JP6107661B2 - ケイ素系液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents
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Description
しかし、この方式の液晶表示素子においては、液晶に添加する重合性化合物の溶解性が低く、その添加量を増やすと低温時に析出するという問題がある。またその一方で、重合性化合物の添加量を減らすと良好な配向状態、応答速度が得られなくなる。また、液晶中に残留する未反応の重合性化合物は液晶中の不純物となり、液晶表示素子の信頼性を低下させるという問題もある。
一方、従来から用いられているポリイミド等の有機系の液晶配向膜材料と共に、無機系の液晶配向膜材料も知られている。例えば、塗布型の無機系配向膜の材料として、テトラアルコキシシランと、トリアルコキシシランと、アルコール及び蓚酸との反応生成物を含有する配向剤組成物が提案され、液晶表示素子の電極基板上で垂直配向性、耐熱性及び均一性に優れる液晶配向膜を形成することが報告されている。(特許文献3参照。)
〔1〕下記のポリシロキサン(A)を含有する液晶配向剤。
ポリシロキサン(A):式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は下記式(2)の構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
R3Si(OR4)3 (3)
(R3は、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、又はスチリル基で置換された炭素数1〜10のアルキル基である。R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
ポリシロキサン(B):式(5)で表されるアルコキシシランを50〜100モル%含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
Si(OR15)4 (5)
(R15は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
〔3〕ポリシロキサン(B)が、さらに式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、上記〔2〕に記載の液晶配向剤。
〔4〕ポリシロキサン(B)が、さらに式(6)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、上記〔2〕又は〔3〕に記載の液晶配向剤。
R16Si(OR17)3 (6)
(R16は、炭素数1〜5のアルキル基である。R17は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(R13)nSi(OR14)4−n (4)
(式(4)中、R13は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基で置換されていてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。R14は炭素数1〜5のアルキル基である。nは0〜3の整数を表す。)
〔6〕前記式(1)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)に用いられる全アルコキシシラン中、2〜20モル%含まれ、かつ前記式(3)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)に用いられる全アルコキシシラン中、5〜70モル%含まれる上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔7〕前記式(3)で表されるアルコキシシランが、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔8〕さらに、溶媒を含有し、かつ全ポリシロキサンの含有量が、SiO2換算で、0.5〜15重量%である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
〔10〕上記〔9〕に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
〔11〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の液晶配向剤を塗布し、焼成した2枚の基板で液晶を挟持し、電圧を印加した状態で紫外線を照射する液晶表示素子の製造方法。
本発明は、下記のポリシロキサン(A)を含有する液晶配向剤についての発明である。
ポリシロキサン(A):式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は下記式(2)の構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(R3は、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、又はスチリル基で置換された炭素数1〜10のアルキル基である。R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
また、本発明は、ポリシロキサン(A)及び下記のポリシロキサン(B)を含有する液晶配向剤についての発明である。
ポリシロキサン(B):式(5)で表されるアルコキシシランを50〜100モル%含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
Si(OR15)4 (5)
(R15は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
本発明の液晶配向剤に含有されるポリシロキサン(A)は、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は下記式(2)の構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(R3は、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基又はスチリル基で置換された炭素数5〜10のアルキル基である。R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
式(1)で表されるアルコキシシランのR1(以下、特定有機基ともいう)は、上記式(2)で表す構造を表す。
式(2)中、nは0〜4の整数である。好ましくは、0〜2の整数であり、1であるのが特に好ましい。
このような式(1)で表されるアルコキシシランは、公知の合成方法(特開昭61−286393)によって合成することが出来る。以下にその具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
上記の化合物は、シロキサンポリマーとした際の溶媒への溶解性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、プレチルト角特性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。また、炭素数10〜18の長鎖アルキル基を含有するアルコキシシランとの併用も可能である。
上述した特定有機基を有する式(1)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンを得るために用いる全アルコキシシラン中において、良好な液晶配向性を得るため、2モル%以上が好ましい。式(1)で表されるアルコキシシランは、より好ましくは3モル%以上である。また、式(1)で表されるアルコキシシランは、形成される液晶配向膜の充分な硬化特性を得るためには、20モル%以下が好ましい。より好ましくは15モル%以下である。
式(3)で表されるアルコキシシランのR3は、炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3であり、特に好ましくは炭素数1〜2である。
式(3)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンを得るために用いる全アルコキシシラン中において、良好な液晶応答速度を得るため、5モル%以上が好ましい。式(3)で表されるアルコキシシランは、より好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは20モル%以上であるが、70モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。
(R13)nSi(OR14)4−n (4)
(式(4)中、R13は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基で置換されていてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。R14は炭素数1〜5であり、好ましくは1〜3のアルキル基である。nは0〜3であり、好ましくは0〜2の整数を表す。)
式(4)で表されるアルコキシシランのR13は水素原子又は炭素数が1〜10の有機基(以下、第三の有機基ともいう)である。第三の有機基の例としては、脂肪族炭化水素;脂肪族環、芳香族環及びヘテロ環のような環構造;不飽和結合;及び酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等を含んでいてもよく、分岐構造を有していてもよい、炭素数が1〜6の有機基である。加えて、この有機基はハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基などで置換されていてもよい。
このような式(4)においてnが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランがより好ましく、特に、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
本発明では、式(1)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)の製造に使用される全アルコキシシラン中、好ましくは2〜20モル%、特に好ましくは3〜15モル%含まれ、かつ式(3)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)の製造に使用される全アルコキシシラン中、5〜70モル%、特に好ましくは10〜50モル%含まれるのが好ましい。
ポリシロキサン(B)は、式(5)で表されるアルコキシシランを50〜100モル%含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである。
Si(OR15)4 (5)
(R15は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
このような式(5)で表されるアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランがより好ましく、特に、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
ポリシロキサン(B)は、式(5)で表されるアルコキシシランの他に、さらに式(6)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンであっても良い。
R16Si(OR17)3 (6)
(R16は、炭素数1〜5のアルキル基である。R17は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
式(6)で表されるアルコキシシランのR16は、炭素数1〜5のアルキル基である。アルキル基の炭素数は1〜4が好ましく、より好ましくは1〜3である。
式(6)で表されるアルコキシシランのR17は、炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3であり、特に好ましくは炭素数1〜2である。
式(6)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではでない。例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシランである。
特に、式(5)で表されるアルコキシシランの他に、さらに式(6)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン(B)を含有する液晶配向剤は、垂直配向力が高く、望ましい。
ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)を混合した液晶配向剤を製造する場合、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)の混合割合については、同固形分換算にて(A)と(B)の重量比が10:90〜50: 50であることが好ましい。
本発明に用いるポリシロキサンを得る方法は特に限定されない。本発明のポリシロキサン(A)においては、上記した式(1)及び式(3)を必須成分とするアルコキシシランを、有機溶媒中で縮合させて得られる。通常、ポリシロキサンは、このようなアルコキシシランを加水分解・重縮合して、有機溶媒に均一に溶解した溶液として得られる。
ポリシロキサンを加水分解・重縮合する方法として、例えば、アルコキシシランをアルコール又はグリコールなどの溶媒中で加水分解・重縮合する方法が挙げられる。その際、加水分解・重縮合反応は、部分加水分解及び完全加水分解のいずれであってもよい。完全加水分解の場合は、理論上、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5倍モルの水を加えればよいが、通常は0.5倍モルより過剰量の水を加えるのが好ましい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルであるのが好ましい。
ポリシロキサンを得る際に、アルコキシシランを複数種用いる場合は、アルコキシシランをあらかじめ混合した混合物として混合してもよいし、複数種のアルコキシシランを順次混合してもよい。
アルコキシシランを加水分解・重縮合する際に用いられる溶媒(以下、重合溶媒ともいう)は、アルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。また、アルコキシシランが溶解しない場合でも、アルコキシシランの加水分解・重縮合反応の進行とともに溶解するものであればよい。一般的には、アルコキシシランの加水分解・重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、又はアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
上記の方法で得られたポリシロキサンの重合溶液(以下、重合溶液ともいう。)は、原料として仕込んだ全アルコキシシランのケイ素原子をSiO2に換算した濃度(以下、SiO2換算濃度と称す。)を好ましくは20重量%以下、さらには5〜15重量%とすることがより好ましい。この濃度範囲において任意の濃度を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質な溶液を得ることができる。
本発明においては、上記の方法で得られた重合溶液をそのままポリシロキサンの溶液としてもよいし、必要に応じて、上記の方法で得られた溶液を、濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり又は他の溶媒に置換して、ポリシロキサンの溶液としてもよい。
その際、用いる溶媒(以下、添加溶媒ともいう)は、重合溶媒と同じでもよいし、別の溶媒でもよい。この添加溶媒は、ポリシロキサンが均一に溶解している限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
このような添加溶媒の具体例としては、上記した重合溶媒の例として挙げた溶媒のほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類が挙げられる。
これらの溶媒は、液晶配向剤の粘度の調整、又はスピンコート、フレキソ印刷、インクジェット等で液晶配向剤を基板上に塗布する際の塗布性を向上できる。
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ポリシロキサン以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、更に界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、又はフッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、特にコロイド溶液の状態であるものが好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状及びその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001〜0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液を用いて形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが1〜10に調整されていることが好ましい。より好ましくは2〜7である。
市販品のメタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマーの具体例としては、コルコート社製の、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101等のシロキサンオリゴマー又はシロキサンポリマー、関東化学社製のチタニウム−n−ブトキシドテトラマー等のチタノキサンオリゴマーが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、レベリング剤及び界面活性剤等は、公知のものを用いることができ、特に市販品は入手が容易なので好ましい。
また、ポリシロキサンに、上記したその他の成分を混合する方法は、ポリシロキサンと同時でも、後であってもよく、特に限定されない。
本発明の液晶配向剤は上述したポリシロキサン、必要に応じてその他の成分を含有する溶液である。その際、溶媒としては、上述したポリシロキサンの重合溶媒及び添加溶媒からなる群から選ばれる溶媒が用いられる。液晶配向剤におけるポリシロキサンの含有量は、SiO2換算濃度が好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜6重量%である。このようなSiO2換算濃度の範囲であれば、一回の塗布で所望の膜厚を得やすく、充分な溶液のポットライフが得られ易い。
本発明の液晶配向剤を調製する方法は特に限定されない。本発明に用いるポリシロキサン、必要に応じて加えられるその他の成分が均一に混合した状態であればよい。通常、ポリシロキサンは、溶媒中で加水分解・重縮合されるので、ポリシロキサンの溶液をそのまま用いるか、ポリシロキサンの溶液に必要に応じてその他の成分を添加することが簡便である。更に、ポリシロキサンの重合溶液をそのまま用いる方法が最も簡便である。
また、液晶配向剤中におけるポリシロキサンの含有量を調整する際には、上述したポリシロキサンの重合溶媒及び添加溶媒からなる群から選ばれる溶媒を用いることができる。
本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を用いて得られる。例えば、本発明の液晶配向剤を、基板に塗布した後、乾燥・焼成を行うことで得られる硬化膜を、そのまま液晶配向膜として用いることもできる。また、この硬化膜をラビングしたり、偏光又は特定の波長の光等を照射したり、イオンビーム等の処理をしたり、液晶充填後の液晶表示素子に電圧を印加した状態でUVを照射することも可能である。
液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板が好ましい。
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合、又は塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が除去されていればよく、その乾燥手段については特に限定されない。例えば、温度40℃〜150℃、好ましくは60℃〜100℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法が挙げられる。
この硬化膜の厚みは必要に応じて選択することができるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上の場合、液晶表示素子の信頼性が得られ易いので好適である。また、硬化膜の厚みが好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下の場合は、液晶表示素子の消費電力が極端に大きくならないので好適である。
本発明の液晶表示素子は、上記の方法により、基板に液晶配向膜を形成した後、公知の方法で液晶セルを作製して得ることができる。液晶セル作製の一例を挙げると、液晶配向膜が形成された1対の基板を、スペーサーを挟んで、シール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。その際、用いるスペーサーの大きさは1〜30μmであるが、好ましくは2〜10μmである。
液晶を注入する方法は特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後、液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後に封止を行う滴下法などを挙げることができる。
また、TFT型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタ素子が形成されたものが用いられる。
透過型の液晶素子の場合は、上記のような基板を用いることが一般的であるが、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみに光を反射するアルミニウムのような材料を用いることも可能であり、シリコンウエハー等の不透明な基板も用いることが可能である。
マグネチックスターラーを備えた500ml四口フラスコに、金属マグネシウムを1.71g仕込み、容器内を窒素置換し密閉した。THF(脱水)2mlを加えた後、強攪拌させた状態で、20.68gの化合物7をTHF(脱水)155mlに溶かした溶液を1時間かけて滴下した。その後、55℃に昇温し、2時間攪拌させ、金属マグネシウムが消失していることを確認した。次に、氷冷下(内温4℃)、テトラメトキシシランを30.53g一括で加えた後、加熱還流し、3時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を210ml加え、生成した不溶物を減圧濾過にて除去した。さらに、260mlのn-ヘキサンで濾物を洗浄した。ろ液の水相部分を除去し、有機相を純水 200mlで洗浄した。有機相を濃縮乾燥し、粗物 21.65gを得た。これを減圧蒸留し、外温220〜230℃/圧力0.8torrの条件で留出させ、化合物8を5.74g得た(収率25%)。
1H-NMR(400MHz) in CDCl3: 0.90ppm(t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.00-1.09ppm(m, 2H), 1.20-1.34ppm(m, 9H), 1.40-1.52ppm(m, 2H), 1.83-1.91ppm(m, 4H), 2.41-2.51ppm(m, 1H), 3.62ppm(s, 9H), 7.23ppm(d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.56ppm(d, J = 8.2 Hz, 2H)
マグネチックスターラーを備えた500ml四口フラスコに、化合物9を30.00g、炭酸カリウムを25.24g、及びDMFを120g仕込み、室温下、臭化アリルを22.10g滴下した。その後、50℃にて11時間攪拌した。反応液を500gの酢酸エチルで希釈し、有機相を200gの純水で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、これを濾過した後、濾液を濃縮乾燥し、化合物10を34.80g得た(収率100%)。
1H-NMR(400MHz) in CDCl3: 0.90ppm(t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.99-1.09ppm(m, 2H), 1.18-1.46ppm(m, 11H), 1.84-1.89ppm(m, 4H), 2.37-2.44ppm(m, 1H), 4.51ppm(dt, J = 5.4 Hz, 1.6 Hz, 2H), 5.26ppm(dq, J = 10.6 Hz, 1.6 Hz, 1H), 5.40ppm(dq, J = 17.2 Hz, 1.6 Hz, 1H), 6.07ppm(ddd, J = 17.2 Hz, 10.6 Hz, 5.4 Hz, 1H), 6.83ppm(dd, J = 8.8 Hz, 2.9 Hz, 2H), 7.10ppm(dd, J = 8.8 Hz, 2.9 Hz, 2H)
マグネチックスターラーを備えた300ml四口フラスコに、化合物10を20.00g、トルエンを120g仕込み、室温にて攪拌した。次に、karstedt触媒(白金(0)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体 0.1mol/L キシレン溶液) 700μlを添加した後、トリメトキシシランを12.4ml滴下した。室温にて29時間攪拌後、反応液を濃縮乾燥し、粗物を得た。これを減圧蒸留し、外温245℃/圧力0.8torrの条件で留出させ、化合物11を12.15g得た(収率43%)。
1H-NMR(400MHz) in CDCl3: 0.76-0.82ppm(m, 2H), 0.89ppm(t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.98-1.08ppm(m, 2H), 1.18-1.45ppm(m, 11H), 1.84-1.93ppm(m, 6H), 2.36-2.43ppm(m, 1H), 3.58ppm(s, 9H), 3.91ppm(t, J = 6.8 Hz, 2H), 6.81ppm(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.08ppm(d, J = 8.8 Hz, 2H)
本実施例で用いた化合物における略語は以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
C18:オクタデシルトリエトキシシラン
MPMS:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
M8MS:3−メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
HG:2−メチル−2,4−ペンタンジオール(別名:ヘキシレングリコール)
BCS:2−ブトキシエタノール
UPS:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHGを20.5g、BCS6.8g、TEOS22.5g、化合物合成例3で得られた化合物11を4.1g、及びMPMSを19.9g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG10.2g、BCS3.4g、水10.8g及び触媒として蓚酸1.3gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予めUPS含有量92重量%のメタノール溶液0.6g、0.3gのHG及び0.1gのBCSの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、及びBCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体[S1]を得た。
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHGを23.8g、BCS7.9g、TEOS37.1g、及びMTES3.6gを混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG11.9g、BCS4.0g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.4gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予めUPS含有量92重量%のメタノール溶液0.6g、HG0.3g及びBCS0.1gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、BCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体(U1)を得た。
得られた液晶配向剤中間体(S1)と液晶配向剤中間体(U1)を、2:8の重量比率で混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤[K1]を得た。
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHGを17.9g、BCS6.0g、TEOS25.0g、化合物合成例3で得られた化合物11を8.2g、及びM8MSを19.1g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG9.0g、BCS3.0g、水10.8g及び触媒として蓚酸1.1gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して60分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、BCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体[S2]を得た。
得られた液晶配向剤中間体(S2)と合成例1で得られた液晶配向剤中間体(U1)を、2:8の重量比率で混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤[K2]を得た。
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHGを19.4g、BCS6.5g、TEOS22.5g、化合物合成例3で得られた化合物11を8.2g、MPMSを14.9g、及びM8MSを3.2g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG9.7g、BCS3.2g、水10.8g及び触媒として蓚酸1.1gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予めUPS含有量92重量%のメタノール溶液0.6g、HG0.3g及びBCS0.1gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、BCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体(S3)を得た。
得られた液晶配向剤中間体(S3)と合成例1で得られた液晶配向剤中間体(U1)を、2:8の重量比率で混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤[K3]を得た。
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG22.6g、BCS7.5g、TEOS39.2g、及びC18を4.2g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG11.3g、BCS3.8g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.2gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予めUPS含有量92重量%のメタノール溶液0.6g、HG0.3g及びBCS0.1gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、BCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体(S4)を得た。
得られた液晶配向剤中間体(S4)と合成例1で得られた液晶配向剤中間体(U1)を、2:8の重量比率で混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤[L1]を得た。
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG20.4g、BCS6.8g、TEOS22.5g、C18を4.2g、及びMPMSを19.9g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG10.2g、BCS3.4g、水10.8g及び触媒として蓚酸1.3gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分間撹拌した。その後オイルバスを用いて加熱して30分間還流させた後、予めUPS含有量92重量%のメタノール溶液0.6g、HG0.3g及びBCS0.1gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0g、BCS20.0gを混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤中間体(S5)を得た。
得られた液晶配向剤中間体(S5)と合成例1で得られた液晶配向剤中間体(U1)を、2:8の重量比率で混合し、SiO2換算濃度が4重量%の液晶配向剤[L2]を得た。
実施合成例1で得られた液晶配向剤[K1]を、画素サイズが100×300ミクロンで、ライン/スペースがそれぞれ5ミクロンのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートした。80℃のホットプレートで2分間乾燥した後、200℃若しくは220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。実施合成例1で得られた液晶配向処理剤[K1]を、電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで2分間乾燥した後、上記基板同様に200℃若しくは220℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。これらの2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷した。他方の基板の液晶配向膜面を内側にし、張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。液晶MLC−6608(メルク社製商品名)を、空セルに減圧注入法によって、前記液晶を注入した液晶セルを作製した。
これら液晶セルの応答速度特性を、後述する方法により測定した。
その後、この液晶セルに20VのDC電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から超高圧水銀ランプを用いて365nm換算にてUVを20J照射した。その後、再び応答速度特性を測定し、UV照射前後での応答速度を比較した。その結果を表1に示した。
その後、得られた液晶セルを100℃の循環式オーブンで30分のアニールを行った。取り出したセルを、偏光板をクロスニコルにした状態で、顕微鏡観察を行い、液晶の配向乱れであるドメインの状態を観察した。その結果も表1に合わせて示した。
液晶配向剤[K1]を実施合成例2で得られた液晶配向剤[K2]に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定し、アニール後の配向乱れであるドメインを観察した。その結果を表1に示した。
<実施例3>
液晶配向剤[K1]を実施合成例3で得られた液晶配向剤[K3]に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定し、アニール後の配向乱れであるドメインを観察した。その結果を表1に示した。
液晶配向剤[K1]を比較合成例1で得られた液晶配向剤[L1]に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定し、アニール後の配向乱れであるドメインを観察した。その結果を表1に示した。
<比較例2>
液晶配向剤[K1]を比較合成例2で得られた液晶配向剤[L2]に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定し、アニール後の配向乱れであるドメインを観察した。その結果を表1に示した。
[応答速度特性]
液晶セルに、±5VのAC電圧、周波数1kHzの矩形波を印加した際の、液晶パネルの輝度の時間変化をオシロスコープにて取り込んだ。電圧を印加していない時の輝度を0%、±5Vの電圧を印加し、飽和した輝度の値を100%として、輝度が10%〜90%まで変化する時間を立ち上がりの応答速度とした。
なお、2011年11月17日に出願された日本特許出願2011−251377号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (11)
- 下記のポリシロキサン(A)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
ポリシロキサン(A):式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は下記式(2)の構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
R3Si(OR4)3 (3)
(R3は、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、又はスチリル基で置換された炭素数1〜10のアルキル基である。R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。) - さらに、ポリシロキサン(B)を含有する請求項1に記載の液晶配向剤。
ポリシロキサン(B):式(5)で表されるアルコキシシランを50〜100モル%含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサン。
Si(OR15)4 (5)
(R15は炭素数1〜5のアルキル基を表す。) - ポリシロキサン(B)が、さらに式(3)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項2に記載の液晶配向剤。
- ポリシロキサン(B)が、さらに式(6)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項2又は3に記載の液晶配向剤。
R16Si(OR17)3 (6)
(R16は、炭素数1〜5のアルキル基である。R17は炭素数1〜5のアルキル基を表す。) - ポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)の少なくとも一つが、さらに、下記式(4)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを加水分解・重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項2〜4のいずれかに記載の液晶配向剤。
(R13)nSi(OR14)4−n (4)
(式(4)中、R13は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基又はウレイド基で置換されていてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基である。R14は炭素数1〜5のアルキル基である。nは0〜3の整数を表す。) - 前記式(1)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)に用いられる全アルコキシシラン中、2〜20モル%含まれ、かつ前記式(3)で表されるアルコキシシランが、ポリシロキサン(A)に用いられる全アルコキシシラン中、5〜70モル%含まれる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向剤。
- 前記式(3)で表されるアルコキシシランが、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである請求項1〜6のいずれかに記載の液晶配向剤。
- さらに、溶媒を含有し、かつ全ポリシロキサンの含有量が、SiO2換算で、0.5〜15重量%である、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶配向剤。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
- 請求項9に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶配向剤を塗布し、焼成した2枚の基板で液晶を挟持し、電圧を印加した状態で紫外線を照射する液晶表示素子の製造方法。
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