JP6097074B2 - エンジン補機 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、エンジンのカムシャフト等の駆動軸によってベーン式のバキュームポンプを駆動するとともに、駆動軸とポンプのロータとの寸法公差等に起因する偏心等を吸収するため、駆動軸とロータとの間にオルダムカップリングを設けることが記載されている。
また、特許文献2には、カムシャフトからサプライポンプに駆動力を伝達するオルダムカップリングにおいて、誤組立を防止するとともにばたつきを防止するため、所定の突起を設けることが記載されている。
一方、バキュームポンプの駆動に必要な負荷トルクも、ロータ及びベーンの位置に応じて所定の周期で変動する。
このため、カムシャフトとバキュームポンプとの間にオルダムカップリングを介在させてバキュームポンプを駆動する場合、カムシャフトとバキュームポンプのロータとが回転方向にずれることに起因して、オルダムカップリングから打突音、衝撃音等の異音が発生する場合がある。
本発明の課題は、駆動トルクが変動するエンジン補機をカムシャフトによって駆動する場合に発生する騒音、振動を低減したエンジン補機を提供することである。
請求項1に係る発明は、エンジンのクランクシャフトと同期して回転するカムシャフトによって駆動されるエンジン補機であって、前記カムシャフトから前記エンジン補機に伝達される駆動トルク及び前記エンジン補機の駆動に要する負荷トルクの一方が極大値をとる前記クランクシャフトの位相と、他方が極小値をとる前記クランクシャフトの位相とをクランク角にして90度以上離間させたことを特徴とするエンジン補機である。
これによれば、カムシャフトからエンジン補機に伝達される駆動トルクが大きくなったときにエンジン補機の駆動に要する負荷トルクが小さくなってエンジン補機の回転速度が急激に加速したり、駆動トルクが小さくなったときに負荷トルクが大きくなってエンジン補機の回転速度が急激に減速することを防止でき、回転速度の急変による継手からの騒音や振動を抑制することができる。
なお、本明細書、特許請求の範囲等においては、「極大値」、「極小値」とは、駆動トルク変動、負荷トルク変動の波形において、例えばクランク角にして90度以上の周期を有する比較的低次の成分によって発生するピーク値を示すものとし、短周期の高次成分に起因して多数出現するピーク値は含まないものとする。
これによれば、カムシャフトからエンジン補機に伝達される駆動トルクが大きくなったときにはエンジン補機の駆動に要する負荷トルクも大きくなるようにし、駆動トルクが小さくなったときには負荷トルクも小さくなるようにすることによって、エンジン補機の回転速度変化を抑制することができ、回転速度の急変による継手からの騒音や振動を抑制することができる。
実施例のエンジン補機は、エンジンのカムシャフトによって駆動され、ブレーキブースタの作動に用いられる負圧を生成するバキュームポンプである。
図1は、実施例のバキュームポンプを有するエンジンの構成を示す模式図である。
図1は、エンジンを上方から見た状態を示している。
エンジン10は、一例として、水平対向4気筒の4ストロークガソリン又はディーゼルエンジンである。
エンジン10は、クランクシャフト11、ピストン12、コンロッド13、バルブ14、カムシャフト15、クランクスプロケット16、カムスプロケット17、タイミングチェーン18等を有して構成されている。
コンロッド(コネクティングロッド)13は、ピストン12に設けられたピストンピン、及び、クランクシャフト11のクランクピン部にそれぞれ揺動可能に接続され、ピストン12とクランクシャフト11との間で力を伝達するものである。
カムシャフト15は、バルブ14を駆動するカム部を有する回転軸であって、シリンダヘッド内にクランクシャフト11と平行に配置されている。
エンジン10がDOHCエンジンである場合には、カムシャフト15は吸気側(例えば上方)、排気側(例えば下方)にそれぞれ1本ずつが設けられる。
クランクスプロケット16は、クランクシャフト11の前端部に設けられた歯車である。
カムスプロケット17は、カムシャフト15の前端部に設けられた歯車であって、クランクスプロケット16の2倍の歯数を有している。
タイミングチェーン18は、クランクスプロケット16及びカムスプロケット17に架け渡され、クランクシャフト11からカムシャフト15に駆動力を伝達するものである。
バキュームポンプ20は、カムシャフト15によって駆動され、負圧式ブレーキブースタを作動させる負圧を生成するベーンポンプである。
なお、図2において、クランクシャフト、カムシャフト、ベーンの位相については、本発明の参考例である基準値を示している。
以下、このときのカムシャフト15に対するベーンの位相角を、「基準ベーン角」と称して説明する。
バキュームポンプ20は、ハウジング21、吸気口22、排気口23、ロータ24、ベーン25等を備えて構成されている。
ハウジング21は、エンジン10のシリンダヘッドに固定されている。
ハウジング21の内部は、ロータ軸方向から見て実質的に楕円形に形成された空間部が形成されている。
この空間部は、空気の圧縮等を行なうチャンバとして機能する。
吸気口22は、ハウジング21の外周面部に形成された貫通孔及び配管が接続されるアタッチメントを有し、ハウジング21の内部に空気を導入する部分である。
排気口23は、ハウジング21の内面におけるロータ回転軸と直交する平面部分(ベーンの側端と摺接する面部)に形成された開口であって、ハウジング21から空気を排出する部分である。
排気口23は、ロータ24に隣接して配置されている。
ロータ24は、実質的に円筒状に形成されるとともに、ハウジング21内部の楕円状の空間部の中心に対して、短軸方向の一方にオフセットして配置されている。
ロータ24は、ベーン25をスライド可能に保持する溝部が形成されている。
ベーン25は、ロータ24の回転に応じてロータ24に対してスライドしつつハウジング21に対して相対回転する。
このとき、ベーン25の両端部は、ハウジング21の内周面と摺動する。
ベーン25は、このような運動によって、吸気口22から空気を吸入してこれを圧縮しつつ排気口23が設けられた領域に搬送し、排気口23から排出する。
図2に示すように、ベーン25は、カムシャフト位相角が−36°、クランクシャフト位相角が−72°であるときに、中立位置となるチップ位置となるように構成されている。
こうした騒音、振動は、カムシャフト15とロータ24とを連結するオルダムカップリング30から発生している。
図3は、図1のエンジンにおけるカムシャフト、バキュームポンプ、及び、これらの間に設けられるオルダムカップリングを示す模式図である。
オルダムカップリング30は、カムシャフト15とオルダムカップリング30との間で、径方向に沿った相対並進移動を許容する第1のスライダ部31と、ロータ24とオルダムカップリング30との間で、径方向に沿った相対並進移動を許容する第2のスライダ部32とを備えている。
第1のスライダ部31は、カムシャフト15の端部に形成された突条、及び、オルダムカップリング30側に設けられ、突条が挿入される溝部を有して構成されている。
第2のスライダ部32は、ロータ24の入力軸部の端部に形成された突条、及び、オルダムカップリング30側に設けられ、突条が挿入される溝部を有して構成されている。
第1のスライダ部31、第2のスライダ部32の案内方向(突条及び溝部の延在方向)は、オルダムカップリング30を中心軸方向から見たときに、例えば直交するように配置されている。
一方、バキュームポンプ20を駆動するのに必要な負荷トルクも、ベーンの位置に応じて周期的に変動するため、バキュームポンプ20のロータ24の回転速度も周期的に変動し、カムシャフト15との間で回転ずれが生じる。
このような衝撃音は、回転ずれが大きくなるほど顕著になると考えられる。
図5は、バキュームポンプのベーン位相角を基準ベーン角に対して遅角させた場合のオルダムカップリング外周部におけるカムシャフトとロータとの回転方向ずれ量の履歴を示すグラフである。
図4、図5において、横軸はクランクシャフト11の位相を示し、縦軸はシミュレーションによって算出された回転ずれ量を示している。
この回転ずれ量(浮き上がり量)は、カムシャフトの駆動トルク変動、及び、バキュームポンプの負荷トルク変動から両者の回転速度変動を解析によって算出し、その差分から求めたものである。
図4、図5に示すように、回転ずれは周期的に特定の位相において発生し、その大きさはベーンの位相によって異なることがわかる。
図6において、横軸は基準ベーン角に対するベーン位相角の進角量、遅角量を示し、縦軸は一周期中において最大となる回転ずれ量を示している。
また、図6には、エンジン低負荷時(一定車速走行相当)のときのデータと高負荷時(加速走行相当)のときのデータとをプロットしている。
特に、基準ベーン角に対するベーン位相角の進角量が30〜60°のときに回転ずれ量が顕著に少なくなり、特に45°において最良となっていることがわかる。
図7において、横軸は基準ベーン角に対するベーン位相角の進角量、遅角量を示し、縦軸はオルダムカップリング近傍でカムシャフト15を保持するカムキャップの振動による加速度を示している。
また、図7には、エンジン低負荷時(一定車速走行相当)のときのデータと高負荷時(加速走行相当)のときのデータ(エンジン回転数はともに2000rpm)とをプロットしている。
図7においても、図6等において説明した傾向と同様の傾向がみられることがわかる。
図8は、カムシャフトからバキュームポンプに入力される駆動トルクとバキュームポンプの駆動に要する負荷トルクの履歴を示すグラフである。
図8において、横軸はクランク角を示し、縦軸はトルクを示している。
また、図8には、基準ベーン角のデータ、及び、ベーン位相角を+45°、+60°進角させたデータをそれぞれ示している。
図8に示すように、カムシャフトの駆動トルクは、クランク角610°付近において、極小値min1をとる。
一方、基準ベーン角においては、バキュームポンプ20の負荷トルクは、クランク角620°付近において、極大値max1をとる。
これによって、ロータ24の回転速度が急減してカムシャフト15との間に比較的大きな回転ずれが発生しているものと推定される。
例えば、ベーン位相角を基準ベーン角に対して+45°進角させることによって、基準ベーン角における極大値max1に相当する極大値max2は、クランク角530°付近に出現するようになる。
また、クランク角530°近傍には、駆動トルクの極大値max3が存在する。
一方、駆動トルクの極小値min1が出現するクランク角に近接したクランク角590°近傍には、負荷トルクの極小値min2が存在する。
また、駆動トルクが極大値をとるクランク位相角と、負荷トルクが極大値をとるクランク位相角とを近接させ、駆動トルクが極小値をとるクランク位相角と、負荷トルクが極小値をとるクランク位相角とを近接させることによって、ロータの回転速度変動を抑制することができる。
これによって、オルダムカップリング30のカムシャフト15及びロータ24に対する挙動を抑制し、騒音や振動を低減することができる。
進角量が60°である場合にも、程度の違いはあるが、45°の場合と同様の傾向がみられる。
このような最適な進角量、遅角量そのものは、エンジンの気筒数、バルブタイミング等のカムシャフトの諸元や、バキュームポンプの構造等に依存するため、ケースバイケースではあるが、駆動トルク及び負荷トルクの一方が極大値をとるクランク位相角と、他方が極小値をとるクランク位相角とを、例えば90°以上離間させることが好ましいと考えられる。
また、駆動トルクが極大値をとるクランク位相角と、負荷トルクが極大値をとるクランク位相角とを、例えば、45°以内となるように近接させることが好ましいと考えられる。
また、駆動トルクが極小値をとるクランク位相角と、負荷トルクが極小値をとるクランク位相角とを、例えば、45°以内となるように近接させることが好ましいと考えられる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
実施例においては、駆動トルクが極小値をとるクランク位相角と負荷トルクが極大値をとるクランク位相角とを離間させる構成としているが、駆動トルクが極大値をとるクランク位相角と負荷トルクが極小値をとるクランク位相角とを離間させる構成としても実質的に同様の効果を得られると考えられる。
また、カムシャフトによって駆動されるエンジン補機は、ベーン式のバキュームポンプに限らず、他の方式のバキュームポンプや、ポンプ以外の機器であってもよい。
12 ピストン 13 コンロッド
14 バルブ 15 カムシャフト
16 クランクスプロケット 17 カムスプロケット
18 タイミングチェーン 20 バキュームポンプ
21 ハウジング 22 吸気口
23 排気口 24 ロータ
25 ベーン 30 オルダムカップリング
31 第1のスライダ部 32 第2のスライダ部
Claims (3)
- エンジンのクランクシャフトと同期して回転するカムシャフトによって駆動されるエンジン補機であって、
前記カムシャフトから前記エンジン補機に伝達される駆動トルク及び前記エンジン補機の駆動に要する負荷トルクの一方が極大値をとる前記クランクシャフトの位相と、他方が極小値をとる前記クランクシャフトの位相とをクランク角にして90度以上離間させたこと
を特徴とするエンジン補機。 - 前記駆動トルク及び前記負荷トルクがそれぞれ極大値をとる前記クランクシャフトの位相と、それぞれ極小値をとる前記クランクシャフトの位相との少なくとも一方をクランク角にして45度以内となるように近接させたこと
を特徴とする請求項1に記載のエンジン補機。 - 前記エンジン補機は、オルダムカップリングを介して前記カムシャフトによって駆動されるバキュームポンプであること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン補機。
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