図1は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1の構成図、図2は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11の要部構成図であり、図中の太い矢印は水の流れを示す。図3において前、前方、上流とは、送水ホース79と反対側の方向を言う。図4は、プローブユニット11で使用する調芯具の弾性体36の平面図及び正面図、図5は、プローブユニット11で使用する調芯具の管接触体42の斜視図である。
本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1は、ボイラ及び熱交換器の伝熱管等、被検査管(以下、管と記す)内に挿入し、管100の腐食検査、残肉厚測定などを行うための装置である。超音波探傷検査装置1は、管100内に挿入し管100の腐食検査、残肉厚測定などに使用するプローブユニット11と、プローブ25にパルス信号を送信し、プローブ25からのパルス信号を受信する探傷器71と、プローブユニット11に水を供給する送水装置75と、プローブユニット11を移動させるケーブル巻取器81と、データを処理するデータ処理装置91とを備える。
プローブユニット11は、固定ミラー式でかつ局部水浸式のプローブユニットであり、プローブ25と、プローブ25から管軸O方向に発信される超音波を管100の半径方向に向け反射させる固定式反射ミラー30(30a、30b)と、プローブ25を管100の中心に保持する調芯具35(35a、35b)とを備える。
ここで固定ミラー式のプローブユニット11とは、回転不能に固定された固定式反射ミラー30a、30bを備え、プローブ25から管軸O方向に発信される超音波を管100の半径方向に向け反射させる方式のプローブユニット11をいう。また局部水浸式のプローブユニットとは、管100内全体を満水にすることなく特定の区画、本実施形態では2つの調芯具35a、35bで挟まれた区画55のみを満水にし使用するプローブユニットをいう。また本実施形態のプローブユニット11は、複数個のプローブ25を備えるためマルチプローブユニットということができる。
プローブ25は、12個のプローブ25が円周方向に配置され形成されている。各プローブ25と12個のプローブ25が規則正しく配置され構成されたプローブとを区別するため、以下、後者をマルチプローブ21(21a、21b)と記す。
プローブユニット11は、同一の構成、形状からなる2つのマルチプローブ21a、21bを有し、これらが対向するように配置されている。プローブ25は、プローブ固定台26の先端面に振動子27が固定され、振動子27は、ケーブル接続部(図示省略)を有し、ケーブル接続部にパルス信号を送受信するケーブル73が接続される。
12個のプローブ25は、同一の構成、形状からなり、マルチプローブ21a、21bは、この12個のプローブ25が規則正しく配置され、外観上は円柱形状を有する。マルチプローブ21a、21bの中心部には、貫通孔(図示省略)が設けられ、探傷器71と各プローブ25間においてパルス信号を送受信するためのケーブル73が貫通孔内を挿通する。
本実施形態のマルチプローブ21a、21bは、プローブ25の数が12個であるが、プローブ25の数は12個に限定されるものではない。プローブユニット11は、固定式反射ミラー30a、30bを使用するため、回転ミラー方式と異なり超音波の発信位置は固定される。このためプローブ25の数が多いほど、不感帯が少なく精度よく測定することができる。本プローブユニット11は、2つのマルチプローブ21a、21bを有するので、左右のマルチプローブ21a、21bの位相をずらし配置することで、不感帯を少なくでき、より精度よく測定することができる。
固定式反射ミラー30(30a、30b)は、プローブ25から管軸O方向に発信される超音波を管100の半径方向に反射させる固定式のミラーであり、左右のマルチプローブ21a、21bに対応するように2つ設けられている。固定式反射ミラー30a、30bは、金属棒を用い円錐台形状に形成されており、内部はケーブルを挿通させるため中空部がある。固定式反射ミラー30a、30bの側壁面31は、正面視において45°の角度を有し、プローブ25から発信された超音波を管軸Oに直交するように反射させる。
固定式反射ミラー30a、30bは、頂部がマルチプローブ21a、21bの先端部中心に固定されている。さらに左右の固定式反射ミラー30a、30bが、互いの底面33を接合する形で連結され、外観上、そろばん玉形状を有する。このような固定式反射ミラー30a、30bは、左右のマルチプローブ21a、21bに挟まれるように配置される。なお固定式反射ミラー30a、30bの配置、取付要領は、本実施形態に限定されるものではなく、後述の変形例に示すように他の配置、取付要領であってもよい。
従来のマルチプローブは、複数個のプローブをそれぞれ管内壁面101と正対するように配置する必要があったため、プローブ25を収納するケーシング(ハウジング)も長くなり、プローブユニットも必然的に大きくなっていた。これに対して本発明のプローブユニット11では、固定式反射ミラー30a、30bを用いて超音波を管100の半径方向に向け反射させるので、プローブ25を管軸Oと平行に配置することが可能であり、プローブユニット11を小型化することができる。このため曲管部も簡単に通過させることができる。
調芯具35a、35bは、マルチプローブ21を管100の中心部に管軸Oに平行に保持する中心保持治具であり、調芯具支持体51に取付けられる。調芯具35は、左右のマルチプローブ21a、21bを挟み込むように2つ配置されている。2つの調芯具35a、35bは、同一の形状及び構造である。
調芯具35は、管内壁面101に押付けられる管接触体42と管接触体42を管内壁面101に押付ける弾性体36とを有し、弾性体36には調芯具支持体51に取付けるための装着部41が設けられている。
装着部41は、調芯具支持体51の形状に合わせリング状であり、装着部41が調芯具支持体51の外壁面52にねじ止め(接合)されている。弾性体36は、8個の弾性片37からなり、各弾性片37の基端部38が装着部41に連結する。本実施形態の調芯具35では、装着部41と弾性片37とが合成樹脂で一体的に形成されているが、装着部41と弾性片37とを別々に製作し、後で接合してもよい。
弾性体36を構成する8個の弾性片37は、隣り合う弾性片37との間に空間部40が設けられている。弾性体36は、基端部38に比べ先端部39が広がるように傾斜して設けられており、先端部39に半径方向の荷重を加えると縮径するように撓み、荷重を取り去ると元の状態に戻る。弾性体36をこのように構成すると、弾性片37さらにはその先端部に固定された管接触体42が独立して動くことができるので管100が扁平していてもプローブユニット11は管100内を通過することができる。
本実施形態では、8個の弾性片37で弾性体36を構成するが、弾性片37の数は8個に限定されるものではない。また弾性片37の大きさ、形状及び隣り合う弾性片37の間隔(空間部40)も、特定のものに限定されるものではなく、マルチプローブ21a、21bを管100の中心部に管軸Oに平行に保持できればよい。但し、弾性片37の数、形状は、管接触体42の管内壁面101への押付け力に影響を与え、結果としてプローブユニット21を管100内で移動させるときの抵抗力に影響を及ぼすためこの点を考慮すべきである。
本プローブユニット11は、局部水浸式のプローブユニットであり、区画55内に供給された水は、隣り合う弾性片37の間(隙間)、さらには隣り合う管接触体42の間(隙間)を通過し、区画55外に排出される。このため隣り合う弾性片37の間隔は、区画55の満水状態、さらには区画55内で発生した気泡の排出に大きく影響を及ぼすため、この点を考慮し隣り合う弾性片37の間隔を決めるべきである。
管接触体42は、各弾性片37を介して管内壁面101に押し付けられる部材であり、各弾性片の先端部39に接着剤により固定されている。管接触体42は、高分子ゲルで形成されており、略直方体形状を有する。管接触体42の管内壁面101に接触する面43(以下、上面と記す)には、管軸O方向に平行に水が通過可能な溝44が設けられている。これにより測定中、管接触体42と管内壁面101との間に水が保持され、高分子ゲルの保水性及び特性を維持することができ、さらに管接触体42と管内壁面101との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
ここで調芯具35の大きさの一例を示すと、内径が20.2mmの管100の検査に使用する調芯具35の場合、弾性体36は、管100に挿入する前の状態で外径D1が17mm、弾性体36の高さH1が6mm、弾性片37の高さH2が3mm、管接触体42は、長さL1が10mm、高さH3が2mm、溝44の高さH4が1mm、幅W1が5mm、溝の幅W2が0.5mmである。
高分子ゲルは、3次元的な網目構造を有し内部に水などの溶媒を多量に保有するため弾力性、柔軟性に富み、摩擦係数も0.01以下とできるほど小さい。管接触体42として使用する高分子ゲルは、摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れるものが好ましい。但し、耐摩耗性に関しては、後述するように管接触体42を消耗品と考え、必要に応じて交換し使用することも可能なため、高分子ゲルを選択するときは、基本的には低摩擦性を優先すればよい。
高分子ゲルの摩擦係数の一例を示せば、相手材がGlass ballの場合、ダブルネットワークゲルで0.1以下、形状記憶ゲルで0.2以下である。本発明者である古川らの過去の作製実績としては、摩擦係数がダブルネットワークゲルで0.001、形状記憶ゲルで0.01であるが、確実に製作できるゲルという意味では、それぞれ0.1、0.2である。
高分子ゲルには、こんにゃくなどのような天然高分子ゲルもあるが、ここでは合成高分子ゲルを使用する。合成高分子ゲルは、天然高分子ゲルと異なり、特性を再現性良く安定に制御することが可能であり、低摩擦の高分子ゲルを得やすい。管接触体42に使用可能な高分子ゲルとしては、形状記憶ゲル、ダブルネットワークゲル、相互侵入網目構造ゲル、セミ相互侵入網目構造ゲル、相互架橋網目ゲルを好適に使用することができる。
相互侵入網目構造ゲルは、ベースとなる網目構造に、他の網目構造が、ゲル全体において均一に絡みついており、結果としてゲル内に複数の網目構造を形成しているようなゲルを言う。セミ相互侵入網目構造ゲルは、ベースとなる網目構造に、直鎖状ポリマーが、ゲル全体において均一に絡みついており、結果としてゲル内に複数の網目構造を形成しているようなゲルを言う。相互侵入網目構造ゲル及びセミ相互侵入網目構造ゲルには、ダブルネットワーク型のみでなく、三重や四重以上の網目構造を有するゲルも含まれる(特許第4381297号公報)。
相互侵入網目構造ゲルの一種であるダブルネットワークゲルは、ゲル内に第1網目構造と第2網目構造とが存在するゲルであり、ゲルとしての柔軟性を備えつつも強い圧縮・引張破断応力、低摩擦係数を示すことが知られており、第1網目構造に係る第1ゲル(シングルゲル)を構築し、第2網目構造に係るモノマー成分を第1網目構造の間隙内に浸透させて重合及び架橋することで得られる(特許第4915867号公報)。また、相互架橋網目ゲルは、第1ポリマーと第2ポリマーとの間にのみ架橋が存在する相互侵入網目構造ゲルの一種である(特開2012−214727号)。
形状記憶ゲルは、結晶性成分とアモルファス成分を合わせ持つ複合材料であり、ゲルを転位点温度にまで加熱すると、ゲルの結晶成分が融解し、ヤング率が急激に低下し、ゲルが柔らかくなり変形させることができる。ゲルを低温にすると結晶性の成分が結晶化し、変形させたままの状態で固定化することができる。その後、転位温度まで加熱すると元の形に戻る(特開平6−27305号公報、特開平7−292040号公報、特開2013−57062号公報)。
形状記憶ゲルには、疎水性のステアリル酸アクリレートと親水性のアクリル酸の2種類のモノマーをメチレンビスアクリルアミドで架橋させた重合ゲルがある。またアクリルアミド系親水性モノマー及びアクリル系疎水性モノマーを架橋剤の存在下に無溶媒あるいはエタノールなどの溶媒存在下に重合し得られる透明形状記憶ゲルもある(特開2013−57062号公報)。
プローブユニット11の管100内の移動を考えれば、調芯具35、より具体的には管接触体42を構成する高分子ゲルは可能な限り摩擦抵抗が小さいことが好ましいことは当然である。実用性を考えた場合、高分子ゲルは、表1に示す要領で行う摩擦性評価テストにおいて、管接触体42を面ファスナとした場合の摩擦抵抗に比較して、1/2以下であればよく、1/3以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。
表1の摩擦性評価テストを行った結果の一例を示せば、表2で示す原料を使用して以下の要領で作製したダブルネットワークゲルは、面ファスナ(製造元;クラレファスニング株式会社,発売元;クロバー株式会社,型番;77−552,フック側を使用,面ファスナの種類;HL2−WB(JIS L3416))に比較して摩擦抵抗が約1/5であった。またこのときのダブルネットワークゲルの摩擦係数は、0.08であった。(相手材はGlass ball)。
ダブルネットワークゲルの作製手順は以下の通りである。表2に示すように1stゲルにはモノマーとして硫酸基をもつ2―アクリルアミド−2−メチルプロパン スルフォニック−アシッド(AMPS)、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、UV開始剤としてα−ケトグルタリック−アシッド(α-ketoglutaric acid)を用いた。その濃度と比率は1M、3mol%、0.1mol%とした。2ndゲルにはモノマーとして中性のジメチルアクリルアミド(DMAAm)、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、UV開始剤としてα−ケトグルタリック−アシッド(α-ketoglutaric acid)を用いた。その濃度と比率は2M、0.02mol%、0.1mol%とした。
初めに1stゲルのモノマー、及び架橋剤、開始剤、溶媒を拡氾させた。次に溶液中の酸素を除去するため、窒素置換(バブリング)を約20分行った。バブリング後、UV(紫外線)照射によってゲル化を開始させた。このゲル溶液を厚さ2mmのシリコンスペーサーを挟んだ鋳型に流し込み、パラフィルム(パラフィン製のフィルム)で導入口を閉じた後、UVランプを用いて約8時間UV照射を行った。UV照射中に2nd溶液を同様に用意し、バブリング終了後できた1stゲルを溶液の中に浸し2日間膨潤させた。膨潤させた1stゲルを適当な大きさに切り、硝子板に挟んで約8時間UV照射を行い、ダブルネットワークゲルを製作した。
本実施形態では、前方の調芯具35aは、前方のマルチプローブ21aの底面23に固定された調芯具支持体51に装着される。調芯具支持体51は、先端部が閉止した円筒部材であり、マルチプローブ21aの中心軸と調芯具支持体51との中心軸とが一致するようにマルチプローブ21aの底面23にねじ止め(接合)されている。調芯具支持体51の外径は、調芯具35aの装着部41の内径と同一であり、調芯具支持体51に嵌め込まれねじ止め(接合)された調芯具35aは、ぐらつくことなく安定して支持される。
調芯具35aは、固定式反射ミラー30aが管100の半径方向に向け反射する超音波の透過を妨げないように、管接触体42がマルチプローブ21aの側部24に位置するように調芯具支持体51に固定される。調芯具35aを調芯具支持体51に取り付ける際に、管接触体42が前方に向くように配置すれば、調芯具35aは、固定式反射ミラー30aが管100の半径方向に向け反射する超音波の透過を妨げることはないが、プローブユニット11の全長が長くなるので好ましくない。本実施形態では、調芯具35a、35bを互いに向き合うように配置し、調芯具35a、35bの間隔をプローブユニット11の全長よりも短くしている。
調芯具35bは、後方のマルチプローブ21bの底面に固定された送水ホース接続コネクタ76に装着される。本実施形態では、送水ホース接続コネクタ76を調芯具支持体として利用する。送水ホース接続コネクタ76は、両端部が開口した円筒部材であり、マルチプローブ21bの中心軸と送水ホース接続コネクタ76との中心軸とが一致するようにマルチプローブ21bの底面にねじ止め(接合)されている。送水ホース接続コネクタ76の外径は、前方の調芯具支持体51の外径と同一であり、送水ホース接続コネクタ76に嵌め込まれねじ止め(接合)された調芯具35bはぐらつくことなく安定して支持される。
調芯具35bは、調芯具35aと同じ思想に基づき、管接触体42がマルチプローブ21bの側部24に位置するように装着部41を介して送水ホース接続コネクタ76に固定されている。送水ホース接続コネクタ76は、マルチプローブ21bとの接続部近傍に、送水された水を排出するための送水口78を有し、調芯具35bは、送水ホース接続コネクタ76に対して、装着部41が送水口78よりも後方に位置するように取付けられている。また調芯具35bは、装着部41から水漏れが発生しないように、送水ホース接続コネクタ76に取付けられている。この点は調芯具35aも同じである。
本プローブユニット11は、前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55のみを満水とし使用する局部水浸式のプローブユニットである。局部水浸は、以下の要領で実現される。送水ホース接続コネクタ76には、送水ホース79が接続され、送水ポンプ80から送水された水は、送水ホース接続コネクタ76に設けられた送水口78から区画55内に流入する。区画55内に流入した水は、区画55内を満水にし、調芯具35a、35bの弾性片37の隙間及び管接触体42の隙間から区画55外に排出される。なお区画55内で発生した気泡も、水と一緒に区画55外に排出される。
上記のように本プローブユニット11は、調芯具35を水溜材として機能させ、前後の調芯具35a、35bで区画された領域のみを満水にするので、水の使用量を大幅に削減することができる。また本プローブユニット11は、管100内全体を満水にする必要がないため、管100内全体を満水にするための周囲に対する防水対策も必要なく、容易に実施することができる。
例えば、加熱炉伝熱管を検査する場合、加熱炉内部に敷き詰められた耐火材が水で濡れてしまうと、運転開始後に高温になり弾けて割れてしまうため、耐火材を水で濡らすことは絶対に避けなければならない。管100内全体を満水とする場合、管内から外部への排水量が多いため、耐火材が濡れないような対策が簡単ではない。これに対して本プローブユニット11で採用する局部水浸法は、調芯具35a、35bで区画された領域のみを満水にするので、管100内全体を満水とする場合と比較して水の使用量が少ない。このため、管内からの排水量が少なく耐火材の防水対策が非常に簡単である。また熱交換器は、管板付近が減肉し易いが、このように局所のみを集中的に検査したいような場合には、本プローブユニット11は特に有効である。
以上からなるプローブユニット11は、構成が簡便で駆動部もなく、さらに固定式反射ミラー30a、30bを使用するため小型化が容易である。このため曲管部も容易に通過させることができる。ここでプローブユニット11の全長の一例を示すと、内径が20.2mmの管100の検査に使用するプローブユニット11の場合、調芯具支持体51の前端53と送水ホース接続コネクタの後端77との距離が60mm程度である。
本プローブユニット11は、調芯具35の管接触体42に高分子ゲルを使用するため、従来の調芯具と比較して管内壁面101との摩擦抵抗を小さくすることができる。一方で、高分子ゲルは、金属材料等と比較すると耐久性が低い。このため調芯具35を高分子ゲルのみで形成すると、高分子ゲルの摩耗に伴い管内壁面101に対する接触状態が変化し、プローブユニット11の管100に対する中心保持が難しくなる。これに対して本プローブユニット11では、弾性片37が管接触体42を管内壁面101に押付けるため、管接触体42が摩耗しても弾性片37が拡張(伸長)しプローブユニット11の管100に対する中心保持が維持される。
高分子ゲルからなる管接触体42は、金属材料等で形成された管接触体に比較して耐久性が低い。このため調芯具35は、管接触体42を交換することを前提とした構造としておくことが好ましい。図6に、着脱容易な管接触体45を示す。
管接触体45は、管接触体42と同様に弾性片の先端部39に取付け使用されるが、管接触体42と異なり、高分子ゲルの他に基材46を有する。この基材46は、ダブルネットワークゲルなどの高分子ゲルを合成する際に用いられる基材である。ダブルネットワークゲルなどの高分子ゲルは、通常、基材上に合成されるので、合成された高分子ゲルは、基材と密着した状態である。ここでは、合成の際に使用した基材を剥離することなく基材46として使用する。図6では、基材46上に合成した直方体の高分子ゲルの上部(図6の2点鎖線の部分)を切り落とし、管接触体45とする。
第1実施形態の調芯具35では、弾性片37の先端部に管接触体42が接着剤で固定されているため、管接触体42が摩耗した場合、摩耗した管接触体42を切り取り、新たな管接触体42を接着、固定することができる。これに対して図6では、弾性片の先端部39に基材46が嵌り込む凹部(図示省略)を設け、ここに基材46を嵌め込み固定する。この方法は着脱が容易であり、管接触体45が摩耗した場合であっても簡単に交換することができる。基材46は、高分子ゲルと異なり剛性を有するので、弾性片の先端部39への固定が容易であり、嵌め合いの他、互いに係合する爪等を使用すれば、管接触体45を確実に、また着脱容易に固定することができる。
また管接触体を着脱式とすると、測定対象に応じて管接触体を使い分けることも容易となり利便性が増す。例えば、一般的にダブルネットワークゲルは、形状記憶ゲルに比較して耐久性は劣るものの低摩擦性に優れる。このような特性を活かし、曲管部が多い管100を検査するような場合には、ダブルネットワークゲルを用いた管接触体を使用すればよい。なお高分子ゲルが摩耗し、摩耗カスが管100内に残ったとしても、その量は非常にわずかであり、さらに高分子ゲルは、成分が水や原油に含まれる有機物と類似しており、管内壁面101の腐食や酸化が加速することはない。
探傷器71は、各プローブ25へのパルス信号の送信、その送信のタイミングの制御、プローブ25からのパルス信号の受信、その他測定に必要な処理、制御を行う。探傷器71とプローブ25とを結ぶケーブル73は、送水ホース79、マルチプローブ21及び固定式反射ミラー30内を挿通する。
送水装置75は、プローブユニット11に装着された前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55に水を送る装置であり、プローブユニット11に設けられた送水ホース接続コネクタ76、これに一端を接続する送水ホース79、送水ホース79に水を送る送水ポンプ80を含み構成される。送水ホース79は、曲管部も容易に通過可能な柔軟性を有する。
送水装置75の送水能力は、プローブユニット11に装着された前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55を満水にする能力が必要である。区画55の満水は、当該区画55に送られる送水量と当該区画55から排出される排水量との関係で決まるため、予め実験を行い排水量を上回る送水量を決定すればよい。
本プローブユニット11では、区画55からの排水は、調芯具35a、35bの隣り合う弾性片37及び管接触体42の隙間、さらには管接触体42に設けられた溝44を通じて行われる。これら流路は狭いため排水流量は多くない。このため送水装置75の送水能力も比較的小さなものでよい。
ケーブル巻取器81は、管100内の挿入されたプローブユニット11を移動させるための装置である。本プローブユニット11では、ケーブル73は送水ホース79内に位置するため、ケーブル巻取器81は、ケーブル73が挿通した送水ホース79を巻き取る。ケーブル巻取器81は、距離エンコーダ83を備え、ケーブル73の巻取量を検知する。
データ処理装置91は、マニュアルコントローラ92、データロガー93及びモニタ94を備える。マニュアルコントローラ92は、スイッチ及びボリュームを備え、モニタ94で確認しながらゲイン、ゲートレベル、位置、データ収録時間、測定スピードを調整することができる。データロガー93は、探傷器71及び距離エンコーダ83から送られるデータを保存する。データ処理装置91は、残肉厚等を算出するプログラムを内蔵し、探傷器71及び距離エンコーダ83から送られるデータから残肉厚及びプローブ位置等を算出し、モニタ94に表示する。このようなデータ処理装置91は、パーソナルコンピュータ等を用いて実現することができる。
次に、超音波探傷検査装置1を用いた管100の残肉厚測定の手順を説明する。
検査対象である管100の一端までプローブユニット11を手押しで挿入し、送水装置75を介して、所定量の水をプローブユニット11の区画55内に送水する。送水は、検査が終了するまで継続して行う。区画55内に送られた水は、区画55内を満水とし、調芯具35a、35bの隣り合う弾性片37及び管接触体42の隙間、さらには管接触体42に設けられた溝44を通じて区画55外に排出される。
区画55内を満水にした後、探傷器71からプローブ25にパルス信号を送り、残肉厚測定を開始する。以降、ケーブル巻取器81を介してプローブユニット11を移動させつつ、残肉厚測定を行う。管壁面で反射した超音波は、パルス信号として探傷器71が受信し、データ処理装置91を介して残肉厚に変換する。
以上からなる超音波探傷検査装置1は、プローブユニット11が、摩擦抵抗が小さい調芯具35を備えるので、長尺の直管、曲管部へのプローブユニット11の送り込み、測定時におけるプローブユニット11の巻き取りなど管100内の移動が容易である。具体的には、腐食による凹凸、溶接継手裏波突出部のような管内面の形状的不連続部も滑らかに追従し、プローブの不要な挙動が小さくなる。またプローブユニット11を引き抜く時に、プローブユニット11が管内面の形状的不連続部に引っ掛かるリスクが低減する。またプローブユニット11の管100に対する摩擦抵抗が小さいので、ケーブル巻取器81のモータを小型化、省電力化することができ、さらに送水ホース接続コネクタ76に大きな負荷が加わらず損傷し難い。
またプローブユニット11は、調芯具の管接触体42に低摩擦性の高分子ゲルを使用するので、管100と調芯具35a、35bとの接触面積を大きくすることが可能となり、調芯具35a、35bの中心保持機能を高めることができる。これら調芯具35a、35bに起因する作用効果は、第2実施形態の超音波探傷検査装置2で使用するプローブユニット15、さらには変形例であるプローブユニットにおいても同じである。
さらにプローブユニット11が固定式反射ミラー30方式のプローブユニットであるため従来のプローブユニットに比較して全長が短く、曲管部も容易に通過することができる。またプローブユニット11が局部水浸式ゆえ、水の使用量も少ない。以上により超音波探傷検査装置1は作業性に優れる。
図7は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11の第1変形例であるプローブユニット12の要部構成図である。図1から図6に示す第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
プローブユニット12は、プローブユニット11と基本構成は同じであるが、マルチプローブ21a、21b及び固定式反射ミラー30a、30bの配置が異なる。プローブユニット12では、マルチプローブ21a、21bが中央に配置され、それを挟み込むように両側に固定式反射ミラー30a、30bが配置されている。
プローブユニット12は、プローブユニット11と比較しマルチプローブ21a、21b及び固定式反射ミラー30a、30bの配置が異なるものの、調芯具35a、35bが固定式反射ミラー30a、30bを挟むように配置され、前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55のみを満水にし使用するなど使用方法、さらには作用効果はプローブユニット11と同じである。
図8は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11の第2変形例であるプローブユニット13の要部構成図である。図1から図6に示す第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
プローブユニット13は、プローブユニット11と基本構成は同じであるが、プローブユニット13は、マルチプローブ21及び固定式反射ミラー30がそれぞれ1つである。これに伴い固定式反射ミラーの底面33に調芯具支持体51が固定されている。プローブユニット13は、マルチプローブ21及び固定式反射ミラー30がそれぞれ1つであるものの、調芯具35a、35bが固定式反射ミラー30を挟むように配置され、前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55のみを満水にし使用するなど使用方法はプローブユニット11と同じである。
プローブユニット13とプローブユニット11とを比較すると、プローブユニット13は、プローブユニット11に比較してプローブ25の数が半分であるため、測定精度が若干低下する可能性がある。一方でプローブユニット13の全長を短くすることができるので、曲管部を通過し易くなる。このようにプローブユニット11とプローブユニット13とでは、特徴が異なるので使用先、目的に応じて適宜選択し使用すればよい。
図9は、本発明の第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11の第3変形例であるプローブユニット14の要部構成図である。図1から図6に示す第1実施形態の超音波探傷検査装置1で使用するプローブユニット11と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
プローブユニット14は、プローブユニット11と基本構成は同じであるが、マルチプローブ21cと固定式反射ミラー30c、マルチプローブ21dと固定式反射ミラー30dとの間隔を変更可能に構成されている。固定式反射ミラー30c、30dは、頂部に管軸O方向に伸びる雄ねじ32c、32dを有し、マルチプローブ21c、21dには、管軸O方向中心部に雄ねじ32c、32dが螺合する雌ねじ(図示省略)が設けられている。マルチプローブ21c、21dに設けられた雌ねじは、ケーブル73が挿通する貫通孔の内壁面に設けられている。
固定式反射ミラー30c、30dに設けられた雄ねじ32c、32dは、一方が右ねじ、他方が左ねじであり、逆ねじとなっている。雄ねじ32c、32dに螺合するマルチプローブ21c、21dに設けられた雌ねじも同様である。このような構成は、マルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を、左右同時にまた同じ距離だけ変更させることができるので使い勝手がよい。
マルチプローブ21c、21dには、雄ねじ32c、32dが緩むことを防止する止めねじ(図示省略)が設けられている。マルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を変更させるときには、止めねじを緩め、間隔を変更し、その後、止めねじを締め込み互いの位置を固定する。
上記構成からなるプローブユニット14において、固定式反射ミラー30c、30dを時計廻り、あるいは反時計廻りに回転させると、マルチプローブ21cと固定式反射ミラー30c、マルチプローブ21dと固定式反射ミラー30dとが接近あるいは離れていく。このようにマルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を変更させることができるプローブユニット14は、水距離(プローブから管内面壁までに超音波が伝播する経路の距離)が固定される管内壁面101と正対するプローブと異なり、水距離を長く確保することができるので、内面減肉に対する検出性能が向上する。またマルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を変更させることができるため、超音波のフォーカスを調整できる。従って、例えば外径が同じで肉厚が異なる管を測定する場合、固定式反射ミラーの位置をずらして最適なフォーカスで測定が可能となり、減肉部に対する検出能が向上する。
プローブユニット14は、プローブユニット11と異なり、マルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を変更可能であるが、調芯具35a、35bが固定式反射ミラー30c、30dを挟むように配置され、前後の調芯具35a、35bで仕切られた区画55のみを満水にし使用するなど使用方法、基本的な作用効果はプローブユニット11と同じである。
マルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との間隔を変更させる機構は、上記実施形態に限定されるものではない。マルチプローブ21c(21d)と固定式反射ミラー30c(30d)との距離を左右別々に変更可能としてもよい。また距離を変更させる機構もねじに限定されるものではない。
図10は、本発明の第2実施形態の超音波探傷検査装置2で使用するプローブユニット15の要部構成図である。図中の太い矢印は水の流れを示す。図1から図6に示す第1実施形態の超音波探傷検査装置1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図10において前、前方、上流とは、送水ホース79と反対側の方向を言う。
本発明の第2実施形態の超音波探傷検査装置2の基本構成は、第1実施形態の超音波探傷検査装置1と同じであり、プローブユニット15、探傷器71、送水装置75、ケーブル巻取器81及びデータ処理装置91を備える。第2実施形態の超音波探傷検査装置2と第1実施形態の超音波探傷検査装置1との違いは、プローブユニット15にある。
プローブユニット15は、回転ミラー式でかつ局部水浸式のプローブユニットであり、超音波センサーであるプローブ25と、プローブ25から管軸O方向に発信される超音波を管100の半径方向に向け放射状に反射させる回転式反射ミラー60と、プローブ25を管100の中心に保持する調芯具35(35b、35c、35d)と、回転式反射ミラー60を回転させる駆動装置61と、プローブ25及び回転式反射ミラー60を収納するケーシング67とを備える。
プローブユニット15で使用するプローブ25は、マルチプローブではなく、1個の円柱状のプローブ25からなる。プローブ25は、第1実施形態のプローブ25と同様に、プローブ固定台(図示省略)の先端面に振動子(図示省略)が固定され、振動子は、ケーブル接続部(図示省略)を有し、ケーブル接続部にパルス信号を送受信するケーブル73が接続される。
回転式反射ミラー60は、駆動(回転)装置を介して回転し、プローブ25から管軸O方向に発信される超音波を管100の半径方向に向け放射状に反射させる。回転式反射ミラー60は、回転式反射ミラー60の駆動(回転)装置である回転タービン61の先端部に、回転タービン61の軸心Oに対して45°の角度で固定されている。
回転タービン61は、回転式反射ミラー60を回転させるための装置であり、円筒体形状を有し、基端部には回転タービン61を回転させるための回転機構(図示省略)が設けられている。回転機構は、半径方向に設けられた水噴出口(図示省略)を有し、送水装置75から送られる水を水噴出口から噴出する反動で回転タービン61を回転させる。回転タービン61の回転機構は、水噴出口に代えタービン翼などを使用することが可能であり、要すれば回転タービン61を安定的にまた確実に回転させることができればよい。このとき回転機構が、小型で水の使用量が少なければ好ましい。
回転タービン61は、ベアリング65を介してケーシング67に回転自在に収納されている。ケーシング67の先端部には、回転式反射ミラー60の回転を検出するターゲットピン63が取付けられている。
ケーシング67は、円筒形状の部材であり、プローブ25及び回転タービン61を収納する。ケーシング67の外径は、管100の内径よりも小さく設定されている。このためプローブユニット13を管100に挿入すると、管100とケーシング67との間には十分な間隔があるが、ケーシング67には調芯具35b、35cが取付けられるため、プローブユニット13を管軸Oに平行にかつ管100の中心部に配置することができる。
従来の回転ミラー式のプローブユニットにおいて、ケーシングの外径を管100の内径と略同一としたものがあるが、このような回転ミラー式のプローブユニットは、管100内でプローブユニットを移動させる際の抵抗が大きく、また曲管部を通過し難い。
プローブ25は、前面34が前方を向くようにケーシング67の後端からケーシング67内に挿入され、ケーシング67の中央部に固定される。回転タービン61は、基端部がプローブ25と対向するように、ケーシング67の前端からケーシング67内に挿入される。ベアリング65はケーシング67内に収納されるが、回転式反射ミラー60は、ケーシング67から突出した状態である。ケーシング67に収納された回転タービン61は、プローブ25と異なり回転自在である。
プローブ25及び回転タービン61を収納したケーシング67の外壁面68には、ケーシング67を管軸Oに平行にかつ管100の中心部に配置するための調芯具35b、35cが取付けられている。ここで使用する調芯具35b、35cは、第1実施形態で使用した調芯具35と同一のものであり、ケーシング67の前部及び後部に各々1個取付けられている。この2つの調芯具のうち前方の調芯具35bは、区画55を形成するための水溜材として機能する。
プローブユニット15には、さらにもう1つ調芯具35dが、回転タービン61の前端よりもさらに前方に配置されている。調芯具35dは、ケーシング67に取付けられた調芯具35b、35cと基本構成を同じくするが、調芯具35dは装着部に該当する部分が塞がれている。これは調芯具35dが、調芯具支持体に装着されないこと、さらに調芯具35dを水溜材として機能させるためである。回転タービン61の前端よりもさらに前方には調芯具35dを固定するための部材がないため、調芯具35dは、ケーシング67の前部に取付けられた調芯具35bと連結具47を介して連結される。
連結具47は、短冊状の形状を有し、6本の連結具47が調芯具35bの装着部41、調芯具35dの装着該当部を結ぶ。6本の連結具47は、調芯具35bの装着部41の円周方向に均等に配置されている。連結具47の数は、6本に限定されるものではない。連結具47の長さは、調芯具35dが、回転式反射ミラー60が反射する超音波及び管壁面で反射した超音波の透過を妨げない範囲で短い方が好ましい。連結具47の長さを短くすることでプローブユニット15の全長が短くなり、さらに調芯具35b、35dの固定状態も安定する。連結具47の幅は、調芯具35bと調芯具35dとをしっかりと固定することができればよく、特定の幅に限定されるものではない。
連結具47の厚さ、材質は重要である。連結具47は、回転式反射ミラー60の前を横切るように2つの調芯具35b、35dを連結するため、回転式反射ミラー60が反射する超音波及び管壁面で反射した超音波の透過を妨げないことが必要である。連結具47が厚くなると超音波が透過し難くなり、また水との音響インピーダンスの差が大きい材料を使用すると超音波が透過し難くなる。高分子ゲルは、超音波透過性に優れるので連結具47に適している。
通常、残肉厚測定等においては、用途に応じて超音波が使い分けられる。例えば肉厚が厚い管では、15MHzの超音波を発信するプローブが、肉厚が薄い管では、20MHzの超音波を発信するプローブが使用される。よって連結具47には、プローブ25に適した高分子ゲル、例えば20MHzの超音波を発信するプローブ25であれば、20MHzの超音波を透過する高分子ゲルを使用する。なお、20MHzの超音波を発信するプローブとは、主として発信する周波数が20MHzであり、19.8MHzなど20MHz前後の周波数の超音波も多少含まれる。
ところで高分子ゲルは、20MHzの超音波を透過可能な場合、それよりも低い超音波も透過させることができる。よって20MHzの超音波を透過可能な高分子ゲルを使用すれば15MHzの超音波を透過させることができる。よって連結具47は、超音波の透過性のみを考えればプローブ25が発信する周波数に応じて使い分けることが好ましいが、使い勝手を優先させ、1種類の連結具47で2種類のプローブ25に対応させてもよい。
ダブルネットワークゲルの含水率は90%程度であり、音響インピーダンスは水と同等である。このようなゲルは、連結具47として好適に使用することができる。ダブルネットワークゲルの他、先に示した形状記憶ゲル、相互侵入網目構造ゲル、セミ相互侵入網目構造ゲル、相互架橋網目ゲルについてもこの中からプローブ25が発信する超音波及び管壁面で反射した超音波を透過する高分子ゲルを選択し使用すればよい。なお、連結具47は、調芯具35の管接触体42と異なり管内壁面101に接触することはないので、耐摩耗性は特に要求されない。
水溜材として機能する2つの調芯具35b、35dは、第1実施形態の調芯具35a、35bと同様に、2つの調芯具35b、35dで仕切られた区画55内を満水にする。送水装置75は、第1実施形態の送水装置75と同一の構成からなり、送水ホース79は、ケーシング67の末端に取付けられている。送水装置75から送られる水は、ケーシング67とプローブ25との隙間から回転タービン61の基端部に流れ込み、水噴出口(図示省略)から勢いよく噴き出して回転タービン61を回転させ、回転式反射ミラー60が反射する超音波と一緒に管内壁面101に向け移動し、区画55内を満水にした後に、区画55外に排出される。
第1実施形態の送水装置75は、基本的に区画55内を満水可能に送水することができればよいが、第2実施形態の送水装置75は、区画55内を満水にすることの他に、回転タービン61を高速回転させることが必要である。このため第1実施形態の送水装置75に比較して、送水流量が多くなる。また区画55内への送水流量を多くするには、区画55内から区画55外へ排出される水の流量も多くする必要がある。このため主たる水の排出路である隣り合う弾性片37の間(隙間)は、第1実施形態の調芯具35に比較して広くなりやすい。
第2実施形態の超音波探傷検査装置2では、回転式反射ミラー60を使用するものの使用方法は、第1実施形態の超音波探傷検査装置1と基本的に同じである。
回転ミラー式のプローブユニットは、従来から提案されているが、従来のミラー回転式のプローブユニットは、調芯具が回転式反射ミラーの駆動部側にのみ配置された片持ち支持方式であったため、プローブを管軸Oと平行にすることが難しい。これに対して本発明のプローブユニット15では、回転式反射ミラー60を挟むように前後に調芯具35b、35dが配置されているので、容易にプローブ25を管軸Oと平行にすることができる。
また本発明のプローブユニット15は、局部水浸式のプローブユニットであるので、水の使用量を大幅に削減し、管100内全体を満水にする必要がないため、管100内全体を満水にするための周囲に対する防水対策も必要なく、容易に実施することができる。このためプローブユニット11と同様に、管板付近が減肉し易い熱交換器の伝熱管の検査に好適に使用することができる。
第2実施形態に示すプローブユニット15は、次のように変形し使用することができる。
図11は、プローブユニット15の第1変形例であるプローブユニット16の要部構成図である。図中の太い矢印は水の流れを示す。図10に示す第2実施形態のプローブユニット15と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図11において前、前方、上流とは、送水ホース79と反対側の方向を言う。
プローブユニット16は、プローブユニット15と基本構成が同一であるが、回転式反射ミラー60の前後に配置された調芯具35b、35dを連結する連結具48の形状が異なる。プローブユニット15では、短冊状の連結具47を使用するが、プローブユニット16では、円筒形状の連結具48を使用する。連結具48の内径はケーシング67の外径と略同一であり、厚さは超音波が透過可能な厚さであり、連結具48の外径は、管100の内径よりも小さい。連結具48は、連結具47と同じ高分子ゲルで形成されている。
また連結具48には、内外を連通させるための貫通孔49が複数穿設されている。連結具48が連結する2つの調芯具35b、35dは、プローブユニット15で使用する調芯具35b、35dと同一の構成からなり、連結具48の連結箇所もプローブユニット15の連結具47と同じである。
以上からなるプローブユニット16は、プローブユニット15と同様に、送水装置75から送られる水が回転タービン61を回転させ、回転式反射ミラー60が反射する超音波と一緒に管100の半径方向に向け移動し、連結具48の貫通孔49から連結具48の外に流れ込み、区画55内を満水とした後に調芯具35b、35dの隣り合う弾性片37及び管接触体42の隙間、さらには管接触体42に設けられた溝44を通じて区画55外に排出される。
図12は、プローブユニット15の第2変形例であるプローブユニット17の要部構成図である。図中の太い矢印は水の流れを示す。図10に示す第2実施形態のプローブユニット15と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図12において前、前方、上流とは、送水ホース79と反対側の方向を言う。
プローブユニット17は、プローブユニット15と基本構成が同一であるが、回転式反射ミラー60の前方にある調芯具35eの固定要領が異なる。調芯具35eは、ケーシング67に取付けられた調芯具35b、35cと構成、形状が同一であり、回転タービン61の先端部にベアリング66を取付け、このベアリング66に調芯具35eの装着部41を取付ける。このような方法により調芯具35eをしっかり固定することができる。なお、このベアリング66を通じて区画55外に水が流出しない構造となっている。
プローブユニット17もプローブユニット15と同様に、連結具47を介して調芯具35eと調芯具35bとが連結されるが、プローブユニット17は、基本的にベアリング66を介して回転タービン61に支持されるため、連結具47は、調芯具35eの回転を防止できればよい。このため連結具47の本数も少なくてもよい。
第2実施形態に示すプローブユニット15及びその変形例であるプローブユニット16、17は、水流(水圧)を使用した回転タービン61を用いて回転式反射ミラー60を回転させるが、水流(水圧)を使用した回転タービン61を設ける代わりに電動モータを設け、電動モータを介して回転式反射ミラー60を回転させてもよい。
電動モータを使用する場合であっても調芯具35の取付け要領、作用等に変わりはない。つまり回転タービン61を使用する場合と同様に、2つの調芯具35b、35d、35b、35eで区切られた区画55のみを満水とし使用することができる。電動モータを使用する場合、送水装置75は、回転タービン61を駆動する必要がないため、送水流量は第1実施形態のプローブユニット11と同じように考えればよい。
以上、本発明の第1及び第2実施形態の超音波探傷検査装置、それに使用するプローブユニットさらにはプローブユニットの変形例について説明したが、本発明に係る超音波探傷検査装置及びプローブユニットは、上記実施形態に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。また本発明に係る超音波探傷検査装置及びプローブユニットは、上記実施形態に示す数値に限定されるものでもない。
例えば上記実施形態の調芯具では、複数の弾性片で構成される弾性体を示したが、弾性体の構造、形状は、他のものであってもよい。例えば、弾性体をラッパ状とし、部分的に水を排出するための孔を設け、弾性体の先端部に管接触体を取付けてもよい。また弾性体にコイルばね、空気ばねを使用し、さらには油圧、水圧を利用したものであってもよい。要すれば、弾性体は、管接触体を所定の圧力で管内壁面に押付けることができ、さらに水が流通する流路があればよい。
上記実施形態では、管接触体が一種類の高分子ゲルで形成されているが、管接触体を特性あるいは形状の異なる2種類以上の高分子ゲルを使用して形成してもよい。
また上記実施形態で示したプローブユニットは、いずれも2つの調芯具を水溜材として機能させ、2つの調芯具で仕切られた区画のみを満水とする局部水浸方式のプローブユニットであったが、調芯具を水溜材として機能させることなく管全体を満水にして使用してもよい。
また複数個の調芯具を送水ホースに取付け使用することで以下の効果を奏することができる。(1)特に曲管部において、送水ホースが管内壁面と直接接触することを避け、スムーズに通過させることができる。(2)送水ホースには、ねじれ(よれ)があり、プローブの中心保持に対して悪影響を及ぼしている。そこで、複数の調芯具で送水ホースを支持することにより、送水ホースのねじれ(よれ)を取り除くことができる。(3)管内に局部的な凹み部(例;面状減肉)があり、プローブ前後の調芯具がその凹み部に嵌った場合、プローブ前後の調芯具の機能が低下する可能性がある。調芯具が複数個あれば、そのような場合にもプローブを適切に保持できる。
送水ホースへの調芯具の取付けは、特定の方法に限定されるものではないが、一例を示せば、送水ホースにおいて、調芯具を取付ける位置の上・下流側にそれぞれ環状ゴムを接着固定し、それらの間に調芯具を挟みこんで固定すればよく、個数としては、接続コネクタから下流方向へ100mmピッチで3〜10個取付ければよい。
ただし、調芯具は距離エンコーダを通過できない(形状的な引っ掛かる)ため、取付数が多すぎると作業性が悪くなる。従って、取付範囲は接続コネクタから1000mm範囲以内が望ましい。また、熱交換器の管板部のように、測定距離が短くかつ直管部のみが検査対象となる場合は、取り付ける調芯具の数は少なくてよい。なお、取付範囲は、測定距離以下でよい。つまり、例えば熱交換器の管板部伝熱管では500mm以下でよい。
図面を参照しながら好適な超音波探傷検査装置、それに使用するプローブユニットさらにはプローブユニットの変形例について説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。