JP6145223B2 - 有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)を含む、アセトアミノフェンに起因する肝毒性の予防及び治療のための組成物 - Google Patents

有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)を含む、アセトアミノフェンに起因する肝毒性の予防及び治療のための組成物 Download PDF

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Description

1.発明の分野
本発明は、有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療のための医薬組成物及びそれを含む健康機能食品に関する。
2.関連技術の説明
TNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)は、イノシトール五リン酸キナーゼ特異的阻害剤(非特許文献1)として知られる市販の化学物質である。TNPは5−イノシトールピロリン酸の生合成を阻害することで細胞内の5−イノシトールポリリン酸を下方制御し、それと同時に肝細胞のインスリンシグナル伝達を増大させる(非特許文献2)。骨髄由来の間葉系幹細胞をTNP処理すると、細胞の老化の進行を遅らせることができる(非特許文献3)。しかし、TNPが急性の肝毒性を予防又は治療する効果を有するかどうかについてはわかっていない。
アセトアミノフェン(AP)は、タイレノールとしてよく知られており、1950年代に米国において開発された。この薬は鎮痛剤及び解熱剤として世界中で広く使用されている薬の中でも最も使用されているものの1つである(国内でのタイレノールの1年間の売上は、およそ2500万ドルである)。タイレノールの化学名はN−アセチル−p−アミノフェノールであり、パラセタモールとも呼ばれる(非特許文献4)。アセトアミノフェンの許容量は150mg/kg/日であり、成人に対して1日最大4gを経口投与することができる。そのため、これは医師の処方なく販売することができる安全OTC(店頭)薬に分類される。しかし、アセトアミノフェンを過剰使用した場合、劇症型肝不全、肝臓の壊死、腎毒性、及び肝硬変、又は死亡さえも引き起こし得る。そのため、この薬は二面性の特徴を有すると言うことができる。
肝毒性の機序として、アセトアミノフェンは肝臓の酸化酵素を介して細胞死反応物質に変化する。一般に、このような反応物質が生成されても、問題なく解毒される(detoxified)。しかし、このような物質が過剰量の場合、内因性の抗毒物質が全て消費され、肝細胞の破壊につながる。具体的には、低濃度のアセトアミノフェンが投与されたときは、アセトアミノフェンが非毒性のグルクロン酸や硫酸に結合し、解毒された抱合体となり、その後胆汁又は血漿を介して排泄される。また、投与されたアセトアミノフェンの5%〜10%がP450(CYP)、特にCYP2E1によって代謝される(非特許文献5)。すなわち、肝臓内にてアセトアミノフェンがN−アセチル−p−ベンゾキノンイミン(NAPQI)に変化し、変換された代謝物がグルタチオンに結合するが、この時、この抱合体が毒性を示すことはない(非特許文献6)。しかし、過剰量のアセトアミノフェンが肝臓に取り込まれると、アセトアミノフェンがグルクロン酸及び硫酸に結合し、解毒能を失い、結果として反応性の高いNAPQIが蓄積されることで、細胞膜がかなりの損傷を受け、回復することができないばかりか、肝毒性又は死滅さえも生引き起こす肝細胞のアポトーシスを誘発する(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。
アセトアミノフェン介在性肝損傷モデルの動物モデルは、マウスモデル及びハムスターモデルに代表される。類似性がヒトにも認められている(非特許文献11)。アセトアミノフェンによって引き起こされる肝毒性は、アルコールをともに摂取すると増強される。1日にアルコールを少なくともグラス3杯常飲する患者に対して、肝毒性を考慮し、この薬剤を摂取する前に医師に相談しなければならないことを通知することがFDAより義務づけられている。アセトアミノフェンによって引き起こされた肝毒性を排除及び緩和するための薬剤を開発するための試験が盛んに行われている。
肝臓は解毒に関与し、かつ血液循環を制御する主要な器官である。肝臓が損傷すると、炎症反応とともに種々の疾患が生じる恐れがある。そのため、損傷から肝臓を保護することができる薬剤を開発することは非常に重要となる。
したがって、本発明者らは、肝損傷の予防及び治療に有効である物質を探し出し、同定する試みを行った。結果として、本発明者らは、5−イノシトールピロリン酸阻害剤として知られるTNPが、ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス肝細胞、及びヒト肝癌細胞株において、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞において変換されるグルタチオンの濃度を増加させ、アセトアミノフェンによって増大するストレスに対する応答の1種であるJNKリン酸化を阻害することを確認した。本発明者らは更に、動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされる毒性から肝細胞を保護する活性を有することを確認した。本発明者らはついに、TNP又はその薬学的に許容される塩が肝毒性の予防及び治療のための組成物の有効成分として効果的に使用することができることを開示することにより本発明を完了した。
J. Biol Chem. Apr 17, 2009; 284(16): 10571-10582 Cell. 2010; 143(6): 897910 Stem Cell Res Ther. 2014 Mar 26;5(2):33 Dargan PIら、Crit Care. 2002 6(2):108-10 Ray SDら、J Pharmacol Exp Ther. 1996; 279:1470-83 Hazai Eら、Biochem Biophys Res Commun. 2002; 291(4):1089-1094. Webster PAら、J Clin Pharmacol. 1996; 36:397-402 Albano Eら、Mol Pharmacology. 1985; 28:306-11 Kyle MEら、Biochem Biophys Res Commun. 1987; 149:889-94 Mahadevan SBら、Arch Dis Child. 2006: 91:598-603 Tee LBら、Toxicol Appl Pharmacol. 83(2):294-314. 1986
本発明の目的は、有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療のための医薬組成物を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明は、有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。
本発明はまた、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び改善のための健康機能食品を提供する。
本発明は更に、薬学的有効量のTNP又はその薬学的に許容される塩を、毒性肝疾患を抱える対象に投与する工程を含む、肝毒性を治療する方法を提供する。
本発明はまた、薬学的有効量のTNP又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、肝毒性を予防する方法を提供する。
本発明はまた、肝毒性の予防及び治療のための組成物へのTNP又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明はまた、肝毒性の予防及び改善のための健康機能食品へのTNP又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明はまた、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝疾患の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝疾患の予防及び改善のための健康機能食品を提供する。
本発明は更に、薬学的有効量のTNP又はその薬学的に許容される塩を、肝疾患を抱える対象に投与する工程を含む、肝疾患を治療する方法を提供する。
本発明はまた、薬学的有効量のTNP又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与する工程を含む、肝疾患を予防する方法を提供する。
本発明はまた、肝疾患の予防及び治療のための組成物へのTNP又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明はまた、肝疾患の予防及び改善のための健康機能食品へのTNP又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明は、有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療のための組成物に関する。本発明者らは、5−イノシトールピロリン酸阻害剤として知られるTNPが、ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス肝細胞、及びヒト肝癌細胞株において、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞において変換されるグルタチオンを上方制御し、アセトアミノフェンにより増大するストレスに対する応答の1種であるJNKリン酸化を阻害することを確認した。本発明者らは更に、動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされる毒性から肝細胞を保護する活性を有することを確認した。それゆえ、TNP又はその薬学的に許容される塩を、肝毒性の予防及び治療のための組成物の有効成分として効果的に使用することができる。
本発明の好ましい実施形態の応用は、添付の図面を参照することによって更に理解される。
TNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)の構造を示す図である。 ヒト胚性幹細胞から分化した肝細胞におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるアポトーシスを示す一連の写真及びグラフである。 マウス由来の肝細胞におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるアポトーシスを示す一連の写真及びグラフである。 ヒト肝癌細胞株HepG2におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるアポトーシスを示す一連の写真及びグラフである。 図4を200倍に拡大した写真を示す図である。 マウス由来の肝細胞におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による細胞内のグルタチオン濃度の変化を示すグラフである。 マウス由来の肝細胞におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるJNKリン酸化を示す図である。 ヒト肝癌細胞株におけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるJNKリン酸化を示す図である。 マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による個々の生存率を示す図である。 マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による組織病理学的分析の結果を示す図である。 マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による血液分析の結果を示す図である。 マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理によるJNKリン酸化を示す図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。
上記のTNPは、好ましくは以下の式1により表される構造を有するが、必ずしもそれに限定されない。
本発明の上記のTNPは、好ましくはアセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞においてグルタチオン(GSH)の濃度(level)を増加させ、アセトアミノフェン誘導性ストレスに対する応答を抑制するが、必ずしもそれらに限定されない。
本発明の好ましい実施形態において、本発明者らは、ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス由来の肝細胞、及びヒト肝癌細胞株HepG2におけるTNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスパターンの変化を調べた。結果として、肝細胞におけるアセトアミノフェン起因性アポトーシスがTNP処理により有意に抑制されたことを確認した(図2〜図5を参照のこと)。本発明者らはまた、TNP処理後のアセトアミノフェンに対する肝細胞の代謝活性を調べた。結果として、アセトアミノフェンによって減少した肝細胞内の変換されたグルタチオンの濃度がTNP処理により増加したことを確認した(図6を参照のこと)。マウス由来の肝細胞及びヒト肝癌細胞株HepG2において、肝細胞内のアセトアミノフェン起因性ストレスに対する応答を制御するTNPの活性を調べた。結果として、リン酸化JNKシグナルがアセトアミノフェンによって引き起こされたストレス応答により増大するが、TNP処理により反対に有意に阻害されたことが確認された(図7及び図8の参照のこと)。マウスモデルをアセトアミノフェン処理した後、TNPを投与した。結果として、個々の生存率が増加し(図9を参照のこと)、マウスから摘出された肝臓の壊死が減少し(図10を参照のこと)、肝毒性の血清指標であるAST及びALTの濃度が有意に減少し(図11を参照のこと)、リン酸化JNKが有意に阻害された(図12を参照のこと)。
結論として、本発明者らは、本発明の、5−イノシトールピロリン酸阻害剤として知られるTNPがヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス由来の肝細胞、及びヒト肝癌細胞株において、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞内の変換されるグルタチオンの濃度を増加させ、アセトアミノフェンにより増大するストレスに対する応答の1種であるJNKリン酸化を阻害することを確認した。本発明者らはまた、動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされる毒性から肝細胞を保護する活性を有することを確認した。それゆえ、TNP又はその薬学的に許容される塩を肝毒性の予防及び治療用医薬組成物として効果的に使用することができる。
本発明は、式1により表されるTNPだけでなく、その薬学的に許容される塩、及びそれらから生成することができる溶媒和物、水和物、ラセミ体又は立体異性体も含む。
本発明の式1により表されるTNPを薬学的に許容される塩の形態として使用することができ、この場合、その塩は薬学的に許容される遊離酸によって形成される酸付加塩が好ましい。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、及び亜リン酸等の無機酸又は脂肪族モノ/ジカルボン酸塩、フェニル置換型アルカン酸塩、ヒドロキシアルカン酸塩、アルカンジオエート(alkandioate)、芳香族酸、及び脂肪族/芳香族スルホン酸等の非毒性の有機酸から得ることができる。薬学的に許容される非毒性の塩として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキサン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が例示される。
本発明の酸付加塩は従来の方法により調製することができる。例えば、式1により表されるTNPを過剰量の酸水溶液に溶解させた後、塩をメタノール、エタノール、アセトン、又はアセトニトリルが例示される水混和性有機溶媒を使用した析出により調製することができる。次いで、溶媒又は過剰量の酸を混合物から蒸発させた後、混合物を乾燥させ、上記の付加塩を得るか、又は析出させた塩を吸引濾過し、上記の付加塩を得る。
薬学的に許容される金属塩は、塩基(base)を使用することにより調製することができる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、以下の方法:化合物を過剰量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の溶液に溶解させ、非溶解性化合物塩を濾過し、残りの溶液を蒸発させ、それを乾燥させることにより得られる。この時、金属塩をナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩の薬学的に適した形態において調製するのが好ましい。また、対応する銀塩を、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と適切な銀塩(例えば、硝酸銀)との反応により調製する。
本発明の組成物は、一般に使用される希釈剤又は賦形剤、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、及び界面活性剤等と混合することによって製剤化することができる。
経口投与のための固形配合物は、錠剤、ピル、粉末、顆粒、カプセル、及びトローチである。これらの固形配合物は、本発明の式1により表されるTNPと、1つ又は複数の適切な賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、ショ糖、又は乳糖、ゼラチン等と混合することにより調製される。単純な賦形剤以外の、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク等を使用することができる。経口投与のための液体配合物には、懸濁液、溶液、乳濁液、及びシロップがあり、上記の配合物は、一般に使用される単純な希釈剤、例えば、水及び流動パラフィンに加え、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、及び防腐剤を含むことができる。
非経口投与のための配合物は、滅菌水溶液、水不溶性賦形剤、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥された調製物、及び坐剤である。
水不溶性賦形剤及び懸濁液は、1種又は複数種の活性化合物に加え、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注入可能なエステル等を含むことができる。坐剤は、1種又は複数種の活性化合物に加え、ウイテプゾール、マクロゴール、tween61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチン等を含むことができる。
本発明の組成物を薬学的有効量にて投与することができる。本明細書において、「薬学的有効量」という用語は、適切な、合理的な、又は危険を伴う濃度を用いて疾患を治療するのに十分な量を示す。用量を、多くの因子、例えば、疾患の種類、疾患の重症度、薬剤の活性、薬剤に対する感受性、投与頻度及び経路、排泄(excretion)、治療期間、併用治療薬、並びに医学分野において関連があると考えられる他の因子を考慮して決定することができる。本発明の組成物を個々の治療剤として単独で投与することができ、又は他の薬剤と併用して処置することができる。本組成物を従来の薬剤と段階的に又は同時に投与することができ、単回又は複数回の投与を可能とする。上記の因子全てを考慮し、副作用を伴わない最小量を用いて最大の効果をもたらすことができる用量を決定することは重要である。このような決定は当業者であれば容易に行うことができる。
特に、本発明の化合物の有効量は、好ましくは0.1mg/kg〜100mg/kg及びより好ましくは0.5mg/kg〜10mg/kgであり、これを毎日、又は1日おき、又は1日1回〜3回投与することができる。しかし、有効量は、患者の投与経路、肥満の重症度、性別、体重、及び年齢等により増加又は低下させることができ、そのため、上記の有効量が任意の態様において本発明を限定することはない。
本発明はまた、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び改善のための健康機能食品を提供する。
上記のTNPは好ましくは式1により表される構造を有するが、必ずしもそれに限定されない。
本発明の上記のTNPは、好ましくはアセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞内のグルタチオン(GSH)の濃度を増加させ、アセトアミノフェン誘発性ストレスに対する応答を抑制するが、必ずしもそれらに限定されない。
本発明の、5−イノシトールピロリン酸阻害剤として知られるTNPが、ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス由来の肝細胞、及びヒト肝癌細胞株において、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞において変換されるグルタチオン(GSH)の濃度を増加させ、アセトアミノフェンにより増大したストレスに対する応答の1種であるJNKリン酸化を阻害することを確認した。また、動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされた毒性から肝細胞を保護する活性を有することを確認した。それゆえ、TNP又はその薬学的に許容される塩を、肝毒性の予防及び改善のための健康機能食品として効果的に使用することができる。
本発明のTNPを、肝毒性の予防及び改善に使用するのに、食品科学又は薬剤学の分野において十分に知られた種々の方法により調製することができる。例えば、本発明のTNPを、経口投与することができる任意の食品に配合することができ、この時、TNP自体を添加することができ、又は任意の細胞学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と混合することができる。好ましくは、TNPを飲料、ピル、顆粒、錠剤、又はカプセルの形態において配合することができる。
本発明の健康機能食品は更に、一般に加工食品に添加することができる任意の細胞学的に許容される成分を含むことができる。例えば、TNPが飲料として調製される場合、飲料はTNPに加えてクエン酸、異性化糖、糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、及び果汁からなる群から選択される1つ又は複数の成分を含むことができる。
本発明の健康機能食品の有効成分としてのTNPの有効量を、疾患の重症度とともに、肝毒性の予防及び改善を目的とする患者の年齢、性別、体重、及び状態によって適切に決定することができ、好ましくは0.01g/日/成人〜10.0g/日/成人である。推奨された用量の上記のTNPを含むこのような健康機能食品を摂取することにより、肝毒性を予防し、改善することができる。
本発明はまた、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝疾患の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝疾患の予防及び改善のための健康機能食品を提供する。
上記のTNPは、好ましくは以下の式1により表される構造を有するが、必ずしもそれに限定されない。
上記の本発明のTNPは好ましくは、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞内のグルタチオン(GSH)の濃度を増加させ、アセトアミノフェン誘発性ストレスに対する応答を抑制するが、必ずしもそれらに限定されない。
アセトアミノフェンによって引き起こされる上記の肝疾患は好ましくは、劇症型肝不全、肝臓の壊死、腎毒性、及び肝硬変からなる群から選択されるが、必ずしもそれらに限定されない。
本発明の、5−イノシトールピロリン酸阻害剤として知られるTNPは、ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞、マウス由来の肝細胞、及びヒト肝癌細胞株において、アセトアミノフェンによって引き起こされるアポトーシスを抑制し、肝細胞内の変換されるグルタチオン(GSH)の濃度を増加させ、アセトアミノフェンにより増大するストレスに対する応答の1種であるJNKリン酸化を阻害することを確認した。動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされる毒性から肝細胞を保護する活性を有することも確認した。それゆえ、TNP又はその薬学的に許容される塩を、肝疾患の予防及び治療のための医薬組成物並びに肝疾患の予防及び改善のための健康機能食品として効果的に使用することができる。
以下の実施例に示すように、本発明の実際に現在好ましい実施形態を説明する。
しかし、当業者であれば、本開示を考慮した上で本発明の趣旨及び範囲内の変更及び改善がなされ得ることが理解されるだろう。
実施例1.ヒト胚性幹細胞(hESC)由来の肝細胞の培養
ヒト胚性幹細胞を、内胚葉細胞を含む異なる株の細胞に分化、ヒト胚性幹細胞を、肝細胞に分化させることを調べるために、内胚葉細胞が誘導された(Cai, J.他、(2007) Hepatology 45(5):1229-1239)。
具体的には、CHA−hESC細胞株を、フィーダーフリー系の馴化培地において3日間コンフルエントな状態になるまで培養した。培養が完了すると、hESC細胞を5日間、50ng/mlのアクチビンA(Peprotech、米国)を補充したRPMI−1640(Hyclone、米国)において培養し、分化誘導させた。分化させた細胞を5日間、30ng/mlの線維芽細胞増殖因子4(Peprotech)及び20ng/mlの骨形成タンパク質2(BMP2、Peprotech)を補充した肝細胞培養培地(HCM、Lonza、米国)において培養した。次いで、細胞を更に5日間、20ng/mlの肝細胞増殖因子(HGF、Peprotech)を補充した肝細胞培養培地において更に培養し、hESCを肝細胞に分化誘導させた。分化させた肝細胞を5日間、10ng/mlのオンコスタチンM(R&D Systems、米国)及び0.1μMのデキサメタゾン(Sigma)を補充した肝細胞培養培地において培養し、肝細胞の成熟を誘発させた。そうして、成熟肝細胞を得た。
実施例2:マウス由来の肝細胞の培養
以下のようにコラゲナーゼかん流を介してマウス由来の肝細胞の培養を行った。
具体的には、10週齢〜12週齢の雄C57BL/6Jマウスにアバチンを腹腔内注射により投与して麻酔し、開腹した。24ゲージのカテーテルを門脈に挿入し、かん流液(1.42MのNaCl、0.067MのKCl、0.1MのHEPES、pH7.4、0.05MのEGTA)をかん流させた。次いで、コラゲナーゼ(Worthington、米国)を含む消化液を循環させた。肝組織を消化させた後、腸間膜を剥離し、肝細胞を分離後、ナイロンメッシュを用いて濾過した。濾液を3分間、100×gにて遠心分離した。上清を廃棄し、沈殿した肝細胞をHBSS緩衝液(ハンクス平衡塩液、WelGene)に懸濁させた後、遠心分離した。沈殿した肝細胞をパーコール液(加圧滅菌処理済パーコール(Sigma)、10×PBS、1MのHEPES、pH7.4)において10分間、2400rpmにて遠心分離した。上清を廃棄し、沈殿した肝細胞をHBSS緩衝液(ハンクス平衡塩液、WelGene)に懸濁させた後、100×gにて再度遠心分離した。沈殿した肝細胞を培養培地に懸濁させた。ゼラチンを予備被覆した培養容器に、得られた細胞懸濁液を1×10cells/mlの密度にて充填させた。ここで培養培地は10%FBS、10nMのデキサメタゾン、10nMのインスリン、及びペニシリン/ストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したDMEM(Biowest)であった。細胞を、37℃のインキュベーターにおいて、温度及び湿度の制御下にてCOを5%含有する混合ガスを供給しながら培養した。
実施例3:ヒト肝癌細胞株HepG2の培養
ヒト肝癌細胞株HepG2を、ゼラチンを予備被覆した6ウェルプレートに1×10cells/mlの密度にて分配した後、細胞接着のため24時間培養した。ここで培養培地は、10%FBS、10nMのデキサメタゾン、10nMのインスリン、及びペニシリン/ストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したDMEM(Biowest)であった。細胞を、37℃のインキュベーターにおいて、温度及び湿度の制御下にてCOを5%含有する混合ガスを供給しながら培養した。
試験例1:ヒト胚性幹細胞由来の肝細胞におけるTNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの抑制
TNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの変化を、実施例1に記載のものと同様の方法により培養したヒト胚性幹細胞由来の肝細胞において調べた。
具体的には、ヒト幹細胞からの分化19日目の肝細胞を、6ウェルプレートに各ウェル90%の濃度にて分配した。培養培地を、低グルコース(1000mg/l)を含有するDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、No.001−11、WelGene)と交換した後、2時間培養した。細胞を、アセトアミノフェンのみ(25mM)と、アセトアミノフェン(25mM)及びTNP(100μM)とをそれぞれ用いて18時間処理した。次いで、細胞を顕微鏡下において観察した。この実験を3回行い、それらの結果を元に細胞生存率を分析した。細胞生存率の分析には、細胞培養培地を、1mlのPBSを使用して2回廃棄した後、1mlのトリプシン/EDTA混合液(Invitrogen)を用いて1分間処理した。次いで、細胞をピペット操作により回収した。10mlのトリパンブルーと、回収した細胞を含有する10mlのPBSとを混合させた後、自動細胞生存分析器(automated cell viability analyzer)Countess(Invitrogen)を使用して細胞生存率を分析した。本発明における統計的処理は全て平均±SDとして表し、統計的分析は、スチューデントのt検定を用いて行った。有意性の上限をp<0.05と決定した。
結果として、図2に示されるように、アセトアミノフェンによって引き起こされた肝細胞のアポトーシスがTNP処理により有意に抑制されたことが確認された(図2)。
試験例2:マウス由来の肝細胞におけるTNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの抑制
TNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの変化を、実施例2に記載のものと同じ方法により培養したマウス由来の肝細胞において調べた。
具体的には、マウス由来の肝細胞を6ウェルプレートに各ウェル100%の濃度にて分配した。細胞生存率を、試験例1に記載のものと同じ方法により算出した。本発明における統計的処理は全て平均±SDとして表し、統計的分析は、スチューデントのt検定を用いて行われた。有意性の上限をp<0.05と決定した。
結果として、図3に示されるように、アセトアミノフェンによって引き起こされた肝細胞のアポトーシスがTNP処理により有意に抑制されたことが確認された(図3)。
試験例3:ヒト肝癌細胞株HepG2におけるTNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの抑制
TNP処理によるアセトアミノフェン起因性アポトーシスの変化を、実施例3に記載のものと同じ方法によって培養したヒト肝癌細胞株HepG2において調べた。
具体的には、ヒト肝癌細胞株HepG2を6ウェルプレートに各ウェル90%の濃度にて分配した。細胞生存率を、試験例1に記載のものと同じ方法により算出した。本発明における統計的処理は全て平均±SDとして表し、統計的分析は、スチューデントのt検定を用いて行われた。有意性の上限をp<0.05と決定した。
結果として、図4及び図5に示されるように、アセトアミノフェンによって引き起こされた肝細胞のアポトーシスがTNP処理により有意に抑制されたことが確認された(図4及び図5)。
試験例4:マウス由来の肝細胞におけるアセトアミノフェンによって引き起こされた細胞内のグルタチオン(GSH)の低下に対するTNPの阻害効果
TNP処理によるアセトアミノフェンに対する肝細胞の代謝活性を調べた。
具体的には、試験例2に記載のものと同じ方法によりアセトアミノフェン及びTNPを用いて処理したマウス由来の肝細胞における還元型グルタチオン(GSH)の濃度を測定した。還元型グルタチオンの測定は、GSH−Gloグルタチオンアッセイキット(Promega)とTristar2 LB 942プレートリーダーとを用いて行った。
結果として、図6に示されるように、TNPのみの処理により肝細胞の還元型グルタチオン濃度が増加したことが確認された。その間、アセトアミノフェンにより引き起こされた還元型グルタチオンの減少がTNP処理により肝細胞において増加に戻ったことも確認された(図6)。
試験例5:マウス由来の肝細胞におけるTNP処理による、アセトアミノフェンによって増加したJNKリン酸化の抑制
TNP処理による、肝細胞におけるアセトアミノフェンによって引き起こされたストレスに対する応答の制御を調べた。
具体的には、試験例2に記載のものと同じ方法によりアセトアミノフェン及びTNPを用いて処理したマウス由来の肝細胞を得た。タンパク質アッセイ用に細胞抽出物を調製した。次いで、SDS−PAGE及びウェスタンブロッティングを行った。細胞をプロテアーゼインヒビターカクテル(Complete Mini、Roche、ドイツ)を含有する10mlのSDS緩衝液(50mMのTris−HCl、1%のIGEPAL CA−630、0.25%のデオキシコール酸、150mMのNaCl、1mMのエチレン−ジアミン四酢酸、1mMのNaF、及び0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、pH7.4)に溶解させた。細胞溶解物を20分間、氷中に置いた後、4℃、13000rpmにて10分間遠心分離した。遠心分離が完了すると、上清中のタンパク質を定量化した(Bio-Rad Laboratories、米国)。50μgのタンパク質をSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)用に充填した。電気泳動を行ったタンパク質を、エレクトロブロッティングを用いてイモビロン−Pトランスファーメンブラン(Millipore Corporate、米国)に移した。次いで、メンブランを0.1%のTween20及び10%の粉乳を含有するTBS(トリス緩衝生理食塩水)に浸した後、ブロッキングを1時間行った。リン酸化JNK(Cell Signaling)及び全JNK(Cell Signaling)抗体を添加した後、一晩反応させた。メンブランを0.1%のTween20を含有するTBSを用いて各回20分間にて3回洗浄した。HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)抱合型二次抗体を添加した後、1時間反応させた。次いで、メンブランを0.1%のTween20を含有するTBSを用いて各回20分間にて3回洗浄した。タンパク質のバンドを、ウェスタンブロッティングルミノール試薬(Santa Cruz Biotechnology、米国)を使用することによって視覚化した。Image Jソフトウェア(1.37バージョン、国立衛生研究所(NIH)、米国)を使用することによって活性を分析した。
結果として、図7に示されるように、アセトアミノフェン起因性ストレス応答により増加したリン酸化JNKシグナルは、TNP処理により有意に抑制されたことが確認された(図7)。
試験例6:ヒト肝癌細胞株HepG2におけるTNP処理による、アセトアミノフェンによって増加したJNKリン酸化の抑制
TNP処理による、肝細胞内のアセトアミノフェンによって引き起こされたストレスに対する応答の制御を調べた。
具体的には、試験例3に記載のものと同じ方法によりアセトアミノフェン及びTNPを用いて処理したヒト肝癌細胞株HepG2を得た。タンパク質アッセイ用に細胞抽出物を調製した。次いで、SDS−PAGE及びウェスタンブロッティングは、試験例5に記載のものと同じ方法により行った。
結果として、図8に示されるように、アセトアミノフェン起因性ストレス応答により増加したリン酸化JNKはTNP処理により有意に抑制されたことが確認された(図8)。
試験例7:マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による個々の生存率の分析
本発明者らは、動物モデルにおいて、TNPがアセトアミノフェンによって引き起こされた毒性から肝細胞を保護する活性を有するかどうかを調べた。
具体的には、8週齢〜10週齢の雄C57BL/6Jマウスに、水に溶解させた500mg/kgのアセトアミノフェン(Sigma)を経口投与した。次いで、マウスにオリーブ油(Sigma)に溶解させた10mg/kgのTNP(Calbiocham)を腹腔内注射により投与した後、個々の生存率を調べた。統計的分析はカプラン−マイヤー生存分析によって行い、有意性の上限をp<0.05と決定した。
結果として、図9に示されるように、TNP処理は、上記で調べた個々の生存率によって証明されたように、アセトアミノフェン起因性肝毒性からマウスを保護する効果を有することが確認された(図9)。
試験例8:マウスモデルにおけるアセトアミノフェン及びTNPの処理による肝毒性の分析
実施例7の動物モデルにおけるアセトアミノフェン起因性肝毒性に対するTNPの予防効果を調べるため、組織、血液、及びJNKリン酸化を分析した。
具体的には、アセトアミノフェン及びTNPを、実施例7に記載のものと同じ方法により雄マウスに注射した。6時間後、肝臓をマウスから摘出した後、組織病理学的分析、血液分析(AST及びALT)、及びストレスシグナル伝達活性(JNK)分析を行った。血液分析用に、血液サンプルをマウスの眼窩から得た。血液サンプルを13000rpmにて10分間遠心分離し、血清を得た。上記で得られた血清100μlを用いてAST及びALT分析を行った(Idexx VetTest 8008化学分析器)。ストレスシグナル伝達活性を調べるために、上記で取り出した肝臓から摘出した肝組織をRIPA培地(1Mのトリス−Cl(pH7.4)、1MのNaCl、0.5MのEDTA、NP−40、10%のデオキシコール酸ナトリウム、10%のSDS)に充填した後、ホモジナイザーを用いて溶解させた。遠心分離後、上清を回収した後、SDS−PAGE及びウェスタンブロッティングを行った。リン酸化JNK及び総JNKを実施例5に記載のものと同じ方法によりウェスタンブロッティングによって定量化した。
アセトアミノフェンを用いて処理した肝組織の組織病理学的分析の結果として、図10に示されるように、TNPとアセトアミノフェンとを用いて処理したマウス肝組織において、少量のみの壊死が観察された(図10)。図11に示されるように、肝毒性血清指数である、AST及びALTの濃度は、TNPとアセトアミノフェンとを用いて処理したマウスにおいて有意に低下した(図11)。図12に示されるように、アセトアミノフェン起因性ストレス応答の増大がリン酸化JNKシグナルの増加を生じたが、リン酸化JNKシグナルの増大がTNP処理により有意に抑制された(図12)。
それゆえ、動物モデルを使用した肝組織分析によりTNPにアセトアミノフェンによって引き起こされた肝毒性からの肝臓保護効果があることが確認された。
当業者であれば、上記の明細書に開示された概念及び具体的な実施形態が、本発明と同じ目的で実施される他の実施形態を改変又は設計する基礎として容易に利用し得ることが理解されるだろう。当業者であれば、このような同等の実施形態が添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱することがないことも理解されるだろう。

Claims (6)

  1. 有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び治療用医薬組成物。
  2. 前記TNPが以下の式1:
    で表される化合物である、請求項1に記載の肝毒性の予防及び治療用医薬組成物。
  3. 前記TNPがアセトアミノフェン(AP)によって引き起こされるアポトーシスを特徴的に抑制する、請求項1に記載の肝毒性の予防及び治療用医薬組成物。
  4. 前記TNPが肝細胞内のグルタチオン(GSH)の濃度を特徴的に増加させる、請求項1に記載の肝毒性の予防及び治療用医薬組成物。
  5. 前記TNPがアセトアミノフェンにより増大したストレス応答を特徴的に抑制する、請求項1に記載の肝毒性の予防及び治療用医薬組成物。
  6. 有効成分としてTNP又はその薬学的に許容される塩を含む、肝毒性の予防及び改善用健康機能食品。
JP2016539060A 2015-02-13 2015-07-03 有効成分としてTNP(N2−(m−トリフルオロベンジル),N6−(p−ニトロベンジル)プリン)を含む、アセトアミノフェンに起因する肝毒性の予防及び治療のための組成物 Active JP6145223B2 (ja)

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