JP2009078977A - 心筋の小胞体ストレス抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小胞体ストレスを抑制して心筋の細胞死及び心機能の低下を効果的に抑制することにより、小胞体ストレスに誘導される心不全を予防及び/又は治療することができる心筋の小胞体ストレス抑制剤を提供する。
【解決手段】 有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤。
【選択図】なし
【解決手段】 有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、小胞体(以下、ERともいう)ストレスによって引き起こされる心不全の予防及び/又は治療に有効な、心筋の小胞体ストレス抑制剤に関する。
近年、抗ガン剤の副作用やその他の原因による心不全による突然死が増加し、生活の質(QOL)の低下が問題となっている。特に、抗ガン剤の副作用によって心不全が引き起こされるような場合には、抗ガン剤の効果と副作用とのバランスを考えて、副作用を抑えるために標準的投与量よりも低量を投与することもあり、抗ガン作用を十分に発揮させることができなくなる。従って、心不全を予防及び/又は治療することができる薬剤が望まれているが、心不全を効果的に抑制することができる薬剤は未だ開発されていない。
例えば、抗ガン剤のアドリアマイシン(一般名:塩酸ドキソルビシン;以下、単にDoxともいう)は、心不全を誘導する副作用を示すことが知られている。アドリアマイシンの心不全誘導メカニズムは明らかではないが、要因の1つとして酸化ストレスが示唆されており、アドリアマイシンと共に抗酸化剤であるプロブコール(probucol)を用いると、酸化ストレスを減少させることによって心不全が抑制されたことが報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
フェニル酪酸やフェニル酪酸ナトリウム等のHDAC阻害剤については、放射線や抗ガン剤等の化学療法に誘導される損傷を減少させる作用を示したことも開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
ガン治療薬であるメシル酸イマチニブ(imatinib mesylate)(Gleevec(グリベック))も心毒性を示すことが知られている。培養心筋細胞をメシル酸イマチニブで処理すると、小胞体ストレス応答の活性化、ミトコンドリア膜のポテンシャルの崩壊等が起こり、細胞死が引き起こされることが報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。小胞体ストレスとは、小胞体にアンフォールド(unfold)した異常タンパク質が蓄積する現象である。小胞体ストレスが継続すると、細胞死(アポトーシス)に至ることが知られており、心筋細胞や神経細胞の細胞死は、心不全や神経変性疾患、脳卒中等の原因となる。例えば、横行大動脈狭窄(TAC)によって小胞体ストレスを誘導した実験によって、小胞体ストレスによって培養心筋細胞で細胞死が誘導されることが報告されており、このことから、継続する小胞体ストレスが、心臓肥大から心不全への進行過程に寄与していることが示唆されている(例えば、非特許文献3)。
4−フェニル酪酸ナトリウム(PBA)は、前述したHDAC阻害剤としての作用と共に、小胞体シャペロンとして機能することにより小胞体ストレスを軽減する作用を有することが知られている。例えば、PBAが、in vitroでシャペロンとして作用すること及びヒトの神経芽細胞腫SK−N−MC細胞において、小胞体ストレスを軽減させたことが開示されている(例えば、非特許文献4を参照)。小胞体ストレス抑制作用については、4−フェニル酢酸をII型糖尿病のモデルマウスに経口投与すると、肝細胞や脂肪細胞等の小胞体ストレスが軽減し、これによって高血糖の正常化、全身のインスリン感受性の回復、脂肪肝疾患の回復及び肝臓におけるインスリン作用の増加が起こり、グルコースホメオスタシスが回復したことが報告されている(例えば、非特許文献5及び非特許文献6を参照)。
PBAは上述したような作用を有することから、小胞体ストレスによって引き起こされる疾患の予防薬や治療薬に適用することができる可能性が示唆される。例えば、PBAの小胞体ストレス抑制作用は、小胞体ストレスによる心不全の予防や治療に有効であると考えられる。しかしながら、PBAを有効成分とする小胞体ストレス抑制剤は未だ開発されておらず、心筋細胞の小胞体ストレス抑制に有効なPBAの用量の検討が必要とされる。小胞体ストレスを抑制するPBAの用量については、上述した非特許文献6で、マウスのFao肝細胞や脂肪組織において小胞体ストレスを抑制するPBAの用量が検討されている。しかしながら、心不全の治療や予防に有効な用量については一切検討されていない。
特開2005−281150号公報
Molecular and Cellular Biochemistry, 2000, 207, 77-85
Nature Medicine vol. 12 (8), 2006, 908-916
Circulation, 2004 110:705-712
Journal of Neurochemistry, 2006, 97, 1259-1268
Science vol. 313, 25 August, 2006, 1137-1140
Science vol. 313, 25 August, 2006, 1137 (Supporting Online Material : www.sciencemag.org/cgi/content/full/313/5790/1137/DC1)
本発明は、小胞体ストレスを抑制して心筋の細胞死及び心機能の低下を効果的に抑制することにより、小胞体ストレスに誘導される心不全を予防及び/又は治療することができる心筋の小胞体ストレス抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、心不全を効果的に抑制することができる薬剤を開発するため、4−フェニル酪酸ナトリウム(PBA)が、小胞体ストレス抑制作用を有することに注目して鋭意研究した。その結果、PBAは、その投与量や投与濃度によって心筋細胞において異なる作用を示すことを見出した。驚くべきことに、PBAという同じ物質であっても、マウスを用いたin vivoの系において(1)1日の体重あたりの投与量(腹腔内投与)が、4−フェニル酪酸ナトリウムとして約50〜150mg/kgであると、ICRマウスの心筋細胞において小胞体ストレス抑制作用が発揮されて心機能低下が抑制されること、(2)余りに高用量、例えば、1日の体重あたりの投与量(腹腔内投与)が、4−フェニル酪酸ナトリウムとして約500mg/kgであると、ICRマウス心筋細胞において小胞体ストレス抑制作用は発現しないことを見出した。更に、in vitroの系において(3)4−フェニル酪酸ナトリウムを約0.5〜2mmol/Lの低濃度でラット心筋細胞に投与すると、心筋細胞においてヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用は発現せず、小胞体ストレス抑制作用のみが発揮されること、(4)4−フェニル酪酸ナトリウムを余りに高濃度、例えば、5mmol/Lでラット心筋細胞に投与すると、心筋細胞において逆にHDAC阻害作用が発現し、小胞体ストレス抑制作用は発現しないことを見出した。PBAがHDAC阻害剤としての作用及び小胞体ストレス抑制作用の2つの作用を有することは知られていたが、投与濃度又は投与量により心筋細胞において異なる作用が発現することは知られておらず、全く新しい知見である。また、1日の体重あたりの投与量をPBAとして50〜150mg/kgの量にてICRマウスに非経口(腹腔内)投与するか、又は、低濃度のPBAをラットの心筋細胞に投与することにより、抗がん剤等による心筋細胞の小胞体ストレスを抑制することができ、これによって心機能の低下及び心筋の細胞死を効果的に抑制して心不全を効果的に予防及び/又は治療することができることを見出した。更に、これらの動物実験によって得られた結果から、哺乳類、特にヒトの心筋において小胞体ストレスを抑制するのに効果的なPBAの投与量を外挿することができるため、特定量のPBAを経口又は非経口投与することによってヒトの心不全を効果的に予防及び/又は治療することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(1)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤、
(2)注射剤として用いられる上記(1)に記載の小胞体ストレス抑制剤、
(3)静脈内投与により投与される上記(1)又は(2)に記載の小胞体ストレス抑制剤、及び、
(4)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤、
に関する。
(1)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤、
(2)注射剤として用いられる上記(1)に記載の小胞体ストレス抑制剤、
(3)静脈内投与により投与される上記(1)又は(2)に記載の小胞体ストレス抑制剤、及び、
(4)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤、
に関する。
本発明はまた、
(5)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用、
(6)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用、
(7)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用、及び、
(8)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用、
に関する。
(5)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用、
(6)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用、
(7)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用、及び、
(8)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用、
に関する。
本発明はまた、
(9)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法、及び、
(10)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法、
に関する。
(9)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法、及び、
(10)有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法、
に関する。
本発明の小胞体ストレス抑制剤は、抗ガン剤の副作用等によって誘導される心筋の小胞体ストレスを効果的に抑制することができるため、小胞体ストレスが原因となる心筋の細胞死及び心機能の低下を抑制することができ、心不全の予防及び/又は治療に有用なものである。
本明細書中において、「小胞体ストレス」とは、膜タンパク質又は分泌タンパク質の翻訳の場である小胞体における機能異常により、異常構造を持ったタンパク質等が蓄積することにより起こるストレスをいう。心筋細胞において小胞体ストレスが継続すると、心筋細胞は細胞死(アポトーシス)に至り、心不全を引き起こす原因となる。「小胞体ストレス抑制作用」とは、上述した小胞体ストレスを低減又は解消する作用をいう。本発明の小胞体ストレス抑制剤は、(1)1日に体重あたり4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される4−フェニル酪酸ナトリウム若しくは(2)1日に体重あたり約15〜50mg/kgの量にて経口投与される4−フェニル酪酸ナトリウムが心筋細胞において小胞体ストレスを効果的に抑制し(in vivo)、又は、(3)有効成分として全体に対して約0.5〜2mmol含有される4−フェニル酪酸ナトリウムが心筋細胞において小胞体ストレスを効果的に抑制し(in vitro)、その結果小胞体ストレスにより引き起こされる心筋の細胞死を抑制すると共に、心筋の機能低下を抑制することができるものである。従って、本発明の小胞体ストレス抑制剤を用いると、抗ガン剤の副作用等による小胞体ストレスによって引き起こされる心不全を効果的に予防及び/又は治療することができる。
なお、上記(1)及び(2)のPBAの投与量は、ICRマウスを用いたIn vivo実験において、効果的にICRマウスの心筋の小胞体ストレスを抑制することができたPBAの投与量(腹腔内投与)50〜150mg/kg・dayから、「“動物種差と外挿” 監修 松岡 理/小林定喜、ソフトサイエンス社、1983年」及び「Edward J. Calabrese著 “Principles of Animal Extrapolation”」に従ってヒトへのPBAの非経口又は経口投与量を外挿した値である。
上記(3)のin vitroにおいて心筋の小胞体ストレス抑制に効果的なPBA濃度(0.5〜2mmol/L)は、ラット心筋細胞を用いたin vitro実験において、効果的に小胞体ストレスを抑制することができたPBA濃度である。
なお、上記(1)及び(2)のPBAの投与量は、ICRマウスを用いたIn vivo実験において、効果的にICRマウスの心筋の小胞体ストレスを抑制することができたPBAの投与量(腹腔内投与)50〜150mg/kg・dayから、「“動物種差と外挿” 監修 松岡 理/小林定喜、ソフトサイエンス社、1983年」及び「Edward J. Calabrese著 “Principles of Animal Extrapolation”」に従ってヒトへのPBAの非経口又は経口投与量を外挿した値である。
上記(3)のin vitroにおいて心筋の小胞体ストレス抑制に効果的なPBA濃度(0.5〜2mmol/L)は、ラット心筋細胞を用いたin vitro実験において、効果的に小胞体ストレスを抑制することができたPBA濃度である。
本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤に用いられる4−フェニル酪酸ナトリウムは、尿酸サイクル異常症の治療薬として臨床応用されている化合物である。本発明で用いられる4−フェニル酪酸ナトリウムとしては、医薬上使用できる程度に精製されたものであればよく、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、Biomol社のもの等が挙げられる。
本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤は、有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有するものであり、(1)1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される、又は、(2)1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与されるものである。また、in vitroの系では、(3)4−フェニル酪酸ナトリウムを全体に対して0.5〜2mmol/L含有する小胞体ストレス抑制剤を心筋細胞に用いると、効果的に心筋の小胞体ストレスを抑制することができる。
上記(1)及び(2)の心筋の小胞体ストレス抑制剤において、該4−フェニル酪酸ナトリウムの1日の体重あたりの投与量が余りに少ないと、心筋細胞において小胞体ストレスを抑制する効果が十分発現しない場合がある。逆に4−フェニル酪酸ナトリウムの1日の体重あたりの投与量が余りに多いと、心筋細胞において4−フェニル酪酸ナトリウムのHDAC阻害作用は発現するが、小胞体ストレス抑制作用が発現しない。本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤は、(1)の非経口投与される場合は、1日の体重あたりの投与量が4−フェニル酪酸ナトリウムとして約5〜10mg/kgであることが好ましく、約7〜9mg/kgであることがより好ましい。上記(2)の経口投与される場合は、1日の体重あたりの投与量が4−フェニル酪酸ナトリウムとして約20〜40mg/kgであることが好ましく、約25〜35mg/kgであることがより好ましい。
上記(3)の心筋の小胞体ストレス抑制剤において、4−フェニル酪酸ナトリウム濃度が余りに低いと、心筋細胞において小胞体ストレスを抑制する効果が十分発現しない場合がある。逆に4−フェニル酪酸ナトリウム濃度が余りに高いと、4−フェニル酪酸ナトリウムのHDAC阻害作用は発現するが、小胞体ストレス抑制作用が発現しない。心筋の小胞体ストレス抑制剤における4−フェニル酪酸ナトリウム濃度は、好ましくは全体に対して約0.5〜1.5mmol/Lであり、より好ましくは、約0.5〜1mmol/Lである。
投与は、上記投与量を1日1回〜数回に分けて投与するのが好ましく、より好ましくは1日1回〜約4回、さらに好ましくは1日1回〜約2回に分けて投与する。
本発明の心筋のストレス抑制剤を非経口投与する場合の投与方法としては、例えば、静脈内投与、皮下投与等が挙げられるが、静脈内投与が好ましい。
本発明の心筋のストレス抑制剤を非経口投与する場合の投与方法としては、例えば、静脈内投与、皮下投与等が挙げられるが、静脈内投与が好ましい。
本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤は、種々の製剤形態、例えば、固形製剤、液状製剤等をとりうる。例えば、経口投与のための内服用固形剤もしくは内服用液剤、又は非経口投与のための注射剤等とすることができる。非経口投与する場合の好ましい剤型は、液状製剤であり、より好ましくは、注射剤である。例えば、4−フェニル酪酸ナトリウムのみ又は4−フェニル酪酸ナトリウムと慣用の担体と共に注射剤とされることが好ましい。
経口投与のための内服用固形剤としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。
内服用固形剤においては、4−フェニル酪酸ナトリウムはそのままか、添加剤と混合又は造粒(例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法、転動攪拌流動層造粒法等)され、常法に従って製造される。例えば、カプセル剤であれば、カプセル充填等によって、錠剤であれば、打錠剤等によって製造することができる。添加剤は、1種又は2種以上を適宜配合してもよい。添加剤としては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の結合剤;トウモロコシデンプン等の分散剤;繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;グルタミン酸、アスパラギン酸等の溶解補助剤;安定剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等の水溶性高分子;白糖、粉糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム等の甘味剤等が挙げられる。
内服用固形剤においては、4−フェニル酪酸ナトリウムはそのままか、添加剤と混合又は造粒(例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法、転動攪拌流動層造粒法等)され、常法に従って製造される。例えば、カプセル剤であれば、カプセル充填等によって、錠剤であれば、打錠剤等によって製造することができる。添加剤は、1種又は2種以上を適宜配合してもよい。添加剤としては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン等の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の結合剤;トウモロコシデンプン等の分散剤;繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;グルタミン酸、アスパラギン酸等の溶解補助剤;安定剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等の水溶性高分子;白糖、粉糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム等の甘味剤等が挙げられる。
顆粒剤又は錠剤は、必要によりコーティング剤等で被覆されていてもよいし、また該コーティングは2以上の層であってもよい。コーティング剤としては、例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。カプセル剤として製造する場合には、上記賦形剤を適宜選択し、プランルカスト水和物と均等に混和又は粒状、もしくは粒状としたものに適当なコーティング剤で剤皮を施したものをカプセルに充填するか、適当なカプセル基剤(ゼラチン等)にグリセリン又はソルビトール等を加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形してもよい。これらカプセル基剤には必要に応じて、着色剤又は保存剤(二酸化イオウ;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラベン類)等を加えることができる。カプセル剤には、ハードカプセル又はソフトカプセルが含まれる。
また、錠剤又はカプセル剤は、一回当たり、1〜数個投与されるのが好ましく、1〜約2個投与されるのがより好ましい。このため、錠剤又はカプセル剤には、4−フェニル酪酸ナトリウムが、1錠又は1カプセル当たり、約2〜50mg、好ましくは約5〜30mg、より好ましくは、約7〜25mg含まれるよう製造されるのが好ましい。
また、錠剤又はカプセル剤は、一回当たり、1〜数個投与されるのが好ましく、1〜約2個投与されるのがより好ましい。このため、錠剤又はカプセル剤には、4−フェニル酪酸ナトリウムが、1錠又は1カプセル当たり、約2〜50mg、好ましくは約5〜30mg、より好ましくは、約7〜25mg含まれるよう製造されるのが好ましい。
経口投与のための内服用液剤としては、水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等の用時溶解型製剤、エリキシル剤等が挙げられる。このような内服用液剤においては、4−フェニル酪酸ナトリウムは、内服用液剤で一般的に用いられる希釈剤に溶解、懸濁又は乳化される。希釈剤としては、例えば、精製水、エタノール又はそれらの混液等が挙げられる。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤又は緩衝剤等を含有していてもよい。また、ドライシロップ剤は、例えばプランルカスト水和物と、例えば、白糖、粉糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖又は乳糖等とを混合等して製造することができる。また、ドライシロップ剤は、常法に従って顆粒としてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、水性注射剤又は油性注射剤のいずれでもよい。水性注射剤とする場合、公知の方法に従って、例えば、水性溶媒(注射用水、精製水等)に、医薬上許容される添加剤を適宜添加した溶液に、4−フェニル酪酸ナトリウムを溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。医薬上許容される添加剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等の等張化剤;リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等の緩衝剤;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等の保存剤;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の増粘剤;亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等の安定化剤;塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等のpH調整剤等が挙げられる。また注射剤には、適当な溶解補助剤、例えば、エタノール等のアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルコール;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50等の非イオン界面活性剤等をさらに配合してもよい。油性注射剤とする場合、油性溶媒としては、例えば、ゴマ油又は大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル又はベンジルアルコール等を配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプル又はバイアル等に充填される。注射剤等の液状製剤は、凍結保存又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。上記(1)の小胞体ストレス抑制剤を注射剤とする場合の4−フェニル酪酸ナトリウムの濃度としては、例えば、約10〜50mg/mLとすることが好ましく、約10〜30mg/mLとすることがより好ましい。このような濃度の注射液を1日に体重あたり、約0.2〜1mL投与するのが好ましい。
本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤は、ヒトの他、ヒト以外の哺乳動物にも投与することができる。ヒト以外の動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ブタ、牛等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤剤は、適宜他の医薬と併せて用いることができる。他の医薬としては、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されない。例えば、本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤を、抗ガン剤等の心不全を引き起こす副作用を有する他の薬剤と併用することによって、抗ガン剤等による心不全を効果的に予防及び/又は治療することができる。本発明の心筋の小胞体ストレス抑制剤と、心不全を引き起こす副作用を有する抗癌剤等とを併用することは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用;有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤の製造のための使用;有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用;及び、有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与される組成物の、心筋の小胞体ストレス抑制剤としての使用も、本発明の1つである。有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する組成物やその好ましい形態としては、上述した心筋の小胞体ストレス抑制剤と同様である。
有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法;及び、有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬を、ヒトに1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与して、心筋の小胞体ストレスを抑制する方法も、本発明の1つである。4−フェニル酪酸ナトリウムを含有する医薬やその好ましい態様としては、上述した心筋の小胞体ストレス抑制剤と同様である。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(I)材料
塩酸ドキソルビシン(Dox)及び4−フェニル酪酸ナトリウム(PBA)は、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(St. Luis, MO)及びBiomol社(BIOMOL International L.P.)(Plymouth Meetin PA)から購入した。CHOP、XBP1、ATF6、リン酸PERK及びアクチンに対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology社(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)(Santa Cruz, CA)から入手した。リン酸SAPK/JNK、SAPK/JNK及びリン酸eIF2αに対する抗体は、Cell Signaling Technology社(Cell Signaling Technology, Inc.)( Danvers, MA)から入手した。カスパーゼ12に対する抗体は、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(St. Luis, MO)から入手し、KDELは、Stressgene社(Assay Designs, Inc.)(Ann Arbor, MI)から入手した。GAPDH抗体はChemicon社(CHEMICON International, Inc.)(Temecula, CA)から購入した。
塩酸ドキソルビシン(Dox)及び4−フェニル酪酸ナトリウム(PBA)は、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(St. Luis, MO)及びBiomol社(BIOMOL International L.P.)(Plymouth Meetin PA)から購入した。CHOP、XBP1、ATF6、リン酸PERK及びアクチンに対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology社(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)(Santa Cruz, CA)から入手した。リン酸SAPK/JNK、SAPK/JNK及びリン酸eIF2αに対する抗体は、Cell Signaling Technology社(Cell Signaling Technology, Inc.)( Danvers, MA)から入手した。カスパーゼ12に対する抗体は、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(St. Luis, MO)から入手し、KDELは、Stressgene社(Assay Designs, Inc.)(Ann Arbor, MI)から入手した。GAPDH抗体はChemicon社(CHEMICON International, Inc.)(Temecula, CA)から購入した。
(II)実験方法
(1)新生仔ラットの心筋細胞の調製
心筋細胞の初代培養は、新生仔ラットの心臓を用いて実験を行った。取り出した心臓をピンセットで細かく切断し、4℃にてトリプシン(trypsin)に一晩浸した。次の日に、トリプシンと同量の培養培地を添加し、37℃にて5分インキュベートした後、トリプシンと培地を除いた。次に、10mLのコラーゲナーゼ(collagenase)(1mg/mL)を加え、残留したトリプシンを洗浄し、心臓組織をコラーゲナーゼによって、15分3回スタラーで回しながら、心筋細胞を分離させた。分離された心筋細胞を5000rpm、5分遠心した後、細胞ペレットを培養培地に再度懸濁し、P10のシャーレに蒔いた。インキュベーター内で70分細胞を静止し、混在する繊維芽細胞(fibroblast)を付着させた。ピペットで培養シャーレを軽く洗い、上澄に浮遊している心筋細胞を回収し、実験に用いた。全ての手順は、動物ケアに関する大阪大学医学部の指針及び“Position of the American Heart Association on Research Animal Use”に従って行った。
(1)新生仔ラットの心筋細胞の調製
心筋細胞の初代培養は、新生仔ラットの心臓を用いて実験を行った。取り出した心臓をピンセットで細かく切断し、4℃にてトリプシン(trypsin)に一晩浸した。次の日に、トリプシンと同量の培養培地を添加し、37℃にて5分インキュベートした後、トリプシンと培地を除いた。次に、10mLのコラーゲナーゼ(collagenase)(1mg/mL)を加え、残留したトリプシンを洗浄し、心臓組織をコラーゲナーゼによって、15分3回スタラーで回しながら、心筋細胞を分離させた。分離された心筋細胞を5000rpm、5分遠心した後、細胞ペレットを培養培地に再度懸濁し、P10のシャーレに蒔いた。インキュベーター内で70分細胞を静止し、混在する繊維芽細胞(fibroblast)を付着させた。ピペットで培養シャーレを軽く洗い、上澄に浮遊している心筋細胞を回収し、実験に用いた。全ての手順は、動物ケアに関する大阪大学医学部の指針及び“Position of the American Heart Association on Research Animal Use”に従って行った。
(2)PERK及びeIf2αのリン酸化の検出
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、全タンパク質を回収し、PERK及びeIf2αのリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法にて目的タンパク質のリン酸化を検討した。
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、全タンパク質を回収し、PERK及びeIf2αのリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法にて目的タンパク質のリン酸化を検討した。
(3)ATF6の切断及びXBP1のスプライシング
心筋細胞に各濃度のDoxを添加し、6時間に後細胞質及び核タンパク質を回収し、特異抗体を用いたウェスタンブロット法にて細胞質及び核内に存在するATF6とXBP1を検討した
心筋細胞に各濃度のDoxを添加し、6時間に後細胞質及び核タンパク質を回収し、特異抗体を用いたウェスタンブロット法にて細胞質及び核内に存在するATF6とXBP1を検討した
(4)RNAレベルでのXBP1スプライシング
ラットの心筋細胞をDoxで6時間処理した後、XBP1スプライシングをリバーストランスクリプショナル(reverse-transcriptional)PCR法を用いて評価した。スプライスサイトにかかるプライマーは、以下のようにデザインした。
フォワードプライマー:ACGAGAGAAAACTCATGG (配列番号1)
リバースプライマー:ACAGGGTCCAACTTGTCC (配列番号2)
PCR生成物を2%アガロースゲル上で分離させ、UV照射によって観察した。
ラットの心筋細胞をDoxで6時間処理した後、XBP1スプライシングをリバーストランスクリプショナル(reverse-transcriptional)PCR法を用いて評価した。スプライスサイトにかかるプライマーは、以下のようにデザインした。
フォワードプライマー:ACGAGAGAAAACTCATGG (配列番号1)
リバースプライマー:ACAGGGTCCAACTTGTCC (配列番号2)
PCR生成物を2%アガロースゲル上で分離させ、UV照射によって観察した。
(5)CHOPの誘導
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、CHOP抗体を用いたウェスタンブロット法にてCHOPの発現を検討した。
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、CHOP抗体を用いたウェスタンブロット法にてCHOPの発現を検討した。
(6)カスパーゼ12の活性化
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、カスパーゼ12(Caspase-12)抗体を用いたウェスタンブロット法にてカスパーゼ12の切断を検討した。
心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、カスパーゼ12(Caspase-12)抗体を用いたウェスタンブロット法にてカスパーゼ12の切断を検討した。
(7)JNKのリン酸化
PBA又はBSに一晩プレインキュベートした心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、JNKのリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法にてJNKのリン酸化を検討した。
PBA又はBSに一晩プレインキュベートした心筋細胞に各濃度のDox添加6時間後、又はDox(1.0μmol/L)添加1、3、6、12、24時間後、全タンパク質を回収し、JNKのリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法にてJNKのリン酸化を検討した。
(8)細胞死の測定
PBA又は酪酸ナトリウム(以下、BSともいう)に一晩プレインキュベートした心筋細胞にDox(1.0μmol/L)、Dox及びPBA(0.5又は5.0mmol/L)、又は、BS(0.5又は5.0mmol/L)を添加24時間後、生存した細胞をMTTアッセイにて検討した。
PBA又は酪酸ナトリウム(以下、BSともいう)に一晩プレインキュベートした心筋細胞にDox(1.0μmol/L)、Dox及びPBA(0.5又は5.0mmol/L)、又は、BS(0.5又は5.0mmol/L)を添加24時間後、生存した細胞をMTTアッセイにて検討した。
(9)免疫ブロッティング
心筋細胞を、プロテアーゼ阻害剤混合物(ナカライテスク)を含むバッファー(0.15mmol/L、NaCl 0.05mmol/L Tris HCl、pH7.2、1% TritonX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS)に溶解した。電気泳動、免疫ブロッティング及び検出は、Tsukamoto O. et al., Biochem Biophys Res Commun 2006 24: 1125-1133に記載された方法に従って行った。具体的には細胞可溶化物のタンパク質濃度を測定し、同じタンパク質量を含有するようにサンプルを調製した。電気泳動にはSDS−PAGEゲルを用い、Bio-Rad mini protean 3 cellにて、ブロッティングにはBio-Rad semidry transfer cellを用いて行った。
心筋細胞を、プロテアーゼ阻害剤混合物(ナカライテスク)を含むバッファー(0.15mmol/L、NaCl 0.05mmol/L Tris HCl、pH7.2、1% TritonX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS)に溶解した。電気泳動、免疫ブロッティング及び検出は、Tsukamoto O. et al., Biochem Biophys Res Commun 2006 24: 1125-1133に記載された方法に従って行った。具体的には細胞可溶化物のタンパク質濃度を測定し、同じタンパク質量を含有するようにサンプルを調製した。電気泳動にはSDS−PAGEゲルを用い、Bio-Rad mini protean 3 cellにて、ブロッティングにはBio-Rad semidry transfer cellを用いて行った。
(10)Dox投与マウスモデルの作製
雄ICRマウス(10週齢、体重35〜40g)をランダムに4群に分けた。コントロール群(n=6)には、試験期間中毎日10mL/kgの生理食塩水を与えた。Dox投与の1日前(−1日)、Dox(n=10)群には生理食塩水を、Dox+PBA(n=12)群にはPBA(100mg/kg)を、Dox+BS(n=7)群にはBS(100mg/kg)を、それぞれ腹腔内(IP)に投与した。次いで、これらの3グループにDoxを1ドーズ投与した(15mg/kg)(0日目)。次の6日間(1日目から6日目)、Dox群には生理食塩水を10mL/kg、Dox+PBA群にはPBAを100mg/kg、Dox+BS群にはBSを100mg/kg、1日1回腹腔内投与した。PBAとしては、生理食塩水に溶解させたPBA濃度10mg/mLの溶液を投与した。BSとしては、生理食塩水に溶解させたBS濃度10mg/mLの溶液を投与した。
雄ICRマウス(10週齢、体重35〜40g)をランダムに4群に分けた。コントロール群(n=6)には、試験期間中毎日10mL/kgの生理食塩水を与えた。Dox投与の1日前(−1日)、Dox(n=10)群には生理食塩水を、Dox+PBA(n=12)群にはPBA(100mg/kg)を、Dox+BS(n=7)群にはBS(100mg/kg)を、それぞれ腹腔内(IP)に投与した。次いで、これらの3グループにDoxを1ドーズ投与した(15mg/kg)(0日目)。次の6日間(1日目から6日目)、Dox群には生理食塩水を10mL/kg、Dox+PBA群にはPBAを100mg/kg、Dox+BS群にはBSを100mg/kg、1日1回腹腔内投与した。PBAとしては、生理食塩水に溶解させたPBA濃度10mg/mLの溶液を投与した。BSとしては、生理食塩水に溶解させたBS濃度10mg/mLの溶液を投与した。
(11)血行動態指標の計測(Invasive measurement)
ミラーカテーテルを右頸動脈から挿入し、左心室(LV)に慎重に導入した。その後、心拍、収縮期圧(LVSP)、拡張末期圧(LVEDP)、圧波のアップストローク又はダウンストロークの間の最大勾配(max dP/dt:左心室内圧最大上昇速度及びmin dP/dt:左心室内圧最大下降速度)、max dP/dtをmax dP/dt時の圧力で割った値(収縮性指数)及び指数関数弛緩時間定数(Tau)を、アプリケーションプログラムBlood Pressure Modelを用いて分析した。
ミラーカテーテルを右頸動脈から挿入し、左心室(LV)に慎重に導入した。その後、心拍、収縮期圧(LVSP)、拡張末期圧(LVEDP)、圧波のアップストローク又はダウンストロークの間の最大勾配(max dP/dt:左心室内圧最大上昇速度及びmin dP/dt:左心室内圧最大下降速度)、max dP/dtをmax dP/dt時の圧力で割った値(収縮性指数)及び指数関数弛緩時間定数(Tau)を、アプリケーションプログラムBlood Pressure Modelを用いて分析した。
(12)統計学的分析
データは、平均±S.E.M.で表わされる。統計的有意差の有無は、one−way factorial ANOVAに続いてBonferroni’s correctionを行い、求めた。全ての分析に関して、p<0.05は、統計学的に有意差であると認められた。
データは、平均±S.E.M.で表わされる。統計的有意差の有無は、one−way factorial ANOVAに続いてBonferroni’s correctionを行い、求めた。全ての分析に関して、p<0.05は、統計学的に有意差であると認められた。
(III)結果
(1)Doxの作用
(i)PERK(二本鎖RNA活性化タンパク質キナーゼ様のERキナーゼ)は、小胞体ストレスを感知し、eIf2α(真核生物の開始因子2α)のリン酸化を通して全体的なタンパク質合成の抑制を引き起こすと思われるので、Dox投与後のPERK及びeIf2αのリン酸化を検出した。培養新生仔の心筋細胞において、PERK及びeIf2αのリン酸化はDoxの投与によって用量依存的に誘導された。図1−1AにDoxによって誘導されたPERKのリン酸化を、図1−1BにDoxによって誘導されたeIf2αのリン酸化を、それぞれ示す。アクチンは、各サンプル間タンパク質量の差がないことを示す内因性コントロールとして用いた。しかしながら、ERにおけるタンパク質の適切なフォールディングと会合を助けることによって小胞体ストレスを軽減し、小胞体機能を保つために必要な小胞体シャペロン(GRP78及びGRP94)の誘導は、Dox投与後に観察されなかった(図1−1C)。従って、Doxは培養新生仔の心筋細胞で小胞体ストレスを誘導したが、小胞体シャペロンの発現を誘導しなかった。
(1)Doxの作用
(i)PERK(二本鎖RNA活性化タンパク質キナーゼ様のERキナーゼ)は、小胞体ストレスを感知し、eIf2α(真核生物の開始因子2α)のリン酸化を通して全体的なタンパク質合成の抑制を引き起こすと思われるので、Dox投与後のPERK及びeIf2αのリン酸化を検出した。培養新生仔の心筋細胞において、PERK及びeIf2αのリン酸化はDoxの投与によって用量依存的に誘導された。図1−1AにDoxによって誘導されたPERKのリン酸化を、図1−1BにDoxによって誘導されたeIf2αのリン酸化を、それぞれ示す。アクチンは、各サンプル間タンパク質量の差がないことを示す内因性コントロールとして用いた。しかしながら、ERにおけるタンパク質の適切なフォールディングと会合を助けることによって小胞体ストレスを軽減し、小胞体機能を保つために必要な小胞体シャペロン(GRP78及びGRP94)の誘導は、Dox投与後に観察されなかった(図1−1C)。従って、Doxは培養新生仔の心筋細胞で小胞体ストレスを誘導したが、小胞体シャペロンの発現を誘導しなかった。
小胞体ストレスにおいて、GRP78の発現は、転写因子である切断されたATF6とスプライスされたXBP1によって主に調節される(Jill A. et al.,Anat Embryol (Berl). 2000 Jul 202(1): 67-74、Yoshida H. et al., Cell 107 2001: 881-891)。従って、ATF6の切断とXBP1のスプライシングへのDoxの効果を調べた。図1−2E(下図)及びFに示すように、Doxを投与するとスプライスされていないXBP1の発現が阻害され、その結果RNA及びタンパク質レベルの両方でスプライスされたXBP1が存在しなかった。更に、薬理学的なERストレッサーであるツニカマイシンによって誘導されたGRP78の発現の増加は、Doxによって阻害された(図1−2G)。このことから、ATF6の切断はある程度増加するものの(図1−1D)、DoxはXBP1スプライシングを減少させることを通してGRP78の発現を抑制することが示唆された。
(ii)Doxは、小胞体に惹起されるアポトーシス経路を活性化した。
カスパーゼ12は、細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼの1つである。小胞体ストレスが起こると、カスパーゼ12が切断されて活性化が起こることが知られている。培養新生仔心筋細胞において、Doxの投与はカスパーゼ12の活性化(図2A)及びJNKのリン酸化(図2B)を、いずれも用量−及び時間−依存的に誘導した。しかしながら、Dox投与後、アポトーシスに関わることが知られているCHOPの誘導は、観察されなかった(図2C)。
カスパーゼ12は、細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼの1つである。小胞体ストレスが起こると、カスパーゼ12が切断されて活性化が起こることが知られている。培養新生仔心筋細胞において、Doxの投与はカスパーゼ12の活性化(図2A)及びJNKのリン酸化(図2B)を、いずれも用量−及び時間−依存的に誘導した。しかしながら、Dox投与後、アポトーシスに関わることが知られているCHOPの誘導は、観察されなかった(図2C)。
(2)PBAの効果
(i)ケミカルシャペロンであるPBAで前処理すると、カスパーゼ12の活性がPBA0.5又は1.0mmol/Lの添加下で減少したが、0.1又は5.0mmol/Lの添加ではカスパーゼ12活性の抑制は見られなかった(図3−1A)。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の1つとして、PBAはヒストンのアセチル化を誘導して遺伝子発現をリモデリングすることができる。従って、PBAが関与するヒストンのアセチル化がカスパーゼ12活性の阻害に関与するかどうかについて調べた。図3−1Bに示すように、PBAは0.5mmol/Lでカスパーゼ12の切断をブロックしたが、5.0mmol/Lではブロックしなかった。一方、ヒストン3のアセチル化は、PBAが5.0mmol/Lのときのみ検出された。更に、フェニル基を有しない酪酸ナトリウム(BS)は、PBAと同様にヒストンをアセチル化する機能を有するが、ヒストン3のアセチル化を誘導したがカスパーゼ12の活性を阻害しなかった。更に、Doxによって誘導される心筋細胞死は、0.5mmol/LのPBAによって抑制されたが、5.0mmol/LのPBAによっては抑制されなかった。Doxからの心筋の保護作用は、BSとDoxとを用いて処理した場合には観察されなかった(図3−2C)。従って、PBAは、低濃度(0.5mmol/L)で投与した場合に、心筋においてDoxに誘導されるカスパーゼ12活性を阻害し、細胞死を妨げることが分かった。また、マウスの心臓においても、PBAがDoxによって誘導されるカスパーゼ12の活性化を阻害するかどうかを調べるために、コントロール群(生理食塩水を投与)、Dox群(Doxのみ投与)、Dox+PBA群(Dox+100mg/kg PBAを投与)及びDox+BS群(Dox+100mg/kg BSを投与)の心臓の組織のホモジネートを用いて、ウェスタンブロット分析によってカスパーゼ12の切断をチェックした。図4に示すように、Doxに誘導されたカスパーゼ12活性は、100mg/kgのPBAの投与によって、コントロール又はDox+BS群に比べて抑制された。従って、100mg/kgのPBAは、Doxに誘導される心臓損傷に対して保護作用を有することが示された。一方、PBA100mg/kgまたはBS100mg/kgいずれもヒストンアセチル化を誘導していなかったことは下段の図で明らかとなった。
(i)ケミカルシャペロンであるPBAで前処理すると、カスパーゼ12の活性がPBA0.5又は1.0mmol/Lの添加下で減少したが、0.1又は5.0mmol/Lの添加ではカスパーゼ12活性の抑制は見られなかった(図3−1A)。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の1つとして、PBAはヒストンのアセチル化を誘導して遺伝子発現をリモデリングすることができる。従って、PBAが関与するヒストンのアセチル化がカスパーゼ12活性の阻害に関与するかどうかについて調べた。図3−1Bに示すように、PBAは0.5mmol/Lでカスパーゼ12の切断をブロックしたが、5.0mmol/Lではブロックしなかった。一方、ヒストン3のアセチル化は、PBAが5.0mmol/Lのときのみ検出された。更に、フェニル基を有しない酪酸ナトリウム(BS)は、PBAと同様にヒストンをアセチル化する機能を有するが、ヒストン3のアセチル化を誘導したがカスパーゼ12の活性を阻害しなかった。更に、Doxによって誘導される心筋細胞死は、0.5mmol/LのPBAによって抑制されたが、5.0mmol/LのPBAによっては抑制されなかった。Doxからの心筋の保護作用は、BSとDoxとを用いて処理した場合には観察されなかった(図3−2C)。従って、PBAは、低濃度(0.5mmol/L)で投与した場合に、心筋においてDoxに誘導されるカスパーゼ12活性を阻害し、細胞死を妨げることが分かった。また、マウスの心臓においても、PBAがDoxによって誘導されるカスパーゼ12の活性化を阻害するかどうかを調べるために、コントロール群(生理食塩水を投与)、Dox群(Doxのみ投与)、Dox+PBA群(Dox+100mg/kg PBAを投与)及びDox+BS群(Dox+100mg/kg BSを投与)の心臓の組織のホモジネートを用いて、ウェスタンブロット分析によってカスパーゼ12の切断をチェックした。図4に示すように、Doxに誘導されたカスパーゼ12活性は、100mg/kgのPBAの投与によって、コントロール又はDox+BS群に比べて抑制された。従って、100mg/kgのPBAは、Doxに誘導される心臓損傷に対して保護作用を有することが示された。一方、PBA100mg/kgまたはBS100mg/kgいずれもヒストンアセチル化を誘導していなかったことは下段の図で明らかとなった。
(ii)コントロール群(生理食塩水を投与)、Dox群(Doxのみ投与)、Dox+PBA群(Dox+100mg/kg PBAを投与)及びDox+BS群(Dox+100mg/kg BSを投与)の心機能を調べた。6日目、エコー検査の結果、各群左心室拡張末期径(LVEDd)の差はなかったが(図5B)、左室駆出率(LVEF)が、Dox群と比較し、Dox+PBA群では有意に改善された(図5C)。心臓カテーテル検査の結果、max dP/dt(左心室内圧最大上昇速度)及び収縮性指数(contractility index)は、Dox群と比較してDox+PBA群で高かった(図6−1C及び図6−2E)。100mg/kgのPBA投与マウスにおいては、Dox群と比べてLVSP(左室収縮末期圧)はわずかに低く、min dP/dt(左心室内圧最大下降速度)、LVEDP(左室拡張末期圧)及びTauは非常に低い(図6−1A、D、B及び図6−2F)。上記のパラメータにおいては、Dox群とDox+BS群との間に有意差はなかった。これらの結果は、BSでなく100mg/kgのPBAが、Dox投与による心臓機能障害を改善したことを示している。
図1−1、図1−2及び図2に示されるように、Dox投与によって、心筋細胞において用量及び時間依存的に小胞体ストレスが誘導される。驚くべきことに、Doxと共に低濃度(0.5mmol/mL又は1.0mmol/L)PBAを投与すると、PBAのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用は発現しないが、小胞体ストレスが抑制されて心筋の細胞死を効果的に抑制することができた(図3−1及び図3−2)。更に、Doxに誘導される心機能の低下を効果的に抑制することができた(図5、図6−1及び図6−2)。しかしながら、高濃度(5.0mmol/mL)のPBAを投与すると、PBAのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用は発現するが、小胞体ストレス抑制作用や心機能保護作用は発現しなかった(図3−1及び図3−2)。また、1日に体重当たりPBAを100mg/kg投与すると、小胞体ストレスが抑制されたが、高用量(500mg/kg)PBAを投与すると、小胞体ストレス抑制作用や心機能保護作用は認められなかった(図4及び図7)。HDAC阻害剤であるBSを投与しても、小胞体ストレス抑制作用や心機能保護作用は観察されなかった(図5、図6−1及び図6−2)。
(IV)考察
これらの結果から、心筋細胞におけるPBAの小胞体ストレス抑制作用及び心機能改善作用は、HDAC阻害作用が発現しない低濃度、低用量でのみ特異的に発現されることが初めて示された。低濃度又は低用量のPBAをDox等の小胞体ストレスを起こす薬剤と共に投与することによって、薬剤の副作用を軽減することができるため、心不全を効果的に防ぐことができると考えられる。
これらの結果から、心筋細胞におけるPBAの小胞体ストレス抑制作用及び心機能改善作用は、HDAC阻害作用が発現しない低濃度、低用量でのみ特異的に発現されることが初めて示された。低濃度又は低用量のPBAをDox等の小胞体ストレスを起こす薬剤と共に投与することによって、薬剤の副作用を軽減することができるため、心不全を効果的に防ぐことができると考えられる。
本発明の小胞体ストレス抑制剤は、抗ガン剤の副作用等によって誘導される心筋の小胞体ストレスを効果的に抑制することができるため、小胞体ストレスが原因となる心筋の細胞死及び心機能の低下を抑制することができ、心不全の予防及び/又は治療に有用なものである。
Claims (4)
- 有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして4〜12.5mg/kgの量にて非経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤。
- 注射剤として用いられる請求項1に記載の小胞体ストレス抑制剤。
- 静脈内投与により投与される請求項1又は2に記載の小胞体ストレス抑制剤。
- 有効成分として4−フェニル酪酸ナトリウムを含有し、1日に体重あたり該4−フェニル酪酸ナトリウムとして15〜50mg/kgの量にて経口投与されることを特徴とする心筋の小胞体ストレス抑制剤。
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