JP6149228B2 - 免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法 - Google Patents

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本発明は、免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法、ならびに該方法により得られる乳酸菌および該乳酸菌を含む免疫調節用組成物に関する。
アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー患者の数は、年々増加しており、厚生労働省の調査でも国民の3人に1人が何らかのアレルギー疾患を有しているという結果がでている。近年のアレルギー疾患の増加の原因としては、花粉やダニなどのアレルゲンの増加、環境汚染、食生活の欧米化による蛋白質摂取量の増加、腸内細菌環境の変化、ストレス、細菌や寄生虫の感染症の減少(衛生仮説)などが挙げられる。一方、アレルギー疾患と並んで炎症性腸疾患もわが国で急速に増加しており、これらの疾患は腸内環境に密接な関係があり、その発症原因としては腸内環境の乱れや、2型ヘルパーT細胞(Th2)が1型ヘルパーT細胞(Th1)より優勢となる腸管免疫系の異常が示唆されている。
腸管には、パイエル板(Payer's Patch; PP)、粘膜固有層(Lamina Propria, LP)、粘膜固有層リンパ球(Lamina Propria Lymphocytes, LPL)、腸管上皮間細胞リンパ球(Intraepithelial Lymphocytes, IEL)、腸管上皮細胞(Intestinal Epithelial Cell, IEC)、クリプトパッチ(Cryptopatch, CP)などで構成される腸管関連リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue, GALT)が存在し、腸管は体内最大の免疫器官となっている。なかでもパイエル板の管腔側を覆う上皮細胞(Follicle Associated Epithelium, FAE)に存在するM細胞(Microfold cell)は、抗原取り込みに特化した細胞であり、腸管免疫応答の誘導に重要な働きをしている。M細胞からの抗原取り込みに関する分子メカニズムも徐々に明らかとなっており、M細胞に発現するGP2と細菌などの抗原が結合すると、抗原がパイエル板の内部に存在する免疫細胞(抗原提示細胞、B細胞、T細胞)へと受け渡されて、IgA抗体の産生やサイトカインの産生といった様々な免疫応答が起こる(非特許文献1)。
前記のようにアレルギー疾患や炎症性腸疾患は腸管免疫系の異常に起因することが指摘されていることから、腸管免疫系を活性化し、正常に働かせることが、これらの疾患の治療および予防に有効といえる。これまで腸内環境を整え、腸管免疫系を亢進させる効果が期待できる様々な食品原料が検討されており、乳酸菌はもっとも有力な食品成分の一つである。実際、乳酸菌の投与により免疫バランスが改善され、アレルギー疾患や炎症性腸疾患の改善に有効であることが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、その効果は乳酸菌の種類によって異なり、抗アレルギー作用などの免疫調節作用のより高い乳酸菌がプロバイオティクス食品に求められている。
免疫調節作用、整腸作用(腸のぜん動運動の促進、腸内菌叢バランスの調整、下痢・便秘の改善、便臭改善)、寿命延長作用、栄養素の消化吸収改善、老化防止作用、病原菌排除作用、コレステロール低下作用、ストレス緩和、皮膚機能改善、美容効果、抗炎症作用、発ガン抑制、虫歯予防などの様々な機能を有する乳酸菌を利用するにあたり、その機能の最終的な証明にはヒト臨床試験が必要となるが、より簡便かつ迅速に有用乳酸菌を一次スクリーニングする手段が必要である。これまで乳酸菌のスクリーニング方法として、アレルギー疾患モデル動物を用いる方法(特許文献1、非特許文献3)や培養細胞を用いる方法(特許文献2、3)が知られている。しかしながら、疾患モデル動物を用いるスクリーニング方法では長期の期間と煩雑な手間が必要であり、多数の試験群を設定することが困難である。また、培養細胞を用いるスクリーニング方法において頻繁に用いられる樹立細胞株の結果は、初代培養細胞で必ずしも再現されず、また株化の過程で本来の調節機構が変質している場合があり、生体内反応を必ずしも反映していないという難点が指摘されている(非特許文献4)。そのため、一度に多くの乳酸菌株から簡便かつ迅速に免疫調節作用の高い乳酸菌株をin vitroで網羅的にスクリーニングできる方法が望まれていた。
特開2007-135587 特開2007-143544 特開2007-330157
Hase K. et al., Uptake through glycoprotein 2 of FimH1 bacteria by M cells initiates mucosal immune response, Nature 2009, 462:226-31, Borchers, A.T. et al., Probiotics and immunity. J. Gastroenterol. 2009, 44, 26-46 Ishida Y. et al., Decrease in Ovalbumin Specific IgE of Mice Serum after Oral Uptake of Lactic Acid Bacteria, Biosci. Biotechnol. Biochem. 2003, 67:951 山田耕路 日本栄養・食糧学会誌 第65巻 第2号, 59-64, 2012, 多機能性食品の開発に関する研究
従って、本発明は、免疫調節作用を有する乳酸菌を簡便かつ迅速にスクリーニングする手段を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、小腸パイエル板の上皮細胞層に存在するM 細胞に発現している蛋白質の一つであるウロモジュリン(Umod)蛋白質(以下、単に「Umod」という記載する場合がある)に着目し、Umodへの乳酸菌の結合数をin vitroで調べたところ、当該結合数が多い乳酸菌が、in vivoでIgE産生を抑制すること、また、腸間膜リンパ節においてTh2サイトカイン(IL-4、IL-10)の産生を抑制し、Th1サイトカイン(IL-12)および炎症抑制系サイトカインTGF-βの産生を亢進することを見出した。すなわち、乳酸菌のUmodへの結合数を指標とすれば、高い免疫調節作用を有する乳酸菌をin vitroでスクリーニングできるという知見を得た。本発明はかかる知見により完成したものである。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod)蛋白質への結合数を測定することを含む、免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法。
[2] 被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数が、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多い場合に、該被検乳酸菌を、免疫調節作用を有する乳酸菌として選択する、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3] 下記の工程を含む、免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法:
(a) 被検乳酸菌とウロモジュリン(Umod) 蛋白質とを接触させる工程、
(b) 上記被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数を測定する工程、
(c) (b)で測定した結合数を、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数(対照結合数)と比較する工程、および
(d) (c)の結果に基づいて、被検乳酸菌の中から、対照結合数と同等もしくはそれよりも多い結合数を示す乳酸菌を、免疫調節作用を有する乳酸菌として選択する工程。
[4] 前記結合数を、ウロモジュリン(Umod) 蛋白質に結合した乳酸菌の遺伝子量により測定する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数を、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数と比較し、該被検乳酸菌の免疫調節能を評価することを含む、乳酸菌の免疫調節能の評価方法。
[6] 下記の工程を含む、免疫調節作用を有する乳酸菌の製造方法:
(a) 被検乳酸菌とウロモジュリン(Umod) 蛋白質とを接触させる工程、
(b) 上記被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数を測定する工程、
(c) (b)で測定した結合数を、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数(対照結合数)と比較する工程、および
(d) (c)の結果に基づいて、被検乳酸菌の中から、対照結合数と同等もしくはそれよりも多い結合数を示す乳酸菌を、免疫調節作用を有する乳酸菌として取得する工程。
[7] ウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数が、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多く、かつ、免疫調節作用を有する乳酸菌。
[8] [6]に記載の方法により得られる免疫調節作用を有する乳酸菌。
[9] 受託番号NITE BP-1512で特定されるLactobacillus fermentum CP1299株、受託番号NITE BP-1513で特定されるLactobacillus acidophilus CP1613株、受託番号NITE BP-1514で特定されるLactobacillus fermentum CP1753株、又はそれらの類似菌株もしくは変異株である、[7]または[8]のいずれかに記載の乳酸菌。
[10] [7]〜[9]のいずれかに記載の乳酸菌を有効成分として含む免疫調節用組成物。
[11] 前記免疫調節用組成物が医薬である、[10]に記載の免疫調節用組成物。
[12] 前記免疫調節用組成物が飲食品である、[10]に記載の免疫調節用組成物。
[13] ウロモジュリン(Umod)蛋白質への結合数が、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多い乳酸菌の、免疫調節用組成物の製造への使用。
[14] ウロモジュリン(Umod)蛋白質を含む、免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング用キット。
本発明の方法によれば、in vitroにおけるUmod蛋白質への結合数を指標に、高い免疫調節作用を有する乳酸菌を簡便かつ迅速にスクリーニングすることができる。よって、従来の疾患モデル動物や培養細胞を用いるスクリーニング方法に比べて、時間や手間などを著しく軽減することができる。
図1は、本発明の乳酸菌のスクリーニング方法の手順を示す。 図2は、各被検乳酸菌のUmod結合数とOVA-IgE低下率との関係をプロットした図である。 図3は、各被検乳酸菌のUmod結合数とサイトカイン(IL-4)発現量の関係をプロットした図である。 図4は、各被検乳酸菌のUmod結合数とサイトカイン(IL-10)発現量の関係をプロットした図である。 図5は、各被検乳酸菌のUmod結合数とサイトカイン(IL-12/IL-4)発現量の関係をプロットした図である。 図6は、各被検乳酸菌のUmod結合数とサイトカイン(TGF-β)発現量の関係をプロットした図である。
本発明の免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法は、被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod)蛋白質への結合を指標として行う。具体的には、本発明の免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法は、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数を測定することにより行ない、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数が、基準(コントロール)株であるLactobacillus acidophilus L-92株のUmod蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多い場合に、該被検乳酸菌を、高い免疫調節作用を有する乳酸菌として選択する。
本発明のスクリーニング方法に用いるウロモジュリン(Umod) 蛋白質は、1985年にMuchmore及びDeckerにより妊婦の尿から分離精製された分子量約85キロダルトンの糖蛋白質であり、その生理学的機能としてインターロイキン-1(IL-1)及び腫瘍壊死因子(TNF)等の炎症性サイトカインへの結合活性、T細胞及び単球の阻害活性が知られている。UmodはTamm-Horsfall protein (THP)とも呼ばれている。
本発明において用いるUmod蛋白質は、天然物であっても、合成品であってもまた組換え体であってもよい。またUmod蛋白質はヒト由来のものであることが好ましいが、マウスなどヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するUmod蛋白質であってもよい。Umod蛋白質は公知であり、対応する塩基配列情報はGeneBankより入手可能である。例えば、ヒト由来Umod蛋白質(Protein ID AAA36799.1)をコードする塩基配列はGenBank Accession No.M17778、マウス由来Umod蛋白質(Protein ID NP_033496.1)をコードする塩基配列はGenBank Accession No. NM_009470.4、ラット由来Umod蛋白質(Protein ID AAA42319.1)をコードする塩基配列はGenBank Accession No. M63510としてそれぞれ登録されている。
Umod蛋白質は自体公知の方法により調製できる。例えば、遺伝子組換え技術により組換えUmod蛋白質を調製するのが好ましい。組換え蛋白質は、細胞系、無細胞系のいずれで調製したものでもよい。
Umod蛋白質は、そのままで用いてもよいが、任意の標識物質で標識されたものを用いることもできる。標識物質としては、蛍光物質、放射性同位体(例えば、125I、H、14C、35S等)、化学発光物質、ビオチン、マーカータンパク質、またはペプチドタグなどを例示することができる。マーカータンパク質としては、例えば、抗体のFc領域、アルカリフォスファターゼ、またはHRP(Horse radish peroxidase)などが挙げられる。またペプチドタグとしては、例えば、FLAG、6または10個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×Hisまたは10×His、インフルエンザ凝集素(HA)の断片などが挙げられる。
被検乳酸菌は、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ペディオコッカス属、ワイセラ属、オエノコッカス属等に属するいずれの乳酸菌株であってもよい。ラクトバチルス属に属する乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ケフィア、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム等が挙げられる。ラクトコッカス属に属する乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクティス等が挙げられる。ビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌としては、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム等が挙げられる。ロイコノストック属に属する乳酸菌としては、ロイコノストック・ラクティス、ロイコノストック・メセンテロイデス等が挙げられる。ストレプトコッカス属に属する乳酸菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ラクティス等が挙げられる。エンテロコッカス属に属する乳酸菌としては、エンテロコッカス・フェーカリス、エンテロコッカス・デュランス、エンテロコッカス・フェシウム等が挙げられる。ペディオコッカス属に属する乳酸菌としては、ペディオコッカス・ペントサセウス等が挙げられる。ワイセラ属に属する乳酸菌としては、ワイセラ・チバリア、ワイセラ・コンフューザ、ワイセラ・ハロトレランス等が挙げられる。オエノコッカス属に属する乳酸菌としては、オエノコッカス・オエニ等が挙げられる。
本発明は、免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法、ならびに該方法により得られる乳酸菌および該乳酸菌を含む免疫調節用組成物に関する。免疫系は本来生体が異物と認識したものを排除しようとするもので、生命維持に不可欠なものであり生命活動の多くに関係している。腸管にはその免疫系に関わる細胞の大部分が存在しており、本発明に係る免疫調節用組成物は、そうした腸管に存在する細胞を介して全身の免疫系を調節するものである。ここで「免疫調節作用」とは、免疫系の異常な機能亢進あるいは低下が原因となるあらゆる疾病などに対して、自然免疫系および獲得免疫系に働きかけることによって正常に整える作用をいう。具体的には免疫応答能低下の修復や過剰な免疫応答の抑制、免疫バランスの調整などが含まれ、さらに具体的には花粉症、通年性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギーの抑制効果、炎症性疾患の抑制効果、自己免疫疾患の抑制効果、ガンの抑制効果、感染防御効果などが含まれる。「免疫応答能低下の修復」は、Th1増強、NK細胞、樹状細胞、マクロファージを活性化することによる、抗ウイルス、抗細菌効果などの免疫賦活効果を含むと解釈される。「過剰な免疫応答の抑制」にはTh1、Th2、Th17の抑制、制御性T細胞の誘導を含み、「免疫バランスの調整」には、T細胞調節作用(Th1、Th2、Th17、制御性T細胞比の正常化)、抗体産生調節作用(IgE抗体産生抑制、IgA抗体産生増強)、炎症性・抗炎症性サイトカイン調節作用(TGF-βによる制御性T細胞誘導およびTh17の分化誘導制御)などを含む。さらに、「免疫調節作用」は本願実施例で確認されたIgE産生量の抑制作用、Th1/Th2バランスをTh1有意に調節する作用、およびTGF-β産生促進に基づく抗アレルギー作用を含むあらゆる作用をいう。
本発明の免疫調節作用を有する乳酸菌のスクリーニング方法は、具体的には、下記の工程を含む。
(a) 被検乳酸菌とウロモジュリン(Umod) 蛋白質とを接触させる工程
(b) 上記被検乳酸菌のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数を測定する工程
(c) (b)で測定した結合数を、Lactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod) 蛋白質への結合数(対照結合数)と比較する工程
(d) (c)の結果に基づいて、被検乳酸菌の中から、対照結合数と同等もしくはそれよりも多い結合数を示す乳酸菌を、免疫調節作用を有する乳酸菌として選択する工程
まず工程(a)では被検乳酸菌とUmod蛋白質とを接触させる。接触は、被検乳酸菌とUmod蛋白質が結合する条件下で行えば特に限定はされないが、例えば、Umod蛋白質を固定した担体に被検乳酸菌を添加し、一定時間反応させることにより行なう。
Umod蛋白質を固定する担体としては、ELISAプレート、マイクロアレイ、クロマト用カラムなどが使用することができるが、多数の被検乳酸菌を一度に網羅的に処理する上で、ELISAプレートまたはマイクロアレイが好ましい。Umod蛋白質の担体への固定化は、常法に従って行うことができる。例えば、Umod蛋白質をELISAプレートに添加し、一晩放置して、固定化させ、その後ウェルをPBSで洗浄し、続いてBSA/PBSを加え、室温でブロッキングすればよい。
工程(b)では、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数を測定する。好ましい態様として、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数は、Umod 蛋白質に結合した乳酸菌の遺伝子量によって測定できる。当該遺伝子量の測定は、乳酸菌の指標遺伝子にハイブリダイズするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドをプローブとしたハイブリダイゼーション法、又は乳酸菌の指標遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとした遺伝子増幅法等を利用することができる。具体的には、DNAプローブ法、PCR法、in situハイブリダイゼーション法などの測定法が例示できる。なかでも、乳酸菌の指標遺伝子をターゲットとした定量的PCR法が好ましい。乳酸菌の指標遺伝子としては、乳酸菌の間で相同性が高い16S rRNA遺伝子を用いることができ、上記の各方法に用いられるプローブやプライマーは、16S rRNA遺伝子の配列情報に基づいて適宜設計し、適当なオリゴヌクレオチド合成装置を用いて適宜作製することができる。
また、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数の他の測定方法としては、培養法、全菌数計測法(核酸染色)、活性染色法(CFDA, CTC)、DVC法、qDVC法、マイクロコロニー法、蛍光抗体法、FISH法、DVC-FISH法、SEM-ISH法などが例示できる。
次に、工程(c)では、工程(b)で測定した被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数を、同様にして測定したLactobacillus acidophilus L-92株のUmod蛋白質への結合数(対照結合数)と比較する。Lactobacillus acidophilus L-92株(受託番号FERM BP-4981として特許生物寄託センターに寄託されているLactobacillus acidophilus CL-92株)は、アレルギーに関与する「Th1/Th2バランス」の改善効果が高く、ヒト試験において花粉症に対する改善作用、ダニやハウスダストなどによる通年性アレルギー性鼻炎にも改善効果のあることが確認されている公知の乳酸菌株である。本発明のスクリーニング法において当該L-92株を望ましい免疫調節作用を有する基準株として使用することができるが、Umod蛋白質への結合能がこれと同程度の菌株であれば、それらを基準株として使用することもできる。また、より高い免疫調節作用を有する乳酸菌株を選別することを目的に本願のスクリーニング方法を使用する場合は、L-92株と同等以上のUmod蛋白質への結合能を持つ菌株を基準株と使用することが望ましい。L-92株以外の基準株としては、例えば、Umod結合数がL-92株の結合数と同等もしくはそれよりも多い乳酸菌株であるとして後述するLactobacillus fermentum CP1753株、Lactobacillus fermentum CP1299株、Lactobacillus johnsonii CP1544株、Lactobacillus helveticus CP2151株、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus CP2189株、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus CP973株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、Lactobacillus brevis CP287や、これらと同等以上のUmod蛋白質への結合能を持つ菌株などが挙げられる。
被検乳酸菌は、生菌であっても死菌であっても良い。また、死菌の場合は破砕されたものでもよい。菌体の破砕は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用して、例えば物理的破砕、酵素溶解処理等によって行うことができる。物理的破砕は、湿式(菌体懸濁液の状態で処理)又は乾式(菌体粉末の状態で処理)のいずれで行ってもよく、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌により、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力により、或いは、フィルター濾過により行うことができる。酵素溶解処理は、例えばリゾチームなどの酵素を用いて菌体の細胞壁を破壊することができる。
最後に工程(d)では、工程(c)の結果に基づいて、被検乳酸菌の中から、対照結合数と同等もしくはそれよりも多い結合数を示す乳酸菌を、免疫調節作用を有する乳酸菌の候補として選択する。なお、ここでいう多い結合数には、対照結合数と対比するまでもなく、被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数が多い場合も包含される。
本発明の上記スクリーニング方法において被検乳酸菌のUmod蛋白質への結合数を測定するための試薬を予め組み合わせてキット化することもできる。キットには、Umod蛋白質を少なくとも含んでいればよい。また、キットには、固定化担体、基準株であるLactobacillus acidophilus L-92株、乳酸菌検出のためのプライマーおよびプローブ類、蛍光試薬、及びキットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。
本発明の上記スクリーニング方法によって、免疫調節作用の高い乳酸菌として、Lactobacillus fermentum CP1299株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、およびLactobacillus fermentum CP1753株が選択できた。本発明はまたこれらの免疫調節作用を有する乳酸菌を提供する。
Lactobacillus fermentum CP1299株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、Lactobacillus fermentum CP1753株は、平成25(2013)年1月18日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)にそれぞれ次の受託番号で寄託されている。
Lactobacillus fermentum CP1299株:受託番号NITE BP-1512(識別の表示:CP1299)
Lactobacillus acidophilus CP1613株:受託番号NITE BP-1513(識別の表示:CP1613) Lactobacillus fermentum CP1753株:受託番号NITE BP-1514(識別の表示:CP1753)
Lactobacillus fermentum CP1299株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、Lactobacillus fermentum CP1753株より抽出したDNAについて乳酸菌16S rDNA増幅のためのプライマーを用いてPCRにて増幅し、16S rDNA塩基配列を決定したところ、それぞれ配列番号1、2、3の塩基配列を有していた。また、CP1299株、CP1613株、CP1753株の各16S rDNAに対して高い相同性を示す16S rDNAを有するそれらの類似菌株もまた当該菌株と同様に免疫調節作用を有する菌株として利用できる。ここで、「高い相同性」とは、CP1299株、CP1613株、CP1753株の各16S rDNA塩基配列(配列番号1、2、3)に対して98%以上の相同性、好ましくは99%以上の相同性、より好ましくは99.5%以上の相同性、最も好ましくは100%の相同性をいう。また、CP1299株、CP1613株、CP1753株と同等またはそれ以上の免疫調節作用を有している限り、それらの変異株であってもよい。ここで、変異株には、自然的変異および通常の人工的変異手段(例えば、紫外線、放射線照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ニトロソグアニジンやブロモウラシル等のようなヌクレオチド塩基類似体など)による変異株の両方が含まれる。
また、上記スクリーニング方法と同様の工程を実施することにより、被検乳酸菌の免疫調節能の評価を行ない、また、免疫調節作用を有する乳酸菌を製造することができる。
上記スクリーニング方法により得られた乳酸菌は、その免疫調節作用を損なわない範囲で適宜他の成分を配合し、医薬品や飲食品等の免疫調節用組成物として提供することができる。本発明の免疫調節用組成物の有効成分である乳酸菌は、古くからヒトの食生活に利用されてきたものであるので、安全性に優れ、高齢者でも幼児でも長期にわたって使用できる。また、有効成分である乳酸菌は1種のみならず2種以上を配合してもよい。
本発明の免疫調節用組成物は、上記のスクリーニング方法で得られた高い免疫調節作用を有する乳酸菌を有効成分とするので、免疫応答機能の低下や免疫バランスの崩れ(特にTh2が優位になる状態)に起因するまたは関連する各種疾患の予防または改善を目的として日常的に摂取または服用することができる。そのような疾患としては、例えば、アレルギー性疾患(花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、食物アレルギー、蕁麻疹、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、グッドパスチェア症候群、急性糸球体腎炎、関節リウマチ、膠原病、血清病、ウイルス性肝炎、アレルギー性肺胞炎、接触性皮膚炎、血管浮腫など)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、自己免疫疾患(多発性硬化症、全身性エリマトーデス、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、悪性貧血など)、癌(大腸癌、肺癌、胃癌、乳癌、大腸癌、膀胱癌など)、感染症(HIV、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスによる感染症、腸管出血性大腸菌感染症など)等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の免疫調節用組成物を医薬品として用いる場合は、医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した基材や担体、ならびに添加物(例えば、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、滑沢剤、湿潤化剤 、緩衝剤、香料等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。
本発明の医薬品は、経口または非経口的に投与することができるが、好ましくは経口投与である。本発明の医薬品を経口投与する場合は、錠剤(糖衣錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬品を非経口投与する場合は、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
本発明の医薬品を前述のアレルギー疾患や炎症性腸疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して投与することができる。本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度法などに応じて適宜決定することができる。本発明の医薬品の投与量としては、有効成分である乳酸菌の菌数でいうと、例えば、1日当たりの投与量が1×107〜1×1011個が好ましく、1×10〜1×1011個がより好ましい。
また、本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル(硬カプセル、軟カプセル)状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。特に、健康食品および機能性食品に適した形状として、タブレット状、カプセル状、顆粒状、粉末状が例示できる。例えば、タブレット状の健康食品の製造は、本発明の方法により得られた免疫調節作用を有する乳酸菌を配合した処方物を一定の形状に圧縮するか、または水もしくはアルコールのような溶媒で湿潤させた練合物を一定の形状にするか、あるいは、一定の型に流し込んで成型することにより行なうことができる。
飲食品の種類としては、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)、加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品、パン類、麺類、菓子類、水産・畜産加工食品、豆腐等の大豆加工食品、油脂及び油脂加工食品などが挙げられ、特に限定はされないが、簡便にかつ毎日継続して摂取することができる飲料が好ましい。
本発明の免疫調節用組成物を飲食品として用いる場合は、その有効成分である乳酸菌の有効量を飲食品の製造原料に配合してもよく、あるいは、製造後の製品に配合してもよい。
本発明の飲食品は、食品素材に加えて、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;増量剤、結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品における乳酸菌の配合量は、その免疫調節作用が充分に発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性およびコストなどを考慮して適宜設定すればよい。本発明の飲食品の摂取量としては、有効成分である乳酸菌の菌数でいうと、例えば、1日当たりの摂取量が1×107〜1×1011個が好ましく、1×10〜1×1011個がより好ましい。よって、例えば飲料の場合であれば、通常1日あたり摂取される飲料の量に合わせて、上記の1日当たりの乳酸菌の摂取量を目安として飲料あたりに含有させる乳酸菌の配合量を決定すればよい。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1) 乳酸菌のUmod結合数の評価
(1)被検乳酸菌の調製
実験には、ラクトバチルス属に属する乳酸菌約20株を用いた。また、免疫調節作用を有する基準株としてLactobacillus acidophilus L-92株を用いた。各菌株をMRS培地(Difco)にて37℃、20時間静置培養した後、PBSにて3回洗菌し、PBSに懸濁した。
(2)Fc-mUmod融合蛋白質の作製
ヒトIgG1のFcドメインにマウスUmod蛋白質(配列番号5の1−616位)をつなげて発現させた融合蛋白質(Fc-mUmod)を、Hase K. et al., Uptake through glycoprotein 2 of FimH1 bacteria by M cells initiates mucosal immune response, Nature 2009, 462:226-31の記載に従って作製した。mUmod(マウスUmod)配列(配列番号4)を増幅させるためのプライマーとしてForwardプライマー:5’-CGCAGATCTACCATGGGGATCCCTTTGACC-3’(配列番号6)およびReverse プライマー:5’-CGCGTCGACCTTGGACACTGAGGCCTGG-3’(配列番号7)を用い、制限酵素BglIIとSalIを用いてFcドメインを挿入したpcDNA3ベクター(invitrogen)にクローニングした。
Fc-mUmodをクローニングしたベクターを、ヒト胎児腎細胞由来HEK293T細胞に導入し、7-10日培養した。上清中に分泌されたFc-mUmod蛋白質を回収し、HiTrap protein AHP affinity column(GE Healthcare)を用いて精製した。
(3) In vitro 結合アッセイ
Fc-Umod蛋白質およびコントロールFc蛋白質としてhIgGを、5μg/mlになるようにPBSにて希釈したものを96穴プレートに50μlアプライし、4℃にて一晩固相化した。各ウェルを200μlのPBSにて3回洗浄した後、1% BSA/PBS溶液を200μlアプライして室温にて2時間ブロッキングした。ブロッキング溶液を除去した後、106 cells/50μl となるようにPBSにて懸濁した被検乳酸菌の菌体を、50μlずつアプライし、室温にて2時間インキュベートした。各ウェルを200μlのPBSにて5回洗浄した後、PBSを完全に除去した。
NucleoSpinTM Tissue(Takara)を用いて、プレートに結合した菌体からDNAを抽出した。方法は付属のプロトコルに従った。抽出したDNAを鋳型として、16S rRNA遺伝子をターゲットとするユニバーサルプライマー(F:5’-AACTGGAGGAAGGTGGGGAT-3’(配列番号8)、R:5’-AGGAGGTGATCCAACCGCA-3’ (配列番号9)を用いてリアルタイムPCRを行い、Fc-mUmodおよびhIgGに結合した菌数を定量した。方法はSYBRTM Premix Ex TaqTM II (Tli RNaseH Plus )(Takara)に付属のプロトコルに従った。以上のin vitro結合アッセイの手順を図1に示す。
Fc-mUmodに結合した菌数からhIgGに結合した菌数を引いた値を、Umod結合数とした。
基準株を含む被検乳酸菌14株のUmod結合数の算出結果を表1に示す。
Figure 0006149228
表1に示されるように、Umod結合数が、Lactobacillus acidophilus L-92株(基準株)のUmod結合数(対照結合数)よりも多い乳酸菌株、同等の乳酸株、少ない乳酸菌株が認められた。
<Umod結合数が対照結合数と同等もしくはそれよりも多い乳酸菌株>
Lactobacillus fermentum CP1753株、Lactobacillus fermentum CP1299株、
Lactobacillus johnsonii CP1544株、Lactobacillus helveticus CP2151株、
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus CP2189株、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus CP973株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、Lactobacillus brevis CP287
<Umod結合数が対照結合数よりも低い乳酸菌株>
Lactobacillus acidophilus CP734、actobacillus acidophilus CP23、Lactobacillus casei CP2517、Lactobacillus gasseri CP793、Lactobacillus rhamnosus CP1270
(実施例2) 乳酸菌株の抗アレルギー(OVA-IgE低下)作用の評価
(1)被検乳酸菌の調製
実験には、実施例1においてUmod結合数を調べたラクトバチルス属に属する乳酸菌株を用いた。また、抗アレルギー作用を有する基準株としてLactobacillus acidophilus L-92株を用いた。各菌株をMRS培地(Difco)にて37℃、20時間静置培養した後、生理食塩水(0.85%(w/v) NaCl溶液)にて3回洗菌した。生理食塩水に懸濁した後、85℃達温殺菌を行い、菌体は凍結乾燥し、粉末化した。
(2) OVA-IgE低下率の測定
6週齢の雌性Balb/cマウス(日本チャールス・リバー株式会社)を各群5匹ずつ実験に用いた。実験開始日および3日後に、卵白アルブミン(OVA)をアジュバントである水酸化アルミニウムゲルと共に2回腹腔内投与し、アレルギーモデルマウスを作製した。実験3日後から毎日、約109個/mL水道水に調整した各被検乳酸菌溶液をマウス体重10g当たり0.1mL強制経口投与した。コントロールマウスには水道水を用いた。14日後に腹部下大静脈より採血し、失血死後に腸管膜リンパ節を摘出し、RNAlater(Applied Biosystems社)で一晩冷蔵保存した。
採取した血液は、室温で1時間以上放置して血餅を凝集させ、1,000rpm で10分間遠心分離により血清を得た。レビス OVA-IgE マウス測定試薬(シバヤギ社)を用いて、各個体の血清中の OVA 特異IgE 抗体価を ELISA 法にて測定し、Lactobacillus acidophilus L-92株投与マウスのOVA 特異IgE 抗体価を100%としたときの、各乳酸菌投与マウスのOVA 特異IgE 抗体価の低下率を求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 0006149228
表2に示されるように、実施例1においてUmod結合数が対照結合数と同等もしくはそれよりも多いことが確認された乳酸菌株: Lactobacillus fermentum CP1753株、fermentum CP1299株、Lactobacillus johnsonii CP1544株、Lactobacillus helveticus CP2151株、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus CP2189株、Lactobacillus acidophilus CP1613株、Lactobacillus brevis CP287株を投与したマウスはOVA-IgE低下率が大きかった。一方、実施例1においてUmod結合数が対照結合数よりも少ないことが確認された乳酸菌株:Lactobacillus rhamnosus CP1270株、Lactobacillus acidophilus CP23株、Lactobacillus acidophilus CP734を投与したマウスはOVA-IgEを低下させなかった。
(3) Umod結合数とOVA-IgE低下率の相関
実施例1で測定したUmod結合数を縦軸に、上記(2)で測定したOVA-IgE低下率を横軸にプロットした結果を図2に示す。その結果、Umod結合数とOVA-IgEの間には相関があり、Umod結合数がLactobacillus L-92株と同等またはそれよりも多い乳酸菌株(CP1753, CP1299, CP1613, CP1544, CP287, CP2151, CP2189)はOVA-IgE低下率が大きく、抗アレルギー効果が高いことが示された。
(実施例3) 乳酸菌株の抗アレルギー(サイトカイン:IL-4, IL-10, IL-12産生)作用の評価
(1)被検乳酸菌の調製
実施例2(1)と同様にして被検乳酸菌の調製を行なった。
(2) 腸間膜リンパ節のサイトカイン発現量測定
実施例2(2)で作製したアレルギーモデルマウスより摘出した腸間膜リンパ節におけるサイトカイン(IL-4, IL-10, IL-12)の発現量を測定した。まず、各個体の腸間膜リンパ節を2-メルカプトエタノールを添加したRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)付属のRLT溶液に入れ、ハサミで細切後、ホモジナイザー(ポリトロン社)でホモジナイズした。以降は、RNeasy Mini Kitの説明書に従って全RNAを抽出し、得られた全RNAの濃度及び純度を、Agilent 2100 Bioanalyser(アジレントテクノロジー社)で測定した。
1μgのtotal RNAを鋳型に用い、transcriptor first strand cDNA合成kit(Roche社)を用いてcDNAを得た。PCR反応にはLightcycler 480 SYBR GreenIMaster(Roche社)を用い、増幅産物の検出および定量はLight Cycler PCR and real-time detection system(Roche社)を使用した。各サイトカイン遺伝子増幅に用いたプライマーの塩基配列を以下に示す。
(IL-4増幅用プライマー)
IL-4_F:5’-CCCCAGCTAGTTGTCATCCTG-3’(配列番号10)
IL-4_R:5’-CGCATCCGTGGATATGGCTC-3’ (配列番号11)
(IL-10増幅用プライマー)
IL-10_F:5’-ACAGCCGGGAAGACAATAACT-3’ (配列番号12)
IL-10_R:5’-GCAGCTCTAGGAGCATGTGG-3’ (配列番号13)
(IL-12増幅用プライマー)
IL-12_F:5’-CAATCACGCTACCTCCTCTTTT-3’ (配列番号14)
IL-12_R:5’-CAGCAGTGCAGGAATAATGTTTC-3’ (配列番号15)
(GAPDH増幅用プライマー)
GAPDH_F:5’-AGGTCGGTGTGAACGGATTTG-3’ (配列番号16)
GAPDH_R:5’-GGGGTCGTTGATGGCAACA-3’ (配列番号17)
各遺伝子の発現量はGAPDHの発現量で補正後、コントロールマウスでの発現量を基準に相対値を求めた。結果を下記表3に示す。
Figure 0006149228
表3に示されるように、Umod結合数の多かったLactobacillus fermentum CP1753、L actobacillus fermentum CP1299株は、IL-4、IL-10の発現量が低く、またIL-12/IL-4値が高かった(Th1がTh2より優位)。これに対し、Umod結合数の少なかったLactobacillus acidophilus CP23株はIL-10の発現量が高く、IL-12/IL-4値が低かった(Th2がTh1より優位)。
(3) Umod結合数とサイトカイン発現量の相関
実施例1で測定したUmod結合数を縦軸に、上記(2)で測定したサイトカイン(IL-4, IL-10, IL-12/IL-4)発現量を横軸にプロットした結果を図3〜5に示す。その結果、Umod結合数とサイトカイン発現量の間には相関があり、Umod結合数がLactobacillus acidophilus L-92株と同等またはそれよりも多い乳酸菌株(CP1753, CP1299, CP1613)は、Th2サイトカイン(IL-4、IL-10)の発現量が低く(図3、4)、Th1サイトカイン(IL-12)の発現量が高かった(図5)。従って、Umod結合数がLactobacillus acidophilus L-92株と同等またはそれよりも多い上記乳酸菌株は、Th1/Th2バランスをTh1優位に調節することから、抗アレルギー効果が高いことが示された。
(実施例4) 乳酸菌株の抗アレルギー(サイトカイン:TGF-β産生)作用の評価
(1) 腸間膜リンパ節のサイトカイン(TGF-β)発現量測定
実施例2(2)で作製したアレルギーモデルマウスより摘出した腸間膜リンパ節におけるサイトカイン(TGF-β)の発現量を測定した。TGF-β発現量の測定は、実施例3(2)と同様にしてRNAを調製し、PCR増幅することにより行った。TGF-β遺伝子増幅に用いたプライマーの塩基配列を以下に示す。
(TGF-β増幅用プライマー)
TGF-β_F:5’-AGCTGGTGAAACGGAAGCG-3’ (配列番号18)
TGF-β_R:5’-GCGAGCCTTAGTTTGGACAGG-3’ (配列番号19)
TGF-βの発現量はGAPDHの発現量で補正後、コントロールマウスでの発現量を基準に相対値を求めた。結果を下記表4に示す。
Figure 0006149228
(2) Umod結合数とTGF-β発現量の相関
実施例1で測定したUmod結合数を縦軸に、上記(1)で測定したTGF-β発現量を横軸にプロットした結果を図6に示す。その結果、Umod結合数とTGF-β発現量の間には相関があり、特にUmod結合数が多い乳酸菌株(CP1753, CP1299, CP1613)は、TGF-βの発現量が高かった(図6)。従って、Umod結合数が多い上記乳酸菌株は、アレルギー性炎症抑制に関与する因子であるTGF-βの産生を促進することから、抗アレルギー効果が高いことが示された。
以上の試験結果から、乳酸菌のUmod結合数を指標として、免疫調節効果を発揮する乳酸菌をスクリーニングできることがわかった。
本発明は、プロバイオティクス飲食品の製造分野において利用できる。

Claims (5)

  1. 受託番号NITE BP-1512で特定されるLactobacillus fermentum CP1299株もしくは配列番号1に示す塩基配列と98%以上の相同性を有する塩基配列からなる16s rDNAを有し、かつLactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod)蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多いUmod結合数を示す、Lactobacillus fermentum CP1299株の類似菌株、または受託番号NITE BP-1514で特定されるLactobacillus fermentum CP1753株もしくは配列番号3に示す塩基配列と98%以上の相同性を有する塩基配列からなる16s rDNAを有し、かつLactobacillus acidophilus L-92株のウロモジュリン(Umod)蛋白質への結合数と同等もしくはそれよりも多いUmod結合数を示す、Lactobacillus fermentum CP1753株の類似菌株。
  2. 請求項に記載の乳酸菌を有効成分として含む免疫調節用組成物。
  3. 前記免疫調節用組成物が医薬である、請求項に記載の免疫調節用組成物。
  4. 前記免疫調節用組成物が飲食品である、請求項に記載の免疫調節用組成物。
  5. 請求項に記載の乳酸菌の、免疫調節用組成物の製造への使用。
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