本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、マフラーサポートの挿通孔に対する取付ピンの挿通を容易としつつ、かかる挿通孔からの取付ピンの抜け出しをより効果的に防止せしめ得る、新規な構造のマフラーサポート組付体を提供することにある。
本発明の第一の態様の特徴とするところは、ゴム弾性体からなるマフラーサポートに設けられた取付孔に対して取付ピンが挿通されて組み付けられるマフラーサポート組付体であって、前記マフラーサポートの前記取付孔における内周面において、前記取付ピンの挿通方向に向かって斜め内方に突出して該取付孔内に位置する係合突部が設けられていると共に、該係合突部の先端部分に対して外周側で対向位置する部分に凹状の逃げ部が設けられている一方、該取付ピンの先端部分において該取付孔よりも大径の抜止頭部が設けられていると共に、該抜止頭部よりも基端側の外周面に係合凹部が設けられており、該取付ピンが該取付孔に挿通されることにより該係合凹部に該係合突部が入り込むようにして組み付けられるようになっているマフラーサポート組付体にある。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体においては、マフラーサポートの取付孔へ挿通された取付ピンの係合凹部へ係合突部が入り込んで係合することにより、挿通孔からの取付ピンの抜け出しが防止される。特に、取付ピンの外周面に係合凹部を設けたことで、取付ピンの抜止頭部を徒に大形化せずとも、取付ピンのマフラーサポートに対する抜出方向への当接面または係止面を効率的に確保することが可能になる。それ故、マフラーサポートの取付孔へ取付ピンを容易に挿通可能となしつつ、取付ピンの取付孔からの抜け出しを効果的に防止することができる。
しかも、取付ピンの係合凹部に係合される係合突部は、マフラーサポートの取付孔の内部に位置して設けられることから、走行時の飛石等による損傷の問題が回避される。また、取付ピンの挿通後は、係合突部が係合凹部に入り込むことで、取付ピンの抜け出し方向への変位に際しても外周側へ自由に弾性変形することなく係合凹部の内面へ押し付けられることとなり、係合凹部への係合作用に基づく取付ピンの抜止作用が安定して発揮され得る。更に、このように係合凹部の内面へ押し付けられる係合突部は、取付ピンの抜け出し方向への変位に際しても軸方向反対側へ折り返されることもなく、過大な応力や歪の発生が回避されて良好な耐久性が発揮され得る。
一方、マフラーサポートの取付孔へ取付ピンを挿通するに際しては、取付孔の内周面に突出する係合突部が取付ピンで押圧されることにより、取付孔の内周面に設けられた凹状の逃げ部に入り込むようにして外周側への弾性変形が許容され得る。それ故、取付ピンの挿通に際しての抵抗力が軽減されて、良好な作業性が実現可能となる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るマフラーサポート組付体において、前記係合突部が、その基端側から先端側に向かって前記取付孔の内周側に凸となるように曲がっているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、取付ピンの係合凹部の内面に対して、係合突部が基端側から先端側に向かう広い範囲に亘って当接しやすくなり、その結果、係合凹部に対する係合突部の係合作用に基づく取付ピンの抜出阻止力を、より効果的に得ることが可能となる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に係るマフラーサポート組付体において、前記取付ピンの前記係合凹部が、該取付ピンの軸方向断面において湾曲内面形状をもって形成されているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、係合凹部の内面を湾曲凹形の断面形状としたことで、入り込んだ係合突部が係合凹部の内面になじみ易く、係合凹部の内面のより広い領域に対して係合突部が当接されることで、係合突部の係合凹部に対する係合力をより安定して効率的に得ることが可能になる。特に、かかる第三の態様は上記第二の態様と組み合わせて採用されることが望ましく、それによって、係合突部が係合凹部の内面に対して一層広い領域で安定して密着状態とされ得て、より優れた係合作用を得ることも可能になる。
本発明の第四の態様は、第一〜三の何れかの態様に係るマフラーサポート組付体において、前記係合突部が、前記取付孔における前記取付ピンの挿通方向の先端側の内周面に設けられていると共に、前記マフラーサポートの前記凹状の逃げ部が、該取付孔の内周面と該取付孔の先端側の開口端面との両方にわたって開口して設けられているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、マフラーサポートの端面に開口して逃げ部を形成したことにより、逃げ部を含むマフラーサポートの成形型の構造を簡略化できて、マフラーサポートを容易に製造可能になる。
本発明の第五の態様は、第四の態様に係るマフラーサポート組付体において、前記マフラーサポートの前記係合突部が、前記取付ピンの前記係合凹部に入り込むことで該係合凹部の内面によって押圧変形されると共に、該係合突部の先端部分が該取付ピンの前記抜止頭部に対して当接されるようになっているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、係合突部が係合凹部への当接状態でより効果的に係合される。また、係合突部が取付ピンの係止頭部に対して直接に当接することで、取付ピンの挿通孔からの抜け出しに際して、係合突部による阻止力が直接に且つ速やかに取付ピンに及ぼされ得る。
本発明の第六の態様は、第一〜三の何れかの態様に係るマフラーサポート組付体において、前記マフラーサポートの前記凹状の逃げ部が、前記取付孔の先端側の開口端から軸方向内方に所定距離離れた位置で該取付孔の内周面に開口して設けられているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、マフラーサポートの端面に逃げ部を開口させる必要がないことから、逃げ部への埃等の異物の入り込みが防止されると共に、マフラーラポートの端面における取付ピンの係止頭部の当接面積も有利に確保できる。
本発明の第七の態様は、第六の態様に係るマフラーサポート組付体において、前記マフラーサポートの前記係合突部が、前記取付ピンの前記係合凹部に入り込むことで該係合凹部の内面によって押圧変形されると共に、該係合突部の先端部分が前記取付孔において前記逃げ部よりも先端側に位置する内周面に対して押し付けられるようになっているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、係合突部が係合凹部への当接状態でより効果的に係合される。また、係合突部が係合凹部で変形を拘束された状態で、その先端部分が逃げ部を跨いで取付孔の先端側の内周面に当接せしめられることで係合突部の変形剛性が一層大きくされる。これにより、係合突部が係合凹部に対してより大きな係合力で係合されて、取付ピンにおいて一層大きな抜止力が発揮されることになる。
本発明の第八の態様は、第一〜七の何れかの態様に係るマフラーサポート組付体において、前記取付ピンにおける前記係合凹部が、周方向の全周に亘って延びる周溝によって構成されているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、マフラーサポートの挿通孔に対する取付ピンの組み付けに際して、それらの相対的な周方向の位置合わせが不要とされ得る。
本発明の第九の態様は、第八の態様に係るマフラーサポート組付体において、前記マフラーサポートにおける前記係合突部および前記逃げ部が、何れも周方向の全周に亘って連続して設けられているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、係合突部を取付ピンの係合凹部に対して全周に亘って係合させることができて、取付ピンの抜け止め阻止力を一層有利に得ることが可能になる。
本発明の第十の態様は、第一〜九の何れかの態様に係るマフラーサポート組付体において、前記取付ピンの前記抜止頭部における基端側の端面に、軸直角方向に広がる平坦な環状当接面が設けられていると共に、前記マフラーサポートの前記挿通孔における該取付ピンの挿通方向の先端側の開口部内径に比して、該環状当接面の外径が大きくされているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、取付ピンに設けた環状当接面により、マフラーサポートの挿通孔の先端側開口部の外周端面に対する当接面積が大きく確保され得る。これにより、マフラーサポートの挿通孔の先端側開口部の外周端面に対する取付ピンの抜止頭部の引っ掛かり作用による抜止効果が、より有利に発揮されることとなる。
本発明の第十一の態様は、第一〜十の何れかの態様に係るマフラーサポート組付体において、前記マフラーサポートの前記挿通孔における該取付ピンの挿通方向の基端側の開口角部が、該挿通孔における該取付ピンの挿通方向の先端側の開口角部よりも大きな曲率半径の湾曲断面形状をもって軸方向外方に拡開されているものである。
本態様に従う構造とされたマフラーサポート組付体では、マフラーサポートの挿通孔の先端側開口部の外周端面に対する取付ピンの抜止頭部の引っ掛かり作用による抜止効果を十分に確保しつつ、マフラーサポートの挿通孔の基端側開口部からの取付ピンの挿し入れをより簡単に行うことが可能になる。
本発明に従う構造とされたマフラーサポート組付体においては、マフラーサポート内周面の係合突部と取付ピン外周面の係合凹部とを組み合わせて採用したことにより、マフラーサポートの挿通孔への取付ピンの挿入作業を容易となしつつ、取付ピンの取付孔からの抜け出しを効果的に防止することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1,2には、本発明の第一の実施形態としてのマフラーサポート組付体10が示されている。このマフラーサポート組付体10は、ゴム弾性体からなるマフラーサポート12に対して自動車の車体側とマフラー側の各一方に設けられた第一取付ピン14および第二取付ピン16が取り付けられることにより自動車に装着されて、マフラーを車体に対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは車両への装着状態で略鉛直方向となる図1の上下方向をいい、左右方向とは図2中の左右方向をいう。
より詳細には、本実施形態のマフラーサポート12は、図1,2に示されているように、全体として略楕円リング形状の外周部分18を有しており、長軸を上下方向に向けて装着されるようになっている。また、外周部分18で囲まれた内部領域には、短軸方向に延びる連結部分20が設けられており、外周部分18において左右方向で対向位置する一対の半周壁部22,22が、上下方向の各中央部分において連結部分20により一体的に連結されている。
なお、これら一対の半周壁部22,22からなる外周部分18と連結部分20とを有するマフラーサポート12は、ゴム弾性体の一体加硫成形品にて構成されており、図2に示された正面視の形状が略θ状とされている。また、外周部分18と連結部分20は、図1中の左右方向となる厚さ寸法が全体に亘って略一定とされており、荷重入力時における応力の局部的集中が軽減または回避されるようになっている。
さらに、外周部分18において長軸となる上下方向で対向位置する上端部分と下端部分が、それぞれ僅かに厚肉とされて第一取付部24および第二取付部26とされている。そして、第一取付部24には第一取付孔28が、また第二取付部26には第二取付孔30が、それぞれ円形断面形状をもって厚さ方向にストレートに貫通して形成されている。
なお、これら第一及び第二取付部24,26は、何れも、外周部分18から内周側に向かって突出して形成されている。これにより、第一及び第二取付部24,26の各略中央部分に形成された第一及び第二取付孔28,30において、周壁部の厚さ寸法が確保されている。また、第一及び第二取付部24,26は、連結部分20を挟んだ上下両側に位置せしめられており、連結部分20に対して上下方向でそれぞれ所定距離を隔てて対向配置されている。
さらに、図3〜4に示されているように、第一取付孔28には、内周面に突出する係合突部32が形成されている。この係合突部32は、第一取付孔28の軸方向一方の側(図3中の右側)に向かって傾斜して内周面に突出しており、第一取付孔28内に位置している。特に本実施形態では、係合突部32は、第一取付孔28の内周面において、上記軸方向一方の側の先端側に設けられている。そして、係合突部32の基端部から先端部に向かって、係合突部32における軸方向への傾斜角度が次第に大きくされている。これにより、係合突部32は、第一取付孔28の内周側に凸形となるように湾曲せしめられて、全体として略弓型または略円弧状の断面形状とされている。
また、係合突部32の厚さ寸法は、その基端部から先端部に向かって次第に小さくなる断面形状とされている。これにより、係合突部32への外力作用時に、その基端部等に応力が集中して屈曲してしまうことが防止されて、弾性変形が突出方向の全体に亘って分散して生ぜしめられるようになっている。
更にまた、第一取付孔28の内周面には、係合突部32に隣り合う位置に逃げ部34が形成されている。この逃げ部34は、凹状の軸方向断面を有しており、係合突部32の突設部位に対して該係合突部32の傾斜方向で隣接する位置に開口せしめられている。
また、本実施形態では、逃げ部34が、第一取付孔28の軸方向一方の端部に形成されている。そして、逃げ部34は、第一取付孔28の軸方向一方の開口縁部を略円弧状に切り欠いたような断面形状をもって、第一取付孔28の内周面と軸方向端面との両方に亘って開口せしめられている。換言すれば、逃げ部34は、係合突部32の先端部分に対して外周側で対向する位置に開口せしめられている。
さらに、上述の係合突部32と逃げ部34は、略一定の断面形状をもって周方向の全周に亘って連続して延びる環状構造をもって形成されており、略円環状に延びる突条からなる係合突部32と略円環状に延びる周溝からなる逃げ部34として構成されている。因みに、φAの内径寸法を有する第一取付孔28内に係合突部32と逃げ部34が形成されることにより、係合突部32の形成部位における内径寸法φBがφAよりも小さくされていると共に、逃げ部34が開口する軸方向端部における第一取付孔28の開口径寸法φCがφAよりも大きくされている。
なお、第一取付孔28における軸方向他方の側(図3中の左側)の開口部分は、軸方向の所定長さに亘って軸方向外方に拡開するテーパ状内周面36とされている。そして、このテーパ状内周面36における軸方向外側端部の最大開口径φDが、軸方向一方の側における実質的な開口径寸法である逃げ部34の外径寸法φCよりも大きくされている。
また、第二取付部26の第二取付孔30においても、上述の如き第一取付部24の第一取付孔28と実質的に同じ構造をもって、係合突部32や逃げ部34,テーパ状内周面36が形成されている。尤も、本実施形態では、第一取付部24の第一取付孔28と第二取付部26の第二取付孔30とにおいて、図2中の左右で軸方向に反転して同じ構造となるように構成されている。
このような構造とされたマフラーサポート12には、その第一取付孔28に対して、自動車の車体に設けられた第一取付ピン14が、また第二取付孔30に対して、自動車のマフラーに設けられた第二取付ピン16が、それぞれ、挿通されて取り付けられることにより、マフラーサポート組付体10とされる。これにより、マフラーと車体との間に介装せしめられて、マフラーを車体に対して防振支持せしめるようになっている。
なお、第一及び第二取付ピン14,16は、第一及び第二取付孔28,30に対して、それぞれ、テーパ状内周面36が形成された開口端から差し入れられ、逃げ部34が形成された開口端から先端部分が突出した状態で挿通されている。即ち、図1中においては、第一取付ピン14は第一取付孔28に対して左方から右方へ挿通される一方、第二取付ピン16は第二取付孔30に対して右方から左方へ挿通される。このように、第一及び第二取付ピン14,16は、マフラーサポート12に対して、第一及び第二取付孔28,30の中心軸方向で互いに反対側から組み付けられている。
また、第一取付ピン14と第二取付ピン16は、第一取付孔28と第二取付孔30に対して反対側から差し入れられるように反対向きに設けられているが、その構造は実質的に同じとされて、第一取付孔28と第二取付孔30に対して同様に挿通されて組み付けられていることから、以下の説明では第一取付ピン14の第一取付孔28への組付構造だけを記載する。
ここにおいて、第一取付ピン14は、第一取付孔28に挿通されるストレートなロッド部38を備えており、このロッド部38の先端部分には、大径の抜止頭部40が形成されている。ロッド部38は、略円形とされた一定の断面形状をもって第一取付孔28よりも僅かに大きな軸方向長さで延びており、その外径寸法φEが、第一取付孔28の内径寸法φAよりも僅かに大きくされている。
また、第一取付ピン14の抜止頭部40は、基端側から先端側に向かって次第に小径となる略円錐台形状とされている。かかる抜止頭部40の先端側の最小外径寸法φFは、第一取付孔28におけるテーパ状内周面36の最大開口寸法φDよりも小さく、より好適には第一取付孔28の内径寸法φAよりも僅かに小さくされている。
また一方、抜止頭部40の基端側の最大外径寸法φGは、第一取付孔28における逃げ部34の外径寸法φCよりも大きくされている。更に、抜止頭部40の大径側の軸方向端面には、ロッド部38の先端部において軸直角方向に広がる平坦な環状当接面42が設けられている。この環状当接面42の外径寸法φHは、第一取付孔28における逃げ部34の外径寸法φCよりも大きくされていることが望ましい。
更にまた、第一取付ピン14には、第一取付ピン14の第一取付孔28への挿通状態で係合突部32に対応する位置、即ち本実施形態ではロッド部38の先端位置において、外周面に開口する係合凹部44が形成されている。
この係合凹部44は、図3,4に示された軸方向断面において、マフラーサポート12の係合突部32の湾曲外面形状に略対応した湾曲内面形状を有しており、係合突部32の突出高さ寸法よりも僅かに小さな深さ寸法をもって形成されている。また、本実施形態では、係合凹部44が、抜止頭部40の大径側端面に沿って周方向の全周に亘って略一定の断面形状で延びる周溝として形成されている。
このような構造とされた第一取付ピン14は、図5,6に示されているように、第一取付孔28に差し入れられて、抜止頭部40の全体が第一取付孔28から外部に突出する状態で、マフラーサポート12に組み付けられている。かかる組み付けに際しては、第一取付ピン14の抜止頭部40が先細のテーパ形状とされていることと、第一取付孔28の開口部にテーパ状内周面36が形成されていることとが相俟って、第一取付ピン14が第一取付孔28に対して容易に差し入れられることとなる。
一方、組付状態では、第一取付ピン14の抜止頭部40の基端側の外径が第一取付孔28の内径よりも大きくされていることと、第一取付ピン14の基端面に大径の環状当接面42が形成されていることとが相俟って、第一取付ピン14の第一取付孔28からの抜け出しが防止されることとなる。
加えて、かかる組付状態では、マフラーサポート12において第一取付孔28の内周面に突設された係合突部32が、第一取付ピン14の外周面に形成された係合凹部44に対して、その内部へ入り込んで係合状態とされている。そして、この係合突部32の係合凹部44に対する係合作用によって、第一取付ピン14が第一取付孔28内で軸方向に位置決めされており、第一取付ピン14の第一取付孔28からの抜け出しに対して抵抗力を発揮するようになっている。
特に本実施形態では、係合突部32の湾曲外面が係合凹部44の湾曲内面に対して当接されることにより、係合突部32が係合凹部44の内面によって押圧変形される。更に、係合突部32の先端部分が、抜止頭部40の基端側の端面である環状当接面42に当接することから、係合突部32に対して一層の拘束力が及ぼされて、係合突部32の基端部が先端部よりも厚肉とされていることと相俟って、係合突部32の係合凹部44への係合強度が向上されている。
しかも、かかる係合突部32は、第一取付孔28内で第一取付ピン14の挿通方向の前方に向かって傾斜して突出形成されていることから、第一取付孔28の軸方向において、傾斜方向への押圧力に対しては傾斜角度が大きくなる方向へ倒れるようにして比較的容易に変形し得るが、傾斜方向と反対側への押圧力に対しては大きな変形剛性を発揮し得ることとなる。また、第一取付孔28の内周面において、係合突部32の傾斜角度が大きくなる側には、逃げ部34が形成されていることから、係合突部32の基端部分における圧縮応力による変形剛性が軽減されて係合突部32の倒れ方向への変形が容易に許容されると共に、係合突部32が逃げ部34へ入り込むことにより係合突部32の倒れ方向への変形が大きく許容されるようになっている。
それ故、第一取付ピン14を第一取付孔28へ挿通するに際しては、第一取付ピン14の挿通方向となる倒れ方向へ係合突部32が容易に且つ大きく変形することで、小さな抵抗力のもとで第一取付ピン14を第一取付孔28へ差し入れることができる。一方、第一取付ピン14の第一取付孔28への組付状態では、係合突部32の係合凹部44への係合作用に基づいて、第一取付ピン14の第一取付孔28からの抜け方向への変位に対して大きな抵抗力が発揮されて、第一取付ピン14が第一取付孔28への組付状態へ確実に保持され得ることとなる。
更にまた、本実施形態では、第一取付ピン14における係合凹部44が周方向の全周に亘って連続して形成されていると共に、第一取付部24に対して、係合突部32と逃げ部34が周方向の全周に亘って連続して形成されている。このことから、第一取付ピン14によるマフラーサポート12からの更に高い抜出し防止効果が発揮され得る。しかも、それぞれが全周に亘って連続して形成されていることにより、第一取付ピン14を第一取付孔28に挿通する際の、周方向における位置合わせの手間が不要となる。
次に、図7〜10には、本発明の第二の実施形態としてのマフラーサポート組付体が示されている。なお、本実施形態は、第一及び第二取付孔とそこに挿通される第一及び第二取付ピンにおいて互いに係合される係合突部および係合凹部について、第一の実施形態とは別の態様を例示するものであり、マフラーサポートや第一及び第二取付ピンにおける全体構造は第一の実施形態と同様である。また、本実施形態においても、第一取付孔を備えた第一取付部と第二取付孔を備えた第二取付部、第一取付ピンと第二取付ピンはそれぞれ略同じ構造とされていることから、第一取付ピンが挿通される第一取付部の構造についてだけ説明する。また、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位は、図中に、前記第一の実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態におけるマフラーサポートの第一取付孔46には、第一取付ピン48の挿通方向における先端側の開口部近くに位置して、内周面から係合突部50が突出して形成されている。この係合突部50は、第一取付孔46の軸方向先端側に向かって傾斜しており、特に本実施形態では、係合突部50の基端部から先端部に向かって傾斜角度が次第に大きくされて、第一取付孔46の内周側に凸形となるように湾曲した略円弧状の断面形状とされている。
また、第一取付孔46の内周面には、係合突部50の先端側に隣接した位置に開口して、略半円凹形の断面形状の逃げ部52が形成されている。なお、逃げ部52は、第一取付孔46の先端側の軸方向端面から所定距離だけ軸方向内方に離れて設けられており、本実施形態では、逃げ部52と第一取付孔46の先端側の軸方向端面との間に、係合突部50と略同じ厚さ寸法の周壁部54が形成されている。そして、この周壁部54の内周面が、略円弧状に湾曲した係合突部50の先端面に対して所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
なお、上述の係合突部50と逃げ部52は、略一定の断面形状をもって周方向の全周に亘って連続して延びる環状構造をもって形成されており、略円環状に延びる突条からなる係合突部50と略円環状に延びる周溝からなる逃げ部52として構成されている。
一方、第一取付ピン48において、第一取付孔46への挿通状態で係合突部50に対応する位置に設けられた係合凹部56は、係合突部50の湾曲外面形状に略対応した湾曲内面形状を有しており、係合突部50の突出高さ寸法よりも僅かに小さな深さ寸法をもって形成されている。また、本実施形態では、係合凹部56が、抜止頭部40の大径側端面から周壁部54に対応する距離だけ軸方向基端側に離れた位置に、周方向の全周に亘って略一定の断面形状で延びる周溝として形成されている。
そして、第一取付ピン48が第一取付孔46に挿通されたマフラーサポートに組み付けられた状態では、マフラーサポートの係合突部50が、第一取付ピン48の係合凹部56に入り込んで係合されている。そして、この係合突部50の係合凹部56に対する係合作用によって、第一の実施形態と同様に、第一取付ピン48の第一取付孔46からの抜け出しに対して抵抗力が発揮されることとなる。
特に本実施形態では、第一取付ピン48の第一取付孔46への組付状態下、係合突部50の湾曲外面が係合凹部56の湾曲内面で押圧変形される。これにより、係合突部50の先端面が逃げ部52の開口を跨いで、逃げ部52の先端側に位置する周壁部54の内周面に対して押し付けられることが望ましい。このような係合突部50と周壁部54との当接により、係合突部50における変形剛性が一層大きくされて、係合突部50の係合凹部56への嵌合による係止作用ひいては第一取付ピン48の第一取付孔46からの抜出阻止作用がより効果的に発揮され得る。
なお、本実施形態では、抜止頭部40の環状当接面42の外径寸法φHを、周壁部54の内径寸法より大きくすることにより、逃げ部52の外部への開口を防止して異物の侵入を防ぐことができる。好適には、環状当接面42の外径寸法φHが、逃げ部52の最深部の径寸法φCより大きく設定され、これにより、第一取付部24の端面に対する抜止頭部40の当接反力に基づく第一取付ピン48の第一取付孔46からの抜出抵抗力がより効果的に発揮され得る。
また、本実施形態においては、第一取付孔46における第一取付ピン48の挿通方向の先端側と基端側の両開口縁部において、基端側の開口角部、即ちテーパ状内周面36の曲率半径が先端側の開口角部の曲率半径より大きくされている。これにより、第一取付孔46の先端側に比して基端側の開口部であるテーパ状内周面36は、緩やかな湾曲断面形状で、軸方向外方に大きく拡開されており、第一取付孔46に対する第一取付ピン48の挿通を一層容易にすることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、第一取付部24と第二取付部26が同じ構造とされていたが、その必要はなく、例えば車体側やマフラー側の構造等によって第一取付ピンと第二取付ピンが互いに異なる形状や大きさとされる場合には、それに対応して、第一取付部と第二取付部を異なる構造とすることも可能である。また、それら第一及び第二取付部の両方において、本発明に従う係合突部と係合凹部を備えた取付孔と取付ピンの係合構造を採用する必要はなく、何れか一方の取付部としてかかる係合構造を設けない従来構造を採用することも可能である。
また、第二の実施形態に示された係合突部50と係合凹部56からなる係合構造は、取付孔および取付ピンの軸方向の中間部分や基端側部分に設けることも可能であり、取付孔および取付ピンの軸方向で離隔して複数設けることも可能である。更にまた、本発明に従う係合突部および係合凹部からなる係合構造として、第一の実施形態に記載の係合突部および係合凹部からなる係合構造と、第二の実施形態に記載の係合突部および係合凹部からなる係合構造との両方を併せて採用することも可能である。
さらに、前記実施形態では、マフラーサポート12はゴム弾性体の単体で構成されていたが、ヒートインシュレータや補強部材、ダンパマス等を固着したゴム弾性体の複合構造とされていてもよい。また、マフラーサポートは前記実施形態の形状や構造に限定されるものではなく、従来公知の各種のものが採用され得る。従って、例えば取付孔および取付ピンはそれぞれ3つ以上とされてもよい。
更にまた、取付孔や取付ピンとして、テーパ形状の外周面を有するものや断面形状が軸方向で異ならされているものを採用することも可能である。
また、係合突部は、前記実施形態の如き一定の曲率で形成された円弧状断面に限定されず、係合突部の基端側から先端側において曲率半径を異ならせる等して、複数の変曲点や屈曲点を有するような係合突部を採用してもよい。
さらに、取付ピンの外周面において、係合凹部が全周に亘って連続して形成される必要はなく、周方向で部分的に形成されていてもよい。また、取付孔の内周面において、係合突部および逃げ部が全周に亘って連続して形成される必要はなく、周方向で部分的に形成されていてもよい。