第1速から第2速へのシフトアップが完了する。
なお、第2速から第1速へのシフトダウンは、上記の第1速から第2速へのシフトアップの場合と逆の手順で実施することができる。すなわち、クラッチC13、ブレーキB11、およびクラッチD12を係合させて第2速が設定されている状態から、先ず、クラッチC13が徐々に開放させられるとともに、ブレーキB13が徐々に係合させられる。また、ブレーキB14が係合させられる。ブレーキB14が係合した所定の時点でクラッチC13およびブレーキB13の動作が制御されていることにより、クラッチD12には負荷が掛からず、係合状態のクラッチD12を開放させることが可能な状態になっているその状態でクラッチD12が開放させられる。その後、ブレーキB14が係合させられるとともに、クラッチC13が完全に開放させられ、ブレーキB13が完全に係合させられる。それにより、第3リングギヤRp13が、入力軸3と反対の回転方向で、第1キャリアCp11の回転数よりも小さい第2リングギヤRp12の回転数と同じ回転数で回転する状態になり、第2速から第1速へのシフトダウンが完了する。
上記のように、第2速(2nd)は、クラッチC13、ブレーキB11、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC12、ブレーキB12、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第2速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf103とリヤ変速部Rrの直線Lr102とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。この場合、クラッチC13が係合されていることにより、第2遊星歯車機構P12の全体が一体となって回転する。したがって、第2サンギヤSp12に伝達されたトルクは、そのまま、第2遊星歯車機構P12を介してリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD12を介して第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13に入力軸3の回転方向と反対の方向に回転するトルクが入力されていることにより、回転数が大きく引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第1速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第1速よりも変速比が小さい第2速が設定される。
第3速(3rd)は、ブレーキB11、ブレーキB14、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB13、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第3速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf104とリヤ変速部Rrの直線Lr103とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。この場合、第2遊星歯車機構P12は、上記のように第2サンギヤSp12に第1キャリアCp11からのトルクが入力されるとともに、第2リングギヤRp12に、後述するようなリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13からのトルクが入力される。したがって、第2遊星歯車機構P12は、第2サンギヤSp12ならびに第2リングギヤRp12に入力されるトルクおよび各回転要素間のギヤ比に応じて差動回転する状態になる。
一方、クラッチD12を介して第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、ブレーキB14が係合して第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第2速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第2速よりも変速比が小さい第3速が設定される。なお、この場合の第3リングギヤRp13は、上記のように第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14の回転数が“0”に固定されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転し、その回転数が引き上げられている。そして、第3リングギヤRp13からフロント変速部Frの第2リングギヤRp12にトルクが伝達されている。
第4速(4th)は、ブレーキB11、ブレーキB13、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB14、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第4速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf102とリヤ変速部Rrの直線Lr104とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。第2サンギヤSp12に伝達されたトルクは、ブレーキB13が係合されていることにより、第2キャリアCp12よりも回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。この場合の第2リングギヤRp12の回転方向は、依然、入力軸3の回転方向と反対方向である。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD12を介して第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13に入力軸3の回転方向と反対の方向に回転するトルクが入力されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第3速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第3速よりも変速比が小さい第4速が設定される。
第5速(5th)は、ブレーキB12、ブレーキB13、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB14、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第5速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf105とリヤ変速部Rrの直線Lr105とによって示される。具体的には、ブレーキB12およびブレーキB13が共に係合されることにより、第2遊星歯車機構P12の各回転要素の回転数が全て“0”になる。それに伴って、第2遊星歯車機構P12の第2リングギヤRp12と連結されているリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13の回転数も“0”になる。また、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、上記のように、第3リングギヤRp13の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第4速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第4速よりも変速比が小さい第5速が設定される。
第6速(6th)は、クラッチC12、ブレーキB11、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第6速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf106とリヤ変速部Rrの直線Lr106とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。したがって、クラッチC12を介して第2キャリアCp12に入力されたトルクは、上記のように第2サンギヤSp12が入力軸3の回転方向と反対の方向に回転していることにより、回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD12を介して第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第5速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第5速よりも変速比が小さい第6速が設定される。
第7速(7rd)は、クラッチC12、ブレーキB12、およびクラッチD12を係合し、クラッチC11、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD11を開放することにより設定される。この第7速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf107および直線Lf108とリヤ変速部Rrの直線Lr107とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。ブレーキB12が係合されていることにより、第1キャリアCp11と共に、第2サンギヤSp12の回転数が“0”になる。そのため、クラッチC12を介して第2キャリアCp12に入力されたトルクは、第2サンギヤSp12の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD12を介して第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き下げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第6速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速したトルクが出力軸4に伝達されて、第6速よりも変速比が小さい第7速が設定される。
第8速(8th)は、クラッチC11およびクラッチC12を係合し、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB12、ブレーキB13、ブレーキB14を開放するとともに、クラッチD11もしくはクラッチD12のいずれか一方を係合することにより設定される。例えば、この第8速は、上記の第7速の状態からシフトアップする場合に、開放されているクラッチC11を係合するとともに、係合されているブレーキB12を開放することによって設定することができる。この場合、クラッチC12およびクラッチD12は、それぞれ係合されている状態が維持され、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD11は、それぞれ開放されている状態が維持される。あるいは、この第8速は、後述する第9速の状態からシフトダウンする場合に、開放されているクラッチC11を係合するとともに、係合されているブレーキB12を開放することによって設定することができる。この場合は、クラッチC12およびクラッチD11は、それぞれ係合されている状態が維持され、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD12は、それぞれ開放されている状態が維持される。
図4に示す構成の自動変速機10において、この第8速は、変速比が“1”になるいわゆる直結段である。この第8速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf109とリヤ変速部Rrの直線Lr108とによって示される。例えば、第1速から第7速までの減速段側から第8速へシフトアップする場合は、クラッチD11を開放した状態に維持するとともにクラッチD12を係合した状態に維持した状態で、第8速が設定される。この場合は、入力軸3からクラッチC11を介してフロント変速部Frの第2サンギヤSp12にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD12を介してリヤ変速部Rrの第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にトルクが入力される。入力軸3のトルクが第2サンギヤSp12と第2キャリアCp12とに同時に入力されることにより、第2遊星歯車機構P12の全ての回転要素が入力軸3と同じ回転数で回転する。すなわち、第2遊星歯車機構P12の全体が入力軸3と一体になって回転する。それに伴って、第1遊星歯車機構P11の全ての回転要素も入力軸3と同じ回転数で回転することになる。したがって、入力軸3からフロント変速部Frに入力されたトルクは、そのまま第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
なお、例えば、後述する第9速から第8速へ変速する場合には、クラッチD11を係合しかつクラッチD12を開放した状態で、第8速が設定される。この場合は、入力軸3からクラッチC11を介してフロント変速部Frの第2サンギヤSp12にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD11を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にトルクが入力される。
一方、リヤ変速部Rrでは、クラッチD11が係合されている場合には、第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にも入力軸3からのトルクが入力される。もしくは、クラッチD12が係合されている場合には、第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14にも入力軸3からのトルクが入力される。いずれの場合であっても、第3遊星歯車機構P13のいずれか2つの回転要素に、入力軸3のトルクが同時に入力される。そのため、第3遊星歯車機構P13の全ての回転要素が入力軸3と同じ回転数で回転する。それに伴って、第4遊星歯車機構P14の全ての回転要素も入力軸3と同じ回転数で回転することになる。すなわち、リヤ変速部Rrも全体が入力軸3と一体になって回転する。したがって、入力軸3のトルクがそのまま第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、入力軸3の回転数と同じであり、上記の第7速の場合における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数のままのトルクが出力軸4に伝達されて、第7速よりも変速比が小さく、かつ変速比が“1”である第8速が設定される。
第9速(9rd)は、クラッチC12、ブレーキB12、およびクラッチD11を係合し、クラッチC11、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この第9速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf107および直線Lf108とリヤ変速部Rrの直線Lr109とによって示される。具体的には、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD11を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にトルクが入力される。ブレーキB12が係合されていることにより、第1キャリアCp11と共に、第2サンギヤSp12の回転数が“0”になる。したがって、クラッチC12を介して第2キャリアCp12に入力されたトルクは、第2サンギヤSp12の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD11を介して第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第8速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第8速よりも変速比が小さい第9速が設定される。
第10速(10th)は、クラッチC12、ブレーキB11、およびクラッチD11を係合し、クラッチC11、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB13、ブレーキB14、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この第10速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf106とリヤ変速部Rrの直線Lr110とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。さらに、入力軸3からクラッチD11を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。したがって、クラッチC12を介して第2キャリアCp12に入力されたトルクは、上記のように第2サンギヤSp12が入力軸3の回転方向と反対の方向に回転していることにより、回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD11を介して第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13の回転数が入力軸3の回転数よりも小さいことにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第9速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第9速よりも変速比が小さい第10速が設定される。
第11速(11th)は、ブレーキB12、ブレーキB13、およびクラッチD11を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB11、ブレーキB14、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この第11速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf105とリヤ変速部Rrの直線Lr111とによって示される。具体的には、ブレーキB12およびブレーキB13が共に係合されることにより、第2遊星歯車機構P12の各回転要素の回転数が全て“0”になる。それに伴って、第2遊星歯車機構P12の第2リングギヤRp12と連結されているリヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13の回転数も“0”になる。
一方、入力軸3からクラッチD11を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にトルクが入力される。第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14に入力されたトルクは、上記のように、第3リングギヤRp13の回転数が“0”に固定されていることにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第10速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達されて、第10速よりも変速比が小さい第11速が設定される。
第12速(12th)は、ブレーキB11、ブレーキB13、およびクラッチD11を係合し、クラッチC11、クラッチC12、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB14、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この第12速の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf102とリヤ変速部Rrの直線Lr112とによって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチD11を介してリヤ変速部Rrの第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。第2サンギヤSp12に伝達されたトルクは、ブレーキB13が係合されていることにより、第2サンギヤSp12よりも回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。この場合の第2リングギヤRp12の回転方向は、依然、入力軸3の回転方向と反対方向である。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
一方、クラッチD11を介して第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14に入力されたトルクは、上記のように第3リングギヤRp13に入力軸3の回転方向と反対の方向に回転するトルクが入力されていることにより、回転数が引き上げられた状態の第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、上記の第11速における第4キャリアCp14の回転数よりも大きくなる。したがって、駆動力源の回転数を増速したトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、変速比が最小となる第12速が設定される。
図4に示す構成の自動変速機10では、第1速を除く第2速から第7速までの減速側の変速段と、第9速から第12速までの増速側の変速段とで、クラッチD11およびクラッチD12の係合状態が入れ替わっている。すなわち、第2速から第7速までの減速側の変速段では、クラッチD11を開放し、クラッチD12を係合することが必須になっている。それに対して、第9速から第12速までの増速側の変速段では、クラッチD11を係合し、クラッチD12を開放することが必須になっている。前述したクラッチD1およびクラッチD2と同様に、クラッチD11およびクラッチD12はドグクラッチによって構成されている。そのため、それらクラッチD11およびクラッチD12を係合もしくは開放する操作を行う場合には、クラッチD11およびクラッチD12により係合させる回転部材同士の回転数を同期させる必要がある。もしくは、クラッチD1およびクラッチD2を無負荷の状態にする必要がある。これに対してこの発明における自動変速機10は、第8速を設定した場合に、クラッチD11およびクラッチD12により係合させる回転部材同士の回転数が同期する、もしくは、クラッチD11およびクラッチD12がいずれも無負荷の状態になるように構成されている。
上記のように、この自動変速機10は、第8速で変速比が“1”となる直結段となるように構成されている。そのため、第8速を設定した状態では、第1遊星歯車機構P11、第2遊星歯車機構P12、第3遊星歯車機構P13、および第4遊星歯車機構P14の全てが、入力軸3と一体になって回転する。したがって、第8速を設定した状態では、クラッチD11によって選択的に入力軸3と連結される第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14も、いずれも入力軸3と同じ回転数で回転する。同様に、クラッチD12によって選択的に入力軸3と連結される第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14も、いずれも入力軸3と同じ回転数で回転する。
このように、この発明における自動変速機10は、第8速が、ドグクラッチであるクラッチD11およびクラッチD12をいずれも係合もしくは開放の状態を維持しつつ、それらドグクラッチD11,D12以外の他の係合機構(具体的にはクラッチC11およびブレーキB12)の係合もしくは開放の状態を切り替えることにより設定される。そして、その第8速で、クラッチD11で係合する回転部材同士の回転数、およびクラッチD12で係合する回転部材同士の回転数が、全て一致するように構成されている。別の言い方をすると、この発明における自動変速機10では、ドグクラッチであるクラッチD11およびクラッチD12が、図6に示すような各遊星歯車機構P11,P12,P13,P14についての共線図において回転数が同一の1本の線(すなわち入力軸3の回転数を表す直線Lin)に示されるように配置されている。この自動変速機10で設定する第8速は、上述の通り、変速比が“1”となる変速段である。また、この自動変速機1で設定する第8速は、変速比がより大きい第2速から第7速までの減速側の変速段と、変速比がより小さい第9速から第12速までの増速側の変速段との間の変速段である。
したがって、この発明における自動変速機10では、第8速を設定することにより、クラッチD11およびクラッチD12によって連結する各回転部材同士の回転数が全て一致する。そのため、クラッチD11およびクラッチD12のうち、例えば、開放しているいずれか一方のクラッチD11(もしくはD12)においては、その後に係合させる2つの回転部材の回転数が同期した状態になる。また、係合しているいずれか一方のクラッチD12(もしくはD11)においては、開放している他方のクラッチD11(もしくはD12)を係合させて、一旦クラッチD11およびクラッチD12の両方を係合させた状態にすることにより、その後に開放させる2つの回転部材の間に負荷が掛からない状態になる。したがって、第8速を設定することにより、クラッチD11およびクラッチD12は、いずれも、係合もしくは開放させる操作が可能な状態になる。その状態で、クラッチD11を係合し、クラッチD12を開放することにより、第9速から第12速までの増速側の変速段を設定することが可能な状態になる。あるいは、クラッチD11を開放し、クラッチD12を係合することにより、第2速から第7速までの減速側の変速段を設定することが可能な状態になる。そのため、この発明における自動変速機10によれば、例えばシンクロメッシュ機構などの特別な装置や機構を設けることなく、ドグクラッチであるクラッチD11およびクラッチD12によって連結する回転部材の回転数を一致させることができる。あるいは、そのためだけの特別な制御を行うことなくドグクラッチによって連結する回転部材の回転数を一致させることができる。また、クラッチD11およびクラッチD12以外の他の係合機構を、上記のようなクラッチD11およびクラッチD12の操作のためだけに係合させることがないので、それら他の係合機構の耐久性の低下を抑制することができる。
上記のようにして設定される第1速から第12速までの前進段に対して、後進段(Rev)は、クラッチC12、ブレーキB11、およびブレーキB14を係合し、クラッチC11、クラッチC13、ブレーキB12、ブレーキB13、クラッチD11、およびクラッチD12を開放することにより設定される。この後進段の状態は、図6の共線図においては、フロント変速部Frの直線Lf101および直線Lf106とリヤ変速部Rrの直線Lr113によって示される。具体的には、入力軸3からフロント変速部Frの第1サンギヤSp11にトルクが入力される。また、入力軸3からクラッチC12を介してフロント変速部Frの第2キャリアCp12にトルクが入力される。第1サンギヤSp11に入力されたトルクは、ブレーキB11が係合されていることにより、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第1キャリアCp11から出力される。第1キャリアCp11から出力されたトルクは、フロント変速部Frの第2サンギヤSp12に伝達される。したがって、クラッチC12を介して第2キャリアCp12に入力されたトルクは、上記のように第2サンギヤSp12が入力軸3の回転方向と反対の方向に回転していることにより、回転数が引き下げられた状態の第2リングギヤRp12から出力される。第2リングギヤRp12から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達される。
リヤ変速部Rrの第3リングギヤRp13に伝達されたトルクは、ブレーキB14が係合されていることにより、第3リングギヤRp13の回転方向と反対の方向に回転する第4キャリアCp14から出力される。すなわち、入力軸3の回転方向と反対の方向に回転する第4キャリアCp14から出力される。そして、出力軸4に伝達される。この場合の第4キャリアCp14の回転数は、入力軸3の回転数よりも小さくなる。したがって、駆動力源の回転数を減速し、かつ入力軸3の回転方向と反対の方向に回転するトルクが出力軸4に伝達される。すなわち、後進段が設定される。
なお、上記の後進段は、いずれかの前進段が設定されている状態から、一旦、自動変速機1をニュートラルの状態にした後に設定される。もしくは、自動変速機1でニュートラルが設定されている状態から後進段が設定される。自動変速機1のニュートラルの状態は、クラッチC11,C12,C13,D11,D12、およびブレーキB11,B12,B13,B14を全て開放することにより設定することができる。したがって、後進段を設定する際には、クラッチD11およびクラッチD12は、一旦、無負荷の状態になる。そのため、後進段を設定するために、ドグクラッチによって構成されているクラッチD11もしくはクラッチD12を開放することは可能である。
図7から図12に、この発明を適用した自動変速機のギヤトレーンの更に他の例を示してある。具体的には、図1および図4にギヤトレーンにおけるリヤ変速部Rrの他の構成例を示してある。図1に示す自動変速機1および図4に示す自動変速機10のリヤ変速部Rrは、いずれも、シングルピニオン形の遊星歯車機構により形成された、第3遊星歯車機構P3と第4遊星歯車機構P4との対、もしくは、第3遊星歯車機構P13と第4遊星歯車機構P14との対によって構成されている。また、第3キャリアCp3と第4リングギヤRp4とが連結されている。もしくは、第3キャリアCp13と第4リングギヤRp14とが連結されている。そして、クラッチD1によって入力軸3と第3キャリアCp3および第4リングギヤRp4とが選択的に連結されるように構成されている。また、クラッチD2によって入力軸3と第3サンギヤSp3および第4サンギヤSp4とが選択的に連結されるように構成されている。もしくは、クラッチD11によって入力軸3と第3キャリアCp13および第4リングギヤRp14とが選択的に連結されるように構成されている。また、クラッチD12によって入力軸3と第3サンギヤSp13および第4サンギヤSp14とが選択的に連結されるように構成されている。
これに対して、この発明における自動変速機のリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の遊星歯車機構の他にダブルピニオン形の遊星歯車機構を用いることができる。また、リヤ変速部Rrを構成する2つの遊星歯車機構の連結関係を変更することができる。また、クラッチD1,D11およびクラッチD2,D12によって、それぞれ、入力軸3と選択的に連結する回転要素を変更することができる。
例えば、図7に示すリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の第3遊星歯車機構P23と、シングルピニオン形の第4遊星歯車機構P24とから構成されている。第3遊星歯車機構P23の第3キャリアCp23と第4遊星歯車機構P24の第4サンギヤSp24とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P23の第3サンギヤSp23と第4遊星歯車機構P24の第4キャリアCp24とが連結されている。第3サンギヤSp23と第4キャリアCp24には、それら第3サンギヤSp23および第4キャリアCp24の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P23の第3リングギヤRp23が、図1に示すフロント変速部Frの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp12に連結されている。第4遊星歯車機構P24の第4リングギヤRp24が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P23との間に、入力軸3と第3キャリアCp23および第4サンギヤSp24とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P24との間に、入力軸3と第3サンギヤSp23および第4キャリアCp24とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
図8に示すリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の第3遊星歯車機構P33と、シングルピニオン形の第4遊星歯車機構P34とから構成されている。第3遊星歯車機構P33の第3キャリアCp33と第4遊星歯車機構P34の第4リングギヤRp34とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P33の第3リングギヤRp33と第4遊星歯車機構P34の第4キャリアCp34とが連結されている。第3キャリアCp33と第4リングギヤRp34には、それら第3キャリアCp33および第4リングギヤRp34の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P33の第3サンギヤSp33が、図1に示すフロント変速部Frの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp14に連結されている。第4遊星歯車機構P34の第4キャリアCp34および第3遊星歯車機構P33の第3リングギヤRp33が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P33との間に、入力軸3と第3キャリアCp33および第4リングギヤRp34とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P34との間に、入力軸3と第4サンギヤSp34とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
図9に示すリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の第3遊星歯車機構P43と、シングルピニオン形の第4遊星歯車機構P44とから構成されている。第3遊星歯車機構P43の第3キャリアCp43と第4遊星歯車機構P44の第4リングギヤRp44とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P43の第3サンギヤSp43と第4遊星歯車機構P44の第4キャリアCp44とが連結されている。第3キャリアCp43と第4リングギヤRp44には、それら第3キャリアCp43および第4リングギヤRp44の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P43の第3リングギヤRp43が、図1に示すフロント変速部Frの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp12に連結されている。第4遊星歯車機構P44の第4キャリアCp44が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P43との間に、入力軸3と第3キャリアCp43および第4リングギヤRp44とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P44との間に、入力軸3と第4サンギヤSp44とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
図10に示すリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の第3遊星歯車機構P53と、ダブルピニオン形の第4遊星歯車機構P54とから構成されている。第3遊星歯車機構P53の第3キャリアCp53と第4遊星歯車機構P54の第4サンギヤSp54とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P53の第3リングギヤRp53と第4遊星歯車機構P54の第4リングギヤRp54とが連結されている。第3キャリアCp53と第4サンギヤSp54には、それら第3キャリアCp53および第4サンギヤSp54の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P53の第3サンギヤSp53が、図1に示すフロント変速部Frの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp12に連結されている。第4遊星歯車機構P54の第4リングギヤRp54が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P53との間に、入力軸3と第3キャリアCp53および第4サンギヤSp54とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P54との間に、入力軸3と第4キャリアCp54とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
図11に示すリヤ変速部Rrは、シングルピニオン形の第3遊星歯車機構P63と、ダブルピニオン形の第4遊星歯車機構P64とから構成されている。第3遊星歯車機構P63の第3キャリアCp63と第4遊星歯車機構P64の第4サンギヤSp64とが連結されている。また、第3遊星歯車機構P63の第3サンギヤSp63と第4遊星歯車機構P64の第4リングギヤRp64とが連結されている。第3キャリアCp63と第4サンギヤSp64には、それら第3キャリアCp63および第4サンギヤSp64の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P63の第3リングギヤRp63が、図1に示すフロント変速部Frの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp12に連結されている。第4遊星歯車機構P64の第4リングギヤRp64が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P63との間に、入力軸3と第3キャリアCp63および第4サンギヤSp64とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P64との間に、入力軸3と第4キャリアCp64とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
図12に示すリヤ変速部Rrは、ダブルピニオン形の第3遊星歯車機構P73と、シングルピニオン形の第4遊星歯車機構P74とから構成されている。第3遊星歯車機構P73の第3キャリアCp73と第4遊星歯車機構P74の第4サンギヤSp74とが連結されている。第3遊星歯車機構P73の第3リングギヤRp73には、第3リングギヤRp73の回転を選択的に止めるブレーキB3もしくはブレーキB14が設けられている。第3遊星歯車機構P73の第3キャリアCp73が、図1に示すフロント側歯車セットFrの第2キャリアCp2、もしくは、図4に示すフロント変速部Frの第2リングギヤRp12に連結されている。第4遊星歯車機構P74の第4リングギヤRp74が出力軸4に連結されている。そして、入力軸3と第3遊星歯車機構P73との間に、入力軸3と第3サンギヤSp73とを選択的に連結するクラッチD1もしくはクラッチD11が設けられている。また、入力軸3と第4遊星歯車機構P74との間に、入力軸3と第4キャリアCp74とを選択的に連結するクラッチD2もしくはクラッチD12が設けられている。この場合も、各クラッチD1,D2もしくはD11,D12は、いずれも、入力軸3上に、もしくは入力軸3と同一の回転軸上に配置されている。
なお、上述した具体例では、この発明における第1係合機構および第2係合機構が、共にドグクラッチで構成された例を示しているが、この発明の第1係合機構および第2係合機構は、少なくともいずれか一方が、ドグクラッチによって構成されていればよい。すなわち、図13に示すように、上述の図1に示す例のクラッチD1の代わりに、摩擦クラッチによって構成されたクラッチC21を設けてもよい。あるいは、図14に示すように、上述の図4に示す例のクラッチD12の代わりに、摩擦クラッチによって構成されたクラッチC22を設けてもよい。
また、上述した具体例では、この発明における第1係合機構および第2係合機構によって選択的に係合させる第1回転部材(具体例では、入力軸3)、第2回転部材(図1に示す例では第3キャリアCp3、図4に示す例では第3キャリアCp13)、および第3回転部材(図1に示す例では第3サンギヤSp3、図4に示す例では第3サンギヤSp13)が、この発明における中間変速段(図1に示す例では第7速、図4に示す例では第8速)を設定することにより、それら第1回転部材の回転数、第2回転部材の回転数、および第3回転部材の回転数が全て入力軸3の回転数に一致する構成を示している。しかしながら、この発明における車両用自動変速機では、中間変速段を設定した場合に、必ずしも、第1回転部材の回転数、第2回転部材の回転数、および第3回転部材の回転数が全て入力軸の回転数に一致していなくともよい。すなわち、中間変速段が、必ずしも変速比が“1”となる変速段ではなくともよい。例えば、図15に示すように、中間変速段を設定した状態で、変速比が“1”よりも大きい減速段を設定する構成であってもよい。なお、図15は、この発明を適用した車両用自動変速機の動作原理を説明するための共線図である。
具体的には、この図15の共線図において、左側の3本の縦線がフロント変速部Frを表し、右側の4本の縦線がリヤ変速部Frを表している。“0”が記されている横線は、回転数が“0”となる基線である。直線Linは、入力軸の回転数を示す横線である。この図15で説明する車両用自動変速機は、フロント変速部Frに、互いに差動回転する第1要素101、第2要素102、および第3要素103が設けられている。また、フロント変速部Frには、入力軸と第3要素とを選択的に連結するクラッチC101、入力軸と第2要素102とを選択的に連結するクラッチC102、および、入力軸よりも低い回転数で回転する所定の回転部材と第2要素102とを選択的に連結するクラッチC103が設けられている。上記の各クラッチC101,C102,C103は、いずれも、相対回転する回転部材同士を摩擦力によって係合させる摩擦クラッチによって構成されている。このフロント変速部Frの第1要素101は、回転が不可能なように固定されている。
リヤ変速部Rrに、互いに差動回転する第1要素201、第2要素202、第3要素203、および第4要素204が設けられている。また、リヤ変速部Rrには、第3要素203の回転を選択的に止めるブレーキB101、および、入力軸と第1要素201とを選択的に連結するクラッチD101が設けられている。クラッチD101は、相対回転する回転部材同士を互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグクラッチによって構成されている。また、ブレーキB101は、回転部材と固定部材とを摩擦力によって係合させる摩擦ブレーキによって構成されている。なお、このブレーキB101は、回転部材と固定部材とを互いに噛み合わせて機械的に係合させるドグブレーキによって構成することもできる。このリヤ変速部Rrの第2要素202と、上記のフロント変速部Frの第3要素103とが連結されている。そして、このリヤ変速部Rrの第4要素204が出力軸4に連結されている。
この図15で示す車両用自動変速機では、フロント変速部FrのクラッチC101を係合させ、クラッチC102およびクラッチC103をいずれも開放するとともに、リヤ変速部RrのブレーキB101を係合させ、クラッチD101を開放させることにより、変速比が最大になる第1速(1st)が設定される。この第1速では、クラッチC101が係合されていることにより、入力軸からフロント変速部Frの第3要素103およびリヤ変速部Rrの第2要素202にトルクが入力される。リヤ変速部Rrにおいては、ブレーキB101が係合され、クラッチD101が開放されていることから、第2要素202に伝達されたトルクが、回転数が大幅に引き下げられた状態の第4要素204から出力される。
上記の第1速の状態から、フロント変速部FrのクラッチC101およびクラッチC102の係合もしくは開放の状態を切り替えること、すなわち、クラッチC101を解放し、クラッチC102を係合することにより、第2速(2nd)が設定される。この第2速では、クラッチC101が解放され、クラッチC102が係合されることにより、第2要素102に入力されたトルクが、回転数が引き上げられた状態の第3要素103から出力される。第3要素103から出力されたトルクは、リヤ変速部Rrの第2要素202に伝達される。リヤ変速部Rrにおいては、ブレーキB101が係合され、クラッチD101が開放されていて、入力軸よりも回転数が高いトルクが第2要素202に入力されていることから、第2要素202に伝達されたトルクが、回転数が引き下げられた状態の第4要素204から出力される。この場合の第4要素204の回転数は、上記の第1速を設定した場合の第4要素204の回転数よりも高くなる。したがって、第1速よりも変速比が小さい第2速が設定される。
そして、この図15で示す車両用自動変速機は、この第2速を設定した状態で、ドグクラッチであるクラッチD101によって出力軸4に連結される第1要素201の回転数と出力軸4の回転数とが一致するように構成されている。すなわち、この図15で示す車両用自動変速機は、この第2速を設定した状態では、クラッチD101で係合させる2つの回転部材が回転同期した状態になる、もしくは、クラッチD101で係合している2つの回転部材間に負荷が掛からない状態になるように構成されている。したがって、この第2速を設定することにより、ドグクラッチであるクラッチD101の係合および開放の操作が可能な状態になるようになる。この第2速では、クラッチD101は係合もしくは開放のいずれの状態であってもよい。
上記の第2速の状態から、フロント変速部FrのクラッチC101を解放し、クラッチC102を係合するとともに、クラッチD101を係合させ、ブレーキB101を開放させることにより、第3速(3rd)が設定される。この第3速では、クラッチC102が解放され、クラッチC101が係合されることにより、第3要素103に入力されたトルクが、そのまま、リヤ変速部Rrの第2要素202に伝達される。リヤ変速部Rrにおいては、クラッチD101が係合されていて、入力軸と同じ回転数のトルクが第2要素202に入力されていることから、リヤ変速部Rrの全体が一体となって回転する状態になる。したがって、第2要素202に伝達されたトルクが、そのまま第4要素204から出力される。すなわち、第2速よりも変速比が小さく、かつ変速比が“1”になるいわゆる直結段が設定される。
上記の第3速の状態から、フロント変速部FrのクラッチC101を解放し、クラッチC102を係合するとともに、クラッチC103を係合することにより、第4速(4th)が設定される。この第4速では、クラッチC103が係合され、クラッチC101およびクラッチC102が共に開放されることにより、フロント変速部Frには入力軸からのトルクは入力されず、また、第3要素103が入力軸よりも低い回転数で回転する状態になる。一方、リヤ変速部Rrにおいては、クラッチD101が係合されていることから、入力軸からのトルクが第1要素201に入力される。また、クラッチD101が係合され、ブレーキB101が開放されていて、さらに、フロント変速部Frの第2要素102と共に、第2要素202が入力軸よりも低い回転数で回転する状態になっていることから、第1要素201に伝達されたトルクが、回転数が引き上げられた状態の第4要素204から出力される。すなわち、この場合の第4要素204の回転数は、上記の第3速を設定した場合の第4要素204の回転数よりも高くなる。したがって、第3速よりも変速比が小さい第4速が設定される。
上記のように、この図15で示す構成の車両用自動変速機は、この発明の中間変速段に相当する第2速を設定することにより、ドグクラッチであるクラッチD101によって連結される2つの回転部材の回転数が同期する、もしくは、それら2つの回転部材間に負荷が掛からない状態になる。すなわち、ドグクラッチ以外の他の係合機構(図15に示す例では、クラッチC101およびクラッチC102)の動作を制御することにより、クラッチD101すなわちドグクラッチを係合および開放の操作が可能な状態にすることができる。したがって、ドグクラッチの係合および開放の状態を容易に切り替えることができる。そのため、第2速よりも変速比が大きい第1速、および、第2速よりも変速比が小さい第3速ならびに第4速の複数の変速段を適切に設定することができる。