JP6128578B2 - エンドトキシンの濃度測定方法およびエンドトキシンの濃度測定装置 - Google Patents
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Description
さらに、この現象を利用したエンドトキシンの高感度測定法も知られており、この測定法には、比濁法と比色法がある。
最近では、遺伝子改変によって10倍以上の発光強度を有する高感度ルシフェラーゼと発光合成基質を使用し、その発光量から試料中のエンドトキシン濃度を測定する方法も開発されている。ここで使用する発光合成基質は、Benzoyl-Leu-Arg-Arg-aminoluciferinである。凝固酵素(クロティング酵素)は、この発光合成基質を加水分解し、aminoluciferinを遊離する。遊離したaminoluciferinがATPと高感度ルシフェラーゼによって発光するため、発光計でエンドポイント測定を行うことができる(たとえば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記のような従来のリムルス試験およびリムルス試験を基にした測定方法は、測定装置および試薬ともに高価であり、オンサイト測定が困難であった。
ところで、試料中の目的成分の定量法において、簡便かつ高感度な測定方法としては電気化学的な測定方法がある。この方法では、溶液中の目的成分あるいは目的成分の濃度変化に対応して濃度が変化する特定成分について、その濃度あるいは濃度変化を電極上での電流信号として変換、出力することを特徴としている。
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、フェロセン、ルテニウム錯体及びキノンの少なくとも一種である可逆的酸化還元物質で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)レドックス種として、鉄(II)イオン、セリウム(III)イオン、フェリシアン化カリウム、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、フェロセン誘導体の少なくとも一種を含む試料溶液中で、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を含むことを特徴とする。
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化し、さらに酸化還元酵素を固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)前記第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素に対する基質および前記電極上に別途固定化した酸化還元酵素に対する基質の存在下に、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を特徴とする。第3には、電極上に固定する第一のエンドトキシン認識分子ならびに第二のエンドトキシン認識分子は、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、核酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N,N-diethylaminoethanol(DEAE)化多糖類の少なくとも一種であることを特徴とする。第4には、第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素が、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ジアフォラーゼ、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、及びグルタミン酸酸化酵素の少なくとも一種であることを特徴とする。
本発明は、エンドトキシン認識分子(第一のエンドトキシン認識分子)を電極上に化学架橋固定した電極を作用電極として用いる。作用電極上にエンドトキシン試料を添加し、捕捉する。次にここへエンドトキシン認識部位と、可逆的酸化還元物質もしくは可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素を併せ持つ物質(第二のエンドトキシン認識分子)を作用させ、エンドトキシン上へ捕捉させる。この時、エンドトキシンの量に応じて、可逆的酸化還元性を有する第二のエンドトキシン認識分子が捕捉される。
これら一連の反応は、エンドトキシン認識分子を電極上に固定化し、固相におけるエンドトキシンの濃縮によって可能となったものであり、従来の液相でのエンドトキシンの濃度測定方法では実現不可能であった感度向上をもたらすものである。
また緩衝液のpHには修飾酵素活性、ならびに増幅効果を得るための酵素と両酵素を安定に保持しうるpHの緩衝液の使用が好ましく、例えば上記アルカリフォスファターゼならびにグルコースオキシダーゼを共用する場合においては、中性のpH7.0-8.0前後、濃度1-100 mmol/LのTris緩衝液等が好都合に用いられる。
(a)フェロセン-PMB(還元型) → フェロセン-PMB(酸化型) + e
また、ここにレドックス種である鉄(II)イオンを還元剤として添加すると、フェロセン-PMBでは以下の還元反応が生ずる(可逆的酸化還元物質の再生反応)。
(b)フェロセン-PMB(酸化型) + Fe2+ →フェロセン-PMB(還元型)+Fe3+
また、例えば、可逆的酸化還元物質を生成可能なアルカリフォスファターゼ(ALP)-PMBを用いた場合、ここに酵素基質であるp-アミノフェノールリン酸(PAPP)を添加すると、酵素反応生成物であるp-アミノフェノール(PAP)が生成する。PAP生成後、50mM Tris-HClバッファー(pH 7.4)でサイクリックボルタモグラムを測定すると、+0.45 V(対銀-塩化銀電極)付近では、電極上で以下の反応が生ずる。
(a)PAP → p-イミノキノン(PIQ) + e
また、例えば電極上に別途設けた酵素膜、例えば酵素としてグルコースオキシダーゼを用いた場合、ここにグルコースオキシダーゼの基質であるグルコースを添加すると、以下の酵素反応が生ずる。
(b)PIQ + グルコース →PAP+グルコノラクトン
したがって、これらのように鉄(II)イオンによるフェロセン-PMB(還元型)の還元反応、ならびにグルコースオキシダーゼによる酵素反応によりPAPが再生し、さらに電極でのフェロセン-PMB、PAPの酸化反応、ならびにこれらの再生反応のサイクルを繰り返す。このサイクリックな反応により鉄(II)イオン、ならびにグルコース添加前に比べて、添加により3-1000倍程度の電流の増加が観測される。この反応サイクルにおいて、フェロセン-PMB、は、酸化型、還元型を繰り返す。また、PAPは、PAPとPIQを繰り返す。これらの両物質の合計量は変わらずフェロセン-PMB、PAPはメディエータとしても機能する。また、上記反応式中eの量、つまり電極における電流は、添加する鉄(II)イオン、グルコースの量をそれぞれ過剰にすれば、この反応に関与する可逆的酸化還元物質であるフェロセン-PMB、PAPの量に依存する。
また、本願発明における測定対象となるエンドトキシンは、特に限定されるものではないが、例えば、内毒素(細胞壁の成分であり積極的には分泌されない毒素)、リポ多糖、発熱物質およびパイロジェンの少なくともいずれかであると、より効率よく測定できる。
以上のような構成を有するため、本願発明は従来のエンドトキシンの電気化学的測定方法に比して、約1.25〜300倍の感度向上が可能である。
上記のとおりの本願発明の測定方法および測定キットは、培養液、生体試料、注射液、輸液、透析液等の医薬品およびそれらの原材料である精製水の製造、貯蔵、分析、利用等に係る分野において利用される。例えば、注射製剤など非経口医薬品は主に発酵技術や遺伝子組換え技術により製造されており、宿主細胞壁成分からの混入が懸念されるため、これらの製剤を生体に接種した場合に有害な障害を引き起こすエンドトキシンを除去する必要がある。また、敗血症患者の治療法においては、血液中エンドトキシンを体外循環により人工透析的に除去させる。これらエンドトキシンの除去が、目的とおり行われたか否かの判別のためには微量のエンドトキシンを簡便に測定するための方法が必要である。さらに、注射器、透析膜等の医療器具の製造においても、エンドトキシンの確認試験が必要不可欠である。このような状況の中で、本願発明の測定方法および測定キットは、これらエンドトキシンを測定する上で極めて有効であり、また、本願発明の測定キットにおいては、使用者の熟練度を問わずに、エンドトキシンの濃度を測定することができる。
(参考例1) シリコンウェハー上に成膜されたカーボン薄膜電極表面に、二官能性の架橋剤N−ヒドロキシスクシンイミドエステル−トリエトキシシランの1mMトルエン溶液を30℃、15時間でカップリング反応させ電極表面にN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を導入した。ここに1mMポリミキシンB水溶液(50mM酢酸緩衝液でpH5.0に調整)中へ浸し、30℃で1時間静置した後、電極表面をPBSで洗浄し、ポリミキシンB固定化電極を作製した。
(実施例1)
測定前の試料中に1 mmol/Lの塩化鉄(II)水溶液を添加した点以外は、参考例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定を行った場合の結果を図2に示した。
(比較例1)
ポリミキシンB固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、参考例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図2に示した。
(比較例2)
ポリミキシンB固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図2に示した。
図2から明らかなように、電極表面にエンドトキシン標準品を吸着した参考例1では、53nA程度の応答が0.59V付近に観測された。この応答は、表面に吸着したFc-PMB(red)が酸化されてFc-PMB(ox)となる酸化反応と考えられる。一方、エンドトキシンを吸着させない比較例1では30nA程度の電流応答に留まったことから、この電流応答差(23 nA)が電極表面に吸着したエンドトキシンに起因するものと推察された。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシン吸着による電流増加はその濃度に依存しており、本法ではS/N=2(ノイズ幅1nA)とすると、およそ20ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
<ポリεリジン固定化電極およびアルカリフォスファターゼ修飾ポリミキシンBによるエンドトキシンの測定>
(参考例2)
参考例1同様にシリコンウェハー上に成膜されたカーボン薄膜電極表面に、参考例1と同様の架橋剤を30 ℃、15時間でカップリング反応させ電極表面にNHS基を導入した。この電極を0.25 %ポリεリジン水溶液(PBSで希釈調整)中へ浸し、30℃で1時間静置した後、電極表面をPBSで洗浄し、ポリεリジン固定化電極を作製した。
(比較例3)
ポリεリジン固定化電極に、エンドトキシン標準品を添加しなかった点以外は、参考例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図3(点線)に示した。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシンによる電流増加はその濃度に依存しており、本法では0.2 μg/mLのエンドトキシンを添加した場合、生成PAPの酸化電流値は92 nAであり、S/N=2(ノイズ幅0.8 nA)とすると、およそ40 ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
(実施例2)
ポリεリジン固定化電極上にグルコースオキシダーゼ(GOD)を別途固定化し、その基質であるグルコースを添加した点以外は、参考例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図4に示した。
(実施例3)
ポリεリジン固定化電極上にGODを別途固定化し、基質であるグルコースを添加しなかった点以外は、実施例2と同様の操作を行い、サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図4に示した。
なお、この結果によれば、上述のエンドトキシンによる電流増幅はその濃度に依存しており、本法では0.2 μg/mLのエンドトキシンを添加した場合、増幅電流値は480 nAであり、S/N=2(ノイズ幅0.65 nA)とすると、およそ1.67 ng/mLのエンドトキシンの定量が可能と見積もられた。
2 電極
3 リンカー
4 第一のエンドトキシン認識分子
5 エンドトキシン
6 第二のエンドトキシン認識分子
7 エンドトキシン認識分子に可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素を修飾した測定系
Claims (7)
- 以下の工程、
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、フェロセン、ルテニウム錯体及びキノンの少なくとも一種である可逆的酸化還元物質で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)レドックス種として、鉄(II)イオン、セリウム(III)イオン、フェリシアン化カリウム、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、フェロセン誘導体の少なくとも一種を含む試料溶液中で、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。 - 以下の工程、
(1)第一のエンドトキシン認識分子をその分子中に含まれるアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基のいずれかにより電極表面に存在する官能基と化学的架橋を形成させて固定化し、さらに酸化還元酵素を固定化した電極上に、エンドトキシンを含む試料溶液を添加し、電極上でエンドトキシンを捕捉する工程
(2)エンドトキシンを捕捉した電極に、可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素で修飾された第二のエンドトキシン認識分子を添加し、第二のエンドトキシン認識分子を捕捉する工程
(3)前記第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素に対する基質および前記電極上に別途固定化した酸化還元酵素に対する基質の存在下に、電極に電圧を印加した際の電流変化を測定し、該測定値から試料溶液中に含まれるエンドトキシンの濃度を測定する工程、
を特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。 - 電極上に固定する第一のエンドトキシン認識分子ならびに第二のエンドトキシン認識分子は、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、核酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N,N-diethylaminoethanol(DEAE)化多糖類の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。
- 第二のエンドトキシン認識分子を修飾する可逆的酸化還元物質を生成可能な酵素が、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ジアフォラーゼ、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、及びグルタミン酸酸化酵素の少なくとも一種であることを特徴とする請求項2または3に記載のエンドトキシンの濃度測定方法。
- 請求項1または2に記載されたエンドトキシンの濃度測定法において、試料中に添加したレドックス種または電極上に別途固定化した酸化還元酵素により可逆的酸化還元物質を酸化あるいは還元する反応と、電極反応により可逆的酸化還元物質を還元あるいは酸化して再生する反応とからなる反応サイクルを形成させ、エンドトキシンの存在に応じて電気化学シグナルを増幅し、このときの電流変化を測定することを特徴とするエンドトキシンの濃度測定方法。
- 測定対象のエンドトキシンは、内毒素、リポ多糖、発熱物質およびパイロジェンの少なくとも一種である請求項1から5のいずれか一項に記載のエンドトキシンの測定方法。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載のエンドトキシンの濃度測定方法を実施可能なエンドトキシンの濃度測定キット。
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