特許文献1の駆動装置を組み立てる際には、プーリホルダに対して従動プーリをねじ等で固定し、そのプーリホルダを牽引部材に張力を与えながらガイドレールにねじ等で締結するため、ねじの締め付け作業(組立作業)が面倒であった。また、従動プーリを取り替える場合も同様に、ねじの取り外しおよび締め付け作業が必要であり、従動プーリの交換作業に手間がかかっていた。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
この発明の他の目的は、プーリホルダに対して従動プーリを容易に着脱できる、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
請求項1の発明は、画像読取装置に用いられ、原稿載置台と、原稿載置台に載置された原稿上の画像を読み取るための走査ユニットとを備える画像読取装置であって、走査ユニットを牽引する牽引部材、牽引部材に駆動力を伝達する駆動プーリ、牽引部材に張力を付与した状態で当該牽引部材を保持する従動プーリ、および従動プーリを回転可能に保持するプーリ軸を有するプーリホルダを備え、プーリ軸は、周方向の一部を切り欠いて形成される溝状の切欠部と、前記切欠部に対応する位置に設けられ、前記従動プーリを係止可能であって、かつ弾性変形により当該プーリ軸の軸中心側に向かって傾動することによって前記従動プーリとの係止を解除可能である係止爪とを有し、係止爪は、プーリ軸における周方向位置のうち、牽引部材から従動プーリへの張力作用方向側に配置される、駆動装置である。
請求項1の発明によれば、プーリホルダが備えるプーリ軸に対して、従動プーリの上端部を係止可能であって、かつ弾性変形により軸中心側に向かって傾動することによって従動プーリとの係止を解除可能な係止爪を設けたので、プーリ軸に従動プーリを嵌め込むだけで、プーリホルダに対して従動プーリを回転可能にかつ抜け止めされた状態で保持させることができる。また、係止爪を軸中心側に傾けつつプーリ軸から従動プーリを引き抜くだけで、従動プーリをプーリホルダから取り外すことができる。すなわち、プーリホルダに対して従動プーリを容易に着脱できる。
また、プーリ軸に従動プーリを取り付ける際にねじやワッシャ等を必要としないので、部品点数を削減でき、延いては製造コストを低減できる。
請求項2の発明は、請求項1の発明に従属し、切欠部は、少なくとも前記プーリ軸の軸中心向かって窪んだ溝部を含み、係止爪は、前記溝部に向かって傾動される。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明に従属し、係止爪は、張力作用方向側であって、かつ、プーリ軸の軸中心から張力作用方向に延びる線を中心線として、プーリ軸の軸中心を通り張力作用方向に延びる線と直交する線上までの位置に配置される。
請求項3の発明によれば、牽引部材にテンションがかかった状態においても、係止爪が従動プーリの上端部からより外れ難くなる。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか発明に従属し、プーリ軸は、当該プーリ軸の軸中心から張力作用方向に延びる線上に配置される1つの係止爪を有する、画像読取装置である。
請求項4の発明によれば、牽引部材からの荷重を最も受け難い位置に係止爪を配置するので、係止爪は従動プーリの上端部からより外れ難くなる。したがって、プーリ軸はより安定して従動プーリを保持することができる。
請求項5の発明は、請求項4の発明に従属し、駆動プーリの軸中心と、従動プーリの軸中心(つまりプーリ軸の軸中心)と、係止爪の中心と、プーリホルダを画像読取装置内に取り付けるための保持部材の中心とは、一直線上に配置される、画像読取装置である。
請求項6の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に従属し、プーリ軸は、当該プーリ軸の軸中心を通り張力作用方向に延びる線を中心線として線対称に配置される2つの係止爪を有する、画像読取装置である。
請求項6の発明によれば、プーリ軸が2つの係止爪を有するので、より確実に従動プーリを抜け止めすることができる。また、2つの係止爪が線対称に配置されることから、プーリ軸は従動プーリをバランスよく回転させることができる。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に従属し、係止爪の上端面は、プーリ軸の軸中心に対して直交する方向に延びる平坦面とされる、画像読取装置である。
請求項7の発明によれば、係止爪の上端面を平坦面とすることによって、係止爪の高さ寸法を低く抑えることができ、プーリホルダの薄型化を図ることができる。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明に従属し、係止爪の軸中心側の上端部には、プーリ軸の軸中心に向かって下り勾配となる傾斜面が形成される、画像読取装置である。
請求項8の発明によれば、従動プーリの脱着時に、係止爪をプーリ軸の軸中心側に向かって大きく傾動させることができるようになり、その分だけ従動プーリに対する係止爪の引っ掛かり量を大きくすることが可能であるので、係止爪によって従動プーリをより確実に抜け止めできる。
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかの発明に従属し、プーリホルダを画像読取装置内に取り付けるための保持部材は、プーリ軸よりも、牽引部材から従動プーリへの張力作用方向側に配置される、画像読取装置である。
請求項9の発明によれば、保持部材をプーリ軸よりも牽引部材による張力作用方向側に配置するので、プーリ軸および従動プーリを画像読取装置の筐体の側板近傍に配置できるようになり、画像読取装置の副走査方向における小型化が可能となる。
請求項10の発明は、請求項9に従属し、プーリホルダは、前記保持部材が挿通される長孔を有し、前記プーリ軸の軸中心から前記張力作用方向に延びる線方向に移動可能に前記画像読取装置内に取り付けられる、画像読取装置である。
請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの発明に従属し、プーリホルダは、前記従動プーリよりも前記駆動プーリ寄りに、上方に突出する突起部をさらに有する、画像読取装置である。
請求項12の発明は、請求項11の発明に従属し、突起部は、前記プーリ軸の軸中心から前記張力作用方向に延びる線上に配置される、画像読取装置である。
請求項13の発明は、請求項11の発明に従属し、突起部の中心と、前記駆動プーリの軸中心と、前記従動プーリの軸中心と、前記係止爪の中心と、前記プーリホルダを前記画像読取装置内に取り付けるための保持部材の中心とは、一直線上に配置される、画像読取装置である。
請求項14の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の画像読取装置を備える、画像形成装置である。
請求項14の発明によれば、請求項1の発明と同様に、プーリホルダに対して従動プーリを容易に着脱できると共に、部品点数を削減できる。また、牽引部材にテンションがかかった状態においても、係止爪は従動プーリの上端部から外れ難い。
この発明によれば、プーリホルダが備えるプーリ軸に対して、従動プーリの上端部を係止可能であって、かつ弾性変形により軸中心側に向かって傾動することによって従動プーリとの係止を解除可能な係止爪を設けた。このため、プーリ軸に従動プーリを嵌め込むだけで、プーリホルダに対して従動プーリを回転可能にかつ抜け止めされた状態で保持させることができる。また、係止爪を軸中心側に傾けつつプーリ軸から従動プーリを引き抜くだけで、従動プーリをプーリホルダから取り外すことができる。すなわち、プーリホルダに対して従動プーリを容易に着脱できる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
[第1実施例]
以下、図面を適宜参照して、この発明の第1実施例である画像読取装置100について説明する。図1は、画像読取装置100を備える画像形成装置102の外観を示す図解図である。また、図2は、画像読取装置100の内部構成を示す平面図であり、図3は、画像読取装置100の縦断面を概略的に示す断面図である。
図1−図3を参照して、画像読取装置100は、走査ユニット32を副走査方向に往復移動させるための駆動装置10を備え、複写機、ファクシミリ、プリンタおよびこれらの複合機などの画像形成装置102に用いられる。この実施例では、画像形成装置102は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。
先ず、画像形成装置102の基本構成について概略的に説明する。図1−図3に示すように、画像形成装置102は、装置本体12およびその上方に配置される画像読取装置100を含み、画像読取装置100で読み込まれた画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データに基づいて、所定の用紙(記録紙)に対して多色または単色の画像を形成する。
装置本体12内の所定位置には、画像形成装置102の各部位の動作を制御する制御部14が設けられる。制御部14は、CPUおよびメモリ等を備え、タッチパネルおよび操作ボタン等の操作部16への入力操作などに応じて、画像形成装置102の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置102に種々の動作を実行させる。
また、装置本体12には、露光ユニット、感光体ドラム、帯電器、現像装置および定着ローラ等を備える画像形成部18が内装される。画像形成部18は、給紙カセット20等から搬送される記録紙上に画像を形成し、画像形成済みの記録紙を排出トレイ22に排出する。
画像読取装置100は、矩形平板状の底板24aおよびその周縁部から立ち上がる側壁24bを有する筐体24を備える。この筐体24の天面には、透明材によって形成される原稿載置台26が設けられる。また、原稿載置台26の上方には、ヒンジ等を介して原稿押さえカバー28が開閉自在に取り付けられる。この原稿押えカバー28には、原稿トレイに載置された原稿を画像読取位置に対して1枚ずつ自動的に給紙するADF(自動原稿送り装置)30が設けられる。また、筐体24の前面側には、ユーザによる入力操作を受け付けるタッチパネルおよび操作ボタン等の操作部16が設けられる。
また、筐体24内には、原稿載置台26に載置された原稿上の画像を読み取るためのCIS(Contact Image Sensor)走査体32、ガイドシャフト34、および原稿載置台26の下方でCIS走査体32を往復移動させるための駆動装置10などが設けられる。後述するように、原稿載置台26に載置された原稿上の画像を読み取る場合には、CIS走査体32が原稿載置台26の下方で往復移動することによって、当該原稿上の画像を読み取り、その画像データを取得する。一方、原稿トレイに載置された原稿上の画像を読み取る場合には、CIS走査体32は、所定の画像読取位置の下方で待機され、ADF30によって搬送される原稿が画像読取位置(CIS走査体32上)を通過するときに当該原稿上の画像を読み取り、その画像データを取得する。
CIS走査体(走査ユニット)32は、いわゆる密着型のイメージセンサであり、光源、ロッドレンズアレイ、複数の撮像素子(光電変換素子)などを備える。光源は、たとえば複数のLEDが配列されたLEDアレイであり、原稿表面を照射する。ロッドレンズアレイは、原稿からの反射光を複数の撮像素子へ集光させる。複数の撮像素子は、ロッドレンズアレイによって結像された画素情報を読み取る。なお、CIS走査体32の代わりに、CCD(Charge Coupled Device)センサを利用する走査ユニットを用いることもできる。
ガイドシャフト34は、CIS走査体32の往復移動をガイドするものであり、筐体24の底板24a上をCIS走査体32の移動方向(副走査方向)に延びる。CIS走査体32は、このガイドシャフト34によって移動可能に支持されており、駆動装置10から駆動力を得ることによって、原稿載置台26の下方を往復移動する。
続いて、図2−図6を参照して、駆動装置10の構成について具体的に説明する。図2および図3に示すように、駆動装置10は、駆動プーリ36、従動プーリ38および牽引部材40等を備える。
駆動プーリ36は、ガイドシャフト34の一方端部近傍に設けられ、従動プーリ38は、ガイドシャフト34の他端部近傍に設けられる。駆動プーリ36および従動プーリ38には、無端帯状の牽引部材40が巻回され(掛け回され)、この牽引部材40にCIS走査体32が連結される。駆動プーリ36は、駆動源であるモータによって回転され、その駆動力を牽引部材40に伝達する。牽引部材40は、タイミングベルト、ワイヤまたはチェーン等で構成され、駆動プーリ36の回転に伴って周運動することによって、CIS走査体32を牽引する。これにより、CIS走査体32は、ガイドシャフト34に沿って往復移動される。また、従動プーリ38は、牽引部材40に所定の張力を付与するものであり、牽引部材40の周運動に伴い回転する。
以下、従動プーリ38の支持構造について説明する。図4は、画像読取装置100が備える駆動装置10の一部(従動プーリ38の周辺部分)の構成を示す部分拡大斜視図である。図5は、駆動装置10が備えるプーリホルダ42を示す図解図であって、(a)はプーリホルダ42の斜視図であり、(b)はプーリホルダ42の平面図であり、(c)はプーリホルダ42を正面側から見た側面図である。図6は、プーリホルダ42が備える係止爪56の先端部分を拡大して示す部分断面図である。図7は、プーリ軸44における係止爪56の配置位置を説明するための図解図である。
図4に示すように、従動プーリ38は、筐体24の底板24aに対して、プーリホルダ42を用いて取り付けられる。具体的には、従動プーリ38がプーリホルダ42に形成されるプーリ軸44によって回転可能に支持された状態で、プーリホルダ42がワッシャおよび段ビス等の保持部材46によって底板24aに取り付けられる。なお、プーリホルダ42は、底板24aから略U字状に突出するガイド部48に嵌め込まれることによって、副走査方向に摺動可能となっている。また、プーリホルダ42の駆動プーリ36側の端部には、スプリング等の弾性部材である張力付与部材50が設けられている。プーリホルダ42は、この張力付与部材50によって、牽引部材40に張力を付与する方向、つまりガイドシャフト34に沿って従動プーリ38が駆動プーリ36から離れる方向に押圧付勢される。
続いて、プーリホルダ42の具体的構成について説明する。図5に示すように、プーリホルダ42は、ホルダ本体52、ばね装着部54、および係止爪56を有するプーリ軸44等を含み、これらは合成樹脂等によって一体成形される。
ホルダ本体52は、矩形平板状に形成され、その駆動プーリ36側(つまり、牽引部材40によって従動プーリ38が引っ張られる方向側)の端面には、短円柱状のばね装着部54が形成される。なお、この第1実施例では、牽引部材40によって従動プーリ38が引っ張られる方向側を、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側ということにする。ばね装着部54には、上述の張力付与部材50が取り付けられる。また、ホルダ本体52のばね装着部54と反対側の端部には、上方に突出するようにプーリ軸44が形成される。プーリ軸44の具体的構成については後述する。
また、ホルダ本体52の中央部には、プーリホルダ42が副走査方向に位置調整可能となるように、長孔60が形成される。そして、この長孔60を通して上述の保持部材46が底板24aに固定される。つまり、プーリホルダ42を画像読取装置100の筐体24内に取り付けるための保持部材46は、従動プーリ38を支持するプーリ軸44よりも駆動プーリ36側(牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側)に配置される。具体的には、この実施例では、保持部材46は、プーリ軸44の軸中心Cから牽引部材40による張力作用方向に延びる線L(軸中心Cおよび線Lは図7参照)上に配置される。このように、保持部材46をプーリ軸44よりも牽引部材40による張力作用方向側に配置することによって、プーリ軸44および従動プーリ38を筐体24の側板24b近傍に配置できるので、画像読取装置100の副走査方向における小型化が可能となる。
さらに、ホルダ本体52の両側面(牽引部材40による張力作用方向と直交する方向における両端面)には、断面略半円状の突起62が形成される。この突起62の先端部が上述のガイド部48と当接することによって、ホルダ本体52とガイド部48との接触面積が小さくなり、ホルダ本体52とガイド部48との間の摩擦力が低減される。したがって、プーリホルダ42がガイド部48内で円滑に摺動可能となる。
次に、プーリ軸44の具体的構成について説明する。図5に示すように、プーリ軸44は、従動プーリ38を回動可能に支持する支軸であって、略円筒状に形成される軸本体64を備える。軸本体64の外径は、従動プーリ38の内径とほぼ同じに設定されており、軸本体64の外側面上を従動プーリ38の内側面が摺動するようにして、従動プーリ38は回転する。また、軸本体64は、その周方向の一部が切り欠かれており、その切欠き部分に従動プーリ38の上端部を係止するための係止爪56が形成される。この第1実施例では、プーリ軸44における周方向位置のうち、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側に1つの係止爪56が配置される。具体的には、係止爪56は、プーリ軸44の軸中心Cを通り牽引部材40による張力作用方向に延びる線上であり、駆動プーリ36に最も近い位置に配置されている。つまり、この実施例では、駆動プーリ36の軸中心と、従動プーリ38の軸中心(つまりプーリ軸44の軸中心C)と、係止爪56の中心と、保持部材46の中心とは、一直線上に配置される(図2参照)。
係止爪56は、軸本体64の内側面から外方に突出して上方に起立する傾動片56aと、傾動片56aの先端部から外方に延びる係止片56bとを含む。この係止片56bによって従動プーリ38の上端部が係止されることによって、プーリ軸44に回転可能に保持された従動プーリ38が抜け止めされる(図4および図6参照)。また、傾動片56aのプーリ軸44の径方向における幅寸法は、プーリ軸44の周方向における幅寸法よりも小さく形成される。つまり、傾動片56a(係止爪56)は、プーリ軸44の周方向側に対して傾動し難いが、プーリ軸44の軸中心C側に向かって傾動し易い形状とされている。係止爪56は、弾性変形によりプーリ軸44の軸中心C側に向かって傾動することによって、従動プーリ38との係止を解除可能である。また、係止爪56の下端部には、平板状の補強部66が一体的に形成される。
また、図6からよく分かるように、係止爪56の外方側の上端部(先端部上面)には、外方に向かって下り勾配となる直線状の傾斜面56cが形成される。傾斜面56cを形成することによって、プーリ軸44に対して従動プーリ38を取り付ける際に、プーリ軸44の下端部が傾斜面56cに当接することで自然と係止爪56がプーリ軸44の軸中心C側に向かって傾動するようになる。したがって、従動プーリ38の取り付けが容易になる。
さらに、係止爪56の上端面は、プーリ軸44の軸中心Cに対して直交する方向に延びる平坦面56dとされる。係止爪56の上端面を平坦面56dとすることによって、係止爪56の高さ寸法を低く抑えることができ、プーリホルダ42の薄型化を図ることができる。
また、係止爪56の軸中心C側の上端部には、プーリ軸44の軸中心Cに向かって下り勾配となる円弧状(R形状)の傾斜面56eが形成される。傾斜面56eを形成することによって、従動プーリ38の脱着時に、係止爪56をプーリ軸44の軸中心C側に向かって大きく傾動させることができるようになる。すなわち、係止爪56は、その下端部を支点として傾動するため、その上端部が大きく倒れることとなるが、係止爪56の軸中心C側の上端部に傾斜面56eを形成する(つまり角部分を無くす)ことによって、係止爪56を傾動させたときに軸本体64と干渉し難くなる。係止爪56をプーリ軸44の軸中心C側に向かって大きく傾動させることができるようにすれば、その分だけ従動プーリ38に対する係止爪56の引っ掛かり量(係止長さ)を大きくすることが可能であるので、係止爪56によって従動プーリ38をより確実に抜け止めすることができるようになる。このような傾斜面56eを形成する効果は、後述する第3実施例のように、プーリ軸44に複数の係止爪56を形成する場合に特に顕著に発揮される。係止爪56のそれぞれが傾動して干渉し合うことを防止できるからである。
なお、この第1実施例では、傾斜面56cを直線状の傾斜面としており、傾斜面56eを円弧状の傾斜面としている。しかし、傾斜面56cを円弧状の傾斜面としてもよいし、傾斜面56eを直線状の傾斜面としてもよい。
ここで、プーリ軸44の周方向における係止爪56の配置位置は、駆動プーリ36から最も遠い位置よりも、牽引部材40によって従動プーリ38が引っ張られる方向側(張力作用方向側(図7参照))であることが好ましい。これは、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向と逆側に係止爪56を配置していると、牽引部材40からの荷重によって係止爪56が外れてしまう恐れがあるからである。すなわち、牽引部材40にテンションがかかった状態においては、従動プーリ38が牽引部材40によって引っ張られる。係止爪56は、プーリ軸44の軸中心C側に傾動可能に(撓み易いように)形成されていることから、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向と逆側に係止爪56を配置していると、牽引部材40からの荷重によって係止爪56がプーリ軸44の軸中心C側に撓む。この撓みが大きくなると、従動プーリ38が係止爪56の先端に乗り上げる状態となって、係止爪56による従動プーリ38の係止が外れてしまう。これにより、係止爪56の先端と従動プーリ38とが接触した状態で従動プーリ38が回転することとなり、従動プーリ38の回転負荷が大きくなってしまう。延いては、プーリ軸44および従動プーリ38の破損に繋がる恐れもある。したがって、上述のように、係止爪56は、駆動プーリ36から最も遠い位置よりも、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側に配置することが好ましい。
なお、図7に示すように、この発明において、係止爪56の配置位置を示す張力作用方向側とは、従動プーリ38が牽引部材40に対して張力を付与する方向(従動プーリ38による張力付与方向)以外の範囲と言うこともできる。その中でも、好ましくは、係止爪56は、プーリ軸44の周方向位置において、プーリ軸44の軸中心Cから張力作用方向に延びる線Lを中心線(中央)とする270°の範囲R内、すなわち、張力作用方向側(駆動プーリ36側)であって、かつ、軸中心Cから張力作用方向に延びる線Lに対して時計回りおよび反時計回りのそれぞれに135°の角度を有する2つの線の間の270°の範囲R内に配置される。より好ましくは、係止爪56は、張力作用方向側(駆動プーリ36側)であって、かつ、プーリ軸44の軸中心Cから張力作用方向に延びる線Lを中心線として、プーリ軸44の軸中心Cを通り張力作用方向に延びる線と直交する線上までの位置(範囲)に配置される。特に好ましくは、係止爪56は、牽引部材40からの荷重を最も受け難い位置であり、具体的には図5に示したように、プーリ軸44の軸中心Cから牽引部材40による張力作用方向に延びる線L上、つまり駆動プーリ36に最も近い位置に配置される。
このような構成のプーリ軸44を有するプーリホルダ42においては、従動プーリ38を上方から押し込むようにしてプーリ軸44に嵌め込むだけで、プーリ軸44に対して従動プーリ38を取り付けることができる。プーリ軸44に従動プーリ38を取り付けた状態(使用時)においては、係止爪56の係止片56bによって従動プーリ38の上端部が係止されることにより、従動プーリ38が確実に抜け止めされる。また、牽引部材40や従動プーリ38等の交換ないしメンテナンス時においては、係止爪56を弾性変形により軸中心C側に傾動させながら従動プーリ38を引き抜くだけで、プーリ軸44から従動プーリ38を取り外すことができる。
この第1実施例によれば、プーリホルダ42が備えるプーリ軸44に対して、従動プーリ38の上端部を係止可能であって、かつ弾性変形により軸中心C側に向かって傾動することによって従動プーリ38との係止を解除可能な係止爪56を設けた。このため、プーリ軸44に従動プーリ38を嵌め込むだけで、プーリホルダ42(プーリ軸44)に対して従動プーリ38を回転可能であってかつ抜け止めされた状態で保持させることができる。つまり、プーリホルダ42に対する従動プーリ38の取り付け作業が容易となる。また、従動プーリ38を取り外す際には、係止爪56を軸中心C側に傾動させつつ、従動プーリ38をプーリ軸44から引き抜くだけでよいので、従動プーリ38の取り外し作業も容易となる。すなわち、第1実施例によれば、プーリホルダ42に対して従動プーリ38を容易に着脱することができる。
また、第1実施例によれば、プーリ軸44に従動プーリ38を取り付ける際にねじやワッシャ等の取付部材を必要としないので、部品点数を削減でき、延いては製造コストを低減できる。
さらに、第1実施例によれば、駆動プーリ36から最も遠い位置よりも、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側に係止爪56を配置したので、牽引部材40にテンションがかかった状態においても、係止爪56は従動プーリ38の上端部から外れ難い。特に、この第1実施例では、牽引部材40からの荷重を最も受け難い位置である駆動プーリ36に最も近い位置に係止爪56を配置しているので、プーリ軸44はより安定して従動プーリ38を保持することができる。
[第2実施例]
次に、図8を参照して、この発明の第2実施例である画像読取装置100について説明する。この第2実施例では、係止爪56の配置位置が上述の第1実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化することとする。そして、以下では、この第2実施例の画像読取装置100の駆動装置10が備えるプーリホルダ42の構成についてのみ説明する。図8は、画像読取装置100の駆動装置10が備えるプーリホルダ42を示す図解図であり、(a)はプーリホルダ42の斜視図であり、(b)はプーリホルダ42の平面図であり、(c)はプーリホルダ42を背面側から見た側面図である。
図8に示すように、プーリホルダ42は、ホルダ本体52、ばね装着部54、および係止爪56を有するプーリ軸44などを含み、これらは合成樹脂等によって一体成形される。係止爪56は、傾動片56aと係止片56bとを含み、傾動片56aのプーリ軸44の径方向における幅寸法は、プーリ軸44の周方向における幅寸法よりも小さく形成される。
そして、第2実施例では、係止爪56は、プーリ軸44における周方向位置のうち、プーリ軸44の軸中心Cを通り張力作用方向に延びる線と直交する線上に配置される。このような位置に係止爪56を配置すると、牽引部材40にテンションがかかった状態においては、牽引部材40からの荷重は主として軸本体64にかかるので、係止爪56にかかる荷重は小さくなる。また、係止爪56は、プーリ軸44の周方向側に対して傾動し難い形状とされていることから、仮に牽引部材40から荷重を受けたとしても、張力作用方向には撓み難い。このため、係止爪56は従動プーリ38の上端部から外れ難く、プーリ軸44は安定して従動プーリ38を保持することができる。
この第2実施例によれば、プーリ軸44が係止爪56を有するので、上述の第1実施例と同様に、プーリホルダ42に対して従動プーリ38を容易に着脱することができる。
また、第2実施例によれば、駆動プーリ36から最も遠い位置よりも、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側に係止爪56を配置したので、牽引部材40にテンションがかかった状態においても、係止爪56は従動プーリ38の上端部から外れ難い。
なお、第2実施例では、図8における背面側に係止爪56を配置しているが、もちろん、その反対側、つまり正面側に係止爪56を配置することもできる。
[第3実施例]
続いて、図9を参照して、この発明の第3実施例である画像読取装置100について説明する。この第3実施例では、プーリ軸44に2つの係止爪56を形成した点が上述の第1および第2実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の第1および第2実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化することとする。そして、以下では、この第3実施例の画像読取装置100の駆動装置10が備えるプーリホルダ42の構成についてのみ説明する。図9は、画像読取装置100の駆動装置10が備えるプーリホルダ42を示す図解図であり、(a)はプーリホルダ42の斜視図であり、(b)はプーリホルダ42の平面図であり、(c)はプーリホルダ42を裏面側から見た側面図である。
図9に示すように、プーリホルダ42は、ホルダ本体52、ばね装着部54、および係止爪56を有するプーリ軸44などを含み、これらは合成樹脂等によって一体成形される。
プーリ軸44は、略円筒状に形成される軸本体64を備える。軸本体64は、プーリ軸44の軸中心Cを通り張力作用方向に延びる線と直交する線上の2ヶ所において切り欠かれており、その切欠き部分のそれぞれに係止爪56が形成される。つまり、この第3実施例では、プーリ軸44は2つの係止爪56を有しており、2つの係止爪56は、プーリ軸44の軸中心Cを通り張力作用方向に延びる線を中心線として線対称に配置される。
係止爪56は、ホルダ本体52から上方に突出する矩形板状の傾動片56aと、傾動片56aの先端部から外方に延びる係止片56bとを含む。そして、傾動片56aのプーリ軸44の径方向における幅寸法は、プーリ軸44の周方向における幅寸法よりも小さく形成される。また、係止爪56の軸中心C側の上端部には、プーリ軸44の軸中心Cに向かって下り勾配となる円弧状の傾斜面56eが形成される(図6参照)。2つの係止爪56を形成する場合、従動プーリ38の脱着時には、2つの係止爪56のそれぞれが軸中心C側に向かって傾動することになるが、係止爪56の軸中心C側の上端部に傾斜面56eが形成しておくことにより、係止爪56同士が互いに干渉し難くなる。
この第3実施例によれば、プーリ軸44が係止爪56を有するので、上述の第1実施例と同様に、プーリホルダ42に対して従動プーリ38を容易に着脱することができる。
また、第3実施例によれば、駆動プーリ36から最も遠い位置よりも、牽引部材40から従動プーリ38への張力作用方向側に係止爪56を配置したので、牽引部材40にテンションがかかった状態においても、係止爪56は従動プーリ38の上端部から外れ難い。
さらに、第3実施例によれば、プーリ軸44が2つの係止爪56を有するので、より確実に従動プーリ38を抜け止めすることができる。また、この際、2つの係止爪56は、プーリ軸44の軸中心Cを通り張力作用方向に延びる線を中心線として線対称に配置されることから、プーリ軸44は従動プーリ38をバランスよく回転させることができる。
なお、係止爪56の具体的形状は、第1−第3実施例に示したような形状に限定されるものではなく、従動プーリ38の上端部を係止可能であって、かつ弾性変形により軸中心C側に向かって傾動することによって従動プーリ38との係止を解除可能な形状であれば、適宜な形状を採用可能である。
また、上述の第1−第3実施例の各々では、画像読取装置100と画像形成部18を含む装置本体12とが一体化された画像形成装置(複合機)102に対して駆動装置10を適用するようにしたが、これに限定されない。たとえば、駆動装置10を備える画像読取装置100を個別の製品としてもよい。つまり、スキャナ機能のみを有する画像読取装置100に駆動装置10を適用してもよい。この場合には、画像読取装置100は、たとえば、ネットワークに接続されてパーソナルコンピュータや他の画像形成装置などに読み取った画像を送信する。
なお、上で挙げた寸法や角度などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。