JP6145994B2 - 缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食品や飲料品の容器材料として用いられる缶用鋼板およびその製造方法に関するもので、特に、缶に用いた場合の外圧に対する缶胴部の座屈強度に優れた缶用鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年の環境負荷低減およびコスト削減の観点から、食品や飲料缶に用いられる鋼板に対しては使用量の削減が求められており、2ピース、3ピース缶に関わらず鋼板の薄肉化が進行している。これに伴い、製缶、搬送工程および市場におけるハンドリング時に作用する外力による缶体の変形、内容物の加熱殺菌処理等における缶内部の圧力の増減による缶胴部の変形(座屈)が問題視されている。
従来、この耐変形性を向上させるために鋼板の高強度化が行われてきた。しかし、鋼板の高強度化によって強度(YP)が上昇するとスプリングバックの影響が大きくなるためロールフォーム性が低下し、製缶工程において問題となる。また、鋼板の高強度化は缶胴部成形後に行われるネック加工、次いで行われるフランジ成形において、ネックしわ及びフランジ割れの発生率を増加させてしまう。このように、鋼板の高強度化は必ずしも鋼板の薄肉化に伴う耐変形性の劣化を補う方法としては適切ではない。
一方、缶胴部の座屈現象は、缶胴部板厚が薄肉化されたことによる缶体の剛性の劣化によって生じている。従って、耐座屈性(パネリング強度)を向上させるためには、缶体のサイズやデザインを最適化し、缶体の剛性を高める方法が考えられる。そして、剛性を向上させる方法としては、鋼板のヤング率そのものを高める方法が考えられる。
鉄のヤング率と結晶方位とは強い相関があり、<110>方向が圧延方向に平行な結晶方位群(αファイバー)は圧延方向に対して90°となる幅方向のヤング率を高め、特に{112}<110>方位の集積を高めることで、理想的には約280GPaのヤング率を有する鋼板を得ることができる。また、<111>方向が板面法線方向に平行な結晶方位群(γファイバー)は圧延方向および圧延方向から90°方向のヤング率を約230GPaまで高めることができる。一方、鋼板の結晶方位が特定の方位への配向を示さない場合、即ち集合組織がランダムである鋼板のヤング率は、約205GPaである。
高ヤング率を志向した缶用鋼板の例としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、極低炭素鋼を冷延焼鈍後、50%以上の二次冷延を行い強い圧延集合組織(αファイバー)を形成させ、圧延方向から90°方向のヤング率を高めることにより鋼板の剛性を上げる方法が開示されている。
特許文献2には、極低炭素鋼の熱延板を60%以上の圧延率で冷延し、強い圧延集合組織を形成させ、圧延方向から90°方向のヤング率を高めることにより鋼板の剛性を上げ、容器用原板の薄手化を可能にするとともに焼鈍を行わない鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献3には、極低炭素鋼をAr変態点以下の温度で少なくとも50%以上の熱間圧延を施し、酸洗後、50%以上の冷間圧延をした後、400℃以上再結晶温度以下で焼鈍を行うことで圧延方向から90°方向のヤング率を高め鋼板の剛性を上げる方法が開示されている。なお、前記再結晶温度とは再結晶率が10%になる温度のことを指している。
特開平6−212353号公報 特開平6−248332号公報 特開平6−248339号公報
しかしながら、上記従来技術は、いずれも問題点を抱えている。
例えば、特許文献1は、付加的な工程である二次冷間圧延を行うため、工程が増えて製造コスト高となるという問題がある。さらに、二次冷間圧延率が50%以上という高圧延率は実操業において現実的ではない。
特許文献2は、冷間圧延後、全く焼鈍をしないことで、圧延集合組織への集積を強めて圧延方向から90°方向のヤング率を高める方法である。しかし、冷間圧延まま素材では強度が高すぎて延性も低いことから、ロールフォーム性、ネック加工性およびフランジ成形性を低下させてしまう。
特許文献3は、Ar3変態点以下での温度で少なくとも50%以上の熱間圧延を行うため、中央部より冷却速度の速いエッジ部は仕上げ圧延時の温度が低くなる傾向があり、仕上げ圧延時に導入された歪が再結晶や回復で解放されずにエッジ部の強度を高くする傾向がある。そのため、中央部とエッジ部の強度差が大きくなり、幅方向に均一な熱延板が得られにくいことから、現状の操業で均一なものを得ることは困難である。また、冷間圧延後、400℃以上再結晶温度以下で焼鈍することで、圧延集合組織への集積を強めて圧延方向から90°方向のヤング率を高める方法が開示されているが、再結晶温度以下で焼鈍を行った場合、冷間圧延組織、回復組織および再結晶組織が混在し、強度および延性等の機械特性値が鋼板内で不均一になるという問題がある。
すなわち、缶体剛性の向上を目的に鋼板のヤング率を高める製造方法としてコスト高となる二次冷間圧延工程の付加や、材質不均一となる再結晶温度以下の焼鈍工程を行うことなく、現状の缶用鋼板の製造方法で得られる高ヤング率鋼板およびその製造方法を志向した技術は存在しなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、缶に用いた場合の外圧に対する缶胴部の座屈強度に優れた缶用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
セミ極低炭素鋼をベースに化学成分、冷間圧延条件および焼鈍条件を最適化することで、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上で、かつ調質度がT3〜T4である缶用鋼板の製造が実現可能であることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.0050%以上0.0100%以下、Si:0.050%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.010%以上0.100%以下、N:0.0010%以上0.0050%以下、Nb:0.020%以上0.120%以下を含有し、CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上であり、調質度がT3〜T4であることを特徴とする缶用鋼板。
0.4≦(Nb/C)×(12/93)≦2.5・・・(1)
ただし、Nb、Cは含有量(質量%)を示す。
[2]質量%で、C:0.0050%以上0.0100%以下、Si:0.050%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.010%以上0.100%以下、N:0.0010%以上0.0030%以下を含有し、さらにNb:0.020%以上0.120%以下、B:0.0005%以上0.0070%以下のうちから選ばれる少なくとも1種を含有し、CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足し、NおよびBの含有量が下記式(2)を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上であり、
調質度がT3〜T4であることを特徴とする缶用鋼板。
0.4≦(Nb/C)×(12/93)≦2.5・・・(1)
1.0≦(B/N)×(14/11)≦3.5・・・(2)
ただし、Nb、C、B、Nは含有量(質量%)を示す。
[3]前記[1]または[2]に記載の化学成分を有する鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、85%以上の圧延率で冷間圧延を行い、引き続き、再結晶温度以上780℃以下の温度で焼鈍を行い、次いで、調質圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
本発明によれば、缶に用いた場合の外圧に対する缶胴部の座屈強度に優れた缶用鋼板が得られる。すなわち、外圧に対する缶胴部の座屈強度が、製缶および飲料メーカーが設けている基準値(約1.5kgf/cm2)より高い缶用鋼板が得られる。
したがって、本発明の缶用鋼板を用いることで食缶や飲料缶等に使用される缶体の剛性が向上し、鋼板の更なる薄肉化が可能になり、省資源化および低コスト化を達成することができる。
また、本発明の鋼板は、3ピース缶用鋼板として好適に用いることができる。また、本発明の鋼板の適用範囲は、各種金属缶のみならず、缶電池内装缶、各種家電・電気部品、自動車用部品等の幅広い範囲への適用も期待できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の缶用鋼板は、成分組成が質量%で、C:0.0050%以上0.0100%以下、Si:0.050%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.010%以上0.100%以下、N:0.0010%以上0.0050%以下、Nb:0.020%以上0.120%以下を含有し、CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上であり、調質度がT3〜T4である。または、質量%で、C:0.0050%以上0.0100%以下、Si:0.050%以下、Mn:0.10%以上1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.010%以上0.100%以下、N:0.0010%以上0.0030%以下を含有し、さらにNb:0.020%以上0.120%以下、B:0.0005%以上0.0070%以下のうちから選ばれる少なくとも1種を含有し、CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足し、NおよびBの含有量が下記式(2)を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上であり、調質度がT3〜T4である。
そして、このような缶用鋼板は、上記成分組成を有する鋼スラブに、熱間圧延し、酸洗後、圧延率85%以上の冷間圧延を行い、次いで、再結晶温度以上780℃以下の温度で焼鈍を行い、調質圧延を行うことで製造可能となる。これらは、本発明の最も重要な要件である。
0.4≦(Nb/C)×(12/93)≦2.5・・・(1)
1.0≦(B/N)×(14/11)≦3.5・・・(2)
ただし、Nb、C、B、Nは含有量(質量%)を示す。
本発明の缶用鋼板の成分組成について説明する。
C:0.0050%以上0.0100%以下、Nb:0.020%以上0.120%以下
CおよびNbは、本発明において最も重要な役割を有する元素である。熱間圧延時に固溶Nbによるγ粒の再結晶抑制効果により熱延板の結晶粒が細粒化し、再結晶焼鈍時のγファイバー再結晶粒の核生成サイトとなる熱延板の結晶粒界面積が増大する。その結果、γファイバーが発達し、圧延方向、圧延方向から45°、圧延方向から90°のそれぞれのヤング率を高めることができる。
また、NbCの析出物増量による鋼板組織の微細化および析出強化を利用することで鋼板を硬質化することができる。
そして、Cは0.0050%以上0.0100%以下、Nbは0.020%以上0.120%以下とすることで圧延方向および/または圧延方向から90°のヤング率を220GPa以上かつ調質度がT3〜T4の缶用鋼板を得ることができる。
Cが0.0050%未満では、NbCの析出量が減少し、鋼板組織の微細化および析出強化効果を充分に得ることができず、目的の調質度を得ることができない。Cが0.0100%超えでは、フェライト中にCが固溶しマトリックスが過度に硬質化して成形性が悪化する。また、Nbが0.020%未満では熱延板結晶粒を充分に細粒化させることができない。Nbが0.120%を超えると、再結晶完了温度を過度に上昇させ、特に薄物材が多い缶用鋼板では連続焼鈍工程などで工業的に生産することが困難となる。
さらに、本発明においては、CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足するものとする。
0.4≦(Nb/C)×(12/93)≦2.5・・・(1)
ただし、Nb、Cは含有量(質量%)を示す。
(Nb/C)×(12/93)が0.4未満では、NbCによる細粒化および析出強化効果が不充分であり、かつ、目的の調質度を得ることができない。(Nb/C)×(12/93)が2.5超えでは、固溶Nbのsolute drag効果による再結晶遅延が過度になり、製造が困難であることやNbCの粗大化によるピン止め効果の減少でフェライト粒径が粗大化し、結晶粒細粒化効果が得られない。
Si:0.050%以下
Siは多量に添加すると、鋼板の表面処理性の劣化および耐食性の低下の問題が発生するため、0.050%以下、好ましくは0.020%以下とする。
Mn:0.10%以上1.00%以下
Mnは、鋼中に含まれる不純物のSに起因する熱間延性の低下を防止するため、0.10%以上の添加が必要である。また、MnはAr3変態点を低下させる元素の一つであり、熱間圧延仕上げ圧延温度を低下させることができため、熱間圧延時にγ粒の再結晶粒成長を抑制し、さらに変態後のα粒を微細化できる。一方で、Mnは固溶Cと相互作用して再結晶集合組織形成に影響を及ぼし、Mn添加量の増加に伴い、γファイバーへの集積を低下させる作用もある。従って、これらを考慮し1.00%以下とする。Mnが1.00%超えでは、圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa未満となり、さらに鋼板が過度に硬質化し、ロールフォーム性などの製缶特性が低下する。以上より、Mnは0.10%以上1.00%以下とする。
P:0.030%以下
Pは、多量に添加すると、鋼の硬質化、耐食性の低下を引き起こす。よって、Pの上限は0.030%とする。
S:0.020%以下
Sは、鋼中でMnと結合してMnSを形成し多量に析出することで鋼の熱間延性を低下させる。よって、Sは0.020%以下とする。
Al:0.010%以上0.100%以下
Alは、脱酸剤として添加される元素である。また、NとAlNを形成することにより、鋼中の固溶Nを減少させる効果を有する。しかし、Alの含有量が0.010%未満では、十分な脱酸効果や固溶N低減効果が得られない。一方、0.100%を超えると、上記効果が飽和するだけでなく、アルミナなどの介在物が増加するため好ましくない。よって、Alは0.010%以上0.100%以下とする。
N:0.0010%以上0.0050%以下、B:0.0005%以上0.0070%以下
NはAlやNb等と結合して窒化物や炭窒化物を形成し、熱間延性を害するため少ないほど好ましい。また、Nは固溶強化元素の一つであり、多量に添加すると鋼板の硬質化につながり伸びが著しく低下して成形性を悪化させる。一方で、操業上安定して0.0010%未満とすることは困難であり、製造コストも上昇する。以上より、Nは0.0010%以上0.0050%以下とする。さらに、Bを添加する場合のNの上限は、下記のようにBNとして析出させた上で固溶Bの効果を効率よく得るため、0.0030%とする。
NおよびBは、CおよびNbと同様に本発明において重要な役割を有する元素である。BはBNが析出するために必要な量以上に添加された場合、熱間圧延時に過剰に添加されたBが結晶粒界に固溶Bとして偏析し、結晶粒の粒成長を抑制するためγ粒の再結晶抑制効果により熱延板の結晶粒が細粒化し、再結晶焼鈍時のγファイバー再結晶粒の核生成サイトとなる熱延板の結晶粒界面積が増大する。その結果、γファイバーが発達し、圧延方向、圧延方向から45°、圧延方向から90°のそれぞれのヤング率を高めることができる。このような結晶粒の微細化効果を発揮させるためには、BNを析出させた上でさらに固溶BとしてBを存在させることが必要であり、本発明者らが行った種々の試験の結果から、Bは0.0005%以上必要であるとの知見を得た。以上より、本発明では0.0005%をBの下限とする。一方、固溶Bの増加は連続焼鈍工程における再結晶完了温度を過度に上昇させ、炉内破断やバックリングの発生の危険が大きくなる。このため、0.0070%をBの上限とする。Nは不可逆的に混入する不純物である。N量が高くなるほどこれを固定するためのBの添加量をふやさなければならない。B添加量の大幅な増加はコストアップにつながるので、Nの上限は0.0030%とする。
さらに、本発明においては、NおよびBの含有量が下記式(2)を満足するものとする。
1.0≦(B/N)×(14/11)≦3.5・・・(2)
ただし、B、Nは含有量(質量%)を示す
(B/N)×(14/11)が1.0未満では、固溶Bによる熱延板の細粒化効果が不充分であり、(B/N)×(14/11)が3.5超えでは、固溶Bによる再結晶遅延が過度になり、製造が困難となる。
残部はFeおよび不可避的不純物とする。
次に、本発明の缶用鋼板の機械的性質について説明する。
圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上
圧延方向または圧延方向から90°方向が缶胴部の周方向になるようにロールフォームが施される容器において、缶胴部の剛性を高める観点から、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率を220GPa以上とする。220GPa以上とすることで、パネリング強度が顕著に向上し、鋼板の薄肉化に伴う、内容物の加熱殺菌処理等における缶外部の圧力の増減による缶胴部の座屈変形を防ぐことができる。圧延方向のみ、圧延方向から90°方向のみ、圧延方向と圧延方向から90°方向の両方、のいずれかが220GPa以上であってもかまわないが、ヤング率が最も高い方向が缶胴部の周方向になるようにロールフォームを施すのが好ましい。
なお、圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率は、横振動型の共振周波数測定装置により測定することができる。
調質度がT3〜T4
内容物の加熱殺菌処理等の処理時に缶外部の圧力の増減による缶胴部の座屈変形は、鋼板のヤング率を高めることによって防ぐことができる。しかし、缶の落下、自動販売機内の搬送装置との接触および缶の積み重ね等による塑性変形を防止するためには鋼板を硬質化させることが必要である。一方、過度な硬質化は、ロールフォーム性などの製缶特性を著しく低下させる。以上から、調質度はT3〜T4とする。なお、本発明において、調質度がT3〜T4とは、缶用鋼板として用いられるブリキやティンフリー鋼の硬さを示す指標であり、JIS G3303およびJIS G3315では、ロックウェル硬度(HR30T)でT3が57±3、T4が61±3と規定されている。
次に、本発明の缶用鋼板の製造方法について説明する。
本発明の缶用鋼板は、上記組成からなる鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、85%以上の圧延率で冷間圧延を行い、引き続き、再結晶温度以上780℃以下の温度で焼鈍を行い、調質圧延を行うことで製造される。
転炉等を用いた通常公知の溶製方法により溶製することができる。また、連続鋳造法等の通常用いられる鋳造方法で圧延素材とすることができる。この時、スラブ再加熱温度:1050〜1300℃が好ましい。加熱温度が高すぎると製品表面の欠陥や、エネルギーコストが上昇するなどの問題が発生する場合がある。一方、低すぎると、最終仕上圧延温度の確保が難しくなる。
熱間仕上圧延温度:860〜950℃、巻取温度500〜640℃(好適条件)
熱延鋼板の結晶粒微細化や析出物分布の均一性の観点から、最終仕上圧延温度は860〜950℃、巻取温度は500〜640℃の範囲が好ましい。最終仕上圧延温度が、950℃よりも高くなると、圧延後のγ粒粒成長がより激しく起こり、それに伴う粗大γ粒により変態後のα粒の粗大化を招く場合がある。また、860℃より低い場合は、Ar3変態点以下の圧延となり、α粒の粗大化を招く場合がある。巻取温度が640℃よりも高くなると、Nb系析出物の析出量は多くなるが、析出物粒径が粗大化し、析出物のピン止め効果を減少させてα粒径が粗大化する場合がある。また、500℃より低い温度域ではNb系析出物の析出量が減るため、ピン止め効果でα相を微細化できない場合がある。
より好ましくは、最終仕上圧延温度は860〜930℃、巻取温度は500〜600℃の範囲である。
続く酸洗工程は、表層スケールが除去できればよく、特に条件は規定しない。通常行われる方法により、酸洗することができる。
次いで、冷間圧延、焼鈍、調質圧延を行う。
圧延率:85%以上
冷間圧延の圧延率は、本発明が規定する調質度を達成するために85%以上とする。85%未満では、結晶粒が粗大化して材質が軟化する。圧延率を85%以上としてひずみエネルギーを鋼板に多く蓄えることで、熱間圧延時に析出せずに固溶して残存しているNbを析出サイトとし、次工程の焼鈍時に多数のサイトに微細なNb系析出物を析出させてピン止め効果による結晶粒微細化を実現することができる。
焼鈍温度:再結晶温度以上780℃以下
焼鈍方法は、材質の均一性と高い生産性の観点から連続焼鈍法が好ましい。連続焼鈍における焼鈍温度は、再結晶温度以上であることが必須であるが、焼鈍温度が高すぎると結晶粒が粗大化し、材質が軟質化するほか、缶用鋼板などの薄物材では、炉内破断やバックリングの発生の危険が大きくなる。このため、焼鈍温度の上限は780℃とする。
調質圧延伸張率:0.5〜5%(好適条件)
調質圧延の伸張率は、鋼板の調質度により適宜決定されるが、ストレッチャーストレインの発生を抑えるために、0.5%以上の伸張率で圧延するのが好ましい。一方、伸張率5%以上を超える伸張率で圧延すると、鋼板が硬質化することによる加工性の低下と伸びの低下を引き起こす。よって、上限は5%とするのが好ましい。
以上により、本発明の缶用鋼板が得られる。
表1に示す成分組成A〜Pを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、鋼スラブを得た。得られた鋼スラブを1250℃で再加熱した後、熱間仕上圧延温度を900〜920℃の範囲で、巻取温度を580℃で熱間圧延を行った。次いで、酸洗後、84〜92.5%の圧延率で冷間圧延して、0.18mmの薄鋼板を製造した。得られた薄鋼板を、連続焼鈍炉にて焼鈍温度740〜790℃、焼鈍時間30秒で焼鈍を行い、伸張率1.5%で調質圧延を行った。なお、詳細な製造条件を表2に示す。
以上より得られた鋼板に対して、以下の方法で特性評価を行った。
ヤング率の評価は圧延方向および圧延方向から90°方向を、それぞれ長手方向として10×35mmの試験片を切り出し、横振動型の共振周波数測定装置を用いて、American Society for Testing Materialsの基準(C1259)に従い、ヤング率(GPa)を測定した。
ロックウェル硬度(HR30T)は、JIS Z2245のロックウェル硬さ試験方法に準拠して、JIS G3315に規定された位置におけるロックウェル30T硬さ(HR30T)を測定した。調質度T3が57±3、調質度T4が61±3である。
さらに、製缶後の缶体特性を評価するために、鋼板に対して、3ピース缶成形を行った。成形方法は、成形後の形状が直径:52mm、缶胴長さ:96mmとなるように、圧延方向および圧延方向から90°方向のうち、ヤング率が高い方向が缶胴部周方向となるような長方形板を丸めて端部を溶接で接合する方法とした。
外圧強度の測定方法は以下のとおりである。缶体を加圧チャンバーの内部に設置し、加圧チャンバー内部の加圧を、空気導入バルブを介してチャンバーに0.016MPa/sで加圧空気を導入することで行った。チャンバー内部の圧力の確認は、圧力ゲージ、圧力センサ、その検出信号を増幅するアンプ、検出信号の表示、データ処理などを行う信号処理装置を介して行った。限界座屈圧力、つまり外圧強度は座屈に伴う圧力変化点の圧力とした。一般的に、加熱殺菌処理による圧力変化に対して、外圧強度は1.5kgf/cm2以上を有すればよいとされている。これより、外圧強度が1.5kgf/cm2以上(0.147MPa以上)のものを一重丸(○)、外圧強度が1.5kgf/cm2(0.147MPa)未満のものをバツ(×)としてそれぞれ表示した。
以上により得られた結果を製造条と併せて表2に示す。
Figure 0006145994
Figure 0006145994
本発明例では、調質度がT3〜T4であり、圧延方向、圧延方向から90°方向のいずれにおいてヤング率が220GPa以上となっており外圧強度に優れる。
一方、比較例では、上記特性のいずれか一つ以上が劣っている。また、表2において、実験No.7、18、28は、未再結晶となったため、鋼板の特性評価および缶体特性調査は行わなかった。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.0050%以上0.0100%以下、
    Si:0.050%以下、
    Mn:0.10%以上1.00%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.010%以上0.100%以下、
    N:0.0010%以上0.0030%以下を含有し、
    さらにB:0.0005%以上0.0070%以下の1種、または、
    B:0.0005%以上0.0070%以下およびNb:0.020%以上0.120%以下の2種を含有し
    CおよびNbの含有量が下記式(1)を満足し、NおよびBの含有量が下記式(2)を満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    圧延方向および/または圧延方向から90°方向のヤング率が220GPa以上であり、
    調質度がT3〜T4であることを特徴とする缶用鋼板。
    0.4≦(Nb/C)×(12/93)≦2.5・・・(1)
    1.53≦(B/N)×(14/11)≦3.5・・・(2)
    ただし、Nb、C、B、Nは含有量(質量%)を示す。
  2. 請求項1に記載の缶用鋼板の製造方法であって、鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、85%以上の圧延率で冷間圧延を行い、引き続き、再結晶温度以上780℃以下の温度で焼鈍を行い、次いで、調質圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
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