JP6132340B2 - 電力低減装置および電力低減方法 - Google Patents

電力低減装置および電力低減方法 Download PDF

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Description

本発明は、ISDN回線を用いた通信システムを補填する技術に係り、特に、該システム内での消費電力を低減させる電力低減装置および電力低減方法に関する。
ISDNデジタル通信方式の加入者線路信号方式(Digital Transmission System on Metallic Local Lines for ISDN Basic Rate Access)では、加入者線の直流電流の有無やその極性に応じて発信要求や切断要求を行うという手法を採っている。
一般に、ISDN(Integrated Services Digital Network)を用いた上記方式にかかる通信システムは、回線(加入者線)により接続された、網終端装置(NT:Network Termination)と、これに電力を供給する給電部を含む局装置(LT:Line Termination)と、を有している。
例えば、図8に示すように、網終端装置301が局装置200からのリモート給電により動作する場合の通信システムでは、局装置200が、給電部220にて生成した電力と、網終端装置301との通信を行うための通信信号と、を重畳してL1線及びL2線から成る回線100に送出するという構成を採っている。その際、上記通信信号は、LT側通信トランス210を介して入出力されるように構成されている。
給電部220で生成された電力は、回線100の極性を適宜切り替える給電極性切替部230を介して送出され、この送出された電力を網終端装置301が、フィルタ320を介して抽出すると共にDC/DC電源330に供給するという構成を採っている。そして、この取得した電力をDC/DC電源330が、網終端装置301内の各構成部材に供給することにより該装置を動作させるように構成されている。加えて、網終端装置301は、局装置200と通信するための通信信号をNT側通信トランス310を介して入出力するように構成されている。
また、網終端装置302が商用電源からの電力により動作する場合を例示した図9の通信システムでは、局装置200から送出されフィルタ320を介して抽出された電力は、終端抵抗340にて消費されることとなる。すなわち、商用電源から電力の供給を受けたAC/DC電源350が、網終端装置302を動作させるための電力を該装置内に供給するという構成を採っている。
他の構成については、図8の場合と同様であるため、同一の構成部材については同一の符号を用いると共に各々の説明は省略する。
こうした通信システムに関連する技術としては、例えば、下記の技術内容(特許文献1乃至4)が知られている。
特許文献1には、網終端装置と媒体試験器との間に接続して、該網終端装置の導体抵抗を測定できるようにした網終端装置用媒体試験補助装置が開示されている。併せて、網終端装置に設けられた通信時の電力消費を抑えるための構成も示されている。特許文献2には、ADLS信号におけるノイズ成分をキャンセルするためのコモンモードフィルタが、音声信号を出力するためのローパスフィルタに対して並列に接続されたスプリッタ装置が開示されている。特許文献3には、ISDN回線のデータ信号をデジタル信号のままで処理することで、アナログ信号への変換に起因した処理効率の低下を防止するという技術内容が開示されている。
特許文献4には、局側網終端装置(LT)と宅内側網終端装置(NT)との間に、主信号を中継するための構成としてレピータを介在させることで、該LT−NT間にて生じる交流損失を改善し、これにより、伝送距離の延長を実現する長距離伝送方式にかかる技術内容が開示されている。
特開2000−307571号公報 特開2003−179454号公報 特開2007−336505号公報 特開2000−307572号公報
しかしながら、前述した図8又は図9に示すようなISDN回線を用いた通信システムが運用される場合において、局装置200から供給される電力は、回線100,網終端装置(301又は302),及び網終端装置(301又は302)に接続された端末装置(図示せず)によって消費されることを前提として設定されるため、当該供給電力の一部が不要となってしまうという問題が生じる。
すなわち、リモート給電によって動作する図8に示す場合において網終端装置301は、回線100から抽出した電力の消費を一定に保つように動作するため、例えば、自装置に接続された端末装置(図示せず)への給電を行う必要がない等の理由で不要となった余剰分の電力を、DC/DC電源330の効率の低下(発熱等)により無駄に消費させなければならないという不都合がある。
また、商用電源からの電力によって動作する図9に示す場合においても網終端装置302は、回線100から抽出した電力の消費を一定に保つように動作するため、フィルタ320にて抽出した電力から無用な分を終端抵抗340にて消費させなければならないという不都合がある。
ここで、図10及び図11をもとに、ISDN回線を用いた通信システム(ISDN通信システム)における一般的な給電の仕様等を説明する。
図10では、上記図8の通信システムを簡略化した各構成と共に、該システムにおける網終端装置301に接続された、端末給電部410とAC/DC電源421とを含む端末装置401を示している。
ISDN通信システムの給電の仕様は、局装置200の給電電力と通信システムの消費電力とが等しくなる構成が理想的な状態とされている。
すなわち、「局装置200の給電電力=通信システムの消費電力(回線100による消費+網終端装置301内部のDC/DC電源(DC/DC電源回路)330の変換効率による消費+網終端装置301の動作による消費+網終端装置301からの給電を受けた端末装置401の動作による消費)」となる理想状態を前提として、該システムの給電の仕様が考えられている。
しかしながら、現在運用されている通信システムでは、網終端装置301から端末装置401への給電の主目的は、網終端装置301にて端末装置401の接続状態を監視することにあり、このため、該給電による電力は、端末装置401を動作させるためには使用されていない。したがって、局装置200の給電電力が通信システムの消費電力を上回る状態で運用されることとなり、給電された電力の一部が有意に消費されないという不都合が生じている。
すなわち、網終端装置301からの給電による電力は、上述した理想状態の前提において勘案されている「端末装置401の動作」には使用されないため、「局装置200の給電電力>通信システムの消費電力」なる電力供給過多の状態で運用されているという問題がある。
また、図11に示すように、PHSの基地局のシステムや、終端抵抗343を有する網終端装置303と端末装置402とが一体となった通信端末機器の場合において、端末装置402は、局装置200からの給電電力を使用せず、商用電源を受けたAC/DC電源422から供給された電力によって動作する。このため、局装置200から余分に給電された電力は、無駄に消費されなければならないという不都合がある。
さらに、前述した特許文献1乃至4には、既存の通信システムにかかる構成内容を変更することなく、上述した無用となる電力の消費を抑制するという技術内容については何ら開示されていない。
(発明の目的)
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善するものであり、特に、ISDN回線を用いた通信システム内にて消費される電力を有効に低減する電力低減装置および電力低減方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明にかかる電力低減装置では、網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、当該システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置であって、前記網終端装置に対して並列に接続され且つ前記局装置と当該網終端装置との通信時にかかる電流の一部を取り込む電流導通部と、この電流導通部と前記回線との間に装備され、前記通信信号にかかる電流以外の電流を当該電流導通部に受け渡すフィルタ部と、を有するという構成を採っている。
また、本発明にかかる電力低減方法では、網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、前記通信信号にかかる電流の流入を抑止するフィルタ部と前記網終端装置に対して並列に接続され且つ一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含む電流導通部とを備え、前記通信システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置にあって、前記局装置と網終端装置との通信時に、前記通信信号にかかる電流以外の電流の一部を前記フィルタ部にて取り入れ、この取り入れた電流を前記電流導通部が取り込むと共に前記バイパス抵抗を介して前記回線に送り出すことを特徴とする。
本発明によれば、特に、ISDN通信方式にかかる網終端装置に対して並列に接続され且つ一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含むという構成を採用したため、これにより、ISDN回線を用いた通信システム内にて消費される電力を有効に低減することができる電力低減装置および電力低減方法の提供が可能となる。
本発明の第1実施形態にかかる電力低減装置を、一般的な通信システムに装備した状態を示すブロック図である。 図1に開示した電力低減装置が一般的な通信システムに装備される前後の状態について、図2(A)は該通信システムにかかる構成を、図2(B)は該電力低減装置を装備した場合の構成を、それぞれ抵抗という観点から簡略化して示した概略図である。 図1に開示した電力低減装置が一般的な通信システムに装備される前後に亘る給電電流,各抵抗,及び消費電力の関係のうち、図3(A)は回線距離が短い場合を、図3(B)は回線距離が長い場合を、それぞれ示す表である。 図1に開示した電力低減装置を一般的なISDN通信システムに適用した場合に、給電電流が一定の範囲内において消費電力が削減されることを示すグラフである。 図1に開示した電力低減装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる電力低減装置を、一般的な通信システムに装備した状態を示すブロック図である。 図6に開示した電力低減装置の動作を示すフローチャートである。 リモート給電により動作する網終端装置を含む一般的な通信システムの構成を示すブロック図である。 商用電源により動作する網終端装置を含む一般的な通信システムの構成を示すブロック図である。 ISDN回線を用いた通信システムの給電仕様の前提となる構成において、特に電力の消費にかかる状況を示すブロック図である。 網終端装置と端末装置とが一体となった通信端末機器等の給電仕様の前提となる構成において、特に電力の消費にかかる状況を示すブロック図である。
〔第1実施形態〕
本発明にかかる電力低減装置(ISDN電力低減装置)の第1実施形態を、図1乃至図5に基づいて説明する。ここでは、図1に示す通り、L1線とL2線とから成る回線100と、この回線100に接続された一般的な局装置200及び網終端装置300と、を有するISDN通信システムに、当該電力低減装置を実装した状態を前提に説明する。局装置200は、上記図8及び図9における構成と同様であり、網終端装置300は、図8又は図9における網終端装置301又は302と同様の構成であることを想定する。
(全体的構成)
図1に示すように、網終端装置300とこれに回線100を介して電力(駆動用電力)を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置200とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの回線100間に設けられ、当該システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置11は、網終端装置300に対して並列に接続され且つ局装置200と網終端装置300との通信時にかかる電流の一部を取り込む電流導通部21と、上記通信信号の入出力に影響しない電流(上記通信信号にかかる電流以外の電流)を電流導通部21に受け渡すフィルタ部30と、回線100との容易な接続を実現するための第1コネクタ41及び第2コネクタ42と、を備えている。
電流導通部21は、局装置200と網終端装置300とが通信を行っている間に限りフィルタ部30から受け取った電流を通過させる(通信時に電流導通部21にて取り込んだ電流のみを通過させる)整流ダイオード50と、この整流ダイオード50から流れ込む一定量の電流を通過させるバイパス抵抗60と、を有している。
フィルタ部30は、回線100の交流インピーダンスを高くすることにより、回線100流し込まれる電流から通信信号にかかる電流を排除し、該通信信号の入出力に影響を及ぼさない電流を整流ダイオード50に受け渡すという構成であり、これにより、通信システム内の通信信号に及ぼす影響を抑止するという効果を得ることができる。
すなわち、電流導通部21と回線100との間に装備されたフィルタ部30は、図1のように実装された電力低減装置11が、局装置200と網終端装置300との間でやり取りされる通信信号に与える影響を抑止するための構成として機能するため、これにより、当該通信システムにおいて、電力低減装置11を実装する前と同等の通信性能を確保することが可能となる。
電流導通部21及びフィルタ部30が設けられた基板(図示せず)に装備された第1コネクタ41及び第2コネクタ42は、ISDN回線を用いた一般的な通信システムに対して容易に接続することを可能とするための構成である。すなわち、局装置200側に装備された第1コネクタ41と、網終端装置300側に装備された第2コネクタ42と、によって上記基板に形成された回路と回線100とが連結される。
整流ダイオード50は、通信システム内における通信の有無及び回線100の極性を検出する機能により、局装置200と網終端装置300とが通信をおこなっていることを検出すると共に、当該通信中における電流のみを通過させてバイパス抵抗60に流し込むように構成されている。
バイパス抵抗60は、局装置200と網終端装置300とが通信中である場合に、局装置200からみた回線100側の直流抵抗を低くする作用をもたらすための構成である。
すなわち、通信時にあっては、フィルタ部30が、その一方の端子に連結された回線100のL2線から通信信号にかかる電流以外の電流の一部を取り入れ、この取り入れた電流を電流導通部21が、取り込むと共に内包する整流ダイオード50及びバイパス抵抗60を通過させてフィルタ部30に送り込み、この送り込まれた電流をフィルタ部30が、その他方の端子に連結された回線100のL1線に送り出す、という構成を採っている。
上述した各機能構成を有する電力低減装置11を、局装置200と網終端装置300とを接続するISDN通信システムにかかる回線100に実装すれば、通信性能を低下させることなく、当該システムにて消費される電力を低減させることが可能となる。
次に、本第1実施形態にかかる電力低減装置11が有効に機能するための前提となるISDN通信システムの起動手順の一例について、その概要を説明する。ここでの説明は、ISDNデジタル通信方式の加入者線路信号方式(TTC「Telecommunication Technology Committee」 JT−G961)にて規定されているものである。また、ISDN通信システムとしては、図1に示す通信システムを採用したことを想定する。
この起動手順に従って該システムが起動することにより、局装置200と網終端装置300とが通信を行っている状態となり、すなわち、かかる状態が上述した通信時(通信状態)に相当する。
ISDN通信システムにおいて、呼(呼出し)が発生していない初期状態での回線(加入者線)100の電圧の極性は、L1線がL2線に対して正電位となる極性(L1>L2)であり、一般にノーマル電圧極性と指称される。
無信号の状態である初期状態の間は、回線100がノーマル電圧極性の状態にあり、各装置は動作を行わずに待機するという構成を採っている。また、この回線100がノーマル電圧極性である間の網終端装置300は、入力インピーダンスが高い状態にある。
呼が発生すると網終端装置300は、インピーダンスを低下させて局装置200に対して呼が発生した旨を通知するように構成されている。
網終端装置300からの通知を受けた局装置200は、回線100の電圧の極性を反転させることにより、L2線がL1線に対して正電位となる極性(L1<L2)に切り替える、という構成を採っている。このノーマル電圧極性とは逆の極性は、一般にリバース電圧極性と指称される。
網終端装置300は、リバース電圧極性に反転する際に起動し、ノーマル電圧極性に戻った際に停止するように構成されている。
リバース電圧極性の状態が、ISDN通信システムにおける通信状態であり、すなわち、上述した局装置200と網終端装置300とが通信をおこなっている状態(通信時)である。
したがって、図1のように実装された電力低減装置11の整流ダイオード50は、リバース電圧極性の状態にある場合に、フィルタ部30を通過した電流をバイパス抵抗60に流し込むという構成を採っている。
次いで、図2に基づいて、該通信システムにて消費される電力を低減させるための構成を具体的に説明する。図2(A)は図8に開示した一般的な通信システムにかかる構成を、図2(B)は該通信システムに電力低減装置11を装備した図1に示す場合の構成を、それぞれ抵抗という観点から簡略化して示した概略図である。
また、以下に示す給電電流とは、局装置200が持つ定電流源(図示せず)から供給される電流のことであり、負荷となる抵抗値如何にかかわらず一定の値の電流である。
図2(A)に示す一般的な通信システム、すなわち、本第1実施形態にかかる電力低減装置11を装備していない場合の通信システムでは、局装置200から回線100側をみたときの直流抵抗が、回線100におけるL1線側回線抵抗100A及びL2線側回線抵抗100Bと、網終端装置300の装置内抵抗300Aと、の合成抵抗となる。
したがって、該システムでの消費電力Aは、「消費電力A=(給電電流)×(L1線側回線抵抗100A+L2線側回線抵抗100B+装置内抵抗300A)」なる式により算出することができる。これをL1線側回線抵抗100AとL2線側回線抵抗100Bとが同等であることを想定して一般的に記載すると、「消費電力A=(給電電流)×(回線抵抗×2+網終端装置内抵抗)」と表せる。
一方で、図2(B)に示す電力低減装置11を実装した場合(電力低減装置適用時)の通信システムおいて、局装置200から回線100側を見たときの直流抵抗は、直列に接続されたL1線側回線抵抗100A,L2線側回線抵抗100B,及び装置内抵抗300Aと、これに対して並列に接続されたバイパス抵抗60と、の合成抵抗となる。
なお、実際には、電力低減装置11の内部抵抗全体を考慮する必要があるが、他の内部抵抗はバイパス抵抗60に比べて相対的に小さいため、ここでは便宜上、バイパス抵抗60のみを示すと共にこれに基づいて説明する。
したがって、該システムでの消費電力Bは、「消費電力B=(給電電流)×{(L1線側回線抵抗100A+L2線側回線抵抗100B+装置内抵抗300A)×バイパス抵抗60}/{(L1線側回線抵抗100A+L2線側回線抵抗100B+装置内抵抗300A)+バイパス抵抗60}なる式により算出することができる。これを上記同様にして一般的に記載すると、「消費電力B=(給電電流)×{(回線抵抗×2+網終端装置内抵抗)×バイパス抵抗}/{(回線抵抗×2+網終端装置内抵抗)+バイパス抵抗}」と表せる。
ここで、上記一般的な記載において、給電電流をIとし、「回線抵抗×2+網終端装置内抵抗」をRとし、バイパス抵抗をrとすると、「消費電力A=I×R」,「消費電力B=I×R×{r/(R+r)}」と表せることからも明らかなように、「消費電力A>消費電力B」の関係が成り立つといえる。
したがって、本第1実施形態にかかる電力低減装置11によれば、これを装備した通信システムにて消費される電力を低減することができる。すなわち、回線100に容易に実装できる電力低減装置11を一般的な通信システムに採用すれば、該システムが有している既存の構成を特に変更することなく、消費電力の低減を図ることが可能となる。
次に、図2に示した各抵抗の値〔Ω:オーム〕と給電電力〔A:アンペア〕とを具体的に例示した図3を参照して、消費電力〔W:ワット〕の低減の度合を説明する。
ここでも、ISDN通信システムとして図8に示す構成を採用すると共に、これに図1に示す電力低減装置11が実装される前後の状態をそれぞれ、一般的な通信システム,電力低減装置適用時とし、これらの各状態を対比しながら説明する。また、図3に示す回線抵抗とは、図2におけるL1線側回線抵抗100AとL2線側回線抵抗100Bとの合成抵抗であるものとする。
回線距離が短い場合(近端接続の場合)を例示する図3(A)では、一般的な通信システム及び電力低減装置適応時の双方において、給電電力を0.039〔A〕とし、回線抵抗は0〔Ω〕であるものとし、網終端装置300の装置内抵抗300Aを730〔Ω〕とした場合を示す。
上述した通り、一般的な通信システムと電力低減装置適応時との大きな違いは、10〔kΩ〕(10000〔Ω〕)であるバイパス抵抗60の有無にある。
すなわち、図3(A)に示す通り、このバイパス抵抗60を採用した電力低減装置11を一般的な通信システムに装備することにより、消費電力を約1.11〔W〕から約1.03〔W〕まで低減させることが可能となる。
また、回線距離が長い場合(遠端接続の場合)を例示する図3(B)では、回線抵抗が730〔Ω〕となっている点が上記図3(A)と異なる。かかる場合においても、10〔kΩ〕であるバイパス抵抗60を採用した電力低減装置11を一般的な通信システムに装備することにより、消費電力を約2.22〔W〕から約1.93〔W〕まで低減させることが可能となる。
すなわち、回線距離の如何にかかわらず、本第1実施形態にかかる電力低減装置11を一般的な通信システムに実装することで、該システムにおける消費電力を10%(パーセント)程度低減することができるため、局装置からの電力供給の過多を抑制することが可能となる。
続いて、前述したような定電流源における電圧と電流との関係を示す図4を参照して、一般的な通信システムにおける消費電力が、電力低減装置11を実装したことにより改善された様子を説明する。
ここでは、横軸に給電電圧〔V〕,縦軸に給電電流〔A〕をとると共に、一般的な通信システムで運用されている場合の消費電力を消費電力ポイントAに示し、該システムに電力低減装置11を適用した場合の消費電力を消費電力ポイントBに示す。
この図4からは、一般的なISDN通信システムに電力低減装置11を実装することにより、給電電流が一定である範囲内において、該システムでの消費電力が低減することを読み取ることができる。すなわち、該システムにおいて局装置から給電される電力の削減を実現するために、電力低減装置11が有効に機能することが明示されている。
(動作説明)
続いて、図1に示す電力低減装置11にかかる動作を、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
前述した起動手順に従って、回線100の電圧の極性がリバース電圧極性となりISDN通信システムが通信状態になると、電力低減装置11は、局装置200から回線100に対して供給する電力にかかる電流を流し込める状態を整流ダイオード50によって形成する(図5:S501)。
次いで、電力低減装置11はフィルタ部30にて、回線100から流し込まれる電流の内で通信信号にかかる電流の流入を抑止すると共に、通信信号の入出力に影響しない一定量の電流を取り入れて整流ダイオード50に受け渡す(図5:S502)。
この受け渡された一定量の電流が、整流ダイオード50を介してバイパス抵抗60に流れ込み、さらに、このバイパス抵抗60を経由して回線100へと流し出される。すなわち、フィルタ部30から取り込んだ電流を電流導通部21が、整流ダイオード50及びバイパス抵抗60を介して回線100に送り出す(図5:S503)。
このように、回線100と電力低減装置11との間に電流が流れている状態において、局装置200から回線100の側をみたときの直流抵抗の値は、上述した通り、電力低減装置11と網終端装置300との直流抵抗を合成した値となる。このため、電力低減装置11が実装されていないISDN回線を用いた通信システムにおける直流抵抗値に比べて当該合成抵抗値は小さくなる。
加えて、ISDN回線を用いた通信システムにおいて、局装置200からの給電は定電流源を用いた構成であることから、定電流源からみた当該定電流源の出力側の抵抗を小さくすることができる電力低減装置11を採用することにより、回線100の電圧を低下させることが可能となり、すなわち、該通信システムにて消費する電力を低減させることができる。
上記動作内容は、便宜上、図5に付した番号の順(S501〜S503)に説明したが、本実施形態にかかる電力低減装置11の動作順序は、必ずしもこれに限定されるものではない。
(第1実施形態の効果等)
ISDN回線における局装置からの給電は定電流源を用いた構成であるため、該定電流源からみた出力側の抵抗を低くすることにより、回線の電圧を低下させることができ、結果として、ISDN回線を用いた通信システムにて消費する電力を低減させることが可能となる。
したがって、上述した通り、局装置200からみた回線100側の抵抗(直流抵抗)を低くすることができる電力低減装置11をISDN通信システムに実装すれば、該システムでの消費電力を低減することができることから、局装置からの給電電力を有効に削減することが可能となる。
加えて、本第1実施形態にかかる電力低減装置11は、運用している通信システムの回線距離如何にかかわらず、該システムでの電力の消費を低減させることができ、これにより、局装置からの電力供給の過多を抑制するための調整を有効に実現することが可能となる。
また、電力低減装置11は、運用している通信システムを構成する各装置(局装置や網終端装置等)を変更することなく、回線(加入者線)に対して容易に実装することが可能であり、このため、煩雑な手間を削減することができる。さらに、電力低減装置11は、通信信号に及ぼす影響を抑止するための機能構成を有するため、実装前における該システムの通信性能を、実装後においても同等のレベルで確保することができる。
すなわち、電力低減装置11を回線100に追加して実装することで、「局装置の給電電力=通信システムの消費電力」なる理想的な状態に近づけることが可能となるため、上述した電力供給の過多や無用な電力の消費といった課題を克服することができる。
〔第2実施形態〕
本発明にかかる電力低減装置(ISDN電力低減装置)の第2実施形態を、図6及び図7に基づいて説明する。前述した第1実施形態と同一の構成部材については、同一の符号を用いるものとする。
(全体的構成)
図6に示すように、本第2実施形態のISDN通信方式にかかる電力低減装置12は、網終端装置300に対して並列に接続され且つ局装置200と網終端装置300との通信時にかかる電流の一部を取り込む電流導通部22と、上記通信信号の入出力に影響しない電流(上記通信信号にかかる電流以外の電流)を電流導通部22に受け渡すに受け渡すフィルタ部30と、回線100との容易な接続を実現するための第1コネクタ41及び第2コネクタ42と、外部からユーザ等により発信される指令信号を入力する外部指令入力手段80と、を備えている。
電流導通部22は、上記通信時の電流のみを通過させる整流ダイオード50と、この整流ダイオード50から流れ込む一定量の電流を通過させる複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)と、この複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内から、予め設定された基準情報に基づいて1つ又は複数のバイパス抵抗を選定すると共に、この選定したバイパス抵抗にフィルタ部30から受け取った電流を通過させるスイッチ手段70と、を有している。
すなわち、本第2実施形態における電力低減装置12は、バイパス抵抗を複数個(n個:nは任意の自然数)実装し、且つ図6に示すように、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)と整流ダイオード50との間に、当該複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内から1つ又は複数のバイパス抵抗を選定する機能を有するスイッチ手段70を装備するという構成を採っている。
ここで、上記「予め設定された基準情報」とは、通信システムの運用形態に最適な抵抗値となるように外部から操作設定された上記バイパス抵抗の選定にかかる基準情報である。
本第2実施形態では、この基準情報を含む指令信号を入力した外部指令入力手段80が、当該基準情報を内部メモリ等(図示せず:スイッチ手段70に設けられた内部メモリも含む)に記憶処理し、スイッチ手段70は、この記憶された基準情報を参照してバイパス抵抗の選定を実行するように構成されている。また、外部指令入力手段80を別途設けずに、スイッチ手段70が外部指令入力手段80と同様の構成を内包するように構成してもよい。
上記各構成により本第2実施形態にかかる電力低減装置12は、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内から、通信システムの運用形態に適した数のバイパス抵抗を任意に選定することができるため、多様な運用形態に応じた最適な抵抗値を自装置内に形成することが可能となる。
他の構成内容は、前述した第1実施形態にかかる電力低減装置11と同様である。
(動作説明)
図6に示す電力低減装置12にかかる動作を、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
前述した第1実施形態と同様に、ISDN通信システムが通信状態となった際に電力低減装置12は、局装置200から回線100に向けて供給される電力にかかる電流を流し込める状態を整流ダイオード50によって形成する(図7:S701)。
次いで、電力低減装置12はスイッチ手段70にて、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内から1つ又は複数のバイパス抵抗を、運用形態に適した抵抗値となるように予め設定された基準情報に基づいて選定する(図7:702)。
続いて、電力低減装置11はフィルタ部30にて、通信信号の入出力に影響しない一定量の電流を取り入れて整流ダイオード50に受け渡す(図7:S703)。
次に、この一定量の電流を整流ダイオード50を介して受け取ったスイッチ手段70が、上記により選定したバイパス抵抗にこれを流し込むことで、電力低減装置12は当該電流を回線100へと送り出す。すなわち、フィルタ部30から取り込んだ電流を電流導通部22が、スイッチ手段70にて選定したバイパス抵抗を介して回線100に送り出す(図7:S704)。
すなわち、本第2実施形態では、電流導通部22が、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内からフィルタ部30より取り込んだ電流を通過させる1つ又は複数のバイパス抵抗を上記基準情報に基づいて選定しておくことを特徴とする。
上記動作内容は、便宜上、図7に付した番号の順(S701〜S704)に説明したが、本実施形態にかかる電力低減装置12の動作順序は、必ずしもこれに限定されるものではない。また、上記各ステップS701〜S704(図7)における各工程の実行内容の一部又は全部をプログラム化すると共に、当該一連の各制御プログラムをコンピュータによって実現するように構成してもよい。
(第2実施形態の効果等)
局装置200からみた回線100側の抵抗(直流抵抗)を低くすることができる本第2実施形態にかかる電力低減装置12を、ISDN通信システムに実装すれば、前述した電力低減装置11の場合と同様に、該システムでの消費電力を低減することができることから、給電電力を有効に削減することが可能となる。
また、運用している通信システムを構成する各装置を変更することなく容易に実装可能であり且つ通信信号に及ぼす影響を抑止するための機能構成を有する電力低減装置12は、利便性に優れ且つ実装後においても該システムの通信性能を維持することができる。
加えて、運用している通信システムの回線距離如何にかかわらず、該システムでの電力の消費を低減させることができる電力低減装置12を採用すれば、局装置からの電力供給の過多を抑制するための調整を有効に実現することが可能となる。
さらに、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)と、これら複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)の内から1つ又は複数のバイパス抵抗を組み合わせて選定する機能を有するスイッチ手段70と、を含む本第2実施形態にかかる電力低減装置12によれば、通信システムの運用形態に合わせた好適な抵抗値を、複数のバイパス抵抗60(1)〜(n)を組み合わせることにより外部から柔軟に設定することができるため、これにより、該通信システムにおいて消費される電力を最適な値に設定することが可能となる。
なお、上述した各実施形態は、電力低減装置、及び電力低減方法における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もある。しかし、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
以下は、上述した実施形態についての新規な技術的内容の要点をまとめたものであるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
(付記1)
網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、当該システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置であって、
前記網終端装置に対して並列に接続され且つ前記局装置と当該網終端装置との通信時にかかる電流の一部を取り込む電流導通部と、
この電流導通部と前記回線との間に装備され、前記通信信号にかかる電流以外の電流を当該電流導通部に受け渡すフィルタ部と、を有することを特徴とした電力低減装置。
(付記2)
前記付記1に記載の電力低減装置において、
前記電流導通部は、一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含むことを特徴とした電力低減装置。
(付記3)
前記付記1に記載の電力低減装置において、
前記電流導通部は、
一定量の電流を通過させる複数のバイパス抵抗と、
この複数のバイパス抵抗の内から、予め設定された基準情報に基づいて1つ又は複数のバイパス抵抗を選定するスイッチ手段と、を含むことを特徴とした電力低減装置。
(付記4)
前記付記1乃至3の何れか1つに記載の電力低減装置において、
前記電流導通部は、前記通信時に取り込んだ電流のみを通過させる整流ダイオードを含むことを特徴とした電力低減装置。
(付記5)
前記付記1乃至4の何れか1つに記載の電力低減装置において、
前記電流導通部及びフィルタ部が設けられた基板に形成された回路と前記回線とを連結する、前記基板の前記局装置側に装備された第1コネクタと、前記基板の前記網終端装置側に装備された第2コネクタと、を有することを特徴とした電力低減装置。
(付記6)
網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、前記通信信号にかかる電流の流入を抑止するフィルタ部と前記網終端装置に対して並列に接続され且つ一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含む電流導通部とを備え、前記通信システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置にあって、
前記局装置と網終端装置との通信時に、
前記通信信号にかかる電流以外の電流の一部を前記フィルタ部にて取り入れ、
この取り入れた電流を前記電流導通部が取り込むと共に前記バイパス抵抗を介して前記回線に送り出すことを特徴とした電力低減方法。
(付記7)
前記付記6に記載の電力低減方法において、
前記電流導通部は、前記バイパス抵抗として複数のバイパス抵抗を含むと共に、この複数のバイパス抵抗の内から前記フィルタ部より取り込んだ電流を通過させる1つ又は複数のバイパス抵抗を予め設定された基準情報に基づいて選定しておくことを特徴とした電力低減方法。
本発明は、運用中のISDN回線を用いた通信システムに適用可能である。
11,12 電力低減装置
21,22 電流導通部
30 フィルタ部
41 第1コネクタ
42 第2コネクタ
50 整流ダイオード
60 バイパス抵抗
60(1)〜60(n) バイパス抵抗
70 スイッチ手段
80 外部指令入力手段
100 回線
100A L1線側回線抵抗
100B L2線側回線抵抗
200 局装置(LT)
210 LT側通信トランス
220 給電部
230 給電極性切替部
300,301,302 網終端装置(NT)
300A 装置内抵抗
310 NT側通信トランス
320 フィルタ
330 DC/DC電源
340,343 終端抵抗
350,421,422 AC/DC電源
401,402 端末装置
410 端末給電部

Claims (7)

  1. 網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、当該システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置であって、
    前記網終端装置に対して並列に接続され且つ前記局装置と当該網終端装置との通信時にかかる電流の一部を取り込む電流導通部と、
    この電流導通部と前記回線との間に装備され、前記通信信号にかかる電流以外の電流を当該電流導通部に受け渡すフィルタ部と、を有することを特徴とした電力低減装置。
  2. 前記請求項1に記載の電力低減装置において、
    前記電流導通部は、一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含むことを特徴とした電力低減装置。
  3. 前記請求項1に記載の電力低減装置において、
    前記電流導通部は、
    一定量の電流を通過させる複数のバイパス抵抗と、
    この複数のバイパス抵抗の内から、予め設定された基準情報に基づいて1つ又は複数のバイパス抵抗を選定するスイッチ手段と、を含むことを特徴とした電力低減装置。
  4. 前記請求項1乃至3の何れか1つに記載の電力低減装置において、
    前記電流導通部は、前記通信時に取り込んだ電流のみを通過させる整流ダイオードを含むことを特徴とした電力低減装置。
  5. 前記請求項1乃至4の何れか1つに記載の電力低減装置において、
    前記電流導通部及びフィルタ部が設けられた基板に形成された回路と前記回線とを連結する、前記基板の前記局装置側に装備された第1コネクタと、前記基板の前記網終端装置側に装備された第2コネクタと、を有することを特徴とした電力低減装置。
  6. 網終端装置とこれに回線を介して電力を送出し且つ通信信号の入出力を行う局装置とを含むISDN通信方式にかかる通信システムの前記回線間に設けられ、前記通信信号にかかる電流の流入を抑止するフィルタ部と前記網終端装置に対して並列に接続され且つ一定量の電流を通過させるバイパス抵抗を含む電流導通部とを備え、前記通信システムにて消費される電力を低減させる電力低減装置にあって、
    前記局装置と網終端装置との通信時に、
    前記通信信号にかかる電流以外の電流の一部を前記フィルタ部にて取り入れ、
    この取り入れた電流を前記電流導通部が取り込むと共に前記バイパス抵抗を介して前記回線に送り出すことを特徴とした電力低減方法。
  7. 前記請求項6に記載の電力低減方法において、
    前記電流導通部は、前記バイパス抵抗として複数のバイパス抵抗を含むと共に、この複数のバイパス抵抗の内から前記フィルタ部より取り込んだ電流を通過させる1つ又は複数のバイパス抵抗を予め設定された基準情報に基づいて選定しておくことを特徴とした電力低減方法。
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