JP6102290B2 - インクジェット記録用のインク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用のインク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録用のインク、インクジェット記録装置ならびにインクジェット記録方法に関する。
従来から、インクジェット記録用のヘッドから吐出させた微小なインク滴によって画像等を記録する、いわゆるインクジェット記録方式が広く知られている。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクは、例えば、顔料や染料などの色材、分散剤(界面活性剤)および溶媒(水、有機溶剤等)などからなる。例えば、特許文献1には、水、水溶性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の分散剤、分散染料、アセチレンジオールおよびアセチレングリコールを含有するインクジェット捺染用のインクが開示されている。
しかしながら、色材に染料を用いると、記録される画像の耐光性等の特性に優れない傾向にあるため、染料に代えて顔料を用いる場合がある。そこで例えば、着色顔料、高分子分散剤、結着成分である樹脂エマルジョン、水性媒体等を含有するインクジェット捺染用インクとすることが考えられる。
しかし、色材として顔料を用いた場合には、顔料を記録媒体に定着させるために、インクに定着用の樹脂を添加する必要がある。
特開2011−174007号公報
しかしながら、色材として顔料を用いたインクジェット記録用のインクは、樹脂に由来する凝集物が発生する場合がある。とりわけ、インクジェット記録装置内に供給されたインクと、インクジェット記録装置内に混入した空気(気泡)と、が接触する箇所(すなわち気液界面)において、凝集物の発生が顕著になる傾向にある。
特に、インクジェット捺染方法により画像が記録(印捺)された布帛は、衣類や寝具等の頻繁に洗濯が行われる用途に使用されることが多い。そのため、布帛に記録された画像の定着性(耐擦性)を向上させるために、インク中の樹脂量を多くする必要がある。そうすると、樹脂に起因する凝集物の発生が一層顕著になることがある。
また、捺染により画像が印捺された布帛は伸縮しやすい性質を持つことから、記録した画像を布帛に追随させるために、ガラス転移温度の低い柔らかい樹脂をインクに添加する場合がある。このような樹脂は皮膜化しやすいため、樹脂に起因する凝集物の発生が一層顕著になることがある。
本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、凝集物の発生を抑制できつつ、耐擦性に優れた画像を記録することができるインクジェット記録用のインク、インクジェット記録装置ならびにインクジェット記録方法を提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録用のインクの一態様は、
顔料と、樹脂と、乳化剤と、を含有し、
前記乳化剤は、下記一般式(1)で表されるアニオン性乳化剤、および、HLB値が12以上の下記一般式(2)で表されるノニオン性乳化剤から選択される少なくとも1種を含む、インクジェット記録用のインク。
−O−(CH−CH−O)−A ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数18以上の炭化水素基を表し、Aは、−SOM、−POHMまたは−CHCOOMを表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンを表し、nは、2以上20以下の整数を表す。)
−O−(CH−CH−O)−H ・・・(2)
(一般式(2)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数16以上の炭化水素基を表し、mは、2以上20以下の整数を表す。)
[適用例2]
適用例1において、
前記顔料が、白色系の顔料以外の顔料であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
布帛に対する記録に用いられてもよい。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記樹脂の皮膜伸度が、400%以上1200%以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記樹脂が、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種を含むことができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記乳化剤の含有量が、0.03質量%以上3質量%以下であることができる。
[適用例7]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか1例に記載のインクジェット記録用のインクを流通させる供給流路と、該供給流路に接続されインクを吐出するノズルと、を備えたヘッドと、
前記ヘッドに接続され、該ヘッドに供給される前記インクの流通を制限するバルブユニット、および、前記ヘッドの前記供給流路に設けられたフィルターユニットのうち少なくとも一方と、
を有する。
[適用例8]
適用例7において、
前記バルブユニットに供給された前記インクが、空気と接触していてもよい。
[適用例9]
適用例7または適用例8において、
前記フィルターユニットに供給された前記インクが、空気と接触していてもよい。
[適用例10]
適用例7ないし適用例9のいずれか1例において、
前記バルブユニットは、圧力室と、導入室と、を有し、
前記導入室は、前記圧力室に供給するインクを貯留するものであり、
前記圧力室は、前記導入室の前記インクの流出を制限する圧力調整弁を介して該導入室に接続された接続部と、前記ヘッドの前記供給流路に接続された接続部と、を備え、
前記圧力室の容積が、400mm以上5000mm以下であることができる。
[適用例11]
適用例7ないし適用例10のいずれか1例において、
前記フィルターユニットは、フィルター部材を有し、
前記フィルター部材の面積が、7mm以上120mm以下である、インクジェット記録装置。
[適用例12]
本発明に係る記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか1例に記載のインクジェット記録用のインクを用いた記録方法であって、
前記インクの液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置を示す概略斜視図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるヘッドの周辺部分の概略構造を示す一部破断の側面図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるバルブユニットとインクカートリッジとの接続状態を示す概略側面図。 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるバルブユニットの内部構造を示す概略図。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インクジェット記録用のインク
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用のインクは、顔料と、樹脂と、乳化剤と、を含有し、前記乳化剤は、後述する一般式(1)で表されるアニオン性乳化剤、または、HLB値が12以上の後述する一般式(2)で表されるノニオン性乳化剤であることを特徴とする。
本実施形態に係るインクジェット記録用のインクは、普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、布帛、皮革等のいずれの種類の記録媒体にも用いることができるが、特に布帛に対する記録に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録用のインクは、インクジェット捺染用のインクとして用いられることが好ましい。本実施形態に係るインクジェット記録用のインクによって布帛に記録された画像は、耐擦性に優れつつ、発色性も良好となる。
布帛としては、以下に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛等の天然繊維や、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン等の合成繊維等を原料とする、織物、編み物、不織布等が挙げられる。
以下、インクに含まれる成分について詳細に説明する。
1.1.顔料
本実施形態に係るインクは、顔料を含有する。顔料としては、有機顔料および無機顔料のいずれも使用することができる。
顔料としては、いずれの色の顔料を使用してもよいが、記録媒体として布帛を用いた場合に、発色性に優れた画像が得られるという観点から、白色系の顔料(特に、酸化チタン)以外の色の顔料を用いることが好ましい。
上記のように、布帛に対する画像の記録(すなわちインクジェット捺染)を行う場合において、非白色の布帛へ画像の記録を行う場合、非白色の布帛上での画像の視認性を良くするために、白色系の顔料(特に酸化チタン)を含む白色インクを用いて記録が行われる。しかし、非白色の布帛は、布帛へインクが浸透した場合のインクの発色性や布帛の隠蔽性の低下が大きく、記録される画像の発色性、布帛の隠蔽性が不十分になる傾向がある。そのため、非白色の布帛への画像の形成に用いるインクにより得られる画像の発色性、布帛の隠蔽性を高めるという観点から、インクの成分と反応する凝集剤を含む前処理剤などを用いて予め布帛に前処理を施しておくことがある。凝集剤としては多価金属化合物(例えば、塩化カルシウム等)が使用できる。そうすると、インクに含まれる樹脂や顔料の成分と前処理剤に含まれる凝集剤との反応によって、インクの成分が凝集体を形成することで、記録される画像の発色性、布帛の隠蔽性を高めることができる。しかしながら、後述する特定の乳化剤は、前処理剤に含まれる凝集剤とインクの成分との反応を阻害することがあるので、これをインクに含む場合、形成した画像の発色性、布帛の隠蔽性が不十分となる場合がある。そのため、発色性、布帛の隠蔽性に優れた画像を記録するという観点によれば、本実施形態に係るインクは、非白色の布帛への画像の記録に用いるインクとするのではなく、白色の布帛への画像の記録に用いるインクとするのが好ましい。白色の布帛は、インクが浸透してもインクの発色性、布帛の隠蔽性が良好であるからである。インクに含まれる顔料は、白色系の顔料以外の顔料であることが好ましい。上記の布帛への前処理は行っても行わなくてもよい。あるいは、本実施形態に係るインクは、布帛へ前述の白色インクを用いて下地層を形成した後、その上へ画像を形成するインクとするのが好ましい。下地層によって布帛へのインクの浸透が抑制されることで、インクの発色性を良くできるからである。
白色系の顔料以外の顔料とは、上述した白色系の顔料を除く顔料のことをいう。白色系の顔料以外の顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、及びニトロソ系などの有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等)、コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、及びニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
更に詳しくは、ブラック系の顔料として使用できるカーボンブラックとしては、例えば、MCF88、No.2300、2200B、900、33、40、45、52、MA7、8、100等(以上、三菱化学社製、商品名)、Raven 5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上、コロンビアカーボン社製、商品名)、Rega1 400R、330R、660R、Mogul L、Monarch 700、800、880、900、1000、1100、1300、1400等(以上、キャボット社製、商品名)、Color Black FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 35、U、V、140U、Special Black 6、5、4A、4等(以上、デグッサ社製、商品名)等が挙げられる。
イエロー系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
マゼンタ系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、C.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアン系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66等が挙げられる。
マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、C.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
以上述べた顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係るインクに含まれる顔料の含有量は、使用する顔料種により異なるものの良好な発色性を確保することなどから、インクの全質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく0.2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料は、インク中での分散性を高めるという観点から、表面処理を施した顔料であってもよいし、分散剤等を利用した顔料であってもよい。
表面処理を施した顔料とは、物理的処理または化学的処理によって顔料表面に親水性基(カルボキシル基、スルホン酸基等)を、直接または間接的に結合させて水性溶媒中に分散可能としたものである(以下、「自己分散型の顔料」ともいう。)。
また、分散剤を利用した顔料とは、界面活性剤や樹脂により顔料を分散させたものであり(以下、「ポリマー分散型顔料」ともいう。)、界面活性剤や樹脂としてはいずれも公知の物質を使用することが可能である。また、「ポリマー分散型顔料」の中には、樹脂により被覆された顔料も含まれる。樹脂により被覆された顔料は、酸析法、転相乳化法、及びミニエマルション重合法などにより得ることができる。
1.2.樹脂
本実施形態に係るインクは、樹脂を含有する。樹脂を含有することにより、インクと記録媒体の密着性を向上できるので、記録される画像の耐擦性を向上できる。
本実施形態に係るインクは、記録媒体の中でも布帛に対する記録に好適に用いることができる。ここで、布帛は、伸縮しやすい性質を備えるため、記録される画像(すなわちインクにより形成されるインク膜)も伸縮しやすい(伸張しやすい)ものであることが好ましい。すなわち、インク膜が布帛の伸縮に追随して伸縮できる伸度を有することにより、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる。こうした観点から、本実施形態に係るインクに含まれる樹脂の皮膜伸度は、400%以上1200%以下であることが好ましく、500%以上1200%以下であることがより好ましく、600%以上1200%以下であることがさらに好ましく、700%以上1200%以下であることが特に好ましい。樹脂の皮膜伸度が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、布帛の伸縮に対して追従性の良好な画像を形成できる。また、樹脂の皮膜伸度が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、インク膜の粘性を適度な範囲に保ち、布帛に対するアンカー効果の低下を抑制できるので、定着性の低下を抑制しつつ、洗濯・摩擦堅牢度(耐擦性)にも良好な画像を形成できる。
樹脂の皮膜伸度は、次のようにして測定したものである。まず、乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に樹脂を塗布し、常温(20℃)・常圧(65%RH)で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、および120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して、樹脂フィルムを作成する。そして、引っ張り試験機を用いて、測定温度20℃、測定スピード200mm/minの条件で、得られた樹脂フィルムの皮膜伸度を測定する。皮膜伸度の測定は、樹脂フィルムを伸長させて樹脂フィルムが破断するまでに伸長する長さを測定し、その割合をパーセントで皮膜伸度として表す。なお、引っ張り試験機としては、例えば、テンシロン万能試験機RTC−1225A(商品名、(株)オリエンテック製)や、これに準ずるものを使用できる。
また、第1インクに含まれる樹脂は、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる点で、ガラス転移点(Tg)が、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましくい。また、ガラス転移点(Tg)の下限は、−80℃以上が好ましい。また、第1インクに含まれる樹脂は、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる点で、最低像膜温度(MFT)が、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましくい。また、最低像膜温度の下限は、−80℃以上が好ましい。
樹脂は、皮膜の耐擦性、密着性、インクの保存安定性を向上できる等の観点から、エマルジョンであることが好ましい。本実施形態に係るインクに含まれる樹脂は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよいが、乳化剤を含まない自己乳化型分散体(自己乳化型のエマルジョン)であることが好ましい。
樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、設計の自由度が高く、それゆえ所望の皮膜物性(上記の皮膜伸度)を得やすいことから、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ウレタン系樹脂を用いることがより好ましい。
ウレタン系樹脂としては、ウレタン骨格を有し水分散性を有するものであれば特に限定はされず、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D−1060、D−2020、D−4080、D−4200、D−6300、D−6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS−6021、W−512−A−6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、などの市販品を用いてもよい。
また、ウレタン系樹脂は、インクジェットヘッドへの材質適合性の観点や、後述する前処理剤に多価金属化合物を含む場合にこれとの反応性を向上させるという観点から、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有する、アニオン性のウレタン系樹脂であることが好ましい。上述の市販品のうち、アニオン性のウレタン樹脂としては、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス460、460s、840等;三井化学ポリウレタン(株)製のタケラックWS−6021、W−512−A−6等が挙げられる。
また、ウレタン樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂、などを使用できる。これらのウレタン樹脂は、複数種を組み合わせて使用することができる。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合体や、アクリル系単量体と他の単量体との共重合体などが使用可能であり、他の単量体としてはスチレンなどのビニル系単量体があげられる。アクリル系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えばモビニール702、7502、7525、7320(日本合成化学株式会社製)などがあげられる。
樹脂の含有量は、インクの全質量に対して、固形分換算で、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。インク中における樹脂の含有量が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、樹脂がインクの定着性を向上させる効果を十分に発揮できるので、記録される画像の耐擦性が向上する。また、上限を超えずにあることで、樹脂に起因する凝集物の発生が抑制できるので、インクの保存安定性や吐出安定性が優れたものとなる。
1.3.乳化剤
本実施形態に係るインクは、特定の乳化剤、すなわち下記一般式(1)で表されるアニオン性乳化剤(以下、「乳化剤A」ともいう。)、および、HLB値が12以上の後述する一般式(2)で表されるノニオン性乳化剤(以下、「乳化剤B」ともいう。)から選択される少なくとも一種の乳化剤を含有する。
乳化剤Aおよび乳化剤Bはいずれも、樹脂に起因する凝集物の発生を抑制するという機能を有する。詳細なメカニズムは未だ明らかになっていないが、乳化剤Aまたは乳化剤Bが樹脂に吸着することで、凝集物の発生の原因となる樹脂の皮膜化(特に気液界面における樹脂の皮膜化)を遅延させて、樹脂に起因する凝集物の発生を抑制できると推測される。
乳化剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.02質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。インクに含まれる乳化剤の含有量が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、樹脂に起因する凝集物の発生を十分に抑制できる。また、上限を超えずにあることで、記録媒体(特に布帛)に対するインクの浸透を抑制できるので、発色性に優れた画像を得ることができる。
<乳化剤A>
乳化剤Aは、下記一般式(1)で表される構造のアニオン性乳化剤である。
−O−(CH−CH−O)−A ・・・(1)
一般式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数18以上の炭化水素基を表し、Aは、−SOM基、−POHM基または−CHCOOM基を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンを表し、nは、2以上20以下の整数を表す。
一般式(1)において、Rを表す炭化水素基の炭素数は、18以上であり、好ましくは18以上30以下であり、さらに好ましくは炭素数18以上25以下である。Rの炭素数が18以上であると、樹脂に起因する凝集物の発生を十分に抑制することができる。また、Rが30以下であると、インクの粘度を一層適正な範囲に保つことができ、インクの吐出安定性を良好にできる。一方、Rの炭素数が18未満であると、樹脂に起因する凝集物の発生を抑制できず、インクの吐出安定性が低下する傾向にある。
を表す炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和もしくは不飽和の炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、凝集物の発生の抑制の点で不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
また、Rを表す炭化水素基は、水素原子の一部が置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えば、エーテル基、エステル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
Aは、−SOM基、−POHM基または−CHCOOM基を表すが、インクの保存安定性等の観点から、−SOM基であることが好ましい。
Mを表すアルカリ金属の具体例としては、Na、K等が挙げられ、Mを表すアルカノールアミンの具体例としては、トリエタノールアミン等が挙げられる。
nは、2以上20以下の整数であり、より好ましくは2以上15以下の整数であり、さらに好ましくは2以上10以下の整数である。nが上記範囲内にあることで、インクの保存安定性等の低下を抑制できる傾向にある。一方、nが20を超えると、親水性が高まることで、発泡しやすくなったり、破泡性が低下したりする等の不具合が生じることがある。
乳化剤Aとしては、市販品を用いることができ、例えば、ラテムル WX、レベノール WX(以上商品名、花王株式会社製)等が挙げられる。
<乳化剤B>
乳化剤Bは、HLB値が12以上であり、かつ、一般式(2)で表される化学構造のノニオン性乳化剤である。
−O−(CH−CH−O)−H ・・・(2)
一般式(2)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数16以上の炭化水素基を表し、mは、2以上20以下の整数を表す。
一般式(2)において、Rを表す炭化水素基の炭素数は、16以上であり、好ましくは16以上30以下であり、さらに好ましくは炭素数18以上25以下である。Rの炭素数が16以上であると、樹脂に起因する凝集物の発生を十分に抑制することができる。また、Rが30以下であると、インクの粘度を適正な範囲に保つことができ、インクの吐出安定性を良好にできる。一方、Rの炭素数が16未満であると、樹脂に起因する凝集物の発生を抑制できず、インクの吐出安定性が低下する傾向にある。
を表す炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和もしくは不飽和の炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、凝集物の発生の抑制の点で不飽和の炭化水素基であることが好ましい。
また、Rを表す炭化水素基は、水素原子の一部が置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えば、エーテル基、エステル基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。
mは、2以上20以下の整数であり、より好ましくは2以上15以下の整数であり、さらに好ましくは2以上10以下の整数である。mが上記範囲内にあることで、インクの保存安定性等の低下を抑制できる傾向にある。一方、mが20を超えると、親水性が高まることで、発泡しやすくなったり、破泡性が低下したりする等の不具合が生じることがある。
乳化剤Bは、上記の化学構造を備えつつ、HLB値が12以上、好ましくは12以上18以下、より好ましくは12以上17以下である。HLB値が12以上であることで、樹脂に起因する凝集物の発生を十分に抑制することができる。また、Rが18以下であることで、インク中での乳化剤の分散性が良好になり、保存安定性の良好なインクが得られる。一方、HLB値が12未満であると、樹脂に起因する凝集物の発生を抑制できず、インクの吐出安定性が低下する傾向にある。
なお、本明細書におけるHLB値とは、有機概念図における無極性値(I)と有機性値(O)との比(以下、単に「I/O値」ともいう)から下記式(3)により算出された値である。
HLB値=(無極性値(I)/有機性値(O))×10 ・・・(3)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
乳化剤Bとしては、市販品を用いることができ、例えば、ニューコール1860、ニューコール1210(以上商品名、日本乳化剤株式会社製)等が挙げられる。
1.4.その他の成分
本実施形態に係るインクは、水、有機溶剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤・防かび剤等を含有してもよい。
<水>
水は、インクの主となる媒体であり、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。インクに含まれる水の含有量としては、特に限定されるものではないが、インクの全質量に対して、例えば50質量%以上であることができ、さらには50質量%以上95質量%以下であることができる。
<有機溶剤>
有機溶剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、布帛等の記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、滲みの少ない画像を記録できる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることができる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、ヘッドのノズル面におけるインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量が、インクの全質量に対して、2質量%以上20質量%以下であることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
グリコールエーテル類は、記録媒体に対するインクの濡れ性や浸透速度を制御できるため、鮮明な画像を記録することができる。グリコールエーテル類を含有する場合には、インク全質量に対して、0.05質量%以上6質量%以下であることができる。
<界面活性剤>
界面活性剤は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、BYK社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
<防腐剤・防かび剤>
防腐剤・防かび剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられる。
1.5.調製方法
本実施形態に係るインクは、前述した成分を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.6.物性
本実施形態に係るインクは、画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、25mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係るインクの20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
2.インクジェット記録装置
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、上述のインクジェット記録用のインクを流通させる供給流路と、該供給流路に接続されインクを吐出するノズルとを備えたヘッドと、バルブユニットおよびフィルターユニットのうち少なくとも一方と、を有する。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置について、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明する。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、オンキャリッジタイプのプリンターであることに限定されるものではなく、インクカートリッジがキャリッジに搭載されないで外部に固定された、オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
また、以下の説明に用いるプリンターは、所定の方向に移動するキャリッジにヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出する、シリアルプリンターである。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、シリアルプリンターに限定されるものではなく、ヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、ヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するラインプリンターであってもよい。
以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例として、プリンターを示す概略斜視図である。図2は、プリンターにおけるヘッドの周辺部分の概略構造を示す一部破断の側面図を示す。
図1の例では、プリンター1は、ヘッド3と、ヘッド3を搭載するとともにインクカートリッジ7a〜7dを着脱可能に装着するキャリッジ4と、キャリッジ4を媒体幅方向に往復移動させる主走査機構5と、記録媒体2を媒体送り方向に移送するプラテンローラー6と、を有する。また、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御部(図示せず)を有している。なお、媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)であり、媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
主走査機構5は、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト8と、タイミングベルト8を駆動するモーター9と、主走査方向に架設された支持部材であるガイド軸10と、を備える。キャリッジ4は、タイミングベルト8を介してモーター9によって駆動して、ガイド軸10に沿って主走査方向に往復移動するものである。
図1の例では、インクカートリッジ7a〜7dは、独立した4つのインクカートリッジからなる。インクカートリッジ7a〜7dには、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの顔料を含有する上述のインクジェット記録用のインクがそれぞれ収容されている。図1の例では、インクカートリッジの数が4つであるが、これに限定されず、所望の数のカートリッジを搭載することができる。インクカートリッジ7a〜7dの底部には、各インクカートリッジ内のインクを導出するための導出部17a〜17dが設けられている。
ヘッドは、上述のインクジェット記録用のインクを流通させる供給流路と、該供給流路に接続されインクを吐出するノズルと、を備える。図2の例では、ヘッド2は、導出部17a〜17dに接続された針部材31a〜31dと、針部材31a〜31dと連通する連通路32a〜32dと、連通路32a〜32dと連通する図示しない液貯め室(リザーバー)と、液貯め室と連通する圧力発生室(キャビティ)33と、圧力発生室33と連通するノズル34と、を備える。
針部材31a〜31dは、導入孔41と、導入路42と、を備える。導入路42は、その一端が導入孔41と接続されており、他端が連通路32a〜32dと接続されている。
図2の例では、インクカートリッジ17a〜17dに収容されたインクは、まず導入孔41を介して導入路42に導入された後、連通路32a〜32dを流通し、液貯め室(リザーバー)、圧力発生室(キャビティ)33を経由して、ノズル34から吐出される。具体的には、圧力発生室33に配設された圧力発生手段(図示せず)が駆動することにより、圧力発生室33の圧力が変化して、ノズル34の開口からインクの液滴が吐出される。
請求項における「供給流路」とは、ヘッド内でインクが流通する部分のことをいい、図2の例では、導入孔41、導入路42、連通路32a〜32dを指す。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、フィルターユニットおよびバルブユニットのうち少なくとも一方を有する。
フィルターユニットは、インクに含まれるゴミなどの異物がヘッドに供給されないよう捕捉するために設けられ、ヘッドへのインクの供給流路に設けられる。フィルターユニットは、例えば、金属線を編み込む等により形成されたメッシュ状のフィルター部材を備える。具体的には、図2の例では、フィルターユニット41a(フィルター部材43a)は、導入路42と連通路32aとの接続部分に配設されている。図2のように、導入路42がインクの流通方向に向かって拡幅された構造であると、フィルター部材43aにおけるインクの通過面積を大きくできるので、インクの通過によって生じる流動抵抗を減少できる。
ここで、フィルターユニットは、供給流路において最も気泡が滞留しやすい箇所の一つである。そのため、フィルターユニットでは、供給されたインクと気泡(空気)とが接触して、気液界面が生じやすい。気液界面では、インクに含まれる樹脂が皮膜化しやすくなるので、樹脂に起因する凝集物が特に発生しやすくなる。その結果、フィルター部材を詰まらせて、インクの吐出安定性が低下する。このようにフィルターユニットを備えるインクジェットプリンターを用いた場合であっても、上述したインクジェット記録用のインクを用いれば、インクに含まれる特定の乳化剤の作用により、気液界面での凝集物の発生を著しく抑制できる。これにより、フィルター部材の能力が十分に発揮されるので、吐出安定性に優れたインクジェット記録装置が得られる。
また、1つのフィルター部材43aの面積が7mm以上120mm以下の範囲にあると、フィルターの異物を補足する能力を確保しつつインクの通過に伴う流動抵抗を最小限にでき、フィルターが占有するスペースを小型にできるが、フィルター部材43aに気泡も捕捉され、気泡によってフィルター付近に存在するインクに気液界面が発生しやすくなり、インクに含む樹脂に起因する凝集物が発生しやすくなる。このような場合であっても、上述したインクジェット記録用のインクを用いれば、インクに含まれる特定の乳化剤の作用により、気液界面での凝集物の発生を著しく抑制できる。
バルブユニットは、前記ヘッドに接続され、該ヘッドに供給される前記インクの流通を制限するものである。図3は、バルブユニットとインクカートリッジとの接続状態を示す概略側面図である。図3の例では、説明を簡潔にするために、一のバルブユニット100と、一のインクカートリッジ7aとの接続状態のみを示したが、インクカートリッジ7a〜7d毎にバルブユニット100を複数設けることができる。
図3の例では、バルブユニット100は、合成樹脂製のユニットケース110を備えている。ユニットケース110は、扁平な箱状に形成され、半円筒部を有するとともに、その上部に段部111が形成されている。段部111には、上方に突出する供給針112が形成されている。供給針112とインクカートリッジ7aの導出部17aが嵌合すると、インクカートリッジ7a内のインクは、供給針112に供給されて、バルブユニット100内に流入する。
また、ユニットケース110の下部には、下方に突出するインク導出部113が形成されている。インク導出部113がヘッド3の針部材31aと接続されると、バルブユニット内のインクがインク導出部113から流出して、ヘッド3内部に流入する。
図4は、バルブユニット100の内部構造を示す概略図であり、図3のA−A断面図である。具体的には、図4(A)は、圧力調整弁150の閉弁状態を示し、図4(B)は、圧力調整弁150の開弁状態を示す。
図4の例では、導入室121および圧力室131は、隔壁110cによって区画されている。隔壁110cには、支持孔140が設けられており、導入室121および圧力室131は、支持孔140によって連通可能である。
導入室121は、インクカートリッジ7aから供給されたインクを一時的に貯留する。導入室121は、ユニットケース110の第1側面110aの一部によって区画された面(フィルム部材120)を有する。導入室121には、フィルム部材120に接続されたバネ受け部材122と、バネ受け部材122に係合するバネ部材Sが配設されている。
圧力室131は、圧力調整弁150を介して導入室121に接続された接続部(すなわち支持孔140との連結部分)と、ヘッドの供給流路(図2参照)に接続された接続部(すなわち図4の導出路113aとの連結部分)と、を備える。また、圧力室131は、ユニットケース110の第2側面110bの一部によって区画された面(フィルム部材130)を有する。フィルム部材130の圧力室131とは反対側の面には、円板状の受圧板132が取り付けられている。
支持孔140には、開閉弁を構成する圧力調整弁150が摺動可能に支持されている。圧力調整弁150は、支持孔140に挿通されたロッド部150aと、円板形状の板状部150bとが一体形成されてなる。ロッド部150aの先端は、圧力室131の壁の一部を構成するフィルム部材130に当接可能となっている。また、板状部150bは、導入室121に配設されており、バネ部材SによってR方向に付勢されている(図4(A))。さらに、隔壁110cの導入室121側には、円環状のシール部材123が支持孔140を囲むように固着されている。
圧力調整弁150は、通常、バネ部材Sの付勢力によって図4(A)に示す位置にあり、板状部150bがシール部材123に圧接して支持孔140の周囲を覆い、導入室121と圧力室131とを遮断している(圧力調整弁150の閉弁状態、図4(A)参照)。
一方、圧力室131のインクが消費されて内圧が一定値以下に低下すると、受圧板132はフィルム部材130の撓みに連動してR方向に移動する。これにより、受圧板132がロッド部150aをR方向に押し込み、板状部150bがシール部材123から離れ、導入室121と圧力室131とが連通する(圧力調整弁150の開弁状態、図4(B)参照)。このとき、インクが導入室121から圧力室131に流入して、圧力室131の内圧が補償されて、閉弁状態に戻る。このように、閉弁、開弁の状態が繰り返されることにより、圧力室131の内圧が所定の値に保たれる。
ここで、バルブユニットは、上述したフィルターユニットと同様に、気泡が滞留しやすい箇所の一つである。そのため、バルブユニットでは、供給されたインクと気泡(空気)とが接触して、気液界面が生じやすい。気液界面では、インクに含まれる樹脂が皮膜化しやすくなるので、樹脂に起因する凝集物が特に発生しやすくなる。その結果、凝集物がヘッドの供給流路やノズルを詰まらせて、インクの吐出安定性が低下する。このようにバルブユニットを備えるインクジェットプリンターを用いた場合であっても、上述したインクジェット記録用のインクを用いれば、インクに含まれる特定の乳化剤の作用により、気液界面での凝集物の発生を著しく抑制できる。
また、1つのバルブユニットの圧力室131の容積400mm以上5000mm以下であると、圧力室131の内圧を所定の値に保ちやすくヘッドへのインクの供給の制限を精度よく行いつつバルブユニットの小型化が可能である。反面、圧力室131に気泡が滞留しやすく、気泡によって圧力室131内のインクに気液界面が発生しやすくなり、インクに含む樹脂に起因する凝集物が発生しやすくなる。このような場合であっても、上述したインクジェット記録用のインクを用いれば、インクに含まれる特定の乳化剤の作用により、気液界面での凝集物の発生を著しく抑制できる。
3.インクジェット記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述のインクジェット記録用のインクを用いて行われ、該インクの液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する工程を含む。
本実施形態にインクジェット記録方法は、上述のインクジェット記録用のインクを上述のインクジェット記録装置に適用したものを用いて実施できる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体として布帛を用いる、いわゆるインクジェット捺染方法に好適に用いることができる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述の画像を形成する工程の後、記録媒体を加熱する工程を含んでいてもよい。記録媒体を加熱することで、記録媒体に形成された画像の乾燥を促進できる。これにより、各インクに含まれる樹脂が十分に皮膜化するので、耐擦性に優れた画像が得られる。
加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。また、加熱処理時の温度は、インクに含まれる樹脂を融着し、かつ、水分を蒸発させることができればよく、例えば150〜200℃程度とすることができる。
加熱後は、印捺物を水洗し、乾燥してもよい。このとき、必要に応じてソーピング処理、即ち未固着の顔料を熱石鹸液などで洗い落とす処理を行ってもよい。
上述のインクジェット記録用のインクは、凝集物の発生を抑制でき、かつ、記録される画像の定着性を優れたものにすることができる。そのため、当該インクを用いる本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、インクの吐出安定性に優れ、かつ、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
4.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
4.1.インクの調製
顔料分散液を調製した後、これを用いて実施例および比較例のインクを得た。
インクに用いる顔料分散液は、次のようにして調製した。30%アンモニア水溶液(中和剤)1.5質量部を溶解させたイオン交換水76質量部に、樹脂分散剤としてアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)7.5質量部を加えて溶解させた。そこに、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)を15質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行って、顔料分散液(顔料分15%)を得た。
そして、顔料分散液を用いて、表1および表2の組成となるように各成分を容器に入れ、マグネチックスターラーで2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過した。このようにして、実施例および比較例のインクを得た。なお、表1および表2中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はインクの全質量が100質量%となるように添加した。
Figure 0006102290
Figure 0006102290
表1および表2において、化合物名以外で記載した成分は、次の通りである。
<顔料>
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)
<樹脂>
・タケラック WS−6021(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製、アニオン性のエーテル系ウレタン樹脂エマルジョン、自己乳化タイプ、固形分30%、皮膜伸度750%)
・スーパーフレックス 150(商品名、第一工業製薬株式会社製、アニオン性のエステル・エーテル型ウレタン樹脂水分散体、自己乳化タイプ、固形分30%、皮膜伸度330%)
・スーパーフレックス 126(商品名、第一工業製薬株式会社製、アニオン性のエステル・エーテル型ウレタン樹脂水分散体、自己乳化タイプ、固形分30%、皮膜伸度87%)
<乳化剤>
・ニューコール1860(商品名、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、HLB値:18.1、ノニオン性乳化剤)
・ニューコール1210(商品名、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB値:12.4、ノニオン性乳化剤)
・ニューコール1204(商品名、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB値:7.9、ノニオン性乳化剤)
・ニューコール1006(商品名、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、HLB値:13.4、ノニオン性乳化剤)
・ニューコール1020(商品名、日本乳化剤株式会社製、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、HLB値:17.4、ノニオン性乳化剤)
・ラテムル WX(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、アニオン性乳化剤)
・レベノール WX(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、アニオン性乳化剤)
・ラテムル E−150(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アニオン性乳化剤)
<その他>
BYK−348(商品名、BYK社製、シリコーン系界面活性剤)
なお、樹脂の皮膜伸度は、上述の方法により、テンシロン万能試験機RTC−1225A(商品名、(株)オリエンテック製)を用いて得られた。
4.2.評価試験
4.2.1.フィルター凝集物
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「EPSON MJ−3000C」)のインクカートリッジに上記のように調製したインクを充填した。そして、40℃・20%RHの条件の下、インクジェットプリンターに各インクを充填させた。そして、A4サイズの記録媒体への印刷を100枚/1日行い、印刷を行わない時間はプリンターを休止させた。また、ノズルからヘッド内のインクを吸引して、ヘッド及びインクカートリッジからヘッドへインクを供給するインク経路に存在するインクを新たなインクと置き換えること(リフレッシュ)を1回/週でおこなった。30日後、ヘッド内のフィルター部材(孔径10μm)に捕捉された凝集物を顕微鏡で観察して、フィルター部材に対する凝集物の被覆率を算出した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表1および表2に併せて示す。
なお、上記プリンターは、上述した図2〜図4に示すようなフィルターユニットおよびバルブユニットを両方備えている。また、フィルターユニットの圧力室の容積は、2000mmであり、フィルターユニットのフィルター部材の面積は、80mmである。
◎:フィルター部材の被覆率が0%(凝集物なし)
○:フィルター部材の被覆率が1%未満
△:フィルター部材の被覆率が1%以上5%未満
×:フィルター部材の被覆率が5%以上
4.2.2.耐擦性
インクジェット記録装置(セイコーエプソン株式会社製、商品名「EPSON MJ−3000C」)を用いて、上記の各インクを布帛(HANES社製のへービーウェイトTシャツ、綿100%の白色生地)に付着させて、画像を形成した。その後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間の加熱処理を行うことにより、印捺物を得た。印捺条件としては、記録解像度を1440dpi×1440dpiとした。画像は、インクの付着量を20mg/inchとして形成した。
上記のようにして得られた印捺物を水洗した後、印刷物を十分に乾燥させて、テスター産業社製の学振式摩擦堅牢性試験機AB−301Sを用いて荷重200gで150回擦る摩擦堅牢試験を行った。インクの剥がれ具合を確認する日本工業規格(JIS)JIS L0849に準拠して乾燥(Dry)の水準にて評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1および表2に併せて示す。
◎:摩擦堅牢度が3級以上
×:摩擦堅牢度が3級未満
4.2.3.OD値(発色性)
上記耐擦性の評価試験と同様の方法で得られた印捺物を用いて、画像のOD値を測色器(商品名「Gretag Macbeth Spectrolino」、X−RITE社製)で測定し、OD値を基に画像の発色性を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表1および表2に併せて示す。
◎:OD値が1.2以上
○:OD値が1.0以上1.2未満
×:OD値が1.0未満
4.2.4.引っ張り試験
インクに含まれる樹脂の皮膜伸度が及ぼす影響を検討するために、以下の引っ張り試験を行った。
インクジェット記録装置(セイコーエプソン株式会社製、商品名「EPSON MJ−3000C」)を用いて、実施例1のインク、実施例6のインク、実施例7のインクのそれぞれを、布帛(HANES社製のへービーウェイト、綿100%の青色生地)の20cm×20cmの領域に付着させて、画像を形成した。その後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間の加熱処理を行うことにより、参考例1〜3に係る印捺物を得た。印捺条件としては、記録解像度を1440dpi×1440dpiとし、ベタパターン画像を4層重ね塗りし、200mg/inchのインクを付着させた。本明細書における「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像を意味する。
得られた印捺物の画像において、対向する2辺の中央を反対方向に引っ張り、布帛の長さを1.5倍に引き伸ばした。その後、画像表面を目視にて観察することで、画像のひび割れの発生状態を確認した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表3に示す。
A:ひび割れが発生しない
B:若干のひび割れが発生した
C:ひび割れが顕著に発生した
Figure 0006102290
4.2.5.インクジェット記録装置の評価
バルブユニットの圧力室の容積およびフィルター部材の面積が、インクの凝集物の発生に影響するかを検証した。具体的には、表4の参考例4〜参考例8に記載のユニットおよびインクを組み合わせたインクジェット記録装置を用いて、フィルター凝集物の発生状況を確認した。
詳細には、バルブユニットの圧力室の容積、フィルター部材の面積が表4に示すものになるように、インクジェット記録装置(セイコーエプソン株式会社製、商品名「EPSON MJ−3000C」)を改造した。具体的には各圧力室の容積を備えるバルブユニット、及び各フィルター部材の面積となるようフィルターを交換した。そして、改造した各プリンターのインクカートリッジに実施例3のインクを充填して、前述のフィルター凝集物の評価と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0006102290
4.2.6.評価結果
表1の評価結果によれば、実施例に係るインクはいずれも、樹脂および特定の乳化剤を含有するので、気液界面での凝集物の発生を抑制でき、耐擦性に優れた画像を得られることが示された。
一方、比較例1〜3、5、7、9に係るインクはいずれも、特定の乳化剤を含有しないため、気液界面での凝集物の発生を抑制できなかった。
また、比較例4、6、8に係るインクはいずれも、樹脂を含有しないため、凝集物の発生は抑制できたが、画像の耐擦性が著しく低下することが示された。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、2…記録媒体、3…ヘッド、4…キャリッジ、5…主走査機構、6…プラテンローラー、7a〜7d…インクカートリッジ、8…タイミングベルト、9…モーター、10…ガイド軸、17a〜17d…導出部、31a〜31d…針部材、32a〜32d…連通路、33…圧力発生室(キャビティ)、34…ノズル、41…導入孔、42…導入路、41a…フィルターユニット、43a…フィルター部材、100…バルブユニット、110…ユニットケース、110a…第1側面、110b…第2側面、110c…隔壁、111…段部、112…供給針、113…インク導出部、113a…導出路、120…フィルム部材、121…導入室、122…バネ受け部材、123…シール部材、130…フィルム部材、131…圧力室、132…受圧板、140…支持孔、150…圧力調整弁、150a…ロッド部、150b…板状部、S…バネ部材

Claims (10)

  1. 顔料と、樹脂と、乳化剤と、を含有し、
    前記乳化剤は、下記一般式(1)で表されるアニオン性乳化剤、および、HLB値が12以上の下記一般式(2)で表されるノニオン性乳化剤から選択される少なくとも1種を含
    前記樹脂の皮膜伸度が、400%以上1200%以下であり、
    前記乳化剤の含有量が、0.03質量%以上3質量%以下である、インクジェット記録用のインク。
    −O−(CH−CH−O)−A ・・・(1)
    (一般式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数18以上の炭化水素基を表し、Aは、−SOM、−POHMまたは−CHCOOMを表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンを表し、nは、2以上20以下の整数を表す。)
    −O−(CH−CH−O)−H ・・・(2)
    (一般式(2)中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数16以上の炭化水素基を表し、mは、2以上20以下の整数を表す。)
  2. 請求項1において、
    前記顔料が、白色系の顔料以外の顔料である、インクジェット記録用のインク。
  3. 請求項1または請求項2において、
    布帛に対する記録に用いられる、インクジェット記録用のインク。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    前記樹脂が、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種を含む、インクジェット記録用のインク。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用のインクを流通させる供給流路と、該供給流路に接続されインクを吐出するノズルと、を備えたヘッドと、
    前記ヘッドに接続され、該ヘッドに供給される前記インクの流通を制限するバルブユニット、および、前記ヘッドの前記供給流路に設けられたフィルターユニットのうち少なくとも一方と、
    を有する、インクジェット記録装置。
  6. 請求項において、
    前記バルブユニットに供給された前記インクが、空気と接触している、インクジェット記録装置。
  7. 請求項または請求項において、
    前記フィルターユニットに供給された前記インクが、空気と接触している、インクジェット記録装置。
  8. 請求項ないし請求項のいずれか1項において、
    前記バルブユニットは、圧力室と、導入室と、を有し、
    前記導入室は、前記圧力室に供給するインクを貯留するものであり、
    前記圧力室は、前記導入室の前記インクの流出を制限する圧力調整弁を介して該導入室に接続された接続部と、前記ヘッドの前記供給流路に接続された接続部と、を備え、
    前記圧力室の容積が、400mm以上5000mm以下である、インクジェット記録装置。
  9. 請求項ないし請求項のいずれか1項において、
    前記フィルターユニットは、フィルター部材を有し、
    前記フィルター部材の面積が、7mm以上120mm以下である、インクジェット記録装置。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用のインクを用いた記録方法であって、
    前記インクの液滴を記録媒体に付着させて画像を形成する、記録方法。
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