JP6128169B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造において、鋳型内壁に形成されるスラグベアの成長を抑える鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、鋳型内に注入した溶鋼の表面(以下、適宜「溶鋼湯面」とも呼ぶ)上に、モールドパウダーを散布してモールドパウダー堆積層を形成し、この堆積層で溶鋼湯面を覆い、鋼の鋳片を製造している。モールドパウダー堆積層は、溶鋼湯面の酸化を防止しかつ溶鋼を保温する。また、モールドパウダー堆積層中のモールドパウダーが溶融して形成される溶融スラグは、浮上してくる溶鋼中の非金属介在物を吸収するとともに、鋳型と、該鋳型で溶鋼が抜熱されて形成された凝固シェルと、の間に流れ込み、鋳型への鋳片の焼付が防止され、鋳型による溶鋼の抜熱が均一に行われる。
溶融スラグは鋳型で抜熱されて凝固し、鋳型の内壁の溶鋼湯面レベルに相当する位置に、環状(リム状)のスラグベアが形成される場合がある。スラグベアが形成される場合には、スラグベアに起因した漏鋼トラブルが発生する可能性がある。つまり、スラグベアが鋳型の内壁に滞留すると、スラグベアは、鋳型による抜熱で凝固が促進されて大きくなり、鋳型の振動などによって、大きくなったスラグベアが滞留箇所から鋳型と凝固シェルとの間に流れ込む場合が生じる。この場合には、凝固シェルの凝固遅れが生じて、凝固遅れが生じた凝固シェルは薄くなり破れてしまい、ブレークアウトなどの漏鋼トラブルの発生する可能性がある。また、鋳型の内壁におけるスラグベアの滞留箇所と他の箇所とで、鋳型による抜熱量が異なり、凝固シェルからの抜熱が均一に行われなくなる可能性もある。
特許文献1には、Si:2%以上、Al:0.5%以上の高Si高Al鋼を連続鋳造する場合、従来のモールドパウダーを用いると、溶鋼中のAlによって、溶融スラグでは、SiOが還元され、SiO量が低下してAl量が上昇するとともに、塩基度が増大することが記載されており、溶融スラグの凝固温度が上昇して、鋳型の内壁で溶鋼湯面レベルに相当する位置に、巨大なスラグベアが生じる問題、及び、溶融スラグの粘度が上昇して、鋳型と凝固シェルとの間への溶融スラグの流入が阻害される問題が記載されている。これらの問題を解決すべく、特許文献1では、Alなどの組成物の濃度を所定の値とし、溶融スラグの粘度及び凝固温度を所定の範囲とするモールドパウダーが提案されている。
また、特許文献2には、鋳型の内壁でスラグリム(スラグベア)が肥大化することを防止すべく、モールドパウダーに従来から混合されている黒鉛を、400℃での体積が常温時の2倍以上に膨張する熱膨張性黒鉛とすることにより、この熱膨張性黒鉛を熱膨張させて、モールドパウダーの焼結層を破壊する技術が提案されている。
特開2011−218411号公報 特開平11−10297号公報
特許文献1及び特許文献2に記載されているように、モールドパウダーの組成物、該組成物の濃度、モールドパウダーが溶融して得られる溶融スラグの粘度などの特性を調整することで、スラグベアの発生及び成長を防止し、漏鋼トラブルを或る程度防ぎ得る。しかしながら、頻度は少ないもののスラグベアが形成され、該スラグベアが成長してしまい、ひいては、凝固シェルの凝固遅れが生じ、漏鋼トラブルが発生する場合があった。
また、本発明者らは、後述するように、モールドパウダーが溶融した溶融スラグ中にスラグベアとは必ずしも特定できない異物が形成され、この異物に起因する漏鋼トラブルが起こり得ることを確認した。特許文献1、2は、この件について何ら記載していない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スラグベアに起因する漏鋼トラブルのみならず、スラグベアとは必ずしも特定できない溶融スラグ中の異物に起因する漏鋼トラブルを防止する鋼の連続鋳造方法を提供することである。
本発明者らは、まずは、スラグベアによる漏鋼トラブルを抑えるべく、鋳型の内壁部分を観察していたところ、該鋳型の内壁近傍で形成されたスラグベアが成長していく現象を確認した。本発明者らは、或る程度の大きさに成長したスラグベアの釣り上げ(取り上げ採取)を試み、スラグベアの断面組織を確認した。その結果、スラグベアのうちには、全ての組織が、モールドパウダーが溶解したものから固体となった部分ではなく、多孔部分が存在する場合があることを発見した。
本発明者らは、スラグベアに多孔部分が形成される原因を鋭意検討した結果、多孔部分の多孔という形状から考察して、内部が粉体状のモールドパウダーの焼結体で、外部が溶融スラグからなる塊状異物がスラグベアに吸着されて、スラグベアが成長してしまう可能性があることを推察した。そこで、本発明者らは、モールドパウダーが焼結する機構を鋭意検討して、モールドパウダー堆積層の厚みや形状を制御することで、スラグベアの成長が抑えられることを発見し、本発明の完成に至った。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]鋳型に溶鋼を注入し、鋳型によって溶鋼を冷却して凝固シェルを生成させ、かつ、前記鋳型中の溶鋼の表面に、モールドパウダーを散布してモールドパウダー堆積層を形成し、前記鋳型から前記凝固シェルを引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、前記モールドパウダー堆積層のうち、前記鋳型の内壁に接触している部分における、前記溶鋼の表面から前記モールドパウダー堆積層の上端までのモールドパウダー堆積層の厚みdeが50mm以上であることを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
[2]前記鋳型の内壁と、該内壁から水平方向に60mm離れた位置と、の間に、前記モールドパウダーを散布し、前記鋳型の内壁に接触する斜面を有する略円錐形状部分を前記モールドパウダー堆積層に形成することを特徴とする、上記[1]に記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、モールドパウダーの組成物及び組成物の濃度を調整しなくとも、モールドパウダーが焼結して形成されると想定される、鋳型内壁近傍における塊状異物の発生を抑えて、該塊状異物がスラグベアに吸着され、スラグベアが成長してしまうことを防ぐことができ、ひいては、前記塊状異物やスラグベアによる凝固シェルの凝固遅れに起因した漏鋼トラブルを低減できる。よって、組成物を調整するなどして、モールドパウダーを新規に開発するコストが生じることもない。
モールドパウダー投入機及び鋳型の側面図である。 図1に示すモールドパウダー投入機及び鋳型の平面図である。 従来形成されていたモールドパウダー堆積層を示す概略図である。 本発明で形成するモールドパウダー堆積層を示す概略図である。 スラグベア中の多孔部分の長さの調査結果を、比較例と本発明例とで対比して示す図である。
本発明に係る鋼の連続鋳造方法の実施形態の一例を具体的に説明する。図1は、モールドパウダー投入機及び鋳型の側面図であり、図2はその平面図である。連続鋳造設備100は、溶鋼11を収容するタンディッシュ(図示せず)と、該タンディッシュの下部に接続されているノズル103と、該ノズル103の下方に配置されている鋳型101と、モールドパウダー投入機1と、を有する。鋳型101は、図2に示すように、相対する2つの鋳型長辺101aと、該鋳型長辺101aの内側に内装された、相対する2つの鋳型短辺101bとを有する。図1では、鋳型101を鉛直断面で示しており、鋳型長辺101aのみ示している。図示は省略してあるが、鋳型長辺101a及び鋳型短辺101bには、冷却水が通過する給水流路及び排水流路を形成しており、鋳型101を冷却可能としてある。
鋼の連続鋳造方法では、冷却水で冷却されている鋳型101に溶鋼11を注入し、内部に未凝固の溶鋼11を有する凝固シェル11aを鋳型101から引き抜いて、鋼の鋳片104を製造する。タンディッシュに収容された溶鋼11が、鋳型101に挿入されたノズル103内に流入し、次いで、溶鋼11は、ノズル103から鋳型101内へ注入されるとともに鋳型101により抜熱され、鋳型101の内壁で凝固シェル11aが形成される。鋳型101内の溶鋼11は、外殻が凝固シェル11aとなってから、鋳型101の下方に複数設置されるロール102を駆動させて、内部に未凝固の溶鋼11を有する凝固シェル11aを鋳込方向Aに沿って引き抜いて、鋳片104を製造する。
鋼の連続鋳造では、鋳型101内に溶鋼11を注入している間に、鋳型101内の溶鋼湯面11b上に、モールドパウダー2を散布(「投下」ともいう)してモールドパウダー堆積層20を形成する。モールドパウダー2は、一般的には、CaO、SiO、Al、MgOなどの酸化物からなる基材と、NaO、LiO、CaFなどからなる溶融後の粘度調整剤と、炭素を主成分とする溶融速度調整剤と、から構成されており、溶鋼11の成分に応じて、モールドパウダー2の組成物を変更したり、各組成物の濃度を調整したりする。モールドパウダー堆積層20によって、溶鋼湯面11bの酸化を防止しかつ溶鋼11を保温する。
モールドパウダー投入機1は、モールドパウダー2を貯留するホッパー3と、該ホッパー3に接続しているフィーダ4と、該フィーダ4に接続し、スクリュー6を内装する搬送管5と、搬送管5及びスクリュー6に接続し、該スクリュー6を駆動する駆動機構7と、これらを支持する台車8と、を有し、溶鋼湯面11bに向けてモールドパウダー2を散布する。
モールドパウダー2は、ホッパー3からフィーダ4で搬送管5に移送され、駆動機構7でスクリュー6を回転駆動させることで、搬送管5内を移送されて、先端の吐出口5aから落下して溶鋼湯面11bに堆積する。台車8によって、搬送管5が、鋳型短辺101bに沿った鋳型短辺方向B及び鋳型長辺101aに沿った鋳型長辺方向C(図2参照)に自在に移動することで、吐出口5aは、溶鋼湯面11b上の任意の位置を移動し得る。
台車8は、搬送管5及び駆動機構7が取り付けられている上台8aと、該上台8aを移動可能なように支持する下台8bと、を有する。台車8(下台8b)が配置される床面には、鋳型短辺方向Bに延在する溝レール10bが形成されている。下台8bに回転可能に取り付けられている車輪9bが、溝レール10bに遊嵌した状態で、該溝レール10bで回転移動することで、下台8bは鋳型短辺方向Bに移動可能となっている。また、下台8bには、鋳型長辺方向Cに延在する溝レール10aが形成されている。上台8aに回転可能に取り付けられている車輪9aが溝レール10aに遊嵌した状態で、該溝レール10aで回転移動することで、上台8aは鋳型長辺方向Cに移動可能となっている。
図2に示すように、吐出口5aが、鋳型長辺101a及び鋳型短辺101bのうちの近い辺の内壁(鋳型101の内壁)から水平方向に距離di(以下、「水平距離di」と記す)以上離れた位置を通過するように、台車8の動作を設定する。台車8には、車輪9a及び車輪9bを駆動させる駆動装置(図示していない)が設けられ、車輪9a及び車輪9bの回転移動を組み合わせることで、台車8は、鋳型短辺方向B及び鋳型長辺方向Cに沿って移動する。これにより、搬送管5が、鋳型短辺方向B及び鋳型長辺方向Cに自在に移動可能となり、吐出口5aが溶鋼湯面11b上の任意の位置を移動可能となる。車輪9a及び車輪9bの駆動を予めプログラムしておくことによって、図2に示す軌跡50のとおり、吐出口5aが、鋳型101の内壁から水平距離di離れた位置を移動するように車輪9a及び車輪9bの動作を予め設定しておくことができる。
図3は、従来形成していたモールドパウダー堆積層を示す概略図である。モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに投下すると、まずは、モールドパウダー2は溶融して、溶融スラグ24aとなり、溶鋼湯面11bに亘って、溶融スラグ24aからなる溶融スラグ層24が形成される。溶融スラグ24aは、鋳型101の内壁と凝固シェル11aとの間に流入し、凝固シェル11aが鋳型101の内壁へ焼き付くことを防止し、凝固シェル11aと鋳型101の内壁との潤滑性が保たれる。モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに向けて投下し続けると、溶融スラグ層24上に、モールドパウダー2が堆積していく。投下されたモールドパウダー2は、溶鋼11の熱が伝わり温度が上昇するとともに、モールドパウダー2に通常含有される炭素が燃焼し、更に温度が上昇すると、モールドパウダー2は焼結するものの、最終的に溶融して溶融スラグ24aとなる。
モールドパウダー堆積層20は、生パウダー層21、脱炭パウダー層22、焼結パウダー層23、及び、溶融スラグ層24を、上部から溶鋼湯面11bに向けてこの順で有する。溶融スラグ層24の上の焼結パウダー層23は、粉末状のモールドパウダー2が焼結して形成される焼結体からなる。脱炭パウダー層22は、脱炭された状態の粉末状のモールドパウダーからなる。生パウダー層21は粉末状のモールドパウダー2からなり、吐出口5aの下方の生パウダー層21の部位には、モールドパウダー2の安息角θに基づいて、略円錐形状部分21aが形成される。なお、説明の都合上、図3では、生パウダー層21、脱炭パウダー層22、焼結パウダー層23、及び、溶融スラグ層24では、明確な境界が形成されているが、実際には、前記境界は明確なものではなく、例えば、焼結パウダー層23のモールドパウダーは、全てが脱炭されたものではなく、脱炭されていないものも焼結パウダー層23に含まれ得るし、溶融スラグ層24には、モールドパウダーの焼結体が含まれる場合がある。
鋼の連続鋳造では、鋳型101で抜熱されて溶融スラグ24aが凝固してしまい、溶鋼湯面11bに沿って鋳型101の内壁にスラグベアが形成される場合がある。このスラグベアが更なる抜熱で成長してしまい、鋳型101の内壁と凝固シェル11aとの間に入り込んでしまって、凝固シェル11aの凝固遅れが生じ、ブレークアウトなどの漏鋼トラブルが発生するおそれがあるが、モールドパウダー2の組成を変更したり、溶融スラグ24aの粘度や凝固温度を調整したりするなどの対策を取ることで、大抵の連続鋳造においてスラグベアの発生を抑えることができる。しかしながら、そのような対策を取っても、頻度は少ないもののスラグベアが生じた場合に、該スラグベアが成長して漏鋼トラブルが発生する場合があった。
本発明者らは、この原因を特定すべく、スラグベアの発生を抑え得るモールドパウダー2を用いて鋼の連続鋳造を行い、鋳型101の内壁近傍及びモールドパウダー堆積層20を観察した。本発明者らは、観察している間に鋳型101の内壁近傍でスラグベアを視認できたときに、該スラグベアを取り上げて、そのスラグベアの断面組織を調べたところ、断面組織のうちには、全ての組織が、モールドパウダーが溶解したものから固体となった部分となっておらず、多孔の固体部分が存在している場合があることを発見した。本発明者らは、多孔の形状から、内部が粉体状のモールドパウダーの焼結体で、外部が溶融スラグからなる塊状異物がスラグベアに吸着されて、スラグベアが成長してしまう可能性があることを推察した。
次に、本発明者らが推察する塊状異物の生成と成長の機構及び塊状異物による凝固遅れの機構を説明する。
前記塊状異物は、モールドパウダー堆積層20の厚みが小さい部分で生じる可能性が高く、厚みが大きい部分では生じる可能性が低いと考えられる。モールドパウダー堆積層20の厚みが小さいと、その部分では、溶鋼湯面11bからモールドパウダー堆積層20を通して大気へ放散する熱流束が大きくなり、結果として、溶融スラグ層24の厚みも小さくなり、溶融スラグ層24での鉛直方向の温度勾配が大きくなるので、溶融スラグ層24での自然対流も活発になる。自然対流が活発になると、焼結パウダー層23と溶融スラグ層24との固液界面が対流に起因して形状が変わり、固液界面の凸凹が大きくなってしまう。そして、焼結パウダー層23の固液界面に形成される凸部が対流によって噛み込まれるようにして離脱すると、未溶融の焼結体が溶融スラグ24a中に入り込み、塊状異物23aになると推察できる。なお、図3に示すように、モールドパウダー2を鋳型101の内壁から離れた部分に投下した場合には、内壁近傍の溶融スラグ層24の厚みが小さくなり、発生する塊状異物23aが、内壁に形成され得るスラグベアに吸着され、スラグベアが成長しやすくなると推察できる。一方で、モールドパウダー2を内壁近傍に投下した場合には、鋳型101の内壁から離れた部分で、塊状異物23aが生じても、内壁近傍に厚く形成される溶融スラグ層24中で溶解しやすく、また、スラグベアが形成されたとしてもそれ自体も小さいため、スラグベアの成長は少ないと推察できる。
加えて、従来の鋼の連続鋳造では、図2及び図3に示す水平距離diを特に定めておらず、略円錐形状部分21aは、鋳型長辺101a(鋳型101)の内壁近傍ではなく、相対する2つの鋳型長辺101aの中央近くで、内壁から離れた位置に形成される場合がある。この場合、鋳型長辺101aの内壁近傍で、或る程度の大きさとなった塊状異物23aが生成されると、モールドパウダー堆積層20によって溶鋼11からの熱の放散が防がれても、鋳型長辺101aの内壁からの抜熱が大きいので、特に、図3に示すように、塊状異物23aは溶融されずに、鋳型長辺101aの内壁と凝固シェル11aとの間に入り込んでしまい、凝固シェル11aの凝固遅れが生じる可能性があると推察される。
本発明者らは、上記のように生成する塊状異物23aが、形成されたスラグベアが成長することになる原因及び凝固シェル11aの凝固遅れの直接の原因となり得る異物であると想定し、鋳型101の内壁近傍で溶融スラグ層24の熱放散を抑えることで、塊状異物23aの生成及び成長を抑え得ると推察し、モールドパウダー2の投下位置を変更する実験を繰り返し実施した。この実験において、スラグベアが形成された場合には、該スラグベアの成長度合いが、モールドパウダー2の投下位置に影響して変化することを発見し、本発明の完成に至った。
図4は、本発明で形成するモールドパウダー堆積層を示す概略図である。本実施形態の一例では、例えば、水平距離diを意図的に小さくして、モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに投下して、略円錐形状部分21aを鋳型101の内壁近傍に形成させ、モールドパウダー堆積層20のうち、鋳型101の内壁に接触している部分の厚みdeを50mm以上とする。この厚みdeとは、モールドパウダー堆積層20のうち、鋳型101の内壁に接する部分の上面から溶鋼湯面11bまでの鉛直方向長さ(鋳型の内壁でのモールドパウダー堆積層20の厚み)を意味する。厚みdeを大きくすることにより、鋳型101の内壁近傍であっても、溶鋼11から熱の放散量を抑え得る。これにより、塊状異物23aの発生を防止し得る。
仮に、塊状異物23aが発生しても、塊状異物23aは溶融されやすくなり、塊状異物23aの成長を防止することができる。また、塊状異物23aが鋳型長辺101aの内壁と凝固シェル11aとの間に入り込んで、凝固シェル11aの成長が遅滞したとしても、塊状異物23aは比較的小さいので、凝固シェル11aは或る程度の厚みが維持され、鋳片104が鋳型101から引き抜かれた後であっても、鋳片104における凝固シェル11aが破れにくく、ブレークアウトなどの漏鋼トラブルを防止し得る。
水平距離diを60mm以下として、鋳型101の内壁と、該内壁から水平方向に60mm離れた位置と、の間に、モールドパウダー2を投下して、鋳型101の内壁に接触する斜面を有する略円錐形状部分21aをモールドパウダー堆積層20に形成することが好ましい。モールドパウダー2は、概ね、30〜50°の安息角θを有し、モールドパウダー2を前記位置に投下すれば、鋳型101の内壁に接触する斜面を有する略円錐形状部分21aが形成され、モールドパウダー2の単位時間当りの投下量(kg/時)をあまり大きくせずとも、厚みdeを大きくすることできる。
モールドパウダー2の投下位置を特に限定することなく、鋳型101の内壁でのモールドパウダー堆積層20の厚みdeを50mm以上としてもよい。その場合には、モールドパウダー2の単位時間当りの投下量(kg/時)を必要以上に多くする必要があり、モールドパウダー堆積層20全体が必要以上に大きくなり、モールドパウダー投入機1の搬送管5の動作の障害となる。この点で、厚みdeを150mm以下とすることが好ましい。
塊状異物23aが生成したとしても、鋳型101の内壁近傍で、塊状異物23aを溶融させやすい部分では、モールドパウダー堆積層20を必ずしも厚くしなくてもよい。本実施形態においては、モールドパウダー投入機1を1台としており、モールドパウダー投入機1の配置されている側の鋳型長辺101aに相対する鋳型長辺101aの内壁面のうち、ノズル103の近傍は、軌跡50に示すように吐出口5aを移動させにくい(図2参照)。しかしながら、ノズル103の近傍は、ノズル103の吐出口から流れ出る溶鋼11の顕熱が大きいので、塊状異物23aは生成したとしても、溶融して溶融スラグ24aになりやすい。よって、ノズル103の外表面から水平距離で100mm以内の領域では、モールドパウダー堆積層20の厚みdeを50mm以上としなくてもよい。また、鋳型101の内壁全体で、モールドパウダー堆積層20の厚みdeを50mm以上として、モールドパウダー堆積層20を厚くすることが好ましいが、上述のとおり、必ずしも、鋳型101の内壁全体でのモールドパウダー堆積層20の厚みdeを50mm以上としなくてもよい。
また、本実施形態においては、モールドパウダー投入機1の台数及び吐出口5aの数は特に限定されるものではない。例えば、相対する2つの鋳型長辺101aの側に、モールドパウダー投入機1を1台ずつ、合計2台配置してもよい。そして、2台のモールドパウダー投入機1の吐出口5aの各々が、軌跡50のように、溶鋼湯面11b上を通過すれば、ノズル103の近傍の鋳型長辺101aの内壁であっても、モールドパウダー堆積層20の厚みdeを大きくすることが容易となる。
以上のとおり、鋳型の内壁でのモールドパウダー堆積層20の厚みdeを50mm以上とすることにより、鋳型の内壁近傍であっても、溶鋼及び溶融スラグからの熱の放散量が抑えられ、鋳型の内壁からの抜熱量が大きいとしても、塊状異物は溶融されやすくなり、塊状異物の発生が防止されるとともに、発生しても塊状異物が大きくなることを防止することができ、また、塊状異物が、スラグベアに吸着されて該スラグベアが成長することを防止することができる。これにより、スラグベア及び塊状異物の噛み込みによる凝固シェルの凝固遅れに起因したブレークアウトなどの漏鋼トラブルを低減できる。
また、本発明では、モールドパウダーの組成物及び組成物の濃度を調整しなくとも、モールドパウダーが焼結して形成される塊状異物の発生を抑えて、漏鋼トラブルを低減できる。よって、組成物を調整するなどして、モールドパウダーを新規に開発するコストが生じることもない。
図1及び図2に示す連続鋳造設備100を用いて、タンディッシュから鋳型101へ溶鋼11の注入開始から注入終了までの鋳造時間を110分とした鋼の連続鋳造を実施した。この鋼の連続鋳造では、図2に示す軌跡50のように、吐出口5aが溶鋼湯面11b上を通過するように台車8を設定して、モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに投下した。使用した鋳型の内部空間の鋳片引き抜き方向に直交する断面サイズは、幅が1900mm〜2200mmの範囲で、厚みが210mm〜310mmの範囲であり、溶鋼注入量が4.0トン/min〜9.0トン/minとなる鋳片引き抜き速度で鋳造した。使用したモールドパウダー2は、1300℃における粘度が0.02Pa.s〜0.20Pa.sで、軟化温度が950℃〜1150℃である。鋳型振動は、振動波形を、歪み率が18%の偏倚正弦波形(「非サイン波形」ともいう)とし、鋳型上死点から鋳型下死点までの振幅は4mm〜9mmの範囲に設定した。ここで、偏倚正弦波形の歪み率は下記の(1)式で定義される。
歪み率(%)=200×(偏倚正弦波形で鋳型中立点から鋳型上死点に至るまでの時間(秒))/(偏倚正弦波形で鋳型中立点から鋳型上死点を超え再び鋳型中立点に至るまでの時間(秒))…(1)
鋳型101の内壁でのモールドパウダー堆積層20の厚みdeを40mmとした(比較例)。前述の実施形態で説明したとおり、吐出口5aが鋳型101の内壁から水平距離di離れた位置を通過するように、台車8の動作を予め設定しておくことができる。比較例では、水平距離diを70mmとして、モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに投下し、鋳型101の内壁に接触する斜面を有する略円錐形状部分21aをモールドパウダー堆積層20に形成した。
一方で、水平距離diを55mmとし、厚みdeを52mmとして、モールドパウダー2を溶鋼湯面11bに投下したことを除いて、比較例と同じ条件で、連続鋳造設備100を用いて、鋼の連続鋳造を実施した(本発明例)。
比較例及び本発明例の両方において、鋼の連続鋳造を複数回行い、相対する2つの鋳型長辺101aの内壁近傍を観察した。その結果、行った複数の連続鋳造のうち、スラグベアが幾度か形成されていることが確認できた。スラグベアが形成された比較例の連続鋳造中、及び、スラグベアが形成された比較例の鋳造条件と等しい鋳造条件で鋳造した本発明例の連続鋳造中に、鋳造終了10分前に、相対する2つの鋳型長辺101aの内壁近傍の各々から成長したスラグベアを金具で釣り上げた。
図5に、比較例及び本発明例のそれぞれ5回の鋳造の終了10分前に釣り上げたスラグベアで調査した多孔部分の長さの調査結果を示す。図5の横軸では、比較例及び本発明例の各々において、図1における右側の鋳型長辺101aとなる鋳型長辺101aの内壁近傍から釣り上げたスラグベア中の多孔部分の長さを示す場合を「右側」と表示し、図1における左側の鋳型長辺101aの内壁近傍から釣り上げた多孔部分の長さを示す場合を「左側」と表示してある。スラグベアを釣り上げてから1時間経過した後に、スラグベアの断面組織を観察し、断面組織のうちの多孔部分の最大長さを測定し、比較例及び本発明例のそれぞれ5回の鋳造の終了10分前に釣り上げたスラグベア中の多孔部分の最大長さの平均値を、グラフの縦軸の「スラグベア中の多孔部分の長さ」として示してある。エラーバーは、比較例及び本発明例のそれぞれ5回の鋳造の終了10分前に釣り上げたスラグベアで測定した多孔部分の最大長さの標準偏差を表す。
図5から明らかなように、本発明によって、多孔部分の長さを、概ね30〜50%程度抑えることができ、多孔部分の基となる塊状異物23aが発生したとしても、塊状異物23aの溶融を促進させ、塊状異物23aが大きくなることを防止できたことがわかった。また、厚みdeをより大きくすることで、塊状異物23aの溶融を促進し、塊状異物23aの発生を防止することも期待できる。
鋳片104に大きな塊状異物23aが取り込まれると、鋳片104の表面に、数mm径の巨大な介在物が作成され、最終製品の表面欠陥になる可能性が高まる上に、連続鋳造後の熱延の圧延ロールに疵を付ける可能性も生じると推察できる。よって、塊状異物の発生及び肥大化を防止することにより、最終製品の表面欠陥や圧延ロールに疵が生じることを防止することも期待できる。
1 モールドパウダー投入機
2 モールドパウダー
3 ホッパー
4 フィーダ
5 搬送管
5a 吐出口
6 スクリュー
7 駆動機構
8 台車
8a 上台
8b 下台
9a (鋳型長辺方向Cに沿って移動する)車輪
9b (鋳型短辺方向Bに沿って移動する)車輪
10a (鋳型長辺方向Cに延在する)溝レール
10b (鋳型短辺方向Bに延在する)溝レール
11 溶鋼
11a 凝固シェル
11b 溶鋼湯面
20 モールドパウダー堆積層
21 生パウダー層
21a 略円錐形状部分
22 脱炭パウダー層
23 焼結パウダー層
23a 塊状異物
24 溶融スラグ層
24a 溶融スラグ
50 軌跡
100 連続鋳造設備
101 鋳型
101a 鋳型長辺
101b 鋳型短辺
102 ロール
103 ノズル
104 鋳片

Claims (1)

  1. 鋳型に溶鋼を注入し、鋳型によって溶鋼を冷却して凝固シェルを生成させ、かつ、前記鋳型中の溶鋼の表面に、モールドパウダーを散布してモールドパウダー堆積層を形成し、前記鋳型から前記凝固シェルを引き抜いて鋳片を製造する鋼の連続鋳造方法であって、
    前記モールドパウダー堆積層のうち、前記鋳型の内壁に接触している部分における、前記溶鋼の表面から前記モールドパウダー堆積層の上端までのモールドパウダー堆積層の厚みdeが50mm以上であり、
    前記鋳型の内壁と、該内壁から水平方向に60mm離れた位置と、の間に、前記モールドパウダーを散布し、前記鋳型の内壁に接触する斜面を有する略円錐形状部分を前記モールドパウダー堆積層に形成することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
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