(実施例1)
本発明の実施例1を具体的に説明する前に、本実施例の概略を説明する。実施例1は、筐体を保持するクリップをアンテナとして利用する携帯型端末装置に関する。近年、安全運転支援システムのひとつである歩車間通信システムの実用化が検討されている。歩車間通信とは、歩行者に携帯される携帯型端末装置と、車に搭載される車載型端末装置との間でなされる無線通信である。携帯型端末装置は、歩行者の存在、あるいは位置情報を車載型端末装置へ報知し、運転者に対して注意を喚起させる。このようにして、交通事故の危険を低減するための支援が目的とされる。ここで、歩者間通信はITS(Intelligent Transport Systems)によって実現され、無線周波数として例えば「700MHz帯」が使用される。位置情報の取得は、GPS(Global Positioning System)によってなされ、無線周波数として「1.5GHz帯」が使用される。なお、以下では、700MHz帯の使用を説明の対象とする。
携帯型端末装置を携帯する歩行者として、特に子供あるいはお年寄りが対象とされているので、携帯性が重要視され、小型であることが望まれる。さらに、歩行者が携帯用端末装置を携行する際に、ポケットなどに入れ人体と近接する場合が多いと想定され、人体と近接した条件において高いアンテナ性能が求められる。そのため、クリップをアンテナとして利用することが適している。クリップには、携帯型端末装置を保持するための機能が必要とされるので、クリップの一部と筐体との間に対象物を挟むような構造になっている。そのため、クリップの一部と、筐体内の回路が近接し、アンテナ性能が劣化するおそれがある。
これに対応するために、本実施例に係る携帯型端末装置は、筐体の上部においてクリップが接続されるとともに、筐体の下部においてクリップが接触される。また、筐体の内部において、接続する部分と接触する部分との間に、回路が配置される。さらに、クリップに筐体を保持させるために、重量バランスを考慮して、一般的に、クリップは筐体幅方向中央に配置され、クリップの中央部分から給電される。クリップの中央部分から給電されると、クリップを流れる高周波電流のキャンセルが発生し、アンテナ性能が劣化する。これに対応するために、本実施例に係る携帯型端末装置では、クリップの角近傍から給電する。
図1(a)−(b)は、本発明の実施例1に係る携帯用端末装置16の構成を示す。図1(a)は、平面図を示し、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図を示す。携帯用端末装置16は、筐体110、クリップ112を含む。筐体110は、第1回路114、第1基板116、第2回路118、第2基板120、第3回路122、電池端子124、電池126、給電部128、整合回路130を含む。クリップ112は、接続部132、接触部134を含む。
筐体110は、後述の無線通信回路を内設する。例えば、筐体110は、樹脂製であり、直方体の形状を有している。図1(a)においては、筐体110の内部の構成を説明するために、クリップ112が接続された側の一面を省略しているが、実際には、この一面も含まれるように筐体110は構成されている。
クリップ112は、導電性の板材を折り曲げて構成されており、図1(b)のごとく、断面が略L字形状を有する。クリップ112の略L字形状の一端側が接続部132であり、クリップ112は、接続部132において筐体110の一面に接続される。接続の一例が固定である。クリップ112の略L字形状の他端側が接触部134であり、クリップ112は、接触部134において筐体110の一面に接触される。さらに詳しく説明すると、クリップ112を構成している略L字形状は、第1辺と第2辺とが屈曲部を介してつながっている。ここで、第1辺のうち、屈曲部と反対側の端部が一端に相当する。また、第2辺のうち、屈曲部と反対側の端部が他端に相当する。ここで、第2辺は直線状ではなく、「く」の字に折れ曲がっており、折れ曲がった部分が接触部134である。例えば、図1(a)において、クリップ112は、短手30mm、長手80mmであり、これは、無線周波数760MHzの略λ/4、1575MHzの略λ/2に相当する。クリップ112自体は、無線通信回路のアンテナ40として機能する。つまり、クリップ112は、ひとつの部品で構成されている。そのため、クリップを樹脂製とし、これに導電性のループ状アンテナを接着させることによって、複数の部品で構成される場合よりも製造コストを低減できる。
第1回路114は、無線通信回路のうちの一部の機能を含む。一部の機能の一例は、無線周波数帯とベースバンド帯との間の周波数変換機能である。第1回路114は、筐体110の内部において、接続部132が接続される一面から離れていく方向、図1(b)における左方向に設置されている。また、第1回路114は、筐体110の一面において接続部132が接続される第1部分から、筐体110の一面において接続部132が接触される第2部分へ向かう方向、図1(b)における下方向において、第1部分と第2部分との間に配置されている。
第1基板116には、第1回路114がハンダ実装されている。第1基板116は、図1(b)に示されているように、第1回路114の左側に設置されている。また、第1基板116は、第1回路114が実装された一面側に、後述の給電部128、整合回路130も実装する。第1基板116は、銅箔パターンを介し図2に示すように、これらを電気的に接続する。また、第1基板116は、第1部分から第2部分へ向かう方向において、第2部分の位置を実質的に回避するように配置されている。具体的に説明すると、図1(b)のごとく、第1基板116の下端が、接触部134よりも上になるように配置されている。なお、第1基板116の下端が、接触部134よりも下になるように配置されていてもよいが、その際、第1基板116のうち、接触部134付近の部分のグランドが抜かれている。
給電部128は、第1基板116にハンダ付けされるバネ部品であり、クリップ112と電気的に接続される。なお、給電部128は、クリップ112と一体に構成されてもよい。給電部128は、第1基板116からの給電を受けつける。図1(a)に示されているように、給電部128は、筐体110の一面上において、クリップ112の角近傍に配置されている。具体的には、給電部128は、左上側の角近傍に配置される。角近傍とは、例えば、角から縦方向に、縦方向の長さの10%以内、角から横方向に、横方向の長さの10%以内に含まれる領域である。なお、給電部128は、右上側の角近傍に配置されてもよく、これは、接続部132側のふたつの角のうちのいずれか近傍に配置されるといえる。これまで、給電部128は、図1(a)の横方向において、クリップ112の中央付近に配置されることが多かった。その場合、クリップを流れる高周波電流が給電部128から左右に向かい、これらは逆相であるので、打ち消し合うことによって、アンテナ性能が劣化していた。一方、図1(a)のように、左上側の角近傍に給電部128が配置されることによって、逆相による打ち消しが低減されることによって、アンテナ性能が向上する。これは、クリップ112の角から給電することによって、クリップ112の電気長が長くなり、人体装着時のアンテナ性能が向上されることに相当する。
整合回路130は、第1基板116に設けられ、給電部128に接続される。整合回路130は、インピーダンス整合のために設けられているが、公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。第2回路118は、無線通信回路のうち、第1回路114とは異なった機能を含む。第1回路114とは異なった機能の一例は、CPU(Central Processing Unit)である。第2回路118は、図1(b)に示されているように、第1基板116の左側に設置されている。また、第2回路118は、第1回路114と同様に、第1部分から第2部分へ向かう方向において、第1部分と第2部分との間に配置される。
第2基板120には、第2回路118がハンダ実装されている。第2基板120は、図1(b)に示されているように、第2回路118の左側に設置されている。さらに、第2基板120のうち、第2回路118が実装された面と反対側の面には、第3回路122と電池端子124とがハンダ実装されている。このように、筐体110の内部において、接続部132が接続される一面から離れていく方向において、第1回路114、第1基板116、第2回路118、第2基板120が順に並置されている。第1基板116と第2基板120は、複数のコネクタを介して、複数の信号ラインを接続する。また、第1基板116と第2基板120は、複数のバネ部品を介して、GNDパターンを接続する。
図1(b)に示されているように、筐体110のうち、接続部132が接続される一面と、第2基板120とは、波長λ/200以上離間されている。これは、矢印で示されている。第3回路122は、無線通信回路のうち、第1回路114と第2回路118とは異なった機能を含む。第1回路114と第2回路118とは異なった機能の一例は、電源制御機能である。電池126は、電池端子124を介して、第1基板116と第2基板120へ電力を供給する。
図2は、携帯用端末装置16の構成を示す。図示のごとく、クリップ112は給電部128に接続され、給電部128は整合回路130に接続され、整合回路130は第1回路114に接続され、第1回路114は第2回路118に接続される。また、第3回路122による制御によって、電池126からの電力が、第1回路114、第2回路118へ供給される。
図3は、携帯用端末装置16が使用される通信システム100の構成を示す。通信システム100は、ITSに相当する。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、第9車両12i、第10車両12j、ネットワーク202、歩行者18を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、車載用端末装置14が搭載され、歩行者18によって携帯用端末装置16が携帯される。また、エリア212が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214が、エリア212の外側に形成されている。
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12d、第9車両12i、第10車両12jが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。第9車両12iと第10車両12jのみエリア外214に存在し、それ以外の車両はエリア212内に存在する。
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号、あるいは図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。
基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。路車送信期間において、複数のパケット信号が報知されることもある。また、パケット信号には、例えば、事故情報、渋滞情報、信号情報等が含まれる。なお、パケット信号には、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する制御情報も含まれる。
図4(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図4(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。これは、車載用端末装置14あるいは携帯用端末装置16が報知に使用可能なサブフレームを複数時間多重することによってフレームが形成されているといえる。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが16である場合、6.25msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、16以外であってもよい。
図4(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間に続いて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、車載用端末装置14あるいは携帯用端末装置16がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において車載用端末装置14あるいは携帯用端末装置16がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
図4(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図4(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図3に戻る。
車載用端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載され移動可能である。車載用端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、エリア212に存在すると推定する。車載用端末装置14は、エリア212に存在する場合、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報およびフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の車載用端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。車載用端末装置14は、車車送信期間においてパケット信号を報知する。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。一方、車載用端末装置14は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。携帯用端末装置16は、前述のごとく、歩行者18に携帯され移動可能である。携帯用端末装置16は、車載用端末装置14と同様の処理を実行する。
図5は、歩行者18に携帯された携帯用端末装置16の機能ブロックを示す。携帯用端末装置16は、アンテナ40、RF部42、変復調部44、処理部46、制御部48を含み、処理部46は、タイミング特定部50、転送決定部56、取得部58、通知部60、生成部62を含む。タイミング特定部50は、抽出部52、キャリアセンス部54を含む。ここで、アンテナ40は、図1(a)−(b)のクリップ112に相当し、RF部42は、図1(a)−(b)の第1回路114に相当し、それ以外は、図1(a)−(b)の第2回路118に相当する。なお、車載用端末装置14も図5と同様に構成される。
RF部42は、受信処理として、基地局装置10、車載用端末装置14、他の携帯用端末装置16からのパケット信号をアンテナ40にて受信する。RF部42は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部42は、ベースバンドのパケット信号を変復調部44に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部42には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
RF部42は、送信処理として、変復調部44から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部42は、無線周波数のパケット信号をアンテナ40から送信する。また、RF部42には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
変復調部44は、受信処理として、RF部42からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部44は、復調した結果を処理部46に出力する。また、変復調部44は、送信処理として、処理部46からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部44は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部42に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部44は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
抽出部52は、変復調部44からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、図3のエリア212内に存在すると推定するとともに、基地局装置10の時刻に携帯用端末装置16の時刻を同期させる。さらに、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。抽出部52は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、路車送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。その結果、抽出部52は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。複数の基地局装置10からパケットを受信する場合には、各々のパケットの路車送信期間が配置されたサブフレームが合成されたフレームを生成することになる。抽出部52は、車車送信期間を選択する。抽出部52は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部54へ出力する。
一方、抽出部52は、基地局装置10からのパケット信号を受信していない場合、図3のエリア外214に存在すると推定する。抽出部52は、エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部52は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部54に指示する。
キャリアセンス部54は、抽出部52から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部54は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部54は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部54は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部54は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、抽出部52から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、決定した送信タイミングを生成部62へ通知する。
取得部58は、図示しないGPS受信機、ジャイロセンサ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、携帯用端末装置16の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部58は、位置情報を生成部62へ出力する。
転送決定部56は、メッセージヘッダの転送を制御する。メッセージヘッダには、例えば、路車送信期間に関する情報が含まれる。転送決定部56は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、例えば、「2回転送」などに設定されているが、パケット信号が車載用端末装置14、他の携帯用端末装置16から送信されている場合には、転送回数を1回減らして「1回転送」の値に設定されている。転送決定部56は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、転送回数が最も多いメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部56は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部56は、選択対象のメッセージヘッダを生成部62へ出力する。その際、転送決定部56は、転送回数を1減少させる。
生成部62は、取得部58から位置情報を受けつけ、転送決定部56からメッセージヘッダを受けつける。生成部62は、位置情報およびメッセージヘッダが含まれたパケット信号を生成する。処理部46は、キャリアセンス部54において決定した送信タイミングにて、変復調部44、RF部42、アンテナ40を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。
通知部60は、抽出部52を介して、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、図示しない車載用端末装置14、他の携帯用端末装置16からのパケット信号を取得する。通知部60は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない車両12の接近等を歩行者18へモニタやスピーカを介して通知する。さらに、通知部60は、障害物検知情報、渋滞情報、灯色情報等も歩行者18へモニタやスピーカを介して通知する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
本実施例によれば、クリップが筐体に接する部分を避けて第1回路を配置させるので、クリップと第1回路とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。クリップと第1回路とが近接することによるアンテナ性能の劣化が低減されるので、クリップ型のアンテナにおいて、簡易な構成としながらアンテナ性能を向上できる。また、クリップが筐体に接する部分を避けて第1基板を配置させるので、クリップと第1基板とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。また、接触部と近接する第1基板上のグランドパターンを削除することでさらに間隔を空けることができる。また、第2回路は、クリップが筐体に接する部分を避けて配置されるので、クリップと第2回路とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。また、接触部と第2基板との間隔を波長λ/200以上空けるので、人体装着時のアンテナ性能を高性能化できる。また、ポケット等をクリップと筐体で挟み込んだ状態において、クリップと第1回路(第1基板、第2回路、第2基板)との間隔がさらに広がるので、アンテナ性能の劣化をさらに低減できる。
また、筐体をポケットに入れ、ポケットをクリップで挟んだ状態において、クリップが人体と反対側を向くので、アンテナ素子を流れる高周波電流が人体から離れ、アンテナ性能を高性能化できる。また、これまで筐体内部にアンテナを配置する空間が必要であったが、クリップとアンテナを共用することにより、アンテナを配置する空間が不要となり、小型化とコストダウンを可能とできる。また、クリップの角近傍に給電部が配置されるので、クリップの電気長を長くできる。また、クリップの電気長が長くなるので、人体装着時のアンテナ性能を高性能化できる。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、クリップをアンテナとして利用する携帯型端末装置に関する。実施例1では、アンテナ性能の劣化を低減するために、第1回路、第1基板、第2回路の形状が設計されている。一方、実施例2では、筐体のうち、接触部に接触されうる部分に凸部を設けることによって、接触部と筐体との距離を波長λ/200以上にするように設計される。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
図6は、本発明の実施例2に係る携帯用端末装置16の構成を示す。携帯用端末装置16は、図1(a)−(b)の構成に加えて、凸部136を含む。筐体110のうち、クリップ112が接続された側の一面に、凸部136が設けられる。凸部136は、接触部134に接触する。凸部136の横方向の厚さ、つまり接触部134と筐体110との間の距離は、波長λ/200以上に設計される。ここで、第1回路114、第1基板116、第2回路118は、筐体110の一面において接続部132が接続される第1部分から、筐体110の一面において接続部132が接触される第2部分へ向かう方向において、第2部分をまたぐように配置されている。
本実施例によれば、また、凸部を設けることによって接触部と筐体とを波長λ/200以上に離すので、人体装着時のアンテナ性能を高性能化できる。また、凸部を設けることによって接触部と筐体とを波長λ/200以上に離すので、筐体内の設計を簡易にできる。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を説明する。実施例3は、これまでと同様に、クリップをアンテナとして利用する携帯型端末装置に関する。これまでは、ひとつの周波数帯の無線信号を処理対象にしており、ひとつのクリップがアンテナとして設けられている。一方、実施例3は、ふたつの周波数帯の無線信号を処理対象とする。ふたつの周波数帯とは、例えば、ITS用の700MHz帯とGPS用の1.5GHz帯である。実施例3では、筐体の一面側において、ふたつのクリップが両サイドに設けられる。また、一方のクリップにおいて、他方のクリップとは逆側に給電部が配置される。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
図7(a)−(b)は、本発明の実施例3に係る携帯用端末装置16の構成を示す。図7(a)は、平面図を示し、図7(b)は、図7(a)のA−A’断面図を示す。携帯用端末装置16は、筐体110、第1クリップ150、第2クリップ152を含む。筐体110は、第1回路154、第1基板156、第2回路158、第2基板160、第3回路162、電池端子164、電池166、第1給電部168、第1整合回路170、第2給電部176を含む。第1クリップ150は、第1接続部172、第2接続部174を含み、第2クリップ152も同様である。第1回路154、第1基板156、第2回路158、第2基板160、第3回路162、電池端子164、電池166は、図1(a)−(b)の第1回路114、第1基板116、第2回路118、第2基板120、第3回路122、電池端子124、電池126にそれぞれ対応する。
第1回路154、第2回路158は、第1クリップ150および第2クリップ152のうち、一方をITS用のアンテナとして使用し、他方をGPS用のアンテナとして使用する。なお、第1回路154、第2回路158は、第1クリップ150および第2クリップ152をダイバーシチ用のアンテナとして使用してもよい。
図7(a)のように、第1クリップ150と第2クリップ152とは、筐体110の一面上において並設される。特に、第1クリップ150と第2クリップ152とは、一面上の横方向の両サイドに設けられる。例えば、第1クリップ150と第2クリップ152とは、波長λ/40以上隔てられている。また、第1給電部168は第1クリップ150に設けられ、第2給電部176は第2クリップ152に設けられる。これまでの実施例と同様に、第1給電部168と第2給電部176は、第1クリップ150と第2クリップ152の角に給電する。具体的に説明すると、第1給電部168は、筐体110の一面上において、第1クリップ150のうち、第2クリップ152とは反対側の角近傍に配置されている。第2給電部176は、筐体110の一面上において、第2クリップ152のうち、第1クリップ150とは反対側の角近傍に配置されている。
本実施例によれば、給電部間の距離が広がるので、電磁結合劣化を低減できる。また、アンテナ間の電磁結合劣化が低減されるので、アンテナ性能を改善できる。また、クリップの角に給電したので、アンテナ性能を改善できる。
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を説明する。実施例4は、これまでと同様に、クリップをアンテナとして利用する携帯型端末装置に関する。これまでは、クリップに接触部が設けられており、接触部が筐体に触れている。一方、実施例4では、携帯用端末装置の構成を簡易にすることを目的にして、クリップに接触部が設けられない。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
図8(a)−(b)は、本発明の実施例4に係る携帯用端末装置16の構成を示す。図8(a)は、平面図を示し、図8(b)は、図8(a)のA−A’断面図を示す。携帯用端末装置16は、図1(a)−(b)の構成から、接触部134が除かれている。図8(b)に示されているように、クリップ112の断面の形状が、図1(b)とは異なる。一方、図8(a)に示されているように、給電部128は、クリップ112の角近傍に設けられる。このような構成によっても、クリップ112の角から給電することによって、クリップ112の電気長が長くなり、人体装着時のアンテナ性能が向上される。ここでは、クリップ112がL字形状であるとしたが、図6のように、一方の辺が「く」の字に折れ曲がっていてもよい。その際、凸部136は設けられていない。
本実施例によれば、クリップの角近傍に給電部が配置されるので、クリップの電気長を長くできる。また、クリップの電気長が長くなるので、人体装着時のアンテナ性能を高性能化できる。
(実施例5)
次に、本発明の実施例5を説明する。実施例5は、これまでと同様に、クリップをアンテナとして利用する携帯型端末装置に関する。実施例5では、これまで説明した構成のうちの一部に焦点をあてて説明する。具体的に説明すると、人体装着時のアンテナ性能改善が目的にされる。実施例5に係る携帯型端末装置は、整合回路が実装される基板を筐体内の厚み方向のクリップ寄りに配置する。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
図9(a)−(b)は、本発明の実施例5に係る携帯用端末装置16の構成を示す。図9(a)は、平面図を示し、図9(b)は、図9(a)のA−A’断面図を示す。携帯用端末装置16は、筐体110、クリップ112を含む。筐体110は、第1回路114、第1基板116、給電部128、整合回路130を含む。クリップ112は、接続部132を含む。なお、図1(a)−(b)における第2基板120等は省略されている。図9(b)において、整合回路130が実装される第1基板116、つまりアンテナ地板は、筐体110内の厚み方向、図9(b)の横方向のクリップ112寄りに配置される。
本実施例によれば、アンテナ地板を流れる高周波電流が人体から離れるので、人体装着時のアンテナ性能を高性能化できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例3において、700MHz帯と1.5GHz帯とを使用している。しかしながらこれに限らず例えば、他の周波数帯が使用されてもよい。そのため、GPS、ITS以外の無線通信システム、例えば、携帯電話システム、ラジオ放送、地上デジタル放送、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)、ETC(Electronic Toll Collection System)に使用されてもよい。本変形例によれば、さまざまな無線通信システムに適用できる。
本発明の実施例3において、ふたつのクリップが備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、3つ以上のクリップが備えられてもよい。本変形例によれば、3つ以上の周波数帯に対応できる。
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の無線通信装置は、無線通信回路を内設する筐体と、無線通信回路のアンテナとして機能するとともに、断面が略L字形状を有するクリップとを備える。クリップは、略L字形状の一端側において筐体の一面に接続されるとともに、略L字形状の他端側において筐体の一面に接触され、筐体の内部では、クリップにおける略L字形状の一端側が接続される一面から離れていく方向に、(1)無線通信回路のうちの第1回路、(2)第1回路が設置された第1基板、(3)無線通信回路のうち、第1回路とは異なった第2回路、(4)第2回路が設置された第2基板が少なくとも順に並置されており、第1回路は、クリップにおける略L字形状の一端側が接続される第1部分から、クリップにおける略L字形状の他端側が接触される第2部分へ向かう方向において、第1部分と第2部分との間に配置されている。
この態様によると、第1回路は、クリップが筐体に接する部分を避けて配置されるので、クリップと第1回路とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。
第1基板は、第1部分から第2部分へ向かう方向において、第2部分の位置を実質的に回避するように配置されていてもよい。この場合、第1基板は、クリップが筐体に接する部分を避けて配置されるので、クリップと第1基板とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。
第2回路は、第1部分から第2部分へ向かう方向において、第1部分と第2部分との間に配置され、筐体のうち、クリップにおける略L字形状の一端側が接続される一面と、第2基板とは、波長λ/200以上離間されていてもよい。この場合、第2回路は、クリップが筐体に接する部分を避けて配置されるので、クリップと第2回路とが近接することによるアンテナ性能の劣化を低減できる。
クリップは、第1基板からの給電を受けつける給電部を備えてもよい。給電部は、筐体の一面上において、クリップの角近傍に配置されていてもよい。この場合、クリップの角近傍に給電部が配置されるので、クリップ112の電気長を長くできる。
クリップは、筐体の一面上において並設される第1クリップと第2クリップであり、第1クリップの給電部は、筐体の一面上において、第2クリップとは反対側の角近傍に配置され、第2クリップの給電部は、筐体の一面上において、第1クリップとは反対側の角近傍に配置されていてもよい。この場合、給電部間の距離が広がるので、電磁結合劣化を低減できる。