JP6162362B2 - 魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法とその検知方法に用いるセンサー - Google Patents
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Description
一般に、魚が死んで呼吸による酸素供給が止まると、魚肉内のグリコーゲンの発酵・分解が始まる。この作用により魚肉のpHが低下し始めると、等電点が酸性側にある蛋白質で構成されている魚肉は、水分を保持する能力が低下し、魚肉蛋白質に水和していた水分が滲出し始める。この滲出液を「ドリップ」という。魚肉の表面をうっすらと覆っている液汁もドリップである。ドリップには魚肉蛋白質の分解によって生産された遊離アミノ酸が含まれているので、細菌は魚肉よりもドリップ内の方が増殖しやすい。すなわち、初期のドリップは、魚肉の分解があまり進んでいないときのものなので、遊離アミノ酸の量が少なく、その細菌数は魚肉の細菌数との差が小さいが、時間が経過するにつれて、ドリップの細菌数の方が魚肉の細菌数よりも大きくなる。
(1)平面媒体にアゾ色素を吸着させたセンサー(以下「平面媒体センサー」と記す)の場合は、最も簡単なのは、魚肉の表面にセンサーを貼り付ける方法である。平面媒体センサーを魚肉の表面に貼り付けると魚肉の表面にうすく滲出したドリップとセンサーが容易に接触する。なお、センサーを取り付けた魚肉を包装する場合は、包装を剥離しなくてもセンサーの状態を確認できるように、すくなくとも包材中のセンサーを覆う部分は透明なものを使用することが好ましい。
(3)また、上記の吸水性のよいクロスの一端にアゾ色素を吸着させるか又はアゾ色素を吸着させたクロスもしくはアゾ色素を溶解させて固化した寒天を重ねてその部分にセンサーを形成し、色素を吸着させてない方の端をドリップの導入部として魚肉に貼り付けるようにしてもよい(図7)。この方法を採ると、ドリップは、魚肉に貼り付けた部分(導入部)からクロスの中を伝わって色素を吸着させてあるセンサー形成部分に接触する。
(6)センサーを魚肉に取り付ける別の方法としては、魚肉に接触する透明な包材(例えば食品用ラップフィルム)の内側にあらかじめセンサーを貼り付けておき、魚肉をその包材で覆うとセンサーの吸水面が魚肉の表面に接触するようにしてもよい。この方法の場合も、平面媒体センサーでも固形媒体センサーでも、どちらでも使用できる。
本発明者らは、魚肉やそのドリップに存在する細菌について研究した結果、すでに説明したとおり、いくつかの知見を得たので、その知見に基づいて本発明に係る検知方法を開発した。
(1)試験例1と図1によって、アゾ色素は魚肉ドリップの細菌の増殖に何らの影響も与えないことが確認されている。
(2)試験例2と図2によって、冷蔵の後半には、20℃培養計数法によって計数されるドリップの細菌数は、魚肉の細菌数よりも高くなることが確認されている。
(3)試験例3と図3によって、冷蔵中の魚肉では低温細菌が活性化しているため、その細菌密度は、公定法によって計数するよりも、4℃培養計数法や20℃培養計数法で計数する方が高くなることが確認されている。また、4℃培養計数法で計数される細菌数は、20℃培養計数法で計数される細菌数とほぼ同じであることが確認されている。
(4)試験例4と図4・図5によって、ドリップ中の細菌は、4℃においてもセンサーを反応させるのに十分な活性を持っていることが確認されている。
(5)試験例5と図6によって、ドリップ中の細菌は、その細菌数が1mL当り10の8乗(20℃培養計数法による)に至った時点で色素を急激に変色させることが確認されている。
(6)試験例6と表1によって、20℃培養計数法によって計数したドリップの細菌数が1mL当り10の8乗であるときは、公定法で計数した魚肉の細菌数は1g当り10の6乗であることが確認されている。
(7)実施例1〜実施例7に示す試作・試用の結果によって、「平面媒体センサー」でも「固形媒体センサー」でも、どちらも十分に実用に供し得ることが確認されている。
以下、試験例をもって本発明をさらに詳しく説明する。
(1)試験目的:
アゾ色素が魚肉ドリップの細菌の増殖に及ぼす影響の有無の確認
(2)試験方法:
センサーにアゾ色素を用いる場合、アゾ色素が魚肉ドリップの細菌の増殖に何らかの影響を与えるのであれば、魚肉ドリップ中の細菌数は正確に計測できない。そこで、魚肉ドリップに模して調製した魚肉粉末(和光純薬)の液体培地(100ppm:pH7.0)にヤズのドリップを接種し、その液体培地を「市販の食用赤色102号を50μM濃度で含んだ0.3%の寒天ゲルからなるセンサー」を3分の1の高さにまで充填した試験管Aと空(カラ)の試験管Bとに等量ずつ分注し、10℃で培養した。培養期間中に培養液を無菌的に適時採取して、これを原液とした。この原液を滅菌した生理食塩水で10倍希釈を繰り返した後、原液と希釈液のそれぞれ0.1mLを普通寒天平板培地に塗抹・接種し、この平板培地を20℃で5日間培養して、平板上に出現したコロニーを数えて、魚肉粉末液体培地中の細菌密度の変化を経時的に調べた。
試験の結果は図1に示すとおりである。すなわち、試験管Aの培地と試験管Bの培地では、細菌の増殖に差は認められなかった。なお、本試験例では、アゾ色素として、食用赤色102号を使用したが、食用赤色2号、食用赤色40号、食用黄色4号、食用黄色5号を用いた試験についても、本試験例と同じ結果が得られている。
(4)考察:
この試験結果から、アゾ色素は、魚肉ドリップ中の細菌の増殖に何らの影響も与えず、その細菌密度を正確に計測できることが確認された。
(1)試験目的:
冷蔵魚肉とそのドリップの細菌数の変化傾向の確認
(2)試験方法:
生食用アジの魚肉を6〜7片に分割し、それぞれ別々に含気包装して4℃で冷蔵し、冷蔵期間中に適時1包装ずつ開封して魚肉とドリップを取り出した。魚肉は、約1gを秤取し、これを9倍量の滅菌生理食塩水に浸漬した後、ストマッカーでホモジェナイズした。このホモジェナイズ液の上清を原液として、滅菌生理食塩水を用いて10倍希釈を繰り返し、原液と希釈液の0.1mLずつを普通寒天平板培地に塗抹・接種した。また、ドリップは、1mLずつ無菌的に取り出してこれを原液とし、この原液について滅菌生理食塩水を用いて10倍希釈を繰り返し、原液と希釈液の0.1mLずつを普通寒天平板培地に塗抹・接種した。次に、これらの平板培地を20℃で5日間培養し、平板上に出現したコロニーを数えて、魚肉とドリップの細菌数の変化を経時的に調べた。
試験の結果は図2に示すとおりである。すなわち、ドリップの細菌密度は魚肉の細菌密度よりも高く、冷蔵の後半には、その差は約10倍になった。
(4)考察:
この試験結果から、魚肉の細菌数を検知するには、ドリップの細菌数を検知して、間接的に魚肉の細菌数を知る方法を採る方が、感度が高く、効率的であることが確認された。
(1)試験目的:
冷蔵中の魚肉における細菌の増殖の確認
(2)試験方法:
生食用ヤズの魚肉を6〜7片に分割し、それぞれ別々に含気包装して4℃で冷蔵し、試験例2で用いたのと同じ方法で魚肉の細菌数を調べた。なお、平板培地は、4℃で10日間、20℃で5日間、35℃で2日間、それぞれ別々に培養し、平板上に出現したコロニーを数えて、魚肉中の細菌数の変化を経時的に調べた。
試験の結果は図3に示すとおりである。すなわち、4℃で冷蔵したヤズにおいては、4℃培養計数法と20℃培養計数法でそれぞれ計数される魚肉の細菌(低温細菌)の数はほぼ同じであるが、どちらの方法を採っても、計数される細菌数は、食品衛生法で定める35℃培養計数法(公定法)で計数される細菌(中温細菌)の数よりも多くなることが確認された。
(4)考察:
この試験結果から、魚肉を冷蔵したときには、低温細菌の方が中温細菌よりも多いことが判明した。すなわち、魚肉を冷蔵したときに魚肉を劣化・腐敗させるのは20℃以下でよく増殖する低温細菌であることが確認された。したがって、本発明に係る魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法は、低温ではセンサーが主に低温細菌と反応するので、冷蔵中の魚肉について有用であることが確認された。
(1)試験目的:
冷蔵温度下における低温細菌の活性の確認
(2)試験方法:
4℃で冷蔵しているヤズの魚肉から4℃培養計数法で分離された細菌と20℃培養計数法で分離された細菌をそれぞれ普通液体培地に接種して、4℃と20℃でそれぞれ48時間培養し、培養液の濁度を700nmの波長で分光光度計を用いて測定した。
試験の結果は図4と図5に示すとおりである。すなわち、図4の、4℃培養計数法で分離された細菌株の増殖を示したグラフを見ると、接種直後には濁度が測定限界以下だった培養液が、4℃での48時間での増殖により、濁度は0.1から0.4の間の値に達し、一方、同じ株の20℃での48時間の増殖により、濁度は0.1から0.5の間の値に達している。すなわち、4℃培養計数法で分離された細菌株の4℃での増殖レベルは、20℃での増殖度合いにかなり近いものである。さらに、図5の、20℃培養計数法で分離された細菌株の増殖を示したグラフを見ると、接種直後には濁度が測定限界以下だった培養液が、4℃での48時間での増殖によって、濁度は0.2から0.3の間の値に達し、一方、同じ株の20℃での48時間での増殖により、濁度は0.2から0.5の間の値に達している。すなわち、20℃培養計数法で分離された細菌株の4℃での増殖レベルは、20℃での増殖レベルにかなり近いものである。そのため、20℃培養計数法で分離された細菌は、4℃でも20℃に匹敵する増殖活性があることが確認された。
(4)考察:
この試験の結果から、魚肉を劣化・腐敗させる低温細菌は、4℃でもセンサーを反応させるのに十分な活性を持っていることが解明された。
(1)試験目的:
アゾ色素を分解するときの魚肉ドリップの細菌密度の範囲の確認
(2)試験方法:
市販の食用赤色102号を50μM、10μM、5μM濃度で含んだ3通りの普通液体培地(肉エキス10g、ペプトン10g、NaCl3g、pH7.2)に生食用ヤズのドリップをそれぞれ接種し、これらを10℃で培養した。この培養液の507nmの波長での吸光度を分光光度計で測定してその色調を調べた。また、色調の変化を調べるのと同時に、培養液の細菌数を試験例2で説明したのと同じ方法で調べた。なお、507nmは、食用赤色102号の光吸収極大値で、この吸光度から培地に残存している食用赤色102号の残存率を計算した。
試験の結果は図6に示すとおりである。すなわち、食用赤色102号は、その濃度が50μMのときは液体培地中の細菌数が10の7乗を超えた時点で赤色が減少し始め、10の8乗を超えた時点で急激に減少し、ほとんど消滅している。色素の濃度が10μMのときも5μMのときも近似した傾向を示している。そのため、本発明で用いるセンサーは、冷蔵中の魚肉ドリップの細菌数が20℃培養計数法で計数して1mL当り10の8乗に至った段階で正確に変色するので、細菌数が1mL当り10の9乗以上である魚肉について、例えば、それが10の6乗であるとか10の8乗である等の誤った判断をするおそれがない。なお、本試験例では、アゾ色素として食用赤色102号を使用しているが、食用赤色2号や食用赤色40号、食用黄色4号、食用黄色5号を用いた試験についても図6と同じ結果が得られている。また、このような試験では、センサーに模した寒天ゲルを用いることが望ましいが、寒天ゲルの吸光度変化を調べることは難しいので、本試験例では、液体培地を使用した。
(4)考察:
この試験の結果から、センサーが示す細菌密度は、オーダーレベルで信頼できることが確認できた。
(1)試験目的:
冷蔵中の魚肉とそのドリップの細菌数の割合の確認
(2)試験方法:
魚肉のドリップの細菌数を調べるには、1mL以上のドリップが必要であるが、そのような多量のドリップを採取するのは通常の魚肉包装方法では無理である。そこで、漏斗状に成形された透明な可塑性の袋に魚肉を200g入れ、漏斗の筒の部分に「食用赤色102号を50μM濃度で溶解した寒天(濃度0.9%)を充填して固化させた試験管」を設置し、試験管内の食用赤色102号が変色した時点での魚肉とドリップの細菌数を、試験例2で用いたのと同じ方法で調べた。なお、平板培地は20℃で5日間、35℃で2日間培養した。
試験の結果は表1に示すとおりである。すなわち、4℃又は10℃で保存している魚肉について、試験管内の50μM濃度の食用赤色102号が変色するのは、いずれも20℃培養計数法で計数してドリップ1mL当り10の8乗であったが、同じ魚肉を公定法で計数したときの細菌数は魚肉1g当り10の6乗であった。また、このときの20℃培養計数法で計数したドリップの細菌数と公定法で計数した魚肉の細菌数の比は47〜130の間であった。また、ドリップの細菌数を47〜130の間の数値で除しても、その細菌数は常に10の6乗であった。
(4)考察:
20℃培養計数法によるドリップの細菌数と公定法による魚肉の細菌数の比が約50〜130の間でバラついても、公定法で調べたときの魚肉の細菌数が10の6乗以上でセンサーが反応するのは、センサーが反応するときのドリップの細菌数が狭い範囲に収斂しているためであると推定される。また、ドリップの細菌数を約50〜130の間の数値で除しても、その細菌数は常に10の6乗であるので、このセンサーは、公定法で計数したときの魚肉の細菌数が10の6乗に達したときに変色することが確認された。すなわち、ドリップの細菌の増殖を色素の変化によって検知する方法を採れば、魚肉の細菌数が10の6乗未満であるか否か、正確に検知できることが確認された。
以下、実施例をもって本発明をさらに説明する。
(1)センサーの作製:
イ.ショット瓶に蒸留水40mLを入れて、少量の酢酸を加えてpH4に調整した。
ロ.そのショット瓶に硫酸ナトリウム0.02gを添加し、さらに、白色のマイクロファ イバークロス(ナイロン20%・ポリエステル80%:2cm×1cm)を20枚入れ (0.2g相当)、30℃で60分間加熱した。
ハ.その後、アゾ色素液(0.002g/10mL:pH4)10mLを加えて100℃ で60分間加熱した。アゾ色素は、表2に示すとおり、魚種に応じて食用赤色2号、食 用赤色40号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号を使い分けた。
ニ.ショット瓶に入れたまま一晩放冷却した後、クロスを取り出して水洗し、自然乾燥さ せて「赤色のセンサー」を作製した。
ホ.なお、クロスの染色後に染色液に残った色素量と水洗後の洗浄液に溶出した色素量を 試験例5に示す方法で測定したところ、クロス上の色素濃度は約15,000分の1、 すなわち、100μM相当であることが確認された。
市販の8種類・13切れの魚肉の切り身の表面に上記の平面媒体センサーを1枚ずつ貼り付け、各々をナイロンとポリエチレンのラミネート袋に入れて4℃又は10℃で保存した。保存期間中は観察を続け、センサーの色が赤色から白色に変化した時点で魚肉を袋から取り出した。
(3)センサーの検知効果の確認試験:
イ 袋から取り出したそれぞれの魚肉から約10gの試料を無菌的に採取し、ストマッカ ー袋に入れ、9倍量の滅菌生理食塩水を加えて2分間ホモジェナイズして魚肉スラリー を作った。
ロ.それぞれのスラリーをコーニングチューブに移し、500rpmで10秒間遠心処理 した。
ハ.生成した上清を原液とし、滅菌した生理食塩水で10倍希釈を繰り返した後、各希釈 段階について希釈液1mLずつを滅菌したシャーレ6枚に接種し、これに滅菌後55℃ にまで冷却した標準寒天培地又は普通寒天培地を加えて混釈培養を行った。
ニ.標準寒天培地の場合は、食品衛生法の定めに基づき35℃で48時間培養して、それ ぞれの細菌数を調べた。
表2は、平面媒体センサーが変色した時点での細菌数を魚種ごとに示したものである。表2によれば、センサーが反応した時点での細菌数は、10℃で保存した魚肉と4℃で保存した魚肉の両方とも、公定法で調べたところ、いずれも「10の6乗/g」であった。
(5)考察:
すなわち、実施例1で作ったセンサーをドリップに接触するように取り付けた生の魚肉を、4〜10℃で管理している小売店等のショウケースに並べて販売した場合、生の魚肉の細菌数が「1g当り10の6乗(公定法による)に達した場合には販売しない」という自主基準を超えているか否かを、消費者が自分の眼で販売魚肉の全数について検査できることが確認できた。
(1)センサーの取り付けと保存試験:
市販の9種類の魚肉切り身のそれぞれを3つに分割し、その1つのグループの切り身については実施例1と同じ方法で細菌数を調べた。残る2つについては、AグループとBグループに分け、いずれも実施例1と同じ方法で作製した平面媒体センサーを切り身の上に載せて、それぞれを透明なポリエチレン製の袋に入れた。Aグループの切り身は、試験開始から0℃で12時間保存した後4℃又は10℃の室に移して保存を続けた。Bグループの切り身は、試験開始の当初から4℃又は10℃の室で保存し続けた。それぞれの切り身についてセンサーの色の変化の有無を観察し続け、Bグループの切り身のセンサーが白色に変わった時点で、実施例1と同じ方法で切り身の細菌数を調べた。
表3は、Bグループの切り身のセンサーが変色した時点での細菌数を魚種ごとに示したものである。表3によれば、センサーが反応した時点での細菌数は、いずれも「10の6乗/g(公定法による)」のオーダーであり、センサー未反応の切り身との差は約10倍で、最少差は2倍であった。なお、Aグループの切り身は、Bグループの切り身より先には「センサー陽性」に至らなかった。
(3)考察:
実施例2よって、実施例1で作った平面媒体センサーは、およそ10倍以内の誤差範囲で魚肉の細菌数が一定値以上に達したことを検知できることが確認された。
(1)センサーの取り付けと保存試験:
実施例1と同じ方法でマイクロファイバークロスを用いてセンサーを作製して、実施例1と同じ方法で4種類の魚肉の切り身(赤マツ、キスゴ、アマダイ、イトヨリ)に取り付けた後、これらの切り身をそれぞれ真空包装して10℃の室に保存し、センサーの色が変化するまで観測を続け、変色時点での細菌数を、公定法を用いて計数した。
(2)試験結果:
表4は、真空包装した切り身のセンサーが変色した時点での細菌数を魚種ごとに示したものである。表4によれば、真空包装をした生の魚肉を10℃で保存した場合でも、センサーは、公定法で調べた結果、全て「10の6乗」のレベルで変色していることが確認された。
(3)考察:
実施例3によって、実施例1で作った平面媒体センサーは、魚肉を真空包装した場合でも有効であることが確認された。
(1)センサーの作製:
イ.99mLの蒸留水に寒天(アガロースS)を0.9g添加し、121℃で20分間加 熱した。この寒天溶融液に、0.2μm孔のメンブレンフィルターで濾過・除菌した5 mMの食用赤色102号を1mL添加し、その15mLを内径9cmのシャーレに分注 した。
ロ.シヤーレのまま冷却して固化させた厚さ2.4mmの寒天から、2.4×1.2cm の切片を切り出した。
ハ.この切片をマイクロファイバークロスとナイロンフィルムで挟み、四方をシーラーで 熱シールして「赤いセンサー」を完成させた。このセンサーはマイクロファイバークロ スの面を魚肉に貼り付けてドリップを吸い取るものである。
ニ.センサー内での食用赤色102号の濃度は50μMであり、これは重量比0.003 %に相当する。なお、食品衛生法に定める「色素の使用基準」は0.01〜0.002 %である。
イ.山口県産のタイとカレイを下関市内の小売店で購入し、実験室で3枚に下ろした。こ の切り身の表面に上記の固形媒体センサーを載せ、その切り身をポリエチレン袋に入れ て10℃で保存した。
ロ.保存期間中に、センサーの赤色が消えて白くなった時点で切り身を袋から取り出し、 その細菌数を実施例1と同じ方法を用いて調べた。
(3)センサーの検知結果:
センサーが変色した時点と細菌数は、タイの場合、保存開始96時間後で魚肉1g当り1.5×10の6乗、カレイの場合、同94時間後で1.3×10の6乗であった。
(4)考察:
実施例4によって、固形媒体センサーを用いても、魚肉の細菌数が「魚肉1g当り10の6乗(公定法による)」を超えたか否かを、センサーの変色の有無によって検知できることが確認された。
(1)センサーの取り付けと展示:
近くの24時間営業のスーパーマーケット鮮魚部に依頼して、早朝に入荷したキントキタイ、ホンタイ(マダイ)、ヒラメ、イトヨリからそれぞれ300g程度の切り身を作製してもらった。この切り身を10℃に調整したショウケースの端に並べてもらい、実施例1と同じ方法で作成したセンサーをそれぞれの切り身の表面に午前12時に貼り付けた。
(2)センサー変色時の細菌数:
鮮魚部に経過の観察を依頼していたところ、3日目の午前9時にキントキタイのセンサーが変色しているとの連絡を受けた。直ちに全ての切り身を回収して、実施例1で用いた方法と同じ方法によって細菌検査を行ったところ、センサーが変色したキントキタイの魚肉1g当りの細菌数は10の6乗、すなわち「1.3×106/g」であり、残りのホンタイ、ヒラメ、イトヨリの細菌数は「3.0〜7.4×104/g」の間であった。
(3)考察:
実施例5によって、本発明に係る魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法は、実際の販売店において有用であることが確認された。
(1)センサーの作製:
イ. 蒸留水で作成した99mLのpH緩衝液(10mL:HEPES、pH7.0)に 寒天(アガロースS)を0.9g添加し、121℃で20分間加熱した。この寒天融液 に0.2μm孔のメンブレンフィルターで濾過・除菌した5mMの赤色102号を1m L添加し、その15mLを内径9cmのシャーレに分注した。
ロ.シヤーレのまま冷却して固化させた厚さ2.4mmの寒天から、2.4×1.2cm の切片を切り出した。
ハ.この寒天の切片を「長尺のマイクロファイバークロス」と「切片と同尺のナイロン製 フィルム」で挟み、四方をシーラーで熱シールして「赤いセンサー」を完成させた。こ のセンサーは、長尺ではみ出たマイクロファイバークロスの面のみをドリップの導入部 として魚肉の下面に下敷きのようにして貼り付けてドリップを吸い取るものである。
(2)センサーの取り付け:
(3)センサーの検知結果:
センサーが変色したのは、保存開始後98時間経過した時点であり、その細菌数は5.6×106であった。
(4)考察:
実施例6の結果から、ドリップの導入部を備えた固形媒体センサーを用いても、魚肉の細菌数が「魚肉1g当り10の6乗(公定法による)」に達したか否かを、センサーの変色の有無によって確認できることが判った。
(1)センサーの作製:
実施例1で用いた方法と同じ方法で同じ大きさの平面媒体センサーを4枚作製した。
(2)センサーの取り付け:
4切れの市販のスモークサーモン(冷燻法で作製したもの)に上記のセンサーをそれぞれ密着するように載せ、別々に含気包装した。
(3)細菌数の測定:
これら4個の包装体を10℃に調整したショウケース内に並べ、センサーの色の変化の有無を観察した。198時間後に1個の包装体のセンサーが白色に変化したので、その時点で全ての包装体を開封し、センサーと切り身を取り出し、実施例1で用いたのと同じ試験方法でそれぞれの切り身の細菌数を調べた。
(4)試験結果:
(5)考察:
スモークサーモンにおいてもセンサーの有効性が確認されたが、反応までの時間は198時間で、他の事例の2倍以上の長さであった。これは、スモークサーモンでは冷燻や食塩処理により細菌の増殖が抑えられているためであると考えられる。
Claims (5)
- 冷蔵中の生の魚肉について、その魚肉から滲出するドリップに接触するように食用赤色2号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号のいずれかを含むセンサーを取り付け、センサーの色の変化の有無を肉眼で観察することによって当該魚肉の細菌汚染レベルが、細菌数が魚肉1g当り10の6乗のオーダー未満(公定法による)であるか否かを検知する方法。
- 細菌汚染レベルを検知する対象の魚肉が密封包装したものである請求項1に記載の魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法。
- センサーとして、食用赤色2号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号のいずれかを紙や布等の平面媒体に吸着させたものを用いる請求項1又は2に記載の魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法。
- センサーとして、食用赤色2号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号のいずれかを寒天やゼラチン等の固形媒体に溶解させ固化したものを用いる請求項1又は2に記載の魚肉の細菌汚染レベルを検知する方法。
- 食用赤色2号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号のいずれかを紙や布等の平面媒体に吸着させたものであるか又は寒天やゼラチン等の固形媒体に溶解させ固化したものであって、冷蔵中の生の魚肉から滲出するドリップに接触するように取り付けて当該魚肉の細菌汚染レベルが、細菌数が魚肉1g当り10の6乗のオーダー未満(公定法による)であるか否かを検知するために用いるセンサー。
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