JP6128578B2 - エンドトキシンの濃度測定方法およびエンドトキシンの濃度測定装置 - Google Patents

エンドトキシンの濃度測定方法およびエンドトキシンの濃度測定装置 Download PDF

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本願発明は、グラム陰性菌が有するエンドトキシンの濃度測定方法およびエンドトキシンの濃度測定装置に関するものである。
エンドトキシンは、大腸菌やサルモネラ菌をはじめとするグラム陰性菌の外膜を構成している毒性物質の総称であり、その本体はリポ多糖(Lipopolysaccharide;LPS)である。
エンドトキシンは、極微量(たとえば、ng/mLオーダー)でも血液中に混入すると、発熱作用、ショック死、血管内血液擬固、または敗血症等を引き起こす。そのため、これらの製剤中のエンドトキシン含有量は法的に規制されている。
エンドトキシンは、医薬品の生産プロセス中に生息する細菌が破壊(死滅・溶菌)することによって遊離し、医薬品に混入する可能性がある。例えば、輸液や注射製剤等のような非経口医薬品は、主に発酵技術や遺伝子組換え技術により製造されており、製造工程において宿主細胞壁成分からの混入が懸念される。したがって、これら医薬品の安全性を確保する上でエンドトキシン含有量を、簡便かつ高感度に測定することは必須となっている。
エンドトキシンの濃度測定、定量方法としては、リムルス試験が主流となっている。このリムルス試験は、カブトガニの血球抽出液がエンドトキシンにより凝固する現象を利用したものである。リムルス試薬の凝固反応は、哺乳類の血液擬固系に類似したカスケード反応で起こる。したがって、少量のエンドトキシンのシグナルを増幅して擬固が引き起こされるもので、非常に高感度な測定系である。
その詳細を説明すると、まず、エンドトキシンがC因子を活性化してCa因子とし、これがB因子を活性化してBa因子を生成する。このBa因子は、プレ凝固酵素を凝固酵素に活性化し、これが凝固タンパク質(コアギュローゲン)を加水分解する。凝固タンパク質の分解物は、ジスルフィド結合をしてコアギュリンとなり、これがさらに集まりゲル化する。
さらに、この現象を利用したエンドトキシンの高感度測定法も知られており、この測定法には、比濁法と比色法がある。
比濁法は、リムルス試薬のゲル化時間とエンドトキシンの濃度が比例することを測定原理としている。この比濁法による測定法では、ゲル化時間の測定を透過光の変化として捕らえて試料の反応開始から一定の濁度に達するまでの反応時間をゲル化時間としてエンドトキシン量を定量する。ゲル化時間とエンドトキシン濃度の両対数プロットは、ほぼ直線に近い相関を示す(比濁時間法)。
一方、比色法(発色合成基質法)は、コアギュリンの代わりに発色合成ペプチドを使用し、その加水分解速度からエンドトキシン濃度を求める。ここで使用する発色合成基質は、コアギュリンのアミノ酸配列の一部分であるLeu−Gly−ArgのArgのカルボキシル基にp−ニトロアニリン(pNA)がペプチド結合したものである。凝固酵素(クロティング酵素)は、この発色合成基質を加水分解し、pNAを遊離する。測定方法には、一定時間後の吸光度を用いるエンドポイント法と加水分解反応の初速度を用いるカイネティック法がある。反応の初速度は、反応曲線の立ち上がり部分における接線の傾きとして得られ、単位時間当たりの吸光度変化(Abs./min)として表す。各濃度のエンドトキシンで測定した初速度とエンドトキシン濃度のプロットは、相関を示す(たとえば、特許文献1参照)。
最近では、遺伝子改変によって10倍以上の発光強度を有する高感度ルシフェラーゼと発光合成基質を使用し、その発光量から試料中のエンドトキシン濃度を測定する方法も開発されている。ここで使用する発光合成基質は、Benzoyl-Leu-Arg-Arg-aminoluciferinである。凝固酵素(クロティング酵素)は、この発光合成基質を加水分解し、aminoluciferinを遊離する。遊離したaminoluciferinがATPと高感度ルシフェラーゼによって発光するため、発光計でエンドポイント測定を行うことができる(たとえば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記のような従来のリムルス試験およびリムルス試験を基にした測定方法は、測定装置および試薬ともに高価であり、オンサイト測定が困難であった。
また、多段階にわたる反応を経る凝固過程の経時変化を測定原理としていることからも明らかなように、特に低濃度のエンドトキシンほどその凝固時間(測定時間)を要すること、さらには測定者間により測定値にばらつきが生じること等の問題があった。
ところで、試料中の目的成分の定量法において、簡便かつ高感度な測定方法としては電気化学的な測定方法がある。この方法では、溶液中の目的成分あるいは目的成分の濃度変化に対応して濃度が変化する特定成分について、その濃度あるいは濃度変化を電極上での電流信号として変換、出力することを特徴としている。
上記のような背景から、本発明は、リムルステストに替わる新規なエンドトキシンの測定法として、簡便かつ高感度化の目標に最適の方法である電気化学的手法による簡便かつ高感度なエンドトキシンの測定法を提供するものである。しかしながら、測定対象であるエンドトキシンを構成する主要成分は多糖類と脂質類であり、それら自体は何ら電気化学的な活性を示さないため、本発明者らは、エンドトキシンの多糖部分を認識し、錯体形成するボロン酸およびその誘導体と、可逆的酸化還元能を併せ持つ化合物を使用することで、エンドトキシンの測定を上記の電気化学的手法によって行うことに成功した(特許文献3、非特許文献1)。
具体的には、可逆的酸化還元物質がエンドトキシンと錯体形成を起こす前後で、その電極上での電解電流の大きさが変化することに着目し、未反応の可逆的酸化還元物質の電解還元あるいは電解酸化と、酵素反応による酸化あるいは還元とを共役させることにより、可逆的酸化還元物質の上記の電気化学活性の変化を増幅して測定することが可能であることを見いだした。
そのため結果的にその変化を引き起こすエンドトキシン量を定量的、かつ簡便、高感度、高選択的に測定することが可能となることを見いだした。また、ボロン酸に代わりエンドトキシン認識性の高いポリミキシンを導入したメディエータも開発し、ボロン酸よりもさらにエンドトキシンに対する選択性を向上させた(非特許文献2)。
特開平06−324047号公報 WO2009/063840 特開2007-093378号公報 J.CHEM.SOC.CHEM.COMM.(1995)1771-1772 Biosensors and Bioelectronics 22 (2007) 1527-1531 Biosensors and Bioelectronics 26 (2011) 2080-2084
しかしながら、上記非特許文献1のような測定方法は、測定している糖が単糖および二糖類であり、定量域が10-5〜1Mと比較的高濃度域である。すなわち、多糖類を主要成分としているエンドトキシンの測定には適用できないという問題があった。また、上記のとおり、エンドトキシンを構成する主要成分は、多糖類と脂質類ではあるが、それら自体は何ら電気化学的な活性を示さないことから、エンドトキシンの測定には、上記のような電気化学的な測定方法を利用することはできなかった。
また、上記特許文献3、非特許文献2および3に記載の測定方法は、エンドトキシンの電気化学的測定を可能とし、ボロン酸およびその誘導体を使用した場合、検出限界濃度が100〜500ng/mLであり、ポリミキシン使用時で検出限界濃度が50ng/mLと優れた測定方法であったが、ng/mLオーダーで敗血症等を引き起こすエンドトキシンの測定方法としては、さらなる検出感度の向上が望まれていた。
そこで、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解決すべく、発明者の鋭意研究の結果に基づいたものであり、電気化学的測定を活用して、簡便、かつ、高感度にエンドトキシンの濃度をすることのできる、新しいエンドトキシンの濃度測定方法およびエンドトキシンの濃度測定キットを提供することを課題としている。
本願発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、以下の工程、
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、フェロセン、ルテニウム錯体及びキノンの少なくとも一種である可逆的酸化還元物質修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)レドックス種として、鉄(II)イオン、セリウム(III)イオン、フェリシアン化カリウム、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、フェロセン誘導体の少なくとも一種を含む試料溶液中で、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を含むことを特徴とする。
また、本願発明は、第2には、以下の工程、
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化し、さらに酸化還元酵素を固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)前記第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素に対する基質および前記電極上に別途固定化した酸化還元酵素に対する基質の存在下に、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を特徴とする。第3には電極上に固定する第一のエンドトキシン認識分子ならびに第二のエンドトキシン認識分子は、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、核酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N,N-diethylaminoethanol(DEAE)化多糖類の少なくとも一種であることを特徴とする。第には、第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素が、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ジアフォラーゼ、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、及びグルタミン酸酸化酵素の少なくとも一種であることを特徴とする。
さらに、第には、第1または第2の発明に記載されたエンドトキシンの濃度測定法において、試料中に添加したレドックス種または電極上に別途固定化した酸化還元酵素により可逆的酸化還元物質を酸化あるいは還元する反応と、電極反応により可逆的酸化還元物質を還元あるいは酸化して再生する反応とからなる反応サイクルを形成させ、エンドトキシンの存在に応じて電気化学シグナルを増幅し、このときの電流変化を測定する。第には、測定対象のエンドトキシンは、内毒素、リポ多糖、発熱物質およびパイロジェンの少なくとも一種である。
そして、第には、エンドトキシンの濃度測定キットであって、上記第1から第のいずれかの発明に記載のエンドトキシンの濃度測定方法を実施可能であることを特徴とする。
本発明のエンドトキシンの濃度測定方法によれば、エンドトキシンの電気化学的測定における感度を向上させ、その結果、簡便、かつ、高感度にエンドトキシンの濃度を測定することができる。
また、本発明のエンドトキシンの濃度測定キットによれば、電気化学的測定を活用して、使用者の熟練度を問わずに、簡便、かつ、高感度にエンドトキシンの濃度を測定することができる。
本願発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
本願発明は、電気化学的測定方法による、試料中に含まれるエンドトキシンの濃度測定方法である。具体的には、エンドトキシンを認識する第一のエンドトキシン認識分子を固定化した電極に試料を添加し、試料中のエンドトキシンを吸着させ、さらに可逆的酸化還元能を有する第二のエンドトキシン認識分子を添加し、電極上で可逆的酸化還元物質の濃度変化を増幅して、このときの電流変化を電気化学的に測定することを特徴とする。
本願発明の発明者は、先に述べた電気化学的なエンドトキシンの測定方法の開発(特開2007-093378)を踏まえて、鋭意研究したところ、エンドトキシンを高選択的に認識する、第一のエンドトキシン認識分子を電極上に設け、試料中のエンドトキシンをその電極上へ濃縮することに着目した。また、その後に電気化学シグナルを得ることのできる可逆的酸化還元物質もしくは可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素が修飾された、第二のエンドトキシン認識分子を作用させ、エンドトキシンの存在によって電気化学シグナルが得られることを見いだした。さらにはこの可逆的酸化還元物質を再生可能なレドックス種、ならびに酵素とその基質の組合せによって、得られた電気化学応答をさらに増幅させ測定することが可能になる。
次に、本願発明のエンドトキシンの濃度測定の原理を以下に説明する。また、図1に、概略図として、本願発明におけるエンドトキシンの濃度測定方法の原理を例示した。
本発明は、エンドトキシン認識分子(第一のエンドトキシン認識分子)を電極上に化学架橋固定した電極を作用電極として用いる。作用電極上にエンドトキシン試料を添加し、捕捉する。次にここへエンドトキシン認識部位と、可逆的酸化還元物質もしくは可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素を併せ持つ物質(第二のエンドトキシン認識分子)を作用させ、エンドトキシン上へ捕捉させる。この時、エンドトキシンの量に応じて、可逆的酸化還元性を有する第二のエンドトキシン認識分子が捕捉される。
したがって、既知のエンドトキシン量とそれに応じ捕捉された第二のエンドトキシンに修飾された可逆的酸化還元物質もしくは酵素より生成される可逆的酸化還元物質の量との間で検量線を作成し、該可逆的酸化還元物質を測定すれば、試料中のエンドトキシンの量を知ることが可能となる。
この可逆的酸化還元物質とは、電子の授受により、可逆的に酸化型および還元型の状態をとりうる物質のことであり、本発明は、基本的にはこの電子の授受により生ずる、電極に流れる電流を測定することにより可逆的酸化還元物質の量を測定して、エンドトキシン量を把握するものであるが、この測定電流は増幅されており、高感度で測定し得る点に特徴を有する。
さらに、上記電極反応により酸化型あるいは還元型に移行した可逆的酸化還元物質は、溶液中に混在させたレドックス分子、または電極に固定化した酸化還元酵素により、再び元の状態(還元型あるいは酸化型)に再生される。この可逆的酸化還元物質を介する酸化、還元およびその再生反応は、反応サイクルを形成し、この反応サイクルの繰り返しにより、電極に流れる電流は増幅される。 したがって、エンドトキシン上に捕捉された第二のエンドトキシン認識分子を介して電極上に捕捉された可逆的酸化還元物質ならびに酵素によって生成した可逆的酸化還元物質が微量であっても、その測定電流は増幅されており、これにより、高感度でエンドトキシン量を測定することが可能となるものである。
これら一連の反応は、エンドトキシン認識分子を電極上に固定化し、固相におけるエンドトキシンの濃縮によって可能となったものであり、従来の液相でのエンドトキシンの濃度測定方法では実現不可能であった感度向上をもたらすものである。
本願発明において利用される電極の材質としては特に制限はないが、耐食性等から、白金、金等の貴金属あるいはカーボン系の材料が好都合に使用される。
また、電極上に固定する認識分子は主に、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、核酸から構成される生体分子やポリカチオン合成分子であり、具体的には、ポリαリジン、ポリεリジンなどのポリアミノ酸、ポリミキシンBや、LPS結合タンパク質、エンドトキシン中和タンパク質、抗LPS抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、DEAE化多糖類のように、エンドトキシンと特異的に結合する能力を持つ認識分子を使用することができる。上述のポリεリジンのLPSに対する特異的吸着性については、例えば特開2002-263486およびAnalytical Biochemistry 385 (2009) 368-370に記載されている。
さらにこれらの分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基などにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を行うことで、認識分子の安定な固定化が可能となる。例えば、電極としてカーボン電極を選択した場合、カーボン表面のヒドロキシル基に特異的に反応するトリエトキシシリル基とその逆末端に生体分子のアミノ基と反応するようなN-ヒドロキシスクシンイミド基を有する化合物が使用できる。一例としてN−ヒドロキシスクシンイミドエステル−トリエトキシシランの構造式を示す。

Figure 0006128578
本発明において使用される第二の認識分子としては、ポリミキシンB-フェロセン複合体のようにエンドトキシンとの錯体形成機能(ポリミキシンB)と、可逆的酸化還元能を併せ持つ化合物(フェロセン)が使用されるが、これに限らず、認識分子としては、ポリαリジン、ポリεリジンなどのポリアミノ酸、ポリミキシンBや、LPS結合タンパク質、エンドトキシン中和タンパク質、抗LPS抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチドの少なくとも一種から構成される生体分子、またはポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、DEAE化多糖類のように、エンドトキシンと特異的に結合する能力を持つが、可逆的酸化還元性を有しない物質であっても、分子の側鎖としてフェロセン、ルテニウム錯体、キノン等の可逆的酸化還元能を有する機能分子団を導入することにより、使用することができる。
また、可逆的酸化還元物質そのものでなくても、可逆的酸化還元物質を生成しうる酵素、具体的にはアルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ジアフォラーゼ、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、及びグルタミン酸酸化酵素などを導入することにより、使用することができる。
さらには電極反応生成物を再生するための物質としては、上記第二のエンドトキシン認識分子に修飾された可逆的酸化還元物質あるいは修飾酵素により生成された可逆的酸化還元物質を電子受容体あるいは供与体としてスムースに反応が進むものであれば特に制限はないが、安定で、安価なものが好都合に利用される。
具体的には、第二のエンドトキシン認識分子としてポリミキシンB-フェロセン複合体を可逆的酸化還元物質とする場合には、弱酸性水溶液中においてポリミキシンが溶解しやすく、かつそれ自体が酸化しにくいレドックス種、具体的には鉄(II)イオン、セリウム(III)イオン、フェリシアン、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、フェロセン誘導体などを試料溶液中に混在させることで電流値を増幅させることに使用できる。
また、第二の認識分子としてアルカリフォスファターゼで修飾されたポリミキシンBを可逆的酸化還元物質とする場合には、中性付近の水溶液中、グルコースオキシダーゼを基質であるp-アミノフェノール酸化時の電子受容体として用いることができる。またその他の酵素で増幅を行う場合、酸化酵素、例えばコリン酸化酵素、乳酸酸化酵素、グルタミン酸酸化酵素等が、もしくは基質還元時の電子供与体として用いる還元酵素、例えばペルオキダーゼ等が適宜に利用される。
上記酵素の電極上への固定化法としては、特段限定されるものではないが、酵素を高活性に保持でき、基質及び上記可逆的酸化還元物質の透過が充分であるような担体材料、固定化方法が選択、利用される。例えば、電極表面に形成した多孔性の担体に酵素を結合させる方法や、アルブミンおよびグルタルアルデヒドによる酵素固定架橋膜を電極表面に形成する方法等、透過性が良いことが知られている方法が採択できる。
次に、本発明の一実施形態について、一例を挙げて詳細に説明する。ここではカーボン薄膜を例に説明する。まず、基板となるカーボン薄膜電極に架橋剤(リンカー)を反応させる。具体的にはカーボン表面のヒドロキシル基と架橋剤のトリエトキシシリル基をカップリング反応させる。その後、電極上には架橋剤の片末端であるN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基が導入される。ここにポリミキシンB溶液を添加するとポリミキシンBのアミノ基と架橋剤のNHSがカップリング反応を起こすため、電極上には化学的架橋されたポリミキシンBが導入・修飾される。このようにして調製されたエンドトキシン認識分子固定化電極を作用電極とする。
この作用電極上にエンドトキシンを滴下し、エンドトキシンを電極上に捕捉する。次に、エンドトキシン認識部位と、可逆的酸化還元物質もしくは可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素を併せ持つ第二のエンドトキシン認識分子を作用させ、エンドトキシン上へさらに捕捉させる。この時、エンドトキシンの量に応じて、第二のエンドトキシン認識分子が捕捉される。
このような処理を施した作用電極と、適当な対向電極、参照電極と組み合わせて、電気化学測定を行うことで、エンドトキシン量に応じて捕捉された可逆的酸化還元物質が電極上で酸化・還元される。
さらには、この可逆的酸化還元物質を再生・応答増幅が可能なレドックス種を電解質水溶液中に添加するか、もしくは別途用意した可逆的酸化還元物質を再生・応答増幅が可能な酵素膜とその基質を含む緩衝液中に挿入することで、可逆的酸化還元物質の応答性は増幅される。
電極表面の捕捉される第二のエンドトキシン認識分子の中の可逆的酸化還元能を有する物質の濃度に特に制限はないが、増幅測定により明瞭な電流応答を与え得る濃度として0.1-10 μmol/L 程度が好都合である。使用する電解質溶液の種類にはアルカリフォスファターゼによる可逆的酸化還元物質の生成の際にはリン酸緩衝液はその酵素活性を阻害するので避ける必要があるが、それ以外では特に制限はない。
また緩衝液のpHには修飾酵素活性、ならびに増幅効果を得るための酵素と両酵素を安定に保持しうるpHの緩衝液の使用が好ましく、例えば上記アルカリフォスファターゼならびにグルコースオキシダーゼを共用する場合においては、中性のpH7.0-8.0前後、濃度1-100 mmol/LのTris緩衝液等が好都合に用いられる。
具体的には、可逆的酸化還元物質としてフェロセン-PMB、鉄(II)イオンを用いた場合、pH 5.0でサイクリックボルタモグラムを測定すると、+0.55-0.60 V(対銀-塩化銀電極)付近では、電極上で以下の反応が生ずる。
(a)フェロセン-PMB(還元型) → フェロセン-PMB(酸化型) + e
また、ここにレドックス種である鉄(II)イオンを還元剤として添加すると、フェロセン-PMBでは以下の還元反応が生ずる(可逆的酸化還元物質の再生反応)。
(b)フェロセン-PMB(酸化型) + Fe2+ →フェロセン-PMB(還元型)+Fe3+
また、例えば、可逆的酸化還元物質を生成可能なアルカリフォスファターゼ(ALP)-PMBを用いた場合、ここに酵素基質であるp-アミノフェノールリン酸(PAPP)を添加すると、酵素反応生成物であるp-アミノフェノール(PAP)が生成する。PAP生成後、50mM Tris-HClバッファー(pH 7.4)でサイクリックボルタモグラムを測定すると、+0.45 V(対銀-塩化銀電極)付近では、電極上で以下の反応が生ずる。
(a)PAP → p-イミノキノン(PIQ) + e
また、例えば電極上に別途設けた酵素膜、例えば酵素としてグルコースオキシダーゼを用いた場合、ここにグルコースオキシダーゼの基質であるグルコースを添加すると、以下の酵素反応が生ずる。
(b)PIQ + グルコース →PAP+グルコノラクトン
したがって、これらのように鉄(II)イオンによるフェロセン-PMB(還元型)の還元反応、ならびにグルコースオキシダーゼによる酵素反応によりPAPが再生し、さらに電極でのフェロセン-PMB、PAPの酸化反応、ならびにこれらの再生反応のサイクルを繰り返す。このサイクリックな反応により鉄(II)イオン、ならびにグルコース添加前に比べて、添加により3-1000倍程度の電流の増加が観測される。この反応サイクルにおいて、フェロセン-PMB、は、酸化型、還元型を繰り返す。また、PAPは、PAPとPIQを繰り返す。これらの両物質の合計量は変わらずフェロセン-PMB、PAPはメディエータとしても機能する。また、上記反応式中eの量、つまり電極における電流は、添加する鉄(II)イオン、グルコースの量をそれぞれ過剰にすれば、この反応に関与する可逆的酸化還元物質であるフェロセン-PMB、PAPの量に依存する。
すなわち、電極表面に濃縮ならびに生成された可逆的酸化還元物質のみが電極反応、還元剤や酵素による再生反応のサイクルを繰り返し、このときの電流は電極表面に濃縮ならびに生成された可逆的酸化還元物質の濃度にほぼ比例する。したがって、試料中のエンドトキシン濃度の増加に応じて、すなわち電極表面に濃縮ならびに生成される可逆的酸化還元物質の濃度が増加するほど、電流が増加する。いいかえれば、電流の増加の度合いから、存在するエンドトキシンの量(濃度)を把握することが出来る。
前記実施形態では、フェロセン-PMB、鉄(II)イオンの組合せと、ALP-PMBとグルコースオキダーゼ/グルコースの組合せによる例を説明したが、もちろん、フェロセン-PMBとグルコースオキダーゼ/グルコース、ALP-PMBと鉄(II)イオンなどの組合せでも良い。
また、本願発明における測定対象となるエンドトキシンは、特に限定されるものではないが、例えば、内毒素(細胞壁の成分であり積極的には分泌されない毒素)、リポ多糖、発熱物質およびパイロジェンの少なくともいずれかであると、より効率よく測定できる。
以上のような構成を有するため、本願発明は従来のエンドトキシンの電気化学的測定方法に比して、約1.25〜300倍の感度向上が可能である。
本願発明のエンドトキシンの測定キットは、少なくともエンドトキシン認識分子を固定化した電極を備えている電気化学セルと、エンドトキシン認識能と可逆的酸化還元能を併せ持つ物質とを具有していることを特徴としている。さらに、応答電流を増幅するための増幅試薬、増幅酵素、酵素に対する基質、あるいは、pH調製剤、電流測定装置等、本発明の測定系を構築するための部材あるいは試薬等を組み合わせて測定キットとしてもよい。
ここで、酸化還元酵素や、電極、基質等は、上記にて説明した本願発明のエンドトキシンの濃度測定方法と同様のものを使用することができる。
上記のとおりの本願発明の測定方法および測定キットは、培養液、生体試料、注射液、輸液、透析液等の医薬品およびそれらの原材料である精製水の製造、貯蔵、分析、利用等に係る分野において利用される。例えば、注射製剤など非経口医薬品は主に発酵技術や遺伝子組換え技術により製造されており、宿主細胞壁成分からの混入が懸念されるため、これらの製剤を生体に接種した場合に有害な障害を引き起こすエンドトキシンを除去する必要がある。また、敗血症患者の治療法においては、血液中エンドトキシンを体外循環により人工透析的に除去させる。これらエンドトキシンの除去が、目的とおり行われたか否かの判別のためには微量のエンドトキシンを簡便に測定するための方法が必要である。さらに、注射器、透析膜等の医療器具の製造においても、エンドトキシンの確認試験が必要不可欠である。このような状況の中で、本願発明の測定方法および測定キットは、これらエンドトキシンを測定する上で極めて有効であり、また、本願発明の測定キットにおいては、使用者の熟練度を問わずに、エンドトキシンの濃度を測定することができる。
その際の具体的な形態は、上記測定キットに特に限定されるものではなく、例えば、フローインジェクション分析用の検出器として使用しても良い。この場合、製造の精製、人工透析等の治療後の最終工程に組み込んで行う形態がより好ましい。
以下、本願発明について実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。電気化学的な測定法として下記ではサイクリックボルタンメトリーによる実施例を示すが、その他にも、矩形波ボルタンメトリー、微分パルスボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、交流ボルタンメトリー、等の手法が適宜使用可能である。
<ポリミキシンB固定化電極およびフェロセン修飾ポリミキシンBによるエンドトキシンの濃度測定>
(参考例1) シリコンウェハ上に成膜されたカーボン薄膜電極表面に、二官能性の架橋剤N−ヒドロキシスクシンイミドエステル−トリエトキシシランの1mMトルエン溶液を30℃、15時間でカップリング反応させ電極表面にN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を導入した。ここに1mMポリミキシンB水溶液(50mM酢酸緩衝液でpH5.0に調整)中へ浸し、30℃で1時間静置した後、電極表面をPBSで洗浄し、ポリミキシンB固定化電極を作製した。
ポリミキシンB固定化電極上に、濃度が200ng/mLとなるように日本薬局方エンドトキシン標準品を10μL滴下し、室温で30分間静置しエンドトキシンを吸着させた後、電極表面をリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で洗浄した。続いて200μg/mLフェロセン修飾ポリミキシンB(Fc-PMB)(50mM酢酸緩衝液でpH5.0に調整)を10μL滴下し、室温で30分間静置し、エンドトキシンを介してFc-PMBも電極上に吸着させ、電極をPBSで洗浄した。この操作により、電極に可逆的酸化還元能を有する官能基であるフェロセン基を導入することができる。
この電極をpH5.0の50mmol/L酢酸緩衝液中に挿入し、ポテンシオスタット(CHIインスツルメンツ社製、ALS760B)に参照電極(銀−塩化銀:Ag/AgCl)、対向電極(白金:Pt)とともに接続した。一定の走引速度100mV/秒と設定してサイクリックボルタンメトリー測定を行った場合の結果を図2に示した。図2において、横軸は印加電圧、縦軸は応答電流である。
(実施例1)
測定前の試料中に1 mmol/Lの塩化鉄(II)水溶液を添加した点以外は、参考例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定を行った場合の結果を図2に示した。
(比較例1)
ポリミキシンB固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、参考例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図2に示した。
(比較例2)
ポリミキシンB固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図2に示した。
図2から明らかなように、電極表面にエンドトキシン標準品を吸着した参考例1では、53nA程度の応答が0.59V付近に観測された。この応答は、表面に吸着したFc-PMB(red)が酸化されてFc-PMB(ox)となる酸化反応と考えられる。一方、エンドトキシンを吸着させない比較例1では30nA程度の電流応答に留まったことから、この電流応答差(23 nA)が電極表面に吸着したエンドトキシンに起因するものと推察された。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシン吸着による電流増加はその濃度に依存しており、本法ではS/N=2(ノイズ幅1nA)とすると、およそ20ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
さらに、ここに還元剤である鉄(II)イオンを添加した実施例1では、酸化電流値が大きく増加した。これは表面近傍で酸化生成したFc-PMB(ox)が還元されFc-PMB(red)に戻ったためである。このFc-PMBの酸化/還元反応による再生のサイクルを経ることによって、Fc-PMB(red)の電流応答は再生反応を行わない参考例1ならびに比較例1に比べておよそ3倍に増幅された。
実際に2ng/mLのエンドトキシンを添加した場合、増幅電流値は11 nAを得た。この時、ノイズ幅4 nAであったため、S/N=2とすると、実際に測定した2 ng/mLが検出限界値に近かったと考えられ、増幅によって検出限界値が向上を達成した。
<ポリεリジン固定化電極およびアルカリフォスファターゼ修飾ポリミキシンBによるエンドトキシンの測定>
(参考例2)
参考例1同様にシリコンウェハ上に成膜されたカーボン薄膜電極表面に、参考例1と同様の架橋剤を30 ℃、15時間でカップリング反応させ電極表面にNHS基を導入した。この電極を0.25 %ポリεリジン水溶液(PBSで希釈調整)中へ浸し、30℃で1時間静置した後、電極表面をPBSで洗浄し、ポリεリジン固定化電極を作製した。
ポリεリジン固定化電極上に濃度が2000 ng/mLとなるようにエンドトキシン標準品試料を滴下し、室温で20分間静置しエンドトキシンを吸着した後、電極表面をpH7.4の50 mmol/L Tris緩衝液で洗浄した。続いておよそ6 μg/mL アルカリフォスファターゼ修飾ポリミキシンB水溶液(PBSで希釈調整)を滴下し室温で20分間静置し、電極表面にアルカリフォスファターゼ修飾ポリミキシンB(ALP-PMB)を補足した後、電極表面をpH7.4の50 mmol/L Tris緩衝液で洗浄した。この操作により、電極に可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素ALPを導入することができる。
この電極をpH7.4の50 mmol/L Tris-HCl緩衝液中に挿入し、ポテンシオスタットに参照電極(Ag/AgCl)、対極(Pt)とともに接続した。さらに、ALPの基質である100 μmol/L p−アミノフェノールリン酸(PAPP)溶液(50 mmol/L Tris-HCl緩衝液(pH7.4))を添加し電極上に捕捉されたALPと基質PAPPとの間で酵素反応を3分間行った。その後、この電極を、一定の走引速度100 mV/秒と設定してサイクリックボルタンメトリー測定を行った場合の結果を図3(実線)に示した。
(比較例3)
ポリεリジン固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、参考例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図3(点線)に示した。
図3より、基質であるp−アミノフェノールリン酸(PAPP)のピークが0.55V付近に確認されたことに加え、酵素生成物であるp−アミノフェノール(PAP)のピークが0.4V付近に確認された。これら2つのピークは、電極表面上にALP-PMBが存在し酵素反応が進行していることを示している。
また表面に捕捉されたエンドトキシンの有無によって、生成PAPの電流値に顕著な差が付いたことから、ALP-PMB吸着量は、捕捉されたエンドトキシン量に依存していることが明らかである。つまり、生成するPAP量と捕捉エンドトキシンとの間に相関関係があることから、本系はPAPの測定によりエンドトキシンを定量可能であることが示唆される。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシンによる電流増加はその濃度に依存しており、本法では0.2 μg/mLのエンドトキシンを添加した場合、生成PAPの酸化電流値は92 nAであり、S/N=2(ノイズ幅0.8 nA)とすると、およそ40 ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
(実施例2)
ポリεリジン固定化電極上にグルコースオキシダーゼ(GOD)を別途固定化し、その基質であるグルコースを添加した点以外は、参考例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図4に示した。
(実施例3)
ポリεリジン固定化電極上にGODを別途固定化し、基質であるグルコースを添加しなかった点以外は、実施例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図4に示した。
図4(実線)に示したように、生成PAPは、電極上にGODを別途固定し、その基質であるグルコースを添加することにより、酵素による再生・再酸化のサイクルを起こし、その結果、図4(点線)の酵素再生・再酸化のサイクルを備えていない場合よりもPAPの電流値が 増幅される。これにより、エンドトキシンのさらなる高感度測定が可能となる。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシンによる電流増幅はその濃度に依存しており、本法では0.2 μg/mLのエンドトキシンを添加した場合、増幅電流値は480 nAであり、S/N=2(ノイズ幅0.65 nA)とすると、およそ1.67 ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
本願発明におけるエンドトキシンの濃度測定方法の原理を示した概念図である。 エンドトキシン認識分子修飾カーボン電極上において、エンドトキシンを捕捉した後、フェロセン−ポリミキシンBを捕捉して測定したサイクリックボルタンメトリーの結果を示したグラフである。 エンドトキシン認識分子固定化カーボン電極上において、エンドトキシンを捕捉した後、ALP−ポリミキシンBを捕捉してALPの酵素反応によって生成したPAPのサイクリックボルタンメトリーの結果を示したグラフである。 エンドトキシン認識分子固定化カーボン電極上において、電極上にグルコースオキシダーゼを固定化し、エンドトキシンを捕捉した後に基質であるグルコースを添加した際に起こるPAP分子の再生反応によるサイクリックボルタンメトリーの結果を示したグラフである。
1 エンドトキシン認識分子に可逆的酸化還元物質を修飾した測定系
2 電極
3 リンカー
4 第一のエンドトキシン認識分子
5 エンドトキシン
6 第二のエンドトキシン認識分子
7 エンドトキシン認識分子に可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素を修飾した測定系

Claims (7)

  1. 以下の工程、
    (1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
    (2)エンドトキシンを捕捉した電極に、フェロセン、ルテニウム錯体及びキノンの少なくとも一種である可逆的酸化還元物質で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
    (3)レドックス種として、鉄(II)イオン、セリウム(III)イオン、フェリシアン化カリウム、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、フェロセン誘導体の少なくとも一種を含む試料溶液中で、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
    を特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。
  2. 以下の工程、
    (1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化し、さらに酸化還元酵素を固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
    (2)エンドトキシンを捕捉した電極に、可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
    (3)前記第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素に対する基質および前記電極上に別途固定化した酸化還元酵素に対する基質の存在下に、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
    を特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。
  3. 電極上に固定する第一のエンドトキシン認識分子ならびに第二のエンドトキシン認識分子は、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、核酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N,N-diethylaminoethanol(DEAE)化多糖類の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。
  4. 第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素が、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ジアフォラーゼ、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、及びグルタミン酸酸化酵素の少なくとも一種であることを特徴とする請求項2または3に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。
  5. 請求項1または2に記載されたエンドトキシンの濃度測定法において、試料中に添加したレドックス種または電極上に別途固定化した酸化還元酵素により可逆的酸化還元物質を酸化あるいは還元する反応と、電極反応により可逆的酸化還元物質を還元あるいは酸化して再生する反応とからなる反応サイクルを形成させ、エンドトキシンの存在に応じて電気化学シグナルを増幅し、このときの電流変化を測定することを特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。
  6. 測定対象のエンドトキシンは、内毒素、リポ多糖、発熱物質およびパイロジェンの少なくとも一種である請求項1から5のいずれか一項に記載のエンドトキシンの測定方法。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のエンドトキシンの濃度測定方法を実施可能なエンドトキシンの濃度測定キット。
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