JP6098068B2 - 画像処理装置、及びプログラム - Google Patents
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Description
特に近年では、LEDを光源に用いた防犯灯や街路灯が急速に普及してきている。しかし、LEDは光の指向性が強いため、路面が明るく周囲(鉛直な面)が暗くなる傾向があり、このような照明環境では、周囲が見えづらく不安を感じる環境が形成されている場合が多い。
しかしながら、発明者は、実験等を通じて、照明環境において人が不安を感じる箇所はその輝度に単純には依存しないとの知見を得ており、このため、人が不安を感じる箇所を正確に特定することは容易ではない。
防犯灯や街路灯で街路が照明された照明環境の中に暗い領域があると、街路を歩行する歩行者は、「対向歩行者の顔の詳細が判別不能」や「暗い領域に誰かが隠れているかもしれない」などの印象を受けることにより、不安を感じる。
発明者は、歩行者が感じる不安の要因について研究したところ、この不安の要因は、周囲の明るさ、他人の気配、及び街路の見通しの3つの要素から成るとの知見を得た。照明環境における他人の存在は偶然に左右されるものであり静的な要因ではないから、照明環境が人に不安を与える要素は、明るさと見通しとの2つの要素であると言える。
見通しは、歩行者が照明環境を視認したときの実際の視認のし易さである視認性に関係するものであり、歩行者は視認性が悪い箇所ほど不安を感じる傾向がある。
以上のことから、歩行者が照明環境において不安を感じる箇所とは、明るさが低く(暗く)感じ、かつ視認性が低いと感じる箇所と言える。
したがって、歩行者が視認する照明環境を写した画像について、明るさの分布、及び視認性の分布をそれぞれ求め、明るさが低く、かつ視認性が低い箇所を特定することで、歩行者が不安を感じる箇所が特定できるのである。
このようにして不安を感じる箇所を特定した不安感評価画像を生成する画像処理装置について、以下に図面を参照して説明する。
この図に示すように、画像処理装置1は、評価対象画像入力部2と、輝度画像生成部3と、明るさ画像生成部4と、視認性評価画像生成部6と、不安感評価画像生成部8と、不安感評価画像出力部10とを備えている。この画像処理装置1は、CPU等のプログラム実行手段や、画像データの入出力手段、データの記憶手段等を備えたコンピュータに、本発明に係る画像処理プログラムを実行させて、上記の各部の機能を実現させることで実施される。
評価対象画像12は、不安感を評価する対象の照明環境を写した画像のデジタルデータであり、画像を構成する各画素の輝度値を含んでいる。評価対象画像12は、カラー画像であってもモノクロ画像であっても、いずれでも良い。
輝度画像生成部3は、評価対象画像12の各画素の輝度値に基づいて、評価対象画像12の輝度分布を示す輝度画像50(図5)を生成し、明るさ画像生成部4、及び視認性評価画像生成部6のそれぞれに出力する。
詳述すると、明るさの感覚は、対象領域の輝度の値とは直接対応しておらず、対象領域と周辺領域との主要な輝度の対比に基づくことが知られている。例えば、対象領域より周辺領域の方が低輝度の場合と、逆に周辺領域の方が高輝度の場合を比較すると、対象領域の輝度は同じであっても、前者の方が明るいと感じられる。
このような明るさ感覚に基づいて評価対象画像12の明るさ分布を求めることで、この明るさ分布には、実際に人が感じる明るさ感が反映されることとなり、照明環境において人が感覚的に暗いと感じる箇所を正確に抽出できる。
すなわち、明るさ画像生成部4は、評価対象画像12の輝度画像50のウェーブレット分解を行い、J個(Jは2以上の整数)のサブバンド画像を生成し、予め定めた輝度と明るさ感との関係に基づいて、サブバンド画像の画素ごとに輝度値を明るさ値に変換し、輝度値が明るさ値に変換されたK個(Kは2以上の整数;K≦J)のサブバンド画像のウェーブレット合成を行い、明るさ値の分布を示す明るさ画像14を生成する。
詳述すると、視認性の評価基準には、一般に、輝度の空間的な変化(画像の中のエッジに相当)に対する人が持つ感度(いわゆるコントラスト感度)が採用されている。また、輝度画像50における各箇所の視認性を評価する手法としては、ウェーブレット変換を用いて輝度画像50における局所的な輝度変化特性を抽出し、それを人の視覚特性を組み込むことにより人の視認性を評価する手法が知られている。また、近年では、例えば特開2009−181324号公報に開示されているように、輝度画像50の中のぼやけた構造に対しても視認性評価を正確に行う技術が提案されており、視認性評価画像生成部6は、この技術を用いて視認性評価画像16を生成する。
このようにして生成された視認性評価画像16は、評価対象画像12の輝度画像50の各画素の輝度値を、視認性の優劣を定量化した視認性評価値に変換した画像となる。
不安感予測値算出部9は、明るさ画像14、及び視認性評価画像16に基づいて、評価対象画像12を区画して成る小領域52(図5)ごとに不安感予測値を算出する。不安感予測値は、小領域52について人が感じる不安を定量化したものであり、人が不安を感じる可能性、及びその不安の強度を予測する値である。この不安感予測値の算出の詳細については後述する。
画像生成部11は、小領域52を、その不安感予測値の大きさに応じた色及び/又は模様で示す不安感評価画像18を生成する。本実施形態では、不安感予測値が小さい方から順に、(1)不安である可能性が低い、(2)不安である可能性がやや高い、(3)不安である可能性が高い、及び(4)不安である可能性が非常に高い、の4段階に区分され、各段階に対応した色及び/又は模様で各小領域52が示される。この表示により、不安感評価画像18の中で人が不安を感じる箇所を、その不安感の程度とともに簡単、かつ正確に把握できる。
不安感評価画像出力部10は、不安感評価画像18を表示デバイスや記憶デバイス、通信ネットワークを通じた他の装置に出力するものである。
上述の通り、発明者は、次に説明する提示実験を通じて、照明環境において人が不安に感じる箇所、及びその箇所について不安を感じる程度は、輝度や目立ちよりも、人が感じる明るさ、及び視認性に依存する、との知見を得た。なお、目立ちとは、人が感じる目立ちの程度を定量化したものであり、目立ちの定量化技術については、例えば特開2009−295081号公報に開示されている。
すなわち、10名の女性の被験者に対し、刺激画像40(図3)を提示し、被験者32(図2)が刺激画像40の中で不安を感じる箇所に、その程度に応じた色で着色するというものである。
図2は、刺激画像40の提示実験の実験環境を示す模式図である。
この図に示すように、提示実験は、前後の幅A1が900mm、床から天井までの高さA2が1800mm、奥行きが500mmの箱型に区画され、所定の暗さに維持された暗室30の中に被験者32を座らせて行われた。またスクリーン34にプロジェクタ装置36(表示装置)を用いて刺激画像40を投影することで、被験者32に刺激画像40の像を提示した。このとき、プロジェクタ装置36は被験者32の正面上方に設置され、被験者の背面上方に設置された鏡38に向けて投影光39を照射し、鏡38で反射した投影光39を被験者32の背後から当該被験者32の正面に設置したスクリーン34に投射するようにした。スクリーン34は、刺激画像40の画角と被験者32の視野角とが等しくなるように配置され、この提示実験では、高さA3が450mm、奥行きが600mmの矩形状であり、被験者32の目とスクリーン34までの距離A4を430mmとした。
刺激画像40は、不安感を評価する評価対象の照明環境の一例として、防犯灯で照明された夜間の街路を歩行者の視点から写した写真画像であり、評価対象画像12に相当する。この刺激画像40の各画素の明るさは、刺激画像40をスクリーン34に投影したとき各画素の輝度値が、実際の夜間の街路の輝度分布と同程度となるように設定され、また刺激画像40の輝度のダイナミックレンジは、実際の夜間の街路の輝度分布と同程度のダイナミックレンジを有している。この提示実験では、図3に示すように、グレースケールの写真画像が用いられている。ただし、路面形状や他人の気配が与える不安感への影響を排除すべく、刺激画像40には、(1)街路に傾斜が無く平坦であること、(2)直線の街路であること、(3)T字路がないこと、(4)人や車両が写っていないこと、(5)住宅以外の建物が写っていないことの5つの条件を満たす写真が刺激画像40に用いられている。
提示実験では、被験者32に、写真の内容が異なる45パターンの刺激画像40を提示し、被験者32が、それぞれの刺激画像40について全体から受ける不安感と、細部の箇所から受ける不安感とを評価するようにした。
刺激画像40の全体から受ける不安感は、非常に安心から非常に不安までの7段階で評価した。
また細部から受ける不安感は、図4に示すように、刺激画像40の線画である評価用画像41を予め作成し、これを被験者32に渡し、被験者32が刺激画像40の中で不安を感じる箇所(領域)である不安箇所42に、その不安を感じる程度に応じた色(例えば、やや不安を水色、不安を紫色、非常に不安をピンク)で評価用画像41に着色することで評価した。
具体的には、図5に示すように、刺激画像40に基づき輝度画像50を生成し、この輝度画像50に基づいて、明るさ値の分布を示す上記明るさ画像14、及び、視認性評価値の分布を示す上記視認性評価画像16を生成する。これらの画像の生成には、本実施形態の画像処理装置1を用いることができる。
また被験者32が着色した評価用画像41も同様に、小領域52に分割し、小領域52ごとに、その小領域52に不安を感じた程度の評価値(不安感評価値)を集計した。
そして、小領域52の平均輝度、平均明るさ、及び平均視認性と、不安感評価値との相関係数を求めた。
図6は、小領域52の平均輝度、平均明るさ、及び平均視認性と、不安感評価値との相関係数の結果を示す図である。
この図に示すように、明るさ値、及び視認性評価値は、輝度値に比べて不安感評価値と高い負の相関関係があることが分かる。これは、明るさ値、及び視認性評価値が低いほど不安感評価が上がることを示唆する。このことから、明るさ値、及び、視認性評価値を用いることで、夜間街路の不安感を定量的に評価できることが分かる。
この重回帰分析の結果から得られた不安感予測式は、次式(1)の通りである。
しかしがって、刺激画像40の各小領域52の不安感を定量化した不安感予測値Yは、明るさ画像14、及び視認性評価画像16と、この式(1)とに基づいて定量的に求められる。
ただし、nは刺激画像40の各小領域52を区別するための識別番号、N(n)は、識別番号nの小領域52の刺激画像40の中での位置に応じた重み係数である。
すなわち、上記(1)式によれば、明るさ画像14の明るさ値の歪度X2が大きいほど不安感を感じることが示されており、これは、小領域52の平均明るさX1が明るさ画像14の明るさ値の平均値よりも低い方に偏っているほど、不安が強くなるということを意味する。
また不偏分散とは、標本が平均よりもどれだけ散らばっているかを示す値である。
すなわち、上記(1)式によれば、明るさ画像14の明るさ値の不偏分散X3が大きいほど不安感を感じることが示されており、これは、明るさ画像14において明るさ値のムラが大きいほど不安が強くなるということを意味する。
詳述すると、提示実験において、被験者32が着色した評価用画像41の小領域52ごとに、その小領域52に不安を感じると指摘された回数(不安感指摘回数)を45パターンの評価用画像41を対象に集計した。
この図に示すように、被験者32が不安感を指摘する箇所は、評価用画像41の中央、すなわち歩行者の目線位置に集中し、評価用画像41の上部中央、及び下部全体は指摘が少ないことが分かる。つまり、人は視野内での箇所に応じて不安を感じる程度が違い、視野内の上部中央、及び下部全体よりも、視野内中央箇所で不安を感じる可能性が高い。
この不安感指摘回数の分布に基づいて、刺激画像40における小領域52の位置に応じて上記重み係数Nによって不安感の重み付けをすることで、人が不安を感じる箇所をより正確に特定することができる。
また小領域52の位置に応じた重み付けをしない場合には、式(1)において上記重み係数Nを省略した次式(1)’を用いて、小領域52の不安感予測値Yを簡易的に求めて定量評価できる。
この重回帰分析により得られた不安感予測式は、次式(2)の通りである。
すなわち、刺激画像40の全体の不安感予測値Ywholeは、上記式(1)により求められた小領域52の不安感予測値Y(n)と、この式(2)とに基づいて定量的に求められる。
ただし、mは、刺激画像40における小領域52の総数
すなわち、被験者32が実際に視認している刺激画像40の輝度分布は、刺激画像40の画像データの各画素の輝度値の分布ではなく、プロジェクタ装置36によってスクリーン34に画像を投影する際の輝度分布の圧縮特性に応じて圧縮を受けた輝度分布となる。
刺激画像40は、その輝度分布が評価対象の照明環境の現地の空間(実空間)と同じ輝度分布となるように撮影されている。すなわち、この刺激画像40の輝度を実空間の輝度Lfと見なすことができる。一方、スクリーン34に投影された像の輝度分布を測定し、スクリーン輝度Lsのダイナミックレンジを求めると、図8に示すように、スクリーン輝度Lsのダイナミックレンジは、最低輝度Kmin(=0.04cd/m2)から最大輝度Kmax(=20cd/m2)であった。
したがって、実空間に相当する刺激画像40の輝度Lfとスクリーン輝度Lsとはダイナミックレンジが大きく異なり、実空間の輝度Lfにおける最低輝度Kmin以下の輝度と、最大輝度Kmax以上の輝度が全てスクリーン輝度Lsのダイナミックレンジの範囲に圧縮される。
そして、この知見に基づいて求めた不安感予測式が上記(1)式、及び(2)式である。
なお、スクリーン輝度Lsを用いて明るさ画像14、及び視認性評価画像16を求めた場合には、刺激画像40の輝度Lfを用いたときよりも、上記(1)式の不安感予測式が含む平均明るさX1、明るさ値の歪度X2、明るさ値の不偏分散X3、及び小領域52の平均視認性X4の4つの説明変数のうち、特に平均明るさX1の重みが小さくなる、ことが確認されている。
同図に示すように、画像処理装置1は、入力された評価対象画像12を受け取り、この評価対象画像12を輝度画像50に変換し、この輝度画像50から明るさ画像14、及び視認性評価画像16を生成する。
次いで、画像処理装置1は、上記(1)式で示した不安予測式に基づいて、これら明るさ画像14、及び視認性評価画像16の小領域52ごとに不安感予測値Y(n)を求める。
そして、画像処理装置1は、不安感予測値Y(n)の値の大きさに応じて4段階に分け、小領域52ごとに、その不安感予測値Y(n)に応じた色及び/又は模様で小領域52を表示する不安感評価画像18を生成する。
これにより、評価対象画像12の中で人が不安を感じる箇所を、その不安の程度(すなわち、不安と指摘される可能性の大きさ)とともに示した不安感評価画像18が得られることとなる。
なお、画像処理装置1が小領域52ごとの不安感予測値Y(n)と、上記(2)式とに基づいて、評価対象画像12の全体から受ける不安感の不安感予測値Ywholeを求め、不安感評価画像18とともに出力しても良い。
これにより、例えば夜間に防犯灯によって照明された街路において、歩行者がどのような箇所に不安を感じるかを定量的に予測でき、防犯灯の配置や当該防犯灯の配光設計に役立てることができる。
また例えば、コンピュータを、上述した画像処理装置1として機能させるための画像処理プログラムを、例えばCDやDVDなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して実施しても良く、またインターネット等の電気通信回線を介して送信することも可能である。
3 輝度画像生成部
4 明るさ画像生成部
6 視認性評価画像生成部
8 不安感評価画像生成部
9 不安感予測値算出部
11 画像生成部
12 評価対象画像
14 明るさ画像
16 視認性評価画像
18 不安感評価画像
34 スクリーン
36 プロジェクタ装置
40 刺激画像
42 不安箇所
50 輝度画像
52 小領域
Lf 実空間(評価対象画像)の輝度
Ls スクリーン輝度(表示装置の輝度)
Y 不安感予測値
Claims (4)
- 評価対象を写した評価対象画像について人が感じる明るさを定量化した明るさ値の分布を示す明るさ画像と、前記評価対象画像について視認性を定量化した視認性評価値の分布を示す視認性評価画像とに基づいて、前記評価対象画像の中の領域について人が感じる不安を定量化した不安感予測値を算出し、前記不安感予測値に基づいて、前記評価対象画像の中で人が不安を感じる箇所を示す不安感評価画像を生成するとともに、
前記不安感予測値の算出においては、前記領域の明るさ値の平均値である平均明るさX1と、前記明るさ画像の明るさ値の歪度X2と、前記明るさ画像の明るさ値の不偏分散X3と、前記視認性評価値の平均値である平均視認性X4とに基づいて、次式により前記領域の不安感予測値Yを求める
ことを特徴とする画像処理装置。
- 前記領域が前記評価対象画像の中央に近いほど前記不安感予測値を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
- 表示装置に表示された前記評価対象画像の視認を通じて人が感じる不安と、
前記評価対象の輝度分布と同じダイナミックレンジを有する輝度画像から生成された前記明るさ画像、及び前記視認性評価画像との予め求められた関係に基づいて、前記不安感予測値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。 - コンピュータを、
評価対象を写した評価対象画像について人が感じる明るさを定量化した明るさ値の分布を示す明るさ画像と、前記評価対象画像について視認性を定量化した視認性評価値の分布を示す視認性評価画像とに基づいて、前記評価対象画像の中の領域について人が感じる不安を定量化した不安感予測値を算出し、前記不安感予測値に基づいて、前記評価対象画像の中で人が不安を感じる箇所を示す不安感評価画像を生成するとともに、
前記不安感予測値の算出においては、前記領域の明るさ値の平均値である平均明るさX1と、前記明るさ画像の明るさ値の歪度X2と、前記明るさ画像の明るさ値の不偏分散X3と、前記視認性評価値の平均値である平均視認性X4とに基づいて、次式により前記領域の不安感予測値Yを求める手段
として機能させるためのプログラム。
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