JP6100205B2 - セメント系材料、セメント系材料充填方法、及びプレパックドコンクリート構築方法 - Google Patents

セメント系材料、セメント系材料充填方法、及びプレパックドコンクリート構築方法 Download PDF

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Description

本発明は、セメント系材料、セメント系材料充填方法、及びプレパックドコンクリート構築方法に関するものである。
従来、例えば、古くなった上水道管や下水道管、カルバートトンネル、閉山した炭鉱の洞道など、水を置換しながら空間を充填するための材料として、水中不分離性コンクリート(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)を用いることが考えられる。
特開2004−67453号公報
水中不分離性コンクリート設計施工指針(案),コンクリートライブラリ,土木学会,1991年5月,67号,p.28-29
しかしながら、上記非特許文献1には、水中不分離性コンクリートの水中流動距離は原則5m以下とすべき旨が記載されており、それ以上長く水中を流動させれば材料分離が発生する可能性が高くなる。従って、水を置換しながら空間を水中不分離性コンクリートで充填するためには、水中流動距離が5m以下になるように、当該空間に充填口を多く設定する必要があり、工事の手間が大きい。従って、この種の充填材料としては、水中流動距離を長くすることが望まれていた。本発明は、水中流動距離を長くすることができるセメント系材料、及びこれを用いたセメント系材料充填方法、並びにプレパックドコンクリート構築方法を提供することを目的とする。
本発明のセメント系材料は、
水と、セメントを含む粉体と、増粘剤と、が混合されてなるセメント系材料であって、
前記増粘剤は、スルホン基を有する芳香族化合物及び/またはその塩と、テトラアルキルアンモニウム塩と、を含み、
前記粉体の容積Vpに対する水の容積Vwの比率Vw/Vpが130〜210%であり、
1m当たりに混合されるセメント重量cは200〜600kgであり、
前記増粘剤の前記水に対する重量比は2.0%〜6%であることを特徴とする。
また、本発明のセメント系材料は、
水と、セメントを含む粉体と、増粘剤と、が混合されてなるセメント系材料であって、
JIS R 5201に規定されたモルタルフロー試験器において打撃回数を0打としたフロー試験によるモルタルフロー値が270〜430mmであり、
JSCE D104 に規定された水中不分離性コンクリートの規格におけるpHが12以下かつ懸濁物質量が50mg/L以下であり、
粘性が10000mPa・s以下であることを特徴とする。
これらの構成によれば、流動性が高く良好な水中不分離性を示し、水中流動距離を長くすることができるセメント系材料が得られる。
また、本発明のセメント系材料は、
減水剤と消泡剤とが更に混合されており、
混合される前記減水剤の重量SPは前記粉体の重量Pに対して0.5%〜5%であり、
混合される消泡剤の重量DAは、前記粉体の重量Pに対して0.001%〜0.1%であることとしてもよい。
また、粉体は、フライアッシュ、石炭灰、石粉、シリカフューム又はスラグ微粉末の少なくとも何れかを更に含むこととしてもよい。
本発明のセメント系材料充填方法は、所定の空間をセメント系材料で充填するセメント系材料充填方法において、水が貯留された空間内に上記の何れかのセメント系材料を導入し、空間内の水を置換しながらセメント系材料を空間に充填することを特徴とする。
上述の何れかのセメント系材料は、流動性が高く良好な水中不分離性を示すので、水中において材料分離せずに長距離を流動させることができる。また、このセメント系材料は流動性が高いので、比較的低い圧力で注入しても、注入口から遠い位置までセメント系材料を到達させることができる。よって、このセメント系材料充填方法によれば、上記空間に設けるべきセメント系材料の充填口を減少することができ、施工の手間を減少することができる。
また、本発明のセメント系材料充填方法では、空間内の水中におけるセメント系材料の水中流動距離が、10〜50mであるようにしてもよい。
本発明のプレパックドコンクリート構築方法は、所定の空間にプレパックドコンクリートを構築する構築方法であって、空間内に砕石を導入する砕石導入工程と、砕石が収納された空間内に上記の何れかのセメント系材料を導入し砕石の隙間に充填させるセメント系材料充填工程と、を備えたことを特徴とする。
上述の何れかのセメント系材料は、流動性が高く良好な水中不分離性を示すので、細かい砕石同士の隙間にも流入し良好に充填される。従って、この構築方法によれば砕石の中に粒が細かいものが混入してもよく、その結果、砕石の選別作業の手間を低減することができる。
本発明によれば、水中流動距離を長くすることができるセメント系材料、及びこれを用いたセメント系材料充填方法、並びにプレパックドコンクリート構築方法を提供することができる。
本発明者らによる実験結果を示すグラフである。 本発明者らによる他の実験結果を示すグラフである。 本発明者らによる更に他の実験結果を示すグラフである。 本発明者らによる更に他の実験結果を示すグラフである。 (a)〜(c)は、本発明のセメント系材料充填方法が適用された空間を順に示す断面図である。 (a),(b)は、本発明のプレパックドコンクリート構築方法が適用された空間を順に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態に係るセメント系材料ついて詳細に説明する。本実施形態のセメント系材料は、水、セメント、微粉末、及び増粘剤が混合されて調製される。以下、セメントと微粉末とを合わせて「粉体」と称する。また、減水剤と消泡剤が更に混合されてもよい。なお、本実施形態のセメント系材料には、土木学会コンクリート標準示方書,日本建築学会建築工事標準仕様書,あるいは,JISA 5005(砕砂),JIS A 5011(スラグ細骨材),JIS A 5021(再生細骨材)に規定されたコンクリート用細骨材(例えば砂)は混合されない。
微粉末は、助剤として混合されるものであり、好ましくは粒径0.1mm以下のものであり、例えば、シリカフューム,フライアッシュ、石炭灰,石粉、スラグ微粉末等を用いることができる。或いは、シリカフューム,フライアッシュ、石炭灰,石粉、スラグ微粉末のうちの2種以上を混合して用いてもよい。
増粘剤としては、スルホン基を有する芳香族化合物及び/またはその塩(以下「化合物α」という)と、テトラアルキルアンモニウム塩(以下「化合物β」という)と、を含むものが用いられる。
化合物(α)としては、アルキルアリルスルホン酸、(例えば、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸)、クメンスルホン酸、スチレンスルホン酸等、およびこれらの塩が挙げられる。これらの塩としては、Na塩であることが好ましく、特に、アルキルアリルスルホン酸Naが好ましい。また、上記を2種以上併用してもよい。ただし、化合物(α)が重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)は500未満であることが好ましい。
化合物(β)としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。アルキルトリメチルアンモニウム塩は、炭素数10〜26のアルキル基を有するものが好ましい。具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が好ましい。
特に、化合物(α)がp−トルエンスルホン酸またはその塩であり、化合物(β)がヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩である組み合わせが好ましい。
また、増粘剤は、炭素数4〜6のジカルボン酸(C1)と、炭素数8〜10のジカルボン酸(C2)と、モノカルボン酸(D)とを含んでもよい。この場合、ジカルボン酸(C1)とジカルボン酸(C2)の重量比が、(C1)/(C2)=0.1〜9.5であり、且つ、ジカルボン酸(C)とモノカルボン酸(D)の重量比が、(C)/(D)=1〜50であることが好ましい。
上記のような増粘剤の一例として、花王株式会社製の高機能特殊増粘剤「ビスコトップ200LS-2」が挙げられる。また、上記の化合物(A)を含む材料と化合物(B)を含む材料とが、本実施形態のセメント系材料の調製直前に混合されるか、或いは調製中のセメント系材料内で混合されて増粘剤を構成してもよい。この例として、使用時に2液を混合するタイプの増粘剤である、花王株式会社製の高機能特殊増粘剤「ビスコトップ200A」と「ビスコトップ200B」との組み合わせが挙げられる。
本実施形態のセメント系材料の配合は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、好ましい配合では、粉体の容積Vpに対する水の容積Vwの比率Vw/Vpが130〜210%(更に好ましくは150〜210%であり、更に好ましくは180〜200%)であり、1m当たりに混合されるセメント重量cは200〜600kgであり、前記増粘剤の前記水に対する重量比は2.0%〜6%(さらに好ましくは3〜4.5%)である。また、このとき,1mあたりに混合される好ましい水の重量wは,643〜666kg、1mあたりに混合される好ましいセメント重量cは250〜400kgである。
更に、セメント系材料に減水剤と消泡剤とが混合されてもよく、この場合、これらの混合割合は以下のようにすることが好ましい。すなわち、セメント系材料1m当たりに混合される減水剤の重量SPは,粉体重量Pに対して0.5%〜5%(さらに好ましくは,1.0%〜4%)であり、消泡剤の重量DAは,粉体重量Pに対して0.001%〜0.1%(さらに好ましくは,0.002〜0.05%)である。
以上の構成によれば、流動性が高く良好な水中不分離性を示すセメント系材料が得られる。続いて、上記セメント系材料による作用効果を確認すべく本発明者らが行った実験について説明する。
〔セメント系材料の調製〕
セメント系材料の調製に用いた使用材料を下表1に示す。
Figure 0006100205

表2に示すように、配合を変えながら11種のセメント系材料のサンプル(サンプル1〜11)を調製した。
〔性状試験〕
それぞれのサンプル1〜11について表3に示すフレッシュ性状試験と硬化性状試験とを行った。各性状の試験方法は、表4に示されている。但し、表3中の項目「モルタルフロー」の測定については、JIS R 5201に規定されたモルタルフロー試験器において、打撃回数を0打としたフロー試験によるモルタルフロー値を測定値とした。
Figure 0006100205


Figure 0006100205


Figure 0006100205

表2及び表3に示される通り、サンプル2〜11においては、流動性が高く良好な水中不分離性を示すセメント系材料が得られることが判明した。すなわち、サンプル2〜11においては、JIS R 5201に規定されたモルタルフロー試験器において打撃回数を0打としたフロー試験によるモルタルフロー値が270〜430mmであり、JSCE D104(土木学会基準) に規定された水中不分離性コンクリートの規格におけるpHが12以下かつ懸濁物質量が50mg/L以下であり、粘性が10000mPa・s以下である、セメント系材料が得られることが判った。一方、サンプル1については、増粘剤が多いため、粘性が高くなってしまったと考えられる。
また、上記のモルタルフロー値は370〜430mmであると更に好ましい。上記のpHは、10以下であると更に好ましい。上記の粘性は8000mPa・s以下であると更に好ましい。
また、硬化性状試験は、サンプル3〜11から気中で製作した硬化体と水中で製作した硬化体について圧縮強度を測定した。表2及び表3に示す硬化性状試験の結果から理解される通り、サンプル3〜11においては、水中で硬化させた場合においても、気中で硬化させた場合に対して遜色ない強度の硬化体が得られることが判った。
続いて、上記試験結果に鑑み、セメント系材料の基本配合を表5の通り決定し、基本配合のセメント系材料を調製して、次に説明する長距離水中流動実験と、埋設物充填実験とを実行した。
Figure 0006100205

〔長距離水中流動実験〕
基本配合で調製したセメント系材料の水中での流動可能距離を把握することを目的として、50mの長距離水中流動実験を実施した。U字溝(内寸W1.0m×H1.0m×L2m)を25基連結(PCU字溝を連結)して長さ50mのU字溝を構築し、両端をつま板にて閉塞し、上方を上蓋で閉塞し、水を充填した。水路の片端から1mの位置の中央部を充填口とし打設菅(2Bトレミー)を設置した。トレミー管の先を底部から50mmの高さの位置とし固定した。充填設備はチューブ式ポンプ(最大流量:160L/分)(インバータ式流量可変対応)で圧送流量は、125L/分に設定した。
セメント系材料の注入は、2回(1層目、2層目)に分けて実施した。(1)注入箇所の打上がり高さが80cmになるまで連続的に打ち込んだ。(2)打上り高さが80cmになったら注入をやめ、直ちに、延長方向5mごとに打上り高さを測定し、流動勾配を求め、pH値の測定、濁度検査用の採水を行った。(3)2時間後,同じく,延長方向5mごとに打上がり高さを測定し、流動勾配を求め、pH値の測定を行った。(4)翌日、延長方向5mごとに打上がり高さを測定し、流動勾配を求め、pH値の測定を行った。また、充填材が硬化していないことを確認した。(5)1回目(1層目)の注入から中1日おいて,2回目(2層目)の注入を実施する。注入箇所の打上りが上蓋に接して、10m先の上部開口部まで充填材が押し出されるまで連続的に打ち込んだ。セメント系材料が上蓋と密着しながら押し出されることで充填性を検証した。
(2)〜(4)を繰り返し、(6)材齢7日後,延長方向5mごとに打上がり高さを測定し,2層目の流動勾配を測定する。その後,7mごとにコア抜きを行った。コアは,採取後、20℃水中養生し、コアの評価を行った。
また、水槽内で流動するセメント系材料の流動状態の経時的な変化を計測し、図1(1層目注入時)及び図2(2層目注入時)に示した。これらのグラフは、注入開始後の各時刻に、水槽の長辺方向の各位置においてセメント系材料の高さをプロットしたものである。
図1及び図2に示されるように、セメント系材料の流動中における流動勾配は約0.5%(セメント系材料が50m地点に到達したとき)であり、注入完了時における流動勾配はほぼ0%であった。また、流動距離0m,20m,35m,48mでコアボーリングによって採取した試料の外観評価を行った結果、セメント系材料の材料分離が発生しておらず硬化状況が良好であることが確認された。また、セメント系材料は、50m流動後も良好な品質であった(目視判断)。また,コアボーリングした試料の密度や圧縮強度を試験によって確認したところ,長距離水中流動させたセメント系材料は,硬化体としての性能低下は非常に小さく,良好な品質であった。試験結果は下表に示す。
Figure 0006100205


以上の実験により、本実施形態のセメント系材料は、流動性が高く良好な水中不分離性を示し、材料分離を生じさせずに50mの水中流動が可能であることが確認された。
〔埋設物充填実験〕
U字溝を用いた水槽(内寸W1.0m×H1.0m×L4m)に水を張り、水槽内に埋設物を配置した状態で水槽内にセメント系材料を注入する実験を行った。
(1)水槽内に設置する埋設物として配管(配管径:4インチ、配管長:3m、配管数:2本、配置:上下)を設置した。配管は、水槽の側壁に沿って、アングル材を介して上下に配列し水平に設置した。
(2)水槽内に設置する埋設物として、水槽の中央部で水槽の幅全体に亘る領域において、砕石(模擬堰止)(砕石の粒径:20-40mm、砕石の設置形状:高さ60cm、底面の水槽長辺方向の長さ100cm、上部の水槽長辺方向の長さ50cm)を設置した。
セメント系材料の注入管(φ50mm)は、水槽端部から0.2m位置のセンターに鉛直に設置した。注入管の吐出口の位置は、水槽底面から5cm離れた位置とした。注入流量(速度)は75L/分とした。水槽の上蓋設置していない。
(1)の埋設物の場合において、水槽内で流動するセメント系材料の流動状態の経時的な変化を計測し、図3に示した。このグラフは、注入開始後の各時刻に、水槽の長辺方向の各位置においてセメント系材料の高さをプロットしたものである。図3に示されるように、水槽に注入されたセメント系材料は、問題なく水槽全体に充填されることが判った。また、セメント系材料の硬化後に、配管の周囲を斫って充填状況を目視確認したところ、セメント系材料は、配管の周囲の狭隘部(フランジ・ボルト周りなど)にも確実に(ほぼ隙間なく)充填されていることが確認された。
(2)の埋設物の場合において、水槽内で流動するセメント系材料の流動状態の経時的な変化を計測し、図4に示した。このグラフは、注入開始後の各時刻に、水槽の長辺方向の各位置においてセメント系材料の高さをプロットしたものである。図4に示されるように、水槽に注入されたセメント系材料は水槽中央部の砕石の隙間を通過して、砕石設置領域を挟んだ先の領域に到達することが判った。そして、遅くとも注入から2日後には、砕石の設置領域も含めて、水槽の全長に亘ってセメント系材料の上面がほぼ水平になることが判った。また、砕石層の上部の砕石を撤去して確認したところ、砕石中の充填剤も問題なく硬化していた。また,コアボーリングによって砕石の通過前後のセメント硬化体の密度,圧縮強度を試験により確認したところ、通過前後で大きな差異はなかった。試験結果を下表に示す。これにより、本実施形態のセメント系材料は、密実に積み重なった砕石を通過し充填されることが判り、砕石層が充填すべき空間に存在したとしても、当該砕石層は本実施形態のセメント系材料の堰止めとして機能しないことが判った。
Figure 0006100205

続いて、前述の本実施形態のセメント系材料を用いたセメント系材料充填方法の一実施形態について図5を参照しながら説明する。
本実施形態のセメント系材料充填方法は、所定の空間をセメント系材料で充填するセメント系材料充填方法において、水が貯留された空間内に前述のセメント系材料を導入し、空間内の水を置換しながらセメント系材料をこの空間に充填するものである。
例えば、図5(a)に示されるように、水Wが貯留された所定の空間10において、当該空間10の一端部に充填口3を設け、充填口3から水底付近までトレミー管5を挿入する。図5(b)に示されるように、トレミー管5を通じて前述のセメント系材料7を空間10内に注入していくと、水Wは例えば空間10の他端側に追い出されていき、最終的には、図5(c)に示されるように、空間10内の水Wが置換されてセメント系材料7が空間10内に充填される。空間10の例としては、古くなった上水道管や下水道管、カルバートトンネル、閉山した炭鉱の洞道などが挙げられる。
ここでは、空間10内の水中(W)におけるセメント系材料7の水中流動距離が、10〜50mになるように設定してもよい。具体的には、例えば、充填対象の古い上水道管に形成する充填口3のピッチを、長手方向で10mピッチ、20mピッチ、30mピッチ、40mピッチ、又は50mピッチ等にする方法が考えられる。このような施工方法には、水中流動距離を5m以下にすべき旨定められた従来の水中不分離性コンクリートは使用できないので、前述のセメント系材料7を好適に利用することができる。
すなわち、前述のとおり、セメント系材料7は、流動性が高く良好な水中不分離性を示すので、水中において材料分離せずに長距離(例えば50m)を流動させることができる。また、セメント系材料7は流動性が高いので、比較的低い圧力で注入しても、トレミー管5から遠い位置までセメント系材料7を到達させることができる。よって、このセメント系材料充填方法によれば、上記空間10に設けるべきセメント系材料の充填口3を減少することができ、施工の手間を減少することができる。例えば、長さ50m未満の空間10の施工であれば、充填口を1箇所とすることも可能になる。また、前述の埋設物充填実験で判るとおり、空間10内に支障物(例えば、砕石や配管)が存在する場合にも、これらを除去せずに、空間10内に良好にセメント系材料7を充填させることができる。
続いて、前述の本実施形態のセメント系材料を用いたプレパックドコンクリート構築方法の一実施形態について図6を参照しながら説明する。
本実施形態のプレパックドコンクリート構築方法では、図6(a)に示されるように、例えば、コンクリート型枠等で囲まれた所定の空間20内に砕石21を導入し(砕石導入工程)、その後、図6(b)に示されるように、砕石21が収納された当該空間20内に前述のセメント系材料7を導入し、砕石21の隙間にセメント系材料7を充填させる(セメント系材料充填工程)。セメント系材料7は、流動性が高く良好な水中不分離性を示すので、細かい砕石同士の隙間にも流入し良好に充填される。従って、この構築方法によれば砕石の中に粒が細かいものが混入してもよく、その結果、砕石の選別作業の手間を低減することができる。
例えば、通常のプレパックドコンクリート構築方法では、土木学会コンクリート標準示方書[施工編]によって砕石のサイズを15mm以上にするべき旨が定められている。これは、通常のセメント系材料では、砕石同士の隙間が小さいと、その隙間内にセメント系材料が十分に流れ込まない虞があるとの理由によるものである。これに対し、本実施形態のプレパックドコンクリート構築方法では、5mm程度のサイズの砕石を用いることが出来ると考えられる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。例えば、本発明のセメント系材料は、水中だけでなく気中でも優れた高流動のコンクリートとして使用可能である。
3…充填口、7…セメント系材料、10…空間、20…空間、21…砕石、W…水。

Claims (7)

  1. 水と、セメントを含む粉体と、増粘剤と、減水剤と、が混合されてなるセメント系材料であって、
    前記増粘剤は、スルホン基を有する芳香族化合物及び/またはその塩と、テトラアルキルアンモニウム塩と、を含み、
    前記粉体の容積Vpに対する水の容積Vwの比率Vw/Vpが166〜210%であり、
    1m当たりに混合されるセメント重量cは200〜600kgであり、
    前記増粘剤の前記水に対する重量比は2.0%〜6%であり、
    前記減水剤の重量SPは前記粉体の重量Pに対して1.0%〜5.0%であることを特徴とするセメント系材料。
  2. 泡剤が更に混合されており
    合される消泡剤の重量DAは、前記粉体の重量Pに対して0.001%〜0.1%であることを特徴とする請求項1に記載のセメント系材料。
  3. 前記増粘剤の前記水に対する重量比は4.5%以下である、請求項1又は2に記載のセメント系材料。
  4. 前記粉体は、
    フライアッシュ、石炭灰、石粉、シリカフューム又はスラグ微粉末の少なくとも何れかを更に含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のセメント系材料。
  5. 所定の空間をセメント系材料で充填するセメント系材料充填方法において、
    水が貯留された前記空間内に請求項1〜4の何れか1項に記載のセメント系材料を導入し、前記空間内の水を置換しながら前記セメント系材料を前記空間に充填することを特徴とするセメント系材料充填方法。
  6. 前記空間内の前記水中における前記セメント系材料の水中流動距離が、10〜50mであることを特徴とする請求項5に記載のセメント系材料充填方法。
  7. 所定の空間にプレパックドコンクリートを構築する構築方法であって、
    前記空間内に砕石を導入する砕石導入工程と、
    前記砕石が収納された前記空間内に請求項1〜4の何れか1項に記載のセメント系材料を導入し前記砕石の隙間に充填させるセメント系材料充填工程と、を備えたことを特徴とするプレパックドコンクリート構築方法。
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