JP6108297B2 - 解剖体等の縫合方法、この方法に用いられる縫合糸、穿刺針及び穿刺針器 - Google Patents
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Description
前者は、切開部分を細かくきれいに縫合することができるが、熟練を要し労力と時間がかかるという問題がある。また、針を用いて複雑な縫合作業を行うため、誤って施術者の指や手を刺してしまうおそれがあり、安全や衛生上の問題がある。
一方、クリップを用いた場合は、切開部分を摘んで綴じるだけでよいので簡便かつ安全に縫合できるが、金属製のクリップを用いているため火葬後にクリップが残るという問題がある。
そこで、特許文献1に記載の発明では、解剖体の切口をクリップで簡便に縫合することが出来ると共に、解剖体の焼却処分後に焼却炉に残ることなく完全燃焼し、遺体解剖にも使用し得る解剖体縫合器が提案されている。
この方法によれば、縫合糸の一端のアンカー部を皮膚下まで刺し通すだけで、前記アンカー部の作用によって縫合糸が皮膚に強固に固定されるので、切開部分の両側で皮膚の外側に突出する縫合糸を引っ張って結束することで、簡単に切開部分の縫合が行える。
また、前記縫合糸は、前記本体が、結束可能な柔軟性と前記切開部分から起立する自立性とを併有する材料で形成されているので、皮膚下まで刺し通した縫合糸が切開部分の皮膚から立ち上がり、結束すべき一対の縫合糸が見つけやすくなるうえ、縫合作業も容易になる。
なお、柔軟性と自立性を有する縫合糸の例としては、ナイロンやポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂糸の他、木綿や絹、合成繊維の糸に樹脂や蝋を含浸させたものを挙げることができる。
請求項4に記載するように、前記穿刺針を加熱したり又は前記穿刺針に超音波振動を付与したりすれば、前記穿刺針を皮膚に刺し通しやすくなる。
を有する構成としてある。
このような縫合糸を用いれば、結束の際に施術者が力を入れやすくなり、切開部分を強固に縫合することができる。
前記本体の表面には、請求項7に記載するように、結束しやすく、かつ、容易にほどけないようにするための滑り防止処理を施すとよい。
前記滑り防止処理としては、例えば請求項8に記載するように鋸刃状のものとするとよい。
穿刺針の構成をこのようにすることで、前記縫合糸を皮膚下まで刺し通しやすくなる。
また、本発明の穿刺針器は、請求項10に記載するように、前記縫合糸の一端を保持した状態で前記切開部分の皮膚下まで刺し通され、前記アンカー部が前記本体に沿うように屈曲させた状態で挿入される中空孔を備えた穿刺針と、この前記穿刺針を進退移動させる駆動部と、前記縫合糸を保持する縫合糸ホルダと、この縫合糸ホルダから前記縫合糸を取り出し、前記縫合糸の一端を前記穿刺針の中空孔に挿入する縫合糸の供給部と、を有し、前記穿刺針は、少なくとも一方の側周縁に切刃が形成されている構成としてある。
さらに刺し通し作業を容易にするためには、請求項11に記載するように、前記穿刺針を加熱する加熱手段又は超音波を付与する超音波付与手段を設けるとよい。
本発明を用いれば、今後予想される遺体解剖率の増大にともなう医師の負担軽減と安全性の向上を同時に図ることができる。
図1は本発明の縫合方法に用いる縫合糸の一実施形態にかかり、その構成を説明する図である。
縫合糸1は、紐状の本体10と、この本体10の一端に形成され、施術者の指を引っ掛ける突起状の引掛部11と、本体10の他端に形成され、切開部分の皮膚Sに刺し通されて皮膚下で係止されるアンカー部12とを有している。
本体10の材料として樹脂を用いる場合は、結束の際に本体10に滑りが生じて結束が緩むことがないようにするために、滑りにくい材質のものを選択したり、本体10の表面を鋸刃状に仕上げたりする等の滑り防止処理を施すのが好ましい。
図2(a)に示すように、中空状の穿刺針2には、軸方向にスリット21が形成されていて、このスリット21を通して縫合糸1の本体10が穿刺針2の針穴内に挿入される。先端のアンカー部12は、図示するようにスリット21内に格納された状態で穿刺針2とともに皮膚Sに刺し通される。
まず、(a)に示すように、縫合糸1を装着した穿刺針2を切開部分の皮膚Sの上に位置させる。(b)に示すように穿刺針2を皮膚Sに突き刺すと、可撓性を有するアンカー部12が変形しながら穿刺針2とともに皮膚S内に刺し込まれる。
なお、この際、穿刺針2を加熱したり、穿刺針2に超音波振動を付与したりすることで、穿刺針2が皮膚Sに刺し通しやすくなる。
図4に示すような多数本の縫合糸1を連結した縫合糸集合体を準備し、この縫合糸集合体から一本ずつ縫合糸1を取り出しながら連続的に穿刺針2と縫合糸1とを繰り出す装置を利用することで、縫合糸1の刺し通しを切開部分の両側の皮膚Sに連続的に行うことができ、縫合時間を大幅に短縮することが可能になる。
このような装置としては、例えば特開平6−263127号公報や実用新案登録第3080680号公報等で公知又は市販のタグガンを利用することができる。
図5〜図8は、豚の皮膚を使った縫合の様子を示す写真である。
図5に示すように、図2に示す穿刺針2を装着したタグガンに、図3に示すような縫合糸1の集合体を装着した。タグガンの本体は、市販のものを用いることができる。そして、切開部分の皮膚に穿刺針を押し付けつつ、前記タグガンのトリガーを引いて穿刺針を皮膚に突き刺す。これにより、図3(a)〜(d)の動作が行われ、縫合糸が皮膚に固定される。切開部分の両側の皮膚Sに対して所定の間隔でこれを繰り返すことで、図6に示すように切開部分の皮膚の両側に縫合糸が固定される。縫合糸は、皮膚から起立した状態で切開部分の両側に並ぶので、結束すべき対となる縫合糸を見つけやすく、かつ、結束もしやすい。
結束作業の終了後に、図8に示すように、余分となった本体10を切除することで、縫合が完了する。樹脂製の本体10を使用した場合でも、本体10に滑り止め加工を施すことで、容易に結束が緩むことはない。
例えば、図3の説明ではまず、縫合糸1を装着した穿刺針2を切開部分の皮膚Sに対してほぼ垂直に刺し込むようにしているが、頭部のように皮膚下に骨があるような場合には、皮膚Sに対して斜め方向から穿刺針2を刺し込むようにするとよい
また、上記の説明で縫合糸1は樹脂や合成繊維又は天然繊維で形成するものとしたが、動物の手術に用いる場合には、手術後に体内で融解する性質を有する材料で形成した縫合糸を用いるのが好ましい。
10 本体
11 引掛部
12 アンカー部
2 穿刺針
21 スリット
23 切刃
S 皮膚
Claims (11)
- 解剖体又は手術時における動物(人を除く)の身体の切開部分を縫合する縫合方法において、
結束前に前記切開部分の皮膚から起立する自立性と結束可能な柔軟性とを有する紐状の本体の一端に、前記切開部分の皮膚に刺し通されて皮膚下で係止される可撓性のアンカー部を備えた縫合糸を複数本準備し、
前記切開部分の両側の皮膚に、所定間隔で前記縫合糸の前記アンカー部を刺し通すことで、前記複数本の縫合糸を前記切開部分の両側の皮膚の両側に所定間隔で自立状態に並べて固定し、前記切開部分の両側に向かい合って配置され前記皮膚の表面から自立状態で突出する二つの前記縫合糸の本体を結束することで前記切開部分の縫合を行うこと、
を特徴とする解剖体等の縫合方法。 - 前記本体の他端に施術者の指に引っ掛かる引掛部を形成した前記縫合糸を準備し、この引掛部を介して前記縫合糸を引っ張りつつ結束して縫合することを特徴とする請求項1に記載の解剖体等の縫合方法。
- 前記切開部分の皮膚に刺し通す穿刺針を準備し、この穿刺針に前記縫合糸を保持させ、前記穿刺針とともに前記アンカー部を前記皮膚下まで刺し通すことを特徴とする請求項1又は2に記載の解剖体等の縫合方法。
- 前記穿刺針を加熱しつつ又は前記穿刺針に超音波振動を付与しつつ、前記アンカー部を前記皮膚下まで刺し通すことを特徴とする請求項3に記載の解剖体等の縫合方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の解剖体等の縫合方法に用いられる縫合糸であって、
結束前に切開部分の皮膚から起立する自立性と結束可能な柔軟性とを有する紐状の本体と、
この本体の一端に形成され、前記皮膚に刺し通されて皮膚下で係止されるアンカー部と、
前記本体の他端に形成され、施術者の指を引っ掛ける引掛部と、
を有することを特徴とする解剖体等の縫合に用いられる縫合糸。 - 前記引掛部が立体形状であることを特徴とする請求項5に記載の解剖体等の縫合に用いられる縫合糸。
- 前記本体の表面に、結束しやすく、かつ、容易にほどけないようにするための滑り防止処理が施されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の解剖体等の縫合に用いられる縫合糸。
- 前記滑り防止処理が、前記本体の表面に形成された鋸刃状の仕上げであることを特徴とする請求項7に記載の解剖体等の縫合に用いられる縫合糸。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の解剖体等の縫合方法に用いられる穿刺針であって、
軸線上に形成され、結束前に切開部分の皮膚から起立する自立性と結束可能な柔軟性とを有する紐状の本体の一端に、前記本体から横方向に枝分かれして形成され前記切開部分の皮膚に刺し通されて皮膚下で係止される可撓性のアンカー部を備えた縫合糸を、前記アンカー部を前記本体に沿うように屈曲させた状態で挿入する中空孔と、
少なくとも一方の側周縁に形成された切刃と、
を有することを特徴とする穿刺針。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の解剖体等の縫合方法に用いられ、前記解剖体等の皮膚下まで、結束前に切開部分の皮膚から起立する自立性と結束可能な柔軟性とを有する紐状の本体の一端に、前記本体から横方向に枝分かれして形成され前記切開部分の皮膚に刺し通されて皮膚下で係止される可撓性のアンカー部を備えた縫合糸の前記アンカー部を刺し通す穿刺針器であって、
前記縫合糸の一端を保持した状態で前記切開部分の皮膚下まで刺し通され、前記アンカー部が前記本体に沿うように屈曲させた状態で挿入される中空孔を備えた穿刺針と、
この前記穿刺針を進退移動させる駆動部と、
前記縫合糸を保持する縫合糸ホルダと、
この縫合糸ホルダから前記縫合糸を取り出し、前記縫合糸の一端を前記穿刺針の中空孔に挿入する縫合糸の供給部と、
を有し、
前記穿刺針は、少なくとも一方の側周縁に切刃が形成されていること、
を特徴とする解剖体等の縫合方法に用いられる穿刺針器。 - 前記穿刺針を加熱する加熱手段又は超音波を付与する超音波付与手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の解剖体等の縫合方法に用いられる穿刺針器。
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