JP6163123B2 - イオン交換性ポリマー、高分子機能性膜および高分子機能性膜の製造方法 - Google Patents
イオン交換性ポリマー、高分子機能性膜および高分子機能性膜の製造方法 Download PDFInfo
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Description
アクリルアミド系ポリマーは、アクリル酸エステル系ポリマーと比較すると塩基などに対する安定性は高く、本発明者らは、この優位性をさらに高めることで、イオン交換膜の性能を一段と優れたものにする検討を開始した。一方で、イオン交換膜の性能を高めるためには、選択透過性を高く維持して、含水率、膜抵抗、透水率のいずれも低下させることが重要であることも明らかになった。
このことから、アクリルアミド系ポリマーからなるイオン交換膜を含めた高分子機能性の性能をさらにレベルアップさせるため、本発明は、透水率、膜抵抗およびイオンの選択透過性に優れ、かつ、これらの性質の経時安定性に優れるイオン交換性ポリマー、該イオン交換性ポリマーからなる高分子機能性膜(本願明細書において、高分子機能性膜を単に「膜」ということもある。)およびその製造方法を提供することを課題とする。
このため、アクリルアミド系イオンポリマーの酸化に対する安定性を高め、しかも仮に架橋部分の結合が切断されても架橋が維持できるような化学構造の検討を種々行った。
この結果、アクリルアミドの窒素原子と第4級の窒素原子環構成原子に組み込んだ特定の構造とすることで、上記の課題が解決できることがわかった。
従って、本発明の課題は、以下の手段で達成された。
<2>一般式(1)で表される単位構造が、下記一般式(2)で表される単位構造である<1>に記載のイオン交換性ポリマー。
<3>一般式(1)または(2)で表される単位構造の総含有率が10質量%以上である<1>または<2>に記載のイオン交換性ポリマー。
<4>下記一般式(3)で表される化合物を含有する組成物を重合硬化反応させてなるイオン交換性ポリマー。
<5>一般式(3)で表わされる化合物が、下記一般式(4)で表される化合物である<4>に記載のイオン交換性ポリマー。
<6>一般式(3)または(4)で表される化合物を、全固形分質量において10質量%以上含む組成物を重合硬化反応させてなる<4>または<5>に記載のイオン交換性ポリマー。
<7>組成物に活性放射線を照射することにより形成されてなる<4>〜<6>のいずれかに記載のイオン交換性ポリマー。
<8>前記<1>〜<7>のいずれかに記載のイオン交換性ポリマーを含む高分子機能性膜。
<9>支持体を有する<8>に記載の高分子機能性膜。
<10>支持体が織布または不織布である<9>に記載の高分子機能性膜。
<11>一般式(3)または(4)で表される化合物を含む組成物を支持体に含浸させた後に重合硬化反応させてなる<9>または<10>に記載の高分子機能性膜。
<12>高分子機能性膜が、イオン交換膜、逆浸透膜、正浸透膜またはガス分離膜である<8>〜<11>のいずれかに記載の高分子機能性膜。
<13>少なくとも1種の下記一般式(3)で表される化合物を含む組成物を重合硬化反応させる高分子機能性膜の製造方法。
<14>組成物に活性放射線を照射する<13>に記載の高分子機能性膜の製造方法。
<15>組成物を支持体に含浸させた後に重合硬化反応させる<13>または<14>に記載の高分子機能性膜の製造方法。
また、各一般式において、特に断りがない限り、複数存在する同一符号の基がある場合、これらは互いに同一であっても異なってもよく、同じく、複数の部分構造の繰り返しがある場合は、これらの繰り返しが同一の繰り返しであるもの、または、規定する範囲で異なった繰り返しの混合であるものの両方を意味するものである。
さらに、各一般式における二重結合の置換様式である幾何異性体は、表示の都合上、異性体の一方を記載したとしても、特段の断りがない限り、E体であってもZ体であっても、これらの混合物であっても構わない。
<一般式(1)で表される単位構造を含むイオン交換性ポリマー>
本発明のイオン交換性ポリマーは、下記一般式(1)で表される単位構造を含む。
2価の連結基としては、連結基の結合手部分が炭素原子(例えば、アルキレンまたはアリーレンの炭素原子)であって、アルキレン基またはアリーレン基、さらにアルキレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−C(=O)−、−N(Ra)−から選択される基から組み合わされた基が好ましい。ここで、Raは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
また、アリーレン基は、炭素数が6〜12が好ましく、6〜8がより好ましく、6が特に好ましい。該アリーレン基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、後述の置換基群αから選択される任意の置換基が挙げられる。
これらの組み合わされた基としては、アルキレン−アリーレン基、アルキレン−アリーレン−アルキレン基、アルキレン−O−アルキレン基、アルキレン−S−アルキレン基、アルキレン−SO−アルキレン基、アルキレン−SO2−アルキレン基、アルキレン−N(Ra)−アルキレン基、アルキレン−C(=O)−アルキレン基、アルキレン−C(=O)−N(Ra)−アルキレン基、アルキレン−O−アリーレン−O−アルキレン基、アルキレン−O−アリーレン−O−アルキレン基、アルキレン−S−アリーレン−S−アルキレン基、アルキレン−O−アリーレン−アルキレン−アリーレン−O−アルキレン基などが挙げられる。
ただし、アルキレン基のみである場合や「アルキレン」に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−N(Ra)−のヘテロ原子が結合する場合、同一炭素原子にヘテロ原子が置換しないアルキレン基(例えば1,2−エチレン)が好ましく、炭素数は2〜10が好ましく、2〜4がより好ましく、2がさらに好ましい。
一方、「アリーレン」におけるアリーレン基はフェニレン基が好ましく、1,3−フェニレンまたは1,4−フェニレンが好ましい。
また、3価のアリール基(アリーントリイル基)は、炭素数が6〜12が好ましく、6〜8がより好ましく、6が特に好ましい。該アリーントリイル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、後述の置換基群αから選択される任意の置換基が挙げられる。
これらの組み合わされた基としては、アリーントリ(アルキレン)基、N,N,N−トリ(アルキレン)基などが挙げられる。
ただし、2価もしくは3価のアルキル基のみである場合や2価もしくは3価の「アルキル」に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−N(Ra)−のヘテロ原子が結合する場合、同一炭素原子にヘテロ原子が置換しないアルキル基(例えば、1,2−エチレン、1,2,3−プロパントリイル)が好ましく、炭素数は2〜10が好ましく、2〜4がより好ましい。
一方、「2価もしくは3価のアリール」におけるアリール基は、フェニレン、ベンゼントリイルが好ましく、1,3,5−ベンゼントリイルがより好ましい。
L2とL3で形成される環は、例えば、ピペラジン環またはホモピペラジン環が好ましい。
R1およびR2におけるアリール基は、炭素数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。アリール基は置換基を有してもよく、該置換基としては、後述の置換基群αから選択される任意の置換基が挙げられる。アリール基は、フェニル基が好ましい。
R2は、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
なお、本発明においては、複数のR1が互いに結合しない場合が好ましい。
有機アニオンの具体例としては、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン、アルキルもしくはアリールカルボン酸アニオンが挙げられ、例えば、メタンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、酢酸アニオンが挙げられる。
無機アニオンとしてはハロゲンアニオン、硫酸ジアニオン、リン酸アニオンが挙げられ、ハロゲンアニオンが好ましい。ハロゲンアニオンのなかでも塩素アニオン、臭素アニオンが好ましい。
置換基群αは、以下の置換基からなる置換基の群である。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリ−ルアミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
なお、本発明において、1つの構造部位に複数の置換基があるときには、それらの置換基は互いに連結して環を形成していたり、上記構造部位の一部または全部と縮環して芳香族環もしくは不飽和複素環を形成していたりしてもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表される単位構造が、下記一般式(2)で表される単位構造であることが好ましい。
なお、R5とR6で形成される脂肪族ヘテロ環は、一般式(1)における複数のR1が互いに結合して形成する脂肪族ヘテロ環と同義であり、好ましい範囲も同じである。
本発明のイオン交換性ポリマーは、一般式(1)または(2)で表される単位構造の総含有率〔すなわち、イオン交換性ポリマーを形成する重合性化合物の全質量に対する一般式(1)または(2)で表される単位構造の含有率〕は10質量%以上が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、60〜100質量%が特に好ましい。
本発明の前記一般式(1)で表される単位構造を含むイオン交換性ポリマーは、下記一般式(3)で表される化合物を含有する組成物を重合硬化反応させてなることが好ましい。一般式(3)で表される化合物は、イオン性基と架橋性基を併せ持つチャージドクロスリンカーである。なお、該組成物は、以後、高分子機能性膜形成用組成物とも称し、含有しうる他の素材は、以後、説明する。
本発明におけるイオン交換性ポリマーを形成するための組成物は、イオン交換性ポリマーを形成する重合性化合物の全固形分質量に対して一般式(3)で表される化合物を10質量%以上含むことが好ましく、20〜100質量%がより好ましく、30〜100質量%がさらに好ましく、60〜100質量%が特に好ましい。
上記好ましい範囲内であることで、所望の硬化性、pH耐性、機械強度、柔軟性を満たすイオン交換性ポリマーが得られる。
本発明の高分子機能性膜は、イオン交換、逆浸透、正浸透、ガス分離等を行うために用いることができる。以下、本発明の好ましい実施態様について、前記高分子機能性膜がイオン交換膜としての機能を有する場合を例に挙げて説明する。
本発明の高分子機能性膜の厚さは、支持体を有する場合は支持体を含めて、30〜150μmが好ましく、50〜130μmがより好ましく、60〜110μmが特に好ましい。
イオン交換容量は、中垣正幸/編,膜学実験法,194頁,喜多見書房(1984年)(ISBN−978−4−906126−09−5)に記載の方法で測定できる。
含水率(%)は、12時間以上0.5M NaCl水溶液に浸漬して膜の質量(WS)と乾燥膜の質量(Wi)を測定し、下記式で求めることができる。
本発明では、20〜50%が好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、前記一般式(3)で表される重合性化合物を必須成分として含有し、必要に応じてさらに、単官能重合性化合物(好ましくは下記一般式(A)〜(C)で表される単官能重合性化合物)、重合開始剤、重合禁止剤、溶媒を含有する組成物(以下、「高分子機能性膜形成用組成物」とも称する。)を重合硬化反応させて製造する。本発明における重合硬化反応は、紫外線もしくは電子線などの活性放射線照射による重合反応であることが好ましい。すなわち、これらを含有する高分子機能性膜形成用組成物に活性放射線を照射して重合することで、該高分子機能性膜形成用組成物が重合硬化反応し、膜が形成される。
本発明においては、特に高分子膜に機能を付与し、高分子機能性膜とするために、単官能重合性化合物を使用することが好ましい。
単官能重合性化合物は、部分構造もしくは置換基に解離基、アニオン基、カチオン基のような極性の置換基を有することが好ましく、なかでもカチオン基としてはオニオ基(アンモニオ基、ピリジニオ基、スルホニオ基等)が好ましい。
単官能重合性化合物は、下記一般式(A)〜(C)のいずれかで表される単官能重合性化合物が好ましい。
下記一般式(A)で表される単官能重合性化合物および一般式(B)で表される単官能重合性化合物は、アンモニオ基を有する。
RA1は、なかでも水素原子またはメチル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
Raは、水素原子およびアルキル基のうち、水素原子が好ましい。
RB1〜RB3におけるアリール基は、炭素数は6〜12が好ましく、6〜9がより好ましく、6が特に好ましい。
RB1〜RB3は、なかでもアルキル基が好ましい。
RB1〜RB3におけるアルキル基、アリール基は置換基を有してもよく、該置換基としては、RA1におけるアルキル基が有してもよい置換基が挙げられる。
置換アルキル基は、ベンジル基が好ましい。
ZA1は−O−または−NRa−を表すが、−NRa−が好ましい。
XA1−における脂肪族もしくは芳香族カルボン酸イオンは、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、ブタン酸イオン、安息香酸イオン等が挙げられる。
XA1−における脂肪族もしくは芳香族カルボン酸イオンは、脂肪族カルボン酸イオンが好ましく、特に酢酸イオンが好ましい。
XA1−は塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、酢酸イオンが好ましい。
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、下記一般式(B)で表される単官能重合性化合物を含んでも良い。
本発明における高分子機能性膜形成用組成物は、下記一般式(C)で表される多官能重合性化合物を含んでもよい。
RD1におけるアルキル基は、直鎖もしくは分岐のアルキル基で、炭素数は1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、n−デシル、n−オクタデシルが挙げられる。
RD1におけるにおけるアルキル基が置換基を有する場合、アルキル基部分の炭素数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
L11におけるアルキレン基はメチレンが好ましい。アルキレン基は置換基を有してもよく、該置換基としては、前述の置換基群αから選択される任意の置換基が挙げられる。
本発明で使用する高分子機能性膜形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤の中でも、本発明においては、活性放射線照射で重合させることが可能な光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等が挙げられる。
ここで、重合開始剤が水溶性であることは、25℃において蒸留水に0.1質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の光重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することがさらに好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
本発明においては、重合禁止剤を含むことも好ましい。
重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、アミン化合物、メルカプト化合物などが挙げられる。
フェノール化合物の具体例としては、ヒンダードフェノール(オルト位にt−ブチル基を有するフェノールで、代表的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる)、ビスフェノールが挙げられる。ハイドロキノン化合物の具体例としては、モノメチルエーテルハイドロキノンが挙げられる。また、アミン化合物の具体例としては、N−ニトロソ―N−フェニルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。
なお、これらの重合禁止剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、高分子機能性膜形成用組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部がさらに好ましい。
本発明で使用する高分子機能性膜形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。高分子機能性膜形成用組成物中の溶媒の含有量は、全高分子機能性膜形成用組成物に対し、5〜35質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましく、10〜27質量%がさらに好ましい。
溶媒を含むことで、重合硬化反応が、均一にしかもスムーズに進行する。また、多孔質支持体へ高分子機能性膜形成用組成物の含浸させる場合に含浸がスムーズに進行する。
水溶性溶媒としては、特に、アルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒であるエーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、有機リン系溶媒が好ましい。
とりわけ良好な機械的強度を有する本発明の膜を提供するために、多くの技術を用いることができる。例えば、膜の補強材料として支持体を用いることができ、好ましくは多孔質支持体を使用することができる。この多孔質支持体は、前記高分子機能性膜形成用組成物を塗布およびまたは含浸させた後、重合硬化反応させることにより膜の一部を構成することができる。
以下、本発明の高分子機能性膜の製造方法の一例を詳細に説明する。
本発明の高分子機能性膜は、固定された支持体を用いてバッチ式で調製(バッチ方式)することが可能であるが、移動する支持体を用いて連続式で膜を調製(連続方式)することもできる。支持体は、連続的に巻き戻されるロール形状でもよい。なお、連続方式の場合、連続的に動かされるベルト上に支持体を載せ、高分子機能性膜形成用組成物である塗布液の連続的な塗布と重合硬化して膜を形成する工程を連続して行うことができる。なお、塗布工程と膜形成工程の一方のみを連続的に行ってもよい。
このような仮支持体は、物質透過を考慮する必要がなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやアルミ板等の金属板を含め、膜形成のために固定できるものであれば、どのようなものでも構わない。
また、高分子機能性膜形成用組成物を多孔質支持体に浸漬させ、多孔質支持体以外の支持体を用いずに重合硬化させることもできる。
なお、前記(ii)において、加熱は活性放射線照射と同時に行ってもよく、また、活性放射線照射により形成後の膜に対して行なってもよい。
また、工程(i)では、高分子機能性膜形成用組成物を支持体に含浸させることが好ましい。
前記製造ユニットでは、前記組成物塗布部は照射源に対し上流の位置に設け、照射源は複合膜収集部に対し上流の位置に置かれる。
高速塗布機で塗布する際に十分な流動性を有するために、本発明で使用する高分子機能性膜形成用組成物の35℃での粘度は、4000mPa・s未満が好ましく、1〜1000mPa・sがより好ましく、1〜500mPa.sが最も好ましい。スライドコーティングの場合、35℃での粘度は1〜100mPa・sが好ましい。
重合硬化の活性放射線照射時間は、好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に好ましくは3秒未満、最も好ましくは2秒未満である。連続法では照射を連続的に行い、高分子機能性膜形成用組成物が照射ビームを通過して移動する速度を考慮して、重合硬化反応時間を決める。
(モノマー(M−1)の合成)
下記合成スキームでモノマー(M−1)を合成した。
下記合成スキームでモノマー(M−2)を合成した。
特開昭61−282370号公報の実施例1に記載の方法で、モノマー(M−3)を合成した。以下にモノマー(M−3)の合成スキームを示す。
下記合成スキームで化合物(XL−1)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−2)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−3)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−4)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−5)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−6)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−7)を合成した。
下記合成スキームで化合物(XL−8)を合成した。
(実施例1)
下記表1に示す組成(単位:g)の組成物の塗布液をアルミ板に、150μmのワイヤ巻き棒を用いて、手動で約5m/分の速さで塗布し、続いて、不織布(Freudenberg社製 FO−2226−14、厚さ100μm)に塗布液を含浸させた。ワイヤの巻いていないロッドを用いて余分な塗布液を除去した。塗布時の塗布液の温度は約50℃であった。UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer LH6、D−バルブ、速度15m/分、100%強度)を用いて、前記塗布液含浸支持体を重合硬化反応することにより、アニオン交換膜を調製した。重合硬化時間は0.8秒であった。露光時間は0.47秒であった。得られた膜をアルミ板から取り外し、0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間保存した。
実施例1のアニオン交換膜の作成において、組成を下記表1〜3に記載の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜20、比較例1〜2のアニオン交換膜をそれぞれ作成した。
特表2011−506749号公報を参照して下記架橋剤N−1を合成した。組成を下記表3に記載の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例3のアニオン交換膜を作成した。なお、下記表1〜3において、架橋剤N−1を「N−1」と記載した。
国際公開第98/36002号パンフレットを参照して下記架橋剤N−2を合成した。組成を下記表3に記載の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例4のアニオン交換膜を作成した。なお、下記表1〜3において、架橋剤N−2を「N−2」と記載した。
実施例1のアニオン交換膜の作成において、組成を下記表3に記載の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして比較例5〜9のアニオン交換膜をそれぞれ作成した。
実施例1〜20および比較例1〜9で作成したアニオン交換膜について、下記項目を評価した。
12時間以上0.5M NaCl水溶液に浸漬して膜の質量(WS)と乾燥膜の質量(Wi)を測定し、下記式で求めた。
含水率(%)は低いほど好ましい。
選択透過性は、静的膜電位測定により膜電位(V)を測定し、算出した。2つの電解槽(cell)は、測定対象の膜により隔てられている。測定前に、膜を0.05M NaCl水溶液中で約16時間平衡化した。その後、異なる濃度のNaCl水溶液を、測定対象の膜の相対する側の電解槽に、それぞれ、注いだ。
一方のcellに0.05M NaCl水溶液を100mL注いだ。また、他方のcellに0.5M NaCl水溶液を100mL注いだ。
恒温水槽により、cell中のNaCl水溶液の温度が25℃に安定した後、両液を膜面に向かって流しながら、両電解槽とAg/AgCl参照電極(Metrohm社製)を、塩橋で接続して膜電位(V)を測定し、下記式(II)により選択透過性tを算出した。
なお、膜の有効面積は1cm2であった。
a’:膜電位(V)
b’:0.5915log(f1c1/f2c2)(V)
f1,f2:両cellのNaCl活量係数
c1,c2:両cellのNaCl濃度(M)
約2時間、0.5M NaCl水溶液中に浸漬した膜の両面を乾燥ろ紙で拭い、2室型セル(有効膜面積1cm2、電極にはAg/AgCl参照電極(Metrohm社製)に挟んだ。両室に同一濃度のNaClを100mL満たし、25℃の恒温水槽中に置いて平衡に達するまで放置し、セル中の液温が正しく25℃になってから、交流ブリッジ(周波数1,000Hz)により電気抵抗r1を測定した。測定NaCl濃度は0.5Mとした。次に膜を取り除き、0.5M NaCl水溶液のみとして両極間の電気抵抗r2を測り、膜の電気抵抗rをr1−r2として求めた。
膜の透水率を図1に示す流路10を有する装置により測定した。図1において、符号1は膜を表し、符号3および4は、それぞれ、フィード溶液(純水)およびドロー溶液(3M NaCl)の流路を表す。また、符号2の矢印はフィード溶液から分離された水の流れを示す。
フィード溶液400mLとドロー溶液400mLとを、膜を介して接触させ(膜接触面積18cm2)、各液はペリスタポンプを用いて符号5の矢印の向きに流速0.11cm/秒で流した。フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透する速度を、フィード液とドロー液の質量をリアルタイムで測定することによって解析し、透水率を求めた。
測定用の膜を厚さ1.5nmのPtでコーティングし、以下の条件で走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像でピンホールの量を測定した。
加速電圧:2kV
作動距離:4mm
絞り:4
倍率:×1,000倍
視野の傾斜:3°
B:欠陥、ピンホールが1〜2個観測された。
C:欠陥、ピンホールが3個以上観測された。
アニオン交換膜を次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩素酸濃度:140ppm)に浸漬し、1日間保管した。続いてアニオン交換膜を取り出し、経時前に行った項目と同じ項目の測定および試験を行った。
なお、下記表1〜3では、使用した素材は、以下の略称で記載した。
DMAPAA−Q:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(東京化成工業製)
BAP:1、4−ビス(アクリロイル)ピペラジン(Aldrich製)
MBA:メチレンビスアクリルアミド(東京化成工業製)
EGDM:エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業製)
TEGDM:トリエチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業製)
MEHQ:モノメチルエーテルハイドロキノン
Darocur 1173:商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製
Irgacure 2959:商品名、BASF・ジャパン社製
Tego Glide 432:商品名、Evonil Industries製
なお、Tego Glide 432は、表面張力調整剤であり、表1〜3では、表面調整剤と記載した。
しかも、本発明の規定を満たす実施例1〜20のアニオン交換膜は、本発明の規定を満たさない比較例1〜9のアニオン交換膜と比較して、全ての項目において、経時安定性に優れることがわかる。
2 フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透することを示す矢印
3 フィード溶液の流路
4 ドロー溶液の流路
5 液体の進行方向
10 透水率測定装置の流路
Claims (15)
- 前記一般式(1)または(2)で表される単位構造の総含有率が10質量%以上である請求項1または2に記載のイオン交換性ポリマー。
- 前記一般式(3)または(4)で表される化合物を、全固形分質量において10質量%以上含む組成物を重合硬化反応させてなる請求項4または5に記載のイオン交換性ポリマー。
- 前記組成物に活性放射線を照射することにより形成されてなる請求項4〜6のいずれか1項に記載のイオン交換性ポリマー。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン交換性ポリマーを含む高分子機能性膜。
- 支持体を有する請求項8に記載の高分子機能性膜。
- 前記支持体が織布または不織布である請求項9に記載の高分子機能性膜。
- 前記一般式(3)または(4)で表される化合物を含む組成物を前記支持体に含浸させた後に重合硬化反応させてなる請求項9または10に記載の高分子機能性膜。
- 前記高分子機能性膜が、イオン交換膜、逆浸透膜、正浸透膜またはガス分離膜である請求項8〜11のいずれか1項に記載の高分子機能性膜。
- 前記組成物に活性放射線を照射する請求項13に記載の高分子機能性膜の製造方法。
- 前記組成物を支持体に含浸させた後に重合硬化反応させる請求項13または14に記載の高分子機能性膜の製造方法。
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