図1は、基地局と移動端末の間の通信の例を説明する図である。図1の例では、基地局10xはセルXを形成しているものとする。ここで、セルXは、マクロセルであってもスモールセルであっても良い。図1の例では、セルXはマクロセルである。以下、マクロセルよりも小さいセルのことを「スモールセル」と記載する。例えば、スモールセルは、マイクロセル、ピコセル、フェムトセルなどとすることができる。基地局10aはスモールセルAの基地局であり、基地局10bはスモールセルBの基地局、基地局10cはスモールセルCの基地局であるものとする。図1の例では、スモールセルAおよびスモールセルBはセルXに包含されており、スモールセルCはセルXに接しているものとする。また、スモールセルA〜Cで通信に使用される周波数帯域は、セルXとは異なる周波数帯域に設定されている。
さらに、図1の例では、移動端末5は、セルXとは通信したことがあるが、スモールセルA〜Cのいずれにもアクセスしたことがなく、スモールセルA〜Cのいずれの位置情報も保持していないものとする。
基地局10xは、基地局10xと通信している移動端末のハンドオーバ先となり得るセルの位置情報を記憶している。ここで、基地局10xと通信している移動端末の移動先となり得るセルは、セルXと少なくとも1点を共有している任意の大きさのセルである。基地局10xと通信している移動端末の移動先となり得るセルには、セルX中に包含されているセル、セルXの一部を含む領域に形成されているセル、および、セルXに接しているセルが含まれる。図1の例では、基地局10xと通信している移動端末の移動先となり得るセルは、スモールセルA、スモールセルB、および、スモールセルCである。基地局10a〜10cも、基地局10xと同様に、自装置と通信している移動端末の移動先となり得るセルの位置情報を保持しているものとする。
移動端末5は、セルXの中に位置しており、基地局10xと通信しているものとする。基地局10xは、スモールセルA、スモールセルB、および、スモールセルCの位置情報を、移動端末5に送信する。移動端末5は、セルXから取得した位置情報と、移動端末5の位置を比較することにより、移動先となり得るセルへの接近を検知する。例えば、移動端末5は、スモールセルBを移動先の候補として検知したとする。すると、移動端末5は、スモールセルの物理セルIDの取得に使用する情報を基地局10xから取得した上で、スモールセルBの物理セルIDを特定する。移動端末5は、スモールセルBの物理セルIDを基地局10xに通知し、セルXからスモールセルBに移動する。
移動端末5と通信を開始すると、基地局10bは、移動端末5の移動先となり得るセルの位置情報を、移動端末5に通知する。例えば、基地局10bは、スモールセルAとスモールセルCの位置情報を移動端末に通知することができる。移動端末5は、基地局10bから取得した情報を用いて、スモールセルAやスモールセルCに接近したことを検知できる。移動端末5は、接近を検知したスモールセルに割り当てられている物理セルIDを用いて、適宜、ハンドオーバ処理を基地局10bに要求できる。
このように、移動端末は、通信中の基地局から移動先となり得るセルの位置情報を取得することができる。このため、移動端末は、移動端末自身の位置情報と、基地局から取得した位置情報を比較することにより、在圏したことの無いスモールセルであっても、効率的に発見することができる。
なお、スモールセルの基地局は、そのスモールセルと1点以上を共有しているマクロセルからの移動先となり得る基地局の情報を保持していても良い。例えば、図1のスモールセルAはセルXに含まれている。そこで、スモールセルAを形成している基地局10aは、セルXを用いて通信している移動端末が移動先とすることができるスモールセルB、Cの位置情報を記憶することができる。この場合においても、基地局10aと通信している移動端末5は、基地局10aからスモールセルB、Cの位置情報を取得できるので、在圏したことの無いスモールセルでも効率的に発見することができる。
さらに、基地局10a〜10c、10xは、それぞれ、スモールセルの位置情報を予め記憶していても良く、また、適宜、ネットワークを介して通信可能なサーバなどからスモールセルの位置情報を取得しても良い。以下の例では、基地局10がサーバからスモールセルの位置情報を取得する場合を例として説明する。
<装置構成>
図2は、移動端末5と基地局10(10a〜10c)の構成の例を示す。図2に示す例では、基地局10a〜10cは、ネットワーク1を介してサーバ30にアクセスすることができる。
基地局10は、信号処理部11、無線処理部12、更新部15、ハンドオーバ処理部16、調整部17、記憶部20を備える。無線処理部12は、受信部13と送信部14を有する。記憶部20は、位置情報テーブル21を保持する。なお、マクロセルを形成する基地局10の構成と、スモールセルを形成する基地局10の構成は同様である。
信号処理部11は、ネットワーク1を介した通信で使用される信号を処理する。受信部13は、移動端末5から送信された情報を受信する。送信部14は、移動端末5に位置情報などの情報を送信する。位置情報テーブル21は、基地局10と通信している移動端末5の移動先となり得るスモールセルの位置情報を含む。更新部15は、スモールセルの位置情報が更新されると、位置情報テーブル21を更新する。ここで、更新部15は、スモールセルの位置情報等を、信号処理部11を介して、サーバ30から取得する。ハンドオーバ処理部16は、通信中の移動端末5が他の基地局10との通信を開始するための処理や、他の基地局10と通信中の移動端末5との通信を開始するための処理を行う。調整部17は、移動端末5の移動先となり得るスモールセルの情報を、移動端末5に通知するためのメッセージを生成する。調整部17は、生成したメッセージを送信部14に出力する。さらに、調整部17は、位置情報を含むメッセージを送信するタイミングを調整することができる。調整部17の動作については、後述する。基地局10は、さらに計算部18を備えても良い。計算部18は、移動端末5の移動速度を計算し、移動端末5の識別子に対応付けて計算結果を調整部17に出力できる。
移動端末5は、受信部51、送信部52、更新部61、特定部62、検出部63、ハンドオーバ処理部64、記憶部70を備える。受信部51は、基地局10から位置情報などの情報を受信する。送信部52は、基地局10に情報を送信する。更新部61は、基地局10から受信した位置情報を用いて、位置情報テーブル71を更新する。特定部62は、移動端末5の位置を特定する。例えば、特定部62は、GPS(Global Positioning System)などを用いて、移動端末5の位置を特定できる。
検出部63は、特定部62で得られた情報と、位置情報テーブル71中の位置情報を比較することにより、移動先とすることができるスモールセルに接近したことを検出する。検出部63は、予め、閾値Thdを記憶している。例えば、検出部63は、移動端末5の位置からスモールセルの基地局10までの距離が、閾値Thd以下である場合、スモールセルに接近したと判定できる。また、例えば、位置情報テーブル71にセル半径が含まれている場合、検出部63は、移動端末5の位置からスモールセルの境界までの距離が閾値Thd以下となったときに、スモールセルに接近したと判定しても良い。検出部63は、スモールセルへの接近をハンドオーバ元の基地局10に通知するためのメッセージ(通知情報)を生成し、送信部52を介して送信する。ハンドオーバ処理部64は、ハンドオーバに関する処理を行う。記憶部70は、位置情報テーブル71を保持する。
サーバ30は、受信部31、更新部32、検索部33、選択部34、送信部35、記憶部40を備える。記憶部40は、マクロセル情報テーブル41、スモールセル情報テーブル42、マクロセル管理テーブル43、スモールセル管理テーブル44を保持する。受信部31は、マクロセルの情報やスモールセルの情報を受信する。ここで、受信部31は、各基地局10から、その基地局10の位置情報や通信に使用している周波数帯域の情報を取得しても良い。また、受信部31は、予め基地局10の設置位置等の情報を保持している装置から、ネットワーク1を介して、各基地局10の情報を取得しても良いものとする。
更新部32は、受信部31を介して取得した情報を用いて、マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42を更新する。マクロセル情報テーブル41は、マクロセルを形成している基地局の位置や、マクロセルで通信に使用されている周波数帯域などの情報を保持する。スモールセル情報テーブル42は、スモールセルを形成している基地局の位置や、スモールセルで通信に使用されている周波数帯域などの情報を保持する。マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42の例については後述する。
検索部33は、更新後のマクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42を用いて、マクロセル管理テーブル43とスモールセル管理テーブル44を更新する。検索部33は、マクロセルの位置、マクロセルのセル半径、スモールセルの位置、スモールセルのセル半径などの情報を用いて、各マクロセルについて、移動端末5の移動先となり得るスモールセルを検索する。検索部33は、得られた結果をマクロセルの物理セルIDに対応付けて、マクロセル管理テーブル43に記録する。同様に、検索部33は、各スモールセルについても、そのスモールセルを用いて通信している移動端末5が移動先とする可能性があるスモールセルを検索する。さらに、検索部33は、スモールセルごとの検索結果を、スモールセルの物理セルIDに対応付けてスモールセル管理テーブル44に記録する。マクロセル管理テーブル43とスモールセル管理テーブル44の例と、検索部33の処理の具体例についても後述する。
選択部34は、位置情報を基地局10に通知するための移動先セル情報を生成する。「移動先セル情報」は、移動先セル情報の宛先の基地局10と通信中の移動端末5にとって、移動先となり得るセルの位置情報を含むものとする。選択部34は、送信先の基地局10に合わせて、送信する情報を選択する。選択部34は、例えば、情報の送信先がマクロセルの基地局10である場合、送信先の基地局10が形成しているマクロセルの識別子に対応付けられたスモールセルを、マクロセル管理テーブル43を用いて選択する。一方、選択部34は、スモールセルの基地局10が送信先である場合、スモールセル管理テーブル44を用いて、送信先の基地局10の識別子に対応付けられたスモールセルを選択する。さらに、選択部34は、選択したスモールセルの情報をスモールセル情報テーブル42から取得し、基地局10に送信する移動先セル情報を生成する。選択部34は、移動先セル情報を、送信先の基地局10を識別する情報とともに送信部35に出力する。送信部35は、基地局10に移動先セル情報を送信する。
図3は、基地局10のハードウェア構成の例を示す。基地局10は、アンテナ101、アンプ102、ベースバンド処理回路103、プロセッサ104、メモリ105、伝送路インタフェース106を備える。基地局10は、アンテナ101を介して移動端末5と通信する。また、アンテナ101とアンプ102は、無線処理部12として動作する。ベースバンド処理回路103は、ベースバンド信号を処理する。プロセッサ104は、Central Processing Unit(CPU)を含む任意の処理回路とすることができる。プロセッサ104は、メモリ105に記憶されているプログラムを実行することにより、更新部15、ハンドオーバ処理部16、調整部17、計算部18として動作する。メモリ105は、記憶部20として動作し、適宜、基地局10の処理に使用されるデータやプログラム等を記憶する。伝送路インタフェース106は、信号処理部11を実現する。基地局10は、伝送路インタフェース106を介してネットワーク1との通信や局間回線を介した通信を行う。
図4は、移動端末5のハードウェア構成の例を示す。移動端末5は、アンテナ111、アンプ112、ベースバンド処理回路113、プロセッサ114、メモリ115を備える。移動端末5は、アンテナ111を介して基地局10と通信する。また、アンテナ111とアンプ112は、受信部51および送信部52として動作する。ベースバンド処理回路113は、ベースバンド信号を処理する。プロセッサ114は、CPUを含む任意の処理回路である。プロセッサ114は、メモリ115に記憶されているプログラムを実行することにより、更新部61、特定部62、検出部63、および、ハンドオーバ処理部64として動作する。メモリ115は、記憶部70として動作し、適宜、移動端末5の処理に使用されるデータやプログラム等を記憶する。
図5は、サーバ30のハードウェア構成の例を示す。サーバ30は、プロセッサ121、メモリ122、バス125、外部記憶装置126、ネットワーク接続装置129を備える。サーバ30は、さらに、入力装置123、出力装置124、媒体駆動装置127を備えても良い。
プロセッサ121は、CPUを含む任意の処理回路である。プロセッサ121は、更新部32、検索部33、選択部34として動作する。なお、プロセッサ121は、例えば、外部記憶装置126に記憶されたプログラムを実行することができる。メモリ122は、記憶部40として動作する。さらに、メモリ122は、プロセッサ121の動作により得られたデータや、プロセッサ121の処理に用いられるデータも、適宜、記憶する。ネットワーク接続装置129は、他の装置との通信に使用され、受信部31、送信部35として動作する。
入力装置123は、例えば、ボタン、キーボードやマウスとして実現され、出力装置124は、ディスプレイなどとして実現される。バス125は、プロセッサ121、メモリ122、入力装置123、出力装置124、外部記憶装置126、媒体駆動装置127、ネットワーク接続装置129の間を相互にデータの受け渡しが行えるように接続する。外部記憶装置126は、プログラムやデータなどを格納し、格納している情報を、適宜、プロセッサ121などに提供する。媒体駆動装置127は、メモリ122や外部記憶装置126のデータを可搬記憶媒体128に出力することができ、また、可搬記憶媒体128からプログラムやデータ等を読み出すことができる。ここで、可搬記憶媒体128は、フロッピイディスク、Magneto-Optical(MO)ディスク、Compact Disc Recordable(CD−R)やDigital Versatile Disk Recordable(DVD−R)を含む、持ち運びが可能な任意の記憶媒体とすることができる。
<第1の実施形態>
図6は、マクロセルとスモールセルの配置の例を示す。以下、マクロセルの識別子は、3文字のアルファベットの大文字が連続した文字列で表し、スモールセルの識別子は、3文字のアルファベットの小文字が連続した文字列で表す。例えば、図6のセルAAAやセルBBBはマクロセルであり、セルaaa、bbbなどは、スモールセルである。また、理解しやすくするために、物理セルIDと各セルの識別子を同じ文字列で表す。例えば、セルAAAの物理セルIDはAAAである。図6の例では、マクロセルAAAは、スモールセルaaaとスモールセルbbbを包含しており、スモールセルcccと一部の領域を共有している。さらに、マクロセルAAAは、スモールセルdddとスモールセルeeeに接しているので、スモールセルdddおよびスモールセルeeeとも少なくとも1点を共有しているといえる。一方、マクロセルBBBは、スモールセルdddとスモールセルfffを包含しており、さらに、スモールセルbbbと一部の領域を共有している。
以下、マクロセルとスモールセルが図6に示すように配置されている場合を例として、第1の実施形態に係る通信方法を説明する。以下、移動端末5の移動先となり得るセルの特定方法、基地局10への位置情報の通知、基地局10から移動端末5への位置情報の通知、および、移動端末5での処理に分けて説明する。
〔移動端末の移動先となり得るセルの特定方法〕
図7は、マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42の例を示す。図7の例では、マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42のいずれも、各セルに割り当てられた物理セルIDに対応付けて、そのセルを形成する基地局の設置位置、通信に使用される周波数帯域、セル半径が記録されている。図7の例では、位置情報は、緯度と経度の組み合わせであり、末尾にxxが付されている値が緯度(北緯)、末尾にyyが付されている値が経度(東経)であるものとする。以下の説明では、マクロセルAAAとマクロセルBBBは、同じ周波数帯域を使用しているものとする。一方、スモールセルaaa〜fffは、いずれも、マクロセルAAAやマクロセルBBBとは異なる周波数帯域を通信に使用する。さらに、スモールセル同士では、通信に使用される周波数帯域は同じであっても異なっていても良い。図7の例では、マクロセルAAAとマクロセルBBBはいずれも、2.2GHzの帯域で通信を行う。一方、スモールセルaaa、ccc、ddd、eeeは、800MHzの周波数帯域を使用するが、スモールセルbbbとfffは、900MHzの周波数帯域を使用する。
図8は、更新部32の処理の例を説明するフローチャートである。マクロセル情報テーブル41やスモールセル情報テーブル42は、図8に示す手順で更新される。まず、サーバ30の受信部31は、基地局10の位置などの情報を保持している装置または基地局10から、基地局10の位置情報やセル半径などの情報を物理セルIDに対応付けて取得する。受信部31は、取得した情報を更新部32に出力する(ステップS1)。更新部32は、受信部31から入力された情報について、マクロセルとスモールセルのいずれの情報であるかを特定する。更新部32がセルの大きさを特定する方法は任意である。例えば、更新部32は、マクロセルに割り当てられる物理セルIDを予め記憶していても良い。また、更新部32は、例えば、セル半径や送信電力の値を用いて、入力された情報がマクロセルとスモールセルのいずれの情報であるかを特定しても良いものとする。更新部32は、入力された情報がマクロセルの情報であると判定すると、通知された情報に対応付けられている物理セルIDをキーとしてマクロセル情報テーブル41を検索する(ステップS2)。
キーとした物理セルIDがマクロセル情報テーブル41に含まれていない場合、更新部32は、マクロセル情報テーブル41に新たなエントリを作成し、入力された情報をマクロセル情報テーブル41に登録する(ステップS2でNo、ステップS3)。一方、キーとした物理セルIDがマクロセル情報テーブル41に含まれている場合、更新部32は、マクロセル情報テーブル41に記録されている情報と、受信部31から入力された情報の間に差があるかを判定する(ステップS2でYes、ステップS4)。両者に差があると判定した場合、更新部32は、マクロセル情報テーブル41を、受信部31から通知された情報を用いて更新する(ステップS4でYes、ステップS5)。一方、キーとした物理セルIDに対応付けられた情報について、マクロセル情報テーブル41中の情報と受信部31から入力された情報の間で差がない場合、更新部32は処理を終了する(ステップS4でNo、ステップS6)。図8を参照しながら説明した処理を行うことにより、図6に示すようにマクロセルが配置されている場合、図7に示すマクロセル情報テーブル41が得られる。
更新部32は、受信部31から入力された情報のうちで、スモールセルの情報であると判定した情報についても、図8を用いて説明した処理と同様の処理を行う。図8を参照しながら説明した処理を行うことにより、図6に示すようにスモールセルが配置されている場合、図7に示すスモールセル情報テーブル42が得られる。なお、マクロセルやスモールセルが新たに設置された場合や、設置位置が変更された場合、図8に示す処理により、マクロセル情報テーブル41および/またはスモールセル情報テーブル42が、セルの設置状況の変化に応じて更新される。
図9は、マクロセル管理テーブル43の更新方法の例を説明するフローチャートである。図10は、マクロセル管理テーブル43の例である。マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42が更新されると、検索部33は、マクロセルごとに、移動端末5の移動先となり得るスモールセルを検索し、得られた結果をマクロセル管理テーブル43に記録する。以下、図9を参照しながら、図10に示すマクロセル管理テーブル43を生成するときの検索部33の処理の例を説明する。以下の例では、移動端末5の移動先となり得るスモールセルのことを、「割り当てスモールセル」と記載することがある。割り当てスモールセルは、各基地局10に、通信中の移動端末5に位置情報を通知する対象として割り当てられているスモールセルであるともいえる。なお、図9の例では、ステップS11とステップS12は、実装に応じて互いに順序を変更することができる。
検索部33は、マクロセル情報テーブル41に含まれているエントリの数(M)と、スモールセル情報テーブル42に含まれているエントリの数(N)を取得する(ステップS11)。なお、定数Mはマクロセルの総数であり、定数Nはスモールセルの総数である。次に、検索部33は、変数mと変数nを1に設定する(ステップS12、S13)。なお、mは、マクロセル情報テーブル41のエントリを識別する変数であり、nは、スモールセル情報テーブル42のエントリを識別する変数である。
検索部33は、マクロセル情報テーブル41からm番目のエントリに記録されているマクロセルの情報を取得し、マクロセル管理テーブル43に記録する(ステップS14)。ここで、各エントリには、物理セルID、位置情報、周波数帯域、セル半径が記録されているものとする。また、m番目のマクロセルのセル半径をRとする。例えば、検索部33は、図7に示すマクロセル情報テーブル41の1番目のエントリから、セルAAAについて、以下の情報を取得する。
物理セルID:AAA
位置情報 :北緯35.730541度、東経139.71294度
周波数帯域 :2.2GHz
セル半径 :500m
検索部33は、取得した情報を用いて、図10に示すマクロセル管理テーブル43aを生成する。
次に、検索部33は、スモールセル情報テーブル42から、n番目のエントリに記録されているスモールセルの位置情報とセル半径を取得する(ステップS15)。以下、n番目のスモールセルのセル半径をrとする。例えば、検索部33は、セルaaaについて、位置が北緯35.730542度、東経139.71295度であり、セル半径r=10mであるという情報を取得する。検索部33は、m番目のマクロセルの位置情報とn番目のスモールセルの位置情報を用いて、m番目のマクロセルとn番目のスモールセルの間の距離(D)を計算する(ステップS16)。検索部33による距離の計算は、2点の緯度と経度の情報を用いた任意の計算方法とすることができる。なお、図9の例で計算される距離Dは、m番目のマクロセルの基地局とn番目のスモールセルの基地局の間の距離である。
検索部33は、距離Dを、m番目のマクロセルのセル半径とn番目のスモールセルのセル半径の合計値と比較する(ステップS17)。距離Dが合計値以下である場合、m番目のマクロセルとn番目のスモールセルは少なくとも1点を共有していることになる。例えば、距離Dと合計値が等しい場合、m番目のマクロセルとn番目のスモールセルは、互いに接している。また、距離Dが合計値より小さい場合、m番目のマクロセルとn番目のスモールセルが重なる領域がある。そこで、距離Dが合計値以下である場合、検索部33は、n番目のスモールセルがm番目のマクロセルからの移動先となり得ると判定して、マクロセル管理テーブル43に記録する(ステップS17でYes、ステップS18)。例えば、図6に示すように、マクロセルAAAとスモールセルaaaの間の距離は、マクロセルAAAのセル半径とスモールセルaaaのセル半径の合計よりも小さい。すると、検索部33は、スモールセルaaaをマクロセルAAAの割り当てスモールセルとして、マクロセル管理テーブル43aをマクロセル管理テーブル43b(図10)に更新する。一方、距離Dが合計値より大きい場合、検索部33は、n番目のスモールセルはm番目のマクロセルからの移動先となり得ないと判定し、マクロセル管理テーブル43に記録しない(ステップS17でNo、ステップS19)。
ステップS18かステップS19の処理が終わると、検索部33は、変数nを1つインクリメントした後で、変数nをスモールセルの総数Nと比較する(ステップS20、S21)。変数nがスモールセルの総数N以下である場合、ステップS15以降の処理が繰り返される(ステップS21でNo)。すなわち、変数mにより特定されるマクロセルに対して、各スモールセルがそれぞれ移動先のセルとなり得るかが判定される。
変数nがスモールセルの総数Nを超えると、検索部33は、変数mを1つインクリメントした後で、変数mをマクロセルの総数Mと比較する(ステップS22、S23)。変数mがマクロセルの総数M以下である場合、ステップS13以降の処理が繰り返される(ステップS23でNo)。このため、全てのマクロセルについてマクロセル管理テーブル43のデータが更新される。変数mがマクロセルの総数Mを超えると、検索部33は処理を終了する(ステップS23でYes)。このため、図6に示すようにセルが配置されている場合、図9を参照しながら説明した処理により、マクロセル管理テーブル43c(図10)が得られる。
図11は、スモールセル管理テーブル44の更新方法の例を説明するフローチャートである。図12は、スモールセル管理テーブル44の例である。マクロセル管理テーブル43の更新が終わると、検索部33は、スモールセルごとに、移動端末5の移動先となり得るスモールセルを検索し、得られた結果をスモールセル管理テーブル44に記録する。以下、図11を参照しながら、図12に示すスモールセル管理テーブル44を生成するときの検索部33の処理の例を説明する。なお、図11の例では、ステップS31とステップS32は、実装に応じて互いに順序を変更することができる。
検索部33は、マクロセル管理テーブル43に含まれているマクロセルのエントリの数(M)と、スモールセル情報テーブル42に含まれているエントリの数(N)を取得する(ステップS31)。なお、定数Mはマクロセルの総数であり、定数Nはスモールセルの総数である。次に、検索部33は、変数pと変数qを1に設定する(ステップS32、S33)。なお、pは、スモールセルを識別する変数であり、qは、マクロセルを識別する変数である。検索部33は、スモールセル情報テーブル42からp番目のエントリに記録されているスモールセルの情報を取得し、スモールセル管理テーブル44に記録する(ステップS34)。例えば、検索部33は、スモールセルの物理セルID、位置情報、周波数帯、セル半径を、スモールセル管理テーブル44に記録する。
検索部33は、マクロセル管理テーブル43中のq番目のマクロセルのエントリを参照し、割り当てスモールセルにp番目のスモールセルが含まれているかを判定する(ステップS35)。p番目のスモールセルが含まれている場合、q番目のマクロセルの割り当てスモールセルのうちで、p番目のスモールセル以外のスモールセルの情報を、p番目のスモールセルの割り当てスモールセルとする(ステップS35でYes、ステップS36)。例えば、スモールセルaaaの割り当てスモールセルを検索する場合、検索部33は、マクロセル管理テーブル43c(図10)を用いて、マクロセルAAAの割り当てスモールセルを特定する。ここで、マクロセルAAAの割り当てスモールセルは、セルaaa、セルbbb、セルccc、セルddd、および、セルeeeである。検索部33は、マクロセルAAAの割り当てスモールセルにスモールセルaaaが含まれているので、マクロセルAAAの割り当てスモールセルのうち、スモールセルaaa以外のセルを、スモールセルaaaの割り当てスモールセルとする。従って、検索部33は、スモールセル管理テーブル44a(図12)に示すように、セルaaaの割り当てスモールセルは、セルbbb、セルccc、セルddd、および、セルeeeであることを記録する。
ステップS36の処理が終わると、検索部33は、変数qを1つインクリメントした後で、変数qをマクロセルの総数Mと比較する(ステップS37、S38)。変数qがマクロセルの総数M以下である場合、ステップS35以降の処理が繰り返される(ステップS38でNo)。このため、1つのスモールセルについて割り当てスモールセルを特定するときには、全てのマクロセルの割り当てスモールセルの情報が使用される。従って、あるスモールセルが複数のマクロセルの割り当てスモールセルとなっている場合、そのスモールセルの割り当てスモールセルは、複数のマクロセルの情報を用いて特定される。例えば、スモールセルbbbは、マクロセルAAAの割り当てスモールセルであり、かつ、マクロセルBBBの割り当てスモールセルでもある。そこで、マクロセルAAAの割り当てスモールセルのうち、セルaaa、セルccc、セルddd、および、セルeeeが、セルbbbの割り当てスモールセルとなる。さらに、マクロセルBBBの割り当てスモールセルが、セルbbb、セルddd、および、セルfffであることから、セルfffもセルbbbの割り当てスモールセルとなる。
変数qがマクロセルの総数Mを超えると、検索部33は、変数pを1つインクリメントした後で、変数pをスモールセルの総数Nと比較する(ステップS39、S40)。変数pがスモールセルの総数N以下である場合、ステップS33以降の処理が繰り返される(ステップS40でNo)。このため、全てのスモールセルについてスモールセル管理テーブル44のデータが更新される。変数pがスモールセルの総数Nを超えると、検索部33は処理を終了する(ステップS40でYes)。このため、図6に示すようにセルが配置されている場合、図11を参照しながら説明した処理により、図12に示すスモールセル管理テーブル44bが得られる。
図13は、移動端末の移動先となり得るセルの特定方法の例を説明するシーケンス図である。この処理は、例えば、サーバ30により実行される。なお、図13に示す矢印は、情報の流れの例を示す。図13は一例であり、実装に応じて動作の順序は変更されうる。例えば、手順(1)、(2)の前に手順(3)、(4)が行われても良い。
(1)受信部31は基地局10の情報を受信すると、受信した情報を更新部32に出力する。
(2)更新部32は、受信部31から入力された情報がマクロセルとスモールセルのいずれの基地局10の情報であるかを判定する。ここでは、マクロセルの基地局の情報が入力されたとする。すると、更新部32は、マクロセル情報テーブル41を更新する。
(3)手順(1)と同様に、更新部32に情報が出力される。
(4)更新部32は、手順(2)と同様の判定を行う。ここでは、スモールセルの基地局の情報が入力されたとする。すると、更新部32は、スモールセル情報テーブル42を更新する。
(5)記憶部40は、更新後のマクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42を保持する。
(6)検索部33は、記憶部40にアクセスして、マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42の情報を取得する。
(7)検索部33は、マクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42を用いて、各セルからの移動先となり得るスモールセルを特定する。
(8)検索部33は、マクロセル管理テーブル43とスモールセル管理テーブル44を更新する。このとき、検索部33は、各セルからの移動先となり得るスモールセルを、マクロセル管理テーブル43またはスモールセル管理テーブル44に、割り当てスモールセルとして記録する。
〔基地局10への位置情報の通知〕
マクロセル管理テーブル43とスモールセル管理テーブル44の更新処理が終わると、サーバ30は、移動先セル情報を基地局10に通知する。ここで、「移動先セル情報」は、移動先セル情報の宛先の基地局10と通信中の移動端末5にとって、移動先となり得るセルの位置情報を含む。移動先セル情報には、宛先となる基地局10の割り当てスモールセルの物理セルIDに、各セルの位置情報を含む任意の情報が対応付けられているものとする。以下の説明では、移動先セル情報の宛先の区別を容易にするために、動作を行っている基地局10が形成している物理セルIDの1文字目のアルファベットを、符号の最後に記載することがある。例えば、基地局10AはマクロセルAAAを形成しており、基地局10bはスモールセルbbbを形成している。また、位置情報テーブル21Aは、基地局10Aに保持されている位置情報テーブル21である。
まず、マクロセルの基地局10に送信するための移動先セル情報の生成方法について述べる。選択部34は、マクロセル管理テーブル43から、移動先セル情報の送信先の基地局10についての割り当てスモールセルを特定する。さらに、選択部34は、特定した割り当てスモールセルについての位置情報などをスモールセル管理テーブル44から選択する。なお、選択部34は、割り当てスモールセルについての位置情報を、スモールセル情報テーブル42から取得しても良い。
例えば、マクロセルAAAの基地局10Aに送信する移動先セル情報を生成する場合、選択部34は、マクロセル管理テーブル43c(図10)から、セルAAAに対応付けられている割り当てスモールセルを特定する。セルAAAに対応付けられている割り当てスモールセルは、セルaaa、セルbbb、セルccc、セルddd、セルeeeである。選択部34は、特定したセルの各々について、位置情報などをスモールセル管理テーブル44から取得することにより、移動先セル情報を生成する。図14に、マクロセルAAAの基地局10Aに送信される移動先セル情報の例を示す。マクロセルBBBの基地局10Bについても、同様の処理により、移動先セル情報が生成される。
次に、スモールセルの基地局10に送信するための移動先セル情報の生成方法について述べる。選択部34は、スモールセル管理テーブル44から、移動先セル情報の送信先の基地局10についての割り当てスモールセルを特定する。さらに、選択部34は、特定した割り当てスモールセルについての位置情報などについても、スモールセル管理テーブル44中のエントリから選択する。なお、スモールセルの基地局10宛ての移動先セル情報の生成のときも、選択部34は、割り当てスモールセルについての位置情報を、スモールセル情報テーブル42から取得しても良い。
例えば、スモールセルdddの基地局10dに送信する移動先セル情報を生成する場合、選択部34は、スモールセル管理テーブル44b(図12)から、セルdddに対応付けられている割り当てスモールセルを特定する。セルdddに対応付けられている割り当てスモールセルは、セルaaa、セルbbb、セルccc、セルeee、セルfffである。選択部34は、特定したセルの各々について、位置情報などをスモールセル管理テーブル44から取得することにより、移動先セル情報を生成する。選択部34は、他のスモールセルの基地局10についても、同様の処理により、移動先セル情報を生成する。
図15は、基地局10に移動先セル情報を通知する処理の例を説明するシーケンス図である。図15では、サーバ30が、マクロセルAAAを形成している基地局10Aに移動先セル情報を通知する場合の通信処理の例を説明するが、サーバ30と他のマクロセルの基地局10との間での通信も同様である。
(11)選択部34は、記憶部40からマクロセル管理テーブル43とスモールセル管理テーブル44の情報を取得する。
(12)選択部34は、送信先の基地局10Aで形成されているセルの物理セルIDをキーとして、マクロセル管理テーブル43を検索する。ここで、基地局10Aで形成されているセルの物理セルIDはAAAである。選択部34は、基地局10A宛の移動先セル情報を生成する。移動先セル情報の生成方法は、図14を参照しながら説明した通りである。
(13)選択部34は、生成した移動先セル情報を、基地局10Aを宛先に指定して、送信部35に出力する。
(14)送信部35は、選択部34から入力された移動先セル情報を基地局10Aに送信する。
(15)基地局10Aの信号処理部11Aは、サーバ30からの信号を受信する。信号処理部11Aは、受信した信号から移動先セル情報を取得し、更新部15Aに出力する。
(16)更新部15Aは、移動先セル情報と位置情報テーブル21Aを比較する。位置情報テーブル21Aと移動先セル情報に差がある場合、更新部15Aは、移動先セル情報に合わせて位置情報テーブル21Aを更新する。このとき、更新部15Aは、位置情報テーブル21Aと移動先セル情報の間で差分がある基地局についての情報だけを更新しても良い。また、すでに保持している位置情報テーブル21Aの情報を消去して、移動先セル情報に含まれている情報を、位置情報テーブル21Aとしても良い。図14に示す移動先セル情報が基地局10Aに送信された場合の位置情報テーブル21Aの例を、図16に示す。
(17)更新部15Aは、更新後の位置情報テーブル21Aを記憶部20Aに出力する。記憶部20Aは、更新後の位置情報テーブル21Aを保持する。
マクロセルBBBを形成している基地局10Bに対しても、サーバ30は、同様の方法で移動先セル情報を生成し、通知する。このため、サーバ30がマクロセル管理テーブル43c(図10)とスモールセル管理テーブル44b(図12)を保持している場合、基地局10Bは、図16に示す位置情報テーブル21Bを保持する。
図15を用いてマクロセルの基地局10に移動先セル情報を通知するときの動作を説明したが、スモールセルの基地局10に移動先セル情報を通知するときに行われる処理も同様である。ただし、スモールセルの基地局10に送信する移動先セル情報の生成の際には、マクロセル管理テーブル43は使用されないので、手順(11)において、選択部34はマクロセル管理テーブル43にアクセスしない。このため、サーバ30がスモールセル管理テーブル44b(図12)を保持している場合、移動先セル情報の通知により、基地局10aは、図16の位置情報テーブル21aを保持する。同様に、基地局10bは、図16の位置情報テーブル21bを保持する。
〔移動端末5への位置情報の通知〕
図17は、基地局10が移動端末5に位置情報を通知する際に行う処理の例を説明するシーケンス図である。
(21)基地局10のハンドオーバ処理部16は、基地局10が形成しているセルに移動端末5が近づいてくると、移動端末5のハンドオーバのための処理をする。以下の説明では、基地局10のセルに移動端末5が侵入してくることを「ハンドイン」と記載する。ハンドオーバ処理部16は、移動端末5との間で通信を開始すると、ハンドインを検知する。基地局10は、移動端末5とハンドオーバ先の基地局10の間の同期処理以後に行われる任意のメッセージの送受信をハンドインの検知のために使用することができる。ハンドインの検知方法の具体例は後述する。
(22)ハンドオーバ処理部16は、ハンドインを検知すると、ハンドインの発生を調整部17に通知する。
(23)調整部17は、ハンドインが通知されると、記憶部20中の位置情報テーブル21にアクセスすることにより、位置情報を取得する。調整部17は、取得した位置情報を用いて、移動端末5宛に送信するメッセージを生成する。このとき、調整部17は、位置情報テーブル21に含まれている全てのスモールセルについて、物理セルIDと位置情報を対応付けたリストを、位置情報として使用することができる。さらに、調整部17は、各スモールセルのセル半径や周波数の情報も、位置情報とともに、移動端末5宛てのメッセージに含めることができる。
(24)調整部17は、生成したメッセージを送信部14に出力する。
(25)送信部14は、調整部17から入力されたメッセージを移動端末5に送信する。移動端末5は、基地局10から受信したメッセージを用いて位置情報テーブル71を更新する。移動端末5での処理については、後述する。
図18は、ハンドオーバの例を説明するシーケンス図である。図18を参照しながらハンドインの検知方法の例を説明する。図18は、移動端末5が基地局10Bから基地局10Aにハンドオーバする場合に行われる処理の例を示す。図18に示す例では、ハンドオーバ先の基地局10Aは、移動端末5から、基地局10Aが形成しているマクロセルAAAを用いた通信の開始を要求する要求メッセージを受信すると、マクロセルAAAへのハンドインを検知する。
移動端末5は、通信中の基地局10BからMeasurement Controlを受信すると、周辺の基地局からの受信強度などの測定を行う(手順(31))。移動端末5は、得られた結果をMeasurement Reportを用いて基地局10Bに報告する(手順(32))。基地局10Bは、Measurement Reportを用いて、移動端末5が基地局10Bから基地局10Aにハンドオーバすると判定し、ハンドオーバ先の基地局10AにHandover Requestを送信する(手順(33))。ハンドオーバ先の基地局10Aは、Handover Requestの受信に伴う処理を行った後で、Handover Request ACKを基地局10Bに送信する(手順(34))。すると、基地局10Bは、RRC Connection Reconfigurationを移動端末5に送信することにより、移動端末5にハンドオーバを要求する(手順(35))。さらに、基地局10Bは、基地局10AにSN Status Transferを送ることにより、次に移動端末5に送信するパケットのシーケンス番号を通知する(手順(36))。その後、基地局10Aと移動端末5の間で同期処理が行われる(手順(37))。
移動端末5は、基地局10Aが形成するセルへのハンドインに成功すると、基地局10AにRRC Connection Reconfiguration Completeを送信する(手順(38))。ここで、RRC Connection Reconfiguration Completeは、要求メッセージの例である。すなわち、手順(37)の処理に失敗して移動端末5がマクロセルAAAにハンドインできない場合、移動端末5は、RRC Connection Reconfiguration Completeを送信しない。このため、基地局10Aのハンドオーバ処理部16Aは、RRC Connection Reconfiguration Completeを受信すると、ハンドインを検知したと判定する。そこで、ハンドオーバ処理部16Aは、調整部17Aにハンドインを通知し、調整部17Aは、図17を参照しながら説明した手順により、位置情報を用いて、移動端末5宛に送信するためのメッセージを生成する。このメッセージには、例えば、図16に示す位置情報テーブル21Aに記録されている情報が含まれても良い。基地局10Aは、生成したメッセージを移動端末5に送信することにより、位置情報を通知する(手順(39))。
その後、基地局10Aは、Mobility Management Entity(MME)にPath Switch Requestを送信することによりパスの切り替えを要求する(手順(40))。MMEは、Serving Gateway(SGW)に、User Plane Update Requestを送信することにより、移動端末5が基地局10Aと通信することを通知する(手順(41))。MMEは、SGWからUser Plane Update Responseを受信すると、基地局10AにPath Switch Request ACKを送信する(手順(42)、(43))。すると、基地局10Aは、基地局10BにUE Context Releaseを送信する(手順(44))。
なお、図18は、ハンドインの検出方法の一例であり、実装に応じて、ハンドインの検知方法は変更されても良い。手順(38)以降の処理は、移動端末5がハンドオーバできない場合には、行われない。このため、例えば、ハンドオーバ先の基地局10のハンドオーバ処理部16は、手順(40)か手順(44)でメッセージを送信するときに、ハンドインを検知するように変形されても良い。同様に、ハンドオーバ処理部16は、MMEからPath Switch Request ACKを受信したときに、ハンドインを検知するように変形されても良い。手順(38)以外でハンドインが検知される場合、基地局10は、ハンドインを検知した後で、位置情報を含むメッセージを移動端末5に送信する。
〔移動端末5での処理〕
次に、基地局10から位置情報を受信した後で移動端末5によって行われる処理の例を説明する。以下の説明でも、移動端末5は、基地局10Bから基地局10Aにハンドオーバしてきたとする。この場合、移動端末5は、マクロセルAAAにハンドインする。なお、以下の説明では、基地局10は、移動端末5に対して移動先となり得るスモールセルの位置情報の他に、周波数帯域やセル半径も通知する場合を例として説明するが、基地局10がセル半径などを通知しない場合も、以下と同様の処理が行われる。
図19の位置情報テーブル71aは、マクロセルAAAへのハンドインを行うための処理を開始したときに移動端末5が保持している位置情報テーブル71の例である。移動端末5が基地局10Aへのハンドオーバを開始したとき、移動端末5は、基地局10Bが形成するセルBBBから移動し得るスモールセルの位置情報を保持している。このため、位置情報テーブル71aは、図16の位置情報テーブル21Bと同様に、セルbbb、セルddd、および、セルfffの情報を保持している。
図18を参照しながら説明したように、移動端末5は、マクロセルAAAにハンドインしたとする。すると、基地局10Aは、位置情報テーブル21A(図19)を参照して位置情報を含むメッセージを生成し、移動端末5に送信する。移動端末5の受信部51は、基地局10から位置情報を含むメッセージを受信すると、更新部61に出力する。更新部61は、基地局10から受信したメッセージに含まれている位置情報が、位置情報テーブル71aと同じ情報であるかを判定する。基地局10から受信したメッセージに含まれている位置情報と、位置情報テーブル71aの情報に差がある場合、更新部61は、位置情報テーブル71に記録されている情報を消去する。さらに、更新部61は、受信部51から入力された位置情報を位置情報テーブル71に記録する。図19の例では、移動端末5に保持されている位置情報テーブル71aと位置情報テーブル21Aは異なる情報であるので、移動端末5には、位置情報テーブル71aと異なる位置情報が通知される。そこで、更新部61は、基地局10Aから入力された情報を用いて、位置情報テーブル71aを位置情報テーブル71bに更新する。ここで、更新部61は、基地局10から受信した位置情報が位置情報テーブル71の内容と異なる場合、新たに通知されたスモールセルの情報を追加するだけではなく、基地局から通知されていないスモールセルの情報を削除している。このため、移動端末5は、ハンドオーバ前には移動先となり得たスモールセルのうち、ハンドオーバ後は移動先とすることができなくなったスモールセルの情報を消去することができる。
図20は、位置情報テーブル71の更新処理の例を説明するフローチャートである。受信部51は、基地局10から位置情報を含むメッセージを受信する(ステップS51)。受信部51はメッセージを更新部61に出力する。更新部61は、メッセージを用いて基地局10から通知された位置情報と、位置情報テーブル71の内容が一致するかを判定する(ステップS52)。通知された位置情報と、位置情報テーブル71の内容が一致しない場合、更新部61は、位置情報テーブル71の内容を、受信した位置情報と一致するように更新する(ステップS52で不一致、ステップS53)。一方、通知された位置情報と、位置情報テーブル71の内容が一致する場合、更新部61は位置情報テーブル71を更新せずに処理を終了する(ステップS52で一致、ステップS54)。
図21は、位置情報テーブルを用いたハンドオーバの例を示すシーケンス図である。図21は、移動端末5がマクロセルAAAにハンドインした後、マクロセルAAA内を移動し、スモールセルcccの近傍に来たことにより、基地局10cにハンドオーバするときの処理の例を示す。なお、図21では、移動端末5は、位置情報テーブル71b(図19)を用いる。
(51)特定部62は、移動端末5の現在位置を特定する。特定部62は、例えば、GPSを含んでおり、GPSのデータを用いて移動端末5の位置の緯度と経度を求める。特定部62は、移動端末5の位置の緯度と経度の値を検出部63に出力する。検出部63は、位置情報テーブル71に記録されている各セルの基地局10の位置と移動端末5の位置の間の距離を、緯度と経度の値を用いて計算する。移動端末5の移動により、移動端末5と基地局10cの間の距離が閾値以下になったとする。
(52)検出部63は、通信を確立している基地局10Aに対して、通知情報を送信することによりスモールセルcccに接近したことを通知する。ここで、通知情報は、移動先となり得るセルへの接近を通知するために使用可能な任意のメッセージとすることができる。例えば、検出部63は、Proximity Indicationを用いて、基地局10Aに対する通知を行うことができる。検出部63は、基地局10Aに送信するメッセージを生成し、送信部52に出力する。送信部52は、検出部63から入力されたメッセージを、基地局10Aに送信する。
(53)基地局10Aのハンドオーバ処理部16Aは、移動端末5からの通知に応じて、移動先となり得るセルを形成している基地局10の物理セルIDを取得するための情報を移動端末5に送信する。ここでは、基地局10Aは、スモールセルcccの物理セルIDを取得するときに使用する情報を、移動端末5に送信する。
ところで、図7などを参照して述べたとおり、マクロセルAAAの周波数帯域は2.2GHzであるのに対し、スモールセルcccでは800MHzが使用されている。また、物理セルIDは、スモールセルcccを介した通信を移動端末5が開始するために使用される。このため、基地局10Aは、手順(53)により、移動端末5がスモールセルcccでの通信に使用されている周波数帯域での通信の開始に使用する情報を、移動端末5に通知しているといえる。
(54)ハンドオーバ処理部64は、基地局10Aから通知された情報を用いて、スモールセルcccの物理セルIDを取得し、基地局10Aに通知する。
(55)基地局10Aのハンドオーバ処理部16Aは、移動端末5に、移動先のスモールセルについての情報(System Information、SI)の報告を要求する。
(56)移動端末5のハンドオーバ処理部64は、基地局10cから報知されている報知情報を受信し、報知情報からCGI(Cell Global Identity)、TAI(Tracking Area Identify)などの情報を取得する。
(57)ハンドオーバ処理部64は、取得した情報を基地局10Aに送信する。
(58)移動端末5が基地局10Aから基地局10cにハンドオーバするための処理が行われる。ここでの処理は、図18を参照しながら説明した処理と同様である。基地局10cは、移動端末5がスモールセルcccにハンドインしたことを検知すると、基地局10cが保持している位置情報を含むメッセージを、移動端末5に送信する。このため、移動端末5では、基地局10Aから基地局10cへのハンドオーバにより、位置情報テーブル71b(図19)が、位置情報テーブル71c(図19)に示すように更新される。このため、移動端末5は、さらに移動しても、スモールセルcccからの移動先となり得るスモールセルを検出できる。
図22は、第1の実施形態の通信例を示す図である。図22の例では、マクロセルDDDとマクロセルEEEが互いに隣接している。また、マクロセルDDDの中にスモールセルgggとスモールセルhhhがあり、マクロセルEEEの中にスモールセルjjjとスモールセルkkkがある。図22は、時刻T1〜T3における移動端末5の移動の軌跡を示している。例えば、T1は、時刻T1での移動端末5の位置を示す。
時刻T1では、移動端末5はマクロセルDDDに在圏しており、基地局10Dから移動先となり得るスモールセルの情報を取得する。従って、時刻T1には、移動端末5は、スモールセルggg、hhh、jjjの位置情報を、基地局10Dから取得し、その他のスモールセルの情報を廃棄する。このため、スモールセルhhhに在圏したことがなくても、移動端末5は、スモールセルhhhの近傍に来たときに、スモールセルhhhが近くにあることを検出できる。
時刻T2に、移動端末5がマクロセルDDDからスモールセルhhhに移動したとする。このとき、基地局10hは、移動先となり得るスモールセルとして、スモールセルggg、jjjの位置情報を移動端末5に通知し、移動端末5は位置情報テーブル71を更新する。この処理により、移動端末5は通信中のセルhhhについての位置情報を削除し、メモリを効率的に使用することができる。
時刻T3に、移動端末5がスモールセルhhhからスモールセルjjjに移動したとする。このとき、基地局10jは、移動先となり得るスモールセルとして、スモールセルhhh、kkkの位置情報を移動端末5に通知する。すると、移動端末5は、位置情報テーブル71を基地局10jから通知された内容に更新し、スモールセルgggの情報を削除する。従って、移動端末5は、T3の時点で通信に使用しているセルから直接移動する可能性の低いセルの情報を保持しなくても良い。
このように、移動端末5は、ハンドオーバ先の基地局10から、移動先となり得るスモールセルの情報を取得できる。このため、移動端末5は、在圏したことのないスモールセルであっても、効率的に発見することができる。また、移動端末5は、基地局10からの通知に合わせて位置情報テーブル71の内容を更新するので、移動端末5が位置しているセルから移動する可能性の低いスモールセルの位置情報を保持しなくても良い。このため、移動端末5は、メモリを有効に活用できる。さらに、移動端末5は、スモールセルとの間の距離が所定の閾値以下になったときに受信電力の測定や物理セルIDの取得などの処理を行う。このため、通信ができないほど遠いスモールセルの物理セルIDの取得を試みて電力を消費してしまう事態も回避できる。
<第2の実施形態>
マクロセルの基地局10は、マクロセルを複数のセクタに分けて管理することが多い。第2の実施形態では、各基地局10が、セクタごとに、移動端末5が移動先とする可能性があるスモールセルを記憶する場合について説明する。第2の実施形態は、スモールセルが密集して設置されているなどの理由により、移動端末5に通知する位置情報の量を限定したい場合に効果的である。
以下、サーバ30がセクタごとに、移動先となり得るスモールセルを特定し、各基地局10に通知する場合を例として、第2の実施形態を説明する。なお、この例では、説明を簡単にするために、1つのマクロセル中のセクタの配置方法は、予め各基地局10で共通しており、サーバ30もセクタの配置方法を特定するための情報を予め保持しているものとする。例えば、以下の例では、各マクロセルにおいて、基地局の設置位置から北の方角を基準として、60度ずつの6つのセクタに分けられているものとする。また、セクタ番号は、基地局の設置位置の真北から時計回りに60度の範囲のセクタを「1」として、時計回りに1つずつ大きくなるものとする。
図23に、マクロセルのセクタとスモールセルの配置の例を示す。図23の例では、マクロセルAAAでは、セクタ1とセクタ2がスモールセルbbbと一部の領域を共有し、セクタ4がスモールセルcccと一部の領域を共有している。マクロセルAAAのセクタ2は、スモールセルdddと接している。さらに、マクロセルAAAでは、セクタ3がスモールセルeeeに接しており、セクタ6がスモールセルaaaに接している。また、マクロセルAAAのセクタ5は、スモールセルaaaを包含している。マクロセルBBBでは、セクタ1がスモールセルfffを包含している。マクロセルBBBのセクタ5は、スモールセルdddを包含し、さらに、スモールセルbbbと一部の領域を共有している。マクロセルBBBのセクタ2は、スモールセルfffに接している。
サーバ30の更新部32は、第1の実施形態と同様の方法でマクロセル情報テーブル41とスモールセル情報テーブル42を更新する。検索部33は、図9を参照しながら説明した手順により、各マクロセルについて、そのマクロセルからの移動先となり得るスモールセル(割り当てスモールセル)を割り当てることにより、マクロセル管理テーブル43を得る。次に、検索部33は、各マクロセルについて、割り当てスモールセルの数が所定の閾値を超えたかを判定する。割り当てスモールセルの数が所定の閾値を超えた場合、検索部33は、マクロセル中の各セクタとスモールセルをマッピングし、セクタごとに、1点以上を共有しているスモールセルを特定する。検索部33は、特定したスモールセルを、マクロセルのセクタごとに対応付けた情報をマクロセル管理テーブル43に記録する。
例えば、図23に示すようにマクロセルの各セクタとスモールセルが配置されている場合、更新部32と検索部33が第1の実施形態と同様の処理により、図10に示すマクロセル管理テーブル43cを生成する。ここで、検索部33は、マクロセルごとの割り当てスモールセルが3以上のときにセクタごとに割り当てスモールセルを管理するように設定されているとする。すると、マクロセルAAAとマクロセルBBBのいずれについても、割り当てスモールセルが3以上であるので、検索部33は、セクタごとに割り当てスモールセルを管理することを決定する。検索部33は、マクロセルAAAとマクロセルBBBのセクタと、スモールセルの位置をマッピングすることにより、図23に示す配置を特定する。さらに、例えば、マクロセルAAAのセクタ1と1点以上共有しているスモールセルはスモールセルbbbであることを特定する。他のセクタについても同様に特定処理を行い、マクロセル管理テーブル43c(図10)を、図24に示すマクロセル管理テーブル43dに更新する。
また、サーバ30は、あるマクロセルについて、スモールセルをセクタ単位での管理に切り替えることが要求された場合も、セクタ単位でスモールセルを管理する。マクロセル管理テーブル43やスモールセル管理テーブル44の生成方法は、割り当てスモールセルの数が閾値を超えたときと同様である。サーバ30は、他の装置からセクタ単位での管理への切り替えの要求を受信してもよく、また、入力装置123を介してオペレータから要求を受け付けても良い。
図25は、第2の実施形態での検索部33の処理の例を説明するフローチャートである。図25は、マクロセル管理テーブル43の更新方法の例を示す。なお、図25は一例であり、例えば、ステップS62とステップS63の順序を入れ替えるなどの変更が可能である。また、図25の処理では、変数r、s、tが使用される。ここで、rはマクロセルを識別する変数であり、sはセクタを識別する変数であり、tはスモールセルを識別する変数である。
検索部33は、各マクロセルについて割り当てスモールセルを決定する(ステップS61)。ステップS61の処理は、図9を参照しながら説明したとおりである。検索部33は、マクロセルの総数Mを取得し、変数rを1に設定する(ステップS62、S63)。検索部33は、r番目のマクロセルについて、割り当てスモールセルが予め決定された閾値を超えているかを判定する(ステップS64)。割り当てスモールセルが予め決定された閾値を超えていない場合、検索部33は、さらに、r番目のマクロセルについてセクタ単位の管理が要求されたかを判定する(ステップS64でNo、ステップS65)。
割り当てスモールセルが予め決定された閾値を超えている場合、検索部33は、r番目のマクロセル中のセクタ数(X)と、r番目のマクロセルの割り当てスモールセルの数(Y)を取得する(ステップS64でYes、ステップS66)。同様に、r番目のマクロセルについてセクタ単位の管理が要求された場合も、検索部33は、r番目のマクロセルについて、セクタ数と割り当てスモールセルの数を取得する(ステップS65でYes、ステップS66)。検索部33は、変数sと変数tをいずれも1に設定する(ステップS67、S68)。検索部33は、s番目のセクタとt番目の割り当てスモールセルが1点以上を共有しているかを判定する(ステップS69)。s番目のセクタとt番目の割り当てスモールセルが1点以上を共有している場合、検索部33は、t番目のスモールセルをs番目のセクタへの割り当てスモールセルとする(ステップS69でYes、ステップS70)。
その後、検索部33は、変数tの値を1つインクリメントし、変数tが処理対象のマクロセルでの割り当てスモールセルの数(Y)よりも大きいかを判定する(ステップS71、S72)。変数tがY以下の場合、検索部33は、ステップS69以降の処理を繰り返す(ステップS72でNo)。変数tがYを超えると、検索部33は、変数sの値を1つインクリメントし、変数sが処理対象のマクロセルでのセクタ数(X)よりも大きいかを判定する(ステップS72でYes、ステップS73、S74)。変数sがX以下の場合、検索部33は、ステップS68以降の処理を繰り返す(ステップS74でNo)。変数sがXを超えると、検索部33は、変数rの値を1つインクリメントし、変数rがマクロセル数(M)よりも大きいかを判定する(ステップS74でYes、ステップS75、S76)。変数rがM以下の場合、検索部33は、ステップS64以降の処理を繰り返す(ステップS76でNo)。一方、変数rがMを越えると、検索部33は、処理を終了する(ステップS76でYes)。なお、ステップS65において、r番目のマクロセルについてセクタ単位の管理が要求されていないと判定すると、検索部33は、処理対象のマクロセルを変更するために、ステップS75以降の処理を行う(ステップS65でNo)。
マクロセル管理テーブル43の更新が終わると、検索部33は、スモールセル管理テーブル44を更新する。マクロセルのセクタごとに割り当てスモールセルを決定した場合、検索部33は、あるスモールセルに対する割り当てスモールセルは、そのスモールセルが割り当てられたセクタと同じセクタから移動可能なスモールセルとする。例えば、マクロセル管理テーブル43d(図24)が得られているとする。この場合、検索部33は、スモールセルaaaをキーとして割り当てスモールセルの欄を検索しても、複数のスモールセルが割り当てスモールセルとなっているセクタを発見できない。このため、検索部33は、スモールセルaaaからの移動先となり得るスモールセルはないと判定し、図26に示すように、スモールセルaaaには、割り当てスモールセルを設定しない。検索部33は、スモールセルccc、スモールセルeee、スモールセルfffに対しても、同様に処理を行う。
検索部33がスモールセルbbbをキーとして割り当てスモールセルの欄を検索すると、マクロセルAAAのセクタ2では、スモールセルbbbとスモールセルdddが、割り当てスモールセルであることを特定できる。このため、検索部33は、スモールセルbbbからスモールセルdddに移動端末5が移動する可能性があると判定し、図26に示すように、スモールセルbbbの割り当てスモールセルをスモールセルdddとする。検索部33は、マクロセルBBBのセクタ5でも、スモールセルbbbとスモールセルdddが割り当てスモールセルであることを特定する。このときは、マクロセルAAAのセクタ2のデータを処理したことにより、既にスモールセルdddはスモールセルbbbの割り当てスモールセルであるので、スモールセル管理テーブル44を変更しない。検索部33は、スモールセルdddについても同様の処理を行う。
図27は、第2の実施形態での検索部33の処理の例を説明するフローチャートである。図27は、スモールセル管理テーブル44の更新方法の例を示す。図27のステップS81〜S85の処理は、図11のステップS31〜S35と同様である。検索部33は、マクロセル管理テーブル43中のq番目のマクロセルのエントリの割り当てスモールセルにp番目のスモールセルが含まれている場合、p番目のスモールセルと同じセクタに割り当てられたスモールセルを特定する(ステップS85でYes)。検索部33は、p番目のスモールセルが割り当てられたセクタと同じマクロセルの同じセクタに割り当てられたスモールセルのうち、p番目のスモールセル以外のスモールセルを、p番目のスモールセルの割り当てスモールセルとする(ステップS86)。ステップS87〜S90は、図11のステップS37〜S40と同様である。
サーバ30から各基地局10への移動先セル情報の通知、基地局10から移動端末5への位置情報の通知、移動端末5での処理は、第1の実施形態と同様である。ただし、第2の実施形態では、サーバ30は、セクタごとの割り当てスモールセルを通知する。このため、例えば、基地局10Aは、図24のうち、物理セルID=AAAに対応付けられた情報を、サーバ30から取得する。また、基地局10は、移動端末5との通信に使用しているセクタの識別子を特定し、通信先の移動端末5に応じたセクタに対応付けて保持している位置情報を送信するものとする。このため、例えば、図23に示す配置において、マクロセルAAAのセクタ1で通信している移動端末5に対して、基地局10Aは、スモールセルbbbの情報を通知するが、他のスモールセルの情報は通知しない。基地局10が移動端末5との通信に使用しているセクタの情報は、例えば、移動端末5の位置情報から特定するなどの任意の方法により、特定される。
なお、第2の実施形態では、1つのマクロセルが6セクタに分けられる場合を例として説明したが、1つのマクロセルに含まれるセクタ数は、実装に応じて任意に変更され得る。また、スモールセルの管理をセル単位からセクタ単位に変更するかを判定するときに用いる閾値も、実装に合わせて任意に設定される。
このように、第2の実施形態では、各基地局10は、セクタごとに移動端末5が移動先とする可能性があるスモールセルを記憶するので、移動端末5に通知する位置情報の量を抑制することができる。このため、基地局10は、移動端末5が移動先とする可能性が相対的に高いスモールセルの位置情報に絞って、移動端末5に通知することができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、基地局10が移動端末5へ位置情報を通知するタイミングを変更可能な場合について説明する。なお、第3の実施形態では、サーバ30での割り当てスモールセルの決定方法は、第1および第2の実施形態のいずれでもよい。また、サーバ30から各基地局10への移動先セル情報の通知、および、移動端末5での処理は、第1の実施形態と同様である。
基地局10の調整部17は、基地局10から送信された位置情報を使用する可能性が低い移動端末5への位置情報の送信を防ぐために、移動端末5がハンドインしてから位置情報を送信するまでの期間を情報送信リストに設定することができる。例えば、移動速度が速い移動端末5は、基地局10が形成しているセルでの滞在時間が短く、近傍のスモールセルにアクセスしない可能性が高い。また、基地局10が駅や高速道路の近くなどに設置されている場合、ハンドインしてくる移動端末5の滞在時間は短く、スモールセルにアクセスしない可能性が高い。そこで、調整部17は、基地局10へのハンドオーバ数や移動端末5の移動速度に合わせて、位置情報を送信するタイミングを調整できる。
図28は、情報送信リストの例である。情報送信リストには、基地局10が形成しているセルにハンドインしてきた移動端末5ごとに、位置情報を送信するタイミングを決定するための情報が含まれている。図28の例では、基地局タイマと速度タイマの2種類のタイマが使用される。優先タイマは、2種類のうちのいずれのタイマを優先的に使用するかを示す情報である。タイマは、ハンドインからの経過時間のカウント値である。優先的に使用されるタイマの設定時間と、タイマでのカウント値(経過時間)が同じ値になると、調整部17は、位置情報を移動端末5に送信する。
基地局タイマは、基地局10ごとに決定される共通の値である。基地局10の調整部17は、その基地局10でのハンドオーバの発生数をカウントしており、一定時間以内に発生したハンドオーバ数を閾値Thと比較する。調整部17は、一定時間以内に発生したハンドオーバ数が閾値Thを越えると、基地局タイマの値を大きくする。例えば、基地局10の初期設定では、基地局タイマの値は0秒であるとする。すると、基地局タイマが優先されている場合、基地局10は、移動端末5がハンドインしてきたことをトリガとして、移動端末5に位置情報を送信する。一定時間以内に発生したハンドオーバ数が閾値Thを越えると、調整部17は、基地局タイマの値を大きくする。例えば、調整部17は、図28に示すように、基地局タイマの値を5秒に設定したとする。すると、調整部17は、移動端末5がハンドインしてきても、ハンドインから5秒が経過するまでは、位置情報を移動端末5に通知しない。なお、一定時間中に発生するハンドオーバの数は、複数の閾値と比較されても良い。この場合、基地局タイマの設定値は、一定時間以内に発生したハンドオーバの値が大きいほど、大きな値となるものとする。
速度タイマは、移動端末5ごとに設定するタイマである。調整部17は、ハンドインしてきた移動端末5の移動速度を取得する。移動端末5の移動速度の取得方法は、任意である。例えば、基地局10に計算部18が含まれている場合、計算部18は、ハンドインしたタイミングでの移動端末5の速度を計算し、得られた値を移動端末5の識別子に対応付けて調整部17に出力する。また、基地局10は、ハンドオーバの処理の際に、ハンドオーバ元の基地局10から移動端末5の移動速度を取得しても良いものとする。調整部17は、予め、移動端末5の移動速度と速度タイマの設定値を対応付けた情報を保持している。なお、速度タイマの設定値は、移動端末5の移動速度が速いほど、大きな値となるものとする。図28の例では、11111111と44444444の端末識別子で識別される端末の移動速度は、22222222の端末識別子で識別される端末の移動速度よりも小さい。このため、調整部17は、11111111と44444444の端末識別子で識別される端末に対して、速度タイマを0秒に設定し、22222222の端末識別子で識別される端末の速度タイマを5秒に設定している。さらに、333333333の端末識別子で識別される端末の移動速度は、他の端末の移動速度よりも速いため、速度タイマを10秒に設定している。
図28の例では、いずれの端末についても優先タイマは速度タイマである。そこで、調整部17は、各移動端末5について、ハンドインからの経過時間が、速度タイマの設定時間と同じ値になると、位置情報を移動端末5に送信する。従って、11111111と44444444の端末識別子で識別される端末には、調整部17は、ハンドインしたタイミングで、位置情報を送信する。一方、調整部17は、22222222の端末識別子で識別される端末には、ハンドインから5秒後に位置情報を送信し、33333333の端末識別子で識別される端末には、ハンドインから10秒後に位置情報を送信する。
図29は、第3の実施形態での位置情報の通知方法の例を説明するシーケンス図である。手順(61)、(62)は、図17を参照しながら説明した手順(21)、(22)と同様である。
(63)調整部17は、ハンドインが通知されると、ハンドインしてきた移動端末5の情報を情報送信リストに追加する。情報送信リストの設定方法は、図28を参照しながら説明したとおりである。
(64)調整部17は、情報送信リストへの登録が終わると、記憶部20中の位置情報テーブル21にアクセスすることにより、位置情報を取得する。調整部17は、取得した位置情報を用いて、移動端末5宛に送信するためのメッセージを生成する。
(65)調整部17は、情報送信リストを参照し、生成したメッセージの送信タイミングになるまで、メッセージを保持する。
(66)タイマの値が、優先的に使用されるタイマの設定時間と同じ値になると、調整部17は、位置情報を含むメッセージを送信部14に出力する。
(67)送信部14は、調整部17から入力されたメッセージを移動端末5に送信する。移動端末5は、基地局10から受信したメッセージを用いて位置情報テーブル71を更新する。
第3の実施形態では、基地局10は、移動端末5の移動速度などを用いて、その移動端末5が通知された位置情報を使用する可能性が高いかを判定する。さらに、調整部17は、位置情報を使用する可能性が低い移動端末5については、ハンドインから位置情報を送信するまでの時間を長く設定する。このため、移動速度の速い移動端末5は、基地局10から位置情報を受信する前に基地局10の通信エリアの外へ移動していることがあり、この場合、移動端末5は、使用する見込みのない位置情報の受信処理や位置情報の保持などの処理を行わない。このため、移動端末5の処理負担を軽くすることができる。
<その他>
なお、本発明の実施形態は、上述の構成又は方法に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
第1〜第3の実施形態では、基地局10は位置情報をサーバ30から取得する場合を例として説明したが、基地局10は、サーバ30以外の装置から位置情報を取得することもできる。
例えば、サーバ30や基地局10は、セル半径の代わりに各基地局10での送信電力を取得しても良いものとする。この場合、以下の式を用いて、受信電力P
Rの値が所定の閾値を下回る距離までをセル半径とすることができる。
ここで、P
Tは送信電力(W)、G
Rは受信利得、G
Tは送信利得、λは波長、Dは距離である。
ハンドオーバが頻発することによる処理負荷を軽減するために、移動端末5が位置情報テーブル71の更新処理を行うかを、単位時間当たりのハンドオーバの発生回数を用いて判定するように変形しても良い。この場合、更新部61は、単位時間当たりのハンドオーバの発生回数をカウントするものとする。更新部61は、単位時間当たりのハンドオーバの発生回数が所定の閾値を越えると、基地局10から位置情報を通知されても、位置情報テーブル71を更新しない。位置情報テーブル71の更新を行わない場合、スモールセルを正確に検出できない場合があり得るが、位置情報テーブル71の更新などに伴う処理を行わないことにより、移動端末5の負荷は軽減される。また、更新部61は、移動端末5の電源の残量をモニタしていて、電源の残量が少なくなると、位置情報テーブル71の更新を停止することにより、消費電力を抑えることができる。このように変形された移動端末5は、例えば、ハンドオーバのたびに位置情報テーブル71を更新しなくてもスモールセルを発見できるほどスモールセルの設置数が多い場所での使用に適している。また、このように変形された移動端末5を、第3の実施形態と組み合わせて使用することができる。
第3の実施形態において、調整部17は、タイマ満了時に移動端末5がセル内に存在するかを判定してから、位置情報を含むメッセージを移動端末5に送信するように変形することもできる。この場合、例えば、調整部17は、通信中の移動端末5の識別情報を記録したリストを、メッセージを送信しようとする移動端末5の識別情報をキーとして検索することができる。タイマの満了時に送信先の移動端末5が在圏している場合、調整部17は、メッセージを移動端末5に送信する。一方、タイマの満了時に送信先の移動端末5が在圏していない場合、調整部17は、移動端末5へのメッセージの送信を中止し、メッセージを破棄する。このように変形すると、基地局10は、位置情報を使用する見込みの無い移動端末5に位置情報を送信しないですむので、基地局10の処理負担も軽くなる。
さらに、スモールセルの基地局が、そのスモールセルと1点以上を共有するマクロセルの情報も保持するように変形することもできる。この場合、移動端末5がスモールセルへハンドインすると、そのスモールセルと1点以上を共有するマクロセルの情報も、移動端末5に通知される。例えば、マクロセルAに含まれているスモールセルbにハンドインした移動端末5は、マクロセルAと1点以上を共有するスモールセルと、マクロセルAの位置情報やセル半径などを取得できる。すると、移動端末5は、スモールセルbから出るときに、マクロセルAのエリアに入るかを判定することができる。