図1は本発明の一実施形態における樹脂硬化用光源装置の外観構成を概略的に示している。
同図に示すように、樹脂硬化用光源装置10を収容している筐体11の前面11aには、タッチパネル式ディスプレイからなる制御パネル12と、被照射体に照射される光スポットを導く光ファイバ束13の取付け部14とが設けられている。
図2は図1の実施形態における樹脂硬化用光源装置10の光学的構成を概略的に示している。
本実施形態の樹脂硬化用光源装置10は、光学的には、光源15と、この光源15が装着されている集光型の反射鏡16と、反射鏡16によって反射された光の光路17に挿入されている回動式の光強度調整機構18と、光強度調整機構18の下流の光路17に挿入されているシャッタ機構19と、光源15からの光の光強度を検出する光強度センサ20と、被照射体に照射される光スポットを導く光ファイバ束13とを備えている。なお、本実施形態の変更態様として、光源15及び反射鏡16が一体化され、ユニット化されていても良い。
光源15は、IR帯域光、可視光及びUV帯域光を含む全波長帯域の光を放射するように構成された例えばメタルハライドランプである。光源15として、メタルハライドランプに代えて、水銀−キセノンランプ、又は全波長帯域の光を放射可能な複数のLED素子を用いても良い。
反射鏡16は、光源15がその焦点位置に装着される回転楕円体形状を有しており、例えばアルミニウム蒸着のミラーを使用することにより、光源15から放射される全ての波長帯域、即ちIR帯域光、可視光及びUV帯域光(UV−A紫外線、UV−B紫外線及びUV−C紫外線)を含む全波長帯域(例えば、200nm〜2500nmの帯域)の光を効率良く反射して集光するように構成されている。なお、アルミニウム蒸着のミラーに代えて、金を蒸着したミラーを用いても良い。また、反射鏡15に代えて光源15から放射される全ての波長帯域の光を集光するレンズを用いても良い。
図3(A)は図1の実施形態における樹脂硬化用光源装置の光強度調整機構の調整板の光源側から見た構成、図3(B)はその変更態様における樹脂硬化用光源装置の光強度調整機構の調整板の光源側から見た構成を概略的に示している。本実施形態における光強度調整機構18は、図3(A)に詳細に示すように、回動式調整板18aと、回動式調整板18aに同軸に取付けられており、この回動式調整板18aを回動軸18bの回りで所定角度回動させるための光量制御用のステッピングモータ18cと、回動式調整板18aに設けられた開口部18dと、回動式調整板18aの円周端に設けられた原点確認用突起18eと、この原点確認用突起18eの通過を検知するためのフォトインタラプタ18fとを備えている。
開口部18dは、図3(A)に示すように、回動軸18bを中心にして(回動式調整板18aの回動角度に応じて)開口面積が連続的に変化する曲線楔形状を有している。反射鏡16からの光スポットの全て又は一部がこの開口部18dを通過するように構成されているため、ステッピングモータ18cの回転駆動により回動式調整板18aが回動すると、その回動角度に応じて光強度が連続的に変化する。なお、図3(A)における12時の位置の光スポット21aは、その全て(100%)が通過するため、光強度は最大となる。回動式調整板18aが同図にて時計回りに回動することにより、通過する光束が最終的に0%まで連続的に減少する。例えば、図3(A)における9時の位置の光スポット21b、6時の位置の光スポット21c、さらに3時の位置の光スポット21dの場合、透過光量はこの順序でかつその回動角度に応じて減少し光強度がそれに応じて低下する。即ち、本実施形態の光強度調整機構18は、ステッピングモータ18cの回動角度に応じて光強度を制御でき、しかもその光強度を連続的に変化させることができる。なお、ステッピングモータ18cには、図示しないロータリエンコーダが取付けられており、このロータリエンコーダのカウントによってステッピングモータ18cの回動角度を検出し、後述するプログラマブルコントローラ(PLC)62(図6参照)へ通知するように構成されている。
フォトインタラプタ18fは、回動式調整板18aの円周端に設けられた原点確認用突起18eの通過を検知し、PLC62へ通知するように構成されている。これにより、回動式調整板18aの原点位置を確認し、ロータリエンコーダの検出するステッピングモータ18cの回動角度と併せて、回動式調整板18aの回動位置を正確に認識することができる。なお、原点位置の確認は、電源スイッチをオンとした際に行われる。
図2に示すように、本実施形態における回動式調整板18aは光路17に対して傾斜して設置されており、これにより、反射鏡16からの光の一部を回動式調整板18aの表面で反射させて光強度センサ20に入射させることができる。光強度センサ20の出力はPLC62に送られ、PLC62はその値を制御パネル12に表示するように構成されている。これにより光源15から実際に放射される光の光強度を常に確認することが可能となっている。本実施形態の変更態様においては、回動式調整板18aの表面で反射させた光を光強度センサ20に入射させるのではなく、回動式調整板18aを透過した光を光強度センサ20に入射させるように構成されている。これにより、装置の製造コストを低減させることが可能となる。
本実施形態の変更態様として、光強度調整機構を直線移動させるように構成しても良い。その場合、ステッピングモータの回転運動をラックアンドピニオンギア等によって直線運動に変換し、図3(B)に示すような直線移動式調整板18a′を左右に直線駆動する。この直線移動式調整板18a′には、左右方向に開口面積が連続的に変化する直線楔形状の開口部18d′が設けられており、直線移動式調整板18a′が左右方向に直線移動すると、その位置に応じて光強度が連続的に変化する。図3(B)における最左端の光スポット21a′は、その全て(100%)が通過するため、光強度は最大となる。直線移動式調整板18a′が左方向に直線移動することにより、通過する光束が最終的に0%まで連続的に減少する。例えば、図3(B)における次の位置の光スポット21b′、次の位置の光スポット21c′、さらに最右端の光スポット21d′の場合、透過光はこの順序でかつその直線移動位置に応じて減少し光強度がそれに応じて低下する。即ち、本変更態様の光強度調整機構も、ステッピングモータの回動角度に応じて光強度を制御でき、しかもその光強度を連続的に変化させることができる。本変更態様における直線移動式調整板18a′の原点位置の認識は、図示しないフォトインタラプタによりこの直線移動式調整板18a′の左右の一端の通過を検知し、PLC62へ通知することによって行われる。
なお、上述した図1の実施形態及びその変更態様においては、開口面積が連続的に変化するように構成されているが、開口部18d及び18d′の形状を互いに連続することなく開口面積が変化する形状とすることにより、光強度を非連続的に変化させるように構成することも可能である。
図4(A)は図1の実施形態における樹脂硬化用光源装置のシャッタ機構のシャッタ板の構成、図4(B)はその変更態様における樹脂硬化用光源装置のシャッタ機構のシャッタ板の構成を概略的に示している。本実施形態におけるシャッタ機構19は、図4(A)に詳細に示すように、扇型形状の回動式シャッタ板19aと、回動式シャッタ板19aに同軸に取付けられており、この回動式シャッタ板19aを回動軸19bの回りで高速に回動(揺動)させるためのシャッタ用のステッピングモータ19cと、回動式シャッタ板19aに設けられたIR帯域透過フィルタ19dと、回動式シャッタ板19aにIR帯域透過フィルタ19dに隣接して設けられた光遮断部19eと、回動式シャッタ板19aに光遮断部19eに隣接して設けられたUV帯域透過フィルタ19fと、回動式シャッタ板19aにIR帯域透過フィルタ19dの外側(図にて右側)に隣接して設けられ、UV−C紫外線と、500nm〜640nmの波長帯の光以外の可視光線と、赤外線とを含む光のみを透過させるUV及びIR帯域透過フィルタ(本発明の光通過部に対応する)19iと、回動式シャッタ板19aの円周端に設けられた原点確認用突起19gと、この原点確認用突起19gの通過を検知するためのフォトインタラプタ19hとを備えている。なお、UV及びIR帯域透過フィルタ19iをUV帯域透過フィルタ19fの外側(図にて左側)に隣接して設けても良い。
IR帯域透過フィルタ19dは、本実施形態においては、耐熱性及び長寿命安定性に優れ、赤外線(一部可視光を含む)のみを透過させる透過フィルタ又はミラーから構成されており、例えば、約400nm以下の光の透過を阻止し、約405nm以上の光を95%以上の透過率で透過する特性を有するものである。本実施形態のIR帯域透過フィルタ19dは、赤外線(一部可視光を含む)のみを透過する透過特性を有するように構成されているが、照射対象であるIR硬化型樹脂の対波長硬化特性や光源15の対波長放射特性に応じて種々の対波長光透過率特性のものを用いても良い。
光遮断部19eは非開口部であり光を通過させず遮断するように構成されている。
UV帯域透過フィルタ19fは、本実施形態においては、耐熱性及び長寿命安定性に優れ、紫外線(一部可視光を含む)のみを透過させる透過フィルタ又はミラーから構成されており、例えば、約250nm以下及び約500nm以上の光の透過を阻止し、約300nm〜約450nmの光を90%以上の透過率で透過する特性を有するものである。本実施形態のUV帯域透過フィルタ19fは、紫外線(一部可視光を含む)のみを透過する透過特性を有するように構成されているが、照射対象であるUV硬化型樹脂の対波長硬化特性や光源15の対波長放射特性に応じて種々の対波長光透過率特性のものを用いても良い。
UV及びIR帯域透過フィルタ19iは、本実施形態においては、耐熱性及び長寿命安定性に優れ、250nmの波長帯の光を含むUV−C紫外線と、500nm〜640nmの波長帯の光を除く可視光線と、赤外線とを透過させる透過フィルタ又はミラーから構成されている。このUV及びIR帯域透過フィルタ19iの波長光透過率特性の一例が図5に示されている。この例では、可視光線のうち約500nm以上かつ約640nm以下の範囲の光の透過を阻止し、少なくとも250nmの波長帯を含むUV−C紫外線と約650nm以上の可視光線及び赤外線とを90%以上の透過率で透過する特性を有している。このようなUV及びIR帯域透過フィルタ19iを光路17に挿入することにより、樹脂表面にヌメリ又はべたつき(タッキネス)を発生させることなく、しかも、短時間で硬化させることができる、また、UV硬化型樹脂用の光のみならずIR硬化型樹脂を効率良く硬化させることができる。しかも、樹脂硬化に必要のない500nm〜640nmの波長帯の光が遮断されるため、被照射体が不要に加熱されることを防止できる。なお、本実施形態のUV及びIR帯域透過フィルタ19iは、紫外線(一部可視光を含む)及び赤外線(一部可視光を含む)のみを透過する透過特性を有するように構成されているが、照射対象であるUV硬化型樹脂の対波長硬化特性や光源15の対波長放射特性に応じて種々の波長光透過率特性のものを用いても良い。
回動式シャッタ板19aが回動軸19bの回りを枢動することにより、IR帯域透過フィルタ19d、光遮断部19e、UV帯域透過フィルタ19f又はUV及びIR帯域透過フィルタ19iが選択的に光路17に挿入される。即ち、本実施形態のシャッタ機構19は、ステッピングモータの回動角度に応じて、赤外線(一部可視光を含む)のみの透過、全帯域光の遮断、紫外線(一部可視光を含む)のみの透過、又は赤外線(一部可視光を含む)及び紫外線(一部可視光を含む)のみの透過を選択することができる。IR帯域透過フィルタ19d及びUV帯域透過フィルタ19fは光遮断部19eに対して回動方向の両側に配置されている。これにより、本実施形態のシャッタ機構19では、赤外線(一部可視光を含む)のみの透過又は紫外線(一部可視光を含む)のみの透過を行う場合、その後に、必ず全帯域光の遮断が行われ、次いで、赤外線(一部可視光を含む)のみの透過又は紫外線(一部可視光を含む)のみの透過を行うようになされる。このように、赤外線のみの透過と紫外線のみの透過との間の切り替え時に、被照射体を光から遮断することが可能となる。これにより、IR帯域光照射に連続して直ちにUV帯域光照射が行われる、又はUV帯域光照射に連続して直ちにIR帯域光照射が行われるような不都合を防止でき、また、両帯域光照射の間に被照射体の冷却を行うことが可能となる。また、本実施形態では、IR帯域透過フィルタ19d、UV帯域透過フィルタ19f及びUV及びIR帯域透過フィルタ19iが、シャッタ機構19に設けられていること、さらに、これらがステッピングモータ19cによって駆動される回動式シャッタ板19aに装着されているため、各光透過帯域を高速で切り替えることができる。なお、ステッピングモータ19cには、図示しないロータリエンコーダが取付けられており、このロータリエンコーダのカウントによってステッピングモータ19cの回動角度を検出し、PLC62へ通知するように構成されている。
フォトインタラプタ19hは、回動式シャッタ板19aの円周端に設けられた原点確認用突起19gの通過を検知し、PLC62へ通知するように構成されている。これにより、回動式シャッタ板19aの原点位置を確認し、ロータリエンコーダの検出するステッピングモータ19cの回動角度と併せて、回動式シャッタ板19aの回動位置を正確に認識することができる。なお、原点位置の確認は、電源スイッチをオンとした際に行われる。
本実施形態の変更態様として、シャッタ機構を直線移動させるように構成しても良い。その場合、ステッピングモータの回転運動をラックアンドピニオンギア等によって直線運動に変換し、図4(B)に示すような直線移動式シャッタ板19a′を左右に直線駆動する。このシャッタ板19a′には、左右方向に(図にて右側から)UV及びIR帯域透過フィルタ19i′、IR帯域透過フィルタ19d′、光遮断部19e′、及びUV帯域透過フィルタ19f′が設けられており、直線移動式シャッタ板19a′が左右方向に直線移動すると、その位置に応じてUV及びIR帯域透過フィルタ19i′、IR帯域透過フィルタ19d′、光遮断部19e′、又はUV帯域透過フィルタ19f′が光路17に挿入される。即ち、本変更態様のシャッタ機構も、ステッピングモータの回動によって各光透過帯域を高速で切り替えることができる。本変更態様における直線移動式シャッタ板19a′の原点位置の認識は、図示しないフォトインタラプタによりこの直線移動式シャッタ板19a′の左右の一端の通過を検知し、PLC62へ通知することによって行われる。
光ファイバ束13は、石英ガラス等の高い紫外線帯域透過率を有する複数の石英ファイバを束ねて構成されており、反射鏡16からの反射光の集光点近傍の光路17に位置している入射部13aと、被照射体へのスポット光が出射される出射部13bと、その外周を覆う被覆体13cとを備えている。
図6は図1の実施形態における樹脂硬化用光源装置10の電気的構成を概略的に示している。
本実施形態の樹脂硬化用光源装置10は、電気的には、本実施形態では水銀−キセノンランプからなる光源15と、この光源15に電気的に接続されておりランプ電流を供給するランプ点灯電源60と、このランプ点灯電源60に電気的に接続されているランプ点灯電源制御基板61と、ランプ点灯電源制御基板61に電気的に接続されているPLC62と、PLC62に電気的に接続されている、光強度調整機構18のステッピングモータ18c及びフォトインタラプタ18fと、PLC62に電気的に接続されている、シャッタ機構19のステッピングモータ19c及びフォトインタラプタ19hと、PLC62に電気的に接続されている校正用光強度検出器63と、PLC62に電気的に接続されている被照射体用の温度計64と、PLC62に電気的に接続されており、筐体11の図示しないカバーが閉じられているかどうかを検知するインターロックスイッチ65と、PLC62に電気的に接続されており、光源15の周辺の過熱状態を検知してPLC62に通知するサーモスタット66と、PLC62に電気的に接続されており、リモートによるスタートスイッチ67と、イーサネット(登録商標)68及び69並びにハブ70を介してPLC62に電気的に接続されている、前述した制御パネル12と、PLC62に電気的に接続されている、前述した光強度センサ20と、イーサネット(登録商標)68及び71並びにハブ70を介してPLC62に電気的に接続されている外部コンピュータ72とを備えている。
PLC62は、プログラムによって規定された順序及び条件により制御を行うコンピュータであり、CPU、メモリ、入出力インタフェース、A/Dコンバータ、イーサネット(登録商標)端子、インバータ機能、パルス出力機能及び高速カウンタ機能等を内蔵している。この種の機能を有するPLCは市販されている(例えばオムロン株式会社のプログラマブルコントローラCP1E)。
光強度調整機構18のステッピングモータ18cは、PLC62から出力されるパルスによって図示しないドライバを介して駆動されるように構成されており、また、その回動角度をカウントする図示しないロータリエンコーダからのカウント値がPLC62に入力されるように構成されている。これにより、PLC62は、光強度調整機構18の回動式調整板18aを所望の角度に正確に素早く回動できると共に、その回動位置を高精度で知ることができる。
シャッタ機構19のステッピングモータ19cも、PLC62から出力されるパルスによって図示しないドライバを介して駆動されるように構成されており、また、その回動角度をカウントする図示しないロータリエンコーダからのカウント信号がPLC62に入力されるように構成されている。これにより、PLC62は、シャッタ機構19の回動式シャッタ板19aを所望の角度に正確に素早く回動できると共に、その回動位置を高精度で知ることができる。
校正用光強度検出器63は、被照射体に出射される光スポットの光エネルギを校正(Calibration)する際にのみ光ファイバ束13の出射部13cに光学的に連結され、光スポットの光強度(W/cm2)に応じた電圧を発生してその出力電圧をPLC62に送り込むように構成されている。この校正用光強度検出器63としては、IR帯域及びUV帯域の両帯域においてフラットな応答特性を有しこれら両帯域で共通して使用することができる例えばサーモパイル(複数の熱電対)が使用される。校正用光強度検出器63の入力光強度に対する出力電圧特性は既知でありPLC62のメモリに記憶されている。校正処理は、PLC62によって行われる。即ち、校正すべき所望の光強度(校正用光強度検出器63の出力電圧)が得られるように光強度調整機構18の回動式調整板18aを回動させ、その時のステッピングモータ18cの回動角度をPLC62のメモリに記憶させておけば、ステッピングモータ18cの回動角度に対する出力光強度の校正した特性を得ることができる。
温度計64は、必要な場合に設置される温度計であり、被照射体の温度を検出する熱電対から構成されている。この温度計64の検出出力はPLC62に送り込まれる。これによりPLC62は、被照射体の温度を例えば制御パネル12に表示できると共に、必要とする外部機器、例えば外部コンピュータ72に通知することができる。
インターロックスイッチ65は、筐体11のカバーが開いている場合にこれを検知し、PLC62に通知する。これによりPLC62は、カバーが閉じられるまで、樹脂硬化用光源装置10の作動を全て停止させることができる。また、カバーが開いていることを例えば制御パネル12に表示することができる。
サーモスタット66は、光源15の周辺の過熱状態を検知し、PLC62に通知する。これによりPLC62は、過熱状態が終了するまで光源15を消灯状態とすることができる。
リモートによるスタートスイッチ67は、例えばフットスイッチであり、外部からのリモート制御により、後述するレシピ処理をスタートさせることを可能にしたスイッチである。
光強度センサ20は、回動式調整板18aの開口部18dを除く部分の表面で反射した光源15の放射光の光強度を検出し、その検出出力をPLC62に送り込む。これによりPLC62は、光源15から放射されて回動式調整板18aで反射された光の光強度、従って回動式調整板18aによる透過光の残り反射光の光強度(これから照射光の光強度を求めることができる)を知ることができ、この反射光の光強度に対応する電圧を制御パネル12に表示してモニタを可能にしている。本実施形態の変更態様においては、回動式調整板18aの表面で反射させた放射光の光強度を光強度センサ20で検出するのではなく、回動式調整板18aを透過させた放射光の光強度を光強度センサ20で検出するように構成されている。
制御パネル12は、液晶によるタッチパネル式ディスプレイからなり、PLC62の指示により後述するメイン処理、レシピ処理及び校正処理における各種情報を表示すると共に、オペレータがタッチ入力した情報をPLC62へ転送するように構成されている。
外部コンピュータ72は、必要に応じてこの樹脂硬化用光源装置10に接続され、外部からこの樹脂硬化用光源装置10の動作を制御するように構成することができる。この外部コンピュータ72のリモート制御は本発明とは直接的に関係しないため、その説明を省略する。
本実施形態の変更態様の場合も、ステッピングモ−タを同様に制御して、光強度調整機構の直線移動式調整板18a′及びシャッタ機構の直線移動式シャッタ板19a′の移動位置を制御することができる。
図7はPLC62によるレシピ処理のプログラムの流れを示しており、図8は制御パネル12に表示されるメイン処理画面を示しており、図9は制御パネル12に表示されるレシピ処理画面を示しており、図10は制御パネル12に表示される校正処理画面を示している。
以下、これらの図を用いて、樹脂硬化用光源装置10におけるPLC62の動作を説明する。
樹脂硬化用光源装置10を動作させるには、まず、図示しない電源スイッチをオンとする。これにより、制御パネル12には、図8に示すメイン(Main)処理画面が表示される。このメイン処理画面には、レシピ名(Recipe No.1)と、メイン処理に移行するためのメインボタン80と、レシピ(Recipe)処理に移行するためのレシピボタン81と、校正(Calibration)処理に移行するための校正ボタン82と、セットアップ(Setup)処理に移行するためのセットアップボタン83と、光強度(Light intensity)センサ20の検出出力であるモニタ(Monitor)電圧の表示領域84と、シャッタ機構19による各処理の時間を表示するカウントダウンモニタ(Count down monitor)領域85と、このカウントダウンモニタ領域85に表示されるスタート(Start)ボタン85a及びストップ(Stop)ボタン85bと、光源(Lamp)に関するオン(ON)ボタン86a及びオフ(OFF)ボタン86bと、シャッタ機構(Shutter)に関して手動操作するための、IR帯域透過フィルタボタン87a、光遮断(Close)ボタン87b及びUV帯域透過フィルタボタン87cと、光強度(Light intensity)を調整する光強度調整領域88と、この領域88に表示される光強度のアップ(+)ボタン88a及びダウン(−)ボタン88bとが表示される。各ボタンをタッチすると、その指示がPLC62に入力されると共にそのボタンが点灯する。また、樹脂硬化用光源装置10が動作している間は、制御パネル12からのタッチ入力が基本的に無効となる。
なお、図8に示す例では、第1のレシピ(Recipe No.1)が選択されている。この第1のレシピは、UV及びIR帯域透過フィルタ19iを介して照射を行う(例えば、照射時間:10秒、光強度:10.0w/cm2)ものである。
他のレシピとして、最初にUV帯域透過フィルタ19fを介して照射を行い(照射時間:10秒、光強度:10.0w/cm2)、次いで、光遮断部19eにより光照射を遮断して被照射体の冷却を行い(光遮断時間:10秒)、その後、IR帯域透過フィルタ19dを介して照射を行う(照射時間:10秒、光強度:11.0w/cm2)ものがある。
最適な樹脂硬化を行うために、このように、UV及びIR帯域透過フィルタ19iの透過光の照射の有無、透過光の照射時間、透過光の光強度、及びIR帯域透過フィルタ19d及びUV帯域透過フィルタ19fの透過光の照射順序、各透過光の照射の有無、各透過光の照射時間、各透過光の光強度、両透過光の照射間の光遮断(冷却)の有無及び光遮断時間(冷却時間)等のパラメータを変えた種々のレシピを設定して登録しておくことが可能であり、また、その登録された複数のレシピから所望のレシピを選択してレシピ処理を行うことが可能である。
このメイン処理画面上において、光源15のオンボタン86aをタッチすることにより、PLC62からランプ点灯電源制御基板61にランプ点灯指示が出力され、さらに、ランプ点灯電源制御基板61からランプ点灯電源60にランプ点灯指示が出力されて光源15が点灯する。光源15が点灯すると、その時に光源15に印加される電圧が検知されてランプ点灯確認信号がランプ点灯電源60からランプ点灯電源制御基板61へ、さらにPLC62へ出力されるので、PLC62は光源15が点灯したことを確認することができる。なお、光源15のオフボタン86bをタッチすると、PLC62からランプ点灯電源制御基板61にランプ消灯指示が出力され、さらに、ランプ点灯電源制御基板61からランプ点灯電源60にランプ消灯指示が出力されて光源15が消灯する。また、IR帯域透過フィルタボタン87a又はUV帯域透過フィルタボタン87cをタッチすると、シャッタ機構19の回動式シャッタ板19aが回転するので手動で光透過帯域の制御ができ、光強度のアップ(+)ボタン88a又はダウン(−)ボタン88bをタッチすると、光強度調整機構18の回動式調整板18aが回転するので手動で光強度の調整ができる。
光源15の点灯に続いて、カウントダウンモニタ領域85のスタートボタン85aをタッチすることにより、選択されているレシピ処理が開始される。
図9は複数のレシピ処理を設定して登録し、登録されたレシピ処理を選択した際等に表示されるレシピ処理画面の一例を示している。メイン処理画面のレシピボタン81をタッチすることによりこのレシピ処理画面が表示される。このレシピ処理画面には、レシピ名(Recipe No.1)と、レシピ選択(Select Recipe)領域90と、この領域90に表示されるレシピ番号部90a及びメモ(Memo)ボタン90bと、シャッタ機構19によるUV及びIR帯域透過フィルタ、UV帯域透過フィルタ及びIR帯域透過フィルタの適用を表すシャッタ制御(Shutter control)領域91に表示されるUV→IR(UV to IR)ボタン91a、IR→UV(IR to UV)ボタン91b及びIR及びUV(IR + UV)ボタン91cと、UV帯域透過フィルタ及びIR帯域透過フィルタの照射時間(Time)及び光強度(Intensity)表示領域92と、光遮断部により光照射の遮断を行う光遮断時間(Shutter closing time)表示領域93とが表示される。レシピ選択領域90のレシピ番号部90aにタッチし、数値を入力すると、その数値のレシピが自動的に呼出される。なお、画面上でレシピを変更した場合は自動的に保存される。メモボタン90bをタッチするとそのレシピのメモを確認することができる。なお、メモとして例えば40字を入力することができる。
図9に示す第1のレシピ処理が設定されている場合、レシピ処理画面上におけるUV及びIRボタン91cをタッチすると(このボタンのみレシピ処理画面上からタッチ入力可能に設定されている)、UV及びIR帯域透過フィルタ19iによる照射時間の設定画面(図示なし)が表示され、その照射時間を設定することができる。照射時間の設定終了後、メイン処理画面のスタートボタン85aをオンにすると、このUV及びIR帯域透過フィルタ19iによる照射が開始されると共に、その照射時間に対応したタイマのカウントが行われる(図7のステップS1)。この第1のレシピで処理では、UV及びIR帯域透過フィルタ19iを用いた照射のみを行うため、PLC62は、ステッピングモータ19cに所定数のパルスを送り、回動式シャッタ板19aを素早く所定角度回動させてUV及びIR帯域透過フィルタ19iを光路17へ挿入する。これにより、UV及びIR帯域の光の被照射体への照射が開始される。なお、照射開始時のより詳細な動作としては、スタートボタン85aをオンにすると、光強度調整機構18のステッピングモータ18cが駆動されて回動式調整板18aが所定角度回動される。これにより、照射光の光強度が設定されると共に、その値が光強度センサ20によって検知して制御パネル12に表示される。これに続いて、シャッタ機構19のステッピングモータ19cが駆動されて回動式シャッタ板19aが所定角度回動されてUV及びIR帯域透過フィルタ19iが光路17に挿入されてUV及びIR帯域光の照射が行われる。なお、回動式シャッタ板19aは、初期時及び非作動時は、光遮断部19eが光路17に挿入される初期位置となるように設定されている。
次いで、このタイマのカウントが終了であるか否かを判別する(図7のステップS2)。この第1のレシピでは、UV及びIR帯域透過フィルタ19iを介する照射を10秒行うように設定されているため、タイマは10秒に設定される。なお、その際の光強度は最大光強度である100%に設定されているため、PLC62は、ステッピングモータ18cに所定数のパルスを送り、回動式調整板18aを所定角度回動させて照射光の光強度をこの最大光強度である100%に調整する。
カウント終了ではないと判別した場合(NOの場合)、照射を継続してこのステップS2の判別を繰り返す。10秒の照射時間が経過してカウント終了と判別した場合(YESの場合)、回動式シャッタ板19aを所定角度回動させて光遮断部129eを光路17へ挿入させて光を遮断することにより、図7の処理を終了する。
図10は校正処理画面の一例を示している。メイン処理画面の校正ボタン82をタッチすることによりこの校正処理画面が表示される。この校正処理画面には、レシピ名(Recipe No.1)と、校正具(Calibration tools)領域に表示されUV帯域に関する校正を行うためのUVボタン100a及びIR帯域に関する校正を行うためのIRボタン100bと、校正用光強度検出器63の出力電圧が表示される校正値(Reference value)領域101と、校正開始(Calibration Start)領域102に表示されるスタートボタン102a及び状況(State)表示領域102bとが表示される。
前述したように、校正処理は、校正具である校正用光強度検出器63を光ファイバ束13の出射部13cに光学的に連結して行われる。UV帯域及びIR帯域における校正すべき所望の光強度に対応する校正値である校正用光強度検出器63の出力電圧を入力すると、この値が基準値領域101に表示される。UVボタン100a又はIRボタン100bをタッチすると、PLC62は、校正用光強度検出器63の出力電圧がこの校正値となるように光強度調整機構18の回動式調整板18aを回動させ、その時のステッピングモータ18cの回動角度をメモリに記憶する。従って、ステッピングモータ18cの回動角度がこの値となった際に所望の光強度が出力されると校正することができる。このような校正処理を行えば、光源15の放射出力が変化したり、光源15を取り替えた際にも常に同一の光強度を得ることが可能となる。
以上詳細に説明したように本実施形態によれば、シャッタ機構19に設けられたUV及びIR帯域透過フィルタ19iが、光源15からの光路17に選択的に挿入される。これにより、250nmの波長帯の光を含むUV−C紫外線と、500nm〜640nmの波長帯の光を除く可視光線と、赤外線とからなる光が同時に被照射体に照射されるので、UV硬化型樹脂をその樹脂表面にタッキネスを発生させることなく、しかも、短時間で硬化させることができる。また、UV硬化型樹脂のみならずIR硬化型樹脂をも効率良く硬化させることができる。しかも、元々存在しているシャッタ機構に、UV及びIR帯域透過フィルタ19i、IR帯域透過フィルタ19d、UV帯域透過フィルタ19f及び光遮断部19eを設けているため、従来のUV樹脂硬化用光源装置を大幅な設計変更することなく一部変更するのみで、IR硬化型樹脂用の光の照射及び遮断の機能、並びにUV硬化型樹脂用の光の照射及び遮断の機能を得ることができる。このため、新たな装置開発が不要となり製造コストを大幅に低減化することができる。さらに、用途によって異なる最適な樹脂硬化を行うために、UV及びIR帯域透過フィルタ19iの透過光の照射の有無、透過光の照射時間、透過光の光強度、及びIR帯域透過フィルタ19d及びUV帯域透過フィルタ19fの透過光の照射順序、各透過光の照射の有無、各透過光の照射時間、各透過光の光強度、両透過光の照射間の光遮断(冷却)の有無及び光遮断時間(冷却時間)等のパラメータを変えた種々のレシピを設定して登録しておくことが可能であり、また、その登録された複数のレシピから所望のレシピを選択してレシピ処理を行うことが可能である。
なお、UV硬化型樹脂に、UV波長帯の光のみを照射しても、IR波長帯の光のみを照射しても、また、UV波長帯(IR波長帯)の光を照射した後にIR波長帯(UV波長帯)の光を照射しても、樹脂表面のタッキネスを完全に除去することはできない。このため、従来は、前述したように、365nmを主波長とするUV硬化装置によるUV硬化処理と熱線オーブンによる加熱処理との両方を行うことによりタッキネスを除去していたのである。本実施形態によれば、250nmの波長帯の光を含むUV−C紫外線と、500nm〜640nmの波長帯の光以外の可視光線と、赤外線とからなる光とを同時に照射することで、UV硬化型樹脂を空気に触れずに硬化させ、UV硬化とタッキネス除去とを同時に実現することができるのである。
また、光強度調整機構18は、回動式調整板18a又は直線移動式調整板18a′の開口部18d又は18d′の開口面積が連続的に変化する楔形状を有しており、ステッピングモータ18cの駆動により光路17に挿入される開口部の開口面積が連続的に変化する。このため、ステッピングモータ18cの回動角度に応じて光強度を制御でき、しかもその光強度を連続的にかつ精度よく変化させることができる。
さらにまた、光強度調整機構18の回動式調整板18a又は直線移動式調整板18a′がステッピングモータ18cによって駆動され、しかも、ステッピングモータ18cの回動角度がロータリエンコーダによってカウントされるように構成されているため、回動式調整板18a又は直線移動式調整板18を所望の角度又は位置に正確に素早く移動できると共に、その角度又は位置を高精度で知ることができる。さらに、シャッタ機構19の回動式シャッタ板19a又は直線移動式シャッタ板19a′がステッピングモータ19cによって駆動され、しかも、ステッピングモータ19cの回動角度がロータリエンコーダによってカウントされるように構成されているため、回動式シャッタ板19a又は直線移動式シャッタ板19a′を所望の角度又は位置に正確に素早く移動できると共に、その角度又は位置を高精度で知ることができる。
以上説明した実施形態及びその変更態様においては、樹脂硬化用光源装置10の動作をPLC62によって制御しているが、PLC62に代えて他の制御装置を用いて同様の制御を行っても良いことは明らかである。例えば、他のパーソナルコンピュータ及びパルスコントローラを用いても同様の制御を行うことが可能である。
図11は本発明の他の実施形態における樹脂硬化用光源装置の光学的構成を概略的に示している。
本実施形態の樹脂硬化用光源装置は、光学的には、光源15と、この光源15が装着されている集光型の反射鏡16と、反射鏡16によって反射された光の光路17に挿入されている回動式の光強度調整機構18と、光強度調整機構18の下流の光路17に挿入されているシャッタ機構19と、光源15からの光の光強度を検出する光強度センサ20と、被照射体に照射される光スポットを導く光ファイバ束13と、本実施形態ではシャッタ機構19の下流の光路17に挿入されている低帯域阻止フィルタ機構110とを備えている。なお、本実施形態の変更態様においては、光源15及び反射鏡16が一体化され、ユニット化されている。
光源15、反射鏡16、光強度調整機構18、シャッタ機構19、光強度センサ20、及び光ファイバ束13の構成及び作用効果は、図1〜図10の実施形態の場合と全く同様であるため、説明を省略する。
低帯域阻止フィルタ機構110は、図示しない例えばステッピングモータの回転運動をラックアンドピニオンギア等によって直線運動に変換させることにより、低帯域阻止フィルタ111を光路17の集光領域110aの一部領域又は全領域に挿入可能に構成されている。即ち、図11の矢印112に示すように、低帯域阻止フィルタ111を左右にスライド移動して集光領域110aの一部領域又は全領域に挿入するか、この集光領域110aから抜き去るかを制御できるように構成されている。
この低帯域阻止フィルタ111は、UV−C紫外線の一部帯域を減衰可能な光透過率特性を有しており、この低帯域阻止フィルタ111の少なくとも一部を光路17内にスライド挿入することにより、254nm近傍のUV−C紫外線の透過エネルギをその挿入量に応じて適宜減衰させることが可能になる。また、低帯域阻止フィルタ111は、UV硬化に影響する365nmを主波長とするUV−A紫外線については、高い透過率で通過させる特性を有している。
図12は、この低帯域阻止フィルタ111の一例である、溶融石英ガラス板及び蒸着型低域阻止フィルタ(LWPF−300)の光透過率特性を示しており、aは溶融石英ガラス板、bは蒸着型低域阻止フィルタの特性をそれぞれ表している。溶融石英ガラス板は、蒸着型低域阻止フィルタに比して安価であり、また耐熱性も優れている。
タッキネス除去を効果的に行うためには、主なUV硬化波長である365nm近傍の紫外線(UV硬化主波長)と、254nm近傍の紫外線(タッキネス除去波長)と赤外線とを同時に照射することが有効である。しかしながら、化学薬品には異なった波長感度特性を有するものが存在していると考えられるため、UV硬化主波長とタッキネス除去波長との相対的強度の比率を自由に調整できることが望まれる。そのためには、各波長帯を透過又は反射する反射又は透過型帯域通過フィルタ等の光学素子を光路に挿入することが考えられるが、これら反射又は透過型帯域通過フィルタは高価であり装置全体のコストを増大させてしまう。
そこで、本実施形態のごとく、例えば溶融石英ガラス板による低帯域阻止フィルタ111を光路17の一部又は全部に挿入できるように構成すれば、その挿入程度に応じて光ファイバ束13の入射部13aに到達するタッキネス除去波長(254nm近傍の紫外線)のエネルギ量を減ずることができる。一方、低帯域阻止フィルタ111がUV硬化主波長(365nm近傍の紫外線)の波長帯域における透過率は非常に高いため、光路にこの低帯域阻止フィルタ111を挿入した場合でもUV硬化主波長(365nm近傍の紫外線)が受ける減衰は殆どない。つまり、低帯域阻止フィルタ111を光路17に出し入れする簡単な動作だけで光ファイバ束13の入射部13aにおけるUV硬化主波長とタッキネス除去波長付近のエネルギ比率を自由に制御しているのである。
溶融石英ガラス板は、図12に示すように、光透過率特性が蒸着型低域阻止フィルタ(LWPF−300)に近似しているため、加工(蒸着)なしでそのまま使用して低帯域阻止フィルタ111を構成することができる。しかも、安価であるため装置全体のコストを低減できることのみ成らず、熱による損傷も無い。もちろん、コストは増大するが、溶融石英ガラス板に代えて蒸着型低域阻止フィルタ(LWPF−300)を用いても良い。
本実施形態のその他の作用効果は、図1〜図10の実施形態の場合と同様である。
図13は本発明のさらに他の実施形態における樹脂硬化用光源装置の光学的構成を概略的に示している。
本実施形態の樹脂硬化用光源装置は、光学的には、光源15と、この光源15が装着されている集光型の反射鏡16と、反射鏡16によって反射された光の光路17に挿入されている回動式の光強度調整機構18と、光強度調整機構18の下流の光路17に挿入されているシャッタ機構19と、光源15からの光の光強度を検出する光強度センサ20と、被照射体に照射される光スポットを導く光ファイバ束13と、本実施形態ではシャッタ機構19の下流の光路17に挿入されているエネルギ調整用光学素子130とを備えている。なお、本実施形態の変更態様においては、光源15及び反射鏡16が一体化され、ユニット化されている。
光源15、反射鏡16、光強度調整機構18、シャッタ機構19、光強度センサ20、及び光ファイバ束13の構成及び作用効果は、図1〜図10の実施形態の場合と全く同様であるため、説明を省略する。
エネルギ調整用光学素子130は、多層膜型干渉フィルタである透過型フィルタ131を光路17の集光領域130aに挿入し、この透過型フィルタ131をその面が光軸に対して垂直の状態(入射角度0°の状態)となるように、又はその面が光軸に対して+20°傾いた状態131a(入射角度+20°の状態)から−20°傾いた状態131b(入射角度−20°の状態)となるように構成されている。即ち、図13の矢印133に示すように、図示しない例えばステッピングモータのなどにより、透過型フィルタ131の軸132を回転させることにより、透過型フィルタ131の面が光軸に対して0°〜±20°の任意の角度だけ傾いた状態に制御できるように構成されている。透過型フィルタ131の面を光軸に対して0°〜±45°の任意の角度(0°〜±45°未満の任意の角度)だけ傾いた状態に制御するように構成しても良い。
この多層膜型干渉透過フィルタ131は、UV−C紫外線のうちのUV硬化主波長である365nm近傍の波長帯のみを部分的に減衰させる光透過率特性を有すると共に、その入射角度に応じて減衰させる波長帯が変化する特性を有している。例えば、入射角度0°に対して入射角度を±20°とすると、約10nmだけ、光透過率の低くなるピークが移動する。従って、この透過型フィルタ131を光路17内に挿入し、その面の光軸に対する角度を変化させることにより、365nm近傍のUV−C紫外線の透過エネルギを適宜減衰させることが可能になる。
図14は、多層膜型干渉フィルタであるこの透過型フィルタ131の一例である、Super UV Filter365(SUF−365)の光透過率特性を示しており、cは入射角度0°(フィルタ表面が光軸に対して垂直の状態)、dは入射角度±20°(フィルタ表面が光軸に対して±20°の状態)の特性をそれぞれ表している。同図から分かるように、入射角度が0°の場合、200nm〜2500nmの光透過率が95%、380nmの光透過率が80%(なお、この透過率は任意に決定しても良い)となるが、250nm近傍と365nm近傍における強度の比率は変わらない。このように比率が変わらない状態で、入射角度が変化するように透過型フィルタ131を回転させると、分光特性が紫外線領域において同じ特性でずれることで、365nmの透過率が変わり、微調を行うことができる。なお、200nm〜2500nmの光透過率は、光源の電流を変えることで調整可能であり、380nmの透過率は透過型フィルタ131の素材特性(樹脂特性)を変更することによって任意に選択可能である。
タッキネス除去を効果的に行うためには、前にも述べたように、主なUV硬化波長である365nm近傍の紫外線(UV硬化主波長)と、254nm近傍の紫外線(タッキネス除去波長)と赤外線とを同時に照射することが有効である。しかしながら、化学薬品には異なった波長感度特性を有するものが存在していると考えられるため、UV硬化主波長とタッキネス除去波長との相対的強度の比率を自由に調整できることが望まれる。本実施形態では、フィルタ表面の光軸に対する角度(入射角度)を0°〜20°(0°〜±45°未満の任意の角度)の範囲で変化させることにより、タッキネス除去波長である254nm近傍の光透過率は変えずに、UV硬化主波長である365nm近傍の光透過率を調整し、光ファイバ束13の入射部13aにおけるUV硬化主波長とタッキネス除去波長付近のエネルギ比率を自由に制御しているのである。
本実施形態のその他の作用効果は、図1〜図10の実施形態の場合と同様である。
なお、図11及び図12の実施形態における低帯域阻止フィルタ機構の低帯域阻止フィルタに、図13及び図14の実施形態のごとき多層膜型干渉フィルタである透過型フィルタを用い、その入射角度を変化させて254nm近傍のUV−C紫外線の透過エネルギを減衰させるように構成しても良い。