本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容は、その実施の形態で述べる別の内容、または/および、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容に対して、適用、組み合わせ、または置き換えなどを行うことが出来る。
なお、図において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
本明細書においては、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
本明細書において、例えば、物体の形状を「径」、「粒径」、「大きさ」、「サイズ」、「幅」などで規定する場合、物体が収まる最小の立方体における一辺の長さ、または物体の一断面における円相当径と読み替えてもよい。物体の一断面における円相当径とは、物体の一断面と等しい面積となる正円の直径をいう。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、半導体膜の不純物とは、例えば、半導体膜を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1atomic%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体膜にキャリアトラップが形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体膜が酸化物半導体膜である場合、半導体膜の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体膜がシリコン膜である場合、半導体膜の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
また、本明細書において、過剰酸素とは、例えば、化学量論的組成を超えて含まれる酸素をいう。または、過剰酸素とは、例えば、加熱することで放出される酸素をいう。過剰酸素は、例えば、膜や層の内部を移動することができる。過剰酸素の移動は、膜や層の原子間を移動する場合と、膜や層を構成する酸素と置き換わりながら玉突き的に移動する場合とがある。また、過剰酸素を含む絶縁膜は、例えば、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁膜である。
また、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
<トランジスタの構造および作製方法についての説明>
以下では、トランジスタの構造および作製方法について説明する。
本発明の一態様に係るトランジスタは、例えば、以下に示す一以上の特徴を有する。例えば、微細な構造であってもスイッチング特性の得られるトランジスタである。または、例えば、3次元的な電流の経路を有することにより、オン電流を大きくしたトランジスタである。または、例えば、効果的にゲート電界を印加することにより、オフ電流を小さくしたトランジスタである。または、例えば、効果的にゲート電界を印加することにより、微細化に伴う電気特性の悪化を抑制したトランジスタである。または、例えば、しきい値電圧の制御性の高いトランジスタである。
<トランジスタ構造(1)>
本発明の一態様に係るトランジスタの一例について説明する。
図1は、トランジスタの上面図および断面図である。図1(A)は、トランジスタの上面図を示す。図1(A)において、一点鎖線A1−A2に対応する断面図を図1(B)に示す。また、図1(A)において、一点鎖線A3−A4に対応する断面図を図1(C)に示す。
上面図である図1(A)において、酸化物半導体膜106がゲート電極104aまたはゲート電極104bと重なる領域で、ソース電極116aとドレイン電極116bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜106がゲート電極104aまたはゲート電極104bと重なる領域で、ソース電極116aとドレイン電極116bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。したがって、図1(A)において、チャネル幅は一点鎖線A3−A4の方向における酸化物半導体膜106のゲート電極104aおよびゲート電極104bと重なる領域の長さである。
なお、半導体装置の集積度を高めるためには、トランジスタのサイズを縮小することが好ましい。例えば、チャネル長は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。また、チャネル幅は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。このような微細なトランジスタにおいては、電気特性の悪化などの不具合を生じる場合がある。しかしながら、本発明の一態様に係るトランジスタは、微細化に伴う電気特性の悪化を抑制できるため、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
チャネル長方向の断面図である図1(B)において、トランジスタは、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体膜106と、下地絶縁膜102上および酸化物半導体膜106上のソース電極116aおよびドレイン電極116bと、酸化物半導体膜106上、ソース電極116a上およびドレイン電極116b上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上の保護絶縁膜118と、を有する。
チャネル幅方向の断面図である図1(C)において、トランジスタは、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体膜106と、下地絶縁膜102上および酸化物半導体膜106上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極104aおよびゲート電極104bと、ゲート絶縁膜112上、ゲート電極104a上およびゲート電極104b上の保護絶縁膜118と、を有する。
なお、トランジスタは、保護絶縁膜118を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、下地絶縁膜102を有さなくても構わない場合がある。
なお、チャネル幅方向の断面図である図1(C)において、トランジスタは、ゲート電極104aおよびゲート電極104bによって、酸化物半導体膜106の側面側からも電界が印加される構造となっている。トランジスタのチャネル幅が小さいほど(例えば、100nm以下、60nm以下または40nm以下である場合)、酸化物半導体膜106の側面側からの電界による寄与は大きくなる。そのため、トランジスタのオン特性(トランジスタをオンにしたときの電流(オン電流)や電界効果移動度など)およびオフ特性(トランジスタをオフにしたときの電流(オフ電流)など)は向上する。また、パンチスルー現象を抑制できるため、チャネル長の小さい、微細化されたトランジスタにおいても、電気特性の悪化を抑制し、ノーマリーオフの電気特性を得ることができる。このように、当該トランジスタは、電気特性の優れたトランジスタである。
なお、ゲート電極104aおよびゲート電極104bを、同じ電位としても構わない。その場合、ゲート電極104a、ゲート電極104bの一方のみを設けた場合と比べて、高いオン電流を得ることができる。例えば、ゲート電極104aとゲート電極104bとが接するように配置しても構わない。
または、ゲート電極104aおよびゲート電極104bに、異なる電位を印加しても構わない。例えば、ゲート電極104bをソース電極116aと同じ電位とし、ゲート電極104aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極104bをソース電極116aと同じ電位にすることで、ゲート電極104a、ゲート電極104bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極104bによってトランジスタのしきい値電圧を調整し、ゲート電極104aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極104bをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極104bをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
ゲート電極104aは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
ゲート電極104bは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
なお、ゲート電極104aおよびゲート電極104bは、同種の導電膜であってもよい。例えば、ゲート電極104aおよびゲート電極104bは、同一工程を経て設けられた導電膜が分割されたものであってもよい。
図1(B)および図1(C)に示すように、下地絶縁膜102は、酸化物半導体膜106と重なる領域が厚く、重ならない領域が薄くなっている。これは、酸化物半導体膜106のエッチング時や、酸化物半導体膜106が形成された後の工程における薬液処理、プラズマ処理などによって下地絶縁膜102がエッチングされるためである。なお、下地絶縁膜102がエッチングされる条件によっては、下地絶縁膜102の厚い領域は、酸化物半導体膜106と重なる領域の外側または内側となる場合がある。つまり、下地絶縁膜102の薄い領域が、酸化物半導体膜106と重なる領域の内側にある場合もある。ただし、下地絶縁膜102の厚さの異なる領域は、全てにおいて上記のような形状とならなくてもよく、例えば、半導体装置内またはトランジスタ内において、下地絶縁膜102の厚い領域が酸化物半導体膜106と重なる領域の外側まである箇所と、下地絶縁膜102の薄い領域が酸化物半導体膜106と重なる領域の内側まである箇所と、を有しても構わない。
例えば、下地絶縁膜102が厚さの異なる領域を有することにより、ゲート電極104aまたは/およびゲート電極104bを、酸化物半導体膜106の下面よりも下まで配置することができる場合がある。このような構造では、ゲート電極104aまたは/およびゲート電極104bによって、酸化物半導体膜106の側面または/および下面からも電界が印加される。そのため、酸化物半導体膜106の各方位から効果的に電界を印加でき、高いオン電流と、低いオフ電流と、微細化に伴う電気特性の悪化の抑制と、を実現することが可能となる。特に、酸化物半導体膜106が厚いほど、上面および下面からの電界よりも側面からの電界の寄与が大きくなる。酸化物半導体膜106の厚さの好ましい範囲については後述する。
なお、図1(C)において、下地絶縁膜102の厚い領域の厚さから、下地絶縁膜102の薄い領域の厚さ、およびゲート絶縁膜112の厚さの和を差し引いた長さを迫り出し量(ひさし長さともいう。)と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
該迫り出し量が大きいほど、酸化物半導体膜106の下面から印加される電界が効果的になる。したがって、該迫り出し量が大きいほど、トランジスタのオン電流は大きくなり、オフ電流は小さくなり、トランジスタの微細化に伴う電気特性の悪化は抑制される。なお、一定の範囲においては、該迫り出し量が大きいほど、オン電流を効果的に大きくし、かつオフ電流を効果的に小さくし、微細化に伴う電気特性の悪化を効果的に抑制することができるが、一定の範囲を超えた場合には該迫り出し量を大きくしていくことに対する寄与が小さくなっていく。例えば、生産時におけるばらつきなどを小さくするためには、該迫り出し量を一定の範囲より大きくして、該迫り出し量のばらつきの影響を低減した方が好ましい場合がある。なお、該迫り出し量を大きくするためには、下地絶縁膜102を厚くし、かつエッチング量を増やさなくてはならなくなるため、生産性の低下の観点からは、必要以上に該迫り出し量を大きくし過ぎない方が好ましい場合もある。したがって、該迫り出し量は、上述したような好ましい範囲を有する。
下地絶縁膜102は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
下地絶縁膜102は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を酸化シリコン膜とした積層膜とすればよい。この場合、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)にてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニアの放出量は、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて測定すればよい。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
または、下地絶縁膜102は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を第1の酸化シリコン膜とし、3層目を第2の酸化シリコン膜とした積層膜とすればよい。この場合、第1の酸化シリコン膜または/および第2の酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。第1の酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜を用いる。第2の酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
下地絶縁膜102を積層膜とすることにより、各層の物性を利用することで下地絶縁膜102の薄い領域の厚さ、厚い領域の厚さを均一に制御できる場合がある。その場合、下地絶縁膜102の薄い領域と厚い領域とで、異なる層構造となる。例えば、下地絶縁膜102の薄い領域は単層構造となり、厚い領域は積層構造となる場合がある。
過剰酸素を含む酸化シリコン膜とは、加熱処理などによって酸素を放出する機能を有する酸化シリコン膜をいう。また、過剰酸素を含む絶縁膜は、加熱処理などによって酸素を放出する機能を有する絶縁膜である。
過剰酸素を含む絶縁膜は、酸化物半導体膜106中の酸素欠損を低減することができる。酸化物半導体膜106中で酸素欠損は、正孔トラップなどとなる。また、酸素欠損のサイトに水素が入ることによって、電子を生成することがある。したがって、酸化物半導体膜106中の酸素欠損を低減することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
ここで、加熱処理によって酸素を放出する膜は、TDS分析によって1×1018atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3以上または1×1020atoms/cm3以上の酸素(酸素原子数に換算)を放出することもある。
または、加熱処理によって酸素を放出する膜は、過酸化ラジカルを含むこともある。具体的には、過酸化ラジカルに起因するスピン密度が、5×1017個/cm3以上であることをいう。なお、過酸化ラジカルを含む膜は、ESRにて、g値が2.01近傍に非対称の信号を有することもある。
または、過剰酸素を含む絶縁膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))は、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutheford Backscattering Spectrometry)により測定した値である。
以下では、酸化物半導体膜106について説明する。
酸化物半導体膜106の厚さは、チャネル幅の0.5倍以上、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上とする。図1に示したトランジスタは、酸化物半導体膜106の側面にゲート電極104aおよびゲート電極104bからの電界が印加されるため、酸化物半導体膜106を厚くした場合でも良好なスイッチング特性が得られる。したがって、スケーリング則に沿った、酸化物半導体膜106の薄膜化が不要となる場合がある。酸化物半導体膜106は、厚いほど側面の面積が増大し、トランジスタのオン電流を大きくなる。
酸化物半導体膜106の厚さは、例えば、10nm以上500nm以下、好ましくは20nm以上300nm以下、さらに好ましくは40nm以上200nm以下、より好ましくは60nm以上150nm以下とする。酸化物半導体膜106が厚いほどトランジスタのオン電流を大きくすることができるが、厚すぎると形状不良の原因となり、半導体装置の歩留まりを低下させてしまう場合がある。したがって、半導体装置の歩留まりを高く、かつトランジスタのオン電流を大きくするためには、酸化物半導体膜106を上述の厚さとすることが好ましい。なお、酸化物半導体膜106が厚い場合、オフ電流が大きくなることや、電気特性が悪化(例えば、ノーマリーオン化)する場合がある。本発明の一態様に係るトランジスタにおいては、酸化物半導体膜106の側面からも電界が印加されることにより、酸化物半導体膜106が厚くなることに起因したトランジスタの不良を抑制することができる。
酸化物半導体膜106は、インジウムを含む酸化物である。酸化物は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、酸化物半導体膜106は、元素Mを含むと好ましい。元素Mとして、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどがある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。元素Mは、例えば、酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、酸化物半導体膜106は、亜鉛を含むと好ましい。酸化物が亜鉛を含むと、例えば、酸化物を結晶化しやすくなる。酸化物の価電子帯上端のエネルギーは、例えば、亜鉛の原子数比によって制御できる。
ただし、酸化物半導体膜106は、インジウムを含む酸化物に限定されない。酸化物半導体膜106は、例えば、Zn−Sn酸化物、Ga−Sn酸化物であっても構わない。
また酸化物半導体膜106は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。酸化物半導体膜106のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
なお、酸化物半導体膜106をスパッタリング法で成膜する場合、パーティクル数低減のため、インジウムを含むターゲットを用いると好ましい。また、元素Mの原子数比が高い酸化物ターゲットを用いた場合、ターゲットの導電性が低くなる場合がある。インジウムを含むターゲットを用いる場合、ターゲットの導電率を高めることができ、DC放電、AC放電が容易となるため、大面積の基板へ対応しやすくなる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる。
酸化物半導体膜106をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比は、In:M:Znが3:1:1、3:1:2、3:1:4、1:1:0.5、1:1:1、1:1:2、などとすればよい。
酸化物半導体膜106をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40atomic%以上90atomic%程度以下となる場合がある。
以下では、酸化物半導体膜106中における不純物の影響について説明する。なお、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体膜106中の不純物濃度を低減し、低キャリア密度化および高純度化することが有効である。なお、酸化物半導体膜106のキャリア密度は、1×1017個/cm3未満、1×1015個/cm3未満、または1×1013個/cm3未満とする。酸化物半導体膜106中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
例えば、酸化物半導体膜106中のシリコンは、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。そのため、酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との間におけるシリコン濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。また、酸化物半導体膜106とゲート絶縁膜112との間におけるシリコン濃度を、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。
また、酸化物半導体膜106中に水素が含まれると、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。酸化物半導体膜106の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜106中に窒素が含まれると、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。酸化物半導体膜106の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜106の水素濃度を低減するために、下地絶縁膜102の水素濃度を低減すると好ましい。下地絶縁膜102の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜106の窒素濃度を低減するために、下地絶縁膜102の窒素濃度を低減すると好ましい。下地絶縁膜102の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜106の水素濃度を低減するために、ゲート絶縁膜112の水素濃度を低減すると好ましい。ゲート絶縁膜112の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体膜106の窒素濃度を低減するために、ゲート絶縁膜112の窒素濃度を低減すると好ましい。ゲート絶縁膜112の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
以下では、酸化物半導体膜106に適用可能な酸化物半導体膜の構造について説明する。
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)層、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。したがって、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。したがって、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。したがって、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、全体で配向性が見られない。したがって、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜は、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有してもよい。
酸化物半導体膜106は、酸化物半導体膜の積層膜であってもよい。例えば、酸化物半導体膜106は、2層構造、3層構造であってもよい。
例えば、酸化物半導体膜106が3層構造の場合について説明する。
2層目(中層)は、上述の酸化物半導体膜106についての記載を参照する。1層目(下層)および3層目(上層)は、1層目を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体膜である。2層目を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から1層目および3層目が構成されるため、1層目と2層目との界面、および2層目と3層目との界面において、界面準位が形成されにくい。
なお、1層目がIn−M−Zn酸化物のとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。また、2層目がIn−M−Zn酸化物のとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。また、3層目がIn−M−Zn酸化物のとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。なお、3層目は、1層目と同種の酸化物を用いても構わない。
ここで、1層目と2層目との間には、1層目と2層目との混合領域を有する場合がある。また、2層目と3層目との間には、2層目と3層目との混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、1層目、2層目および3層目の積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
2層目は、1層目および3層目よりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、2層目として、1層目および3層目よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
このとき、導電膜104に電界を印加すると、1層目、2層目、3層目のうち、電子親和力の大きい2層目にチャネルが形成される。
また、トランジスタのオン電流のためには、3層目の厚さは小さいほど好ましい。例えば、3層目は、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下とする。一方、3層目は、チャネルの形成される2層目へ、ゲート絶縁膜112を構成する酸素以外の元素(シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、3層目は、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、3層目の厚さは、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上とする。
また、信頼性を高めるためには、1層目は厚く、3層目は薄いことが好ましい。具体的には、1層目の厚さは、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とする。1層目の厚さを、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とすることで、下地絶縁膜102と1層目との界面からチャネルの形成される2層目までを20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、1層目の厚さは、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下とする。
例えば、2層目と1層目との間におけるシリコン濃度を、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。また、2層目と3層目との間におけるシリコン濃度を、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。
また、2層目の水素濃度を低減するために、1層目および3層目の水素濃度を低減すると好ましい。1層目および3層目の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、2層目の窒素濃度を低減するために、1層目および3層目の窒素濃度を低減すると好ましい。1層目および3層目の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
ゲート電極104aまたは/およびゲート電極104bの迫り出し量は、2層目に対して適用される。即ち、3層構造においては、下地絶縁膜102の厚い領域の厚さ、および1層目の厚さの和から、下地絶縁膜102の薄い領域の厚さ、およびゲート絶縁膜112の厚さの和を差し引いた長さを迫り出し量と呼ぶ。
上述の3層構造は一例である。例えば、1層目または3層目のない2層構造としても構わない。
図1に示すソース電極116aおよびドレイン電極116bは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。なお、ソース電極116aおよびドレイン電極116bの形成によって、酸化物半導体膜106の上面がえぐれた形状となる場合がある。
ゲート絶縁膜112は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
ゲート絶縁膜112は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。特に、具体的にはESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。また、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜は、過剰酸素を含むと好ましい。
保護絶縁膜118は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
保護絶縁膜118は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。特に、具体的にはESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。また、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜は、過剰酸素を含むと好ましい。
保護絶縁膜118が過剰酸素を含む絶縁膜である場合、過剰酸素が放出することにより酸化物半導体膜106の酸素欠損を低減することができる場合がある。なお、図1に示すトランジスタは、ゲート電極104aおよびゲート電極104bの間を酸素が通り抜けることができるため、効果的に酸化物半導体膜106の酸素欠損を低減できる構造といえる。
または、保護絶縁膜118は、例えば、窒化シリコン膜を有する。この場合、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。窒化シリコン膜は、水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ないと好ましい。水素ガス、アンモニアガスの放出量は、TDS分析にて測定すればよい。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しないと好ましい。
または、保護絶縁膜118は、例えば、酸化アルミニウム膜を有する。酸化アルミニウム膜は、水素ガスの放出量が少ないと好ましい。水素ガスの放出量は、TDS分析にて測定すればよい。また、酸化アルミニウム膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しないと好ましい。
保護絶縁膜118は、例えば、1層目に過剰酸素を含む絶縁膜を用い、2層目に酸素、水素および水を透過しない、またはほとんど透過しない絶縁膜を用いると好ましい。この場合、1層目から放出される酸素が酸化物半導体膜106の酸素欠損を効果的に低減することができる。また、2層目が酸素や不純物を透過しないことにより、過剰酸素の外方拡散を抑制し、かつ不純物の酸化物半導体膜106への混入を低減することができる。
保護絶縁膜118、ゲート絶縁膜112、下地絶縁膜102の少なくともいずれかが過剰酸素を含む絶縁膜を含む場合、酸化物半導体膜106の酸素欠損が低減され、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
基板100に大きな制限はない。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
また、基板100として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板100に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
<トランジスタ構造(1)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(1)の作製方法の一例について説明する。
図2および図3には、図1(B)および図1(C)に対応する断面図を示す。
まず、基板100を準備する。
次に、下地絶縁膜102となる絶縁膜を成膜する。下地絶縁膜102となる絶縁膜は、下地絶縁膜102として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。下地絶縁膜102となる絶縁膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法またはパルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法を用いて成膜すればよい。
または、基板100としてシリコンウェハを用いた場合、下地絶縁膜102となる絶縁膜は、熱酸化法によって形成してもよい。
次に、下地絶縁膜102となる絶縁膜の表面を平坦化するために、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行ってもよい。CMP処理を行うことで、下地絶縁膜102となる絶縁膜の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.3nm以下、さらに好ましくは0.1nm以下とする。上述の数値以下のRaとすることで、酸化物半導体膜106の結晶性が高くなる場合がある。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
次に、下地絶縁膜102となる絶縁膜に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成しても構わない。酸素の添加は、プラズマ処理またはイオン注入法などにより行えばよい。酸素の添加をイオン注入法で行う場合、例えば、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、ドーズ量を5×1014ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
次に、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜を成膜する。酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜106として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
なお、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜を成膜した後で、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の結晶性を高め、さらに酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜から水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜上にマスクを形成する。
なお、マスクには、ハードマスクおよびレジストマスクの積層マスクを用いればよい。ハードマスクは、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜と選択的エッチングが可能な層である。ハードマスクとして、例えば、タングステン、モリブデン、チタンおよびタンタルを一種以上含む、単体、窒化物または合金を単層で、または積層で用いればよい。または、ハードマスクとして、酸化シリコン、酸化窒化シリコンおよび窒化シリコンを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
レジストマスクは、感光性を有する有機物層または無機物層を用いればよい。レジストマスクは、スピンコート法などを用いて成膜すればよい。
次に、フォトマスクを用いて、レジストマスクに光を照射する。当該光としては、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、レジストマスクに照射する光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、フォトマスクは不要となる。
次に、基板100を現像液に浸して、レジストマスクの露光された領域を、除去または残存させる。
次に、レジストマスクを用いてハードマスクをエッチングする。
なお、ここでは、ハードマスク上にレジストマスクを形成した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ハードマスクとレジストマスクとの密着性を向上させるために、ハードマスク上に有機物からなるコート膜などを形成してもよい。また、特に微細な加工が要求されない場合、ハードマスクを設けなくてもよい場合がある。その場合、レジストマスクに照射する光として、高圧水銀灯のg線またはi線などを用いてもよい。
次に、レジストマスクを除去する。レジストマスクの除去は、プラズマ処理、薬液処理などで行えばよい。好ましくはプラズマアッシングによって除去する。
次に、ハードマスクを用いて酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の一部をエッチングし、島状の酸化物半導体膜106を形成する。このとき、下地絶縁膜102となる絶縁膜の一部をハーフエッチングすることで、下地絶縁膜102とする。
酸化物半導体膜106の一部をエッチングする方法としては、ドライエッチング処理を用いると好ましい。当該ドライエッチング処理は、例えば、メタンおよび希ガスを含む雰囲気で行えばよい。
次に、ハードマスクを除去する(図2(A1)および図2(A2)参照。)。ハードマスクの除去としては、ドライエッチング処理を用いると好ましい。当該ドライエッチング処理は、例えば、ハードマスクがタングステン層の場合、四フッ化炭素および酸素を含む雰囲気で行えばよい。
次に、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜を成膜する。該導電膜は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。該導電膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、フォトリソグラフィ法などにより、該導電膜を加工し、ソース電極116aおよびドレイン電極116bを形成する(図2(B1)および図2(B2)参照。)。このとき、下地絶縁膜102、酸化物半導体膜106を僅かにエッチングする場合がある。フォトリソグラフィ法などについては、酸化物半導体膜106の形成に関する説明を参酌する。
次に、ゲート絶縁膜112および導電膜104を順に成膜する(図3(A1)および図3(A2)参照。)。ゲート絶縁膜112は、ゲート絶縁膜112として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。ゲート絶縁膜112は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。また、導電膜104は、ゲート電極104aおよびゲート電極104bとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。導電膜104は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜104を加工し、ゲート電極104aおよびゲート電極104bを形成する。フォトリソグラフィ法などについては、酸化物半導体膜106の形成に関する説明を参酌する。
次に、保護絶縁膜118を成膜する(図3(B1)および図3(B2)参照。)。保護絶縁膜118は、保護絶縁膜118として示した絶縁膜を用いて成膜すればよい。保護絶縁膜118は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理よりも低温で行えばよい。第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
以上のようにして、図1に示したトランジスタを作製することができる。
<トランジスタ構造(2)>
本発明の一態様に係るトランジスタの異なる一例について説明する。
図4は、トランジスタの上面図および断面図である。図4(A)は、トランジスタの上面図を示す。図4(A)において、一点鎖線B1−B2に対応する断面図を図4(B)に示す。また、図4(A)において、一点鎖線B3−B4に対応する断面図を図4(C)に示す。
図4に示すトランジスタは、図1に示したトランジスタと比べて、例えば、チャネルの形成される酸化物半導体膜とゲート絶縁膜との間に、さらに酸化物半導体膜を有する点が異なる。したがって、図4に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜とチャネルの形成される酸化物半導体膜とが接しない(離れている)点が異なるため、不純物などの混入が起こりにくい構造である。
上面図である図4(A)において、酸化物半導体膜206bがゲート電極204aまたはゲート電極204bと重なる領域で、ソース電極216aとドレイン電極216bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜206bがゲート電極204aまたはゲート電極204bと重なる領域で、ソース電極216aとドレイン電極216bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。したがって、図4(A)において、チャネル幅は一点鎖線B3−B4の方向におけるゲート電極204aおよびゲート電極204bと重なる領域の酸化物半導体膜206bの長さである。
チャネル長方向の断面図である図4(B)において、トランジスタは、基板200上の下地絶縁膜202と、下地絶縁膜202上の酸化物半導体膜206aと、酸化物半導体膜206a上の酸化物半導体膜206bと、下地絶縁膜202上および酸化物半導体膜206b上のソース電極216aおよびドレイン電極216bと、酸化物半導体膜206b上、ソース電極216a上およびドレイン電極216b上の保護絶縁膜218と、保護絶縁膜218上の保護絶縁膜208と、を有する。
チャネル幅方向の断面図である図4(C)において、トランジスタは、基板200上の下地絶縁膜202と、下地絶縁膜202上の酸化物半導体膜206aと、酸化物半導体膜206a上の酸化物半導体膜206bと、下地絶縁膜202上および酸化物半導体膜206b上の酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bと、酸化物半導体膜207a上のゲート絶縁膜212aと、酸化物半導体膜207b上のゲート絶縁膜212bと、ゲート絶縁膜212a上のゲート電極204aと、ゲート絶縁膜212b上のゲート電極204bと、酸化物半導体膜206b上、ゲート電極204a上およびゲート電極204b上の保護絶縁膜218と、保護絶縁膜218上の保護絶縁膜208と、を有する。
なお、トランジスタは、保護絶縁膜208を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、保護絶縁膜218を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、下地絶縁膜202を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、酸化物半導体膜206aを有さなくても構わない場合がある。
なお、図4(C)において、酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bは繋がっていても構わない。その場合、図4(B)において、酸化物半導体膜206b上、ソース電極216a上およびドレイン電極216b上にも酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bが配置される。また、ゲート絶縁膜212aおよびゲート絶縁膜212bは繋がっていても構わない。その場合、図4(B)において、酸化物半導体膜206b上、ソース電極216a上およびドレイン電極216b上にもゲート絶縁膜212aおよびゲート絶縁膜212bが配置される。
なお、チャネル幅方向の断面図である図4(C)において、トランジスタは、ゲート電極204aおよびゲート電極204bによって、酸化物半導体膜206bの側面側からも電界が印加される構造となっている。トランジスタのチャネル幅が小さいほど(例えば、100nm以下、60nm以下または40nm以下である場合)、酸化物半導体膜206bの側面側からの電界による寄与は大きくなる。そのため、トランジスタのオン特性およびオフ特性は向上する。また、パンチスルー現象を抑制できるため、チャネル長の小さい、微細化されたトランジスタにおいても、電気特性の悪化を抑制し、ノーマリーオフの電気特性を得ることができる。このように、当該トランジスタは、電気特性の優れたトランジスタである。
なお、ゲート電極204aおよびゲート電極204bを、同じ電位としても構わない。その場合、ゲート電極204a、ゲート電極204bの一方のみを設けた場合と比べて、高いオン電流を得ることができる。例えば、ゲート電極204aとゲート電極204bとが接するように配置しても構わない。
または、ゲート電極204aおよびゲート電極204bに、異なる電位を印加しても構わない。例えば、ゲート電極204bをソース電極216aと同じ電位とし、ゲート電極204aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極204bをソース電極216aと同じ電位にすることで、ゲート電極204a、ゲート電極204bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極204bによってトランジスタのしきい値電圧を調整し、ゲート電極204aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極204bをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極204bをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
ゲート電極204aは、ゲート電極104aについての記載を参照する。
ゲート電極204bは、ゲート電極104bについての記載を参照する。
図4(B)および図4(C)に示すように、下地絶縁膜202は、酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bと重なる領域が厚く、重ならない領域が薄くなっている。これは、酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bのエッチング時や、酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bが形成された後の工程における薬液処理、プラズマ処理などによって下地絶縁膜202がエッチングされるためである。なお、下地絶縁膜202がエッチングされる条件によっては、下地絶縁膜202の厚い領域は、酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bと重なる領域の外側または内側となる場合がある。つまり、下地絶縁膜202の薄い領域が、酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bと重なる領域の内側にある場合もある。ただし、下地絶縁膜202の厚さの異なる領域は、全てにおいて上記のような形状とならなくてもよく、例えば、半導体装置内またはトランジスタ内において、下地絶縁膜202の厚い領域が酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bと重なる領域の外側まである箇所と、下地絶縁膜202の薄い領域が酸化物半導体膜206aおよび酸化物半導体膜206bと重なる領域の内側まである箇所と、を有しても構わない。
例えば、下地絶縁膜202が厚さの異なる領域を有することにより、ゲート電極204aまたは/およびゲート電極204bを、酸化物半導体膜206bの下面よりも下まで配置することができる場合がある。このような構造では、ゲート電極204aまたは/およびゲート電極204bによって、酸化物半導体膜206bの側面または/および下面からも電界が印加される。そのため、酸化物半導体膜206bの各方位から効果的に電界を印加でき、高いオン電流と、低いオフ電流と、微細化に伴う電気特性の悪化の抑制と、を実現することが可能となる。特に、酸化物半導体膜206bが厚いほど、上面および下面からの電界よりも側面からの電界の寄与が大きくなる。
なお、図4(C)において、下地絶縁膜202の厚い領域の厚さ、および酸化物半導体膜206aの厚さの和から、下地絶縁膜202の薄い領域の厚さ、酸化物半導体膜207a(または酸化物半導体膜207b)およびゲート絶縁膜212a(またはゲート絶縁膜212b)の厚さの和を差し引いた長さを迫り出し量と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
該迫り出し量が大きいほど、酸化物半導体膜206bの下面から印加される電界が効果的になる。したがって、該迫り出し量が大きいほど、トランジスタのオン電流は大きくなり、オフ電流は小さくなり、トランジスタの微細化に伴う電気特性の悪化は抑制される。なお、一定の範囲においては、該迫り出し量が大きいほど、オン電流を効果的に大きくし、かつオフ電流を効果的に小さくし、微細化に伴う電気特性の悪化を効果的に抑制することができるが、一定の範囲を超えた場合には該迫り出し量を大きくしていくことに対する寄与が小さくなっていく。例えば、生産時におけるばらつきなどを小さくするためには、該迫り出し量を一定の範囲より大きくして、該迫り出し量のばらつきの影響を低減した方が好ましい場合がある。なお、該迫り出し量を大きくするためには、下地絶縁膜202または/および酸化物半導体膜206aを厚くし、かつエッチング量を増やさなくてはならなくなるため、生産性の低下の観点からは、必要以上に該迫り出し量を大きくし過ぎない方が好ましい場合もある。したがって、該迫り出し量は、上述したような好ましい範囲を有する。
下地絶縁膜202は、下地絶縁膜102についての記載を参照する。
酸化物半導体膜206aは、3層構造とした場合の酸化物半導体膜106における1層目の記載を参照する。酸化物半導体膜206bは、3層構造とした場合の酸化物半導体膜106における2層目の記載を参照する。酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bは、3層構造とした場合の酸化物半導体膜106における3層目の記載を参照する。
酸化物半導体膜206bの厚さは、チャネル幅の0.5倍以上、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上とする。図4に示したトランジスタは、酸化物半導体膜206bの側面にゲート電極204aおよびゲート電極204bからの電界が印加されるため、酸化物半導体膜206bを厚くした場合でも良好なスイッチング特性が得られる。したがって、スケーリング則に沿った、酸化物半導体膜206bの薄膜化が不要となる場合がある。酸化物半導体膜206bは、厚いほど側面の面積が増大し、トランジスタのオン電流を大きくなる。
酸化物半導体膜206bの厚さは、例えば、10nm以上500nm以下、好ましくは20nm以上300nm以下、さらに好ましくは40nm以上200nm以下、より好ましくは60nm以上150nm以下とする。酸化物半導体膜206bが厚いほどトランジスタのオン電流を大きくすることができるが、厚すぎると形状不良の原因となり、半導体装置の歩留まりを低下させてしまう場合がある。したがって、半導体装置の歩留まりを高く、かつトランジスタのオン電流を大きくするためには、酸化物半導体膜206bを上述の厚さとすることが好ましい。なお、酸化物半導体膜206bが厚い場合、オフ電流が大きくなることや、電気特性が悪化(例えば、ノーマリーオン化)する場合がある。本発明の一態様に係るトランジスタにおいては、酸化物半導体膜206bの側面からも電界が印加されることにより、酸化物半導体膜206bが厚くなることに起因したトランジスタの不良を抑制することができる。
図4に示すソース電極216aおよびドレイン電極216bは、ソース電極116aおよびドレイン電極116bについての記載を参照する。なお、ソース電極216aおよびドレイン電極216bの形成によって、酸化物半導体膜206bの上面がえぐれた形状となる場合がある。
ゲート絶縁膜212aおよびゲート絶縁膜212bは、ゲート絶縁膜112についての記載を参照する。
保護絶縁膜218は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
保護絶縁膜218は、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。特に、具体的にはESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm3以下、好ましくは5×1016個/cm3以下である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いると好ましい。また、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜は、過剰酸素を含むと好ましい。
保護絶縁膜218が過剰酸素を含む絶縁膜である場合、過剰酸素が放出することにより酸化物半導体膜206bの酸素欠損を低減することができる場合がある。なお、図4に示すトランジスタは、ゲート電極204aおよびゲート電極204bの間を酸素が通り抜けることができるため、効果的に酸化物半導体膜206bの酸素欠損を低減できる構造といえる。
保護絶縁膜208は、例えば、窒化シリコン膜を有する。この場合、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。窒化シリコン膜は、水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ないと好ましい。水素ガス、アンモニアガスの放出量は、TDS分析にて測定すればよい。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しないと好ましい。
または、保護絶縁膜208は、例えば、酸化アルミニウム膜を有する。酸化アルミニウム膜は、水素ガスの放出量が少ないと好ましい。水素ガスの放出量は、TDS分析にて測定すればよい。また、酸化アルミニウム膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しないと好ましい。
保護絶縁膜218および保護絶縁膜208をこのような構造とすることで、保護絶縁膜218から放出される酸素が酸化物半導体膜206bの酸素欠損を効果的に低減することができる。例えば、保護絶縁膜208が酸素や不純物を透過しないことにより、過剰酸素の外方拡散を抑制し、かつ不純物の酸化物半導体膜206bへの混入を低減することができる。
なお、保護絶縁膜218と保護絶縁膜208との積層順を入れ替えても構わない。
基板200は、基板100についての記載を参照する。
<トランジスタ構造(2)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(2)の作製方法の一例について説明する。
図5および図6には、図4(B)および図4(C)に対応する断面図を示す。
まず、基板200を準備する。
次に、下地絶縁膜202となる絶縁膜を成膜する。下地絶縁膜202となる絶縁膜は、下地絶縁膜202として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。下地絶縁膜202となる絶縁膜の成膜方法は、下地絶縁膜102となる絶縁膜の成膜方法についての記載を参照する。
次に、下地絶縁膜202となる絶縁膜に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成しても構わない。酸素の添加は、プラズマ処理またはイオン注入法などにより行えばよい。酸素の添加をイオン注入法で行う場合、例えば、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、ドーズ量を5×1014ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
次に、酸化物半導体膜206aとなる酸化物半導体膜を成膜する。酸化物半導体膜206aとなる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206aとして示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜206aとなる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜を成膜する。酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜206bとして示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
なお、酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜を成膜した後で、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜の結晶性を高め、さらに酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜から水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、酸化物半導体膜206bとなる酸化物半導体膜、および酸化物半導体膜206aとなる酸化物半導体膜を加工し、島状の酸化物半導体膜206bおよび酸化物半導体膜206aを形成する。酸化物半導体膜206bおよび酸化物半導体膜206aを形成する方法は、酸化物半導体膜106を形成する方法についての記載を参照する。このとき、下地絶縁膜202となる絶縁膜の一部をハーフエッチングすることで、下地絶縁膜202とする。
次に、ソース電極216aおよびドレイン電極216bを形成する(図5(A1)および図5(A2)参照。)。ソース電極216aおよびドレイン電極216bの形成方法は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bの形成方法についての記載を参照する。
次に、酸化物半導体膜207、絶縁膜212および導電膜204を順に成膜する(図5(B1)および図5(B2)参照。)。酸化物半導体膜207は、酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bとして示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜207は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。絶縁膜212は、ゲート絶縁膜212aおよびゲート絶縁膜212bとして示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。絶縁膜212は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。また、導電膜204は、ゲート電極204aおよびゲート電極204bとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。導電膜204は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜204、絶縁膜212および酸化物半導体膜207を加工し、ゲート電極204a、ゲート電極204b、ゲート絶縁膜212a、ゲート絶縁膜212b、酸化物半導体膜207aおよび酸化物半導体膜207bを形成する(図6(B1)および図6(B2)参照。)。
次に、保護絶縁膜208を成膜する。保護絶縁膜208は、保護絶縁膜208として示した絶縁膜を用いて成膜すればよい。保護絶縁膜208は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、保護絶縁膜218を成膜する(図6(B1)および図6(B2)参照。)。保護絶縁膜218は、保護絶縁膜218として示した絶縁膜を用いて成膜すればよい。保護絶縁膜218は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理よりも低温で行えばよい。第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
以上のようにして、図4に示したトランジスタを作製することができる。
<トランジスタ構造(3)>
本発明の一態様に係るトランジスタの一例について説明する。
図7は、トランジスタの上面図および断面図である。図7(A)は、トランジスタの上面図を示す。図7(A)において、一点鎖線C1−C2に対応する断面図を図7(B)に示す。また、図7(A)において、一点鎖線C3−C4に対応する断面図を図7(C)に示す。
図7に示すトランジスタは、図1に示したトランジスタと比べて、例えば、二つのゲート電極の一部が重なる点が異なる。また、例えば、二つのゲート電極で、ゲート絶縁膜が別である点が異なる。したがって、図7に示すトランジスタは、ソース電極およびドレイン電極の間に配置される酸化物半導体膜の領域が、二つのゲート電極のいずれかと重なる。
上面図である図7(A)において、酸化物半導体膜306がゲート電極304aまたはゲート電極304bと重なる領域で、ソース電極316aとドレイン電極316bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜306がゲート電極304aまたはゲート電極304bと重なる領域で、ソース電極316aとドレイン電極316bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。したがって、図7(A)において、チャネル幅は一点鎖線C3−C4の方向における酸化物半導体膜306の長さである。
なお、半導体装置の集積度を高めるためには、トランジスタのサイズを縮小することが好ましい。例えば、チャネル長は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。また、チャネル幅は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。このような微細なトランジスタにおいては、電気特性の悪化などの不具合を生じる場合がある。しかしながら、本発明の一態様に係るトランジスタは、微細化に伴う電気特性の悪化を抑制できるため、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
チャネル長方向の断面図である図7(B)において、トランジスタは、基板300上の下地絶縁膜302と、下地絶縁膜302上の酸化物半導体膜306と、下地絶縁膜302上および酸化物半導体膜306上のソース電極316aおよびドレイン電極316bと、酸化物半導体膜306上、ソース電極316a上およびドレイン電極316b上のゲート絶縁膜312aと、ゲート絶縁膜312a上のゲート電極304aと、ソース電極316a上、ドレイン電極316b上およびゲート電極304a上のゲート絶縁膜312bと、ゲート絶縁膜312b上のゲート電極304bと、ゲート絶縁膜312b上およびゲート電極304b上の保護絶縁膜318と、を有する。なお、図7(B)において、ゲート絶縁膜312bは、ソース電極316a上または/およびドレイン電極316b上に配置されなくても構わない。
チャネル幅方向の断面図である図7(C)において、トランジスタは、基板300上の下地絶縁膜302と、下地絶縁膜302上の酸化物半導体膜306と、下地絶縁膜302上および酸化物半導体膜306上にあり、酸化物半導体膜306の一部を露出するよう配置されたゲート絶縁膜312aと、ゲート絶縁膜312a上のゲート電極304aと、下地絶縁膜302上、酸化物半導体膜306上およびゲート電極304a上のゲート絶縁膜312bと、ゲート絶縁膜312b上のゲート電極304bと、ゲート絶縁膜312b上およびゲート電極304b上の保護絶縁膜318と、を有する。なお、図7(C)において、ゲート絶縁膜312bは、ゲート電極304aを覆って配置しているが、これに限定されない。例えば、ゲート絶縁膜312bは、ゲート電極304aの一部を露出するよう配置されても構わない。
なお、トランジスタは、保護絶縁膜318を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、下地絶縁膜302を有さなくても構わない場合がある。
なお、チャネル幅方向の断面図である図7(C)において、トランジスタは、ゲート電極304aおよびゲート電極304bによって、酸化物半導体膜306の側面側からも電界が印加される構造となっている。トランジスタのチャネル幅が小さいほど(例えば、100nm以下、60nm以下または40nm以下である場合)、酸化物半導体膜306の側面側からの電界による寄与は大きくなる。そのため、トランジスタのオン特性およびオフ特性は向上する。また、パンチスルー現象を抑制できるため、チャネル長の小さい、微細化されたトランジスタにおいても、電気特性の悪化を抑制し、ノーマリーオフの電気特性を得ることができる。このように、当該トランジスタは、電気特性の優れたトランジスタである。
なお、ゲート電極304aおよびゲート電極304bを、同じ電位としても構わない。その場合、ゲート電極304a、ゲート電極304bの一方のみを設けた場合と比べて、高いオン電流を得ることができる。例えば、ゲート電極304aとゲート電極304bとが接するように配置しても構わない。
または、ゲート電極304aおよびゲート電極304bに、異なる電位を印加しても構わない。例えば、ゲート電極304bをソース電極316aと同じ電位とし、ゲート電極304aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極304bをソース電極316aと同じ電位にすることで、ゲート電極304a、ゲート電極304bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極304aをソース電極316aと同じ電位とし、ゲート電極304bによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極304aをソース電極316aと同じ電位にすることで、ゲート電極304a、ゲート電極304bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極304bによってトランジスタのしきい値電圧を調整し、ゲート電極304aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極304bをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極304bをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
または、ゲート電極304aによってトランジスタのしきい値電圧を調整し、ゲート電極304bによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極304aをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極304aをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
ゲート電極304aは、ゲート電極104aについての記載を参照する。
ゲート電極304bは、ゲート電極104bについての記載を参照する。
なお、ゲート電極304aおよびゲート電極304bは、同種の導電膜であってもよい。
図7(B)および図7(C)に示すように、下地絶縁膜302は、酸化物半導体膜306と重なる領域が厚く、重ならない領域が薄くなっている。これは、酸化物半導体膜306のエッチング時や、酸化物半導体膜306が形成された後の工程における薬液処理、プラズマ処理などによって下地絶縁膜302がエッチングされるためである。なお、下地絶縁膜302がエッチングされる条件によっては、下地絶縁膜302の厚い領域は、酸化物半導体膜306と重なる領域の外側または内側となる場合がある。つまり、下地絶縁膜302の薄い領域が、酸化物半導体膜306と重なる領域の内側にある場合もある。ただし、下地絶縁膜302の厚さの異なる領域は、全てにおいて上記のような形状とならなくてもよく、例えば、半導体装置内またはトランジスタ内において、下地絶縁膜302の厚い領域が酸化物半導体膜306と重なる領域の外側まである箇所と、下地絶縁膜302の薄い領域が酸化物半導体膜306と重なる領域の内側まである箇所と、を有しても構わない。
例えば、下地絶縁膜302が厚さの異なる領域を有することにより、ゲート電極304aまたは/およびゲート電極304bを、酸化物半導体膜306の下面よりも下まで配置することができる場合がある。このような構造では、ゲート電極304aまたは/およびゲート電極304bによって、酸化物半導体膜306の側面または/および下面からも電界が印加される。そのため、酸化物半導体膜306の各方位から効果的に電界を印加でき、高いオン電流と、低いオフ電流と、微細化に伴う電気特性の悪化の抑制と、を実現することが可能となる。特に、酸化物半導体膜306が厚いほど、上面および下面からの電界よりも側面からの電界の寄与が大きくなる。
なお、図7(C)において、下地絶縁膜302の厚い領域の厚さから、下地絶縁膜302の薄い領域の厚さ、およびゲート絶縁膜312aの厚さの和を差し引いた長さをゲート電極304aの迫り出し量と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
同様に、図7(C)において、下地絶縁膜302の厚い領域の厚さから、下地絶縁膜302の薄い領域の厚さ、およびゲート絶縁膜312bの厚さの和を差し引いた長さをゲート電極304bの迫り出し量と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
迫り出し量が大きいほど、酸化物半導体膜306の下面から印加される電界が効果的になる。したがって、迫り出し量が大きいほど、トランジスタのオン電流は大きくなり、オフ電流は小さくなり、トランジスタの微細化に伴う電気特性の悪化は抑制される。なお、一定の範囲においては、迫り出し量が大きいほど、オン電流を効果的に大きくし、かつオフ電流を効果的に小さくし、微細化に伴う電気特性の悪化を効果的に抑制することができるが、一定の範囲を超えた場合には迫り出し量を大きくしていくことに対する寄与が小さくなっていく。例えば、生産時におけるばらつきなどを小さくするためには、迫り出し量を一定の範囲より大きくして、迫り出し量のばらつきの影響を低減した方が好ましい場合がある。なお、迫り出し量を大きくするためには、下地絶縁膜302を厚くし、かつエッチング量を増やさなくてはならなくなるため、生産性の低下の観点からは、必要以上に迫り出し量を大きくし過ぎない方が好ましい場合もある。したがって、迫り出し量は、上述したような好ましい範囲を有する。
下地絶縁膜302は、下地絶縁膜102についての記載を参照する。
酸化物半導体膜306は、酸化物半導体膜106についての記載を参照する。
図7に示すソース電極316aおよびドレイン電極316bは、ソース電極116aおよびドレイン電極116bについての記載を参照する。なお、ソース電極316aおよびドレイン電極316bの形成によって、酸化物半導体膜306の上面がえぐれた形状となる場合がある。
ゲート絶縁膜312aは、ゲート絶縁膜112についての記載を参照する。
ゲート絶縁膜312bは、ゲート絶縁膜112についての記載を参照する。
なお、ゲート絶縁膜312aはゲート絶縁膜312bと同程度の厚さとしてもよい。または、ゲート絶縁膜312aはゲート絶縁膜312bよりも厚くしてもよい。または、ゲート絶縁膜312bはゲート絶縁膜312aよりも厚くしてもよい。
保護絶縁膜318は、保護絶縁膜118についての記載を参照する。
基板300は、基板100についての記載を参照する。
<トランジスタ構造(3)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(3)の作製方法の一例について説明する。
図8および図9には、図7(B)および図7(C)に対応する断面図を示す。
まず、基板300を準備する。
次に、下地絶縁膜302となる絶縁膜を成膜する。下地絶縁膜302となる絶縁膜は、下地絶縁膜302として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。下地絶縁膜302となる絶縁膜の成膜方法は、下地絶縁膜102となる絶縁膜の成膜方法についての記載を参照する。
次に、下地絶縁膜302となる絶縁膜に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成しても構わない。酸素の添加は、プラズマ処理またはイオン注入法などにより行えばよい。酸素の添加をイオン注入法で行う場合、例えば、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、ドーズ量を5×1014ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
次に、酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜を成膜する。酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜306として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜の成膜方法は、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の成膜方法についての記載を参照する。
なお、酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜を成膜した後で、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜の結晶性を高め、さらに酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜から水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、酸化物半導体膜306となる酸化物半導体膜を加工し、島状の酸化物半導体膜306を形成する。酸化物半導体膜306の形成方法は、酸化物半導体膜106の形成方法についての記載を参照する。このとき、下地絶縁膜302となる絶縁膜の一部をハーフエッチングすることで、下地絶縁膜302とする。
次に、ソース電極316aおよびドレイン電極316bを形成する(図8(A1)および図8(A2)参照。)。ソース電極316aおよびドレイン電極316bの形成方法は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bの形成方法についての記載を参照する。
次に、絶縁膜312および導電膜304を順に成膜する(図8(B1)および図8(B2)参照。)。絶縁膜312は、ゲート絶縁膜312aとして示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。絶縁膜312は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。また、導電膜304は、ゲート電極304aとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。導電膜304は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜304および絶縁膜312を加工し、酸化物半導体膜306の一部を露出させるようゲート電極304aおよびゲート絶縁膜312aを形成する(図9(A1)および図9(A2)参照。)。
次に、ゲート絶縁膜312bを成膜する。ゲート絶縁膜312bは、ゲート絶縁膜312bとして示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。ゲート絶縁膜312bは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、ゲート電極304bとなる導電膜を成膜する。ゲート電極304bとなる導電膜は、ゲート電極304bとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。ゲート電極304bとなる導電膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、フォトリソグラフィ法などにより、ゲート電極304bとなる導電膜を加工してゲート電極304bを形成する。
次に、保護絶縁膜318を成膜する(図9(B1)および図9(B2)参照。)。保護絶縁膜318は、保護絶縁膜318として示した絶縁膜を用いて成膜すればよい。保護絶縁膜318は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理よりも低温で行えばよい。第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよい場合がある。ただし、第2の加熱処理は、絶縁膜312を成膜した後、ゲート電極304aを形成した後、またはゲート絶縁膜312bを成膜した後などに行っても構わない。
以上のようにして、図7に示したトランジスタを作製することができる。
<トランジスタ構造(4)>
本発明の一態様に係るトランジスタの一例について説明する。
図10は、トランジスタの上面図および断面図である。図10(A)は、トランジスタの上面図を示す。図10(A)において、一点鎖線D1−D2に対応する断面図を図10(B)に示す。また、図10(A)において、一点鎖線D3−D4に対応する断面図を図10(C)に示す。
図10に示すトランジスタは、図7に示したトランジスタと比べて、例えば、ゲート電極の一方とゲート絶縁膜との間に電荷蓄積膜を有してもよい点が異なる。図10に示すトランジスタは、電荷蓄積膜に電荷が捕獲されることによって、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。電荷蓄積膜に捕獲された電荷は、例えば、意図的にデトラップさせない限り半永久的に保持される。そのため、トランジスタのしきい値電圧の調整のために常にゲート電極の一方に電位を印加しなくても構わない場合がある。
上面図である図10(A)において、酸化物半導体膜406がゲート電極404aまたはゲート電極404bと重なる領域で、ソース電極416aとドレイン電極416bとの間隔をチャネル長という。また、酸化物半導体膜406がゲート電極404aまたはゲート電極404bと重なる領域で、ソース電極416aとドレイン電極416bとの中間地点を結んだ線の長さをチャネル幅という。したがって、図10(A)において、チャネル幅は一点鎖線D3−D4の方向における酸化物半導体膜406の長さである。
なお、半導体装置の集積度を高めるためには、トランジスタのサイズを縮小することが好ましい。例えば、チャネル長は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。また、チャネル幅は、100nm以下、好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下とする。このような微細なトランジスタにおいては、電気特性の悪化などの不具合を生じる場合がある。しかしながら、本発明の一態様に係るトランジスタは、微細化に伴う電気特性の悪化を抑制できるため、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
チャネル長方向の断面図である図10(B)において、トランジスタは、基板400上の下地絶縁膜402と、下地絶縁膜402上の酸化物半導体膜406と、下地絶縁膜402上および酸化物半導体膜406上のソース電極416aおよびドレイン電極416bと、酸化物半導体膜406上、ソース電極416a上およびドレイン電極416b上のゲート絶縁膜412aと、ゲート絶縁膜412a上のゲート電極404aと、ソース電極416a上、ドレイン電極416b上、ゲート絶縁膜412a上およびゲート電極404a上のゲート絶縁膜412bと、ゲート絶縁膜412b上のゲート電極404bと、ゲート絶縁膜412b上およびゲート電極404b上の保護絶縁膜418と、を有する。なお、図10(B)において、ゲート絶縁膜412bは、ソース電極416a上または/およびドレイン電極416b上に配置されなくても構わない。
チャネル幅方向の断面図である図10(C)において、トランジスタは、基板400上の下地絶縁膜402と、下地絶縁膜402上の酸化物半導体膜406と、下地絶縁膜402上および酸化物半導体膜406上のゲート絶縁膜412aと、ゲート絶縁膜412a上のゲート電極404aと、ゲート絶縁膜412a上およびゲート電極404a上のゲート絶縁膜412bと、ゲート絶縁膜412b上のゲート電極404bと、ゲート絶縁膜412b上およびゲート電極404b上の保護絶縁膜418と、を有する。なお、図10(C)において、ゲート絶縁膜412bは、ゲート電極404aを覆って配置しているが、これに限定されない。例えば、ゲート絶縁膜412bは、ゲート電極404aの一部を露出するよう配置されても構わない。
なお、トランジスタは、保護絶縁膜418を有さなくても構わない場合がある。また、トランジスタは、下地絶縁膜402を有さなくても構わない場合がある。
なお、チャネル幅方向の断面図である図10(C)において、トランジスタは、ゲート電極404aおよびゲート電極404bによって、酸化物半導体膜406の側面側からも電界が印加される構造となっている。トランジスタのチャネル幅が小さいほど(例えば、100nm以下、60nm以下または40nm以下である場合)、酸化物半導体膜406の側面側からの電界による寄与は大きくなる。そのため、トランジスタのオン特性およびオフ特性は向上する。また、パンチスルー現象を抑制できるため、チャネル長の小さい、微細化されたトランジスタにおいても、電気特性の悪化を抑制し、ノーマリーオフの電気特性を得ることができる。このように、当該トランジスタは、電気特性の優れたトランジスタである。
なお、ゲート電極404aおよびゲート電極404bを、同じ電位としても構わない。その場合、ゲート電極404a、ゲート電極404bの一方のみを設けた場合と比べて、高いオン電流を得ることができる。例えば、ゲート電極404aとゲート電極404bとが接するように配置しても構わない。
または、ゲート電極404aおよびゲート電極404bに、異なる電位を印加しても構わない。例えば、ゲート電極404bをソース電極416aと同じ電位とし、ゲート電極404aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極404bをソース電極416aと同じ電位にすることで、ゲート電極404a、ゲート電極404bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極404aをソース電極416aと同じ電位とし、ゲート電極404bによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。ゲート電極404aをソース電極416aと同じ電位にすることで、ゲート電極404a、ゲート電極404bの一方のみを設けた場合と比べて、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。
または、ゲート電極404bによってトランジスタのしきい値電圧を制御し、ゲート電極404aによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極404bをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極404bをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
または、ゲート電極404aによってトランジスタのしきい値電圧を制御し、ゲート電極404bによってトランジスタのスイッチングを制御する構成としても構わない。例えば、ゲート電極404aをソース電極よりも低い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。または、例えば、ゲート電極404aをソース電極よりも高い電位にすることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。このとき、トランジスタのしきい値電圧を、半導体装置に含まれるトランジスタごとに異ならせても構わない。半導体装置に含まれるトランジスタごとに異なるしきい値電圧を与えることで、半導体装置の消費電力を低減することができる場合がある。
ゲート絶縁膜412aは、ゲート絶縁膜112についての記載を参照する。
ゲート絶縁膜412bは、ゲート絶縁膜112についての記載を参照する。
または、ゲート絶縁膜412bは、電荷蓄積領域を有する膜(電荷蓄積膜)であってもよい。電荷蓄積膜は、一定以上の電圧が印加されることによって、電荷を捕獲することができる膜である。電荷蓄積膜は、例えば、窒素を含む領域を有する。例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化ゲルマニウム、窒化酸化ゲルマニウム、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどを含む領域を有する。また、電荷蓄積膜中の電荷蓄積領域の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下とする。
なお、電荷蓄積領域は、絶縁膜中に電気的に浮くように配置する。例えば、電荷蓄積膜は、絶縁領域によって電荷蓄積領域が挟まれた構造であってもよい。例えば、電荷蓄積膜は、絶縁膜の積層の間に電荷蓄積領域を有する構造であってもよい。
電荷蓄積膜にマイナスの電荷を捕獲させるためには、例えば、ゲート電極404bにプラスの電圧として1V以上10V以下、好ましくは1.5V以上5V以下程度を印加すればよい。また、電荷蓄積膜にプラスの電荷を捕獲させるためには、例えば、ゲート電極404bにマイナスの電圧として−10V以上−1V以下、好ましくは−5V以上−1.5V以下程度を印加すればよい。電荷蓄積膜にマイナスの電荷を捕獲させることで、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる。また、電荷蓄積膜にプラスの電荷を捕獲させることで、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させることができる。
なお、ゲート絶縁膜412aはゲート絶縁膜412bと同程度の厚さとしてもよい。または、ゲート絶縁膜412aはゲート絶縁膜412bよりも厚くしてもよい。または、ゲート絶縁膜412bはゲート絶縁膜412aよりも厚くしてもよい。
ゲート電極404aは、ゲート電極104aについての記載を参照する。
ゲート電極404bは、ゲート電極104bについての記載を参照する。
なお、ゲート電極404aおよびゲート電極404bは、同種の導電膜であってもよい。
図10(B)および図10(C)に示すように、下地絶縁膜402は、酸化物半導体膜406と重なる領域が厚く、重ならない領域が薄くなっている。これは、酸化物半導体膜406のエッチング時や、酸化物半導体膜406が形成された後の工程における薬液処理、プラズマ処理などによって下地絶縁膜402がエッチングされるためである。なお、下地絶縁膜402がエッチングされる条件によっては、下地絶縁膜402の厚い領域は、酸化物半導体膜406と重なる領域の外側または内側となる場合がある。つまり、下地絶縁膜402の薄い領域が、酸化物半導体膜406と重なる領域の内側にある場合もある。ただし、下地絶縁膜402の厚さの異なる領域は、全てにおいて上記のような形状とならなくてもよく、例えば、半導体装置内またはトランジスタ内において、下地絶縁膜402の厚い領域が酸化物半導体膜406と重なる領域の外側まである箇所と、下地絶縁膜402の薄い領域が酸化物半導体膜406と重なる領域の内側まである箇所と、を有しても構わない。
例えば、下地絶縁膜402が厚さの異なる領域を有することにより、ゲート電極404aまたは/およびゲート電極404bを、酸化物半導体膜406の下面よりも下まで配置することができる場合がある。このような構造では、ゲート電極404aまたは/およびゲート電極404bによって、酸化物半導体膜406の側面または/および下面からも電界が印加される。そのため、酸化物半導体膜406の各方位から効果的に電界を印加でき、高いオン電流と、低いオフ電流と、微細化に伴う電気特性の悪化の抑制と、を実現することが可能となる。特に、酸化物半導体膜406が厚いほど、上面および下面からの電界よりも側面からの電界の寄与が大きくなる。
なお、図10(C)において、下地絶縁膜402の厚い領域の厚さから、下地絶縁膜402の薄い領域の厚さ、およびゲート絶縁膜412aの厚さの和を差し引いた長さをゲート電極404aの迫り出し量と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
同様に、図10(C)において、下地絶縁膜402の厚い領域の厚さから、下地絶縁膜402の薄い領域の厚さ、ゲート絶縁膜412aの厚さ、およびゲート絶縁膜412bの厚さの和を差し引いた長さをゲート電極404bの迫り出し量と呼ぶ。該迫り出し量は、チャネル幅の0.05倍以上3倍以下、好ましくは0.1倍以上3倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上2.5倍以下、より好ましくは0.5倍以上2倍以下、特に好ましくは1倍以上1.5倍以下とすればよい。例えば、該迫り出し量を、1.5nm以上300nm以下、好ましくは3nm以上300nm以下、さらに好ましくは6nm以上250nm以下、より好ましくは15nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上150nmとすればよい。
ただし、図10(C)において、ゲート電極404aの迫り出し量は、ゲート電極404bの迫り出し量よりも大きい。
迫り出し量が大きいほど、酸化物半導体膜406の下面から印加される電界が効果的になる。したがって、迫り出し量が大きいほど、トランジスタのオン電流は大きくなり、オフ電流は小さくなり、トランジスタの微細化に伴う電気特性の悪化は抑制される。なお、一定の範囲においては、迫り出し量が大きいほど、オン電流を効果的に大きくし、かつオフ電流を効果的に小さくし、微細化に伴う電気特性の悪化を効果的に抑制することができるが、一定の範囲を超えた場合には迫り出し量を大きくしていくことに対する寄与が小さくなっていく。例えば、生産時におけるばらつきなどを小さくするためには、迫り出し量を一定の範囲より大きくして、迫り出し量のばらつきの影響を低減した方が好ましい場合がある。なお、迫り出し量を大きくするためには、下地絶縁膜402を厚くし、かつエッチング量を増やさなくてはならなくなるため、生産性の低下の観点からは、必要以上に迫り出し量を大きくし過ぎない方が好ましい場合もある。したがって、迫り出し量は、上述したような好ましい範囲を有する。
下地絶縁膜402は、下地絶縁膜102についての記載を参照する。
酸化物半導体膜406は、酸化物半導体膜106についての記載を参照する。
図10に示すソース電極416aおよびドレイン電極416bは、ソース電極116aおよびドレイン電極116bについての記載を参照する。なお、ソース電極416aおよびドレイン電極416bの形成によって、酸化物半導体膜406の上面がえぐれた形状となる場合がある。
保護絶縁膜418は、保護絶縁膜118についての記載を参照する。
基板400は、基板100についての記載を参照する。
<トランジスタ構造(4)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(4)の作製方法の一例について説明する。
図11および図12には、図10(B)および図10(C)に対応する断面図を示す。
まず、基板400を準備する。
次に、下地絶縁膜402となる絶縁膜を成膜する。下地絶縁膜402となる絶縁膜は、下地絶縁膜402として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。下地絶縁膜402となる絶縁膜の成膜方法は、下地絶縁膜102となる絶縁膜の成膜方法についての記載を参照する。
次に、下地絶縁膜402となる絶縁膜に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成しても構わない。酸素の添加は、プラズマ処理またはイオン注入法などにより行えばよい。酸素の添加をイオン注入法で行う場合、例えば、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、ドーズ量を5×1014ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
次に、酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜を成膜する。酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜406として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜の成膜方法は、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の成膜方法についての記載を参照する。
なお、酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜を成膜した後で、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜の結晶性を高め、さらに酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜から水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、酸化物半導体膜406となる酸化物半導体膜を加工し、島状の酸化物半導体膜406を形成する。酸化物半導体膜406の形成方法は、酸化物半導体膜106の形成方法についての記載を参照する。このとき、下地絶縁膜402となる絶縁膜の一部をハーフエッチングすることで、下地絶縁膜402とする。
次に、ソース電極416aおよびドレイン電極416bを形成する(図11(A1)および図11(A2)参照。)。ソース電極416aおよびドレイン電極416bの形成方法は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bの形成方法についての記載を参照する。
次に、ゲート絶縁膜412aを成膜する。ゲート絶縁膜412aは、ゲート絶縁膜412aとして示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。ゲート絶縁膜412aの成膜方法は、絶縁膜312の成膜方法についての記載を参照する。
次に、ゲート電極404aを形成する(図11(B1)および図11(B2)参照。)。ゲート電極404aの形成方法は、ゲート電極304aの形成方法についての記載を参照する。
次に、ゲート絶縁膜412bを成膜する(図12(A1)および図12(A2)参照。)。ゲート絶縁膜412bは、ゲート絶縁膜412bとして示した絶縁膜、または電荷蓄積膜から選択して成膜すればよい。ゲート絶縁膜412bは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、ゲート電極404bを形成する。ゲート電極404bの形成方法は、ゲート電極304bの形成方法についての記載を参照する。
次に、保護絶縁膜418を成膜する(図12(B1)および図12(B2)参照。)。保護絶縁膜418は、保護絶縁膜418として示した絶縁膜を用いて成膜すればよい。保護絶縁膜418は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理よりも低温で行えばよい。第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよい場合がある。ただし、第2の加熱処理は、ゲート絶縁膜412aを成膜した後、ゲート電極404aを形成した後、またはゲート絶縁膜412bを成膜した後などに行っても構わない。
以上のようにして、図10に示したトランジスタを作製することができる。
<応用製品について>
以下では、上述した半導体装置を用いた応用製品について説明する。
上述したトランジスタは、例えば、メモリ、CPU、表示装置など様々な用途に用いることができる。
<メモリ1>
以下では、発明の一態様に係る半導体装置が有する、メモリセルの回路構成およびその動作について、図13を参照して説明する。
なお、半導体装置は、メモリセルの他、別の基板上に配置された駆動回路、電源回路等を含む場合がある。
図13(A)は、メモリセル500の一例を示す回路図である。
図13(A)に示すメモリセル500では、トランジスタ511と、トランジスタ512と、トランジスタ513と、容量素子514と、を示している。なおメモリセル500は、図13では、図示を省略しているが、実際にはマトリクス状に複数設けられている。
トランジスタ511は、ゲートに、書き込みワード線WWLが接続される。また、トランジスタ511は、ソースおよびドレインの一方に、ビット線BLが接続される。また、トランジスタ511は、ソースおよびドレインの他方に、フローティングノードFNが接続される。
トランジスタ512は、ゲートに、フローティングノードFNが接続される。また、トランジスタ512は、ソースおよびドレインの一方に、トランジスタ513のソースおよびドレインの一方が接続される。また、トランジスタ512は、ソースおよびドレインの他方に、電源線SLが接続される。
トランジスタ513は、ゲートに、読み出しワード線RWLが接続される。また、トランジスタ512は、ソースおよびドレインの他方に、ビット線BLが接続される。
容量素子514は、一方の電極に、フローティングノードFNが接続される。また、容量素子514は、他方の電極に、固定電位が与えられる。
書き込みワード線WWLには、ワード信号が与えられる。
ワード信号は、ビット線BLの電圧をフローティングノードFNに与えるために、トランジスタ511を導通状態とする信号である。
なお、書き込みワード線WWLに与えられるワード信号を制御することで、フローティングノードFNの電位が、ビット線BLの電圧に応じた電位となることを、メモリセルにデータを書き込む、という。また、読み出しワード線RWLに与えられる読み出し信号を制御することで、ビット線BLの電圧が、フローティングノードFNの電位に応じた電圧となることを、メモリセルからのデータを読み出す、という。
ビット線BLには、多値のデータが与えられる。またビット線BLには、データを読み出すための、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられる。
多値のデータは、kビット(kは2以上の整数)のデータである。具体的には、2ビットのデータであれば4値のデータであり、4段階の電圧のいずれか一を有する信号である。
ディスチャージ電圧Vdischargeは、データを読み出すために、ビット線BLに与えられる電圧である。また、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられた後、ビット線BLは電気的に浮遊状態となる。また、ディスチャージ電圧Vdischargeは、ビット線BLの初期化を行うために与えられる電圧である。
読み出しワード線RWLには、読み出し信号が与えられる。
読み出し信号は、メモリセルからデータを選択的に読み出すために、トランジスタ513のゲートに与えられる信号である。
フローティングノードFNは、容量素子514の一方の電極、トランジスタ511のソースおよびドレインの他方の電極、およびトランジスタ512のゲートを接続する配線上のいずれかのノードに相当する。
フローティングノードFNの電位は、ビット線BLによって与えられる、多値のデータに基づく電位である。また、フローティングノードFNは、トランジスタ511を非導通状態とすることで、電気的に浮遊状態となる。
電源線SLには、ビット線BLに与えられるディスチャージ電圧Vdischargeよりも高いプリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
電源線SLの電圧は、少なくともメモリセル500からデータを読み出す期間に、プリチャージ電圧Vprechargeであればよい。そのため、メモリセル500にデータを書き込む期間、または/およびデータの読み出しや書き込みを行わない期間では、電源線SLの電圧をディスチャージ電圧Vdischargeとし、ビット線BLと電源線SLとが等電位となる構成としてもよい。当該構成により、ビット線BLと電源線SLとの間にわずかに流れる貫通電流を低減することができる。
また別の構成として、電源線SLは、プリチャージ電圧Vprechargeとした定電圧を与える構成としてもよい。当該構成により、電源線SLの電圧を、プリチャージ電圧Vprechargeとディスチャージ電圧Vdischargeとで切り換えなくてよいため、電源線SLの充放電に要する消費電力を削減することができる。
電源線SLに与えられるプリチャージ電圧Vprechargeは、ビット線BLに与えられるディスチャージ電圧Vdischargeを、トランジスタ512およびトランジスタ513を介した充電により変化させる電圧である。
トランジスタ511は、導通状態と非導通状態とを切り換えることで、データの書き込みを制御するスイッチとしての機能を有する。また、非導通状態を保持することで、書き込んだデータに基づく電位を保持する機能を有する。なお、トランジスタ511は、nチャネル型のトランジスタとして、説明を行うものとする。
トランジスタ511は、非導通状態においてソースとドレインとの間を流れる電流(オフ電流)が低いトランジスタが用いられることが好適である。
図13(A)に示すメモリセル500の構成では、非導通状態を保持することで、書き込んだデータに基づく電位を保持している。そのため、フローティングノードFNでの電荷の移動を伴った電位の変動を抑えるスイッチとして、オフ電流の低いトランジスタが用いられることが特に好ましい。なお、オフ電流の低いトランジスタのオフ電流を評価する方法は後述する。
トランジスタ511は、オフ電流の低いトランジスタとし、非導通状態を保持することで、メモリセル500を不揮発性のメモリとすることができる。よって、一旦、メモリセル500に書き込まれたデータは、再度、トランジスタ511を導通状態とするまで、フローティングノードFNに保持し続けることができる。
トランジスタ512は、フローティングノードFNの電位にしたがって、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idを流す機能を有する。なお、図13(A)に示すメモリセル500の構成で、トランジスタ512のソースとドレインとの間に流れるドレイン電流Idは、ビット線BLと電源線SLとの間に流れる電流である。なおトランジスタ512は、第2のトランジスタともいう。また、トランジスタ512は、nチャネル型のトランジスタとして説明を行う。
トランジスタ513は、読み出しワード線RWLの電位にしたがって、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idを流す機能を有する。なお、図13(A)に示すメモリセル500の構成で、トランジスタ513のソースとドレインとの間に流れるドレイン電流Idは、ビット線BLと電源線SLとの間に流れる電流である。なおトランジスタ513は、第3のトランジスタともいう。また、トランジスタ513は、nチャネル型のトランジスタとして説明を行う。
なおトランジスタ512およびトランジスタ513には、しきい値電圧のばらつきの小さいトランジスタが用いられることが好ましい。ここで、しきい値電圧のばらつきが小さいトランジスタとは、トランジスタが同一プロセスで作製される際に、許容されるしきい値電圧の差が20mV以内で形成されうるトランジスタのことをいう。具体的には、チャネルが単結晶シリコンで形成されているトランジスタが挙げられる。しきい値電圧のばらつきは小さければ小さいほど好ましいが、前述した単結晶シリコンで形成されているトランジスタであっても、しきい値電圧の差が20mV程度残りうる。
次に、図13(A)に示すメモリセル500の動作を説明する。
図13(B)に示すタイミングチャートは、図13(A)で示した書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWL、フローティングノードFN、ビット線BL、および電源線SLに与えられる各信号の変化について示すものである。
図13(B)に示すタイミングチャートでは、初期状態である期間T1、データを読み出すためにビット線BLの充電を行う期間T2、を示している。
図13(B)に示す期間T1では、ビット線BLの放電を行う。このとき、書き込みワード線WWLは、Lレベルの電位が与えられる。また、読み出しワード線RWLは、Lレベルの電位が与えられる。また、フローティングノードFNは、多値のデータに対応する電位が保持される。またビット線BLは、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられる。また、電源線SLは、プリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
なお図13(B)では、多値のデータの一例として、2ビットのデータ、すなわち4値のデータを示している。具体的に図13(B)では、4値のデータ(V00、V01、V10、V11)を示しており、4段階の電位で表すことができる。
ビット線BLは、ディスチャージ電圧Vdischargeが与えられた後、電気的に浮遊状態となる。すなわち、ビット線BLは、電荷の充電または放電により電位の変動が生じる状態となる。この浮遊状態は、ビット線BLに電位を与えるスイッチをオフにすることで実現することができる。
次に、図13(B)に示す期間T2では、データを読み出すためにビット線BLの充電を行う。このとき、書き込みワード線WWLは、前の期間に引き続き、Lレベルの電位が与えられる。また、読み出しワード線RWLは、Hレベルの電位が与えられる。また、フローティングノードFNは、前の期間に引き続き、多値のデータに対応する電位が保持される。またビット線BLは、ディスチャージ電圧VdischargeがフローティングノードFNの電位にしたがって上昇する。また、電源線SLは、前の期間に引き続き、プリチャージ電圧Vprechargeが与えられる。
読み出しワード線RWLの電位の変化にしたがって、トランジスタ513が導通状態となる。そのため、トランジスタ512のソースおよびドレインの一方の電位が下降して、ディスチャージ電圧Vdischargeとなる。
トランジスタ512はnチャネル型のトランジスタであり、トランジスタ512のソースおよびドレインの一方の電位が下降してディスチャージ電圧Vdischargeとなることで、ゲートとソースとの間の電圧(ゲート電圧)の絶対値が大きくなる。このゲート電圧の上昇にしたがってトランジスタ512およびトランジスタ513では、ソースとドレインとの間にドレイン電流Idが流れる。
トランジスタ512およびトランジスタ513にドレイン電流Idが流れることで、電源線SLの電荷がビット線BLに充電される。トランジスタ512のソースの電位、およびビット線BLの電位は、充電により上昇する。トランジスタ512のソースの電位が上昇することで、トランジスタ512のゲート電圧が徐々に小さくなる。
期間T2で流れるドレイン電流Idは、トランジスタ512のしきい値電圧となるゲート電圧で流れなくなる。そのため、ビット線BLは、電位の上昇が進行し、トランジスタ512のゲート電圧がしきい値電圧となった時点で充電が完了し、定電位となる。このときのビット線BLの電位は、概ねフローティングノードFNの電位としきい値電圧との差となる。
つまり、充電により変化するビット線BLの電位は、フローティングノードFNの電位の高低を反映した形で得ることができる。この電位の違いを多値のデータの判定に用いることで、メモリセル500に書き込まれた多値のデータを読み出すことができる。
したがって、データを読み出すための信号を多値のデータの数に応じて切り換えることなく、メモリセルからの多値のデータの読み出しを行うことができる。
<メモリ2>
以下では、メモリ1と異なる半導体装置の回路構成およびその動作について、図14を参照して説明する。
図14(A)には、本発明の一態様である半導体装置として、記憶装置600を示す。図14(A)に示す記憶装置600は、記憶素子部602と、第1の駆動回路604と、第2の駆動回路606と、を有する。
記憶素子部602には、記憶素子608がマトリクス状に複数配置されている。図14(A)に示す例では、記憶素子部602には記憶素子608が5行6列に配置されている。
第1の駆動回路604および第2の駆動回路606は、記憶素子608への信号の供給を制御し、読み取り時には記憶素子608からの信号を取得する。例えば、第1の駆動回路604をワード線駆動回路とし、第2の駆動回路606をビット線駆動回路とする。ただし、これに限定されず、第1の駆動回路604をビット線駆動回路とし、第2の駆動回路606をワード線駆動回路としてもよい。
なお、第1の駆動回路604および第2の駆動回路606は、それぞれ記憶素子608と配線により電気的に接続されている。
記憶素子608は、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、を有する。記憶素子608の具体的な回路構成の一例を図14(B)に示す。図14(B)に示す記憶素子608は、第1の記憶回路610と、第2の記憶回路612と、を有する。
第1の記憶回路610は、第1のトランジスタ614と、第2のトランジスタ616と、第3のトランジスタ618と、第4のトランジスタ620と、第5のトランジスタ622と、第6のトランジスタ624と、を有する。
まず、第1の記憶回路610の構成について説明する。第1のトランジスタ614のソースおよびドレインの一方は、第1の端子630に電気的に接続され、第1のトランジスタ614のゲートは、第2の端子632に電気的に接続されている。第2のトランジスタ616のソースおよびドレインの一方は、高電位電源線Vddに電気的に接続され、第2のトランジスタ616のソースおよびドレインの他方は、第1のトランジスタ614のソースおよびドレインの他方と、第3のトランジスタ618のソースおよびドレインの一方と、第1のデータ保持部640に電気的に接続されている。第3のトランジスタ618のソースおよびドレインの他方は、低電位電源線Vssに電気的に接続されている。第2のトランジスタ616のゲートと第3のトランジスタ618のゲートは、第2のデータ保持部642に電気的に接続されている。
そして、第4のトランジスタ620のソースおよびドレインの一方は、第3の端子634に電気的に接続され、第4のトランジスタ620のゲートは、第4の端子636に電気的に接続されている。第5のトランジスタ622のソースおよびドレインの一方は、高電位電源線Vddに電気的に接続され、第5のトランジスタ622のソースおよびドレインの他方は、第4のトランジスタ620のソースおよびドレインの他方と、第6のトランジスタ624のソースおよびドレインの一方と、第2のデータ保持部642に電気的に接続されている。第6のトランジスタ624のソースおよびドレインの他方は、低電位電源線Vssに電気的に接続されている。第5のトランジスタ622のゲートと第6のトランジスタ624のゲートは、第1のデータ保持部640に電気的に接続されている。
第1のトランジスタ614、第3のトランジスタ618、第4のトランジスタ620および第6のトランジスタ624は、nチャネル型のトランジスタである。
第2のトランジスタ616および第5のトランジスタ622は、pチャネル型のトランジスタである。
第1の端子630は、ビット線に電気的に接続されている。第2の端子632は、第1のワード線に電気的に接続されている。第3の端子634は、反転ビット線に電気的に接続されている。第4の端子636は、第1のワード線に電気的に接続されている。
以上説明した構成を有することで、第1の記憶回路610は、SRAMを構成している。即ち、第1の記憶回路610は、揮発性メモリである。本発明の一態様である記憶装置600では、第1の記憶回路610に設けられた第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642が第2の記憶回路612に電気的に接続されている。
第2の記憶回路612は、第7のトランジスタ626と、第8のトランジスタ628と、を有する。
次に、第2の記憶回路612の構成について説明する。第7のトランジスタ626のソースおよびドレインの一方は、第2のデータ保持部642に電気的に接続され、第7のトランジスタ626のソースおよびドレインの他方は、第1の容量素子648の一方の電極に電気的に接続されている。第1の容量素子648の他方の電極には、低電位電源線Vssが電気的に接続されている。第8のトランジスタ628のソースおよびドレインの一方は、第1のデータ保持部640に電気的に接続され、第8のトランジスタ628のソースおよびドレインの他方は、第2の容量素子650の一方の電極に電気的に接続されている。第2の容量素子650の他方の電極には、低電位電源線Vssが電気的に接続されている。第7のトランジスタ626のゲートと第8のトランジスタ628のゲートは、第5の端子638に電気的に接続されている。
第5の端子638は、第2のワード線に電気的に接続されている。なお、第1のワード線と第2のワード線は、一方の動作にしたがって他方の信号が制御される構成であってもよいし、各々が独立に制御される構成であってもよい。
第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628は、オフ電流の低いトランジスタである。なお、図14(B)に例示する構成では、第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628は、nチャネル型のトランジスタであるが、これに限定されない。
第7のトランジスタ626と第1の容量素子648の一方の電極の間には、第3のデータ保持部644が形成されている。第8のトランジスタ628と第2の容量素子650の一方の電極の間には、第4のデータ保持部646が形成されている。第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628のオフ電流が小さいため、第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646の電荷は、長時間保持される。即ち、第2の記憶回路612は、不揮発性メモリである。
第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628では、オフ電流の低いトランジスタである。
上記したように、第1の記憶回路610は揮発性メモリであり、第2の記憶回路612は不揮発性メモリであり、第1の記憶回路610のデータ保持部である第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642は、第2の記憶回路612のデータ保持部である第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646に、オフ電流の低いトランジスタを介して電気的に接続されている。したがって、オフ電流の低いトランジスタのゲート電位を制御することで、第1の記憶回路610のデータを第2の記憶回路612のデータ保持部に退避させることができる。また、オフ電流のトランジスタを用いることで、記憶素子608への電力の供給がない場合であっても、第3のデータ保持部644および第4のデータ保持部646には、長期にわたって記憶内容を保持することができる。
このように、図14(B)に示す記憶素子608は、揮発性メモリのデータを不揮発性メモリに退避させることができる。
また、第1の記憶回路610はSRAMを構成するため、高速動作が要求される。他方、第2の記憶回路612では電力の供給を停止した後の長期間のデータ保持が要求される。このような構成は、第1の記憶回路610を高速動作可能なトランジスタを用いて形成し、第2の記憶回路612をオフ電流の低いトランジスタを用いて形成することによって実現することができる。例えば、第1の記憶回路610をシリコンを用いたトランジスタで形成し、第2の記憶回路612を酸化物半導体膜を用いたトランジスタで形成すればよい。
本発明の一態様である記憶装置600において、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンして、揮発性メモリである第1の記憶回路610のデータ保持部にデータを書き込む際に、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628がオンしていると、第1の記憶回路610のデータ保持部(第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642)が所定の電位を保持するためには、第2の記憶回路612に含まれる第1の容量素子648および第2の容量素子650に電荷を蓄積すればよい。したがって、第1の記憶回路610のデータ保持部にデータを書き込む際に、第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628がオンしていると、記憶素子608の高速動作を阻害する。また、第2の記憶回路612をシリコンを用いたトランジスタで形成すると、オフ電流を十分に小さくすることが難しく、第2の記憶回路612に長期にわたって記憶内容を保持することが困難である。
そこで、本発明の一態様である半導体装置では、第1の記憶回路610のデータ保持部(揮発性メモリ)にデータを書き込む際には、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタ(即ち、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628)をオフしておく。これによって、記憶素子608の高速動作を実現する。また、第1の記憶回路610のデータ保持部への書き込みおよび読み出しを行わない際(即ち、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620がオフの状態)には、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタをオンする。
記憶素子608の揮発性メモリへのデータの書き込みの具体的な動作を以下に示す。まず、オンされている第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオフする。次いで、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンして、第1の記憶回路610のデータ保持部(第1のデータ保持部640および第2のデータ保持部642)に所定の電位を供給した後、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオフする。その後、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオンする。これによって、第2の記憶回路612のデータ保持部には、第1の記憶回路610のデータ保持部に保持されたデータに対応したデータが保持される。
なお、少なくとも第1の記憶回路610のデータ保持部へのデータの書き込みのために、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンする際には、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628をオフとする。ただし、第1の記憶回路610のデータ保持部からのデータの読み出しのために、第1のトランジスタ614および第4のトランジスタ620をオンする際には、第2の記憶回路612に含まれる第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628はオフとしてもよいし、オンとしてもよい。
また、記憶素子608への電力の供給を停止する場合には、記憶素子608への電力の供給を停止する直前に、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタ(即ち、第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628)をオフして、第2の記憶回路612に保持されたデータを不揮発化する。揮発性メモリへの電力の供給が停止される直前に第7のトランジスタ626と第8のトランジスタ628をオフする手段は、第1の駆動回路604および第2の駆動回路606に搭載してもよいし、これらの駆動回路を制御する別の制御回路に設けられていてもよい。
なお、ここで、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配された第7のトランジスタ626および第8のトランジスタ628のオンまたはオフは、記憶素子ごとに行ってもよいし、記憶素子部602をいくつかに区分けしたブロックごとに行ってもよい。
第1の記憶回路610をSRAMとして動作させる際に、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタをオフするため、第2の記憶回路612に含まれる第1の容量素子648および第2の容量素子650への電荷の蓄積を行うことなく第1の記憶回路610にデータを保持することが可能となるため、記憶素子608を高速に動作させることができる。
また、本発明の一態様である記憶装置600では、記憶装置600への電力の供給を停止する(記憶装置600の電源を遮断する)前に、最後にデータを書き換えた記憶素子608が有する、第1の記憶回路610のデータ保持部と第2の記憶回路612のデータ保持部の間に配されたトランジスタのみをオンしてもよい。このとき、最後にデータを書き換えた記憶素子608のアドレスを外部メモリに記憶しておくと、スムーズに退避させることができる。
ただし、本発明の一態様である半導体装置の駆動方法は上記説明に限定されるものではない。
以上説明したように、記憶装置600を高速動作させることができる。また、データの退避を一部の記憶素子のみで行うため、消費電力を抑えることができる。
なお、ここでは、揮発性メモリとしてSRAMを用いたが、これに限定されず、他の揮発性メモリを用いてもよい。
<CPU>
図15は、上述したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの具体的な構成を示すブロック図である。
図15(A)に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithmetic logic unit、論理演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース1198(Bus I/F)、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189(ROM I/F)を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図15(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
図15(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジスタ1196のメモリセルとして、上述したメモリを用いることができる。
図15(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。即ち、レジスタ1196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
電源停止に関しては、図15(B)または図15(C)に示すように、メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図15(B)および図15(C)の回路の説明を行う。
図15(B)および図15(C)は、メモリセルへの電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、上述したトランジスタを用いた記憶装置である。
図15(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、メモリセル1142を複数有するメモリセル群1143とを有している。具体的に、各メモリセル1142には、上述したトランジスタを用いることができる。メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
図15(B)では、スイッチング素子1141として、上述したトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極層に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
なお、図15(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
また、図15(B)では、スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
また、図15(C)には、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
なお、本実施の形態は、基本原理の一例について述べたものである。したがって、本実施の形態の一部または全部について、実施の形態の一部また全部と、自由に組み合わせることや、適用することや、置き換えて実施することができる。
<設置例>
図16(A)において、テレビジョン装置8000は、筐体8001に表示部8002が組み込まれており、表示部8002により映像を表示し、スピーカー部8003から音声を出力することが可能である。
テレビジョン装置8000は、受信機やモデムなどを備えていてもよい。テレビジョン装置8000は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
また、テレビジョン装置8000は、情報通信を行うためのCPUや、メモリを備えていてもよい。テレビジョン装置8000は、上述したメモリやCPUを用いることが可能である。
図16(A)において、警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、検出部と、マイクロコンピュータ8101を有している。マイクロコンピュータ8101には、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。
図16(A)において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーには、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、CPU8203等を有する。図16(A)において、CPU8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、CPU8203は室外機8204に設けられていてもよい。または、室内機8200と室外機8204の両方に、CPU8203が設けられていてもよい。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、エアコンディショナーを省電力化できる。
図16(A)において、電気冷凍冷蔵庫8300には、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、CPU8304等を有する。図16(A)では、CPU8304が、筐体8301の内部に設けられている。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、電気冷凍冷蔵庫8300を省電力化できる。
図16(B)および図16(C)において、電気自動車の例を示す。電気自動車9700には、二次電池9701が搭載されている。二次電池9701の電力は、制御回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路9702は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。上述したトランジスタを用いたCPUが含まれることで、電気自動車9700を省電力化できる。
駆動装置9703は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路9702は、処理装置9704の制御信号により、二次電池9701から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
なお、本実施の形態は、基本原理の一例について述べたものである。したがって、本実施の形態の一部または全部について、実施の形態の一部また全部と、自由に組み合わせることや、適用することや、置き換えて実施することができる。