(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、従来の画像復号方法および画像符号化方法に関し、以下の問題が生じることを見出した。
CABACの算術符号化は、コンテキストと呼ばれる確率モデルのインデックスであるctxIdxと、符号化されるバイナリ信号binValとを入力し、内部確率状態を示す情報であるcodIRange、codILow、firstBitFlag、およびBitsOutstandingを更新しつつ、出力符号列を決定する処理である。
なお、内部確率状態の情報の初期値には、codIRange=510、codILow=0、firstBitFlag=1、およびBitsOutstanding=0が設定される。
一方、CABACに対応する算術復号は、上述の確率モデルのインデックスであるctxIdxと、関連情報であるctxIdxTableと、復号対象の符号列がバイパス復号処理されたものかどうかを示すbypassFlagとを入力し、内部確率状態を示す情報であるcodIRangeおよびcodIOffsetを更新しつつ、復号バイナリ信号binを出力する処理である。
上記のように、CABACの処理は、算術符号化および算術復号のそれぞれにおいて、内部確率状態を更新しつつ符号化または復号を行う処理である。また、CABACの処理では、処理を途中から開始した場合、同一の構成単位(画像を構成する単位であって、処理単位ともいう)に対する内部確率状態が符号化時と復号時とで一致しないことが発生する。その結果、画像の符号化または復号を適切に行うことができない。このため、符号化時および復号時には終端処理が行われる。
非特許文献1に示す方法では、符号化時には、1を示すスライス終端フラグ(end_of_slice)を算術符号化してスライスの終端に埋め込み、終端処理を行う。そして、復号時には、そのスライス終端フラグを算術復号して終端処理を行っている。これにより、CABACの処理(算術符号化または算術復号)を途中から開始する場合であっても、その開始位置がスライスの先頭であれば、内部確率状態を符号化時と復号時とで一致させることができる。
しかしながら、HEVC規格では、スライスの他に、タイルと呼ばれる並列処理するための構成単位や、WPP(ウェーブフロント処理)と呼ばれる並列処理を可能とするための構成単位(以下、CTUラインという)があるが、これらの処理単位に対しては、終端処理は行われない。
図1は、エントロピー復号部の構成を示すブロック図である。
このエントロピー復号部800は、CABACの算術復号を行うものであって、CTU復号部801、スライス終端判定部802、サブ終端判定部803、バイト先頭探索部804および終端処理部805を備える。
図2は、エントロピー復号部800の処理動作を示すフローチャートである。
まず、エントロピー復号部800のCTU復号部801は、ビットストリームBSに含まれるCTU(coding tree unit)を算術復号する(ステップS801)。CTUはピクチャを構成するブロックである。次に、スライス終端判定部802は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)を算術復号する(ステップS802)。次に、スライス終端判定部802は、その復号されたスライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示すか否かを判定する(ステップS803)。ここで、スライス終端フラグが0を示さないと判定されると(ステップS803でNO)、終端処理部805は、算術復号の終端処理を行う(ステップS804)。一方、スライス終端フラグが0を示すと判定されると(ステップS803でYES)、サブ終端判定部803は、直前に算術復号されたCTUがサブ単位の終端にあるか否かを判定する(ステップS805)。サブ単位は、上述のタイルまたはCTUラインである。なお、CTUラインは、水平方向に配列された複数のCTUからなる構成単位である。
ここで、サブ単位の終端にあると判定されると(ステップS805でYES)、バイト先頭探索部804はバイト先頭探索を行う(ステップS806)。バイト先頭探索は、ビットストリーム中のビット列を読み飛ばして、バイト単位の先頭を探索する処理である。一方、サブ単位の終端にないと判定された後(ステップS805でNO)、またはステップS806の処理が行なわれた後には、エントロピー復号部800はステップS801からの処理を次のCTUに対して繰り返し実行する。
図3Aは、スライスのシンタックスを示す図である。
スライスは、符号化されたCTUを示すデータ851(coding_tree_unit())と、スライスの終端を判定するための算術符号化されたスライス終端フラグ852(end_of_slice_flag)とを含む。さらに、スライスは、条件853が満たされる場合には、予め定められたビット列854(byte_alignment())を含む。この条件853は、データ851によって示されるCTUがサブ単位の終端にあるという条件である。
図3Bは、ビット列854のシンタックスを示す図である。
ビット列854は、1を示すビット855(bit_equal_to_one)と、必要に応じた数の0を示すビット856(bit_equal_to_zero)とを含む。このビット列854は、符号化されたサブ単位のビット数がバイト単位の整数倍になるようにビットストリームに含められるものであって、算術符号化されたものではなく、0または1を示す符号である。バイト先頭探索では、このビット列854が読み飛ばされる。
図4は、エントロピー符号化部の構成を示すブロック図である。
このエントロピー符号化部900は、CABACの算術符号化を行うものであって、CTU符号化部901、スライス終端符号化部902、サブ終端判定部903、バイトアライメント部904、および終端処理部905を備える。
図5は、エントロピー符号化部900の処理動作を示すフローチャートである。
まず、エントロピー符号化部900のCTU符号化部901は、符号化対象信号に含まれるCTUを算術符号化する(ステップS901)。次に、スライス終端符号化部902は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)を算術符号化する(ステップS902)。次に、スライス終端符号化部902は、そのスライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0であるか否かを判定する(ステップS903)。ここで、スライス終端フラグが0でないと判定されると(ステップS903でNO)、終端処理部905は、算術符号化の終端処理を行う(ステップS904)。一方、スライス終端フラグが0であると判定されると(ステップS903でYES)、サブ終端判定部903は、直前に算術符号化されたCTUがサブ単位の終端にあるか否かを判定する(ステップS905)。
ここで、サブ単位の終端にあると判定されると(ステップS905でYES)、バイトアライメント部904はバイトアライメントを行う(ステップS906)。また、サブ単位の終端にないと判定された後(ステップS905でNO)、またはステップS906の処理が行なわれた後には、エントロピー符号化部900はステップS901からの処理を次のCTUに対して繰り返し実行する。
このような画像復号方法および画像符号化方法では、サブ単位の終端にあるCTUに対する算術復号または算術符号化の後に、終端処理が行われない。したがって、複数のサブ単位を並列に処理するときなどには、ビットストリームBSまたは符号化対象信号の途中から処理が行われるため、符号化時と復号時とでそのサブ単位に対応するCABACの内部確率状態が異なってしまう場合が生じる。つまり、画像の符号化および復号を適切に行うことができないという課題がある。
このような課題を解決するためには、サブ単位を用いずにスライスをより細かい単位にすることが考えられる。しかし、この場合には、符号化効率が低下してしまうという他の課題が生じる。
また、他の解決方法として、サブ単位の終端にあるCTUに対する算術復号または算術符号化の後に、単純に終端処理を行うことが考えられる。しかし、この場合には、そのサブ単位の終端で終端処理を行う新たな処理部を設ける必要があり、構成が複雑になるという問題がある。
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係る画像復号方法は、ビットストリームに含まれる符号化された画像をブロックごとに復号する画像復号方法であって、復号対象ブロックを算術復号し、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定し、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定し、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術復号し、算術復号の終端処理を第1の終端処理として行う。
これにより、算術復号されたブロックがスライスの終端になくても、サブ単位の終端にあれば、算術復号の終端処理が行われるため、ビットストリームに含まれる複数のサブ単位を適切に並列に復号することができる。また、スライスとサブ単位とを用いることにより、符号化効率の低下を抑えたビットストリームを適切に復号することができる。さらに、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術復号と終端処理とを含む処理が行われるため、スライスの終端で、フラグの算術復号と終端処理とを含む処理が行われる場合には、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を復号することができる。
また、前記画像復号方法は、さらに、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあると判定された場合には、算術復号の終端処理を第2の終端処理として行い、前記第1の終端処理を行う際には、前記第2の終端処理と同じ処理を行ってもよい。
これにより、スライスの終端で行われる終端処理と、サブ単位の終端で行われる終端処理とが同じであるため、より簡単な構成で画像を復号することができる。
また、前記画像復号方法は、さらに、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを示すスライス終端フラグを算術復号し、前記スライスの終端にあるか否かの判定では、算術復号された前記スライス終端フラグが予め定められた値を示す場合に、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあると判定し、前記サブ終端ビットの算術復号では、当該算術復号によって前記予め定められた値と同じ値を復元してもよい。例えば、前記サブ終端ビットの算術復号では、当該算術復号によって1を復元する。
これにより、スライスの終端で行われる終端処理と、サブ単位の終端で行われる終端処理とは、それぞれ1ビットの算術復号によって同じ値が得られる場合に実行されるため、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理をさらに共通化することができる。
また、前記画像復号方法では、さらに、前記第1の終端処理を行った後に、前記サブ単位および前記サブ終端ビットを含むビット長が予め定められたN(Nは2以上の整数)ビットの倍数になるように前記ビットストリームに書き込まれたビット列を読み飛ばす処理を行ってもよい。
これにより、例えばバイト先頭探索が行われ、その結果、バイト単位に適切な復号を行うことができる。
また、前記サブ終端ビットの算術復号では、前記ビット列の先頭のビットを前記サブ終端ビットとして算術復号してもよい。
これにより、ビットストリームに新たなビットをサブ終端ビットとして含める必要がないため、符号化効率の低下を抑えたビットストリームを適切に復号することができる。
また、上述の問題を解決するために、本発明の一態様に係る画像符号化方法は、画像をブロックごとに符号化することによってビットストリームを生成する画像符号化方法であって、符号化対象ブロックを算術符号化し、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定し、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定し、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術符号化し、算術符号化の終端処理を第1の終端処理として行う。
これにより、算術符号化されたブロックがスライスの終端になくても、サブ単位の終端にあれば、算術符号化の終端処理が行われるため、ビットストリームに含まれる複数のサブ単位を適切に並列に符号化することができる。また、スライスとサブ単位とを用いることにより、符号化効率の低下を抑えることができる。さらに、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術符号化と終端処理とを含む処理が行われるため、スライスの終端で、フラグの算術符号化と終端処理とを含む処理が行われる場合には、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を符号化することができる。
また、前記画像符号化方法は、さらに、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあると判定された場合には、算術符号化の終端処理を第2の終端処理として行い、前記第1の終端処理を行う際には、前記第2の終端処理と同じ処理を行ってもよい。
これにより、スライスの終端で行われる終端処理と、サブ単位の終端で行われる終端処理とが同じであるため、より簡単な構成で画像を符号化することができる。
また、前記画像符号化方法は、さらに、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを示すスライス終端フラグを算術符号化し、前記スライスの終端にあるか否かの判定では、前記スライス終端フラグが予め定められた値を示す場合に、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあると判定し、前記サブ終端ビットの算術符号化では、前記予め定められた値と同じ値を示す前記サブ終端ビットを算術符号化してもよい。例えば、前記サブ終端ビットの算術符号化では、1を示す前記サブ終端ビットを算術符号化する。
これにより、スライスの終端で行われる終端処理と、サブ単位の終端で行われる終端処理とは、それぞれ同じ値を示す1ビットを算術符号化する場合に実行されるため、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理をさらに共通化することができる。
また、前記画像符号化方法では、さらに、前記第1の終端処理を行った後に、算術符号化された前記サブ単位および前記サブ終端ビットを含むビット長が予め定められたN(Nは2以上の整数)ビットの倍数になるようにビット列を前記ビットストリームに書き込んでもよい。
これにより、例えばバイト単位に適切な符号化を行うことができる。
また、前記サブ終端ビットの算術符号化では、前記ビット列の先頭のビットを前記サブ終端ビットとして算術符号化してもよい。
これにより、ビットストリームに新たなビットをサブ終端ビットとして含める必要がないため、符号化効率の低下を抑えることができる。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、下記では、符号化(coding)はencodingの意味で使用する場合もある。
(実施の形態1)
図6は、本実施の形態における画像復号装置の構成の一例を示すブロック図である。
本実施の形態における画像復号装置100は、圧縮符号化された画像データであるビットストリームBSを復号する。例えば、画像復号装置100は、ビットストリームBSをブロック毎に復号する。つまり、画像復号装置100は、復号対象ブロックに対して、可変長復号、逆量子化及び逆変換をなど行うことで、画像データを復元する。
図6に示すように、画像復号装置100は、エントロピー復号部110と、逆量子化・逆変換部120と、加算器125と、ループフィルタ130と、メモリ140と、イントラ予測部150と、動き補償部160と、イントラ/インター切換スイッチ170とを備える。
エントロピー復号部110は、ビットストリームBSを可変長復号することで、ブロックごとに、そのブロックに含まれる複数の量子化係数を復元する。また、エントロピー復号部110は、ビットストリームBSから動きデータを取得し、取得した動きデータを動き補償部160に出力する。
逆量子化・逆変換部120は、エントロピー復号部110によって復元された量子化係数を逆量子化することで、変換係数を復元する。そして、逆量子化・逆変換部120は、復元された変換係数を逆変換(逆周波数変換)する。これにより、ビットストリームBSに含まれるブロック毎に、そのブロックに対応する予測誤差信号が復元される。
加算器125は、復元された予測誤差信号と予測信号とを加算することで、復号画像を生成する。
ループフィルタ130は、生成された復号画像に例えばデブロッキングフィルタ処理ななどのループフィルタ処理を行う。ループフィルタ処理された復号画像は、復号信号として出力される。
メモリ140は、動き補償に用いられる参照画像を格納するためのメモリである。具体的には、メモリ140は、ループフィルタ処理が施された復号画像を参照画像として格納する。
イントラ予測部150は、面内予測モードにしたがって、イントラ予測を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部150は、加算器125によって生成された復号画像における、復号対象ブロックの周囲の画像を参照することによって、その復号対象ブロックに対するイントラ予測を行う。これにより、イントラ予測部150は、イントラ予測信号を生成する。
動き補償部160は、エントロピー復号部110から出力された動きデータに基づいて動き補償を行うことで、復号対象ブロックに対する予測信号(インター予測信号)を生成する。
イントラ/インター切換スイッチ170は、イントラ予測信号及びインター予測信号のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として加算器125に出力する。
以上の構成により、本実施の形態における画像復号装置100は、圧縮符号化された画像データを復号する。
ここで、本実施の形態における画像復号装置100のエントロピー復号部110は、ビットストリームBSを算術復号することによって、そのビットストリームBSを可変長復号する。
本実施の形態におけるエントロピー復号部110による算術復号は、並列処理であっても逐次処理であっても正しくビットストリームBSを適切に復号することができる。したがって、HEVCにおいて、サブ単位を用い、高速処理が必要となる場合、本実施の形態における算術復号の実装メリットは非常に高い。
以下、このエントロピー復号部110の算術復号について詳細に説明する。
図7は、本実施の形態におけるエントロピー復号部110の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態におけるエントロピー復号部110は、CTU復号部111、スライス終端判定部112、サブ終端判定部113、サブ終端処理部116、バイト先頭探索部114、および終端処理部115を備える。このような、エントロピー復号部110は、量子化係数などを含む復号データ及びスライス処理終端信号をビットストリームBSから復元する。
図8は、本実施の形態におけるエントロピー復号部110の処理動作の一例を示すフローチャートである。
まず、CTU復号部111は、ビットストリームBSより所定の方法に基づいてCTU(coding_tree_unit())を算術復号する(ステップS101)。ここでCTUとは、ピクチャを構成する予め定められた符号化単位であって、例えば16x16画素、32x32画素、または64x64画素のブロックである。ビットストリームBSに含まれる符号化されたCTUは、例えば、そのCTUに対する予測画像(予測信号)の生成方法に関する情報と、その予測画像と原画像との差分である予測誤差信号を変換および量子化して得られる信号(量子化係数)に関する情報とを含む情報群である。
次に、スライス終端判定部112は、ステップS101で算術復号されたCTUがスライスの終端にあるか否かを示すスライス終端フラグ(end_of_slice_flag)を算術復号する(ステップS102)。例えば、スライスは、ピクチャ内をCTUごとに処理した場合に、ラスタ順に設けられた分割点でピクチャを分割することによって得られる各領域である(詳細は非特許文献1参照)。また、スライス終端フラグは、1を示すことによって、そのフラグに対応するCTU、つまり直前に算術復号されたCTUがスライスの終端にあることを示し、0を示すことによって、そのCTUがスライスの終端にないことを示す。
次に、スライス終端判定部112は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示すか否かを判定する(ステップS103)。ここで、スライス終端フラグが0ではなく1を示すと判定されると、すなわち、CTUがスライスの終端にあると判定されると、(ステップS103でNO)、終端処理部115は、算術復号の終端処理を実行する(ステップS104)。算術復号の終端処理とは、算術復号の内部確率状態を再正規化せず、ビットストリームBSに含まれる次の復号対象信号を復号可能とするようにビットストリームポインタを調整する処理である。なお、この終端処理では、さらに、例えば7ビットをビットストリームBSから読み出してもよい。また、終端処理部115は、CTUがスライスの終端にあることを示す信号(スライス処理終端信号)を出力する。例えば、このスライス処理終端信号は、次のスライスの処理の実行の通知等に用いられる。
一方、スライス終端フラグが0を示すと判定されると(ステップS103でYES)、つまり、直前に算術復号されたCTUがスライスの終端にない場合には、サブ終端判定部113は、このCTUがサブ単位の終端にあるか否かを判定する(ステップS105)。
サブ単位は、例えばタイルまたはCTUラインなどの処理単位である。タイルは、画面内を垂直および/または水平に分割してできるブロックであり、1つのタイルは1つ以上のCTUで構成される。また、各タイルの先頭から符号化/復号を処理し始めることができるため、タイルは並列処理に用いることのできる構成単位である。また、CTUラインは、前述のスライスまたはピクチャをライン毎に分割して得られる構成単位である。ピクチャの左端から処理が行われるWPP(ウェーブフロント処理)と呼ばれる手法では、算術符号化および算術復号の処理対象のCTUに対して右上にあるCTUの終端のコンテキスト情報(確率情報)が、その処理対象CTUの初期確率として用いられる。このようなWPPでは、初期確率の取得先のCTUの処理が終了した段階で、処理対象CTUの算術符号化または算術復号を開始することができるため、複数のCTUラインを並列処理することができる(詳細については、非特許文献1に記載されている処理と同様の処理を行ってもよい)。
ここで、例えば、サブ単位がタイルである場合には、サブ終端判定部113は、上記ステップS105では、直前に算術復号されたCTUのタイルIDと、次のCTUのタイルIDとを比較してそれらが異なるか否かを判定する。これによって、その直前に算術復号されたCTUがタイルの終端にあるか否かが判定される(後述の図9参照)。なお、タイルIDは、CTUがどのタイルに属しているかを区別するための内部情報である。具体的には、サブ終端判定部113は、比較対象の2つのタイルIDが異なる場合には、直前に算術復号されたCTUがサブ単位の終端にあると判定する。また、サブ単位がCTUラインである場合には、サブ終端判定部113は、上記ステップS105では、直前に算術復号されたCTUの次のCTUがピクチャの左端にあるか否かを判定する。なお、ピクチャがタイル分割されている場合には、次のCTUがタイルの左端にあるか否かが判定される。これによって、その直前に算術復号されたCTUがCTUラインの終端にあるか否かが判定される(後述の図9参照)。具体的には、サブ終端判定部113は、次のCTUがピクチャ(またはタイル)の左端にある場合には、直前に算術復号されたCTUがCTUラインの終端にあると判定する。
ステップS105で、CTUがサブ単位の終端にあると判定されると(ステップS105でYES)、サブ終端処理部116は、サブ単位の終端を示す1ビット(サブ終端ビット)を算術復号し、サブ終端処理を実行する(ステップS106)。なお、サブ終端ビットを算術復号することによって常に1が復元される。言い換えれば、予め1を示すサブ終端ビットが、算術符号化されて、サブ単位の終端にあるCTUの後に配置されるように、ビットストリームBSに含められている。また、算術復号のサブ終端処理は、終端処理部115によってステップS104で行なわれる算術復号の終端処理と同様の処理である。
そのサブ終端処理が行われた後、バイト先頭探索部114は、次のバイト単位の先頭を探索する処理であって、図2に示すステップS806と同様の処理であるバイト先頭探索を行う(ステップS107)。つまり、バイト単位にスタート地点が決められているため、バイト先頭探索部114は、次のバイト単位の先頭を探索し、その先頭にビットストリームポインタを移動させる。なお、探索されたバイト単位の先頭は、次のサブ単位の先頭である。そして、ステップS105で、CTUがサブ単位の終端にないと判定された後(ステップS105でNO)、または、ステップS107のバイト先頭探索が行われた後には、エントロピー復号部110は、ステップS101からの処理を次のCTUに対して繰り返し実行する。
図9は、本実施の形態におけるスライスのシンタックスの一例を示す図である。
本実施の形態におけるスライスは、符号化されたCTUを示すデータ181(coding_tree_unit())と、スライスの終端を判定するための算術符号化されたスライス終端フラグ182(end_of_slice_flag)とを含む。さらに、スライスは、条件183が満たされる場合には、算術符号化された上述のサブ終端ビット184(end_of_sub_stream_one_bit)と、予め定められたビット列185(byte_alignment())とを含む。
本実施の形態におけるスライスでは、データ181、スライス終端フラグ182、条件183およびビット列185は、図3Aに示すスライスにおけるデータ851、スライス終端フラグ852、条件853およびビット列854と同様にそれぞれ構成されている。そして、本実施の形態におけるスライスは、図3Aに示すスライスとは異なり、算術符号化されたサブ終端ビット184(end_of_sub_stream_one_bit)を含んでいる。
条件183は、データ181によって示されるCTUがサブ単位の終端にあるという条件である。具体的には、条件183は、そのCTUがスライスの終端にはなく、且つ、そのCTUがタイルの終端にあるという第1の条件、または、そのCTUがスライスの終端にはなく、且つ、そのCTUがCTUラインの終端にあるという第2の条件である。
さらに具体的には、第1の条件は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示し、且つ、tiles_enabled_flagが真であって、TileID[x]とTileID[x−1]とが異なるという条件である。tiles_enabled_flagが真である場合には、そのtiles_enabled_flagはサブ単位がタイルであることを示す。TileID[x]は、データ181によって示されるCTUの次のCTUのタイルIDを示し、TileID[x−1]は、データ181によって示されるCTUのタイルIDを示す。
第2の条件は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示し、且つ、entropy_coding_sync_enabled_flagが真であって、データ181によって示されるCTUの次のCTUがピクチャの左端にあるという条件である。entropy_coding_sync_enabled_flagが真である場合には、そのentropy_coding_sync_enabled_flagはサブ単位がCTUラインであることを示す。次のCTUがピクチャの左端にある場合には、データ181によって示されるCTUの次のCTUのアドレスをピクチャの横幅で割った余りが0である。なお、条件183に示されるCTB(Ctb)は、CTUと同様の意味に用いられる。
エントロピー復号部110は、データ181(coding_tree_unit())と、スライス終端フラグ182(end_of_slice_flag)とを算術復号する。そして、エントロピー復号部110は、条件183が満たされているか否かを判定し、満たされていると判定したときには、サブ終端ビット184(end_of_sub_stream_one_bit)を算術復号することによって、値「1」を取得(復元)する。そして、エントロピー復号部110は、この値「1」を取得したことをトリガーに、算術復号のサブ終端処理を行い、ビット列185を読み飛ばす処理であるバイト先頭探索を行う。なお、算術復号されたサブ終端ビット184(end_of_sub_stream_one_bit)は常に「1」を示し、条件183が満たされない場合には、このサブ終端ビット184はスライスに含まれていない。
このように、本実施の形態では、直前に算術復号されたCTUがサブ単位の終端にある場合に、直前に算術復号されたCTUがスライスの終端にある場合に行われる終端処理と同じ処理であるサブ終端処理が行われる。したがって、画像復号装置100は、ステップS107の処理によって探索された次のバイト単位の先頭から、つまり、ビットストリームBSの途中から、CTUの算術復号を開始することができる。その結果、画像復号装置100は、ビットストリームBSに含まれる複数の構成単位を逐次的に復号することができるとともに、それらの複数の構成単位を並列に復号することもできる。これらの複数の構成単位は、複数のスライスであっても、複数のサブ単位であってもよい。
このように、本実施の形態では、複数のサブ単位に対する算術復号を並列に実行することが可能となるため、例えば高解像度の動画像を実時間再生する場合など、高速処理が必要な場合に有用である。また、本実施の形態では、サブ単位の終端で、正しく算術復号の内部確率状態をリセットすることなどによって、終端処理が行われるため、複数のサブ単位に対する算術復号を並列に実行した場合であっても、符号化時と復号時とで内部確率状態が異なることは無く、ビットストリームBSを正しく復号することが可能となる。
また、本実施の形態では、CTUがスライスの終端にある場合には、サブ終端ビットの算術復号とサブ終端処理とは行われない。したがって、CTUがスライスの終端にある場合には、冗長符号であるサブ終端ビットをビットストリームBSに含める必要がないため、符号化効率の劣化を抑制しつつ並列処理の実行を可能としたビットストリームBSを適切に復号することができる。
さらに、本実施の形態では、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術復号と終端処理とを含む処理が行われるため、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を復号することができる。言い換えれば、スライスの終端で行われる処理、すなわち、1ビットを算術復号することによって値「1」を復元することをトリガーに、算術復号の終端処理を行う構成を、スライスの終端だけでなく、サブ単位の終端にも用いることができる。これにより、その構成を使いまわすことができるため、画像を復号する構成を簡単にすることができる。具体的には、サブ終端処理部116は、スライス終端判定部112と終端処理部115とによる機能を利用することができる。
(変形例)
上記実施の形態1では、サブ終端ビット184を算術復号し、値「1」を示す先頭のビットを含むビット列185を読み飛ばしたが、本変形例では、その先頭のビットをサブ終端ビット184として算術復号する。つまり、本変形例では、図9に示すサブ終端ビット184が省略され、その代わりに、上述のビット列185の先頭のビットがサブ終端ビットとして用いられる。このような本変形例であっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
図10は、本変形例に係るビット列185のシンタックスの一例を示す図である。
本変形例に係るビット列185は、算術復号されることによって値「1」が復元されるビット185aと、算術復号されることのない、必要に応じた数の0を示すビット185bとを含む。つまり、本変形例に係るビット列185の先頭のビット185aは、上記実施の形態1のような値「1」を示すビットではなく、値「1」が算術符号化されることによって得られるビットである。
なお、図10のDescriptorにおいて示されるf(1)は、ビットストリームに含まれる、そのf(1)に対応付けられたデータ(ビット)に対して算術符号化または算術復号が用いられないことを示す。つまり、f(1)は、ビットストリームに含まれるデータ(ビット)の値そのものが、そのデータの本来の値として認識されることを示す。例えば、ビットストリームに含まれるビットが「0」を示す場合は、そのビットの本来の値として「0」が認識され、ビットストリームに含まれるビットが「1」を示す場合には、そのビットの本来の値として「1」が認識される。一方、ae(v)は、ビットストリームに含まれる、そのae(v)に対応付けられたデータ(ビット)に対して算術符号化または算術復号が用いられることを示す。より具体的には、ae(v)は、ビットストリームに含まれるデータ(ビット)に対して、前述の確率情報または内部確率状態を示す情報に基づく算術符号化または算術復号が行われることを示す。
このような本変形例では、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、符号化および復号すべきデータをサブ単位ごとに1ビットだけ少なくすることができ、符号化効率を向上することができる。
なお、上記実施の形態1およびその変形例では、1ビット(サブ終端ビット)を復号することによって、値「1」を復元した際に、算術復号のサブ終端処理を行ったが、他の値を復元した際にサブ終端処理を行ってもよい。例えば、他の値は、「0」であってもよく、あらかじめ決められていればよい。また、サブ終端ビットの代わりに、CTUがサブ単位の終端にあるか否かを示すフラグ(例えば、end_of_sub_stream_flag)を算術復号してもよい。つまり、エントロピー復号部110は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示す場合に、サブ終端フラグ(end_of_sub_stream_flag)を算術復号する。そして、エントロピー復号部110は、そのサブ終端フラグが1を示すと判定すると、スライス終端フラグが1を示す場合に行われる終端処理と同様の算術復号の終端処理を行い、かつバイト先頭探索(byte_alignment())を行う。また、エントロピー復号部110は、そのサブ終端フラグが0を示すと判定すると、次のCTUを算術復号する処理を続ける。このようにサブ終端フラグを用いることによっても、上記実施の形態1およびその変形例と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施の形態1およびその変形例では、直前に算術復号されたCTUがサブ単位の終端にある場合に、算術復号のサブ終端処理を行う。言い換えれば、上記実施の形態1およびその変形例では、直前に算術復号されたCTUの次に算術復号されるCTUがサブ単位の先頭にある場合に、算術復号のサブ終端処理を行う。また、上記実施の形態1およびその変形例では、直前に算術復号されたCTUがスライスの終端にある場合に、算術復号の終端処理を行い、そのCTUがスライスの終端にはなく、サブ単位の終端にある場合に、算術復号の終端処理と同じ処理であるサブ終端処理を行う。したがって、算術復号の終端処理が重複して行われることを防ぎ、適切な算術復号を行うことができる。
(実施の形態2)
図11は、本実施の形態における画像符号化装置の構成の一例を示すブロック図である。
本実施の形態における画像符号化装置200は、実施の形態1の画像復号装置100によって復号されるビットストリームBSを生成するものであって、減算器205と、変換・量子化部210と、エントロピー符号化部220と、逆量子化・逆変換部230と、加算器235と、ループフィルタ240と、メモリ250と、イントラ予測部260と、動き検出部270と、動き補償部280と、イントラ/インター切換スイッチ290とを備える。
減算器205は、画像データを構成するブロックを示す入力信号と予測信号との差分、すなわち、予測誤差信号を算出する。変換・量子化部210は、空間領域の予測誤差信号を変換(周波数変換)することで、周波数領域の変換係数を生成する。例えば、変換・量子化部210は、予測誤差信号にDCT(Discrete Cosine Transform)変換を行うことで、変換係数を生成する。さらに、変換・量子化部210は、変換係数を量子化することで、量子化係数を生成する。
エントロピー符号化部220は、量子化係数を可変長符号化することで、ビットストリームBSを生成する。また、エントロピー符号化部220は、動き検出部270によって検出された動きデータ(例えば、動きベクトル)を可変長符号化し、ビットストリームBSに含めて出力する。
逆量子化・逆変換部230は、量子化係数を逆量子化することで、変換係数を復元する。さらに、逆量子化・逆変換部230は、復元した変換係数を逆変換することで、予測誤差信号を復元する。なお、復元された予測誤差信号は、量子化により情報が失われているので、減算器205が生成する予測誤差信号とは一致しない。すなわち、復元された予測誤差信号は、量子化誤差を含んでいる。
加算器235は、復元された予測誤差信号と予測信号とを加算することで、ローカル復号画像を生成する。ループフィルタ240は、生成されたローカル復号画像にデブロッキングフィルタ処理などのループフィルタ処理を行う。
メモリ250は、動き補償に用いられる参照画像を格納するためのメモリである。具体的には、メモリ250は、ループフィルタ処理が施されたローカル復号画像を参照画像として格納する。
イントラ予測部260は、面内予測モードに従って、イントラ予測を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部260は、加算器235によって生成されたローカル復号画像における、符号化対象ブロック(入力信号)の周囲の画像を参照することによって、その符号化対象ブロックに対するイントラ予測を行う。これにより、イントラ予測部260は、イントラ予測信号を生成する。
動き検出部270は、入力信号と、メモリ250に格納された参照画像との間の動きを示す動きデータ(例えば、動きベクトル)を検出する。動き補償部280は、検出された動きデータに基づいて動き補償を行うことで、符号化対象ブロックに対する予測信号(インター予測信号)を生成する。
イントラ/インター切換スイッチ290は、イントラ予測信号およびインター予測信号のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として減算器205および加算器235に出力する。
以上の構成により、本実施の形態における画像符号化装置200は、画像データを符号化する。
ここで、本実施の形態における画像符号化装置200のエントロピー符号化部220は、量子化係数および動きデータを含む符号化対象信号、つまり各CTUを含む符号化対象信号を算術符号化することによって、その符号化対象信号を可変長符号化する。
本実施の形態におけるエントロピー符号化部220による算術符号化は、並列処理であっても逐次処理であっても正しく復号可能なビットストリームBSを生成することができものである。したがって、HEVCにおいて、サブ単位を用い、高速処理が必要となる場合、本実施の形態における算術符号化の実装メリットは非常に高い。
以下、このエントロピー符号化部220の算術符号化について詳細に説明する。なお、この算術符号化は、実施の形態1で説明した算術復号に対応する算術符号化である。
図12は、本実施の形態におけるエントロピー符号化部220の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態におけるエントロピー符号化部220は、CTU符号化部221、スライス終端符号化部222、サブ終端判定部223、サブ終端処理部226、バイトアライメント部224、および終端処理部225を備える。このような、エントロピー符号化部220は、符号化対象信号を算術符号化してビットストリームBSを出力する。また、エントロピー符号化部220は、スライスに対する処理の終了を通知するためのスライス処理終端信号を必要に応じて出力する。
図13は、本実施の形態におけるエントロピー符号化部220の処理動作の一例を示すフローチャートである。
まず、CTU符号化部221は、符号化対象信号に含まれるCTU(coding_tree_unit())を所定の方法に基づいて算術符号化する(ステップS201)。また、CTU符号化部221は、このように算術符号化されたCTUをビットストリームBSに挿入して出力する。もしくは、CTU符号化部221は、例えば画像符号化装置200内のメモリにその算術符号化されたCTUを格納する。
次に、スライス終端符号化部222は、ステップS201で算術符号化されたCTUがスライスの終端にあるか否かを示す上述のスライス終端フラグ(end_of_slice_flag)を算術符号化する(ステップS202)。次に、スライス終端符号化部222は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示すか否かを判定する(ステップS203)。ここで、スライス終端フラグが0ではなく1を示すと判定されると、すなわち、CTUがスライスの終端にあると判定されると(S203でNO)、終端処理部225は、算術符号化の終端処理を実行する(ステップS204)。算術符号化の終端処理とは、通常の算術符号化とは異なり、算術符号化の内部確率状態をリセットするために実行する処理である。つまり、算術符号化では、符号化対象とされるバイナリ信号の符号化の際、内部確率状態を更新した後に、ビット列が出力されない場合がある。そこで、算術符号化の終端処理は、ビット列が出力されないままでは情報が失われてしまうために実行される処理であって、具体的には、非特許文献1のEncoderFlushという処理を含む。このような算術符号化の終端処理によって、内部確率状態がビットストリームBSに書き出だされて、正しく復号可能なビットストリームBSが生成される。また、終端処理部225は、CTUがスライスの終端にあることを示す信号(スライス処理終端信号)を出力する。例えば、このスライス処理終端信号は、次のスライスの処理の実行の通知等に用いられる。
一方、スライス終端フラグが0を示すと判定されると(ステップS203のYES)、つまり、直前に算術符号化されたCTUがスライスの終端にない場合には、サブ終端判定部223は、このCTUがサブ単位の終端にあるか否かを判定する(ステップS205)。サブ単位は、上述のタイルもしくはCTUラインであり、サブ終端判定部223は、実施の形態1と同様の方法でサブ単位の終端にあるか否かを判定する。
CTUがサブ単位の終端にあると判定されると(ステップS205でYES)、サブ終端処理部226は、サブ単位の終端を示す1ビット(サブ終端ビット)を算術符号化し、サブ終端処理を実行する(ステップS206)。なお、このときには、常に1を示すサブ終端ビットが算術符号化される。つまり、予め1を示すサブ終端ビットが、算術符号化されて、サブ単位の終端にあるCTUの後に配置されるように、ビットストリームBSに含められる。また、算術符号化のサブ終端処理は、終端処理部225によってステップS204で行なわれる算術符号化の終端処理と同様の処理である。
そのサブ終端処理が行われた後、バイトアライメント部224は、符号化されたサブ単位のビット数がバイト単位の整数倍になるように、Nビット(Nは0以上の整数)をビットストリームBSに書き込む処理であるバイトアライメントを行う(ステップS207)。つまり、バイトアライメント部224は、次に算術符号化されるCTUの先頭がバイト単位の先頭になるようにNビットを書き込み、ビットストリームポインタをその先頭に移動させる。
また、サブ単位の終端にないと判定された後(ステップS205でNO)、またはステップS207の処理が行なわれた後には、エントロピー符号化部220はステップS201からの処理を次のCTUに対して繰り返し実行する。
なお、本実施の形態におけるエントロピー符号化部220は、図9に示すシンタックスにしたがってスライスを算術符号化する。
つまり、エントロピー符号化部220は、算術符号化されたCTUをデータ181(coding_tree_unit())と、算術符号化されたスライス終端フラグ182(end_of_slice_flag)とを生成してビットストリームBSに含める。そして、エントロピー符号化部220は、条件183が満たされているか否かを判定し、満たされていると判定したときには、値「1」を示すサブ終端ビット184(end_of_sub_stream_one_bit)を算術符号化してビットストリームBSに含める。そして、エントロピー符号化部220は、このサブ終端ビット184の算術符号化をトリガーに、算術符号化のサブ終端処理を行い、ビット列185を書き込む処理であるバイトアライメントを行う。なお、条件183が満たされない場合には、エントロピー符号化部220はサブ終端ビット184を算術符号化せず、バイトアライメントも行わない。その結果、条件183が満たされていない場合には、算術符号化されたサブ終端ビット184もビット列185もスライスには含まれない。
このように、本実施の形態では、直前に算術符号化されたCTUがサブ単位の終端にある場合に、直前に算術符号化されたCTUがスライスの終端にある場合に行われる終端処理と同じ処理であるサブ終端処理が行われる。したがって、画像符号化装置200は、ステップS207の処理によって書き込まれたビット列の後端から、つまり、符号化対象信号の途中から、CTUの算術符号化を開始することができる。その結果、画像符号化装置200は、符号化入力信号に含まれる複数の構成単位を逐次的に符号化することができるとともに、それらの複数の構成単位を並列に符号化することもできる。これらの複数の構成単位は、複数のスライスであっても、複数のサブ単位であってもよい。
このように、本実施の形態では、複数のサブ単位に対する算術符号化を並列に実行することが可能となるため、例えば高解像度の動画像を実時間録画する場合など、高速処理が必要な場合に有用である。また、本実施の形態では、サブ単位の終端で、正しく算術符号化の内部確率状態をリセットすることなどによって、終端処理が行われるため、複数のサブ単位に対する算術符号化を並列に実行した場合であっても、符号化時と復号時とで内部確率状態が異なることは無く、ビットストリームBSを正しく生成することが可能となる。
また、本実施の形態では、CTUがスライスの終端にある場合には、サブ終端ビットの算術符号化とサブ終端処理とは行われない。したがって、CTUがスライスの終端にある場合には、冗長符号であるサブ終端ビットをビットストリームBSに含める必要がないため、符号化効率の劣化を抑制しつつ並列処理を実行することができる。
さらに、本実施の形態では、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術符号化と終端処理とを含む処理が行われるため、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を復号することができる。言い換えれば、スライスの終端で行われる処理、すなわち、1ビットを算術符号化することによって値「1」を復元することをトリガーに、算術符号化の終端処理を行う構成を、スライスの終端だけでなく、サブ単位の終端にも用いることができる。これにより、その構成を使いまわすことができるため、画像を符号化する構成を簡単にすることができる。具体的には、サブ終端処理部226は、スライス終端符号化部222と終端処理部225とによる機能を利用することができる。
(変形例)
上記実施の形態2では、サブ終端ビット184を算術符号化し、値「1」を示す先頭のビットを含むビット列185を読み飛ばしたが、本変形例では、その先頭のビットをサブ終端ビット184として算術符号化する。つまり、本変形例では、図9に示すサブ終端ビット184が省略され、その代わりに、上述のビット列185の先頭のビット185a(図10参照)がサブ終端ビットとして用いられる。このような本変形例であっても、上記実施の形態2と同様の効果を奏することができる。なお、本変形例は、実施の形態1の変形例に係る画像復号方法に対応する画像符号化方法である。
図10に示すように、本変形例に係るエントロピー符号化部220は、値「1」を示すビットを算術符号化することによって生成されたビット185aと、算術符号化されることのない、必要に応じた数の0を示すビット185bとを含むビット列185を、ビットストリームBSに書き込む。つまり、本変形例に係るビット列185の先頭のビット185aは、上記実施の形態1のような値「1」を示すビットではなく、値「1」が算術符号化されることによって得られるビットである。
このような本変形例では、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、符号化および復号すべきデータをサブ単位ごとに1ビットだけ少なくすることができ、符号化効率を向上することができる。
なお、上記実施の形態1およびその変形例では、値「1」を示す1ビット(サブ終端ビット)を符号化した際に、算術符号化のサブ終端処理を行ったが、他の値を示すビットを算術符号化した際にサブ終端処理を行ってもよい。例えば、他の値は「0」であってもよく、あらかじめ決められていればよい。また、サブ終端ビットの代わりに、CTUがサブ単位の終端にあるか否かを示すフラグ(例えば、end_of_sub_stream_flag)を算術符号化してもよい。つまり、エントロピー符号化部220は、スライス終端フラグ(end_of_slice_flag)が0を示す場合に、サブ終端フラグ(end_of_sub_stream_flag)を算術符号化する。そして、エントロピー符号化部220は、そのサブ終端フラグが1を示すと判定すると、スライス終端フラグが1を示す場合に行われる終端処理と同様の算術符号化の終端処理を行い、かつバイトアライメント(byte_alignment())を行う。また、エントロピー符号化部220は、そのサブ終端フラグが0を示すと判定すると、次のCTUを算術符号化する処理を続ける。このようにサブ終端フラグを用いることによっても、上記実施の形態2およびその変形例と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施の形態2およびその変形例では、直前に算術符号化されたCTUがサブ単位の終端にある場合に、算術符号化のサブ終端処理を行う。言い換えれば、上記実施の形態2およびその変形例では、直前に算術符号化されたCTUの次に算術符号化されるCTUがサブ単位の先頭にある場合に、算術符号化のサブ終端処理を行う。また、上記実施の形態2およびその変形例では、直前に算術符号化されたCTUがスライスの終端にある場合に、算術復号の終端処理を行い、そのCTUがスライスの終端にはなく、サブ単位の終端にある場合に、算術符号化の終端処理と同じ処理であるサブ終端処理を行う。したがって、算術符号化の終端処理が重複して行われることを防ぎ、適切な算術符号化を行うことができる。
以上、一つまたは複数の態様に係る画像復号方法および画像符号化方法について、各実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態および変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を、上記各実施の形態および変形例に施したものや、異なる実施の形態および変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
図14Aは、本発明の一態様に係る画像復号方法を示すフローチャートである。
この一態様に係る画像復号方法は、ビットストリームに含まれる符号化された画像をブロックごとに復号する画像復号方法であって、復号対象ブロックを算術復号し(S11)、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定し(S12)、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定し(S13)、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術復号し、算術復号の終端処理を第1の終端処理として行う(S14)。
図14Bは、本発明の一態様に係る画像復号装置の構成を示す図である。
この一態様に係る画像復号装置10は、ビットストリームに含まれる符号化された画像をブロックごとに復号する画像復号装置であって、復号対象ブロックを算術復号するブロック復号部11と、前記復号対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定するスライス終端判定部12と、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定するサブ終端判定部13と、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術復号し、算術復号の終端処理を第1の終端処理として行う終端処理部14とを備える。
これにより、算術復号されたブロック(CTU)がスライスの終端になくても、サブ単位(タイルまたはCTUラインなど)の終端にあれば、算術復号の終端処理が行われるため、ビットストリームに含まれる複数のサブ単位を適切に並列に復号することができる。また、スライスとサブ単位とを用いることにより、符号化効率の低下を抑えたビットストリームを適切に復号することができる。さらに、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術復号と終端処理とを含む処理が行われるため、スライスの終端で、フラグの算術復号と終端処理とを含む処理が行われる場合には、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を復号することができる。
図15Aは、本発明の一態様に係る画像符号化方法を示すフローチャートである。
この一態様に係る画像符号化方法は、画像をブロックごとに符号化することによってビットストリームを生成する画像符号化方法であって、符号化対象ブロックを算術符号化し(S21)、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定し(S22)、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定し(S23)、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術符号化し、算術符号化の終端処理を第1の終端処理として行う(S24)。
図15Bは、本発明の一態様に係る画像符号化装置の構成を示す図である。
この一態様に係る画像符号化装置20は、画像をブロックごとに符号化することによってビットストリームを生成する画像符号化装置であって、符号化対象ブロックを算術符号化するブロック符号化部21と、前記符号化対象ブロックがスライスの終端にあるか否かを判定するスライス終端判定部22と、前記スライスの終端にはないと判定された場合には、スライスとは異なる前記画像の構成単位であるサブ単位の終端にあるか否かを判定するサブ終端判定部23と、前記サブ単位の終端にあると判定された場合には、サブ終端ビットを算術符号化し、算術符号化の終端処理を第1の終端処理として行う終端処理部24とを備える。
これにより、算術符号化されたブロック(CTU)がスライスの終端になくても、サブ単位(タイルまたはCTUラインなど)の終端にあれば、算術符号化の終端処理が行われるため、ビットストリームに含まれる複数のサブ単位を適切に並列に符号化することができる。また、スライスとサブ単位とを用いることにより、符号化効率の低下を抑えることができる。さらに、サブ単位の終端では、サブ終端ビットの算術符号化と終端処理とを含む処理が行われるため、スライスの終端で、フラグの算術符号化と終端処理とを含む処理が行われる場合には、サブ単位の終端とスライスの終端とで実行される処理を共通化することができる。つまり、サブ単位の終端で行われる処理のために新たな処理部を設ける必要がないため、簡単な構成で画像を符号化することができる。
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。言い換えると、画像符号化装置および画像復号装置は、処理回路と、当該処理回路に電気的に接続された(当該処理回路からアクセス可能な)記憶装置(storage)とを備える。処理回路は、専用のハードウェアおよびプログラム実行部の少なくとも一方を含む。また、記憶装置は、処理回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶する。ここで、上記各実施の形態の画像復号装置および画像符号化装置などを実現するソフトウェアは、図14Aに示す画像復号方法または図15Aに示す画像符号化方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
また、上記各実施の形態およびそれらの変形例において、明記されていないものは非特許文献1に記載されているものと同様であってよい。
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
図16は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
しかし、コンテンツ供給システムex100は図16のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図17に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
図18は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の一態様に係る画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図19に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
図20に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図18に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
図21Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図21Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
図22は、多重化データの構成を示す図である。図22に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
図23は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
図24は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図24における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図24の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
図25は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図25下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
図26はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
多重化データ情報ファイルは、図27に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
多重化データ情報は図27に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
ストリーム属性情報は図28に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを図29に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図30に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。このようなプログラマブル・ロジック・デバイスは、典型的には、ソフトウェア又はファームウェアを構成するプログラムを、ロードする又はメモリ等から読み込むことで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法、又は動画像復号化方法を実行することができる。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図31は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図30のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図30の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態4で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態4で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図33のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
図32は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
(実施の形態7)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図34Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明の一態様に特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
また、処理を一部共有化する他の例を図34Bのex1000に示す。この例では、本発明の一態様に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の一態様に係る動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明の一態様、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
このように、本発明の一態様に係る動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。