JP6102328B2 - 電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、GPS衛星等の位置情報衛星から送信される衛星信号を受信して時刻情報の取得や位置検出を行う電子機器に関する。
GPS(Global Positioning System)衛星から送信される衛星信号を受信して測位や時刻修正を行う電子時計が知られている(例えば、特許文献1)。
ところで、衛星信号を受信する電子時計では、様々な動作テスト(検査処理)を行うためのテストモードが設定されている。このテストモードは、電子時計の製造工場や、アフターサービスで実行されるものである。このようなテストモード(検査モード)は、通常、所定のボタン操作を行うことで実行していた。
ここで、前記ボタン操作を簡単にすると、ユーザーの意図しない操作で検査処理が実行されてしまうおそれがある。このため、従来は、複雑なボタン操作を行うことで、検査処理を実行していた。
また、前記電子時計では、受信回路における同調回路のパラメーターや、タイムゾーンの設定などの衛星信号の受信処理で参照する値を記憶装置に記憶し、電子時計の種類や、タイムゾーンの設定値が変更された場合などに、前記記憶装置の値を書き換える必要がある。
このため、電子時計において、前記値を書き換える場合には、サービスセンターにおいて、裏蓋を取り外してケース内部を露出させ、ケース内部に配置された回路基板にアクセスして前記記憶装置の値を変更していた。
特開2011−237314号公報
しかしながら、検査処理を実行させるためのボタン操作が複雑であるため、検査工程において検査処理を実行させる場合の操作が煩雑となり、検査の作業効率が低下するという問題があった。
また、記憶装置の値を変更する場合も、裏蓋を取り外す必要があるため、書き換え作業が煩雑となり、作業効率が低下するという問題があった。
本発明の一つの目的は、検査処理実行時の作業効率を向上できる電子機器を提供することにある。
本発明の他の目的は、値の書き換え作業時の作業効率を向上できる電子機器を提供することにある。
本発明の電子機器は、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した衛星信号から緯度、経度、高度を求める位置情報算出部と、前記緯度、経度、高度のうちの少なくとも1つの値が、予め設定された条件に該当する場合に、予め設定されている検査処理を実行する検査処理実行部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、検査処理実行部は、位置情報算出部で算出した緯度、経度、高度の少なくとも1つの値が、設定条件に該当する場合に検査処理を実行する。このため、検査員がボタン操作で検査処理を実行する必要が無く、GPSシミュレーター等で発生する模擬信号を、実行する検査処理に合わせて設定し、受信操作を行うだけでよいので、検査工程を容易に実行できる。このため、前記衛星信号を受信する衛星信号受信装置や電子時計等の電子機器を検査する場合の作業効率を向上できる。
また、ボタン操作で検査処理を実行しないので、ユーザーの意図しないボタン操作で誤って検査処理を実行することも確実に防止できる。
ここで、前記検査処理実行部は、前記高度の値が前記条件に該当する場合に、前記高度の値に応じて、前記検査処理の種類を選択して実行することが好ましい。
この場合、前記高度の値を、例えば、衛星信号を受信可能な地表において最も高度の低い地域である死海の高度約−400mよりも小さく設定することができる。この場合、通常の受信処理で前記高度の値を受信することがないため、誤って検査処理が実行されることを防止できる。さらに、高度の値は、50m単位や100m単位で容易に変更できるため、高度の値に応じて検査処理の種類を容易に選択して実行することができる。
また、前記検査処理実行部は、前記緯度または前記経度の少なくとも一方の値が前記条件に該当する場合に、前記緯度または前記経度の少なくとも一方の値に応じて前記検査処理の種類を選択して実行するものでもよい。
この場合、前記緯度、経度の値を、例えば、北極点や南極点、あるいは太平洋や大西洋の洋上など、通常のユーザーが移動することが殆ど無い場所に設定すれば、通常の受信処理で前記緯度や経度の値を受信することがない。このため、誤って検査処理が実行されることを防止できる。さらに、緯度や経度の値によって、複数の地点を設定できるため、緯度や経度の値に応じて検査処理の種類を容易に選択して実行することができる。
本発明の電子機器は、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した衛星信号から少なくとも緯度、経度を求める位置情報算出部と、前回の受信処理時に前記位置情報算出部で求めた緯度および経度で特定される地点と、今回の受信処理時に前記位置情報算出部で求めた緯度および経度で特定される地点との距離が予め設定された条件に該当し、かつ、前回の受信処理から今回の受信処理までの経過時間が設定された条件に該当する場合に、予め設定されている検査処理を実行する検査処理実行部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、検査処理実行部は、2回の受信処理によって求められる経過時間および移動距離が、設定条件に該当する場合に検査処理を実行する。このため、検査員がボタン操作で検査処理を実行する必要が無く、GPSシミュレーター等で発生する模擬信号を、前記2回の受信処理時にそれぞれ異なる場所(前記移動距離の条件に該当するような位置)を算出するように変更し、測位処理での受信操作を行うだけでよいので、検査工程を容易に実行できる。このため、検査工程における作業効率を向上できる。
また、ボタン操作で検査処理を実行しないので、ユーザーの意図しないボタン操作で誤って検査処理を実行することも確実に防止できる。
この場合、前記距離の値を、前記経過時間内には飛行機でも移動できない距離に設定することができる。この場合、通常の2回の受信処理で前記距離の値となることがないため、さらに、誤って検査処理が実行されることを防止できる。
また、位置情報の算出を行わない受信処理(例えば、衛星信号から時刻情報を取得する測時受信処理)を有する場合は、「前回および今回の受信処理」とは、測時受信処理ではなく、前回位置情報の算出を行った受信処理と、今回位置情報の算出を行った受信処理である。
ここで、前記検査処理実行部は、前記距離に応じて前記検査処理の種類を選択して実行することが好ましい。
前記距離の値は、模擬信号の設定によって容易に変更できるため、距離の値に応じて検査モードの種類を容易に選択して実行することができる。
本発明の電子機器は、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した衛星信号から緯度、経度、高度を求める位置情報算出部と、前記緯度、経度、高度のうちの少なくとも1つの値が、予め設定された条件に該当する場合に、予め設定されている書き換え処理を実行する書き換え処理実行部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、書き換え処理実行部は、例えば、位置情報算出部で算出した位置情報の高度によって書き換え処理を選択し、緯度や経度によって、データの書き換え対象と、書き換えデータとを設定できる。このため、電子機器の製造・販売後に、各種データを書き換える場合に、従来のように、電子機器をサービスセンターに回収して裏蓋をあけて回路基板にアクセスする必要が無く、GPSシミュレーターで模擬信号を発生し、電子機器で受信処理を行うだけでよいので、書き換え工程を容易に実行できる。このため、サービスセンターではなく、時計の販売店の店頭でも容易に書き換え作業を行うことができ、作業効率を向上できる。
また、裏蓋を開閉する必要が無いため、電子機器の防水性等が低下することも防止できる。
ここで、前記書き換え処理実行部は、前記高度の値が前記条件に該当する場合に、前記高度の値に応じて、前記書き換え処理の種類を選択し、前記緯度または経度の一方の値に応じて、書き換え対象を選択し、前記緯度または経度の他方の値に応じて設定される値で、前記書き換え対象の値を書き換えることが好ましい。
この場合、タイムゾーンやサマータイムの設定値を書き換える場合に、書き換え対象の地域などを緯度の値で選択し、設定値を経度の値で書き換えることができるので、1回の受信処理で緯度、経度、高度の3つのデータを受信するだけ、容易に書き換えることができる。従って、書き換え作業の効率の向上できる。
また、前記受信部における同調回路用の設定値、モーター用のパラメーター、タイムゾーン設定値、サマータイム設定値の少なくともいずれか一つが記憶された記憶部を備え、前記書き換え処理実行部は、前記記憶部に記憶された設定値を書き換えることが好ましい。
この場合、記憶部に記憶された受信用やモーター用の様々な設定値を容易に書き換えることができる。
また、受信処理を指示する操作部を備え、前記操作部によって受信処理を指示する操作が行われた場合に、前記受信部が受信処理を実行することが好ましい。
検査処理の実行や、データの書き換え処理の実行を、操作部の操作による受信処理を行うだけでよいので、検査員の作業効率を向上できる。また、この受信操作は、実際の受信操作と同じであり、特別な操作を行う必要が無いため、この点でも作業性を向上できる。
本発明の電子機器は、時刻を計時する計時部と、前記時刻を表示する時刻表示部と、前記受信部の受信処理によって時刻情報の取得に成功した場合に、前記時刻情報によって前記計時部で計時している時刻を修正する時刻修正部と、を備えることを特徴とする。
本発明では、検査処理や、データの書き換え処理を、受信処理を行うだけで実行できるので、検査員の作業効率を向上できる。
本発明の電子時計およびGPSシミュレーターを示す図である。 電子時計の概略断面図である。 電子時計およびGPSシミュレーターの構成を示すブロック図である。 記憶装置の構成を示すブロック図である。 電子時計の手動受信処理を示すフローチャートである。 第2実施形態の手動受信処理を示すフローチャートである。 第3実施形態の手動受信処理を示すフローチャートである。 第4実施形態の電子時計およびGPSシミュレーターの構成を示すブロック図である。 第4実施形態の手動受信処理を示すフローチャートである。 同調回路の構成を示す図である。 ブロック化されたタイムゾーンを説明するための図である。
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子時計1(電子機器)と、GPSシミュレーター800とを示す図であり、図2は電子時計1の概略断面図である。
図1に示すように、電子時計1は、地球の上空を所定の軌道で周回している複数のGPS衛星100のうち、少なくとも1つのGPS衛星100からの衛星信号を受信して時刻情報を取得し、少なくとも3つのGPS衛星100からの衛星信号を受信して位置情報を取得するように構成されている。なお、GPS衛星100は、本発明における位置情報衛星の一例であり、地球の上空に複数存在している。現在は約30個のGPS衛星100が周回している。
[電子時計]
図1から明らかなように、電子時計1は、使用者の手首に装着される腕時計であり、文字板11および指針12(時刻表示部)を備え、時刻を計時して表示する。
文字板11の大部分は、光および1.5GHz帯のマイクロ波が透過し易い非金属の材料(例えば、プラスチックまたはガラス)で形成されている。
指針12は、文字板11の表面側に設けられている。また、指針12は、回転軸13を中心に回転移動する秒針121、分針122および時針123を含み、歯車を介してステップモーターで駆動される。
[操作部の操作]
電子時計1では、リューズ14やボタン15、16を有する操作部70の手動操作に応じた処理が実行される。具体的には、リューズ14が操作されると、その操作に応じて表示時刻を修正する手動修正処理が実行される。また、ボタン15が長時間(例えば3秒以上の時間)にわたって押されると、衛星信号を受信するための手動受信処理(強制受信処理)が実行される。
また、ボタン16が押されると、受信モード(測時モードまたは測位モード)を切り替える切替処理が実行される。ここで測時モードとは、衛星信号から時刻情報を取得するモードである。また、測位モードとは、衛星信号に基づいて測位演算することで位置情報を取得し、衛星信号から時刻情報を取得するモードである。なお、測位モードにおいて、衛星信号から時刻情報を取得しなくてもよい。このボタン16の操作による受信モードの設定は、後述する記憶装置60に記憶される。この際、測位モードに設定された場合には、秒針121が「Fix」の位置(10秒位置)に移動し、測時モードに設定された場合には、秒針121が「Time」の位置(5秒位置)に移動する。このため、利用者は設定された受信モードを容易に確認できる。
なお、後述する定時受信処理時には、ボタン16で設定されたモードに関係なく、受信モードを測時モードまたは測位モードに固定してもよいし、定時受信処理時もボタン16で設定された受信モードで制御してもよい。本実施形態では、後述するように、定時受信処理時は測時モードに固定している。
また、ボタン15が短時間(例えば3秒未満)押されると、前回の受信処理の結果を表示する結果表示処理が行われる。すなわち、測位モードで受信成功の場合には、秒針121が「Fix」(10秒位置)の位置に移動し、測時モードで受信成功の場合には、秒針121が「Time」(5秒位置)の位置に移動する。また、受信失敗の場合には秒針121が「N」の位置(20秒位置)に移動する。
なお、これらの秒針121による指示は受信中も行われる。測位モードで受信中は秒針121が「Fix」の位置(10秒位置)に移動し、測時モードで受信中は秒針121が「Time」の位置(5秒位置)に移動する。また、GPS衛星が捕捉できない場合は秒針121が「N」の位置(20秒位置)に移動する。
[電子時計の構造]
図2に示すように、電子時計1は、ステンレス鋼(SUS)やチタンなどの金属で構成された外装ケース17を備えている。外装ケース17は、略円筒状に形成されている。外装ケース17の表面側の開口には、ベゼル18を介して表面ガラス19が取り付けられている。ベゼル18は、衛星信号の受信性能を向上させるためにセラミックスなどの非金属材料で構成される。外装ケース17の裏面側の開口には、裏蓋20が取り付けられている。外装ケース17の内部には、ムーブメント21、ソーラーセル22、GPSアンテナ23、二次電池24などが配置されている。
ムーブメント21は、指針12を駆動するステップモーターや輪列211を含む駆動機構210を備えて構成されている。ステップモーターは、モーターコイル212、ステーター、ローターなどで構成されており、輪列211や回転軸13を介して指針12を駆動する。
ムーブメント21の裏蓋20側には、回路基板25が配置されている。
回路基板25には、GPSアンテナ23で受信した衛星信号を処理する受信回路30と、前記受信回路30やステップモーターの駆動制御などの各種の制御を行う制御装置40などが取り付けられている。受信回路30や制御装置40は、二次電池24から供給される電力で駆動される。
[ソーラーセル]
ソーラーセル22は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光発電を行う光発電素子である。ソーラーセル22は、発生した電力を出力するための電極を備え、文字板11の裏面側に配置されている。文字板11の大部分は、光が透過し易い材料で形成されているから、ソーラーセル22は、表面ガラス19および文字板11を透過した光を受光して光発電を行うことができる。
ソーラーセル22は、ソーラーパネル支持基板220で支持されている。ソーラーパネル支持基板220は、例えば、BS(真鍮)、SUS(ステンレス鋼)、チタン合金などの金属材料により形成される厚さ寸法が例えば0.1mmの導電性基板である。このことにより、ソーラーパネル支持基板220は、近接して配置されるGPSアンテナ23と同じ電流分布となってGPSアンテナ23の一部として機能する。
このソーラーパネル支持基板220は、外装ケース17に接触しないように組み込まれる。すなわち、ソーラーパネル支持基板220は、外周縁が外装ケース17の内周面と離間して接触することなく配置される。
ソーラーセル22は、導通コイルばね22Aを介して回路基板25に導通され、ソーラーセル22で発電された電流は、導通コイルばね22Aを介して二次電池24に蓄電される。
文字板11およびソーラーセル22は、各々の外周径がダイヤルリング140の内周径に合わせて形成され、各々の外周はダイヤルリング140で隠されているので、ソーラーパネル支持基板220が外部から視認されることはない。また、ソーラーパネル支持基板220の外形寸法は、ソーラーセル22や文字板11よりも大きな寸法とされ、前記GPSアンテナ23の下面位置まで拡大されている。
[GPSアンテナ]
GPSアンテナ23は、矩形断面形状を有するリング状の誘電体基材231を備え、その表面にアンテナ電極232が形成されたリングアンテナである。
誘電体基材231は、電波の波長を短縮させるものであり、例えばアルミナ(εr=8.5)を主成分としたセラミックスや、マイカを成分としたセラミックスである、いわゆるマイカレックス(εr=6.5〜9.5)、ガラス(εr=5.4〜9.9)、ダイヤモンド(εr=5.68)などで構成できる。
アンテナ電極232は、誘電体基材231の表面に、銅や銀などの導電性の金属素子を印刷したり、銀や銅などの導電性の金属板を誘電体基材231の表面に貼り付けたりすることで、誘電体基材231に線状に一体的に形成される。なお、アンテナ電極232は、誘電体基材231の表面に無電解めっきでパターン形成することで形成してもよい。
アンテナ電極232には、接続ピン31が接触されている。この接続ピン31は、略円筒状の接続基部32に挿入されている。接続基部32は、回路基板25上のプリント配線に接続されて立設されている。
接続ピン31および接続基部32は、プリント配線を介して受信回路30に電気的に接続されている。接続基部32は、筒内部に例えばコイルばねなどの付勢部材が設けられており、接続基部32に挿入された接続ピン31をアンテナ電極232側に付勢している。これにより、接続ピン31は、アンテナ電極232の給電点に押圧され、例えば電子時計1に衝撃が加わった際でも、接続ピン31とアンテナ電極232との接続状態が維持される。
本実施形態において、導電性部材製の裏蓋20はGPSアンテナ23のグランド板(反射板)を兼ねている。裏蓋20は、ムーブメント21に設けられた接地端子26に導通している。接地端子26は、ムーブメント21の受信回路30のグランド電位に接続している。このため、裏蓋20は、接地端子26を介して受信回路30のグランド電位に電気的に接続しており、表面ガラス19側から入射する電波をGPSアンテナ23に向かって反射させるグランド板(反射板)として機能する。なお、裏蓋20に接触している導電性部材の外装ケース17もグランド電位となるため、外装ケース17もグランド板として機能する。
さらに、裏蓋20および外装ケース17が金属製なので、グランド板として機能する他に、利用者の腕に装着した場合のGPSアンテナ23への影響を回避できる。つまり、ケースがプラスチックケースだと、近傍にある腕の影響を受けて装着時と非装着時でGPSアンテナ23の共振周波数が変動し、性能差が出て好ましくない。しかし、ケースが金属製なので、そのシールド効果により腕の影響を回避でき、本実施形態では装着時と非装着時とのアンテナ特性に差が殆どなく、安定した受信性能が得られる。ただし、受信感度を上げるために、プラスチックケースを採用することもできる。
[二次電池]
二次電池24は、電子時計1の電源であり、ソーラーセル22で発生した電力を蓄積する。
電子時計1では、ソーラーセル22の二つの電極と二次電池24の二つの電極とを、二本の導通コイルばね22Aによってそれぞれ電気的に接続することが可能であり、接続時には、ソーラーセル22の光発電によって二次電池24が充電される。なお、本実施形態では、二次電池24として、携帯機器に好適なリチウムイオン電池を用いているが、リチウムポリマー電池や他の二次電池を用いてもよいし、二次電池とは異なる蓄電体(例えば容量素子)を用いてもよい。
[衛星信号受信装置の回路構成]
図3は、電子時計1における衛星信号受信装置10の回路構成とGPSシミュレーター800の構成とを示すブロック図である。この図に示すように、衛星信号受信装置10は、受信回路30(受信部)と、制御装置40(制御部)と、計時装置50(計時部)と、記憶装置60(記憶部)と、操作部70とを備えている。
[記憶装置の構成]
記憶装置60は、図4に示すように、時刻データ記憶部600と、検査モード設定記憶部670と、タイムゾーンデータ記憶部680と、定時受信時刻記憶部690とを備えている。
時刻データ記憶部600には、受信時刻データ610と、閏秒更新データ620と、内部時刻データ630と、時計表示用時刻データ640と、タイムゾーンデータ650とが記憶される。
受信時刻データ610には、衛星信号から取得した時刻情報(GPS時刻)が記憶される。この受信時刻データ610は、通常は、計時装置50で時刻を計時するために用いられる基準信号で更新され、衛星信号を受信した際には、取得した時刻情報(GPS時刻)によって修正される。
閏秒更新データ620には、少なくとも現在の閏秒のデータが記憶される。すなわち、衛星信号のサブフレーム4、ページ18には、閏秒に関するデータとして、「現在の閏秒」、「閏秒の更新週」、「閏秒の更新日」、「更新後の閏秒」の各データが含まれる。このうち、本実施形態では、少なくとも「現在の閏秒」のデータを、閏秒更新データ620に記憶している。
内部時刻データ630には、内部時刻情報が記憶される。この内部時刻情報は、受信時刻データ610に記憶されたGPS時刻と、閏秒更新データ620に記憶している「現在の閏秒」とによって更新される。すなわち、内部時刻データ630には、UTC(協定世界時)が記憶されることになる。受信時刻データ610が前記基準信号で更新される際に、この内部時刻情報も更新される。
時計表示用時刻データ640には、前記内部時刻データ630の内部時刻情報に、タイムゾーンデータ650のタイムゾーンデータを加味した時刻データが記憶される。タイムゾーンデータ650は、測位モードで受信した場合に得られる位置情報で設定される。
タイムゾーンデータ記憶部680は、位置情報(緯度、経度)とタイムゾーン(時差情報)とを関連付けて記憶している。このため、測位モードで位置情報を取得した場合、その位置情報(緯度、経度)に基づいてタイムゾーンデータを取得できるようにされている。
例えば、日本標準時は、UTCに対して9時間進めた時刻(UTC+9)であるため、側位モードで取得した位置情報が日本である場合には、制御装置40は、タイムゾーンデータ記憶部680から日本標準時の時差情報(+9時間)を読み出してタイムゾーンデータ650に記憶する。
なお、タイムゾーンデータ記憶部680には、さらに、都市名とタイムゾーンデータとを関連付けて記憶してもよい。この場合、操作部70の操作によって、利用者が現地時刻を知りたい都市名を選択すると、制御装置40は、タイムゾーンデータ記憶部680に対して利用者が設定した都市名を検索し、その都市名に対応するタイムゾーンデータを取得してタイムゾーンデータ650に設定すればよい。
定時受信時刻記憶部690には、定時受信制御部410による定時受信処理を実行する定時受信時刻が記憶される。
検査モード設定記憶部670には、後述する表1に示す検査モード(検査処理)を実行する条件が設定されて記憶されている。
[受信回路]
受信回路30は、二次電池24に蓄積された電力で駆動される負荷であり、制御装置40によって駆動されると、GPSアンテナ23を通じてGPS衛星100から送信される衛星信号を受信する。そして、受信回路30は、衛星信号の受信に成功した場合には、取得した軌道情報やGPS時刻情報などの情報を制御装置40へ送信する。一方、衛星信号の受信に失敗した場合には、受信回路30は、その旨の情報を制御装置40へ送信する。なお、受信回路30の構成は、公知のGPS受信回路の構成と同様であるため、その説明を省略する。
[制御装置]
制御装置40は、電子時計1を制御するCPUで構成されている。制御装置40は、受信回路30を制御して受信処理を実行する受信制御部として、定時受信制御部410と、手動測時受信制御部420と、手動測位受信制御部430を備える。また、制御装置40は、位置情報算出部440と、時刻修正部450と、検査モード実行部460(検査処理実行部)を備える。
[定時受信制御部]
定時受信制御部410は、計時装置50で計時している時刻、具体的には内部時刻データ630が、記憶装置60の定時受信時刻記憶部690に記憶された定時受信時刻になった際に、受信回路30を作動して測時モードでの受信処理を行うものである。
[手動測時受信制御部]
手動測時受信制御部420は、受信モードが測時モードに設定されている状態で、操作部70のボタン15を利用者が意図して数秒(例えば3秒)以上押した場合に、受信回路30を作動して測時モードでの受信処理(手動受信処理、強制受信処理)を行うものである。
なお、受信モードは、前述のとおり、ボタン16を押すことで選択できる。すなわち、ボタン16を押す毎に、受信モードは、測時モードおよび測位モードで切り替わる。
[手動測位受信制御部]
手動測位受信制御部430は、受信モードが測位モードに設定されている状態で、操作部70のボタン15を利用者が意図して数秒(例えば3秒)以上押した場合に、受信回路30を作動して測位モードでの受信処理(手動受信処理、強制受信処理)を行うものである。
[位置情報算出部]
位置情報算出部440は、受信回路30で受信した衛星信号に基づいて、緯度、経度、高度、つまり測位情報を算出して求めるものである。なお、位置情報算出部440が算出する高度は、通常、地球の形を近似した楕円体からの高さを算出して用いているが、これに限らず、海面からの高さである標高、海抜を算出して用いてもよい。
[時刻修正部]
時刻修正部450は、受信した衛星信号から時刻情報を取得し、取得した時刻情報によって計時装置50で計時している受信時刻データ610を修正し、さらに閏秒更新データ620で補正して内部時刻データ630を修正するものである。
[検査モード実行部]
検査モード実行部460は、電子時計1における各種の検査処理(検査モード)を実行するものである。
本実施形態の検査モード実行部460は、受信した衛星信号に基づいて位置情報算出部440で算出された高度の値によって検査モードが選択されて実行される。高度の値に対する検査モードの具体例を表1に示す。
Figure 0006102328
[計時装置]
計時装置50は、ムーブメント21を備え、二次電池24に蓄積された電力で駆動されて計時処理を行う。計時処理では、時刻を計時する一方、計時時刻に応じた時刻(表示時刻)を指針12で指示する。
[GPSシミュレーター]
GPSシミュレーター800は、模擬信号設定部810と、模擬信号発生部820とを備え、アンテナ850からGPS信号の模擬信号を出力する装置である。
模擬信号設定部810は、緯度、経度、高度、日時、衛星数、信号強度等のGPS信号に設定される各パラメーターを設定する。各パラメーターの具体的な設定値は、GPSシミュレーター800に設けたボタンを操作して入力してもよいし、GPSシミュレーター800にパソコン等を接続し、パソコンから設定値を送信して入力してもよい。
模擬信号発生部820は、模擬信号設定部810で設定されたパラメーターに基づいて模擬的なGPS信号(模擬信号)を発生する。すなわち、模擬信号発生部820で発生した模擬信号を、電子時計1の衛星信号受信装置10で受信し、位置情報算出部440で位置情報を算出した際に、算出される位置情報が前記模擬信号設定部810で設定されたパラメーターとなるように、模擬信号の軌道情報などを設定する。
そして、模擬信号発生部820は、アンテナ850を介して前記模擬信号を出力する。
[制御装置の動作]
図5は、第1実施形態における衛星信号受信装置10での手動受信処理SA10を示すフローチャートである。
制御装置40は、まず、操作部70による測位モードでの手動受信操作があったか否かを判定する(SA11)。SA11でNoと判定された場合は、SA11の判定処理を繰り返す。
SA11でYesと判定された場合、制御装置40は、手動測位受信制御部430を作動して測位モードでの受信処理を開始する(SA12)。
SA12での受信処理が開始された後、制御装置40は、衛星信号の受信に成功したか否かを判定する(SA13)。
制御装置40は、SA13でNoと判定した場合(受信に失敗した場合)は、内部時刻やタイムゾーンの修正を行わずに、手動受信処理を終了する。
一方、制御装置40は、衛星信号の受信に成功したと判定した場合(SA13:Yesの場合)には、位置情報算出部440を作動して、取得した衛星信号に基づく位置情報を算出する(SA14)。
位置情報の算出後、制御装置40は、算出した位置情報における高度が−500m未満であるか否かを判定する(SA15)。制御装置40は、SA15でNoと判定した場合、時刻修正部450によって、取得した時刻情報によって内部時刻を修正し、位置情報によってタイムゾーンデータ650を修正する(SA16)。
内部時刻データ630およびタイムゾーンデータ650が修正されると、時計表示用時刻データ640も修正され、指針12の指示も連動して修正される。
一方、制御装置40は、SA15でYesと判定した場合は、検査モードの種類を判断して、検査を実行する(SA17)。
なお、高度が−500m未満の場合に、検査モードを実行するのは以下の理由からである。すなわち、GPS衛星100の衛星信号を受信可能な地点において最も高度が低いのは、高度が−約400m程度である「死海」のエリアである。従って、−500m未満となる現実の地点は存在しないため、受信した衛星信号に基づいて位置情報を算出した際に、高度が−500m未満であった場合には、GPSシミュレーター800で発生した模擬信号を受信していると判断できる。
そこで、検査モード実行部460は、前記表1に示すように、取得した高度に応じた検査を実行する。このため、GPSシミュレーター800の模擬信号設定部810は、実行したい検査モードの種類に応じて、模擬信号の高度の値を設定し、模擬信号発生部820で発生させた模擬信号をアンテナ850から送信し、衛星信号受信装置10で受信させる。これにより、衛星信号受信装置10における制御装置40の検査モード実行部460は、受信した衛星信号によって算出した位置情報の高度に基づく検査モードを実行する。
[運転検査モード]
検査モード実行部460は、前記高度が−500m未満、−599m以上の場合には、電子時計1の運転検査モードを実行する。運転検査モードでは、例えば60℃程度の高温雰囲気内および−10℃程度の低温雰囲気内で、電子時計1の運転が、数時間〜数十時間行われる。運転検査における品質確認(良否判定)は、検査員が、電子時計1のモーターによる時刻表示の止まり、遅れを確認したり、試験後の二次電池24の電圧等を確認することで行われる。
[ソーラーセル検査モード]
検査モード実行部460は、前記高度が−600m未満、−699m以上の場合には、ソーラーセル検査モードを実行する。ソーラーセル検査モードでは、照明下でソーラーセル22が発電し、二次電池24が正常に充電されるかを確認する。例えば、二次電池24が充電される場合には、検査モード実行部460は、秒針121で文字板11のYesの位置(例えば10秒位置)を指し、充電されないのであればNoの位置(例えば20秒位置)を指して検査結果を指示する。検査員は、秒針121の指示結果によってソーラーセル22の良否を判定する。
[感度検査モード]
検査モード実行部460は、前記高度が−700m未満、−799m以上の場合には、感度検査モードを実行する。感度検査モードでは、GPSシミュレーター800で定められた値の模擬信号を発信し、検査モード実行部460は受信した値を秒針121で表示する。検査員は、秒針121で表示された値が、前記定められた値であるかを確認することで、感度検査の良否を判定する。
[歩度検査モード]
検査モード実行部460は、前記高度が−800m未満、−899m以上の場合には、歩度検査モードを実行する。歩度検査モードは、電子時計1の精度が月差±10秒に収まるかどうか確認するものである。検査モード実行部460は、秒針121のモーターのみを1秒毎に運針させて、モーターの電磁パルスを測定機にて測定する。検査員は、前記測定機で測定された電磁パルスの間隔を測定して1秒の精度を確認する。
[デバイス検査モード]
検査モード実行部460は、前記高度が−900m未満、−999m以上の場合には、デバイス検査モードを実行する。デバイス検査モードでは、検査モード実行部460は、記憶装置60に正常な値が書き込まれているか確認する。例えば正常な値が書き込まれているのであれば、検査モード実行部460は秒針121で文字板11のYesの位置(例えば10秒位置)を指し、正常な値が書き込まれていないのであればNoの位置(例えば20秒位置)を指して検査結果を指示する。
制御装置40は、前記検査モードを実行して検査結果を表示すると、一定時間(例えば1〜2分程度)経過後に検査モードを終了する(SA18)。そして、制御装置40は、手動受信処理SA10を終了し、通常の時刻表示を行う時計モードに戻る。なお、検査結果表示中に、検査員が所定のボタン操作を行った場合も、時計モードに戻るようにしてもよい。
なお、GPSシミュレーター800の模擬信号発生部820は、運転検査モードを実行させる場合は算出した位置情報の高度が−550mとなる模擬信号を発生し、ソーラーセル検査モードを実行させる場合は前記高度が−650mの模擬信号を発生し、感度検査モードを実行させる場合は前記高度が−750mの模擬信号を発生し、歩度検査モードを実行させる場合は前記高度が−850mの模擬信号を発生し、デバイス検査モードを実行させる場合は前記高度が−950mの模擬信号を発生している。
また、GPSシミュレーター800は、前述のとおり、衛星信号受信装置10で模擬信号を受信し、位置情報算出部440で位置情報を算出した際に、高度、緯度、経度などが設定した値となるように、4つの衛星信号の軌道情報などをシミュレーションして模擬信号を発生させている。このため、位置情報算出部440では、模擬信号を受信して位置情報を算出した場合に、高度に関しては約10m程度の誤差が生じる可能性がある。
検査モード実行部460は、この誤差を考慮して、前述のとおり、検査モードを判定する条件として、約100mの範囲を設定して判断している。このため、検査モード実行部460は、GPSシミュレーター800で設定された高度に対応する検査モードを正しく判断でき、設定された検査モードを確実に実行できる。
〔第1実施形態の作用効果〕
このような第1実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
(1)検査モード実行部460は、位置情報算出部440で算出した位置情報の高度が、特定の値である場合に検査モードを実行する。このため、検査員がボタン操作で検査モードを実行する必要が無く、GPSシミュレーター800で発生する模擬信号を、実行する検査モードに合わせて設定し、操作部70で測位モードでの受信操作を行うだけでよいので、検査工程を容易に実行できる。このため、工場の製造ラインにおける検査工程における作業効率を向上できる。
また、ボタン操作で検査モードを実行しないので、ユーザーの意図しないボタン操作で誤って検査モードを実行することも確実に防止できる。
(2)検査モードの実行を指示する特定の高度を、現実には受信することができない−500m未満に設定したので、実際に屋外でGPS衛星100の衛星信号を受信した場合に、検査モードが実行されることがない。すなわち、GPSシミュレーター800による模擬信号を受信した場合のみ検査モードを実行することができる。
(3)前記高度の値によって各種の検査モードを選択して実行するため、検査員は、測位モードでの受信操作を行うだけで、様々な検査モードを実行できる。この点でも、検査工程の作業効率を向上できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、手動受信処理以外は、前記第1実施形態と同様であるから、その説明は省略する。
図6は、第2実施形態における制御装置40での手動受信処理SB10を示すフローチャートである。
制御装置40は、図6に示すように、SB11〜SB18の処理を行う。ここで、SB11〜SB14,SB16,SB18の処理は、第1実施形態におけるSA11〜SA14,SA16,SA18と同じ処理であるため、説明を省略する。
第1実施形態では、SA15において、算出した位置情報の高度の値によって検査モードを実行するかを判定していた。
これに対し、第2実施形態では、制御装置40は、算出した位置情報のうち、高度ではなく、緯度または経度で検査モードを特定して実行する点が相違する。
すなわち、SB13でYesと判定した場合、制御装置40は、位置情報算出部440で算出した位置情報における緯度または経度が予め設定された検査モード用の条件に該当するか否かを判定する(SB15)。
制御装置40は、SB15でNoと判定した場合、第1実施形態と同様に、時刻修正部450によって、取得した時刻情報によって内部時刻を修正し、位置情報によってタイムゾーンデータ650を修正する(SB16)。内部時刻データ630およびタイムゾーンデータ650が修正されると、時計表示用時刻データ640も修正され、指針12の指示も連動して修正される。
一方、制御装置40は、SB15でYesと判定した場合は、検査モードの種類を判断して、検査を実行する(SB17)。
ここで、検査モード用の緯度、経度とは、実際に存在する地球上の場所であるが、一般的なユーザーがその場所にいる可能性が殆ど無い場所(例えば、北極点や南極点近辺や、太平洋や大西洋の洋上)を示すように設定している。これにより、位置情報の緯度、経度を取得した際に、通常の測位モードでの受信を行っているのか、あるいは、GPSシミュレーター800による検査モードの実行が指示されているのかを判断できる。
[検査モードの判断および実行]
SB17での具体的な判断および実行方法について、表2を参照に説明する。
制御装置40の検査モード実行部460は、SB14で算出した位置情報の緯度、経度が、検査モード設定記憶部670に記憶される表2のいずれかの条件に該当する場合に、対応する検査モードを実行する。なお、表2の各検査モードは、電子時計1の記憶装置60に記録されている受信に関する情報を表示する処理を行う。
Figure 0006102328
[自動受信履歴の表示モード]
表2に示すように、検査モード実行部460は、算出した緯度、経度が北緯89.9〜90.0度、東経0〜0.1度の範囲内である場合、つまり北極点近辺の位置情報である場合には、自動受信履歴の記録を表示する検査モードを実行する。なお、北極点の近辺であるかは緯度のみで判定できるため、緯度のみで上記検査モードを判定してもよい。
ここで、自動受信履歴とは以下のものである。衛星信号受信装置10は、予め決められた時刻に自動的に受信を開始する定時受信や、ソーラーセル22の発電電圧が閾値以上となった場合つまり所定照度以上の光を受光して電子時計1が屋外に配置されていることを検出した場合に自動的に受信を開始する光自動受信などの自動受信処理を行うことができる。そして、衛星信号受信装置10は、自動受信を開始した時間と受信結果を記憶装置60に記録する。
検査モード実行部460は、自動受信履歴の記録を表示する検査モードを実行すると、記憶装置60に記録された自動受信の開始時刻および受信結果の履歴を表示する。
例えば、検査モード実行部460は、最新の受信結果(受信の成功または失敗)を秒針121で表示し、その受信開始時刻を時針123および分針122で表示する。その前の受信履歴を表示するには、ボタン15、16の一方を押す。また、現在表示中の履歴よりも後の受信履歴を表示するには、ボタン15、16の他方を押す。
なお、デジタル表示部を備えた電子時計1であれば、複数の受信履歴を一度に表示することができる。さらに、スピーカーやヘッドフォン等の音声出力部を備える場合には、受信履歴を音声によって出力してもよい。
[受信の成功率の表示モード]
検査モード実行部460は、算出した緯度、経度が南緯89.9〜90.0度、西経0〜0.1度の範囲内である場合、つまり南極点近辺の位置情報である場合には、受信の成功率の記録を表示する検査モードを実行する。なお、南極点の近辺であるかは緯度のみで判定できるため、緯度のみで上記検査モードを判定してもよい。
ここで、受信の成功率とは、成功数を受信回数で除算して求められた値である。検査モード実行部460は、受信の成功率の記録を表示する検査モードを実行すると、記憶装置60に記憶された成功数と受信回数とで受信の成功率を算出し、前記成功率の数値を、指針12やデジタル表示部などで表示したり、音声出力部で出力する。
[受信レベルの表示モード]
検査モード実行部460は、算出した緯度、経度が北緯0.0〜0.1度、西経173.0〜173.1度の範囲内である場合、つまり赤道付近の太平洋上の位置情報である場合には、受信レベルの記録を表示する検査モードを実行する。
ここで、受信レベルとは、受信処理ごとに記録されたGPS衛星100の信号強度である。検査モード実行部460は、受信レベルを表示する検査モードを実行すると、記憶装置60に記憶された信号強度の値を、指針12やデジタル表示部などで表示したり、音声出力部で出力する。
[閏秒の表示モード]
検査モード実行部460は、算出した緯度、経度が南緯0.0〜0.1度、西経25.0〜25.1度の範囲内である場合、つまり赤道付近の大西洋上の位置情報である場合には、閏秒の記録を表示する検査モードを実行する。
すなわち、衛星信号受信装置10は、定期的に閏秒情報を受信して閏秒更新データ620に記憶し、常に最新の閏秒を用いてGPS時刻をUTCに変換する仕組みになっている。検査モード実行部460は、閏秒を表示する検査モードを実行すると、記憶装置60の閏秒更新データ620に記録されている現在の閏秒を、指針12やデジタル表示部などで表示したり、音声出力部で出力する。
〔第2実施形態の作用効果〕
このような第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
(1)検査モード実行部460は、位置情報算出部440で算出した位置情報の緯度、経度が特定の値である場合に検査モードを実行する。このため、検査員がボタン操作で検査モードを実行する必要が無く、GPSシミュレーター800で発生する模擬信号を、実行する検査モードに合わせて設定し、操作部70で測位モードでの受信操作を行うだけでよいので、検査工程を容易に実行できる。このため、工場の製造ラインにおける検査工程における作業効率を向上できる。
また、ボタン操作で検査モードを実行しないので、ユーザーの意図しないボタン操作で誤って検査モードを実行することも確実に防止できる。
(2)検査モードの実行を指示する特定の緯度、経度を、一般的なユーザーでは現実には受信することができない北極点、南極点近辺や、太平洋、大西洋の洋上の位置に設定したので、実際に屋外でGPS衛星100の衛星信号を受信した場合に、検査モードが実行されることは殆どない。すなわち、GPSシミュレーター800による模擬信号を受信した場合のみ検査モードを実行することができる。
(3)電子時計1における受信履歴の記録を表示、出力できるので、検査員は、ユーザーがどのような状態で電子時計1を使っているかを判定でき、適切に対応できる。
例えば、検査員は、受信成功率が低い場合には、できるだけ空が開けた場所で受信すると受信成功率が上がり、常に正確な時間を表示できることを、ユーザーに対してアドバイスできる。また、検査員は、自動受信履歴などを確認することで、プログラム(CPUのソフトウェア)が正常に動いているかを判定できる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。なお、手動受信処理以外は、前記第1実施形態と同様であるから、その説明は省略する。
図7は、第3実施形態における制御装置40での手動受信処理SC10を示すフローチャートである。
制御装置40は、図7に示すように、SC11〜SC18の処理を行う。ここで、SC11〜SC14,SC16,SC18の処理は、第1実施形態のSA11〜SA14,SA16、SA18や第2実施形態のSB11〜SB14,SB16,SB18と同じ処理であるため、説明を省略する。
前記第1実施形態のSA15では、算出した位置情報の高度の値によって検査モードの実行を判定し、第2実施形態のSB15では、算出した位置情報の緯度、経度の値によって検査モードの実行を判定していた。
これに対し、第3実施形態の制御装置40は、SC14で位置情報を算出すると、前回の位置情報の受信時からの経過時間と、前回の受信時の位置情報から今回算出した位置情報までの移動距離とが、検査モード用の条件に該当するか否かを判定する(SC15)。
検査モードの判定用の経過時間および移動距離は、前記経過時間内に、一般的に最も早い移動手段である飛行機によっても移動できない距離であると判定した場合に、検査モードを実行するように構成されている。
これにより、場所の位置情報を取得した際に、通常の測位モードでの受信を行っているのか、あるいは、GPSシミュレーター800による検査モードの実行が指示されているのかを判断できる。
具体的には、SC15では、検査モード設定記憶部670に記憶される表3に示すように、前回の受信時から今回の受信時までの経過時間が1時間以内であり、かつ、前回の受信時に算出した位置から今回の受信で算出した位置までの移動距離が2000〜5999kmの範囲であれば、検査モード用の条件に該当し、SC15でYesと判定する。一方、上記条件に該当しない場合、SC15でNoと判定する。
Figure 0006102328
制御装置40は、SC15でNoと判定した場合、第1、2実施形態と同様に、時刻修正部450によって、取得した時刻情報によって内部時刻を修正し、位置情報によってタイムゾーンデータ650を修正する(SC16)。内部時刻データ630およびタイムゾーンデータ650が修正されると、時計表示用時刻データ640も修正され、指針12の指示も連動して修正される。
一方、制御装置40は、SC15でYesと判定した場合は、検査モードの種類を判断して、検査を実行する(SC17)。
[検査モードの判断および実行]
SC17での具体的な判断および実行方法について、表3を参照に説明する。
制御装置40の検査モード実行部460は、SC15でYesと判定されると、表3に示すように、経過時間および移動距離に対応する検査モードを実行する。各検査モードは、第2実施形態と同じため、その内容の説明は省略する。
検査モード実行部460は、経過時間が1時間以内であり、かつ、移動距離が2000〜2999kmの範囲である場合には、自動受信履歴の記録を表示する検査モードを実行する。
検査モード実行部460は、経過時間が1時間以内であり、かつ、移動距離が3000〜3999kmの範囲である場合には、受信の成功率の記録を表示する検査モードを実行する。
検査モード実行部460は、経過時間が1時間以内であり、かつ、移動距離が4000〜4999kmの範囲である場合には、受信レベルの記録を表示する検査モードを実行する。
検査モード実行部460は、経過時間が1時間以内であり、かつ、移動距離が4000〜4999kmの範囲である場合には、閏秒の記録を表示する検査モードを実行する。
〔第3実施形態の作用効果〕
このような第3実施形態によれば、前記第1、2実施形態と同様の作用効果が得られる。
(1)検査モード実行部460は、測位モードでの2回の受信処理によって求められる経過時間および移動距離が、設定条件に該当する場合に検査モードを実行する。このため、検査員がボタン操作で検査モードを実行する必要が無く、GPSシミュレーター800の模擬信号を、2回の受信処理時に異なる場所(前記移動距離の条件に該当するような位置)を算出するように変更し、操作部70で測位モードでの受信操作を行うだけでよいので、検査工程を容易に実行できる。このため、工場の製造ラインにおける検査工程における作業効率を向上できる。
また、ボタン操作で検査モードを実行しないので、ユーザーの意図しないボタン操作で誤って検査モードを実行することも確実に防止できる。
(2)また、本実施形態では、受信操作を2回行う必要はあるが、検査モードの実行を指示する特定の移動距離および経過時間は、飛行機などの移動手段では実現不可能な値を検査モード用の条件としたので、実際に屋外でGPS衛星100の衛星信号を受信した場合に、検査モードが実行されることがない。従って、GPSシミュレーター800による模擬信号を受信した場合のみ検査モードを実行することができる。
(3)電子時計1における受信履歴の記録を表示、出力できるので、検査員は、ユーザーがどのような状態で電子時計1を使っているかを判定でき、適切に対応できる。従って、前記第2実施形態と同じく、検査員は、ユーザーに対して適切な使い方をアドバイスしたり、プログラムが正常に動いているかを判定できる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の電子時計の構造は、前記第1実施形態と同様であるから、その説明は省略する。
図8は、第4実施形態における衛星信号受信装置10Dの回路構成を示すブロック図であり、図9は制御装置40での手動受信処理SC10を示すフローチャートである。
衛星信号受信装置10Dは、制御装置40に、検査モード実行部460の代わりに書き換えモード実行部470(書き換え処理実行部)が設けられている点のみが前記各実施形態と相違する。このため、書き換えモード実行部470以外の構成の説明は省略する。
制御装置40は、図9に示すように、SD11〜SD17の処理を行う。ここで、SD11〜SD14,SD16の処理は、第1実施形態のSA11〜SA14,SA16などと同じ処理であるため、説明を省略する。
前記各実施形態では、受信した衛星信号に基づいて算出した位置情報の緯度、経度、高度の少なくともいずれかによって検査モードの実行を判定していた。
これに対し、第4実施形態の制御装置40は、検査モードを実行するものではなく、書き換えモード実行部470によって、電子時計1の記憶装置60に記憶された各種の設定値(データ)の書き換えを実行するものである。
SD13でYesと判定した場合、制御装置40は、算出した位置情報における高度が−500m未満であるか否かを判定する(SD15)。制御装置40は、SD15でNoと判定した場合、時刻修正部450によって、取得した時刻情報によって内部時刻を修正し、位置情報によってタイムゾーンデータ650を修正する(SD16)。内部時刻データ630およびタイムゾーンデータ650が修正されると、時計表示用時刻データ640も修正され、指針12の指示も連動して修正される。
一方、制御装置40は、SD15でYesと判定した場合は、書き換え対象を選択し、緯度、経度の値でデータを設定して書き換えを実行する(SD17)。
ここで、書き換えモード実行部470は、検査モード設定記憶部670に記憶される表4に示すように、取得した高度に応じて書き換え対象を選択する。すなわち、書き換えモード実行部470は、前記高度が−500m未満、−599m以上の場合には、受信回路30の同調コンデンサーの設定値を書き換え対象とする。
また、書き換えモード実行部470は、前記高度が−600m未満、−699m以上の場合には、モーターパラメーターを書き換え対象とする。
さらに、書き換えモード実行部470は、前記高度が−700m未満、−799m以上の場合には、タイムゾーンの設定値を書き換え対象とする。
また、書き換えモード実行部470は、前記高度が−800m未満、−899m以上の場合には、サマータイムの設定値を書き換え対象とする。
Figure 0006102328
[同調コンデンサー設定値の書き換え]
書き換えモード実行部470は、高度が−500m未満、−599m以上の場合、同調コンデンサーの設定値を経度の値で書き換える。すなわち、図10に示すように、GPSアンテナ23には、3つの同調コンデンサー235、236、237およびスイッチSW1、SW2、SW3、抵抗238を備えた同調回路が接続されている。
電子時計1では、様々なデザインの時計を製造する際のコストを削減するため、衛星信号受信装置10が組み込まれるムーブメントは共通化している。すなわち、内部のムーブメントを作成し、外装ケース17は時計のデザインに応じて形状や材質を変更している。この際、GPSアンテナ23で同調する周波数は、外装ケース17の材質などによって異なる。
そこで、本実施形態では、容量の異なる3つの同調コンデンサー235、236、237を用意し、表5に示すように、各スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフを選択することで、8種類の周波数に同調できるように設定している。制御装置40の書き換えモード実行部470は、スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフの組み合わせを、表5に示すように、算出した経度の値で設定して記憶装置60に記憶される各スイッチSW1、SW2、SW3の設定値を書き換える。
電子時計1の制御装置40をリセットして起動する際に、制御装置40は記憶装置60に記憶された各スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフの設定値を読み出して、各スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフを設定する。
また、制御装置40は受信処理を行う際に、最初に記憶装置60に記憶された各スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフを読み出して、各スイッチSW1、SW2、SW3のオン、オフを設定して、受信を開始しても良い。
Figure 0006102328
[モーターパラメーターの書き換え]
電子時計1では、デザインのために、様々な種類の指針12を取り付ける。取り付ける指針12によって、回転モーメントが異なるため、モーターの駆動トルクの設定を変更する必要がある。
そこで、書き換えモード実行部470は、高度が−600m未満、−699m以上の場合、モーターパラメーターの設定値を経度の値で書き換える。すなわち、表6に示すように、細い針、太い針、長い針、特殊針の4種類の指針12が用意されている場合、モーターパラメーターを設定1〜設定4の4種類の設定値に切り替えるように設定している。書き換えモード実行部470は、この4種類の設定値を、算出した経度の値で設定して記憶装置60に記憶されるモーターパラメーターの値を書き換える。
電子時計1の制御装置40をリセットして起動する際に、制御装置40は記憶装置60に記憶されたモーターパラメーターを読み出して、読み出したパラメーターでモーターを駆動する。
Figure 0006102328
[ブロックのタイムゾーン設定値の書き換え]
電子時計1は、衛星信号受信装置10によって現在地を測位し、現在地に対応するタイムゾーン設定値(時差データ)をタイムゾーンデータ記憶部680から読み出して、タイムゾーンデータ650に設定することで、測位場所の時刻を表示できるようにしている。
ここで、タイムゾーンデータ記憶部680には、図11に示すように、各地域を緯度および経度でブロックに区画し、ブロック毎にタイムゾーン設定値を設定する場合がある。このようにブロック毎にタイムゾーン設定値を設定することで、記憶容量を抑えつつ、全世界のタイムゾーンを設定できる利点がある。
電子時計1が製造、販売された後に、各ブロックのタイムゾーンの設定値が変更された場合、これまでは電子時計1の裏蓋20を外して、回路基板25にアクセスし、タイムゾーンデータ記憶部680のデータを書き換える必要があった。
これに対し、本実施形態では、高度および緯度、経度の値によって、裏蓋20を外すことなくデータを書き換えることができる。
すなわち、書き換えモード実行部470は、高度が−700m未満、−799m以上の場合、緯度の値で書き換え対象のブロックを選択し、経度の値で選択された領域のタイムゾーン設定値を書き換える。
すなわち、表7に示すように、緯度の値によって、区分されたブロック(地域)を選択する。表7では、緯度が北緯69.9度以上、70.0度未満の範囲の場合、書き換えモード実行部470は、図10に示すブロックのうち、左上の地域1を選択する。また、緯度が北緯70.0以上、70.1度未満の範囲の場合、書き換えモード実行部470は、地域1の右側に位置する地域2を選択する。
また、書き換えモード実行部470は、地域1,2のタイムゾーンの設定値を、受信して算出した経度の値で設定して書き換える。例えば、緯度で地域1が選択され、経度が東経3.5〜3.9度の範囲の場合、現在の+3.0時間の設定値を+3.5時間に書き換える。
なお、表7の経度と設定値との対応表は、各地域によって設定値の数値や数が変わるため、地域毎に用意してタイムゾーンデータ記憶部680に記憶しておけばよい。
Figure 0006102328
[代表都市のタイムゾーン設定値の書き換え]
タイムゾーンを書き換える場合、共通の地方標準時を用いる地域の代表都市を選択して設定する場合がある。このため、書き換えモード実行部470は、高度が−700m未満、−799m以上の場合、緯度の値で書き換え対象の都市を選択し、経度の値で選択された都市のタイムゾーン設定値を書き換えてもよい。
すなわち、表8に示すように、緯度の値によって、タイムゾーンを設定する都市を選択する。表8では、緯度が北緯89.9〜90.0度の範囲であるため、書き換えモード実行部470は、都市として東京を選択する。
また、書き換えモード実行部470は、選択した都市のタイムゾーンの設定値を、受信して算出した経度の値で設定して書き換える。例えば、東経9.5〜9.9度の範囲の場合、現在の+9.0時間の設定値を+9.5時間に書き換える。
なお、表8の経度と設定値との対応表は、各都市によって設定値の数値が変わるため、都市毎に用意してタイムゾーンデータ記憶部680に記憶しておけばよい。
Figure 0006102328
[サマータイム設定値の書き換え]
サマータイムの設定値を書き換える場合、書き換え対象の地域を選択して設定する。このため、書き換えモード実行部470は、高度が−800m未満、−899m以上の場合、緯度の値で書き換え対象の地域を選択し、経度の値で選択された地域のサマータイムの有無やその時間を書き換える。
すなわち、表9に示すように、書き換えモード実行部470は、緯度の値によって、サマータイムを設定する地域を選択する。表9では、緯度が北緯89.9〜90.0度の範囲であるため、書き換えモード実行部470は、選択対象の地域として日本を選択する。
また、書き換えモード実行部470は、選択した地域のサマータイムの設定値を、受信して算出した経度の値で設定して書き換える。例えば、書き換えモード実行部470は、東経7.5〜7.9度の範囲の場合は「サマータイムなし」に設定し、東経8.0〜8.4度の範囲の場合は「サマータイムあり」とし、その時間は「+1時間」とし、サマータイムの期間は「現地時間基準で、3月第2日曜日の午前2時から11月第1日曜日の午前2時」とする。
なお、表9の経度と設定値との対応表は、各地域によって内容が変わるため、地域毎に用意してタイムゾーンデータ記憶部680に記憶しておけばよい。
Figure 0006102328
〔第4実施形態の作用効果〕
このような第4実施形態によれば、前記第1〜3実施形態と同様に、以下の作用効果が得られる。
(1)書き換えモード実行部470は、位置情報算出部440で算出した位置情報の高度によって書き換えモード(書き換え処理)を選択し、緯度や経度によって、データの書き換え対象と、書き換えデータとを設定している。
このため、電子時計1の製造・販売後に、各種データを書き換える場合に、従来のように、電子時計1をサービスセンターに回収して裏蓋20をあけて回路基板25にアクセスする必要が無く、GPSシミュレーター800で模擬信号を発生し、電子時計1で手動受信処理を行うだけでよいので、書き換え工程を容易に実行できる。このため、サービスセンターではなく、時計の販売店の店頭でも容易に書き換え作業を行うことができ、作業効率を向上できる。なお、データ書き換えのために、GPSシミュレーター800が必要となるが、GPSシミュレーター800自体は一般に販売している汎用品を利用できるため、コストも低下できる。
また、裏蓋20を開閉する必要が無いため、電子時計1の防水性等が低下することも防止できる。
(2)書き換えモードの実行を指示する特定の高度を、現実には受信することができない−500m未満に設定したので、実際に屋外でGPS衛星100の衛星信号を受信した場合に、書き換えモードが実行されることがない。すなわち、GPSシミュレーター800による模擬信号を受信した場合のみ検査モードを実行することができる。
(3)タイムゾーンやサマータイムの設定値を書き換える場合に、書き換え対象の地域などを緯度の値で選択し、設定値を経度の値で書き換えることができるので、1回の受信処理で緯度、経度、高度の3つのデータを受信するだけ、容易に書き換えることができる。従って、書き換え作業の効率の向上できる。
[他の実施形態]
なお、本発明は前記各実施形態の構成に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、前記第1〜4実施形態では、手動受信処理によって検査モードあるいは書き換えモードを実行していたが、手動受信処理に限らず、緯度・経度・高度等の位置情報が算出できる受信処理を行うものであればよい。
また、検査モードとして、前記第2,3実施形態では、受信に関する情報を表示する処理を行うものとしたが、これに限らず、前記第1実施形態の検査モードを行うようにしてもよい。また、前記第1実施形態において、前記第2、3実施形態の検査モードを行うようにしてもよい。また、他の検査モードを行うようにしてもよい。
また、例えば、前記第1〜3実施形態では、手動受信処理によって1つの検査モードを実行していたが、複数の検査モードを継続して実行するように設定してもよい。すなわち、手動受信処理によって1つの検査モードを実行して終了したら、処理を一時停止する。そして、検査員が、例えば、ボタン15を1回押すと、次の検査モードを実行する。この検査モードが終了したら、処理を一時停止し、さらにボタン15が押されると、次の検査モードを実行する。以上の処理を繰り返し、設定されているすべての検査モードが終了するか、途中で検査モードを解除するためのボタン16が押されると、検査モードを終了し、時刻を計時して表示する時計モードに移行してもよい。
さらに、1つの検査モードが終了した際に一時停止せずに、一連の検査モードを連続して実行しても良い。
また、前記第4実施形態では、衛星信号受信装置10で受信した衛星信号に基づいて位置情報を算出した際に、高度の値で書き換え対象を選択し、緯度が予め設定されている条件に該当するかで、書き換えデータを選択していた。これに対し、1回目の手動受信で得られた高度の値で書き換えモードに入り、書き換え対象を選択した後、GPSシミュレーター800を緯度や経度の具体的な数値を送信するモードに切り替え、衛星信号受信装置10で再度、手動受信処理を行って、位置情報算出部440で位置情報を算出せずに、前記緯度や経度の数値を直接受信し、その値で直接データを書き換えてもよい。
例えば、ブロック毎に決められたタイムゾーンを書き換える場合に、緯度でブロックの地域を選択し、経度で直接タイムゾーンの設定値を設定してもよい。例えば、タイムゾーンがUTCに対して+4時間の場合、東経4度を設定して送信し、+5時間の場合、東経5度を設定して送信する。また、タイムゾーンがUTCに対して−3時間の場合、西経3度を設定して送信し、−7時間の場合、西経7度を設定して送信する。すなわち、東経および西経によって、タイムゾーンの時差のプラスマイナスを指定し、経度の数値で時間を指定すれば良い。
さらに、1回目の手動受信で得られた高度の値で書き換えモードに入り、書き換え対象を選択した後、GPSシミュレーター800を緯度、経度、高度の具体的な数値を送信するモードに切り替え、衛星信号受信装置10で再度、手動受信処理を行って、タイムゾーンを書き換える都市を、その都市の緯度および経度で直接選択し、前記高度の値でタイムゾーンの時差を直接書き換えても良い。
例えば、北緯35度41分、東経139度45分で東京を選択し、高度+9.5mで東京の時差をUTCに対して+9.5時間に書き換えてもよい。
また、第4実施形態では、同調コンデンサー設定値、モーターパラメーター、タイムゾーン設定値、サマータイム設定値の4種類のデータを選択して書き換えるものであったが、これらの少なくとも1つのデータを書き換えるように設定してもよい。
さらに、データを書き換える対象としては、第4実施形態の4種類に限定されない。例えば、プログラムで利用する各種パラメーターなどを書き換えるようにしてもよい。この場合、パラメーターの設定などで不具合があった場合でも、容易に対応できる。
また、書き換えモード実行部470は、制御装置40のソフトウェアのプログラムを最適化するために、書き換えモードにおいて、プログラムの一部を書き換えることを可能にしてもよい。
さらに、書き換えモード実行部470は、制御装置40のソフトウェアのプログラムを記憶装置60に複数種類記憶させておいて、書き換えモードにおいて、実行するプログラムを選択する設定値を書き換えることを可能にしてもよい。
位置情報算出部440が緯度、経度、高度を算出する際にその誤差が大きいと判断した時には、検査モード実行部460や書き換えモード実行部470は、検査モードや書き換えモードを実行しないように設定してもよい。
また、位置情報算出部440が緯度、経度、高度を算出する際に、3個の衛星信号しか受信できずに、2D測位(2次元測位)となった場合は、検査モード実行部460や書き換えモード実行部470は、検査モードや書き換えモードを実行しないように設定してもよい。
さらに、位置情報算出部440が緯度、経度、高度を算出する際に、衛星数が少ない時や、信号レベルが低い時など精度が低いと考えられるときには、検査モード実行部460や書き換えモード実行部470は、検査モードや書き換えモードを実行しないように設定してもよい。
本発明では、通常の測位では得られる可能性が殆ど無い緯度、経度、高度を取得した場合に、検査モードや書き換えモードを実行している。従って、屋外で実際のGPS衛星100の衛星信号を受信して測位している場合には、検査モードや書き換えモードが実行されることはない。ただし、衛星信号の信号レベルが低い場合や衛星数が少ない場合など、位置情報算出部440で算出した緯度、経度、高度に誤差が含まれている場合、検査モードや書き換えモードの実行条件に該当してしまう可能性がある。
これに対し、本変形例のように、誤差が大きいと判断した場合等には検査モードや書き換えモードを実行しないように設定すれば、屋外で実際のGPS衛星100の衛星信号を受信している場合などに、誤って検査モードや書き換えモードが実行されることを防止できる。
また、前記実施形態では、位置情報衛星の例としてGPS衛星について説明したが、本発明の位置情報衛星としては、GPS衛星だけではなく、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)などの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)やSBASなどの静止衛星や準天頂衛星などの時刻情報を含む衛星信号を発信する位置情報衛星でも良い。
なお、前記各種位置情報衛星において使用する衛星の種類の設定などを、電子時計1の出荷国ごとに、GPSシミュレーター800を利用して書き換えてもよい。例えば、日本やその周辺国では、GPS衛星100以外に準天頂衛星の衛星信号を受信して測位の精度を向上させることができる。このため、日本や周辺国に販売する電子時計1は、準天頂衛星の衛星信号も取得する対象とするように、GPSシミュレーター800を用いて設定すればよい。このように設定すれば、準天頂衛星を受信できない地域で使用する電子時計1において、準天頂衛星の衛星信号を受信しようとするために受信時間が長くなり、電力を消費してしまう問題を防止できる。
さらに、電子時計1の制御装置40に、前記第1〜3実施形態の検査モード実行部460と、前記第4実施形態の書き換えモード実行部470の両方を設けてもよい。この場合、例えば、表10に示すように、検査モードを実行する高度の値と、書き換えモードを実行する高度の値とを異ならせればよい。
Figure 0006102328
本発明の衛星信号受信装置やこの衛星信号受信装置を有する電子時計は、腕時計に限定されず、例えば、携帯電話、登山などに用いられる携帯型のGPS受信機など、電池等で駆動されて位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する電子機器に広く利用できる。
また、電子機器として電子時計を開示したが、これに限定されず、衛星信号を受信して動作する他の電子機器に本発明を適用することも可能である。
1…電子時計、10…衛星信号受信装置、23…アンテナ、30…受信回路、40…制御装置、50…計時装置、60…記憶装置、70…操作部、100…GPS衛星、410…定時受信制御部、420…手動測時受信制御部、430…手動測位受信制御部、4440…位置情報算出部、450…時刻修正部、460…検査モード実行部、470…書き換えモード実行部、600…時刻データ記憶部、610…受信時刻データ、620…閏秒更新データ、630…内部時刻データ、640…時計表示用時刻データ、650…タイムゾーンデータ、680…タイムゾーンデータ記憶部、690…定時受信時刻記憶部、800…GPSシミュレーター、810…模擬信号設定部、820…模擬信号発生部、850…アンテナ。

Claims (9)

  1. 位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
    前記受信部が受信した衛星信号から緯度、経度、高度を求める位置情報算出部と、
    前記緯度、経度、高度のうちの少なくとも1つの値が、予め設定された条件に該当する場合に、予め設定されている検査処理を実行する検査処理実行部と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
  2. 請求項1に記載の電子機器において、
    前記検査処理実行部は、
    前記高度の値が前記条件に該当する場合に、前記高度の値に応じて、前記検査処理の種類を選択して実行する
    ことを特徴とする電子機器。
  3. 請求項1に記載の電子機器において、
    前記検査処理実行部は、
    前記緯度または前記経度の少なくとも一方の値が前記条件に該当する場合に、前記緯度または前記経度の少なくとも一方の値に応じて前記検査処理の種類を選択して実行する
    ことを特徴とする電子機器。
  4. 位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
    前記受信部が受信した衛星信号から少なくとも緯度、経度を求める位置情報算出部と、
    前回の受信処理時に前記位置情報算出部で求めた緯度および経度で特定される地点と、今回の受信処理時に前記位置情報算出部で求めた緯度および経度で特定される地点との距離が予め設定された条件に該当し、かつ、前回の受信処理から今回の受信処理までの経過時間が設定された条件に該当する場合に、予め設定されている検査処理を実行する検査処理実行部と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
  5. 請求項4に記載の電子機器において、
    前記検査処理実行部は、
    前記距離に応じて前記検査処理の種類を選択して実行する
    ことを特徴とする電子機器。
  6. 位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
    前記受信部が受信した衛星信号から緯度、経度、高度を求める位置情報算出部と、
    前記緯度、経度、高度のうちの少なくとも1つの値が、予め設定された条件に該当する場合に、予め設定されている書き換え処理を実行する書き換え処理実行部と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
  7. 請求項6に記載の電子機器において、
    前記書き換え処理実行部は、
    前記高度の値が前記条件に該当する場合に、前記高度の値に応じて、前記書き換え処理の種類を選択し、
    前記緯度または経度の一方の値に応じて、書き換え対象を選択し、
    前記緯度または経度の他方の値に応じて設定される値で、前記書き換え対象の値を書き換える
    ことを特徴とする電子機器。
  8. 請求項6または請求項7に記載の電子機器において、
    前記受信部における同調回路用の設定値、モーター用のパラメーター、タイムゾーン設定値、サマータイム設定値の少なくともいずれか一つが記憶された記憶部を備え、
    前記書き換え処理実行部は、前記記憶部に記憶された設定値を書き換え
    ことを特徴とする電子機器。
  9. 請求項1から請求項8のいずれかに記載の電子機器において、
    時刻を計時する計時部と、
    前記時刻を表示する時刻表示部と、
    前記受信部の受信処理によって時刻情報の取得に成功した場合に、前記時刻情報によって前記計時部で計時している時刻を修正する時刻修正部と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
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