JP6133638B2 - 上部消化管カテーテルおよびカテーテルシステム - Google Patents

上部消化管カテーテルおよびカテーテルシステム Download PDF

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Description

本発明は、上部消化管カテーテルに係り、特に鳥類用のバイタルデータ(生体情報)を取得できる上部消化管カテーテルおよびカテーテルシステムに関する。
一般に、人間の心臓の状態を調べる場合には、聴診したり、心電図をとったりすることが行われている。これに対して、鳥類の場合、一般には羽毛があるため聴診器が当て辛い。また、鳥類の場合、肺が硬く、哺乳類とは呼吸方法が異なる。つまり、鳥類の場合、皮膚の下の広い範囲に亘って気嚢があるため、皮膚表面の電導性が悪く、体表面に電極を置く方法を用いた心電図も取れず、心音についても、人間に対して行う場合よりも取り辛くなる。よって、人間に対して開発された医療検査器具や、哺乳類用の検査器具は、鳥類の検査にそのまま適用することは極めて困難であり、従来、鳥専用の検査器具はほとんど知られていない。一方で、将来、高病原性鳥インフルエンザウイルス等のパンデミックの可能性が指摘されている中、生体調査用は勿論、専用の検査器具あるいは測定器具は皆無である。
ちなみに人間の心臓の状態を調べる技術としては、従来、心電電極と加速度センサとを備えることで、心電信号だけでなく、被検者の小さな体動も計測することが可能となる生体センサ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の生体センサ装置は、心電信号及び被検者の姿勢や運動状態の信号を長時間計測するものである。このために、この生体センサ装置は、心電電極と加速度センサとを備えたシール部を、右胸部と左胸部と胸骨の剣状突起の体表面にそれぞれ装着させることで、これら3箇所からの心電信号を24時間(つまり、睡眠時や活動時の双方で)計測する。
特開2007−296266号公報
しかしながら、特許文献1に記載の生体センサ装置は、患者の睡眠障害を診断する際に利用されるデータを計測する技術であり、体表面に装着することや長時間測定が前提なので、体表面に装着できない鳥類の場合には使用できず、さらに多数の種類の被検査対象に対して効率よく測定を行うことがきわめて難しい。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、鳥類の心臓の状態等の情報を効率よく取得することができる上部消化管カテーテルおよびカテーテルシステムを提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る上部消化管カテーテルは、鳥類を被検査対象とした心電図を表示する心電計に対して電気的に接続される心電電極を備え、前記被検査対象に経口的に挿入される上部消化管カテーテルであって、挿入するときの端である先端側に、折曲自在の屈曲部が設けられたカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記先端側に所定間隔をあけて設けられた少なくとも3つの前記心電電極と、前記カテーテル本体に内蔵され、前記屈曲部よりも前記先端側の位置もしくは当該屈曲部の位置に設けられた加速度センサと、を備えていることを特徴とする。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、経口的に被検査対象に挿入されるので、被検査対象の上部消化管において心臓の近くの部位に、心電電極を配置させることによって、被検査対象の心電図をバイタルデータとして取得することができる。
上部消化管カテーテルは、先端側に、折曲自在の屈曲部が設けられているので、当該カテーテル本体を被検査対象の上部消化管に挿入すると、屈曲部が屈曲することで柔軟性を有したカテーテル本体が湾曲する。このため、この湾曲を上部消化管の食道等の壁面に沿わせながらカテーテル本体を押し込むことで、所望の位置までスムーズに挿入することができる。このとき、上部消化管カテーテルは、被検査対象の口から、そ嚢、食道、胃を通過することになる。ここで、食道や胃は、概ね心臓の裏側と背骨との間に位置するので、上部消化管カテーテルによって、心臓の裏側から例えば左心室等の動きを検知することができる。
上部消化管カテーテルは、屈曲部よりも先端側の位置もしくは屈曲部に内蔵された加速度センサによって心室の動きを測定することができる。ここで、加速度センサは、カテーテル本体の先端側に内蔵されているので、奥まで挿入しなくても心臓の心室の近傍に配置させ易くなっている。また、鳥類は、皮膚の上に羽根(羽毛)があるため、例えば人間の場合のように聴診器を皮膚の上に直接当てることができず、聴診器では鳥類の心室の動きを検出することができない。しかし、本発明によれば、加速度センサによって鳥類の心室の動きを検出することができる。従来の心音計では、鳥類の心臓のいわゆる2音(第II心音)における大動脈弁の閉鎖音と肺動脈弁の閉鎖音とを分離することは難しいが、加速度センサでは2音の閉鎖音をきれいに分離することができる。よって、加速度センサにより検出された情報を心電図と共に、被検査対象のバイタルデータとして取得することができる。
また、本発明の請求項2に係る上部消化管カテーテルは、請求項1に記載の上部消化管カテーテルにおいて、前記カテーテル本体には、マイクロフォンがさらに内蔵されており、前記マイクロフォンは、前記加速度センサよりも前記先端の反対側の基端側の位置に設けられていることが好ましい。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、カテーテル本体において加速度センサよりも基端側の位置にマイクロフォンが設けられている。つまり、マイクロフォンは、カテーテル本体の先端側に内蔵された加速度センサから予め定められた距離に配置される。被検査対象の上部消化管内にカテーテル本体を挿入すると、外からはカテーテル本体の末端や加速度センサがどこにあるのか分からない。そこで、被検査対象にカテーテル本体を挿入した状態でカテーテル本体を移動させて位置を変えながら、マイクロフォンで検出される心音が最大となる位置を求めれば、その位置にて固定することで加速度センサを心室の近傍に位置決めすることができる。このときマイクロフォンで検出される心音も取得することができる。これらについては被検査対象である鳥類で実験済みである。したがって、例えば被検査対象をX線により透視できない状況であったとしても、本発明の上部消化管カテーテルによれば、マイクロフォンによる心音検知結果を用いることで、迅速に加速度センサを最適な場所に位置決めすることができる。その結果、上部消化管カテーテルでは、マイクロフォンで検出した心音で加速度センサの位置決めをアシストし、かつ、マイクロフォンでは検出できないような心臓の弁の閉じる振動を加速度センサで検出するので、聴診器に替えて加速度センサによって心臓の状態を把握することができる。
また、本発明の請求項3に係る上部消化管カテーテルは、請求項1または請求項2に記載の上部消化管カテーテルにおいて、伸縮可能なバルーンをさらに備え、前記バルーンが、前記カテーテル本体の外周面において前記屈曲部もしくは当該屈曲部よりも前記先端の反対側の基端側の位置に設けられていることが好ましい。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、バルーンが収縮した状態で被検査対象の上部消化管内にカテーテル本体を挿入し、加速度センサを位置決めしたときに、その位置にてバルーンを膨らませることで、カテーテル本体を所定の上部消化管内で固定し、心電電極を確実に接触することができる。鳥類の場合、上部消化管において首の一番下にそ嚢がついており、この位置でバルーンの膨張や収縮を行うことが好ましく、その上部消化管の位置に対応するようにカテーテル本体において屈曲部よりも基端側の位置にバルーンを配置することが好ましい。固定により、加速度センサは心室の微細な振動も検出し易くなる。また、バルーンが膨張しているときに、バルーンの外表面が、食道内壁に接触しているので、バルーンが少し動いて擦ったときに、食道内壁の細胞、粘膜または粘液等の付着物を採取することができる。バルーンを収縮してカテーテル本体を引き戻すことで、採取した付着物を、例えば抗原抗体反応の検査試料とすることができる。さらに、上部消化管カテーテルでは、バルーンが、伸縮性を有していることや、カテーテル本体において屈曲部に位置しているかもしくは屈曲部よりも基端側に位置していることから、カテーテル本体を被検査対象の上部消化管内に挿入する際の屈曲部の動作の妨げになることはない。また、当該バルーンは一部もしくは全体として脱着可能すなわち取替え可能としてもよい。
また、本発明の請求項4に係る上部消化管カテーテルは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテルにおいて、前記カテーテル本体には、温度計がさらに内蔵されていることが好ましい。温度計は、スペース面や取扱から熱電対が好ましい。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、内蔵された温度計によって、被検査対象のバイタルデータとして体温を検出することができる。例えば、高病原性鳥インフルエンザウイルス等では、鳥・鳥間の感染を繰り返し、体温などの環境変化により突然変異が引き起こされることが知られている。鳥類のバイタルデータとして体温を検出することで、加速度センサにより検出された情報や心電図と体温との相関を調べ、その結果、感染源や感染ルートの特定に寄与することが可能となる。
また、本発明の請求項5に係る上部消化管カテーテルは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテルにおいて、前記加速度センサが、3軸方向の加速度を検出することが好ましい。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、被検査対象である鳥類の上部消化管内にカテーテル本体を挿入し、加速度センサを位置決めする際に、内蔵された3軸の加速度センサによって、心室の動きを検出することで3軸方向の最適の位置に位置決めすることができる。ここで、仮に1軸の加速度センサを用いた場合、1方向に対して正確に位置決めされてカテーテル本体をバルーンで固定した後に他の2方向では最適ではないことが判明した場合、バルーンを収縮して位置を補正する必要がある。これに対して、本発明によれば、3軸の加速度センサによって、検出した3軸方向の検出データを合成した入力値を用いることができる。したがって、例えばバルーンによる固定後の位置補正が不要となる。
また、本発明の請求項6に係る上部消化管カテーテルは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテルにおいて、ワイヤをさらに備え、前記ワイヤの一端が前記カテーテル本体の先端側に接続され、前記ワイヤの他端が前記カテーテル本体の基端側に引き出されていることが好ましい。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルは、カテーテル本体に内蔵されてカテーテル本体の先端側に接続されたワイヤを備えている。したがって、カテーテル本体の先端部に一端が固定されたワイヤの他端を、検査を行う係員がカテーテル本体の基端側に引っ張ることで、その間にある屈曲部が屈曲し易くなる。さらに、柔軟性を有するカテーテル本体が湾曲することで、これにより、上部消化管カテーテルを被検査対象に経口的に挿入する際のガイディングや、上部消化管内で心臓に近い位置に加速度センサや心電電極を導入する際のガイディングを容易にすることができる。
被検査対象が鳥類の場合、上部消化管において首の一番下にそ嚢がついており、そ嚢の背中側にあいている孔に向かって、屈曲部を屈曲させたカテーテル本体を上部消化管の壁面に沿わせて挿入し、そ嚢の孔の先の心臓の近傍へ進入させる。このような場合、上部消化管カテーテルを扱う係員が熟練者でなくてもワイヤを引っ張る操作を行うことで、例えば鶏よりも首が長い鶴やアヒルの場合であっても、カテーテル本体の先端部を迅速に心臓に近づけることができる。
また、本発明の請求項7に係る上部消化管カテーテルシステムは、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテルと、前記上部消化管カテーテルの前記心電電極と前記心電計との間に接続された差動アンプと、を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、上部消化管カテーテルシステムでは、差動アンプが、上部消化管カテーテルの心電電極の例えば陽極の電気信号からノイズを除去し、必要とする生体信号を増幅する。同様に、差動アンプは、上部消化管カテーテルの心電電極の陰極の電気信号からノイズを除去する。これらノイズが除去され増幅された電気信号を心電計へ入力することで、心電計にリアルタイムに表示される心電図から精密なデータを取得することができる。
本発明の上部消化管カテーテルは、鳥類の心臓の状態等の情報を効率よく取得することができる。また、本発明の上部消化管カテーテルは、鳥類の外部から心音が確認できないようなときにも、心電図や心拍などの生体情報を取得することができる。
そのため、本発明の上部消化管カテーテルによれば、例えば高病原性鳥インフルエンザウイルス等の感染源や感染ルート等を調査するための、基礎となる鳥類のバイタルデータを検出することができる。
本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルの外観を模式的に示す構成図であって、(a)は通常の先端形状、(b)は力を加えて屈曲させた先端形状を示している。 本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルを含むカテーテルシステムの構成を模式的に示す図である。 図2の差動アンプの構成例を示す回路図である。 被検査対象に挿入して被検査対象の心臓の近傍に配置したときの上部消化管カテーテルを模式的に示す図である。 鳥類の心臓の位置と食道の位置との関係を模式的に示す説明図であって、(a)は被検査対象、(b)は心臓を含む断面のスライス像、(c)はそ嚢を含む断面のスライス像を示している。 本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルのオプションとしてのバルーンの例を示す図である。 本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルの変形例1および変形例2の外観を模式的に示す構成図である。 本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルの変形例3の外観を模式的に示す構成図であって、(a)は通常の先端形状、(b)はワイヤを引っ張って屈曲させた先端形状を示している。 上部消化管カテーテルを使用して取得した心電図と加速度センサの出力とを示す図である。 上部消化管カテーテルを使用して取得した心音を示す図である。 上部消化管カテーテルを使用して取得した心音データおよびそのフーリエ変換処理結果を示す図である。 加速度センサを外した状態の上部消化管カテーテルを使用して取得した心電図の一例であって、(a)は洞結節と心室レベルの電極間の信号、(b)は房室結節と心室レベルの電極間の信号を示している。
本発明の上部消化管カテーテルを実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面に示される部材等のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。以下では、1.上部消化管カテーテル、2.システム構成、3.心電測定、4.鳥類を対象とした測定、5.バイタルデータ測定、6.上部消化管カテーテルの変形例、7.測定データの具体例、の各章に分けて詳細に説明する。
[1.上部消化管カテーテル]
図1(a)の上部消化管カテーテル1は、経口的に被検査対象に挿入されるカテーテルである。経口的にという点では、所謂食道カテーテルの一種であるが、上部消化管カテーテル1は、例えば、鳥類を被検査対象とした心臓の状態などの生体情報を測定するための測定器具として使用されるものである。なお、上部消化管とは、例えば口腔・食道・胃・そ嚢を含む。
上部消化管カテーテル1は、図1(a)に示すように、屈曲部11を有したカテーテル本体10と、心電電極21,22,23と、加速度センサ30と、を主に備えている。これら主な構成(屈曲部、心電電極、加速度センサ)をカテーテルの基本形と呼ぶ。また、図1(a)に示したマイクロフォン40、バルーン50、温度計60は、それぞれオプションの一例である。
測定時に被検査対象にカテーテル本体10を挿入するときの先端となる側(以下、先端側という)は、被検査対象の心臓の下側(心室側)の近傍に配置される。
測定時に被検査対象にカテーテル本体10を挿入するときの基端となる側(以下、基端側という)は、測定を行う係員によって把持される。カテーテル本体10の内部には、図示を省略したが、絶縁膜で被覆された電気信号線(ケーブル)があり、基端側の外部に配置されたアンプ等に接続されている。
<カテーテル本体>
カテーテル本体10は、医療用のカテーテルと同様な形状に構成され、また同様に可撓性を有するために同様な材質、すなわち生体適合性の材質、例えばシリコーン樹脂やシリコーンゴムで形成されている。ただし、その一部が他の部分よりも可撓性が高くなるように形成されている。すなわち、カテーテル本体10は、この可撓性が高く折曲自在の部分を屈曲部11として備えている。屈曲部11は、カテーテル本体10の先端側に設けられている。よって、測定時に被検査対象にカテーテル本体10を挿入するときに、その先端が上部消化管の内壁に当たって、図1(b)に示すように力Fが加わった場合、先端側の屈曲部11がたやすく曲がるため導入が容易となる。なお、カテーテル本体10の屈曲部11以外の部分も可撓性があるので、曲がりくねった消化管の中に挿入することができる。
<心電電極>
心電電極21,22,23は、カテーテル本体10の先端側に、管の軸方向に沿った所定幅をそれぞれ有して、所定間隔をあけて設けられている。
心電電極21,22,23は、カテーテル本体10の管の外周面の全周に巻かれている。各心電電極21,22,23と、カテーテル本体10の管内を通した各電気信号線とを接続するために、カテーテル本体10には微小な孔が穿設されており、これらの微小な孔を通った導体線が外周面の心電電極に半田等で接続されている。なお、最先端側の心電電極23に対しては、微小な孔を介することなくカテーテル端部から外に取り出した導体線を接続することができる。
心電電極21,22,23は、例えば銅箔で形成されている。この心電電極21,22,23には、例えば錫メッキを施すことが好ましい。
なお、詳細は第2章および第3章にて後記するが、心電電極21,22,23は、陽極(+)、中性点、陰極(―)のいずれかの役割を分担して作動する。
<加速度センサ>
加速度センサ30は、被検査対象の心拍出量を計測するためのものである。また、加速度センサ30は、心拍数を計測することができる。加速度センサ30が検出する加速度は、心室壁の動きと高い相関があり、エコーでは計測し難いような「背部に面した心室の動き」を定量的に計測できる。
加速度センサ30は、加速度を検出することができれば特に限定されるものではない。加速度センサ30が、例えば1次元の加速度を検出するタイプのセンサである場合、被検査対象の腹正中−椎体方向の1軸方向の加速度を検出する向きで配設される。また、1次元の加速度を検出するタイプの3個の加速度センサを3軸方向にそれぞれ配置して信号入力を合成して3軸方向の加速度を検出してもよい。さらに、加速度センサ30が、例えば3次元の加速度を検出するタイプであってもよい。加速度センサ30はカテーテル本体10に内蔵されるので、小型のものが好ましい。
加速度センサ30は、屈曲部11よりも先端側の位置もしくは当該屈曲部11の位置に設けられる。つまり、カテーテル本体10において、屈曲部11が、加速度センサ30の配設部位と、屈曲部11よりも可撓性の低い導入管部とを分離する役割を果たしている。
図1(a)に示す例では、加速度センサ30は、カテーテル本体10の最先端(心電電極23よりも先端側)の位置に内蔵されている。この加速度センサ30は、心電電極23の位置や屈曲部11の位置に設けることもできる。
<マイクロフォン>
本実施形態では、図1(a)に示すように、カテーテル本体10には、オプションとして、マイクロフォン40が内蔵されている。マイクロフォン40は、被検査対象の心臓の拍動音を検出するものである。測定を行う係員は、この拍動音を聞きながらカテーテル本体10を動かして音が最大となる位置を、心電電極21,22,23が心電図を取得するための位置として位置決めする。
マイクロフォン40は、カテーテル本体10において、加速度センサ30よりも基端側の位置に設けられている。図1(a)に示す例では、マイクロフォン40は、屈曲部11よりも基端側の可撓性の低い導入管部であって、心電電極21と心電電極22との間の位置に内蔵されている。また、このマイクロフォン40の位置に合わせて、カテーテル本体10は、屈曲部11よりも基端側の可撓性の低い導入管部の位置に窓12を備えている。マイクロフォン40は、肺動脈弁の閉鎖音や大動脈弁の閉鎖音がよく聞こえる位置に設けることが好ましい。マイクロフォン40の指向性としては、被検査対象の腹正中に向けて設置する。このとき、カテーテル本体10の窓12の位置は、マイクロフォン40の指向性に合わせる。なお、マイクロフォン40は、心電電極22の位置や屈曲部11の位置に設けることもできる。
[2.システム構成]
図2は、本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテルを含むカテーテルシステムの構成を模式的に示す図である。
カテーテルシステム100は、上部消化管カテーテル1と、差動アンプ110とを備えている。差動アンプ110は、上部消化管カテーテル1の心電電極21,22,23と心電計200との間に接続されている。本実施形態では、心電図の取り込みを、上部消化管カテーテル1の心電電極21,22,23→マトリックス(3chマルチプレクサー190)→差動アンプ110(心電計200)の経路で行うこととした。
<差動アンプ>
差動アンプ110は、心電図から筋電図(ノイズ)を除去するものであり、図3に示すように、オペアンプOPと、このオペアンプOPの非反転入力端子に接続されている高域通過フィルタHPFと、オペアンプOPの反転入力端子に接続されている低域通過フィルタLPFと、を有している。通常、計測機器の時定数は低域遮断(HPFの下限)の時定数を指す。図3において、各コンデンサの容量をC1,C2、抵抗値をR1,R2,R3とした場合、低域遮断の時定数とは、パスコンデンサの容量C1とバイアス用抵抗の抵抗値R1との積で表される。なお、心電計の場合、規格で時定数は3.2秒と定められているので低域遮断周波数は1/(2πR11)=0.05Hzとなる。
図2には、カテーテルの基本形に、いくつかのオプションを組み合わせた場合のカテーテルシステム100を含む全体システムの一例を示す。ここでは、全体システムは、加速度計制御器120と、加速度増幅器130と、周波数制御器140と、心音増幅器150と、電源160と、表示装置170と、スピーカ180と、3chマルチプレクサー190と、心電計200と、ポンプ210と、バルーン制御部220と、温度計測部230とを備えている。
<加速度計制御器>
加速度計制御器120は、上部消化管カテーテル1の加速度センサ30と電気的に接続され、加速度センサ30を制御する制御器である。加速度計制御器120は、例えば加速度センサ30の感度を切り替える制御信号を出力する。
<加速度増幅器>
加速度増幅器130は、上部消化管カテーテル1の加速度センサ30と電気的に接続され、加速度センサ30で検出した信号を増幅する増幅器である。なお、加速度増幅器130の増幅回路の時定数は、計測機器の周波数成分に基づいて適宜選択しておく。この加速度増幅器130で増幅した信号は、表示装置170に出力される。表示装置170は、例えば一般的な液晶ディスプレイから構成される。なお、表示装置170の外部入力として心電計200を接続することで、表示装置170に加速度信号と心電図とを画面切替表示または一画面表示するように構成してもよい。さらに、この表示される加速度信号や心電図を、外部記録装置に記録する構成としてもよい。
<周波数制御器>
周波数制御器140は、オプションであって、上部消化管カテーテル1のマイクロフォン4と電気的に接続され、マイクロフォン40を制御する制御器である。周波数制御器140は、例えばマイクロフォン40で検出する音の周波数タイプを切り替える制御信号を出力する。
<心音増幅器>
心音増幅器150は、オプションであって、上部消化管カテーテル1のマイクロフォン40と電気的に接続され、マイクロフォン40で検出した信号を増幅する増幅器である。なお、心音増幅器150の増幅回路の時定数は、計測機器の周波数成分に基づいて適宜選択しておく。この心音増幅器150で増幅した信号は、オプションであるスピーカ180に出力される。測定を行う係員の便宜のためにスピーカ180は例えばイヤホンやヘッドホンタイプであることが好ましい。
<電源>
電源160は、上部消化管カテーテル1に内蔵された電気機器に対して電力を供給するためのものである。電源160は、例えば、加速度センサ30とマイクロフォン40とに対して共通の1本の電力線で電力を供給する。
<3chマルチプレクサー>
3chマルチプレクサー190は、オプションであって、例えば不図示のボタン操作によって選択制御入力を行うことによって、入力側(図2において左側)の電極端子E1,E2,E3と、出力側(図2において右側)の電極端子(陽極端子A、陰極端子B、接地電極端子C)との間のマトリックスモジュールの電気的な接続を切り替えるスイッチである。なお、例えばレントゲン透視下では、各端子を切り替える必要は無い。各端子を切り替えずに固定で用いる場合には、例えば、電極端子E1と接地電極端子Cとを接続し、電極端子E2と陰極端子Bとを接続し、電極端子E3と陽極端子Aとを接続することが好適である(後記するチャンネルch1と同じ結線)。
≪入力側の電極端子≫
電極端子E1は、上部消化管カテーテル1の心電電極21と電気的に接続される。
電極端子E2は、上部消化管カテーテル1の心電電極22と電気的に接続される。
電極端子E3は、上部消化管カテーテル1の心電電極23と電気的に接続される。
≪出力側の電極端子≫
陽極端子Aは、心電計200のプラス電極端子(+)に接続される。
陰極端子Bは、心電計200のマイナス電極端子(−)に接続される。
接地電極端子Cは、心電計200のグラウンド端子(G)に接続される。
≪チャンネル≫
本実施形態では、3chマルチプレクサー190では次の3つのチャンネルch1〜ch3を切り替え可能に構成している。
チャンネルch1:電極端子E1と接地電極端子Cとを接続し、電極端子E2と陰極端子Bとを接続し、電極端子E3と陽極端子Aとを接続する組み合わせのチャンネル
チャンネルch2:電極端子E1と陰極端子Bとを接続し、電極端子E2と接地電極端子Cとを接続し、電極端子E3と陽極端子Aとを接続する組み合わせのチャンネル
チャンネルch3:電極端子E1と陰極端子Bとを接続し、電極端子E2と陽極端子Aとを接続し、電極端子E3と接地電極端子Cとを接続する組み合わせのチャンネル
<心電計>
心電計200は、心電図を取得し、心電図を表示するものである。また、心電計200によれば、心電図の基線の動き、もしくは低周波のインピーダンス変化より呼吸パターンを検出することができる。心電計200は、心電図を測定、記録する一般的な心電計である。本実施形態では、一例として心電計200に差動アンプ110を組み込むこととしたが、心電計200と別体で差動アンプ110を設けて心電電極からの信号を取り込むこととしてもよい。なお、心電計200は、医療用に市販されている携帯型の心電計であってもかまわない。携帯型の心電計であれば、家畜(ニワトリ等)や野生の動物(野禽等)等の被検査対象について、家畜用の施設や野外においても心電図を測定できる。
<バルーンのオプション>
バルーンのオプションは、例えばバルーン50と、ポンプ210と、バルーン制御部220とを備える。
バルーン50は、医療用のバルーンであって伸縮可能に構成されている。
図2では、バルーン50が収縮した状態を示している。カテーテル本体10を上部消化管内に挿入し所定の部位でバルーン50を膨らませることで、カテーテル本体10の位置を固定することができる。また、心電電極を上部消化管内壁に接触させる。この固定により、カテーテルの配置が安定化され、各種信号の伝導が安定化し、その結果、信号の検出を安定に行うことができる。
バルーンが膨張した状態の一例を図6(a)および図6(b)に示す。図6(a)に示す例では、カテーテル本体10Aが長さ方向の大部分を占める大径部51と、この大径部51よりも小径で長さ方向のごく一部に溝状に形成された小径部52とを備える。図6(b)は、図6(a)のA−A線矢視による断面図である。小径部52には、バルーン取出し用孔53と、終端止め用孔54とが穿設されている。
バルーン取出し用孔53は、カテーテル本体10Aの中から外側へバルーン50Aの終端部を取り出すための貫通孔である。
終端止め用孔54は、バルーン50Aの終端部をカテーテル本体10Aに固定するための孔である。カテーテル本体10Aの中から外側へ取り出されたバルーン50Aは、小径部52をほぼ一周して終端止め用孔54を介してカテーテル本体10Aの中に挿入されている。バルーン50Aの終端部は例えば結び目55になっている。
バルーンが膨張した状態の他の例を図6(c)および図6(d)に示す。図6(c)に示す例では、バルーン50Bは、基部56と、基部56から分岐した同じ長さの複数の分岐部57,57とを備えている。また、カテーテル本体10Bには、周方向に均等な間隔でバルーン用孔58,58が穿設されている。図6(d)は、図6(c)のB−B線矢視による断面図である。バルーン50Bは、基部56と、分岐部57,57がカテーテル本体10Aの中を通り、分岐部57,57のそれぞれの終端はバルーン用孔58,58から外側へ取り出されている。バルーンが収縮した状態においても、分岐部57の終端が、カテーテル本体10Bの外側に配置できるようにバルーン用孔58の大きさが設定されている。図6(c)および図6(d)では分岐数を2としたが、分岐数は1でも3でもよい。
なお、分岐数1の場合、1つのバルーン用孔58が設けられ、バルーン50Bの分岐部57の終端が膨らんだときに、バルーン用孔58とは反対の位置(180度回転した位置)にてカテーテル本体10Bの外周面が上部消化管内壁の一方の側に片寄せられる。つまり、分岐数1の場合、カテーテルに巻回しされた心電電極が上部消化管内壁に接触し易くなる効果がある。
バルーン50の収縮/膨張は、例えばCPUや電気回路を備えたバルーン制御部220が、不図示のボンベやポンプ210を用いて気体や液体を流通させて空気圧もしくは液圧により行うことができる。空気圧により行うことが好ましいが、例えば生理食塩水を用いた水圧でも構わない。なお、バルーン50の収縮/膨張は、手動で行ってもよい。手動の場合、自転車用の空気入れのように弁開閉機構付のシリンジにバルーンを取り付ける。つまり、ポンプ210の代わりにシリンジを用い、バルーン制御部220の代わりに空気入れを用い、空気入れをシリンジに接続し、さらにその先にバルーンを接続して使用することができる。もしくは、空気入れとシリンジを、それら両方の機能を備えた大型のシリンジで兼用してもよい
上部消化管カテーテル1を挿入する際や、引き戻す際には、バルーン50を収縮させる。上部消化管カテーテル1を引き戻してみると、バルーン50には、粘液等が付着している。よって、バルーン50は、粘液採取や、抗原抗体反応のための試料採取の役割を果たすことができる。
バルーン50は、取替え可とすることで使い捨ても可となる。この場合、細胞等採取の際、上部消化管カテーテル1の使い回しが容易になる。
なお、消化液等の試料(検体)を回収する機能だけであれば、カテーテル本体10に例えば綿等の素材を内蔵するようにしてもよい。
バルーン50は、カテーテル本体10の外周面において、屈曲部11もしくは当該屈曲部11よりも基端側の位置に設けられている。ここで、屈曲部11よりも基端側の位置とは、カテーテル本体10の全長のうち先端側に近い部分や、上部消化管内での固定時に心臓に近い部分を指している。つまり、上部消化管内での固定時に気管から遠い部分を指している。上部消化管内での固定時にバルーン50の位置が気管に近いと、気道を圧迫して窒息させることが考えられるがこれを予防するため気管から遠位となる位置に設けることが好適である。図2に示す例では、バルーン50を心電電極21よりも基端側に配置したが、屈曲部11に配置してもよい。
屈曲部11の直径を、屈曲部11よりも可撓性の低い導入管部(カテーテル本体10の屈曲部以外の本体)よりも小径にした場合、その本体の外径と屈曲部11の外径との段差にバルーンを配置することで、カテーテル全体の最大径は抑えることができる。
<温度計のオプション>
温度計のオプションは、例えば温度計60と、温度計測部230とを備える。
温度計60は、被検査対象の深部体温を計測するものである。温度計60は、例えば熱電対等の一般的な温度センサで構成される。この場合、温度計測部230は、例えば熱電対センサが接続可能な計測器であり、熱電対で検出される起電力を温度に変換して温度を表示したり記録したりする。
図2に示す例では、カテーテル本体10に内蔵した熱電対の測温接点の位置を符号60で表示した。図2に示す例では、測温接点を心電電極21の位置(管内)としたが、測温接点の位置はこれに限定されるものではない。上部消化管カテーテル1を上部消化管内で固定したときに心臓付近に配置されることが好ましい。
なお、温度計60として、例えば数mm四方といった小型サイズのチップ型温度センサ等を用いることができる。この場合、チップ型温度センサの検出信号を増幅したりするアンプ等を設け、検出された深部体温を表示装置170(図2参照)に表示したり、図示しない記録装置に記録したりする構成としてもよい。
[3.心電測定]
図4は、被検査対象の上部消化管に挿入して被検査対象の心臓の近傍に配置したときの上部消化管カテーテルを模式的に示す図である。図4に模式的に示す心臓2において、3Lは左心房、3Rは右心房、4Lは左心室、4Rは右心室を示す。鳥類の場合、図4に模式的に示す心臓2において、左心室4Lが右心室4Rよりも格段に大きく、肥厚し、内腔が狭いのが特徴である。また、5は房室結節、6(6a,6b,6c,6d)は弁、7は洞結節のおおよその位置を示す。なお、肺動脈弁6c、大動脈弁6dの血流の向きは心臓から出る方向であり、そのため弁の開閉音が拡散する方向は上向き(図4では左向き)となる。一方、三尖弁6a、僧帽弁6bの血流の向きは心臓へ入る方向であり、そのため弁の開閉音が拡散する方向は下向き(図4では右向き)となる。図4では、これらの音の拡散方向を反映して肺動脈弁6c、大動脈弁6dを相対的に上(図4では左)に配置して示した。ただし、4つの弁の高さは、実際にはほとんど同じである。
心電電極21は、例えば心房(SA node)のレベルの電極、特に洞結節7のレベルの電極として用いる。
心電電極22は、例えば心房と心室の境(AV node)のレベルの電極、特に房室結節5のレベルの電極として用いる。
心電電極23は、例えば心室レベルの電極、特に心室4の下部のレベルの電極として用いる
双極心電図の計測においては、心電電極21〜23のいずれかを中性点とし、かつ陰極(−)よりも陽極(+)をカテーテル本体10の先端側に配置させた状態で作動させる。どの電極を中性点として作動させるかによって、心電図のパターンが変わる。
図2に示す3chマルチプレクサー190において、入力側の電極端子E1,E2,E3と出力側の電極端子(陽極端子A、陰極端子B、接地電極端子C)との電気的な接続が切り替え可能な3つのチャンネルch1〜ch3と、心電電極21〜23のいずれかを中性点とするかとの対応関係は次の通りである。
チャンネルch1は、心電電極21を中性点、心電電極22を陰極(−)、心電電極23を陽極(+)として作動させるチャンネルとして機能する。
チャンネルch2は、心電電極21を陰極(−)、心電電極22を中性点、心電電極23を陽極(+)として作動させるチャンネルとして機能する。
チャンネルch3は、心電電極21を陰極(−)、心電電極22を陽極(+)、心電電極23を中性点として作動させるチャンネルとして機能する。
チャンネルch1に切り替えたときに、心電図において、P波陰性、R波陽性が観測されたならば、カテーテル本体10に巻かれた心電電極22は、最適な位置、つまり房室結節5(図4参照)付近にあることになる。よって、上部消化管内のこの位置でカテーテル本体10を固定して測定を行うことが好ましい。
そして、カテーテル本体10がこの位置にあるときに、チャンネルch1からチャンネルch2に切り替えた場合、心電図において、P波陽性、R波陽性が観測されたならば問題はない。しかしながら、チャンネルch2の心電図において、P波陽性、R波陽性が観測されないならば、カテーテル本体10を上部消化管内で固定した後で、位置がズレてきていることになる。よって、位置ズレを補正する必要がある。
同様に、チャンネルch1の測定から最適と判断した上部消化管内の位置でカテーテル本体10を固定した後で、チャンネルch1からチャンネルch3に切り替えた場合、心電図において、波形が変化してP波陽性等が観測されたならば問題はない。しかしながら、チャンネルch3の心電図において、P波陽性等が観測されないならば、カテーテル本体10を上部消化管内で固定した後で、位置がズレてきて、下方(奥)に入り過ぎていることになる。よって、位置ズレを補正する必要がある。
[4.鳥類を対象とした測定]
鳥類は、横隔膜が無く、不随意に筋肉を継続的に動かし、複数個の気嚢を骨格筋で膨張、縮小させて、気嚢により呼吸を維持している。このため、本発明の手法とは異なる体表電極による心電図記録では、全身麻酔をかけても自発呼吸が残れば、筋電図がノイズとして混入する。ノイズレベルが高いと心電図による診断は容易ではないという問題がある。鳥類の多くは全身に羽があり、安定な状態で心電電極を体表に接触させることは難しい。そのため、従来はピンク針を羽に指していた。しかし、電極トラブルが多かったのが実情である。
ここで、鳥類の体の構造について図5(a)〜(c)を参照して説明する。
図5(a)に示すように、寝かせた鳥(ここでは雉を使用した)300を、箱301の中に入れて、X線CT(Computed tomography)装置302によって、腹正中−椎体の体軸方向に向かって2つの断面のスライス像を取得した。図5(b)は心臓を含む断面のスライス像、図5(c)は、心臓よりも頭部側の断面であって、鳥類に特有の臓器としてのそ嚢を含む断面のスライス像を示している。図5(b)および図5(c)において、310は胸筋、311は心臓、312は肺、313は背骨(脊柱)、314は食道(上部消化管)を示す。図5(c)において315はそ嚢を示す。鳥類の場合、上部消化管とは、口腔・食道・そ嚢・胃を表す。
鳥類には哺乳類のような後縦隔や後腹膜の構造は無く、食道314が背骨313から浮いていて自由に動けて、かつ、食道314は心臓311にぴったり付着している。
なお、人類を含む哺乳類は、後縦隔や後腹膜の構造を有し、食道が背骨(脊柱)の前で固定され、食道と心臓との間には肺が位置している。
本願発明者は鳥類の突然死に関して、誘引の一つに不整脈があるものと推定している。
ニワトリ(ことにロードアイランドレッド種:RIR)の心電図には不整脈が比較的多いとされ、従来、実験的にビタミンB欠乏症の環境を作り出し、不整脈を誘発させる研究が行われた歴史がある(向井真ら)。なお、この研究については、参考文献(向井真、外4名、動物の循環器、Vol.29,No.1,P.1-7,1996)に記載されている。
鳥類は、心拍数が200−300/分、血圧が200−300mmHgであって、心拍数も血圧も哺乳類に比して高い。高病原性鳥インフルエンザウイルス感染などの場合、感染した鳥類の心臓の動きは、哺乳類の一般的な心臓の動き(頻拍その後除脈となり心停止)とは異なるものと推測される。
本願発明者は、本発明の手法とは異なる体表電極による心電図記録ではなく、上部消化管電極では、筋電図が実用上、無視できるレベルとなると考えた。そして、本発明の上部消化管カテーテル1に対する事前の予備実験では、加速度センサ30および各オプションを有していないカテーテルを用いた。つまり、心電電極21,22,23だけを測定のために用いた。以下では、これを比較用カテーテルと呼ぶ。
そして、吸入麻酔(イソフルラン1.5−2%、酸素2L、笑気1L)・自発呼のニワトリ(体重500g)に対して、経口的に比較用カテーテルを挿入し、この比較用カテーテルの先端位置をレントゲン透視下で確認し、双極心電図記録を行った。このとき、3つの心電電極21,22,23のそれぞれの位置については、心房レベル(洞結節7のレベル:図4参照)、心房レベル(房室結節5のレベル:図4参照)、心室下部レベル(左心室4Lの下部のレベル:図4参照)で固定した。
この比較用カテーテルを使用して取得した心電図の一例を図12(a)および図12(b)に示す。図12(a)は洞結節と心室レベルの電極間の信号、図12(b)は房室結節と心室レベルの電極間の信号を示している。なお、これらの信号データは800/sec.の標本化を行ったものである。
図12(b)に示すように、房室結節と心室レベルでは、陰から陽に振れる二極性のP波とそれに続くQrs波が観察でき、筋電図の混入をかなり抑えて、P波、およびqRs波(Qr波)をデジタル記録、観察することが可能であった。つまり、比較用カテーテルを用いた心電図記録では、体表電極による心電図記録と比較して、心電図の基線付近に混在するノイズ(筋電図)の影響が低減できることを確かめた。
さらに、3つの心電電極21,22,23のそれぞれの位置については、透視を使わずとも、心音だけで、心房レベル(洞結節7のレベル:図4参照)、心房レベル(房室結節5のレベル:図4参照)、心室下部レベル(左心室4Lの下部のレベル:図4参照)で固定できることを確認した。
なお、この測定では、チャンネルch1に切り替えたときに、心電図において、図12(b)に示すように、P波陰性、R波陽性が観測され、かつ、チャンネルch2に切り替えた場合、心電図において、図12(a)に示すように、P波陽性、R波陽性が観測されたので、比較用カテーテルに巻かれた心電電極22は、最適な位置、つまり房室結節5(図4参照)付近にあることが裏づけられた。
[5.バイタルデータ測定]
本発明の上部消化管カテーテル1を用いたバイタルデータ測定について図4を参照して説明する。なお、心音が強く聞こえるところが、心電図において最適な位置であると判断できるように、各心電電極の幅やエッジ間隔と、マイクロフォン40の位置とを予め計算で求めておくことを前提とする。
ここでは、一例として、平均体重800g(500〜1100g)の複数のニワトリを被検査対象であるものと仮定する。このような被検査対象に用いるときの、上部消化管カテーテル1のサイズの一例を列挙する。
マイクロフォン40のサイズ:縦3mm×横6mm×高1mm
加速度センサ30のサイズ:マイクロフォン40のサイズと同程度
カテーテル本体10の直径(外形)φ=6mm
なお、マイクロフォン40等を小型化すれば、φをより小さくすることができる。
心電電極21の幅L1=9mm
心電電極22の幅L2=9mm
心電電極23の幅L3=9mm
心電電極21と心電電極22とのエッジ間隔d12=10mm
心電電極22と心電電極23とのエッジ間隔d23=10mm
心電電極21とカテーテル本体10の先端側の端部とのエッジ間隔D=5mm
上記サイズのニワトリの場合、心臓の大きさが5cmほどなので、心室先端までの距離には余裕があるため、例えばエッジ間隔d23は少し長めの20mm程度まで伸ばしても差し支えない。また、心電電極21のエッジとカテーテル本体10の先端側の端部のエッジとが重なってもよい(D=0)。
<生体信号(バイタルデータ)を検出する手順>
(前提)
まず、測定を行う係員は、初期状態として3chマルチプレクサー190をチャンネルch1にセットする。つまり、上部消化管カテーテル1において、心電電極21を中性点、心電電極22を陰極(−)、心電電極23を陽極(+)として作動させる。これにより、カテーテル本体10の先端側に巻かれた心電電極21,22,23で検出する心電図が心電計200にモニタ表示される。係員は、上部消化管カテーテル1の基端側を把持し、軽度の麻酔下のニワトリに上部消化管カテーテル1を挿入する。
(ステップS1)
上部消化管カテーテル1のカテーテル本体10の先端がそ嚢に到達すると、屈曲部11が屈曲し、先端が反転するので、係員は、カテーテル本体10の湾曲を使いながらニワトリの背側の食道出口を探る。
(ステップS2)
カテーテル本体10の先端が胸部食道に入った時点から、係員は心電計200の表示を監視し、心電電極21,22,23で検出する心電図を検討し始める。モニタにより、
P波陰性、R波陽性となる点(以下、測定ポイントという)を見出す。ただし、この測定ポイントは極めてクリティカルであるのが実状である。
(ステップS3)
そこで、係員は、マイクロフォン40で検出した心音をスピーカ180を介して聞きながら、音量が最大となる点を求める。この音量が最大となる点は、測定ポイントの近くの点である。そのため、心音が測定ポイントを発見するためのガイドとなる。
(ステップS4)
係員は、この測定ポイントが求まると、カテーテル本体10に装着していたバルーン50(図6参照)を膨らませてカテーテル本体10の位置を固定する。
なお、カテーテル本体10がこの位置にあるときに、チャンネルch1からチャンネルch2に切り替えた場合、心電図において、P波陽性、R波陽性が観測されることを確認する。
(ステップS5:心電図の採取)
(ステップS6:心音の採取)
(ステップS7:心室の加速度を計測)
図2に示すカテーテルシステム100を含む全体システムによって、係員は、ステップS5〜S7を並列的に行う。例えば3人の係員が役割分担して行ってもよい。なお、必要なデータの時間長は、例えば数秒あればよい。測定を行う係員が最終的な判断を下すためには、被検査対象に不整脈があると1分くらいだが、一般的には20〜30秒でよい。
(ステップS8:消化液等の試料の採取)
係員は、測定ポイントにて心電図、心音および加速度のデータを採取すると、バルーン50(図6参照)を収縮させて固定を解除し、上部消化管カテーテル1を引き戻す。このバルーン50に付着した消化液等の試料(検体)を回収する。
係員は、このニワトリを検査終了済みのケージに送る。なお、ニワトリの麻酔はまもなく切れる。そして、係員は、まだ検査されていない他のニワトリに対して前記ステップS1〜S8の手順を順次行う。
[6.上部消化管カテーテルの変形例]
図7に示す上部消化管カテーテル1Bは、カテーテルの基本形に対して、2つのマイクロフォン41,42を備え、2つの窓12,13を備えている(以下、この形態を変形例1という)。
図7に示す上部消化管カテーテル1Bは、カテーテルの基本形の心電電極が4つの電極21,22,23,24の形態である(以下、この形態を変形例2という)。つまり、上部消化管カテーテル1Bは、変形例1と変形例2とを併せ持った形態で表示したものであって、いずれか一方の形態のみとしてもよい。なお、図7では、オプションであるバルーン50、温度計60については省略した。
<変形例1>
上部消化管カテーテル1Bの備えるマイクロフォン41,42は、図1に示すマイクロフォン40と同様なものである。
マイクロフォン41は、三尖弁や僧帽弁の閉鎖音がよく聞こえる位置に設けることが好ましい。このような位置は、マイクロフォン42よりも基端側の位置である。
窓13は、窓12と同様なものであり、マイクロフォン41の専用の窓である。
マイクロフォン42は、図1に示すマイクロフォン40と同様な目的で同様に肺動脈弁の閉鎖音や大動脈弁の閉鎖音がよく聞こえる位置に設けたものである。
変形例1の場合、カテーテルシステム100を含む全体システムにおいて、心音増幅器150は、2つのマイクロフォン41,42からの信号を増幅するように構成しておく。なお、被検査対象が鳥類の場合、三尖弁や僧帽弁の閉鎖音は弱いので、マイクロフォン41を設けなくてもよい。
<変形例2>
上部消化管カテーテル1Bの備える心電電極21,22,23は、図1に示すものと同じなので説明を省略する。
心電電極24は、配置が異なるだけで、他の心電電極と同様なものである。
心電電極24は、カテーテル本体10の管の軸方向に沿った所定幅を有して、心電電極21よりも基端側に所定間隔をあけて設けられている。心電電極24は、中性点として使うことも可能である。
仮に、心電電極24の幅が10mmで、心電電極24と心電電極21とのエッジ間隔が10mmであれば、この心電電極24を設けたことで、カテーテルをさらに20mm奥に入れ込むことが可能となる。
上記数値例は、あくまで一例であって、鳥の種類の相違による首の長さの違い、個体差、雛か成鳥かといった差によって異なる場合がある。
本発明の上部消化管カテーテルにおいて心電電極の個数は少なくとも3個あればよいが、上部消化管カテーテル1Bのように4個備える形態や5個以上備える形態とすることで、個体差等を吸収し易くなる効果がある。
図8に示す上部消化管カテーテル1Cは、カテーテルの基本形に対するオプションとして、ワイヤ70を備えている(以下、この形態を変形例3という)。なお、図8では、他のオプションであるバルーン50、温度計60については省略した。
<変形例3>
上部消化管カテーテル1Cの備えるワイヤ70は、カテーテル本体10の管の内部を通って管の両端に引き出されている。ワイヤ70の一端は、カテーテル本体10の先端側に接続され、このワイヤ70の他端はカテーテル本体10の基端側に引き出されている。
ワイヤ70の一端の接続先は、屈曲部11よりも先端側であり、図8(a)に示す例では、ワイヤ70の一端は、カテーテル本体10の先端の端部に固着されている。検査を行う係員が、ワイヤ70の他端をカテーテル本体10の基端側に引っ張ることで、その間にある屈曲部11が屈曲し易くなる。通常、カテーテル本体10の先端が上部消化管の内壁に当たって、図8(b)に示すように力Fが加わった場合、先端側の屈曲部11は可撓性が高く曲がり易く構成されている。不慣れな係員がカテーテルを挿入したり、あるいはニワトリに比べて首の長い野鳥等を被検査対象にするような場合であっても、ワイヤ70の他端を引っ張ることで屈曲部11が屈曲し易くなるため、カテーテルを被検査対象に経口的に挿入する際のガイディングや、上部消化管内で心臓に近い位置に加速度センサ30や心電電極21〜23を導入する際のガイディングを容易にすることができる。
[7.測定データの具体例]
<加速度センサの検出信号>
図9は、上部消化管カテーテルを使用して取得した心電図と加速度センサの出力とを示す図である。このときの被検査対象は、体重1100gの雌のニワトリとした。
符号910の波形は心電図を示し、心電電極21,22,23の検出信号を差動アンプ110(オペアンプOP)で増幅後、A/Dコンバータでデジタル化したものである。符号920の波形は、加速度を示し、加速度センサ30で検出した信号を加速度増幅器130(オペアンプ)で増幅後、A/Dコンバータでデジタル化したものである。なお、1軸の加速度を検出するタイプのセンサを用いた。1秒当たりのサンプリング周期を5000として行った(標本化5000/sec.)。つまり、2秒間の記録を図示した。図9において、時間幅Δ1〜Δ4は、それぞれRR間隔に対応している。
図9に示すように、心電図(符号910の波形)と、加速度のデータの波形(符号920の波形)とを、時間軸を重ねて表示すると、加速度センサ30では、心音計よりもはるかに正確に心臓の中で何が起こっているかを読み取ることができる。
具体的には、加速度のデータの波形(符号920の波形)において、符号921は、心室の駆出加速度を示している。この期間では、心室が収縮している。
符号922は、弁の閉鎖音(第II心音)が出ていることを示している。この期間は血流が大循環に流れている期間に相当する。血流の増加で2つの弁(肺動脈弁、大動脈弁)の収縮音が乖離(スプリット)することが確認できる。
符号923は、血液の心房から心室への流入を示している。つまり、心房に対して血流が流れている間を示している。
このように加速度センサ30の検出信号は、心室の駆出加速度と、弁の閉鎖音(II)と、心房から心室への血液の流入と、を正確に表している。特に、心房から心室への流入には時間差があることが良くわかる。よって、加速度センサ30の検出信号は、心電図910のRR間隔に比して、血流の流入を色濃く反映しているものと考えられる。なお、呼吸パターンと、加速度センサ30の検出信号とのトレンドも記録すれば、1本の上部消化管カテーテルから、より多くの情報を取得できる。
<心音計の検出信号(比較例)>
図10は、上部消化管カテーテルを使用してマイクロフォンを心音計として取得した心音を示す図である。図11は、上部消化管カテーテルを使用して取得した心音データおよびそのフーリエ変換処理結果を示す図である。このときの被検査対象は、体重1100gの雌のニワトリとした。
測定結果によると、15秒辺りでII音の分離が聞こえた。これを視覚的に表示したのが図10に示す信号波形である。およそ15〜18秒の間に、符号931〜937で示すように、7箇所のスプリットが視覚的に確認できた。なお、必ずしも振幅が大きいほうが遅れるとは限らない。図10に示す信号波形を心音増幅器150で増幅後、A/Dコンバータでデジタル化し(標本化5000/sec.)、図10の符号931の部分を含む信号波形の1秒分を図11の上に示す。さらに、そのFFT(高速フーリエ変換)処理した結果を図11の下に示す。
心音計で検出した出力信号は、A/Dコンバータでデジタル化しても、II音の分離を視覚的に確認することは困難であった。また、FFT処理した結果もきれいに再現することは困難であった。一方、図9に示す加速度センサ30の検出信号では、2つの弁の収縮音がスプリットするこがはっきりと確認できた。また、心音計(マイクロフォン)によれば、測定を行う係員が心音を実際に聞くことで、カテーテルの位置が最適になっていることを確認できることから、位置決め作業をアシストする効果を有する。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る上部消化管カテーテル1は、経口的に被検査対象に挿入されるので、被検査対象の上部消化管において心臓の近くの部位に、心電電極21,22,23を配置させることによって、被検査対象の心電図をバイタルデータとして取得することができる。よって、体表電極による心電図記録と比較して、心電図の基線付近に混在するノイズ(筋電図)の影響を低減することができる。
また、上部消化管カテーテル1のカテーテル本体10には、可撓性が高く折曲自在の屈曲部11が先端側に設けられている。よって、測定時に被検査対象にカテーテル本体10を挿入するときに、先端側の屈曲部11がたやすく曲がるため導入が容易となる。
さらに、上部消化管カテーテル1は、加速度センサ30を内蔵し、被検査対象の心拍出量や心拍数を計測できると共に、エコーでは計測し難いような背部に面した心室の動きを定量的に計測できる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、マイクロフォン40を備えるものとして説明したが、本発明において、マイクロフォンは必須の構成要素ではない。ただし、マイクロフォン40を備える形態は、下記の理由から好ましい形態と言える。具体的には、上部消化管の中に挿入したカテーテル本体10の先端がどこまで到達しているのかといった確認は、レントゲンによる透視で可能である。ところが、常にX線を出せるわけでもなく、あるいは透視が使えない場所で検査をしなくてはならない場合もある。これらの場合、カテーテル本体10の先端位置を、その周囲の臓器(心臓)から推定することが可能である。このような推定が必要なのは、カテーテル本体10の先端位置が判明しなければ、各検出信号の値は評価できないからである。例えば心電図(P波:心房、R波:心室の極性)によって、カテーテル本体10の先端が心房と心室の間の位置(ベストの位置)にあるか、その上の位置または下の位置にあるか、といったことは推定可能である。ただし、どの程度上下にずれているかについては不明のままである。これに対して、心音計(マイクロフォン40)で検出した信号で弁の閉まる音=放散音を聞けば、どの程度ずれているのか、といった情報を取得することができる。
マイクロフォン40を備える形態において、カテーテル本体10から各種電気信号線等を取り出す側の端部(基端側の出力端部)を塞ぐ隔壁を設けてもよい。このようにカテーテル本体10の基端側の出力端部に隔壁を設けた場合、当該出力端部からの音を、内蔵されたマイクロフォンが集音することを避けて、心音を効果的に集音することができる。なお、この場合、隔壁の位置、厚さ、個数を適宜設計変更することができる。
また、場合によっては、マイクロフォンの代わりに加速度センサを心電電極の位置決めの用途として利用することも考えられる。この場合、加速度センサの検出信号のブロードな出力の変化から、信号の最大値近傍で位置を決定することも可能である。このように加速度センサを位置決めの用途として利用する場合、信号処理による時間がマイクロフォンを用いた場合よりも要するデメリットがある反面、マイクロフォン等のオプションを要さない構成となるのでカテーテルサイズを小さくし、カテーテル本体の小径化に寄与するメリットがある。このように信号処理時間の短縮とカテーテルの小型化とのどちらを優先するかに応じていずれかの構成を適宜採用することができる。
本発明に係る上部消化管カテーテルを用いた検査を、例えば以下の長期計画における複数の目標段階にて順次進めていくことができる。例えば第1段階として、鳥類の数多くの個体に対して、本発明の上部消化管カテーテルを用いた測定を行うことで、当該鳥類の心臓の状態に関する基礎データを収集することができる。
そして、第2段階として、健康な個体、病弱な個体、一時的に弱っている個体、鳥インフルエンザウイルス等に感染した個体等について、例えば体温、心拍数、呼吸波形等の相関データを分析し、ウイルス感染した個体に特有の体温上昇、心拍数上昇、呼吸波形の変化等の基準を構築することができる。
第3段階として、鳥インフルエンザウイルス等に感染した疑いがある個体を発見した場合に、本発明の上部消化管カテーテルを用いた測定を行うことで、当該個体が、病弱なだけなのか、一時的に弱っているだけなのか、ウイルス感染の兆候があるのかといった絞り込み(スクリーニング)が可能となる。鳥インフルエンザウイルスでは、抗原抗体反応の検査期間を有することから、感染の兆候を早期にスクリーニングするシステムの構築が要望されている。前記第3段階においては、鳥インフルエンザウイルスに対し、鳥での検出が可能になると考えられる。そのため、感染ルートの特定にも寄与すると考えられる。
そして、より正確さを増した第4段階では、例えば家禽業者の出荷前管理等において、本発明の上部消化管カテーテルを用いた測定(診断)を行い、疑わしいものは間引くという方策を行うことで、例えば発病したら周辺数kmで飼育されているニワトリ等を全処分するといった事態を防止することができる。
本発明の上部消化管カテーテルを用いた測定は、高病原性トリインフルエンザに限らず、他に西ナイル熱や他の人畜感染症の特定のための測定等に応用可能である。
本発明の上部消化管カテーテルを用いた測定において、被検査対象はニワトリに限定されるものではなく、その他の鳥類にも適用可能である。なお、本発明の上部消化管カテーテルは、消化官系を利用するため、個体、種類に応じてカテーテルのサイズを合せる必要はあるものの基本構成は同様にすることができる。
また、本発明の上部消化管カテーテルを利用して心電図データを正確に記録して分析しておくことにより、例えば体表電極を用いて得た曖昧な心電図波形を分析する上での一助とすることが可能である。この場合、同期加算によるノイズ軽減効果や、独立成分分析によるオリジナル波形の推定といった効果が期待できる。
1,1B,1C 上部消化管カテーテル
10,10A,10B カテーテル本体
11 屈曲部
12,13 窓
21,22,23,24 心電電極
30 加速度センサ
40,41,42 マイクロフォン
50,50A,50B バルーン
51 大径部
52 小径部
53 バルーン取出し用孔
54 終端止め用孔
55 結び目
56 基部
57 分岐部
58 バルーン用孔
60 温度計
70 ワイヤ
100 カテーテルシステム
110 差動アンプ
120 加速度計制御器
130 加速度増幅器
140 周波数制御器
150 心音増幅器
160 電源
170 表示装置
180 スピーカ
190 3chマルチプレクサー
200 心電計
210 ポンプ
220 バルーン制御部
230 温度計測部

Claims (7)

  1. 鳥類を被検査対象とした心電図を表示する心電計に対して電気的に接続される心電電極を備え、前記被検査対象に経口的に挿入される上部消化管カテーテルであって、
    挿入するときの端である先端側に、折曲自在の屈曲部が設けられたカテーテル本体と、
    前記カテーテル本体の前記先端側に所定間隔をあけて設けられた少なくとも3つの前記心電電極と、
    前記カテーテル本体に内蔵され、前記屈曲部よりも前記先端側の位置もしくは当該屈曲部の位置に設けられた加速度センサと、
    を備えていることを特徴とする上部消化管カテーテル。
  2. 前記カテーテル本体には、マイクロフォンがさらに内蔵されており、
    前記マイクロフォンは、前記加速度センサよりも前記先端の反対側の基端側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の上部消化管カテーテル。
  3. 伸縮可能なバルーンをさらに備え、
    前記バルーンは、前記カテーテル本体の外周面において前記屈曲部もしくは当該屈曲部よりも前記先端の反対側の基端側の位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の上部消化管カテーテル。
  4. 前記カテーテル本体には、温度計がさらに内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテル。
  5. 前記加速度センサは、3軸方向の加速度を検出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテル。
  6. ワイヤをさらに備え、
    前記ワイヤの一端は前記カテーテル本体の先端側に接続され、前記ワイヤの他端は前記カテーテル本体の基端側に引き出されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテル。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の上部消化管カテーテルと、
    前記上部消化管カテーテルの前記心電電極と前記心電計との間に接続された差動アンプと、
    を備えることを特徴とするカテーテルシステム。
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