JP6126490B2 - 光学フィルター - Google Patents

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Description

本発明は、所定波長の光を透過する光学フィルターに関する。
近年、金属材料薄膜に周期的に開口部を配列することで特定の波長を主に透過する光学フィルターが知られている(特許文献1参照)。従来、波長よりも小さい開口部を設けた導電材料薄膜に光を照射した際の現象は、Betheの回折理論によって説明されてきた。しかしながら、このような導電材料薄膜は、開口径よりも大きな特定の波長の光を透過することが可能であり、導電材料薄膜に設けられた開口部の面積の総和から期待される以上の透過性を有する。このとき、開口部の周期にしたがって特定波長の光が透過されるが、最大透過ピークよりも短波長側に複数の透過サブピークが生じる。最大透過ピーク(メインピーク)の光は表面プラズモンによる異常透過現象による伝播光であり、一方、透過サブピークの光は開口部(円形導波管)を伝播する光である。このように、特定波長とは異なる波長の光も透過してしまうため、波長選択性が悪い光学フィルターであるといえる。
ところで、入射光を照射することで生じる表面プラズモンは導電材料薄膜表面に存在する。表面プラズモンの周波数は開口部の周期で決まり、入射面と出射面は表面プラズモンを伝播させるために連続な表面(貫通口)とする必要がある。また、出射面側での表面プラズモンは開口部端で生じる近接場光のエネルギー的な回折によって出射される。このことから、電界強度分布は開口部端の電界が強い分布を示す。
一方、開口部を導波管とみなした場合の伝播光(導波管モードと記すことがある)は、開口部の内壁で反射して開口部の中心を通るため、開口部の円筒の中心で最も電界強度が強くなる。そこで、このような性質を利用して、開口部の内側に第2の導電材料薄膜を設けることで導波管モードの光を透過させないようにし、波長選択性を向上させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
また、同パターニングされた第1及び第2の導電材料薄膜層が、近接場光相互作用を及ぼし合わない層間距離からなる積層フィルターであって、単層の場合より狭い帯域で光を透過させる技術が提案されている(特許文献3参照)。
特許3008931号 特開2010−160212号公報 特許4995231号
Alexandra B.etc,SIENCE, Vol.331,No.6015,pp.290−291(2011) Phili T.etc,Nature Photonics,Vol.6,pp.259−264(2012) Kohei I.etc,Nano Letter, Vol.11,pp.960−965(2011)
しかしながら、特許文献2及び3の技術では、波長選択性に関して半値幅が実用可能な程度にまでは狭くなっておらず、選択性が高いとは言い難い。また、撮像素子などに利用するために可視光領域の光を透過させようとした場合、開口径を特許文献2の実施例の半分程度に小さくする必要があり、開口部の内側に第2の導電材料薄膜を形成することが困難になる。
本発明は、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、所定波長の光を透過する光学フィルターであって、基板と、前記基板上に形成された第1導電材料薄膜と、第1導電材料薄膜を貫通し、前記所定波長未満の周期で配置された開口部と、少なくとも一部が前記開口部に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜と、を備えたことを特徴とする光学フィルターとする。
本発明によると、第2導電材料薄膜を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
本発明の第1実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図である。 図1の正面透過図である。 第1実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。 波長400nmにおける第1実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 波長400nmにおける比較例の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 波長545nmにおける第1実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 波長545nmにおける比較例の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 本発明の第2実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図である。 図6の正面透過図である。 第2実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。 波長400nmにおける第2実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 波長545nmにおける第2実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。 本発明の第3実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図である。 図11の正面透過図である。 第3実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。 本発明の第4実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図である。 図14の正面透過図である。 第4実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。 本発明の分光撮像素子の斜視図とその拡大図である。 図17の分光撮像素子の部分断面図である。 本発明の第6実施形態の発光素子の部分断面図である。 第6実施形態及び比較例の発光素子の発光スペクトルを示す図である。
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。各実施形態で共通する部材には同符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施形態の構成は可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図であり、図2は、図1の正面透過図である。図2において光の入射方向を矢印Aで示している。光学フィルター10は、基板11上に、第1導電材料薄膜12、第1誘電体13、第2導電材料薄膜14、第2誘電体15が順に積層されて構成される。
基板11は、入射光を透過する材料であれば特に限定はなく、無機材料、有機材料、それらの混合材料の何れであってもよい。基板11としては、例えば、ガラス、石英、Si、化合物半導体などを用いることができる。また、基板11の大きさ、厚みにも特に限定はない。また、基板11の表面形状にも特に限定はなく、平坦でも曲面形状であってもよい。
なお、基板11上に形成される層との密着性を考慮し、基板11に適当な表面処理を施してから積層してもよい。また、基板11にエッチングに対する耐性の高い透明材料をストッパー層として積層させてから積層してもよい。
第1導電材料薄膜12を構成する導電材料は任意に選択できる。ここでいう導電材料とは、単体で導体であり、任意の波長帯域で70%以上の反射率を有し、常温では固体である金属元素からなるもの、及びそれらの合金を指す。第1導電材料薄膜12を構成する材料のプラズマ周波数は利用する光の周波数より高いことが好ましい。また、利用する光の波長領域において光の吸収が少ないことが望ましい。このような材料として、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、ニッケル、コバルト又はこれらの合金からなる群から選択される材料、または、ITO(Sn:In23)を含むIn23系、AZO(Al:ZnO)、GZO(Ga:ZnO)、BZO(B:ZnO)、IZO(In:ZnO)を含むZnO系、IGZO系の金属酸化物透明導電材料から選択される材料を含むことが好ましい(非特許文献1および2参照)。
しかしながら、利用する光の周波数より高いプラズマ周波数を有する導電材料であれば、これらの限りではない。また、熱処理により第1導電材料薄膜12をシンタリングしてもよく、保護膜等を形成してもよい。また、第1導電材料薄膜12の膜厚は50nm以上200nm以下であることが好ましい。
第1導電材料薄膜12には、Z方向(基板11側から第1誘電体13側)に貫通し、所定波長未満の周期で配置された穴からなる開口部16が形成されている。所定波長は入射光の波長未満である。例えば、開口部16が配置される周期は、150nm以上5000nm以下であることが好ましい。図1において開口部16は円筒形状であるが、その形状は特に限定されるものではなく、円錐形状、三角錐形状、四角錐形状などであってもよい。また、開口部16には第1誘電体13が充填されている。
このように、所定波長の入射光が第1導電材料薄膜12の表面に表面プラズモンを誘起させ、表面プラズモンと入射光とが共振的に相互作用することで、透過光の波長選択及び増強が図られるように、開口部16が配置される。
第1誘電体13は、一種類の誘電体材料であることが好ましい。このような材料として、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、第1誘電体13の膜厚(開口部16に充填される部分を除く)は10nm以上100nm以下であることが好ましい。
第2導電材料薄膜14は、開口部16に対向して配置される。図1では、平面視で開口部16と合同な形状である円形の第2導電材料薄膜14が、開口部16と同じ形成パターンで各開口部16に対向して配置されている。つまり、円筒形状の第2導電材料薄膜14が開口部16と同じ周期で配置されている。第2導電材料薄膜14のパターン間には第2誘電体15が充填されている。
本実施形態では、開口部16及び第2導電材料薄膜14に、円開口及び円盤が三角格子状に配列している例を用いて説明したが、配列の仕方には特に限定はなく、例えば、正方格子配列にしてもよい。三角格子配列は、入射偏光依存性を抑え、斜入射特性を改善することができる。また、開口部16の形状及び第2導電材料薄膜14のパターン形状も円形に限らず、正方形、正多角形などでもよい。
入射光が第2導電材料薄膜14の表面に表面プラズモンを誘起させ、表面プラズモンと入射光とが共鳴的に相互作用し、第2導電材料薄膜14の周辺部と第1導電材料薄膜12の開口部16の周辺部とが近接場相互作用を及ぼし合い(非特許文献3参照)、第1導電材料薄膜12の表面に表面プラズモンが誘起され、第1導電材料薄膜12の開口部16の周期パターンによる共鳴で所定の波長が出射される。したがって、第2導電材料薄膜14と第1導電材料薄膜12は、近接場光相互作用を及ぼし合う層間距離を設けることが好ましい。
なお、第2導電材料薄膜14は、少なくとも一部が開口部16に間隔を有して対向していればよい。ここでいう少なくとも一部が対向するとは、平面視で一部が接している場合も含むものとする。例えば、第2導電材料薄膜14が開口部16とややずれて対向していてもよく、開口部16と平面視で接していてもよい。このとき、第2導電材料薄膜14は必ずしも開口部16と合同な形状である必要はなく、開口部16と異なる形状であってもよいし、開口部16と異なる大きさであってもよい。これにより、光リソグラフィーのアライメントなどによるプロセスバラつきによって開口部16のパターンと第2導電材料薄膜14のパターンとが多少ずれても問題ないように設計できる。
第2導電材料薄膜14を構成する導電材料は第1導電材料薄膜12と同様に任意に選択できる。なお、第1及び第2導電材料薄膜12、14は必ずしも同じ材料を用いる必要はない。また、熱処理により第2導電材料薄膜14をシンタリングしてもよく、保護膜等を形成してもよい。また、第2導電材料薄膜14の膜厚は30nm以上100nm以下であることが好ましい。
第2誘電体15および開口部16は、第1誘電体13と同様の材料を用いることができ、第1誘電体13と同じ材料を用いることが好ましい。同じ材料を用いることで界面での反射を抑えることができ、透過波長の選択性を向上させることができる。
上記の光学フィルター10の製造には、フォトリソグラフィー法、電子線リソグラフィー法、ナノインプリント法などの微細加工技術を用いることができる。開口プロセス(開口部16の形成又は第2導電材料薄膜14のパターニング)は、位置合わせをしながら一層ずつ所望の開口を形成する。
光学フィルター10の製造方法としては、例えば、まず基板11上に第1導電材料薄膜12を形成する。続いて、光リソグラフィーとエッチングによって開口部16を形成する。このとき開口部16の内壁のサイドエッチングなどの問題を防ぐため、異方性の高いドライエッチング条件により加工することが好ましい。次に、第1誘電体13を開口部16に充填するとともに、第1導電材料薄膜12上に積層し、化学的又は物理的平坦化手法によって平坦化する。続いて、第1誘電体13上に第2導電材料薄膜14を形成し、光リソグラフィーとエッチングによってパターニングする。そして、第2誘電体15を第2導電材料薄膜14のパターン間に充填するとともに、第2導電材料薄膜14上に積層して光学フィルター10を得る。
次に、第1実施形態の光学フィルター10のサンプルと、比較例として第2導電材料薄膜を有さない光学フィルターのサンプルとを作製し、物性を評価した。第1実施形態の光学フィルター10は、SiO2からなる基板11と、Alからなる厚さ150nmの第1導電材料薄膜12と、SiO2からなる厚さ40nmの第1誘電体13と、Alからなる厚さ60nmの第2導電材料薄膜14と、SiO2からなる第2誘電体15とで構成した。開口部16及び第2導電材料薄膜14は図1、2に示すような平面視円形で合同なパターンとし、その周期は360nm、その径は210nmとした。比較例の光学フィルターは、上記の構成から第2導電材料薄膜14だけをなくした構成とした。
図3は第1実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図であり、図4Aは波長400nmにおける第1実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図、図4Bは波長400nmにおける比較例の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図、図5Aは波長545nmにおける第1実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図、図5Bは波長545nmにおける比較例の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。
図4Bに示すように、比較例の光学フィルターでは、開口部16の円筒の中心で最も電界強度が強くなる導波管モードが見られるが、図4Aに示すように、第1実施形態の光学フィルターでは導波管モードがほとんど見られないことがわかる。
図3に示すように、第1実施形態の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の狭いメインピークを有し、400nm付近のサブピークはほとんど見られない。一方、比較例の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の広いメインピークを有し、400nm付近のサブピークも多く見られる。このような第1実施形態の光学フィルターの波長選択性は、図4A〜図5Bに示すように、第2導電材料薄膜14が存在するによって生じているものと言える。
このように、第1実施形態の光学フィルター10によれば、少なくとも一部が開口部16に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜14を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図であり、図7は、図6の正面透過図である。図7において光の入射方向を矢印Aで示している。光学フィルター20は、基板11上に、第2導電材料薄膜14、第1誘電体13、第1導電材料薄膜12、第2誘電体15が順に積層されて構成される。つまり、第2導電材料薄膜14、第1誘電体13、第1導電材料薄膜12が第1実施形態とは逆順に積層された構成である。開口部16及び第2導電材料薄膜14のパターンは第1実施形態と同様である。基板11上に順に各層を積層した場合、第2導電材料薄膜14のパターン間には第1誘電体13が充填され、開口部16には第2誘電体15が充填される。
入射光が第1導電材料薄膜12の表面に表面プラズモンを誘起させ、表面プラズモンと入射光とが共鳴的に相互作用し、第1導電材料薄膜12の開口部16の周辺部と第2導電材料薄膜14の周辺部とが近接場光相互作用を及ぼし合い(非特許文献3参照)、第2導電材料薄膜14の表面に表面プラズモンが誘起され、第2導電材料薄膜14の周期パターンによる共鳴で所定の波長が出射される。したがって、第1導電材料薄膜12と第2導電材料薄膜14は、近接場光相互作用を及ぼしあう層間距離を設けることが好ましい。
そして、第2実施形態の光学フィルター20のサンプルと、比較例として第2導電材料薄膜を有さない光学フィルターのサンプルとを作製し、物性を評価した。第2実施形態の光学フィルター20は、SiO2からなる基板11と、Alからなる厚さ40nmの第2導電材料薄膜14と、SiO2からなる厚さ30nmの第1誘電体13と、Alからなる厚さ150nmの第1導電材料薄膜12と、SiO2からなる第2誘電体15とで構成した。開口部16及び第2導電材料薄膜14は図6、7に示すような平面視円形で合同なパターンとし、その周期は360nm、その径は210nmとした。比較例の光学フィルターは、第1実施形態で例示した比較例と同じサンプルを用いた。
本実施形態では、開口部16及び第2導電材料薄膜14に、円開口及び円盤が三角格子状に配列している例を用いて説明したが、配列の仕方には特に限定はなく、例えば、正方格子配列にしてもよい。三角格子配列は、入射偏光依存性を抑え、斜入射特性を改善することができる。また、開口部16の形状及び第2導電材料薄膜14のパターン形状も円形に限らず、正方形、正多角形などでもよい。
図8は第2実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図であり、図9は波長400nmにおける第2実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図、図10は波長545nmにおける第2実施形態の光学フィルターの断面の電界強度分布のイメージを示す図である。400nm及び545nmにおける比較例の光学フィルター断面の電界強度分布のイメージは図4B及び図5Bと同じであるため省略する。
比較例の光学フィルターでは、開口部16の円筒の中心で最も電界強度が強くなる導波管モードによる伝搬光が見られるが、図9に示すように、第2実施形態の光学フィルターでは、第2導電材料薄膜14が存在するによって導波管モードによる伝搬光がほとんど見られないことがわかる。
図8に示すように、第2実施形態の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の狭いメインピークを有し、400nm付近のサブピークはほとんど見られない。一方、比較例の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の広いメインピークを有し、400nm付近のサブピークも多く見られる。このような第2実施形態の光学フィルターの波長選択性は、図9、図10に示すように、第2導電材料薄膜14が存在するによって生じているものと言える。
このように、第2実施形態の光学フィルター20によれば、少なくとも一部が開口部16に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜14を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図であり、図12は、図11の正面透過図である。図12において光の入射方向を矢印Aで示している。光学フィルター30は、基板11上に、第2導電材料薄膜14、第1誘電体13、第1導電材料薄膜12、第2誘電体15が順に積層されて構成される。つまり、第2実施形態と同じ積層順序である。
開口部16及び開口部19のパターンの形状、大きさ、周期は第1実施形態と同様であるが、開口部16と開口部19との配置がX方向に半周期ずれている。例えば、図11及び図12では、開口部16と開口部19とが平面視で接している場合を示している。基板11上に順に各層を積層した場合、開口部19には第1誘電体13が充填され、開口部16には第2誘電体15が充填される。また、第1導電材料薄膜12及び第2導電材料薄膜14の膜厚は30nm以上100nm以下であることが好ましい。
入射光が第1導電材料薄膜12の表面に表面プラズモンを誘起させ、表面プラズモンと入射光とが共鳴的に相互作用し、第1導電材料薄膜12の開口部16の周辺部と第2導電材料薄膜14の開口部17の周辺部とが近接場光相互作用を及ぼし合い(非特許文献3参照)、第2導電材料薄膜14の表面に表面プラズモンが誘起され、第2導電材料薄膜14の周期パターンによる共鳴で所定の波長が出射される。したがって、第1導電材料薄膜12と第2導電材料薄膜14は、近接場光相互作用を及ぼし合う層間距離を設けることが好ましい。
そして、第3実施形態の光学フィルター30のサンプルと、比較例として第1実施形態で例示した比較例と同じサンプルを用いて評価した。第3実施形態の光学フィルター30は、SiO2からなる基板11と、Alからなる厚さ75nmの第2導電材料薄膜14と、SiO2からなる厚さ40nmの第1誘電体13と、Alからなる厚さ75nmの第1導電材料薄膜12と、SiO2からなる第2誘電体15とで構成した。開口部16及び開口部19は平面視円形で合同なパターンであって、X方向に半周期ずれた配置とし、その周期は360nm、その径は210nmとした。図11において、開口部16と開口部19はX方向に半周期ずれた配置であるが、その方向およびズレ量は特に限定されるものではなく、Y方向に半周期ずれた配置、Y方向に1/4周期ずれた配置などであってもよい。
また、本実施形態では、開口部16及び19に、円開口が三角格子状に配列している例を用いて説明したが、配列の仕方には特に限定はなく、例えば、正方格子配列にしてもよい。三角格子配列にすることで入射偏光依存性を抑え、斜入射特性を改善することができる。また、開口形状も円形に限らず、正方形、正多角形などでもよい。
図13は第3実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。図13に示すように、第3実施形態の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の狭いメインピークを有し、400nm付近のサブピークはほとんど見られない。一方、比較例の光学フィルターの透過光は、545nm付近に半値幅の広いメインピークを有し、400nm付近のサブピークも多く見られる。このような第3実施形態の光学フィルターの波長選択性は、第2導電材料薄膜14が存在するによって生じているものと言える。
このように、第3実施形態の光学フィルター30によれば、少なくとも一部が開口部16下に間隔を有し対向する第2導電材料薄膜14を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
<第4実施形態>
図14は、第4実施形態の光学フィルターの一部の平面透過図であり、図15は、図14の正面透過図である。図15において光の入射方向を矢印Aで示している。光学フィルター40は、基板11上に、第1導電材料薄膜12、第3誘電体17、第1導電材料薄膜12、第1誘電体13、第2導電材料薄膜14、第2誘電体15が順に積層されて構成される。第1導電材料薄膜12の膜厚は10nm以上100nm以下であることが好ましい点で第1実施形態とは異なる。
第1導電材料薄膜12と第3誘電体17と第1導電材料薄膜12とが積層されて構成される多層膜には、Z方向(基板11側から第1誘電体13側)に貫通し、所定波長未満の周期で配置されたスリットからなる開口部18が形成されている。所定波長は入射光の波長未満である。例えば、開口部18が配置される周期に対する開口部18の幅の比率が、0.2以上0.6以下であることが好ましい。また、開口部18には第1誘電体13が充填されている。
第1誘電体13は、一種類の誘電体材料であることが好ましい。このような材料として、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、第1誘電体13の膜厚(開口部18に充填される部分を除く)は10nm以上100nm以下であることが好ましい。
第2導電材料薄膜14は、開口部18に対向して配置される。図14では、平面視で開口部18と合同な形状であるスリット形状の第2導電材料薄膜14が、開口部18と同じ形成パターンで各開口部18に対向して配置されている。つまり、直方体形状の第2導電材料薄膜14が開口部18と同じ周期で配置されている。第2導電材料薄膜14のパターン間には第2誘電体15が充填されている。
なお、第2導電材料薄膜14は、少なくとも一部が開口部18に間隔を有して対向していればよい。ここでいう少なくとも一部が対向するとは、平面視で一部が接している場合も含むものとする。例えば、第2導電材料薄膜14が開口部18とややずれて対向していてもよく、開口部18と平面視で接していてもよい。このとき、第2導電材料薄膜14は必ずしも開口部18と合同な形状である必要はなく、開口部18と異なる形状であってもよいし、開口部18と異なる大きさであってもよい。これにより、光リソグラフィーのアライメントなどによるプロセスバラつきによって開口部18のパターンと第2導電材料薄膜14のパターンとが多少ずれても問題ないように設計できる。
第2導電材料薄膜14を構成する導電材料は第1導電材料薄膜12と同様に任意に選択できる。なお、第1及び第2導電材料薄膜12、14は必ずしも同じ材料を用いる必要はない。また、熱処理により第2導電材料薄膜14をシンタリングしてもよく、保護膜等を形成してもよい。また、第2導電材料薄膜14の膜厚は30nm以上100nm以下であることが好ましい。
第2誘電体15は、第1誘電体13と同様の材料を用いることができ、第1誘電体13と同じ材料を用いることが好ましい。
第3誘電体17は、第1誘電体13及び第2誘電体15よりも高屈折材料であることが好ましい。このような材料として、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、第3誘電体17の膜厚は50nm以上150nm以下であることが好ましい。
上記の光学フィルター40の製造には、フォトリソグラフィー法、電子線リソグラフィー法、ナノインプリント法などの微細加工技術を用いることができる。開口プロセス(開口部18の形成又は第2導電材料薄膜14のパターニング)は、位置合わせをしながら一層ずつ所望の開口を形成する。
光学フィルター40の製造方法としては、例えば、まず基板11上に第1導電材料薄膜12を、その上に第3誘電体17を、その上に第1導電材料薄膜12を形成する。続いて、光リソグラフィーとエッチングによって開口部18を形成する。このとき開口部18の内壁のサイドエッチングなどの問題を防ぐため、異方性の高いドライエッチング条件により加工することが好ましい。次に、第1誘電体13を開口部18に充填するとともに、第1導電材料薄膜12上に積層し、化学的又は物理的平坦化手法によって平坦化する。続いて、第1誘電体13上に第2導電材料薄膜14を形成し、光リソグラフィーとエッチングによってパターニングする。そして、第2誘電体15を第2導電材料薄膜14のパターン間に充填するとともに、第2導電材料薄膜14上に積層して光学フィルター40を得る。
次に、第4実施形態の光学フィルター40のサンプルと、比較例として第2導電材料薄膜を有さない光学フィルターのサンプルとを作製し、物性を評価した。第4実施形態の光学フィルター40は、SiO2からなる基板11と、Alからなる厚さ40nmの第1導電材料薄膜12と、窒化シリコンからなる厚さ100nmの第3誘電体17と、Alからなる厚さ40nmの第1導電材料薄膜12と、SiO2からなる厚さ40nmの第1誘電体13と、Alからなる厚さ30nmの第2導電材料薄膜14と、SiO2からなる第2誘電体15とで構成した。開口部18及び第2導電材料薄膜14は図14、15に示すような平面視円形で合同なパターンとし、その周期は300nm、その幅は90nmとした。比較例の光学フィルターは、上記の構成から第2導電材料薄膜14だけをなくした構成とした。
図16は第4実施形態及び比較例の光学フィルターの透過率を測定した結果を示す図である。第4実施形態の光学フィルターの透過光は、580nm付近に半値幅の狭いメインピークを有し、400nm付近のサブピークはほとんど見られない。一方、比較例の光学フィルターの透過光は、580nm付近に第4実施形態よりも半値幅の広いメインピークを有し、400nm付近のサブピークも多く見られる。このような第4実施形態の光学フィルターの波長選択性は、第2導電材料薄膜14が存在するによって生じているものと言える。なお、開口部18が配置される周期に対する開口部18の幅の比率が0.2以上0.6以下である場合に同様の結果が得られた。
このように、第4実施形態の光学フィルター40によれば、少なくとも一部が開口部18に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜14を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
なお、第1〜第3実施形態では開口部を穴とし、第4実施形態では開口部をスリットとしたが、これらに限定されることはなく、これらの形状が混在していてもよい。また、種々の大きさの開口部が混在していても本発明の効果は失われない。このように開口部の大きさが一定ではない場合、開口の大きさは平均値で表示することができる。
<第5実施形態>
第1〜第4実施形態の何れかを用いて可視領域の波長を透過する光学フィルターを作製し、この光学フィルターを撮像素子の画素上に配設することで、分光器一体型の分光撮像素子を得ることができる。図17は、分光撮像素子60の斜視図とその拡大図である。図17では、分光撮像素子60と、その部分拡大図である複数の光学フィルター50が配設された図とを示している。
図18は、分光撮像素子60の部分断面図である。シリコン基板61上に、受光素子62、電極63、遮光膜64、光学フィルター50、平坦化層65、マイクロレンズ66が配設されている。従来備えられていたカラーフィルターに代えて光学フィルター50を設けることで、画素毎に受光波長の異なる分光撮像素子60を得ることができる。画素毎に受光波長が異なるようにするには、光学フィルター50の開口部の周期を調整することにより実現できる。
<第6実施形態>
第1〜第4実施形態の何れかを用いて紫外領域の波長を透過する光学フィルターを作製し、この光学フィルターを発光素子の上に配設することで、所望の波長以外のスペクトルが選択的にカットされた発光素子を得ることができる。図19は、発光素子70の部分断面図である。LED(Light Emitting Diode)チップ72は、電極73、n型半導体74、p型半導体75の順に積層され、その上にLEDチップ72の電極を兼ねた光学フィルター76が配設されている。このLEDチップ72はマウント・リード77上に搭載され、導電性ワイヤー71でマウント・リード77及びインナー・リード78にそれぞれ接続され、モールド部材79で封止されている。
図20に、第6実施形態の発光素子70及び比較例の発光素子の発光スペクトルを示す。比較例の発光素子は光学フィルター76の機能を有さない通常の電極を用いた発光素子である。両発光素子ともに約368nmにピーク波長を有し、第6実施形態の発光素子70の方が半値幅が狭くなっている。このように、第6実施形態の発光素子70によれば、発光スペクトルにわずかに含まれる可視光成分を完全にカットすることができる。例えば、発光素子70の出射光を紫外線により蛍光を発光する特定の対象物に照射すれば、対象物からの蛍光をより高精度に検出することが可能になる。
以下に本発明の実施形態についてまとめる。本発明の一実施形態の光学フィルター10は、所定波長の光を透過する光学フィルター10であって、基板11と、前記基板11上に形成された第1導電材料薄膜12と、第1導電材料薄膜12を貫通し、前記所定波長未満の周期で配置された開口部16と、少なくとも一部が前記開口部16に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜14と、を備えた構成とする。
この構成によれば、第2導電材料薄膜14を備えることにより、透過メインピークの半値幅が狭くなるとともに透過サブピークがほとんど見られないような、実用可能な程度にまで波長選択性を向上させた光学フィルターを提供することができる。
上記の光学フィルターにおいて、例えば、前記開口部を穴又はスリットとすることができる。
また上記の光学フィルターにおいて、前記開口部及び第2導電材料薄膜の形成パターンが同周期であることとしてもよい。これにより、透過サブピークをより小さくすることができる。
また上記の光学フィルターにおいて、例えば、第1電材料薄膜及び/又は第2電材料薄膜は、アルミニウム、銅、銀、金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、ニッケル、コバルト又はこれらの合金からなる群から選択される材料、または、ITO(Sn:In23)を含むIn23系、AZO(Al:ZnO)、GZO(Ga:ZnO)、BZO(B:ZnO)、IZO(In:ZnO)を含むZnO系、IGZO系の金属酸化物透明導電材料から選択される材料を含む(非特許文献1および2参照)。
また上記の光学フィルターにおいて、第1導電材料薄膜と第2導電材料薄膜との間に設けられる膜の材料と、前記開口部に充填される材料と、第2導電材料薄膜のパターン間に充填される材料とが同一材料であり、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムからなる群から選択される材料を含むことが好ましい。同一材料を用いることで界面での反射を抑えることができ、透過波長の選択性を向上させることができる。
本発明は、イメージセンサーや太陽電池パネルなどの受光素子、LEDなどの発光素子、液晶パネルなどの表示素子の光学フィルターとして用い、光学特性の波長選択性を向上させることができる。
10、20、30、40、50 光学フィルター
12 第1導電材料薄膜
14 第2導電材料薄膜
16、18、19 開口部

Claims (6)

  1. 所定波長の光を透過する光学フィルターであって、
    基板と、
    前記基板上に形成された第1導電材料薄膜と、
    第1導電材料薄膜を貫通し、前記所定波長未満の周期で配置された複数の開口部と、
    少なくとも一部が前記開口部に間隔を有して対向する第2導電材料薄膜と、を備え
    前記複数の開口部は、それぞれが他の開口部と分離していることを特徴とする光学フィルター。
  2. 前記開口部が穴又はスリットであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
  3. 前記開口部及び第2導電材料薄膜の形成パターンが同周期であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルター。
  4. 第2導電材料薄膜の形成パターンは、第1導電材料薄膜の形成パターンと同周期長で配位構造であり、第2導電材料薄膜の形成パターンは、第1導電材料薄膜の形成パターンを反転した異なるサイズのパターンであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光学フィルター。
  5. 第1導電材料薄膜及び/又は第2導電材料薄膜が、
    アルミニウム、銅、銀、金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、ニッケル、コバルト又はこれらの合金からなる群から選択される材料、または、ITO(Sn:In )を含むIn 系、AZO(Al:ZnO)、GZO(Ga:ZnO)、BZO(B:ZnO)、IZO(In:ZnO)を含むZnO系、IGZO系の金属酸化物透明導電材料から選択される材料を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学フィルター。
  6. 第1導電材料薄膜と第2導電材料薄膜との間に設けられる膜の材料と、前記開口部に充填される材料と、第2導電材料薄膜のパターン間に充填される材料とが同一材料であり、
    酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムからなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光学フィルター。
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