以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係るガイドチューブ100の使用例を示す模式図である。ガイドチューブ100は、PTEG施術に用いられる内視鏡挿入型の軟質チューブである。図は、ガイドチューブ100の先端部に設けられた非破裂型の外バルーン120が被検者の食道902内で膨張され、穿刺針700が当該外バルーン120を穿刺するPTEG施術の一場面の様子を示す。なお、被検者は頭部を右方向へ向けている。
ガイドチューブ100は、内視鏡600を挿通させるための貫通孔を有する本体チューブ110に、膨張および収縮可能な外バルーン120等が取り付けられて構成される。本体チューブ110は、使用する内視鏡600が挿入可能な内径を確保しつつ極力外径を小さくする、つまり薄肉であることが望ましい。すなわち、被検者に苦痛を与えることなく体内へ導くことができる柔軟性が要求される。一方で、折れ曲がりにより貫通孔が閉塞することを防ぐ剛性も要求される。このような観点から、本体チューブ110の素材には、通常の室温と体温で適度の柔軟性と弾性を有する軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム等の合成樹脂が採用され得る。
本体チューブ110の貫通孔は、使用時おいて体外側に位置する基端側の基端側開口111から、体内側に位置する先端側の先端側開口112まで貫通している。先端側開口112は、貫通孔の中心軸に対して斜交するようにカットされて楕円形状を成す。本体チューブ110の外周面あるいは貫通孔内壁面は、潤滑性処理が施されることが好ましい。例えば、コラーゲン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のコーティング、シリコーンオイルの混練が実用的である。
本体チューブ110は、外バルーン120等を膨張させる流体を流通させるバルーンルーメン190を内包する。具体的には後述するが、バルーンルーメン190は、本体チューブに貫通孔とは独立して設けられた細管である。バルーンルーメン190は、基端側開口111の近傍で本体チューブ110から分岐して、その端にコネクタ191を有する。流体は、コネクタ191を介して外部から供給され、回収される。流体としては、空気等の気体に限らず例えば生理食塩水等の液体であっても良い。
ここで、本実施形態に係るガイドチューブ100を利用したPTEG施術について簡単に説明する。PTEGは、頸部に食道瘻を造設する一連の手技であるが、本実施形態におけるPTEGは、経口的に本体チューブ110を挿通し、内視鏡600によって食道902を観察する点をひとつの特徴とする。本体チューブを経鼻的に挿通する従来の手技に比較して、鼻腔粘膜からの出血を防止できる。また、貫通孔の径を大きく確保できるので内視鏡600を挿通することが可能となり、したがって、穿刺からカテーテル留置までの食道内の様子を観察できる。これにより、手技の安全性、確実性が大きく向上し、手技時間も短縮するので被検者の負担も軽減される。
内視鏡600を本体チューブ110の貫通孔に外バルーン120の手前付近まで挿通した状態で、本体チューブ110の先端側開口112を被検者の口腔901へ進入させる。このとき、斜めにカットされた先端側開口112の楕円平面を口蓋903側へ向けて進入させることにより、術者は、被検者の不快感を軽減しつつ、本体チューブ110を円滑に押し入れることができる。
さらに押し入れると、先端側開口112は、食道入口部9021を経て、目標位置である頸部付近の食道902に到達する。目標位置に到達したら、術者は、コネクタ191から流体を注入して外バルーン120を膨張させると共に超音波プローブを体表側から強く押し当てて甲状腺、気管、頸動脈、頸静脈等を左右に偏位させることにより、表皮から食道への穿刺経路を確保する。そして、当該穿刺経路に沿って穿刺針700を刺入すると、穿刺針700は外バルーン120を突き抜け、その先端が本体チューブ110の貫通孔に到達する。詳しくは後述するが、術者は、外バルーン120を突き抜けた穿刺針700の先端が貫通孔に到達する様子を、内視鏡600の画像により確認することができる。
術者は、穿刺針700が貫通孔に到達したことを確認したら、ガイドワイヤ800を穿刺針700の内腔に挿通する。そして、ガイドワイヤ800が本体チューブ110の貫通孔まで到達したことを内視鏡600の画像により確認したら、穿刺針700を抜去する。
この状態で本体チューブ110を胃側へ押し込むと、穿刺経路により拘束されているガイドワイヤ800は引張されて外バルーンより離脱し、その先端部は食道902内に留め置かれる。ガイドワイヤ800が外バルーン120より離脱したら、術者は、流体を吸引回収して外バルーン120を収縮させ、内視鏡600と本体チューブ110を食道入口部9021付近まで引き戻す。
術者は、内視鏡600の画像により食道902内の様子を確認しつつ、頸部表皮側からガイドワイヤ800の末端からシース付きダイレータを挿入して穿刺部位を拡張する。そして、シースを残してガイドワイヤ800とダイレータを抜去することにより、食道内へ通ずる頸部食道瘻が造設される。頸部食道瘻が造設されたら、内視鏡600ごとガイドチューブ100の全体を口腔901より引き抜く。その後、当該頸部食道瘻から留置チューブを挿入し、その先端を、目的とする胃、十二指腸あるいは小腸まで到達させて一連の施術を完了する。
次に、本実施形態に係るガイドチューブ100の先端部について説明する。図2は、ガイドチューブ100の先端部の拡大斜視図である。特に、外バルーン120および内バルーン130が膨張された様子を示す。なお、図においては、外観から直接観察されない主要な要素を点線で示すが、図の簡略化の観点から、各要素の厚みを省いて示している。
本体チューブ110の先端は、上述の通り、本体チューブ110の貫通孔の中心軸に対して斜交する先端側開口112を有する。そして、先端側開口112よりも数十mm基端側に、本体チューブ110の外周面を覆うように外バルーン120が設けられている。詳しくは後述するが、外バルーン120の周縁部は、本体チューブ110の外周面に対して気密に接着されている。
外バルーン120に覆われた本体チューブ110の外周面の一部は、楕円状に切り取られ、穿刺針700を貫通孔へ導くための穿刺開口113が形成されている。穿刺開口113は、本体チューブ110の外周面側から内バルーン130によって閉塞されている。すなわち、内バルーン130は穿刺開口113を外周面側から封塞し、外バルーン120は、内バルーン130を包み込むように外周面の全体を覆っている。外バルーン120、外バルーン120に覆われる外周面、および内バルーン130に囲まれた空間は気密空間として形成される。なお、内バルーン130が本体チューブ110の内壁面の側(貫通孔側)から穿刺開口113を覆うように構成しても良い。この場合は、穿刺開口113を挟んで外バルーン120と内バルーン130によって囲まれる空間が気密空間として形成される。
バルーンルーメン190は、本体チューブ110の管壁内に細管として設けられており、基端側から穿刺開口113まで伸延している。バルーンルーメン190の端部は、管壁が外周面側から部分的に切除されており、外周面側と連通している。当該連通箇所においては、内バルーン130にも孔が設けられている。したがって、バルーンルーメン190は、外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間に連通している。
外バルーン120は、例えば、中心軸に沿った長さが30〜100mm、膨張したときの外経が30mm程度である。外バルーン120は、穿刺針700に貫通されても破裂しない非破裂型バルーンである。そのための素材として、硬度JISA20〜80度、引張強度8〜25MPa、引裂強度20〜60kg/cm、100%モジュラス3〜6MPa、伸び300〜460%、バルーン内圧2.8〜75psiを満たす合成樹脂が選択され得る。例えば、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴムが好適に選択され得る。この他にも、穿刺によっても破裂しない工夫を施せば、ポリエチレン、ポリエステル、天然ゴムラテックス等も候補となり得る。これらの素材を採用する場合、例えば、表面に合成樹脂をコーティングしたり、膨張率、肉厚、内圧を調整したりすることによって破裂を免れることができる。なお、外バルーン120は、ブロー成形、ディップ成形、押出成形、圧縮成形等により所望の形状に成形される。
内バルーン130は、穿刺開口113を覆うシート材を用いることができる。内バルーン130の素材は、外バルーン120と同じでも良く、また、外バルーン120に比べて膨張しやすい素材を採用しても良い。特に、内視鏡600により穿刺針700の進入を確認する観点から、透明素材であることが好ましい。なお、具体的な形状については後述する。
外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間にバルーンルーメン190を介して流体を注入すると、図示するように、外バルーン120は本体チューブ110の外周方向へ、内バルーン130は貫通孔へ向かって共に膨張する。逆に、注入された流体をバルーンルーメン190を介して排出すれば、膨張した外バルーン120と内バルーン130は共に収縮する。
内バルーン130を突き抜けて貫通孔に至るまで穿刺針700を刺入する場合、その先端を貫通孔内に留めることができずに、穿刺開口113に対向する内壁面を突き刺してしまうことがある。さらには、本体チューブ110を突き破り、外バルーン120をも貫通してしまう場合もあり得る。この場合、被検者の食道を傷つけることになる。このような状況を防ぐべく、ガイドチューブ100は、穿刺開口113に対して貫通孔の中心軸を挟んだ対向位置に、本体チューブ110を補強する補強部としての補強シート140を備えている。
補強シート140は、本体チューブ110の内壁面に沿って配置される、例えばステンレスのメッシュシートである。手技における通常の刺入圧程度では、穿刺針700は、補強シート140を貫通することができない。補強シート140の素材は、ステンレスのような金属素材に限らず、穿刺針700の貫通を防ぐ程度の剛性を備えれば、硬質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂であっても良い。また、補強シートとして配置するに限らず、本体チューブ110の当該箇所を硬化させて補強部としても良い。
図3は、ガイドチューブ100の先端側面図と直交断面図である。左側の図は、本体チューブ110の中心軸に直交する方向から観察した側面図である。特に、開口面が楕円形状である先端側開口112のうち、最も先端側に位置する点である第1長径端1121が真上となるように観察した側面図である。このとき、最も基端側に位置する点である第2長径端1122は真下となる。
右側の図は、外バルーン120が膨張したときに最大径となる位置での、中心軸に直交する平面による断面図である。ただし、図は収縮時の様子を表している。また、左側の側面図の上下関係に対応して描かれている。
本体チューブ110に形成された穿刺開口113の開口中心1130は、先端側開口112のうち第1長径端1121を通過する稜線上に配置されている。すなわち、開口中心1130は、左側の側面図においては、第1長径端1121から右方向へ延びる直線上に存在し、右側の断面図においては、本体チューブ110の最上位点に位置する。
このように、第1長径端1121を通過する稜線上に開口中心1130を配置することにより、穿刺針700の進入方向と穿刺開口113の相対的な位置関係を良好に定めることができる。すなわち、図1を用いて説明したように、斜めにカットされた先端側開口112は、その楕円開口面を口蓋903側に向けつつ食道内へ進入されるので、食道内においては、第1長径端1121が腹側に位置し、第2長径端1122が背側に位置する。すると、穿刺開口113の開口中心1130は腹側に位置することになる。PTEG施術においては、頸部の穿刺位置は一般的に腹側である。したがって、穿刺開口113が腹側に向かって配置されていると、穿刺針700の進入方向と向かい合うことになるので、術者にとっては施術が容易となる。
穿刺開口113は、中心軸周りの開口角がθである。図示するように、θは180度より小さい。θを180度以上にすると、内バルーン130は、本体チューブ110の内部である貫通孔側から穿刺開口113を覆っているので、膨張時には貫通孔の半分以上を占めることになる。すると、中心軸方向から観察する内視鏡600によっては、穿刺針700の進入経路がかえって観察しづらくなる。さらには、内バルーン130を穿通した穿刺針700の先端を留め置く空間、ガイドワイヤ800の先端を引き出す空間が相対的に小さくなってしまう。
また、θを180度以上にすると、中心軸を挟んで互いに対向する2点が共に開口部となる部分が生じる。すると、一方から進入した穿刺針700は、内バルーン130を突き破ることなく内側を通過して、他方へ突き抜ける場合がある。この場合、穿刺針700がさらに外バルーン120を穿通すると、被検者の食道を傷つけることになる。
したがって、θは180度未満であることが好ましい。特に、内バルーン130の膨張に対する視認性を考慮すると、θは120度未満であることが好ましいことがわかった。
一方、θを余りに小さくすると、術者が穿刺針700を穿刺開口113に導くことが難しくなる。すなわち、θがある程度の大きさであれば、貫通孔に穿刺針700の先端を導くことが容易となる。この観点から、θは90度以上であれば、十分に穿刺しやすいことがわかった。
なお、バルーンルーメン190の端部は、外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間に連通していればいずれに配置されても良いが、図示するように、穿刺開口113と中心軸を挟んで反対側に配置することが好ましい。図のように配置することにより、バルーンルーメン190が、第1長径端1121を通過する稜線方向に沿ったX線確認用の造影ラインを不鮮明にすることがない。また、本実施形態においては、バルーンルーメン190を本体チューブ110の管壁内に細管として設ける一体構造を採用するが、別体のチューブとして、本体チューブ110の貫通孔に内挿する構成を採用しても良い。
本実施形態に係るガイドチューブ100は、上述の通り、穿刺開口113に対して貫通孔の中心軸を挟んだ対向位置に補強シート140を備えている。図示するように、補強シート140は、本体チューブ110の内壁面に沿って接着により装着されている。補強シート140は、穿刺開口113を通過した穿刺針700が到達し得る範囲として、穿刺開口113の開口角θに向かい合うように、θより若干大きい中心角を有する大きさに設定されることが好ましい。
内バルーン130は、穿刺開口113を閉塞するように、本体チューブ110の外周面に対して気密に接着されている。内バルーン130は、シート状でなくても良く、本実施形態においては図示するように、本体チューブ110の外周面に密着する円筒状に形成されている。円筒状に形成された内バルーン130は、弾性材であるので、本体チューブ110の外周面を貫通孔方向へ付勢する付勢力を有する。
次に、外バルーン120と内バルーン130を膨張させた場合について説明する。図4は、外バルーン120と内バルーン130を膨張させた時の、中心軸に直交する平面による直交断面図である。
外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間に生理食塩水などの流体が注入されると、外バルーン120は外周方向へ膨張して食道を押し広げ、内バルーン130は貫通孔方向へ膨張して穿刺針700の誘導を可視化する。穿刺針700は、まず外バルーン120を穿通して流体に満たされた気密空間に進入する。外バルーン120は、非破裂型のバルーンであるので、穿刺針700の穿通に対して破裂しない。穿刺針700の先端が穿刺開口113を通過すると、術者は、透明素材である内バルーン130を介してその様子を内視鏡600により確認することができる。
術者は、穿刺針700が穿刺開口113を通過して内バルーン130の内部まで到達していることを視認すると、さらに押し込んで内バルーン130を穿通し、その先端を本体チューブ110の貫通孔まで進める。なお、進入方向の先には補強シート140が設置されているので、穿刺針700が本体チューブ110を突き破る恐れがない。
続いて、ガイドワイヤ800を穿刺針700の内腔に挿通して、その先端を穿刺針700の先端から突き出させる。補強シート140は、ガイドワイヤ800に対しても本体チューブ110を保護する。なお、ガイドワイヤ800の先端は、図示するように、穿刺針700の先端から突き出た後に湾曲するよう癖付けされていることが好ましい。湾曲された先端は内バルーン130に掛かりやすいので、ガイドワイヤ800が穿刺針700と共に抜去されてしまう恐れが軽減され、貫通孔に留まることが期待できる。
次に、開口中心1130のバリエーションについて説明する。図5は、上記の例とは異なる開口中心1130を有するガイドチューブ100の先端側開口112と穿刺開口113の関係を説明する図である。なお、図5(a)および図5(b)は、それぞれが先端側面図と直交断面図で表されており、これらは図3の先端側面図と直交断面図の視点に対応する。
図5(a)は、開口中心1130が、直交断面図において、第1長径端1121に対応する最上位点から、中心軸に対して時計回りにα度(α<180度)回転した位置に配置されているガイドチューブ100を示す。別言すると、開口中心1130は、先端側から本体チューブ110を観察した場合に、先端側開口112のうち最も先端側に位置する第1長径端1121から時計回りに最も基端側に位置する第2長径端1122に至るまでの間の点を通過する稜線上に配置されている。
被検者の大多数は、頸部における甲状腺、気管、頸動脈、頸静脈等の位置関係から、穿刺針700の穿刺位置は脊椎に対して若干左寄りが選択される。したがって、大体数の被検者に対しては、上記のように時計回りにずれた位置に開口中心1130が存在する方が、術者にとって穿刺針700の穿刺が行いやすい。なお、より多くの被検者に対しては、αは90度未満であることが好ましい。また、補強シート140は、図示するように、偏位された開口中心1130に対向するように設置位置が適宜修正されることが好ましい。
なお、図の例においては、バルーンルーメン190は、開口中心1130と中心軸を挟んで反対側に配置するが、第2長径端1122を通過する稜線上に配置しても良い。特に、補強シート140で保護された管壁に配置すれば、穿刺針700によって損傷を受ける恐れが軽減される。
図5(b)は、開口中心1130が、直交断面図において、第1長径端1121に対応する最上位点から、中心軸に対して反時計回りにβ度(α<180度)回転した位置に配置されているガイドチューブ100を示す。別言すると、開口中心1130は、先端側から本体チューブ110を観察した場合に、先端側開口112のうち最も先端側に位置する第1長径端1121から反時計回りに最も基端側に位置する第2長径端1122に至るまでの間の点を通過する稜線上に配置されている。
被検者の大多数は、上述のように穿刺針700の穿刺位置は脊椎に対して若干左寄りが選択されるが、被検者の一部は、反対に脊椎に対して若干右寄りが選択される。しかし、左寄り用のガイドチューブ100に限って用意されているのでは、このような一部の被検者に対して手技が困難となる。そこで、上記のように反時計回りにずれた位置に開口中心1130が存在するガイドチューブ100も用意しておくことが好ましい。この場合、一部の被検者の中でもできるだけ多くの被検者に対応するには、βは90度未満であることが好ましい。
以上のように被検者の特性に合わせて穿刺開口113の位置を変更する場合、複数種類のガイドチューブ100を用意することが好ましい。しかし、複数種類のガイドチューブ100を用意することは、様々な困難を伴う場合がある。そこで、複数の穿刺開口113を設けたガイドチューブ100について説明する。
図6は、複数の穿刺開口113を設けたガイドチューブ100のバリエーションについて説明する図である。なお、図6も図5と同様に、先端側面図と直交断面図で表されており、これらは図3の先端側面図と直交断面図の視点に対応する。
図6(a)は、穿刺開口113として第1穿刺開口1131と第2穿刺開口1132の2つを設けた例を示す。第1穿刺開口1131は、開口中心が直交断面図において第1長径端1121に対応する最上位点から時計回り側へ偏位している。第2穿刺開口1132は、開口中心が直交断面図において第1長径端1121に対応する最上位点から反時計回り側へ偏位している。このように、互いに反対側へ偏位した穿刺開口113を有するガイドチューブ100は、多くの被検者に対応することができる。なお、複数の穿刺開口を設ける場合は、2つに限らず、3つ以上であっても良い。また、メッシュ状に多数の穿刺開口を設けても良い。
ここで、互いに対向する位置に穿刺開口113が存在すると、一方の穿刺開口113から進入した穿刺針700が、内バルーン130を突き破って一旦貫通孔に到達しても、その穿通方向には対向する穿刺開口113の内バルーン130が存在し、これを突き抜けてしまう場合がある。さらに穿刺針700が外バルーン120を穿通すると、被検者の食道を傷つけることになる。したがって、複数の穿刺開口113を本体チューブ110に設ける場合は、互いの穿刺開口113が本体チューブ110の貫通孔において、中心軸を挟んで対向しないように配置すべきである。
また、複数の穿刺開口113を設ける場合は、それぞれの開口中心が、直交断面における水平線よりも第1長径端1121に対応する最上位点側へ偏在していることが好ましい。このような位置に設けることにより、術者は、より多くの被検者に対して穿刺針700の穿刺を容易に行うことができる。
図6(a)に示すように、本実施例においては、円筒状の内バルーン130ではなく、シート状の内バルーン230を本体チューブ110の内壁面側から接着する構成を採用している。シート状の内バルーン230は、第1穿刺開口1131と第2穿刺開口1132を共に閉塞するように、本体チューブ110の内壁に接着されている。このように装着された内バルーン230は、第1穿刺開口1131に対応して膨張する第1内バルーン2301と、第2穿刺開口1132に対応して膨張する第2内バルーン2302とを含む。なお、それぞれの穿刺開口113を独立したシートにより閉塞して内バルーンを形成しても良いし、円筒状の内バルーン130によって穿刺開口113を閉塞しても良い。
また、図示するように、ガイドチューブ100は、第1穿刺開口1131に対して貫通孔の中心軸を挟んだ対向位置に第1補強シート2401を備え、第2穿刺開口1132に対して貫通孔の中心軸を挟んだ対向位置に第2補強シート2402を備える。これらの補強シート240は、上述の補強シート140と同様に、穿刺針700の突き抜けを防止する機能を担う。
図6(b)は、複数の内バルーン230に対応して部分的な外バルーン220を設けた場合の例を示す。穿刺開口113として第1穿刺開口1131と第2穿刺開口1132の2つを設ける点、およびこれらに対応して第1内バルーン2301と第2内バルーン2302を設ける点は図6(a)の例と同様である。ただし、バルーンルーメン190は、外バルーン220、外バルーン220に覆われる外周面、および内バルーン230に囲まれた空間は気密空間に連通するように配置される。図の例では、バルーンルーメン190の端部は、第1穿刺開口1131に向かって連通している。
このように部分的に外バルーン220を形成すると、食道の特定方向へ向かって圧力を加えることができるので、穿刺経路を確保しやすくなる場合がある。また、特定方向に対して膨張率を大きくできるので、穿刺針700の穿刺も容易となる。
図1を用いて説明したように、PTEG施術においては、ガイドワイヤ800を穿刺針700の内腔に挿通して本体チューブ110の貫通孔まで到達させた後に、穿刺針700を抜去する。ガイドワイヤ800は穿刺経路で挟持されているので、術者がガイドチューブ100を胃側へ押し込んだり中心軸周りに回転させたりすると、ガイドワイヤ800の先端部は、外バルーン120から抜け出て食道902内に留め置かれる。しかしながら、ガイドチューブ100は、湾曲しながら食道902に挿通されているので、押込み移動、回転移動に対して抵抗が大きい。また、被検者にとっても、ガイドチューブ100の全体が押し動かされることは不快である場合がある。そこで、次に本体チューブ110をほとんど押し動かさずにガイドワイヤ800を引き抜く他の実施例について説明する。
図7は、他の実施例におけるガイドチューブ100の先端部の側方断面図である。本実施例におけるガイドチューブ100は、本体チューブ210の先端側に、本体チューブ210に対して相対的に回転可能に設けられた延長チューブ310を備える。
本体チューブ210は、上述の本体チューブ110と同様に内視鏡600を挿通する貫通孔を有する。本体チューブ210は、通常の室温と体温で適度の柔軟性と弾性を有する軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム等の合成樹脂により形成されている。本体チューブ210は、先端側開口部に、内周側の全周にわたって溝部を有する外フランジ211を備える。
延長チューブ310は、本体チューブ210との接続部に、外周側へも内周側へも突出する隆起部を有する内フランジ311を備える。外フランジ211の溝部と内フランジ311の隆起部とが互いに遊嵌することにより、延長チューブ310は、本体チューブ210に対して相対的に回転することができる。延長チューブ310も本体チューブ210と同様の素材が採用され得るが、内フランジ311とその近傍は、二色成型等により硬質素材が用いられることが好ましい。
同様に、本体チューブ210も、外フランジ211とその近傍は、硬質素材が用いられることが好ましい。このように構成された本体チューブ210と延長チューブ310によれば、術者は、例えば内視鏡600の先端を内フランジ311の内周側へ突出する隆起部に押し当てて内視鏡600を回転させれば、延長チューブ310を回転させることができる。このとき、本体チューブ210は、被検者の食道902内で回転することがない。
延長チューブ310の先端は、上述の本体チューブ110の先端と同様に、延長チューブ310の貫通孔の中心軸に対して斜交する先端側開口312を有する。そして、先端側開口312よりも数十mm基端側に、延長チューブ310の外周面を覆うように外バルーン120が設けられている。
外バルーン120に覆われた延長チューブ310の外周面には、穿刺開口313が形成されている。本実施例では、穿刺開口313は、延長チューブ310の内壁面の側(貫通孔側)から内バルーン130によって気密に閉塞されている。すなわち、穿刺開口313を挟んで外バルーン120と内バルーン130によって囲まれる空間は気密空間として形成されている。
本実施例でのバルーンルーメン390は、本体チューブ210とは別体のチューブとして、本体チューブ210に内挿されて基端側から、延長チューブ310の穿刺開口313まで伸延している。バルーンルーメン390の端部は、延長チューブ310の内壁面と内バルーン130の間に挿通され、外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間に連通している。バルーンルーメン390は、互いに遊嵌する外フランジ211と内フランジ311を跨ぐ近傍箇所において、想定される延長チューブ310の回転量に応じた弛みを有する。この弛み部分においては、本体チューブ210の内壁にも、延長チューブ310の内壁にも接着されていない。このようにバルーンルーメン390に弛みを与えることにより、延長チューブ310が回転されても、バルーンルーメン390と気密空間との連通を維持できる。なお、術者は、内視鏡600を隆起部に押し当てる場合に、弾性部材であるバルーンルーメン390を挟み込んでも良い。また、バルーンルーメン390を補強シート140側から気密空間に連通させるように構成しても良い。
延長チューブ310が回転されると、貫通孔まで進入していたガイドワイヤ800は、穿刺経路に挿通されている部分が拘束されているので、貫通孔に侵入した先端部が回転移動に引き摺られつつ、やがて外バルーン120から脱離する。引き抜かれたガイドワイヤ800の先端部は、食道壁9022と外バルーン120の間に挟み込まれた状態となる(点線で図示する)。そして、バルーンを収縮してガイドチューブ100を引き抜けば、ガイドワイヤ800の先端部を食道902内に留め置くことができる。
図8は、さらに他の実施例におけるガイドチューブ100の先端部の側方断面図である。本実施例におけるガイドチューブ100は、本体チューブ110の先端部のうち外バルーン120に覆われる部分が、硬質の補強筒115により形成されている。そして、補強筒115の外周側に、硬質の回転筒410が入れ子状に装着されている。
具体的には、補強筒115には、ガイドスリット116が貫通孔の中心軸に直交するように設けられている。また、回転筒410には、ガイドスリット116に挿通されてガイドピンの機能を担う係止爪415が設けられている。係止爪415は、ガイドスリット116にスナップフィットにより挿通されるので、一旦挿通されるとガイドスリット116から容易に抜けることがない。ただし、ガイドスリット116は、貫通孔の中心軸に直交するスリットなので、係止爪415はスリットに沿って移動することができる。すなわち、回転筒410は、補強筒115に対して、ガイドスリット116の長さに応じた範囲で相対的に回転することができる。
補強筒115は、本体チューブ110側の穿刺開口として穿刺開口113を有する。本実施例では、穿刺開口113は、補強筒115の内壁面の側(貫通孔側)から内バルーン130によって気密に閉塞されている。回転筒410は、回転筒410側の穿刺開口として穿刺開口413を有する。外バルーン120は、回転筒410の外周面側に穿刺開口413を覆って設けられている。穿刺開口113と穿刺開口413は、初期位置において互いに開口部が一致するように設けられている。したがって、穿刺開口113と穿刺開口413を挟んで外バルーン120と内バルーン130によって囲まれる空間は気密空間として形成されている。
本実施例でのバルーンルーメン490は、本体チューブ110とは別体のチューブとして、本体チューブ110に内挿されて基端側から、補強筒115の穿刺開口113まで伸延している。バルーンルーメン490の端部は、補強筒115の内壁面と内バルーン130の間に挿通され、外バルーン120と内バルーン130に囲まれた気密空間に連通している。
本実施例においては、バルーンルーメン490は、バルーンを膨張収縮させる流体を流通する流路以外に、回転筒410を回転させる操作ワイヤ500を案内する案内路としての機能も担う。基端側からバルーンルーメン490に導入された操作ワイヤ500の先端は、先端側で引き出されて穿刺開口113と穿刺開口413を通過し、回転筒410の外周面を螺旋状に半周程度巻回して固定点501で固定されている。このように巻回されて固定された操作ワイヤ500を基端側から引っ張ると、術者は、回転筒410を補強筒115に対して回転させることができる。
回転筒410が回転されると、貫通孔まで進入していたガイドワイヤ800は、穿刺経路に挿通されている部分が拘束されているので、貫通孔に侵入した先端部が回転移動に引き摺られつつ、やがて外バルーン120から脱離する。引き抜かれたガイドワイヤ800の先端部は、食道壁9022と外バルーン120の間に挟み込まれた状態となる(点線で図示する)。そして、バルーンを収縮してガイドチューブ100を引き抜けば、ガイドワイヤ800の先端部を食道902内に留め置くことができる。なお、本実施例においては、補強筒115は硬質の素材を用いるので、補強シート140を省いても良い。
次に、外バルーン120の変形例を説明する。図1を用いて説明したように、先端側開口112は、食道入口部9021を経て、食道902の頸部付近まで押し入れられる。そして、外バルーン120が膨張される。本実施形態に係るガイドチューブ100は、経口的に挿通されるので、経鼻的に挿通されるガイドチューブよりも径が太い。したがって、食道902内において外バルーン120が膨張できる割合は、経鼻的に挿通されるガイドチューブに設けられる外バルーンにおける割合よりも小さい。一般的に、食道入口部9021は、周囲に比べて狭まっている。したがって、小さな径のガイドチューブに対して大きく膨らむ外バルーンを備えれば、この食道入口部9021に外バルーンが引っ掛かり、ガイドチューブの先端部が食道902から容易に抜け出ることは少ない。
一方で、経口的に挿通される本実施形態に係るガイドチューブ100は、本体チューブ110が食道入口部9021を押し広げてしまい、しかも、外バルーン120の膨張率が比較的小さいので、施術中にガイドチューブ100の先端部が抜け出てしまうことがある。そこで、以下に説明する各実施例においては、引き抜き方向への移動を阻害する掛部が形成されるように外バルーンを膨張させている。
図9は、外バルーン121の一部の側方断面図である。外バルーン121は、膨張したときに、本体チューブ110の外周面から基端側が傾斜立設する。すなわち、外周面に対する基端側の立ち上がり角度γが90未満である。このような角度で外バルーン121が膨張すると、基端側が食道入口部9021に掛かる掛部として機能するので、容易な抜けを防止することができる。
このように基端側が傾斜立設するように、外バルーン121の基端側の接着部1211は、立ち上がり部分が基端側に癖付けされる形状を有する。例えば図示するように、立ち上がり部が、接着面の中央近傍から基端側へ傾けられて形成される。
さらに類似する変形例を説明する。図10は、外バルーンの掛部のバリエーションについて説明する側方断面図である。いずれの例も、外周面に対する基端側の立ち上がり角度γが90未満である。
図10(a)に示す外バルーン122の掛部は、外バルーン122の後端側が折り畳まれて本体チューブ110の外周面に接着されることにより形成される。すなわち、外バルーン122の後端側を折り畳んで互いに接着した折畳部1221を設けることにより、立ち上がり部分が基端側に癖付けされる。
図10(b)に示す外バルーン123の掛部は、外バルーン123の後端側に設けられた肉厚部1231により形成される。肉厚部1231は、外バルーン123が膨張されても変形量が他の部分に対して小さい。したがって、外周面に対して基端側へ傾けて接着されていれば、膨張時にも傾斜が維持され、掛部としての機能を発揮する。
図10(c)に示す外バルーン124の掛部は、外バルーン124の後端側に設けられた折曲部1241により形成される。折曲部1241は、外バルーン124の基端側の一部が折り曲げられて形成されている。折曲部1241により癖付けされた外バルーン124の基端側は、膨張時に傾斜して掛部としての機能を発揮する。
図10(d)に示す外バルーン125の掛部は、本体チューブ110の外周面に嵌合して装着されたガイド環180の傾斜面に沿って端部が接着されることにより形成される。具体的には、ガイド環180は、本体チューブ110の外周面に嵌合するリング部1801と、リング部1801から立ち上がり角度γで立設された接着補助部1802を含む。外バルーン125の基端側の端部が、接着補助部1802に沿って接着されつつ、本体チューブ110の外周面に接着されていると、膨張時にも傾斜が維持され、掛部としての機能を発揮する。
図11は、外バルーンの更に他のバリエーションについて説明する側方断面図である。図11に示す外バルーン126は、図10の各例で示したような端部を加工するのではなく、バルーン形状そのものを変更している。外バルーン126の掛部は、先端側より基端側が大きく膨らむことにより形成される。すなわち、先端側よりも基端側が大きく膨らむように、基端側の径を先端側の径よりも大きくなるようにバルーン形状を定めている。基端側が大きく膨らめば、ガイドチューブ100の容易な抜けを防止することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。特に、様々な変形例を部分ごとに説明したが、これらは、全体として相互に特徴部分を組み合わせることが可能であり、これらの組み合わせによる形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは言うまでも無い。