JP6158700B2 - 超電導磁石装置及び超電導利用装置 - Google Patents

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Description

本発明は、蓄冷構造を有する超電導磁石装置、及び、当該超電導磁石装置と同様の蓄冷構造を有する超電導を利用する装置(以下、「超電導利用装置」と称する)に関する。
超電導磁石装置は、磁場を形成する超電導コイルと、超電導コイルと並列に接続された永久電流スイッチとを含む回路を有している。超電導コイルと永久電流スイッチとは、一定の温度以下に保たれることにより、超電導状態となる。これにより、超電導磁石装置は、長期に渡って磁場を保持することができる。
超電導磁石装置は、例えば浸漬冷却方式や伝導冷却方式を用いて、超電導コイルや永久電流スイッチに代表される超電導状態となる素子(以下、「超電導素子」と称する)を一定の温度以下に冷却して超電導状態に保持する。「浸漬冷却方式」とは、液体ヘリウムや液体窒素に代表される冷媒の中に超電導素子を浸漬させて、超電導素子を冷却する方式である。また、「伝導冷却方式」とは、冷凍機と超電導素子とを熱伝導性の良い金属で熱的に接続して、超電導素子を冷却する方式である。ただし、冷凍機は、浸漬冷却方式を用いる超電導磁石装置であっても、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴イメージング)装置やNMR(Nuclear Magnetic Resonance;核磁気共鳴)装置等のように、数カ月から1年程度の長期に渡って稼動する超電導磁石装置には、装置外から装置内への熱の侵入によって気化した冷媒を再凝縮するために設けられている。
このような冷凍機を有する超電導磁石装置は、電力が供給されていれば、長期に渡って超電導状態を保持することができる。しかしながら、超電導磁石装置は、停電等によって、電力が供給されなくなると、冷凍機が停止する。これにより、超電導磁石装置は、超電導素子(例えば、超電導コイルや永久電流スイッチ、励磁電源と超電導コイルとを電気的に連結する一部のパワーリード(超電導パワーリード)等)の温度が上昇する。特に、伝導冷却方式を用いた超電導磁石装置は、液体ヘリウム等の冷媒の熱容量が比較的小さいため、冷凍機が停止すると、超電導素子の温度がすぐに上昇する。その結果、超電導磁石装置は、常電導状態に転移して、磁場を保持できなくなる恐れがある。また、超電導磁石装置は、励磁電源と超電導コイルとを直結して運転している場合に、何らかの原因で冷凍機が停止すると、超電導コイルや永久電流スイッチだけでなく、パワーリードの温度も上昇する。この場合に、超電導磁石装置は、通電を続行できなくなることがある。
そこで、超電導磁石装置の内部に、蓄冷材として、60K(ケルビン)以下の極低温領域において、ステンレス鋼や銅、アルミニウム等の金属と比較して、比熱が高く、かつ、密度が小さい冷媒(例えば、窒素)を固体の状態で配置し、停電時に、その冷媒の熱容量を用いて超電導素子の温度上昇を抑制する蓄冷構造が提案されている(例えば、特許文献1)。このような用途に用いる代表的な冷媒としては、例えば、窒素がある。窒素は、比較的安価で、かつ、1気圧下において、77K以下で液化し、64K以下で固化する特性を有する。そして、固化した窒素(固体窒素)は、比熱が、同じ体積の金属と比較すると、例えば、20K下において、10倍程度高い。
前記した蓄冷構造の派生系の一つには、例えば、複数ある超電導素子の全てを真空容器の内部に内包し、真空容器の内部を冷媒で満たす構成のものがある。しかしながら、この構成の蓄冷構造は、大量の冷媒が必要となる。そして、代表的な冷媒として用いられる窒素は、固体時の熱伝導率がステンレス鋼並みに低いため、大量の固体窒素を所望の温度以下に冷却するために比較的長い時間を要する。すなわち、この構成の蓄冷構造は、冷媒を所望の温度以下に冷却するまでに、比較的長い時間を要するため、超電導磁石装置の稼動効率が悪化してしまう。
蓄冷構造の改良案としては、複数ある超電導素子のそれぞれに熱的に接続させた複数の冷媒容器を設け、固体時の冷媒の体積を制限する構成が提案されている。ただし、この構成の蓄冷構造は、装置内に冷媒を導入する冷媒導入配管及び装置外に冷媒を排出する冷媒排出配管を各冷媒容器に設ける必要があった。各冷媒容器に冷媒導入配管及び冷媒排出配管を設けると、これらの配管を介して装置外からの熱が伝達されるため、結果として装置外から装置内への熱の侵入量が増大する。
そこで、前記した複数の冷媒容器を備える蓄冷構造の改良案として、冷媒導入配管及び冷媒排出配管を介して伝達される熱の侵入量を低減するために、装置の内部において、各冷媒容器同士を配管で連結して、冷媒導入配管及び冷媒排出配管の本数を減らす構成が提案されている。以下、各冷媒容器同士を連結する配管を「連結配管」と称する。また、この構成の蓄冷構造を有する超電導磁石装置を「従来の超電導磁石装置」と称する。
特開2011−82229号公報(図1)
しかしながら、従来の超電導磁石装置は、以下に説明するように、気化した冷媒を装置外に良好に排出することと、装置内への熱の侵入量を増大させないようにすることとを両立させることができない、という課題があった。
例えば、従来の超電導磁石装置は、停電等が起こると各冷媒容器とその連結配管の温度が上昇する。このとき、各冷媒容器と連結配管とが同等に温度上昇するのであれば、全ての冷媒容器内の冷媒(例えば、窒素)は、同じタイミングで液化し、その後気化することとなる。そうすると、装置内部の各冷媒容器、連結配管、冷媒導入配管及び冷媒排出配管において、気化していない固体の冷媒による閉塞した空間ができないため、気化した冷媒は良好に装置外へ排出される。
しかしながら、従来の超電導磁石装置は、何らかの理由で一部の冷媒容器内の冷媒の温度が上昇した場合は、良好に冷媒を排出することが困難である。温度が上昇した冷媒容器内の冷媒は気化するが、他の冷媒容器や連結配管の内部には固体状態の冷媒が存在する可能性があるためである。すなわち、気化した冷媒を排出しようにも、排出する経路が閉塞しているため、経路を確保することができず、気化した冷媒を装置外に排出することができない場合がある。その結果、従来の超電導磁石装置は、温度上昇が発生した冷媒容器では、気化した冷媒によってその内圧が上昇し、冷媒容器を破損する可能性がある。
従来の超電導磁石装置において、このような破損を防止しようとすると、たとえ装置内への熱の侵入量が増大するとしても、気化した冷媒を装置外に排出するための冷媒排出配管を各冷媒容器に設ける必要がある。しかしながら、冷媒排出配管を増設することは、装置内への熱の侵入量が増大する、という課題が発生する。
したがって、従来の超電導磁石装置は、気化した冷媒を装置外に良好に排出することと、装置内への熱の侵入量を増大させないようにすることとを両立させることができなかった。
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒を装置外に良好に排出することができる超電導磁石装置を提供することを主な目的とする。また、本発明は、当該超電導磁石装置と同様の蓄冷構造を有する様々な超電導利用装置を提供することを主な目的とする。
前記目的を達成するため、第1発明は、超電導磁石装置であって、一定の温度以下で超電導状態となる複数の超電導コイルと、複数の超電導コイルを含む任意の冷却対象と熱的に接続される複数の冷媒容器と、いずれか1乃至複数の冷媒容器と熱的に接続され、接続される冷媒容器に内蔵される冷媒を冷却する冷凍機と、複数の冷媒容器のうち最も高所に配置される冷媒容器に接続され、冷媒を装置内部に導入するための冷媒導入配管と、複数の冷媒容器を互いに連結し、連結された冷媒容器間で冷媒を流動可能とする連結配管と、1乃至複数の冷媒容器に接続された、冷媒を装置外部に排出するための冷媒排出配管とを有し、複数の冷媒容器では、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口から冷媒容器の底面までの間に配置されるように設けられており、冷媒導入配管と連結配管と冷媒排出配管とによって形成される配管の経路は、冷媒導入配管を最上流の配管とし、冷媒排出配管を最下流の配管とし、最上流の配管から最下流の配管に向けて、各部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている構成とする。
この超電導磁石装置は、高所に配置された冷媒容器から低所に配置された冷媒容器に向けて順番に連結配管で連結された構成となる。この超電導磁石装置は、複数の冷媒容器と1本の冷媒導入配管と1乃至複数本の連結配管と1本の冷媒排出配管とによって蓄冷構造を形成する。各冷媒容器は、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口よりも下で、かつ、冷媒容器の底面から上方向に離間した位置に設定されている。そのため、各冷媒容器の内部では、冷媒が、冷媒排出口の下端部分よりも下側に溜まって固化した状態となる。その結果、各冷媒容器の内部では、固体状態の冷媒の上に、空間が形成された状態となる。
また、この超電導磁石装置は、1本の冷媒導入配管と1乃至複数本の連結配管と1本の冷媒排出配管とによって形成される配管の経路が、各部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている。そのため、形成された配管の経路の内部は、運転前に、液体状態の冷媒が液溜まりを生じることなく外部に排出されるため、運転時には、固体状態の冷媒が存在しない状態となる。
この超電導磁石装置は、各冷媒容器の内部の空間と冷媒が存在しない配管の経路とが連結された構成になる。そのため、この超電導磁石装置は、仮に、停電等によって、一部の冷媒容器の内部に固体状態で貯蔵されている冷媒が気化した場合に、気化した冷媒を排出するための、固体状態の冷媒が存在しない経路を確保することができる。その結果、この超電導磁石装置は、気化した冷媒を装置外に良好に排出することができる。
また、この超電導磁石装置は、冷媒排出配管を各冷媒容器に設ける必要がないため、冷媒排出配管の数を例えば1本に制限することができる。そのため、この超電導磁石装置は、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、複数の冷媒容器を装置内に設けることができる。
また、第2発明は、超電導利用装置であって、一定の温度以下で超電導状態となる超電導素子と、超電導素子を含む任意の冷却対象と熱的に接続される複数の冷媒容器と、いずれか1乃至複数の冷媒容器と熱的に接続され、接続される冷媒容器に内蔵される冷媒を冷却する冷凍機と、複数の冷媒容器のうち最も高所に配置される冷媒容器に接続され、冷媒を装置内部に導入するための冷媒導入配管と、複数の冷媒容器を互いに連結し、連結された冷媒容器間で冷媒を流動可能とする連結配管と、1乃至複数の冷媒容器に接続された、冷媒を装置外部に排出するための冷媒排出配管とを有し、複数の冷媒容器では、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口から冷媒容器の底面までの間に配置されるように設けられており、冷媒導入配管と連結配管と冷媒排出配管とによって形成される配管の経路は、冷媒導入配管を最上流の配管とし、冷媒排出配管を最下流の配管とし、最上流の配管から最下流の配管に向けて、各部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている構成とする。
その他の手段は、後記する。
本発明によれば、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒を装置外に良好に排出することができる超電導磁石装置及び超電導利用装置を提供することができる。
第1実施形態に係る超電導磁石装置の断面構成を模式的に示す図である。 第1実施形態に係る超電導磁石装置のレイアウトの一例を示す図である。 第1実施形態で用いる回路の構成を模式的に示す図である。 第2実施形態に係る超電導磁石装置の断面構成を模式的に示す図である。 第2実施形態に係る超電導磁石装置のレイアウトの一例を示す図である。 第3実施形態に係る超電導磁石装置の断面構成を模式的に示す図である。 第4実施形態に係る超電導磁石装置の断面構成を模式的に示す図である。 配管の変形例を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
<超電導磁石装置の構成>
以下、図1を参照して、本第1実施形態に係る超電導磁石装置1の構成につき説明する。図1は、本第1実施形態に係る超電導磁石装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、本第1実施形態に係る超電導磁石装置1は、真空容器2、輻射シールド3、複数の超電導コイル4、複数の冷媒容器5、常電導パワーリード7、超電導パワーリード8、永久電流スイッチ9、及び、冷凍機12を有している。なお、ここでは、超電導磁石装置1が2つの超電導コイル4a,4bと4つの冷媒容器5a〜5dとを有している場合を想定して説明する。ただし、超電導コイル4及び冷媒容器5は、超電導磁石装置1の構成に応じて、増減させることができる。
真空容器2は、内部が真空状態に保持された容器である。真空容器2は、例えば、超電導コイル4や永久電流スイッチ9、超電導パワーリード8等の超電導状態となる素子(以下、「超電導素子」と称する)を含む各構成要素を内部に収容している。真空容器2は、水平方向に開口する開口部24が設けられている。以下、図1に示す構成において、開口部24から遠い側の真空容器2の壁部分を便宜上「外壁2a」と称し、また、真空容器2の開口部24を形成する壁部分を便宜上「内壁2b」と称する。
真空容器2は、例えば、超電導磁石装置1がMRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴イメージング)装置として構成される場合に、図2に一例として示すレイアウトのような構成となる。図2は、超電導磁石装置1のレイアウトの一例を示す図である。
以下、図1に戻って、説明を続ける。輻射シールド3は、任意の冷却対象(本第1実施形態では、冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8a)に熱的に接続される部材である。輻射シールド3は、真空容器2よりも小型な構成となっており、真空容器2に内包されている。図1に示す例では、輻射シールド3は、真空容器2の内壁面に沿った形状となっている。以下、図1に示す構成において、真空容器2の開口部24から遠い側の輻射シールド3の壁部分を便宜上「外壁3a」と称し、また、真空容器2の開口部24に近い側の壁部分を便宜上「内壁3b」と称する。
超電導コイル4は、磁場を形成する部材である。超電導コイル4は、一定の温度以下で超電導状態となる。超電導コイル4は、輻射シールド3に内包されている。本第1実施形態では、超電導磁石装置1は、2つの超電導コイル4a,4bを有している。超電導コイル4a,4bは、それぞれ、中心軸21を中心にしてリング状に形成されている。超電導コイル4a,4bは、それぞれ、中心軸21が鉛直方向を向き、真空容器2の開口部24を挟んで上下に分かれて配置されている。
冷媒容器5は、蓄熱材として機能する冷媒6を貯蔵する容器である。冷媒容器5は、超電導素子(超電導状態となる素子)と熱的に接続して、超電導素子を一定の温度以下に冷却して超電導状態に保持する。本第1実施形態では、超電導コイル4や永久電流スイッチ9、超電導パワーリード8等が超電導素子となる。本第1実施形態では、超電導磁石装置1は、4つの冷媒容器5a,5b,5c,5dを有している。
本第1実施形態では、冷媒容器5a〜5dのうち冷媒容器5aが最も高所に配置されており、また、冷媒容器5dが最も低所に配置されており、また、冷媒容器5b,5cが冷媒容器5aと冷媒容器5dとの間に配置されている。本第1実施形態では、冷媒6が最初に導入されるのは冷媒容器5aとなる。また、冷媒6が最終的に排出されるのは冷媒容器5dとなる。
冷媒容器5aは、真空容器2の外壁2aと輻射シールド3の外壁3aとの間に配置され、輻射シールド3の外壁3aと熱的に接続されている。冷媒容器5bは、輻射シールド3の内部(輻射シールド3の外壁3aと内壁3bとの間)に配置され、超電導コイル4aと熱的に接続されている。冷媒容器5cは、輻射シールド3の内部に配置され、永久電流スイッチ9と熱的に接続されている。冷媒容器5dは、輻射シールド3の内部に配置され、超電導コイル4bと熱的に接続されている。
図1に示す例では、冷媒容器5aは、冷媒導入配管30が天井部分に連結されており、連結配管33が底部分を貫通して容器内部に進入するように底部分に連結されている。
「冷媒導入配管30」は、冷媒6を装置内部に導入するための配管である。また、「連結配管33」は、冷媒容器5同士を直列又は並列に連結して、冷媒6を冷媒容器5同士の間で流動させるための配管である。以下、冷媒容器5aと冷媒容器5bとの間を連結する連結配管33を「連結配管33a」と称し、冷媒容器5bと冷媒容器5cとの間を連結する連結配管33を「連結配管33b」と称し、冷媒容器5cと冷媒容器5dとの間を連結する連結配管33を「連結配管33c」と称する。
冷媒容器5bは、連結配管33aが天井部分に連結されており、連結配管33bが底部分を貫通して容器内部に進入するように底部分に連結されている。また、冷媒容器5cは、連結配管33bが天井部分に連結されており、連結配管33cが底部分を貫通して容器内部に進入するように底部分に連結されている。また、冷媒容器5dは、連結配管33cが天井部分に連結されており、冷媒排出配管31が底部分を貫通して容器内部に進入するように底部分に連結されている。「冷媒排出配管31」は、冷媒6を装置外部に排出するための配管である。
なお、各冷媒容器5は、配管30,31,33と連結している部分が密封されており、これによって、内部の気密が保たれている。
冷媒導入配管30の下端部、及び、連結配管33a〜33cの下端部は、各冷媒容器5a〜5dの冷媒導入口40となる。「冷媒導入口40」は、冷媒6が容器内に導入される開口部である。また、連結配管33a〜33cの上端部、及び、冷媒排出配管31の上端部各冷媒容器5a〜5dの冷媒導入口40となる。「冷媒排出口41」は、冷媒6が容器外に排出される開口部である。
各冷媒容器5の冷媒導入口40の高さ位置は、冷媒排出口41よりも高い位置に設定されている。また、冷媒排出口41の高さ位置は、冷媒導入口40よりも下で、かつ、冷媒容器5の底面から上方向に離間した位置に設定されている。
本第1実施形態では、各連結配管33は、冷媒6の液溜まりが途中でできないように、途中で上昇することなく、高所に配置された冷媒容器5から低所に配置された冷媒容器5に向けて4つの冷媒容器5a〜5dを順番に一対一の関係で連結している。
つまり、本第1実施形態では、1本の連結配管33は、例えば、高所に配置された冷媒容器5aと冷媒容器5aよりも低所に配置された冷媒容器5bとのように、途中で上昇することなく(すなわち、冷媒6による閉塞を生じるような箇所を作ることなく)、上流側に配置された冷媒容器5と下流側に配置された冷媒容器5とを一対一の関係で直列に連結している。なお、ここでは、「上流」及び「下流」は、冷媒6が重力に従って流れる方向を意味しており、具体的には、「上流」が高所側で、「下流」が低所側を意味している。
冷媒容器5の内部に貯蔵される冷媒6は、60K(ケルビン)以下の極低温領域において、ステンレス鋼や銅、アルミニウム等の金属と比較して、比熱が高く、かつ、密度が小さい媒体であることが望まれる。本第1実施形態では、冷媒6として、例えば、窒素を用いるものとして説明する。
常電導パワーリード7及び超電導パワーリード8は、電源と超電導コイル4とを電気的に連結する部材である。常電導パワーリード7は、良電気伝導性の部材によって構成されている。常電導パワーリード7は、真空容器2の外壁2aを貫通するように設けられており、輻射シールド3を介して冷凍機12の第1ステージ12aによって冷却される。一方、超電導パワーリード8は、超電導状態となる部材と良電気伝導性の部材とによって構成されている。超電導パワーリード8は、高温端8aが輻射シールド3を介して冷凍機12の第1ステージ12aによって冷却され、低温端8bが冷媒容器5bを介して冷凍機12の第2ステージ12bによって冷却される。
永久電流スイッチ9は、超電導コイル4とともに回路(図3参照)を構成し、回路の電流の流れを切り替える手段である。図3は、その回路の構成を模式的に示す図である。回路は、例えば、永久電流スイッチ9と複数の保護抵抗10(図3に示す例では、2つの保護抵抗10a,10b)と複数の超電導コイル4(図3に示す例では、2つの超電導コイル4a,4b)とが真空容器2の内部に並列に設置されており、また、これらに並列して、直流電源として構成された励磁電源13と電流遮断器14とが真空容器2の外部に設置された構成になっている。
超電導磁石装置1は、永久電流スイッチ9を「開」にした状態で、励磁電源(直流電源)13から超電導コイル4に電流を流し、その後、永久電流スイッチ9を「閉」にした状態で、超電導コイル4に流されている電流を減少させてゼロにすることによって、永久電流運転状態となる。これにより、超電導磁石装置1は、長期に渡って磁場を保持することができる。ここで、「永久電流運転状態」とは、超電導コイル4と永久電流スイッチ9とが超電導状態の閉回路を構成し、電流がほとんど減衰することなく閉回路内を流れ続ける状態を意味する。
なお、永久電流スイッチ9を「開」の状態にする処理は、ヒータ等で永久電流スイッチ9を加熱することによって行われる。このとき、永久電流スイッチ9は、常電導状態に転移する。しかしながら、超電導磁石装置1は、連結配管33(図1参照)が、冷媒容器5よりも熱伝導率の低い部材(例えば、ステンレス鋼に代表される熱伝導率の低い部材)で構成されており、これによって、超電導コイル4に伝達される熱流束を制限している。そのため、超電導コイル4は、仮に、連結配管33及び冷媒容器5を介する熱の侵入があったとしても、常電導状態に転移することがない。
以下、図1に戻って、説明を続ける。冷凍機12は、冷媒容器5に貯蔵された冷媒6(例えば、窒素)を一定の温度(固化させる温度)以下に冷却する装置である。冷凍機12は、第1ステージ12aと第2ステージ12bとを備えている。第1ステージ12aは、極低温領域において高温側となる部位であり、一方、第2ステージ12bは、極低温領域において低温側となる部位である。第1ステージ12aは、例えば40K〜50K程度の温度に冷却対象を冷却する。第2ステージ12bは、例えば20K程度の温度に冷却対象を冷却する。
冷凍機12は、真空容器2の外壁2aと輻射シールド3とを貫通するように設けられている。これにより、冷凍機12は、第1ステージ12aが真空容器2の外壁2aと輻射シールド3の外壁3aとの間に配置され、第2ステージ12bが輻射シールド3の内部(輻射シールド3の外壁3aと内壁3bとの間)に配置される。
係る構成において、冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとは、輻射シールド3と熱的に接続されており、輻射シールド3を介して冷凍機12の第1ステージ12aによって例えば40K〜50K程度の温度に冷却される。
また、冷媒容器5bと超電導コイル4aとは、互いに熱的に接続されており、熱伝導パス11を介して冷凍機12の第2ステージ12bによって例えば20K程度の温度に冷却される。同様に、冷媒容器5cと永久電流スイッチ9とは、互いに熱的に接続されており、熱伝導パス11を介して冷凍機12の第2ステージ12bによって例えば20K程度の温度に冷却される。同様に、冷媒容器5cと超電導コイル4bとは、互いに熱的に接続されており、熱伝導パス11を介して冷凍機12の第2ステージ12bによって例えば20K程度の温度に冷却される。
このような超電導磁石装置1は、冷媒容器5aが冷凍機12の第1ステージ12aによって冷却され、また、冷媒容器5b,5c,5dが冷凍機12の第2ステージ12bによって冷却されている。そのため、冷媒容器5aの運転温度が、冷媒容器5b,5c,5dの運転温度よりも高くなる。そして、冷媒容器5aと冷媒容器5bとは、連結配管33によって互いに連結されている。その結果、冷媒容器5aと冷媒容器5bとの間に配置されている連結配管33が、熱の侵入経路となる。そのため、超電導磁石装置1は、連結配管33を介して高温側の冷媒容器5aから低温側の冷媒容器5bに侵入する熱の侵入量を抑制する必要がある。
そこで、本第1実施形態では、連結配管33が、例えばステンレス鋼に代表される、冷媒容器5a,5bよりも熱伝導率の低い部材で構成されている。これにより、超電導磁石装置1は、高温側の冷媒容器5aから低温側の冷媒容器5bへの熱の侵入量を制限している。
係る構成において、超電導磁石装置1は、冷媒容器5a〜5dと冷媒導入配管30と冷媒排出配管31と連結配管33とによって蓄冷構造(以下、「超電導磁石装置1の蓄冷構造」と称する)を形成している。
超電導磁石装置1の蓄冷構造は、前記したとおり、各冷媒容器5の内部において、冷媒排出口41の高さ位置が、冷媒導入口40よりも下で、かつ、冷媒容器5の底面から上方向に離間した位置に設定されている。
そして、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、冷媒導入配管30と冷媒排出配管31と連結配管33とが、冷媒容器5a〜5dを介して、冷媒導入配管30を最上流の配管とし、冷媒排出配管31を最下流の配管とする配管の経路を形成している。この配管の経路は、最上流の配管(冷媒導入配管30)から最下流の配管(冷媒排出配管31)に向けて、途中で上昇することなく、全ての部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている。
超電導磁石装置1は、前記した蓄冷構造を有することにより、以下に説明するように、仮に、一部の冷媒容器5の内部に固体状態で貯蔵されている冷媒6が気化した場合に、気化した冷媒6を排出するための、固体状態の冷媒6が存在しない経路を確保することができる。
例えば、超電導磁石装置1は、運転前において、液体状態の冷媒6が、冷媒導入配管30を通って装置外部から装置内部に導入される。このとき、液体状態の冷媒6は、一旦、冷媒容器5a〜5dと冷媒導入配管30と3本の連結配管33と冷媒排出配管31との全ての内部を満たす状態となる。
その後、超電導磁石装置1は、液体状態の冷媒6が、重力に従って落下し、冷媒排出配管31を通って装置内部から装置外部に排出される。その結果、液体状態の冷媒6は、各冷媒容器5a〜5dの内部で、冷媒排出口41よりも下側に溜まった状態となる。この後、液体状態の冷媒6は、冷凍機12によって冷却されて、固体状態となる。
係る構成において、冷媒容器5に導入された液体状態の冷媒6は、冷媒排出配管31から外部に排出される。そのため、各冷媒容器5a〜5dの内部では、液面の位置が冷媒排出口41の高さの位置となるように、液体状態の冷媒6の高さが制限される。その結果、冷媒6の上には、空間が形成される。また、冷媒導入配管30と冷媒排出配管31と3本の連結配管33とによって形成される配管の経路は、内部に、液体状態の冷媒6が存在しない状態となる。
この後、液体状態の冷媒6は、冷却されて固体状態となる。このとき、超電導磁石装置1の蓄冷構造の内部は、固体状態の冷媒6が各冷媒容器5a〜5dの内部の冷媒排出口41よりも下側にしか存在しない状態となる。つまり、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、各冷媒容器5a〜5dの内部の空間と冷媒6が存在しない配管の経路とが連結された構成になる。
このような超電導磁石装置1の蓄冷構造は、仮に、停電等が発生した場合に、内部の温度が上昇を開始するが、冷媒容器5に貯蔵されている固体状態の冷媒6が、冷媒6の顕熱と潜熱とによって蓄冷材として機能するため、温度の上昇を抑制する。これにより、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、停電等が発生した後も、しばらくは冷却対象である超電導素子(例えば、超電導コイル4や永久電流スイッチ9、超電導パワーリード8等)の冷却を維持することができる。
しかも、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、仮に、内部の温度が上昇する過程で、一部の冷媒容器5に固体状態で貯蔵されていた冷媒6が気化した場合であっても、閉塞した空間が内部にできないように、固体状態の冷媒6が存在しない経路が予め確保されている。そのため、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、気化した冷媒6を装置外に良好(確実)に排出することができる。これにより、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、気化した冷媒6が外部に排出されないことによって、内部の圧力が上昇し、その結果、配管等が破損してしまうことを防止することができる。なお、停電等によって気化した冷媒6は、超電導磁石装置1の内圧が大気圧よりも高いため、冷媒導入配管30及び冷媒排出配管31の双方から外部に排出される。
また、超電導磁石装置1の蓄冷構造は、冷媒排出配管31を各冷媒容器5に設ける必要がないため、冷媒排出配管31の数を例えば1本に制限することができる。そのため、超電導磁石装置1は、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、複数の冷媒容器5を装置内に設けることができる。
その結果、本第1実施形態に係る超電導磁石装置1によれば、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒6を装置外に良好に排出することができる。
[第2実施形態]
第1実施形態に係る超電導磁石装置1は、1本の連結配管33が上流側に配置された冷媒容器5と下流側に配置された冷媒容器5とを一対一の関係で直列に連結している。また、超電導磁石装置1は、1本の冷媒排出配管31が冷媒6の排出元となる1つの冷媒容器5dに連結されている。本第2実施形態では、このような配管構造とは異なる構成の超電導磁石装置1Bを提供する。
以下、図4を参照して、本第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bの構成につき説明する。図4は、本第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bの断面構成を模式的に示す図である。図4(a)は、超電導磁石装置1Bの横断面の構成を示しており、図4(b)は、図4(a)に示すA−A線に沿って切断した場合の超電導磁石装置1Bの縦断面の構成を示している。
図4に示すように、本第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bは、第1実施形態に係る超電導磁石装置1(図1参照)と比較すると、以下の(1)〜(3)の点で相違している。
(1)超電導コイル4の中心軸21が水平方向を向くように配置されている点。
(2)1本の連結配管33が上流側に配置された冷媒容器5と下流側に配置された冷媒容器5とを一対N(ただし、Nは1以上の整数)の関係で並列に連結している点。
(3)1本の冷媒排出配管31が冷媒6の排出元となるN個の冷媒容器5に連結されている点。
以下、前記した(1)〜(3)の相違点について、詳述する。
(1)図4(a)に示す例では、超電導磁石装置1Bは、超電導コイル4a,4bの中心軸21が水平方向を向くように配置されており、さらに、超電導コイル4a,4bが真空容器2の開口部24の周囲を円周方向に囲むように配置された構成になっている。
(2)また、超電導磁石装置1Bは、1本の連結配管33の下端部が3つに分岐した構成になっており、その連結配管33が上流側に配置された1つの冷媒容器5aとその冷媒容器5aよりも下流側に配置された3つの冷媒容器5b,5c,5dとを連結する構成になっている。
(3)また、超電導磁石装置1Bは、1本の冷媒排出配管31の上端部が3つに分岐した構成になっており、その冷媒排出配管31が冷媒6の排出元となる3つの冷媒容器5b,5c,5dに連結された構成になっている。なお、図4に示す例では、超電導磁石装置1Bは、冷媒導入配管30の3つに分岐した上端部が3つの冷媒容器5b,5c,5dの側板部分を貫通して各冷媒容器5b,5c,5dの内部に進入する構成になっている。
なお、本第2実施形態では、図4(b)に示すように、超電導コイル4bを冷却する冷媒容器5dが、真空容器2の開口部24の周囲を円周方向に囲むように構成されている。冷媒容器5dの内部では、冷媒6が、冷媒容器5dの冷媒排出口41(図4(a)参照)よりも下側に溜まっている。同様に、超電導コイル4aを冷却する冷媒容器5bも、真空容器2の開口部24の周囲を円周方向に囲むように構成されている。冷媒容器5bの内部では、冷媒6が、冷媒容器5bの冷媒排出口41よりも下側に溜まっている(図4(a)参照)。なお、冷媒容器5a,5cの内部でも、冷媒6が、冷媒容器5a,5cの冷媒排出口41よりも下側に溜まっている(図4(a)参照)。
また、本第2実施形態では、超電導磁石装置1Bの真空容器2は、中心部に開口部24が設けられており、全体の形状が円筒状に形成されているものとして説明する。このような真空容器2は、例えば、超電導磁石装置1がMRI装置として構成される場合に、図5に一例として示すレイアウトのような構成となる。図5は、超電導磁石装置1Bのレイアウトの一例を示す図である。
このような超電導磁石装置1Bの蓄冷構造は、第1実施形態に係る超電導磁石装置1の蓄冷構造と同様に、運転前に、液体状態の冷媒6が冷媒導入配管30を通って内部に導入された後、液体状態の冷媒6が冷媒排出配管31を通って外部に排出される。
この後、液体状態の冷媒6は、冷却されて固体状態となる。このとき、超電導磁石装置1Bの蓄冷構造の内部は、固体状態の冷媒6が各冷媒容器5a〜5dの内部の冷媒排出口41よりも下側にしか存在しない状態となる。つまり、超電導磁石装置1Bの蓄冷構造は、各冷媒容器5a〜5dの内部の空間と冷媒6が存在しない配管の経路とが連結された構成になる。
このような超電導磁石装置1Bの蓄冷構造は、第1実施形態に係る超電導磁石装置1の蓄冷構造と同様の効果を得ることができる。その結果、本第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bによれば、第1実施形態に係る超電導磁石装置1と同様に、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒6を装置外に良好に排出することができる。
しかも、超電導磁石装置1Bは、蓄冷構造が図4に示すように構成されることにより、例えば冷媒容器5bと冷媒容器5dのように、複数の冷媒容器5を略同等の高さ位置に配置することができる。そのため、超電導磁石装置1Bによれば、例えば、第1実施形態に係る超電導磁石装置1において、複数の冷媒容器5間で十分な高低差を設けられない場合で、かつ、上流側の冷媒容器5の冷媒排出口41の下側に下流側の冷媒容器5の冷媒導入口40を配置することができないときであっても、図4(a)に示す冷媒容器5bと冷媒容器5dとのように、配置することができる。
[第3実施形態]
第1実施形態に係る超電導磁石装置1は、冷凍機12が輻射シールド3を介して冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとを冷却する構成になっている。本第3実施形態では、輻射シールド3を削除し、冷凍機12が直接これらの部材を冷却する構成の超電導磁石装置1Cを提供する。
以下、図6を参照して、本第3実施形態に係る超電導磁石装置1Cの構成につき説明する。図6は、本第3実施形態に係る超電導磁石装置1Cの断面構成を模式的に示す図である。
図6に示すように、本第3実施形態に係る超電導磁石装置1Cは、第1実施形態に係る超電導磁石装置1(図1参照)と比較すると、以下の(1)〜(4)の点で相違している。
(1)輻射シールド3と永久電流スイッチ9と冷媒容器5cとが削除されている点。
(2)冷凍機12の第1ステージ12aが熱伝導パス11を介して冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとを直接冷却する点。
(3)冷凍機12の第2ステージ12bが熱伝導パス11を介して冷媒容器5bを直接冷却する点。
(4)冷媒容器5a,5bの間に配置されている連結配管33aのみが冷媒容器5a,5bよりも熱伝導率の低い部材で構成されており、他の箇所(図6に示す例では、冷媒容器5bと冷媒容器5dとの間)に配置されている連結配管33dが、冷媒容器5と同等以上の熱伝導率の高い部材で構成されている点。
以下、前記した(1)〜(4)の相違点について、詳述する。
(1)図6に示す例では、超電導磁石装置1Cは、冷凍機12の第1ステージ12aが熱伝導パス11を介して冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとを直接冷却するため、輻射シールド3が削除された構成になっている。また、超電導磁石装置1Cは、永久電流スイッチ9が削除されており、永久電流スイッチ9を冷却する必要がないため、冷媒容器5cが削除された構成になっている。
(2)超電導磁石装置1Cは、冷凍機12の第1ステージ12aが熱伝導パス11を介して冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとを直接冷却する構成になっている。
(3)超電導磁石装置1Cは、冷媒容器5cが削除されているため、冷凍機12の第2ステージ12bが熱伝導パス11を介して冷媒容器5bのみを直接冷却する構成になっている。
(4)超電導磁石装置1Cは、第1実施形態に係る超電導磁石装置1と同様に、冷媒容器5aが超電導パワーリード8の高温端8aと熱的に接続されており、冷媒容器5bが超電導パワーリード8の低温端8bと熱的に接続されている。そのため、冷媒容器5aの運転温度が、冷媒容器5b,5dの運転温度よりも高くなる。そして、冷媒容器5aと冷媒容器5bとの間には、連結配管33aが配置されている。連結配管33aは、例えばステンレス鋼に代表される、冷媒容器5a,5bよりも熱伝導率の低い部材で構成されている。その理由は、連結配管33aを介して高温側の冷媒容器5aから低温側の冷媒容器5bに侵入する熱の侵入量を抑制するためである。
一方、冷媒容器5aと冷媒容器5bとの間以外の箇所(図6に示す例では、冷媒容器5bと冷媒容器5dとの間)には、連結配管33dが配置されている。連結配管33dは、冷媒容器5と同等以上の熱伝導率の高い部材で構成されている。その理由は、連結配管33dによって連結されている2つの冷媒容器5(図6に示す例では、冷媒容器5bと冷媒容器5d)の運転温度が略同等であり、2つの冷媒容器5間で熱の侵入量を抑制する必要がないためである。
このような超電導磁石装置1Cによれば、第1実施形態に係る超電導磁石装置1と同様に、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒6を装置外に良好に排出することができる。
しかも、超電導磁石装置1Cによれば、熱伝導パス11(図6に示す例では、冷凍機12と冷媒容器5dとを熱的に接続する熱伝導パス11)を削減することができるため、冷却パス11の構成を簡素化することができる。また、熱伝導パス11を削減しても、複数の冷媒容器5(図6に示す例では、冷媒容器5b,5d)を冷却することができる。また、輻射シールド3を削除しても、冷媒容器5aと常電導パワーリード7と超電導パワーリード8の高温端8aとを冷却することができる。
[第4実施形態]
前記した第1〜第3実施形態では、連結配管33が下降方向に向くように形成されている。しかしながら、連結配管33は、水平方向に向くように形成することができる。
以下、図7を参照して、本第4実施形態に係る超電導磁石装置1Dの構成につき説明する。図7は、本第4実施形態に係る超電導磁石装置1Dの断面構成を模式的に示す図である。ここでは、本第4実施形態に係る超電導磁石装置1Dが第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bと同様の構成になっている場合を想定して説明する。
図7に示すように、第4実施形態に係る超電導磁石装置1Dは、第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bと比較すると、以下の(1)〜(3)の点で相違している。
(1)冷媒容器5aの位置が下げられている点。
(2)冷媒容器5b,5dの冷媒導入口40が冷媒容器5b,5dの側面に設けられている点。
(3)連結配管33が、下降方向だけでなく、水平方向にも延在する構成になっている点。
このような本第4実施形態に係る超電導磁石装置1Dによれば、第2実施形態に係る超電導磁石装置1Bと同様に、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒を装置外に良好に排出することができる。しかも、超電導磁石装置1Dによれば、冷媒容器5を水平方向に連結することができる。なお、図7に示す水平方向に延在する構成の連結配管33は、他の実施形態にも適用することができる。
[変形例]
第1〜第4実施形態に係る超電導磁石装置1,1B,1C,1Dは、それぞれ、配管30,31,33の一部を、例えば、図8に示す変形例に係る配管34に置き換えることができる。図8は、配管の変形例を示す図である。ここでは、超電導磁石装置が第1実施形態に係る超電導磁石装置1である場合を想定して説明する。
図8に示すように、変形例では、配管34は、冷媒容器5を貫通する配管(以下、「貫通配管」と称する)として構成されている。なお、冷媒容器5は、貫通配管34が貫通している部分が密封されており、これによって、内部の気密が保たれている。
貫通配管34は、冷媒6を通過させるための1乃至複数の孔35が設けられている。孔35は、貫通配管34が冷媒容器5に取り付けられた場合に、下端部分(孔35が複数設けられている場合は、最も下に位置する孔35の下端部分)が冷媒容器5の底面から任意の高さ(冷媒容器5の内部で貯蔵される冷媒6の高さ)だけ上方向に離間した位置になるように設けられている。
孔35は、冷媒6を冷媒容器5の外部から内部に導入する場合に、冷媒導入口として機能し、また、冷媒6を冷媒容器5の内部から外部に排出する場合に、冷媒排出口として機能する。
例えば、超電導磁石装置1は、運転前において、液体状態の冷媒6が、冷媒導入配管30及び貫通配管34(ただし、冷媒導入配管30と貫通配管34とが一体化されている場合もある)を通って装置外部から装置内部に導入される。このとき、液体状態の冷媒6は、孔35を通って貫通配管34の内部から冷媒容器5の内部に流入する。したがって、このとき、孔35が冷媒導入口として機能する。その結果、液体状態の冷媒6が、冷媒容器5の内部を満たす状態になる。
その後、超電導磁石装置1は、液体状態の冷媒6が、重力に従って落下し、貫通配管34及び冷媒排出配管31(ただし、貫通配管34と冷媒排出配管31とが一体化されている場合もある)を通って装置内部から装置外部に排出される。このとき、液体状態の冷媒6は、孔35を通って冷媒容器5の内部から貫通配管34の内部に排出される。したがって、このとき、孔35が冷媒排出口として機能する。
その結果、液体状態の冷媒6は、各冷媒容器5の内部で、孔35の下端部分(孔35が複数設けられている場合は、最も下に位置する孔35の下端部分)よりも下側に溜まった状態となる。この後、液体状態の冷媒6は、冷凍機12によって冷却されて、固体状態となる。
超電導磁石装置1は、変形例に係る貫通配管34を用いることにより、部品点数を減らすことができ、その結果、全体の構成を簡易にすることができるため、コストを低減することができる。
ただし、変形例に係る貫通配管34を用いない場合は、冷媒導入口40と冷媒排出口41とが離れた構成になるため、余冷熱を有効に利用する点では、変形例に係る貫通配管34を用いる場合よりも優れている。
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、第2実施形態では、超電導磁石装置1BがMRI装置として構成される場合を想定して説明している。そのため、超電導磁石装置1Bの真空容器2(図4(a)参照)は、開口部24が水平方向に向けて開口された構成になっている。しかしながら、超電導磁石装置1Bの真空容器2は、開口部24が鉛直方向に向けて開口された構成にすることができる。この場合、各冷媒容器5a,5b,5c,5dは、開口部24の向きに合わせて、例えば、図1に倣って、レイアウトが変更される。このとき、各冷媒容器5a,5b,5c,5dは、天井が上で、底面が下になるように、天井と底面との位置関係が維持され、また、冷媒排出口41の高さ位置が、冷媒導入口40よりも下で、かつ、冷媒容器5の底面から上方向に離間した位置になるように、配置される。
また、例えば、本発明は、前記した第1〜第4実施形態で説明した蓄冷構造を、磁場を形成する超電導コイルを持たない、超電導を利用する装置(以下、「超電導利用装置」と称する)にも、適用することができる。このような超電導利用装置としては、例えば、閉回路を一定の温度以下に冷却して超電導状態に保持する構成の、コンピュータや電子顕微鏡、半導体装置等がある。
具体的には、本発明に係る超電導利用装置は、一定の温度以下で超電導状態となる超電導素子(例えば、超電導コイルや永久電流スイッチ、超電導パワーリード、半導体装置における超電導層等)と、前記超電導素子を含む任意の冷却対象と熱的に接続される複数の冷媒容器と、いずれか1乃至複数の前記冷媒容器と熱的に接続され、接続される冷媒容器に内蔵される冷媒を冷却する冷凍機と、前記複数の冷媒容器のうち最も高所に配置される冷媒容器に接続され、前記冷媒を装置内部に導入するための冷媒導入配管と、前記複数の冷媒容器を互いに連結し、前記連結された冷媒容器間で前記冷媒を流動可能とする連結配管と、1乃至複数の前記冷媒容器に接続された、前記冷媒を装置外部に排出するための冷媒排出配管とを有し、前記複数の冷媒容器と前記冷媒導入配管と1乃至複数の前記連結配管と前記冷媒排出配管とによって蓄冷構造を形成する構成とする。
そして、前記複数の冷媒容器では、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口から前記冷媒容器の底面までの間に配置されるように設けられている構成とする。また、前記冷媒導入配管と前記連結配管と前記冷媒排出配管とによって形成される配管の経路は、前記冷媒導入配管を最上流の配管とし、前記冷媒排出配管を最下流の配管とし、最上流の配管から最下流の配管に向けて、途中で上昇することなく、全ての部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている構成とする。
このような本発明に係る超電導利用装置は、本発明に係る超電導磁石装置と同様に、装置内への熱の侵入量を増大させることなく、気化した冷媒を装置外に良好に排出することができる。
1,1B,1C,1D 超電導磁石装置
2 真空容器
3 輻射シールド
4(4a,4b) 超電導コイル
5(5a,5b,5c,5d) 冷媒容器
6 冷媒
7 常電導パワーリード
8 超電導パワーリード
8a 超電導パワーリードの高温端
8b 超電導パワーリードの低温端
9 永久電流スイッチ
10(10a,10b) 保護抵抗
11 熱伝導パス
12 冷凍機
12a 第1ステージ
12b 第2ステージ
13 励磁電源(直流電源)
14 電流遮断器
21 超電導コイルの中心軸
24 開口部
30 冷媒導入配管
31 冷媒排出配管
33(33a,33b,33c,33d) 連結配管
34 配管(貫通配管)
35 孔
40 冷媒導入口
41 冷媒排出口

Claims (10)

  1. 一定の温度以下で超電導状態となる複数の超電導コイルと、
    前記複数の超電導コイルを含む任意の冷却対象と熱的に接続される複数の冷媒容器と、
    いずれか1乃至複数の前記冷媒容器と熱的に接続され、接続される冷媒容器に内蔵される冷媒を冷却する冷凍機と、
    前記複数の冷媒容器のうち最も高所に配置される冷媒容器に接続され、前記冷媒を装置内部に導入するための冷媒導入配管と、
    前記複数の冷媒容器を互いに連結し、前記連結された冷媒容器間で前記冷媒を流動可能とする連結配管と、
    1乃至複数の前記冷媒容器に接続された、前記冷媒を装置外部に排出するための冷媒排出配管とを有し、
    前記複数の冷媒容器では、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口から前記冷媒容器の底面までの間に配置されるように設けられており、
    前記冷媒導入配管と前記連結配管と前記冷媒排出配管とによって形成される配管の経路は、前記冷媒導入配管を最上流の配管とし、前記冷媒排出配管を最下流の配管とし、最上流の配管から最下流の配管に向けて、各部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 請求項1に記載の超電導磁石装置において、
    1本の前記連結配管は、前記形成された配管の経路上の上流側に配置された前記冷媒容器と下流側に配置された前記冷媒容器とを一対一の関係で連結する
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  3. 請求項1に記載の超電導磁石装置において、
    1本の前記連結配管は、前記形成された配管の経路上の上流側に配置された前記冷媒容器と下流側に配置された前記冷媒容器とを一対N(ただし、Nは1以上の整数)の関係で連結する
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の超電導磁石装置において、
    さらに、電源と前記超電導コイルとを電気的に連結する超電導パワーリードを有し、
    前記超電導パワーリードの高温端と低温端とのそれぞれに熱的に接続される2つの前記冷媒容器の間に配置されている前記連結配管が、前記冷媒容器よりも熱伝導率の低い部材で構成されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の超電導磁石装置において、
    略同等の温度に冷却される2つの冷却対象のそれぞれに熱的に接続される2つの前記冷媒容器の間に配置されている前記連結配管が、前記冷媒容器と同等以上の熱伝導率の部材で構成されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の超電導磁石装置において、
    さらに、前記複数の超電導コイルを含む各構成要素を内部に収容する真空容器を有し、
    前記真空容器は、水平方向に開口する開口部が設けられており、
    前記複数の超電導コイルは、それぞれ、中心軸が鉛直方向を向き、前記開口部を挟んで上下に分かれて配置されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  7. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の超電導磁石装置において、
    さらに、前記複数の超電導コイルを含む各構成要素を内部に収容する真空容器を有し、
    前記真空容器は、水平方向に開口する開口部が設けられており、
    前記複数の超電導コイルは、それぞれ、中心軸が水平方向を向き、前記開口部の周囲を円周方向に囲むように配置されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の超電導磁石装置において、
    さらに、前記真空容器の内部に配置された輻射シールドを備えており、
    前記輻射シールドは、前記冷凍機によって貫かれた形状になっているとともに、いずれか1乃至複数の前記冷媒容器と熱的に接続されている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の超電導磁石装置において、
    前記形成された配管の一部が、前記冷媒容器を貫通する貫通配管として構成されており、
    前記貫通配管は、前記冷媒導入口及び前記冷媒排出口を兼ねる1乃至複数の孔が、前記冷媒容器の内部に配置される位置で、かつ、前記冷媒容器の底面から上方向に離間した位置に設けられている
    ことを特徴とする超電導磁石装置。
  10. 一定の温度以下で超電導状態となる超電導素子と、
    前記超電導素子を含む任意の冷却対象と熱的に接続される複数の冷媒容器と、
    いずれか1乃至複数の前記冷媒容器と熱的に接続され、接続される冷媒容器に内蔵される冷媒を冷却する冷凍機と、
    前記複数の冷媒容器のうち最も高所に配置される冷媒容器に接続され、前記冷媒を装置内部に導入するための冷媒導入配管と、
    前記複数の冷媒容器を互いに連結し、前記連結された冷媒容器間で前記冷媒を流動可能とする連結配管と、
    1乃至複数の前記冷媒容器に接続された、前記冷媒を装置外部に排出するための冷媒排出配管とを有し、
    前記複数の冷媒容器では、冷媒排出口の高さ位置が、冷媒導入口から前記冷媒容器の底面までの間に配置されるように設けられており、
    前記冷媒導入配管と前記連結配管と前記冷媒排出配管とによって形成される配管の経路は、前記冷媒導入配管を最上流の配管とし、前記冷媒排出配管を最下流の配管とし、最上流の配管から最下流の配管に向けて、各部位で水平方向又は下降方向に向くように形成されている
    ことを特徴とする超電導利用装置。
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