JP6160838B2 - 焼結機の保温炉への酸素富化方法および酸素富化装置 - Google Patents

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Description

本発明は、焼結熱源として炭材の他に、気体燃料を供給して高品質の高炉原料用焼結鉱を製造する下方吸引式ドワイトロイド(DL)焼結機における保温炉への酸素富化方法と酸素富化装置に関するものである。
高炉製銑法の主原料である焼結鉱は、図1に示すような工程を経て製造されるのが一般的である。焼結鉱の原料は、鉄鉱石粉や焼結鉱篩下粉、製鉄所内で発生した回収粉、石灰石およびドロマイトなどの含CaO系副原料、生石灰等の造粒助剤、コークス粉や無煙炭などであり、これらの原料は、ホッパー1の各々から、コンベヤ上に所定の割合で切り出される。切り出された原料は、ドラムミキサー2および3等によって適量の水が加えられ、混合、造粒されて、平均径が3〜6mmの擬似粒子である焼結原料とされる。この焼結原料は、その後、焼結機上に配設されているサージホッパー4、5からドラムフィーダー6と切り出しシュート7を介して、無端移動式の焼結機パレット8上に400〜800mmの厚さで装入され、焼結ベッドともいわれる焼結原料装入層(以降、単に「装入層」ともいう)9を形成する。その後、上記装入層9の上方に設置された点火炉10で装入層表層の炭材に点火するとともに、パレット8の直下に配設されたウインドボックス11を介して装入層上方の空気を下方に吸引することにより、装入層内の炭材を順次燃焼させ、このときに発生する燃焼熱で前記焼結原料を溶融して焼結ケーキを得る。このようにして得た焼結ケーキは、その後、破砕、整粒され、約5mm以上の塊成物が、成品焼結鉱として回収され、高炉に供給される。
上記製造プロセスにおいて、点火炉10によって点火された装入層内の炭材は、ウインドボックス11により吸引されて装入層内を上層から下層に向かって流れる空気によって燃焼を続け、厚さ方向に幅をもった燃焼・溶融帯(以降、単に「燃焼帯」ともいう。)を形成する。この燃焼帯は、パレット8が下流側に移動するのに伴って次第に装入層の上層から下層に移行し、燃焼帯が通過した後には、焼結反応が完了した焼結ケーキ(以降、単に「焼結層」ともいう。)が生成される。
図2は、点火炉で点火された装入層表層の炭材が、ウインドボックスによって吸引され、装入層内に導入される空気によって燃焼を続けて燃焼帯を形成し、これが装入層の上層から下層に順次移動し、焼結ケーキが形成されていく過程を模式的に示した図である。
一般に、焼結鉱の強度は、焼結原料の粒子が溶融し、焼結反応が起こり始める温度、即ち1200℃以上の温度に保持されるときの温度と時間の積に依存し、その値が大きいほど高くなることが知られている。したがって、1200℃以上の温度に保持される時間(以降、「高温域保持時間」という)が長い程、焼結鉱の歩留りが向上し、生産性も高くなる。
図3は、装入層の厚さ方向中間部に燃焼帯が存在するときの装入層内の温度分布を、焼結機のパレットの移動速度が速い場合(生産性が高いときに相当)と遅い場合(生産性が低いときに相当)とを比較して示したものである。図中、1200℃以上の温度に保持される時間(高温域保持時間)を、パレットの移動速度が速い場合はT、パレットの移動速度が遅い場合はTで示しているが、TはTと比べて短くなる。高温域保持時間が短くなると、焼結不足となり、焼結鉱の冷間強度が低下し、歩留りが低下してしまう。したがって、高強度の焼結鉱を、短時間でかつ高歩留りで、生産性よく製造するためには、何らかの手段を講じて、高温域保持時間を延長し、焼結鉱の冷間強度を高めてやる必要がある。
また、図4(a)は、図2に示した太枠内に示した装入層の上層部、中層部および下層部の各位置に燃焼帯が存在しているときの、装入層内の厚さ方向の温度分布を模式的に示したものである。装入層の中層部や下層部は、装入層上層部の炭材の燃焼熱が装入層内に吸引される空気によって運ばれて予熱されるため、その部分の高温域保持時間は安定して長時間となるが、装入層上層部は、上記予熱効果がないため、高温域保持時間は短く、燃焼溶融反応(焼結反応)が不十分となり易い。その結果、装入層のパレット幅方向断面における焼結鉱の歩留り分布は、図4(b)に示したように、装入層上層部ほど低くなる。なお、図4(b)では、装入層のパレット幅方向断面の両幅端部側も歩留りが大きく低下しているが、これは、パレット側壁からの放熱や、通過する空気による過冷却によって、高温域保持時間が十分に確保できないためである。
上記の問題、特に、装入層厚さ方向の歩留り不均一問題に対する対応策としては、従来、熱源として焼結原料中に添加している炭材(粉コークス)を増量することが行われてきた。しかし、焼結原料中のコークス量を増加させた場合には、図5に示したように、1200℃以上の温度に保持される高温域保持時間を延長することができるものの、装入層内の最高到達温度が1400℃を超え、焼結鉱を構成する鉱物の中で強度が最も高く、被還元性にも優れるカルシウムフェライトが、冷間強度と被還元性に劣る非晶質珪酸塩(カルシウムシリケート)と、還元粉化しやすい骸晶状二次ヘマタイトとに分解してしまうため、逆に、焼結鉱の被還元性や冷間強度の低下を招き、歩留りが低下してしまう。
そこで、発明者らは、上記問題点を解決する技術として、焼結原料中への炭材添加量を削減した上で、焼結機の点火炉の直下流に設置した気体燃料供給装置のフード内に気体燃料を供給して、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を装入層内に導入し、燃焼させることで、装入層内の最高到達温度および高温域保持時間の両方を適正範囲に制御する技術を開発した(例えば、特許文献1、2等参照)。
これらの技術を適用した場合には、図6に示したように、供給した気体燃料が、装入層内の炭材が燃焼する位置から離れた位置、即ち、炭材の燃焼が完了し、冷却しつつある位置で燃焼するので、燃焼帯の最高到達温度を1400℃超えとすることなく、燃焼帯の幅を装入層の厚さ方向に拡大させることができるので、効果的に高温域保持時間を延長することができる。
また、下方吸引式のDL焼結機では、従来、焼結機から発生し、ウインドボックスによって吸引・排出された燃焼排ガスや、排鉱部から排出された焼結鉱の冷却に用いられたクーラー排ガスは、粉塵除去等の排ガス処理を施した後、高温のまま放出することが多かった。そこで、上記排ガスが有する顕熱を有効活用するため、点火炉の下流に保温炉(保熱炉)を設けて、支燃ガスとして装入層内に吸引導入する空気の代わりに、燃焼排ガスやクーラー排ガスの一部を循環させた高温ガスを供給し、焼結原料装入層の予熱に再利用する技術が実用化されている(例えば、特許文献3等参照)。
しかし、保温炉を有する焼結機に、前述した特許文献1や2に開示の気体燃料供給技術を適用しようとすると、上記保温炉は、気体燃料供給装置の設置に対する障害となる。また、保温炉を撤去しようとした場合、上記保温炉は、点火炉と同様、内部を耐火煉瓦で内貼りした堅固な構造となっているため、撤去に多大な費用が掛かるだけでなく、その間の操業停止は避けられない。そこで、特許文献4には、保温炉をそのまま残存させ、該炉を気体燃料供給設備のフード代わりに用いる技術が提案されている。
ところで、焼結鉱の生産性を高めるには、支燃ガスとして装入層内に導入する空気に酸素を富化して焼結反応を促進し、焼結時間を短縮することが有効であることが知られている(例えば、特許文献5、6等を参照。)。そこで、出願人らは、上記の酸素富化技術と、前述した特許文献1、2に開示の気体燃料供給技術とを組み合わせた焼結鉱の製造技術を提案している。例えば、特許文献7や特許文献8には、高温域保持時間が不足する装入層上層部で焼結反応が進行している点火炉の直下流の位置に設置した気体燃料供給装置のフード内において、気体燃料を供給すると同時に酸素を富化する焼結鉱の製造技術を提案している。
特開2008−095170号公報 特開2008−291354号公報 特開昭50−015702号公報 特開2010−132946号公報 WO98/07891号公報 特開平02−073924号公報 特開2012−207236号公報 特開2014−031580号公報
しかしながら、上記特許文献7および特許文献8に提案された気体燃料の供給と酸素の富化を同時に行う装置を、特許文献4に記載の保熱炉を有する焼結機に適用しようとした場合には、保温炉を撤去する必要があり、前述したように現実的ではない。
本発明は、従来技術における上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保温炉を有する焼結機において、保温炉を撤去することなく、気体燃料の供給と同時に酸素を保温炉内に均一に供給し、富化することができる保温炉への酸素富化方法を提案するとともに、その酸素富化装置を提供することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、高温ガスを供給する保温炉を残存させたままで、気体燃料の供給と酸素の富化を実現するには、保温炉に酸素を直接供給するのではなく、高温ガスを保温炉に供給する高温ガス供給配管に、酸素供給配管を接続して酸素を吹き込み、高温ガス中の酸素濃度を高めた上で保温炉に供給することが有効であること、また、上記酸素富化方法において、均一な濃度の酸素を保温炉に供給するためには、酸素吹き込み位置以降の高温ガス供給配管に屈曲部を設ける、および/または、酸素吹き込み位置以降の高温ガス供給配管に、断面積が高温ガス供給配管より大きい混合ボックスを設けて高温ガス流に乱流を起こさせることが有効であること、さらには、上記酸素の吹き込みを適正な圧損のノズルを介して行うことがより有効であることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、点火炉の下流に設置され、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含有する高温ガスを焼結原料装入層内に供給する焼結機の保温炉における酸素富化方法において、高温ガスを保温炉に供給する高温ガス供給配管の本管に、酸素を供給する酸素供給配管を接続して酸素を吹き込み、酸素を富化することを特徴とする保温炉への酸素富化方法を提案する。
本発明の保温炉への酸素富化方法は、上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に屈曲部を設けて高温ガス流を屈曲させることを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化方法は、上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設けて高温ガス流に乱流を起こさせることを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化方法は、上記高温ガス供給配管の屈曲部に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設け、該混合ボックスに酸素を吹き込むことを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化方法は、上記酸素供給配管に設けたノズルから高温ガス供給配管内または混合ボックス内に酸素を吹き込むことを特徴とする。
また、本発明は、点火炉の下流に設置され、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含有する高温ガスを焼結原料装入層内に供給する焼結機の保温炉における酸素富化装置であって、高温ガスを保温炉に供給する高温ガス供給配管の本管に、酸素を吹き込む酸素供給配管を接続してなることを特徴とする保温炉への酸素富化装置である。
本発明の保温炉への酸素富化装置は、上記酸素供給配管との接続部以降の高温ガス供給配管に屈曲部を設けてなることを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化装置は、上記酸素供給配管との接続部以降に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設けてなることを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化装置は、上記屈曲部に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設け、該混合ボックスに酸素供給配管が接続されてなることを特徴とする。
また、本発明の保温炉への酸素富化装置は、上記高温ガス供給配管または混合ボックスとの接続部の酸素供給配管にノズルを設けてなることを特徴とする。
本発明によれば、下方吸引式のドワイトロイド焼結機の保温炉においても、気体燃料を供給するとともに、酸素を保温炉内に均一に供給し、富化することができるので、高強度でかつ被還元性に優れる、高品質の高炉原料用焼結鉱を安定して製造することが可能となる。
焼結鉱の製造プロセスの概要を説明する図である。 装入層内の焼結の進行に伴う変化を説明する図である。 焼結時における装入層内の温度分布を、高生産時と低生産時とで比較して示した図である。 燃焼帯が装入層の上層部、中層部および下層部の各位置に存在しているときの装入層内の温度分布と、装入層のパレット幅方向断面内における焼結鉱の歩留り分布を説明する図である。 炭材添加量を増加したときの装入層内の温度分布の変化を説明する図である。 気体燃料を供給したときの焼結層内の温度分布の変化を説明する図である。 気体燃料と高温ガスを供給する従来技術の保温炉を説明する図である。 酸素を富化する従来技術の気体燃料供給装置を説明する図である。 気体燃料とともに、酸素を富化した高温ガスを供給する本発明の保温炉を説明する図である。 高温ガス供給配管に酸素を吹き込んだときの酸素濃度の変化をシミュレートした結果を示す図である。 高温ガス供給配管に屈曲部を設け、該屈曲部で酸素を吹き込んだときの酸素濃度の変化をシミュレートした結果を示す図である。 図11の混合ボックスに、孔数の異なる ノズルを介して酸素を吹き込んだときの酸素濃度の変化をシミュレートした結果を示す図である。 実施例の比較例に用いた、酸素富化可能な気体燃料供給装置を説明する図である。 実施例の発明例に用いた、気体燃料と酸素を富化した高温ガスを供給する保温炉を説明する図である。 図14の保温炉における酸素の濃度変化をシミュレートした結果を示す図である。
まず、発明者らは、前述した特許文献4に開示の気体燃料を供給する機能を有する保温炉において、酸素を富化する方法について検討した。
図7は、前述した特許文献4に記載された保温炉を有する焼結機の上流部分を模式的に示したものである。給鉱部の下流には点火炉が設置され、該点火炉の下流には、上流から下流に向かって、1つの保温炉と3つの気体燃料供給装置が配設されている。
ここで、上記気体燃料供給装置においては、気体燃料が、フードの高さ方向下部に、パレット幅方向に配設された複数列の気体燃料供給配管からフード内の空気中に供給され、瞬時に燃焼下限濃度以下の濃度に希釈されている。また、上記気体燃料供給配管の上方(フードの高さ方向中段)には、段面がへの字状の邪魔板がパレット幅方向に複数列かつフード高さ方向に複数段千鳥状に配設されており、パレット下方に配設された図示のないウインドボックスによって装入層内に吸引・導入される空気の流れを制御するとともに、上記気体燃料供給配管から供給される気体燃料の装置外への漏洩を防止している。
また、上記点火炉と気体燃料供給装置間に配設された保温炉においては、焼結機のウインドボックスによって吸引・排出された燃焼排ガスや、排鉱部から排出された焼結鉱を冷却するのに使用されたクーラー排ガスを再利用した高温ガスが、保温炉の上面に接続された複数の高温ガス吹込配管から炉内に供給されるとともに、気体燃料が、上記高温ガス供給配管の接続位置の下部(保温炉内部)に配設されたリング状の気体燃料供給ノズルから上記高温ガス流に向かって噴出され、瞬時に高温ガスと混合して燃焼下限濃度以下に希釈される。
また、図8は、前述した特許文献7,8に開示された気体燃料の供給と同時に酸素を富化することができる気体燃料供給装置を示したものである。この気体燃料供給装置は、気体燃料供給装置のフード内の高さ方向中段に複数列かつ複数段に配設した邪魔板の上方に、酸素供給配管を配設し、該配管から上記邪魔板の間隙に向けて酸素を噴出することで、酸素の外部への漏洩を防止しつつ、酸素の富化と濃度均一化を図っている。
しかし、上記気体燃料供給装置を、特許文献4に開示の焼結機にそのまま適用することはできない。というのは、保温炉においては、供給される高温ガスが外部に漏洩するのを防止するため、圧力計が設置され、外部に対して常に負圧になるように、高温ガスの流量を管理している。しかし、ここに、新たに酸素を供給することになると、上記高温ガスの流量に加えて酸素の流量をも制御することが必要となり、保温炉内部の圧力制御が難しくなるからである。
また、特許文献4に開示の保温炉において、気体燃料を供給するリング状ノズルに加えて、新たに酸素を供給するノズルを配設するには、火災や爆発を防止する観点から、酸素供給ノズルの配設位置を、気体燃料が燃焼下限濃度以下に確実に希釈される、気体燃料供給ノズルから十分に離れた場所、かつ、保温炉内に供給された酸素が高温ガスと混合・均一化する時間を確保できる場所であることが必要であるが、保温炉内という限られたスペースには斯かる条件を満たす位置は存在していない。さらに、保温炉内に供給された酸素濃度を測定するには、保温炉内の複数箇所で測定する必要がある。
なお、上記問題点は、保温炉を撤去し、特許文献7や8に開示の気体燃料供給装置を新たに設けることで解決することができる。しかし、上記方法は、保温炉撤去や気体燃料供給装置の新設に多大な費用が必要となり、さらに、その工事期間における焼結鉱の生産量低下を考慮すると、現実的ではない。
そこで、本発明では、保温炉への酸素富化を、保温炉に酸素を直接供給して富化するのではなく、保温炉に供給する高温ガスの酸素濃度を予め高めておき、これを保温炉に供給する、具体的には、図9に示したように、高温ガスを保温炉に供給する高温ガス吹込配管に分岐する位置より上流の高温ガス供給配管本管に、あるいは、上記高温ガス吹込配管が複数のヘッダー管に取り付けられているときは、上記複数のヘッダー管に分岐する位置より上流の高温ガス供給配管本管に、酸素を供給する酸素供給配管を接続して高温ガスに酸素を供給・混合し、均一化してから保温炉に供給する方法を採用することとした。
この方法であれば、保温炉の撤去や保温炉の大きな改造を行うことなく、酸素富化を実現することができる。また、酸素の濃度管理も、高温ガスの流量と酸素ガスの流量比を制御するだけで行うことができ、酸素濃度の測定も、高温ガス供給配管本管の1箇所のみで行えばよいので、酸素濃度の制御や管理が容易となる。さらに、酸素を高温ガスの供給配管本管に供給するので、ノズルの目詰まり等の発生がなく、メンテナンスが容易となる。
さらに、保温炉において酸素を供給する場合には、高濃度の酸素を保温炉に供給する必要があるが、保温炉は点火炉に隣接し、原料装入層上表面には気体燃料の異常燃焼(火災や爆発)を引き起こす火種が残存している可能性が高い。そのため、酸素を供給する配管には、配管自体の焼損を防止するため、禁油処理を施した銅製や銅合金製、Ni合金製等の高価な配管を用いて不燃化する必要がある。しかし、上記の高温ガスへの酸素混合方法では、火種が存在しないため、高価な配管の使用は不要となる。
なお、本発明の保温炉において焼結原料層内に供給する空気中の酸素濃度は、保温炉に供給される高温ガスの量が気体燃料よりも圧倒的に多いことから、高温ガス中の酸素濃度によってほぼ決定される。したがって、焼結原料層内に供給する空気中の酸素濃度は、高温ガス中の酸素濃度を管理すればよく、例えば、図9の図中に示したように、高温ガス供給配管本管から高温ガス吹込配管への分岐部あるいは高温ガス供給配管本管からヘッダー管への分岐部と、酸素供給配管の接続位置との間に酸素濃度計を設置し、この酸素濃度計の測定値に基いて、酸素供給配管に設置された流量調整弁の開度を調整することで、容易に酸素濃度を制御することができる。
ところで、上記酸素富化方法において、保温炉内に酸素を均一に混合し、供給するためには、保温炉に高温ガスを供給する高温ガス供給配管本管内において、具体的には、複数の高温ガス吹込配管に分岐する前、あるいは、上記高温ガス吹込配管を有するヘッダー管に分岐する前の高温ガス供給配管本管内で、酸素が高温ガスと均一に混合していることが必要となる。そこで、発明者らは、酸素を高温ガスと均一に混合する方法について、以下のシミュレーションを行い、検討した。
<シミュレーション1>
酸素濃度が21vol%の高温ガスが35000Nm/hrで流れる内径が1200mmφの高温ガス供給配管(直管)に内径が450mmφの酸素供給配管を接続し、該酸素供給配管から100vol%濃度の酸素を2800Nm/hr(混合均一化後の酸素濃度が27vol%となる量)で吹き込んだときの、高温ガス供給配管内における酸素濃度の最高値と最低値の変化をシミュレートし、その結果を図10に示した。この図から、酸素の最高濃度が40vol%まで低下するのに、酸素吹込み位置から8mを要しており、27vol%の濃度に均一化するには、かなりの距離が必要であることがわかった。しかし、高温ガス吹込配管への分岐部、あるいは、ヘッダー管への分岐部より斯かる距離離れた上流位置で酸素を供給することは、高温ガス供給配管本管の長さが短い焼結機や、設備配置上、スペースが制限される焼結機の場合には不可能である。
<シミュレーション2>
そこで、発明者らは、上記気体燃料供給配管本管に屈曲部を設けるとともに、該屈曲部に断面積が上記本管の断面積より大きい混合ボックスを設けることにより、高温ガスに流速変化と乱流を起こさせ、高温ガスと酸素との混合を促進することを検討した。
図11は、600mmφの高温ガス供給配管本管に屈曲部を設け、さらに、該屈曲部に、断面積が高温ガス供給配管の2.3倍の、一辺が800mmの立方体状の混合ボックスを設け、該ボックス部に300mmφの酸素供給配管を接続して酸素を吹き込んだときの酸素の濃度変化をシミュレートした結果を示したものである。なお、高温ガスの流量および酸素の吹込み量は、上記<シミュレーション1>と同じとした。この図から、酸素の最高濃度が40vol%まで低下する酸素吹き込み位置からの距離は約2mとなり、直管と比較して約1/4に短縮できることがわかった。
<シミュレーション3>
発明者らはさらに、前述した内径が300mmφの酸素供給配管の混合ボックス部との接続部に、一例として、30mmφの孔を1孔、16孔および29孔有する半球状のノズルを設置したとき、および、ノズル無し(無限の孔数に相当)としたときの、酸素の混合状況の変化をシミュレートした。
図12は、上記の結果を、上段に、酸素吹込み位置(Z=0)から下流2mの位置(Z=2.0m)までの間における酸素の混合状態の変化を、下段に、Z=0.4mおよびZ=2.0m位置における高温排ガス供給配管断面の酸素濃度分布を示したものである。この図から、酸素供給配管の酸素吹き込み位置にノズルを設けることにより、高温排ガス供給配管内の酸素の混合がより促進されること、その効果は、ノズル圧損が最も大きい1孔で最大で、酸素吹き込み位置から2m(z=2.0m)でも最高濃度が30vol%近くまで混合されており、次いで、16孔で、酸素吹き込み位置から2m(z=2.0m)で最高濃度が33vol%近くまで混合されているのに対して、ノズル圧損が最も小さい29孔では、ノズル無し(無限の孔数)と同等であり、ノズル設置の効果が得られないことがわかる。これは、ノズルから噴出する酸素の流速が大きい少数孔のノズルほど、酸素と高温ガスとの撹拌・混合が促進されるためであると考えられる。
しかし、ノズル孔数が1孔の場合は、ノズルの圧損が430kPaと極端に高くなってしまい、酸素の供給圧力が低い場合には実施は不可能である。したがって、上記シミュレートの範囲内では、ノズル圧損が実施可能範囲内にあり、かつ、酸素の混合促進効果が見込める16孔が最も好ましいことになる。
以上のシミュレーション結果から、高温ガスと酸素との混合を促進するには、高温ガス供給配管の流路に屈曲部を設ける、および/または、上記高温ガス供給配管より断面積が大きい混合ボックスを設けて、高温ガスの流れに速度変化および乱流を起こさせるのが有効であり、さらに、酸素供給配管から高温ガス供給配管内に酸素を吹き込む際には、適正なノズルを介して酸素を吹き込むことで、酸素の混合がより促進されることがわかった。
ここで、上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に設ける屈曲部は、気体燃料の流れに速度変化および乱流を起こさせる観点から、屈曲部の屈曲角度(屈曲前後の配管軸がなす角度)は30°以上であることが好ましい。なお、この屈曲部のみで酸素の混合を促進する場合には、上記屈曲部の設置位置は、複数の高温ガス吹込配管に分岐する位置、あるいは、上記高温ガス吹込配管を有するヘッダー管に分岐する位置から2m以上上流とするのが好ましい。
また、上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に設ける混合ボックスは、断面積が、高温ガス供給配管の断面積に対して2倍以上であることが望ましい。なお、この混合ボックスのみで酸素の混合を促進する場合には、上記混合ボックスの設置位置は、複数の高温ガス吹込配管に分岐する位置、あるいは、上記高温ガス吹込配管を有するヘッダー管に分岐する位置から2m以上上流とするのが好ましい。また、混合ボックスの形状については、特に制限はなく、直方体や立方体、円筒体、あるいは、それらの近似体等、いずれの形状でもよい。
なお、高温ガスへの酸素の混合をより促進する観点からは、上記高温ガス供給配管の屈曲部に混合ボックスを設けるとともに、該混合ボックスに酸素を吹き込むことが最も望ましい実施形態である。
また、酸素供給配管に設けるノズルは、高温ガスと酸素との混合をより促進する観点から、高温ガス中への酸素の吹き込み速度を高速化できるノズル径や孔数のものを選択することが重要である。例えば、図12の場合、30mmφ×16孔で圧損が3kPaのノズルを用いることが好ましい。上記適正なノズルを使用することで、混合ボックスの設置位置を、複数の高温ガス吹込配管に分岐する位置、あるいは、上記高温ガス吹込配管を有するヘッダー管に分岐する位置からさらに短縮することができる。
なお、本発明において保温炉に供給する高温ガスとしては特に制限はないが、焼結機から発生する高温排ガス、例えば、パレット下方に配設したウインドボックスによって吸引・排出された燃焼排ガスや、焼結機の排鉱部から排出された焼結鉱の冷却に使用されたクーラー排ガスであれば好適に用いることができる。上記燃焼排ガスとクーラー排ガスの両方を用いてもよく、その場合には、燃焼排ガスとクーラー排ガスとを別々に供給してもよいし、予め混合してから供給してもよい。また、燃焼排ガスとクーラー排ガスの供給位置を保温炉内で違えてもよい。なお、燃焼排ガスを用いる場合には、酸素供給量を低減するため、酸素濃度が高い排ガスを用いるのが好ましい。
また、上記高温ガスは、温度が130〜300℃の範囲が好ましい。130℃未満では、焼結原料の予熱効果が小さく、一方、300℃を超えると、造粒粒子である焼結原料が急激な乾燥により崩壊を起こすからである。
図13に示した、燃焼濃度以下に希釈した気体燃料に加えて、酸素を富化した空気を焼結原料装入層内に供給可能な気体燃料供給装置を有する実機焼結機(比較例)と、図14に示した、燃焼濃度以下に希釈した気体燃料に加えて、酸素を混合富化した高温ガスを焼結原料装入層内に供給可能な保温炉を有する実機焼結機(発明例)において、酸素富化後の酸素濃度分布を実測し、酸素の混合均一化レベルを比較した。
ここで、図13に示した比較例の気体燃料供給装置は、特許文献7、8の開示のものと同様、幅:4200mm×長さ:8500mmのフード内の高さ方向中段に配設された邪魔板の上方に、パレット長さ方向に平行にかつパレット幅方向に複数本配設された酸素供給配管から下方の邪魔板同士の間隙に向けて酸素を噴射して酸素を富化するものであり、上記酸素供給配管からは、原料装入層内に吸引される空気中の酸素濃度が26vol%となる量の酸素が供給されている。
一方、図14に示した本発明例の保温炉は、本発明の酸素富化方法を採用したもので、幅:5800mm×長さ:7000mmで、保温炉の上方にはパレット進行方向に4列のヘッダー管が配設され、各ヘッダー管にはパレット幅方向に4列、合計16本の高温ガス吹込配管が下方に向けて配設され、保温炉の上面に接続されている。なお、上記4列のヘッダー管は、パレット進行方向で2つに分けられ、上流側のA,B2列のヘッダー管には、高温ガスとして焼結機から発生した酸素濃度が19vol%の燃焼排ガスが、下流側のC,D2列のヘッダー管には、高温ガスとして焼結鉱の冷却に用いられた酸素濃度が21vol%のクーラー排ガスが供給されている。また、上記それぞれのヘッダー管に高温ガスを供給する内径が600mmφの高温ガス供給配管本管には、2本のヘッダー管への分岐部から上流側2mの位置に、断面積が高温ガス供給配管本管よりも大きい、一辺の長さが800mmの立方体状の混合ボックスが設置され、この混合ボックスにおいて、それぞれの高温ガスの流れが90°で屈曲されるとともに、富化・均一化後の濃度が27vol%となる量の酸素が、圧損が3kPaとなるよう設計された16孔のノズルを有する酸素供給配管から吹き込まれている。
上記気体燃料供給装置における酸素濃度の測定は、図13に示したように、邪魔板の下方に配設された気体燃料供給配管と原料装入層間の高さ位置(図13中に示した酸素濃度測定位置)で、パレット幅方向に6点×パレット長さ方向に4点、合計24点において測定した。
また、上記保温炉における酸素濃度の測定は、図14に示したように、高温ガスを保温炉に供給する16本の高温ガス吹込管の保温炉との接続部近傍、すなわち、各高温ガス吹込管から高温ガスが保温炉に供給される直前位置において測定した。
上記図13の気体燃料供給装置における酸素濃度の測定結果を表1に、上記図14の保温炉における酸素濃度の測定結果を表2に示した。これらの結果から、図13の気体燃料供給装置から供給される酸素濃度のばらつき(標準偏差)は0.38vol%であるのに対して、図14の保温炉から供給される酸素濃度のばらつき(標準偏差)は、燃焼排ガス供給系統で0.11vol%、クーラー供給排ガス供給系統で0.25vol%で、全体でも0.19vol%あり、図13の気体燃料供給装置よりも酸素濃度のばらつきが半減していることがわかる。因みに、図15は、上記図14の保温戸における高温ガスと酸素との混合状況をシミュレートした結果を示したものであり、高温ガス供給配管本管から2本のヘッダー管に分岐する時点で、酸素の最高濃度は27vol%になること、さらに、焼結原料装入層表面(図13の気体燃料供給装置の測定位置とほぼ同じ位置)における酸素濃度の標準偏差は0.03vol%、となることを確認している。
Figure 0006160838
Figure 0006160838
本発明の焼結技術は、製鉄用、特に高炉用原料として使用される焼結鉱の製造技術として有用であるばかりでなく、その他鉱石の塊成化技術としても利用することができる。
1:原料ホッパー
2:ドラムミキサー
3:ロータリーキルン
4、5:サージホッパー
6:ドラムフィーダー
7:切り出しシュート
8:パレット
9:原料装入層
10:点火炉
11:ウインドボックス
12:カットオフプレート

Claims (8)

  1. 点火炉の下流に設置され、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含有する高温ガスを焼結原料装入層内に供給する焼結機の保温炉における酸素富化方法において、
    高温ガスを保温炉に供給する高温ガス供給配管の本管に、酸素を供給する酸素供給配管を接続して酸素を吹き込み、酸素を富化するとともに、
    上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設けて高温ガス流に乱流を起こさせることを特徴とする保温炉への酸素富化方法。
  2. 上記高温ガス供給配管の酸素吹き込み位置以降に屈曲部を設けて高温ガス流を屈曲させることを特徴とする請求項1に記載の保温炉への酸素富化方法。
  3. 上記高温ガス供給配管の屈曲部に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設け、該混合ボックスに酸素を吹き込むことを特徴とする請求項に記載の保温炉への酸素富化方法。
  4. 上記酸素供給配管に設けたノズルから高温ガス供給配管内または混合ボックス内に酸素を吹き込むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の保温炉への酸素富化方法。
  5. 点火炉の下流に設置され、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を含有する高温ガスを焼結原料装入層内に供給する焼結機の保温炉における酸素富化装置であって、
    高温ガスを保温炉に供給する高温ガス供給配管の本管に、酸素を吹き込む酸素供給配管を接続してなり、
    上記酸素供給配管との接続部以降に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設けてなることを特徴とする保温炉への酸素富化装置。
  6. 上記酸素供給配管との接続部以降の高温ガス供給配管に屈曲部を設けてなることを特徴とする請求項に記載の保温炉への酸素富化装置。
  7. 上記屈曲部に、断面積が高温ガス供給配管の2倍以上の混合ボックスを設け、該混合ボックスに酸素供給配管が接続されてなることを特徴とする請求項に記載の保温炉への酸素富化装置。
  8. 上記高温ガス供給配管または混合ボックスとの接続部の酸素供給配管にノズルを設けてなることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の保温炉への酸素富化装置。
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