JP2011004806A - 超音波探触子 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の機械走査型超音波探触子においては、液体室が設けられていたため、重量化及び大型化という問題があった。
【解決手段】接触壁22の内面22B上にはゲル36が設けられている。振動子ユニット24は揺動運動し、各運動位置において送受波面24Aがゲル36の上面36Bに密着する。具体的には、送受波面24Aが当接している部分が若干窪む。ゲル36は、弾力性、湿潤性、低摩擦性、化学的安定性等の性質を有している。ゲル36を交換するための構造を設けるようにしてもよいし、ゲル36を送受波面24Aにより密着させる付勢構造を採用するようにしてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】接触壁22の内面22B上にはゲル36が設けられている。振動子ユニット24は揺動運動し、各運動位置において送受波面24Aがゲル36の上面36Bに密着する。具体的には、送受波面24Aが当接している部分が若干窪む。ゲル36は、弾力性、湿潤性、低摩擦性、化学的安定性等の性質を有している。ゲル36を交換するための構造を設けるようにしてもよいし、ゲル36を送受波面24Aにより密着させる付勢構造を採用するようにしてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は超音波探触子に関し、特に、機械的に走査される振動子ユニットを備えた超音波探触子の構造に関する。
超音波探触子は、生体に対する超音波診断において使用され、超音波の送受波を行うものである。様々な超音波探触子が実用化されている。その中で、機械走査型超音波探触子(メカニカルスキャンプローブ)は、探触子ケース、振動子ユニット、機械走査機構等を有する。かかる超音波探触子において、振動子ユニットは、直線状に平行走査され、円弧状に揺動走査され、あるいは、回転走査される。振動子ユニットが単振動子によって構成される場合、そのような振動子ユニットを揺動走査すれば扇状の二次元ビーム走査面が形成される。一方、振動子ユニットが1Dアレイ振動子によって構成される場合、そのような振動子ユニットを電子走査方向と直交する機械走査方向に揺動走査すれば二次元ビーム走査面が揺動走査されることになるので、三次元エコーデータ取込み空間(三次元空間)が構成される。
機械走査型超音波探触子において、探触子ケースの内面(生体接触部の内面)と、可動体としての振動子ユニットの送受波面との間に空気層が存在すると、超音波の伝搬を確保できない。振動子ユニットと空気層の間で音響インピーダンスの著しい段差が生じ、そこで超音波が反射してしまうためである。そこで、従来の機械走査型超音波探触子は、その内部に音響伝搬のための液体が充填された液体槽を備えている。その液体は、生体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスをもったオイル、水等である。液体槽中で振動子ユニットを運動させれば、振動子ユニットの送受波面と探触子ケースの内面との間に常に液体が介在することになるので、良好な音響伝搬を確保できる。
しかしながら、上記の液体槽を利用する場合、振動子ユニット(特に1Dアレイ振動子を備えた比較的大きな振動子ユニット)は、その運動時に、液体からの大きな抵抗を受ける。このため、探触子ケース内に大型の駆動機構を設ける必要がある。また、液体の外部流出や気泡発生を防止するために、液体槽として特別な水密構造を採用する必要がある。このような理由から、超音波探触子が大型化、重量化してしまうという問題が指摘されている。
特許文献1には、振動子と生体との間に設けられる半固体状の油性ゲルが開示されている。当該ゲルは、従前のエコーゼリーに代えて利用される音響媒体であって、保形性を有するものである。すなわち、外力によって変形するが、それが無くなると原形に復帰するものである。特許文献2には水を多く含む保形性を有するハイドロゲルが開示されている。特許文献3にはシリコーンオイルを含有する低摩擦性をもったオルガノゲルが開示されている。これも保形成を有するゲルであると解される。しかし、特許文献1,2,3には超音波探触子内部でのそのようなゲルの利用については一切開示されていない。
特許文献4の図1及び図2には、振動子アレイと整合層を一体化して回転体を構成すること、及び、その回転体の下面(送受波面)を円板状の音響レンズの内面に当接させること、が開示されている。この構成において、回転体を回転させると、音響レンズの表面上において回転体の下面がスリップ運動することになる。しかし、そのような構成を採用した目的は、探触子それ自体を90度回転させないでも、その内部において振動子を90度回転させることにより、直交2断面を形成できるようにすることにあり、つまり、当該構成は、振動子の回転中に超音波の送受波を行うものではない。また、引用文献4には超音波探触子内部で保形性を有するゲルを利用することは一切開示されていない。なお、特許文献5にはオイルを含有する音響レンズを備えた超音波探触子が開示されている。
本発明の目的は、超音波探触子の内部構造を簡易化し、あるいは、超音波探触子を軽量化することにある。
あるいは、本発明の目的は、液体槽を用いなくても、振動子ユニットの各運動位置において良好な音響伝搬が確保されるようにすることにある。
本発明は、生体の超音波診断で使用される超音波探触子において、生体接触部を有する探触子ケースと、前記探触子ケース内に設けられた可動部材であって、送受波面を有する振動子ユニットと、前記探触子ケース内において前記振動子ユニットを機械的に走査することによって、前記振動子ユニットにより形成される超音波ビーム又はビーム走査面を機械的に走査する機械走査機構と、前記生体接触部の内面と前記送受波面との間に設けられ、保形性を有するゲル状の材料で構成され、前記内面と前記送受波面との間における超音波伝搬を確保するためのゲル状媒体層と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、送受波面から放射された超音波は、ゲル状媒体層及び生体接触部を通過し、生体内へ放射される。生体内からの反射波は、生体接触部及びゲル状媒体層を通過し、送受波面に到達する。振動子ユニットの送受波面と生体接触部の内面との間にゲル状媒体層が設けられているので、振動子ユニットの機械走査過程において常に良好な超音波伝搬を確保できる。よって、従来の超音波探触子において必要であった液体槽(液体が充填されていた部屋)を不要にでき、同時に、振動子ユニットの側面全体に及んでいた液体抵抗を無くすことができる。これにより、音響伝搬を確保しつつも、超音波探触子の小型化及び軽量化という利点を得られる。
超音波探触子は生体表面に当接されるものであるのが望ましいが、体腔内に挿入されるものであってもよい。生体接触部は超音波探触子内部から液体の流出、滲み出しを防止する隔壁又は仕切膜として機能するものである。生体接触部を透明性を有する部材で構成すれば、その内部に設けられたゲル状媒体槽を外部から観察可能である。生体接触部の外面が生体に直接的に当接されてもよいし、スタンドオフ材等を介して生体に間接的に当接されてもよい。その際に、従来同様に流動性のあるエコゼリーが生体や外面に塗布されてもよい。単振動子を有する振動子ユニット及び1Dアレイ振動子を有する振動子ユニットのいずれも用いることができる。機械走査の方式としては、直線走査、円弧走査(あるいは揺動走査)、回転走査等があげられる。振動子ユニットが、振動子の他に、整合層、音響レンズ、バッキング等を有していてもよい。生体接触部が音響レンズの作用を発揮してもよい。
ゲル状媒体層は、保形性を有する材料により構成される。すなわち、長期間の使用による劣化を考えないならば、一定の形状を保持する作用を有し、換言すれば、外力によって塑性変形してしまうものではなく、外力によって弾性変形するものである。これにより振動子ユニットの送受波面と生体接触部の内面との隙間を音響媒体で満たすことができる。超音波伝搬経路上における空気層排除の観点から、あるいは、密着性の向上の観点から、ゲル状媒体層は、液体湿潤性を有する材料により構成されるのが望ましい。その場合に利用される液体は、長期間にわたって安定なもの、つまり変質等を容易に生じないものであるのが望ましい。また、ゲル状媒体層は、低摩擦性をもった材料により構成されるのが望ましい。状況に応じて、特許文献1−3に記載したゲルやその他のゲルを用いることができる。近時、多様なゲルが実用化されており、また今後新しく色々なゲルが実用化されてくると思われるので、使用条件に応じて最適なゲルを選択するのが望ましい。
望ましくは、前記ゲル状媒体層は前記生体接触部の内面上に配置された非運動部材であり、前記送受波面が前記ゲル状媒体層の表面に接した当接状態が維持されつつ前記振動子ユニットが機械的に走査され、前記ゲル状の媒体層の表面がスリップ面を構成する。この構成によれば、ゲル状媒体槽の表面上において送受波面がスリップ運動することになる。振動子ユニットの運動位置によらずに、送受波面が常時、ゲル状媒体槽の表面に当接することになるので、機械的な走査位置のすべてにわたって音響伝搬を確保できる。
なお、ゲル状媒体層を振動子ユニット(可動体)側に設けることも可能であるが、そのようなゲル運動方式よりも、上記構成(ゲル固定方式)の方が、摩耗が生じる部分を広く分散させることができるという点で有利である。非運動部材としてゲル状媒体層を設けると共に、運動部材(振動子ユニット)にもゲル媒体層を設け、両者間でのスリップ運動を行わせることも可能である。その場合には、運動するゲル媒体層の下面(運動面)が送受波面を構成することになる。
望ましくは、前記ゲル状媒体層は弾力性を有し、前記ゲル状媒体層においては、前記送受波面の押圧力を受けた部分が窪み部分となり、当該窪み部分は前記押圧力の消失後に原形に復帰する。この構成によれば、機械走査が比較的高速で繰り返し実行されても、そのような過程において、送受波面とゲル状媒体層の表面との密着性を常に維持できる。復元の応答性はゲルの組成を変えることによって調整可能である。
望ましくは、前記ゲル状媒体層は液体湿潤性を有し、前記窪み部分においてそこに含有されていた液体が滲み出る。窪み部分の窪み量は、押圧力、隙間の大きさ、媒体層の厚み、等を調整することによって可変できる。密着性を良好にでき、且つ、振動子ユニットに対して負荷をあまり与えないように、窪み量を設定するのが望ましい。押圧力によって液体が滲み出るなら、その液体が潤滑液として機能し、しかも空気層の除外作用も発揮するので、有利である。媒体層に対して泡立ちを防止する薬剤を添加するようにしてもよいし、ケース内に泡を消す構造を設けるようにしてもよい。
望ましくは、前記ゲル状媒体層が含有する液体はオイルである。オイルであれば長期間にわたって変質を防止できる。生理食塩水等を利用することもできる。振動子ユニットの運動空間から液体が簡単に漏れ出ないように、運動室の構築に当たってはシール構造を採用するのが望ましい。但し、従来の液体槽で見られるように(気泡の発生すら許さない)厳格なシール構造まで採用する必要性は必ずしもない。
望ましくは、前記ゲル状媒体層は、その自然状態において、前記生体接触部の内面と前記送受波面との間の隙間よりも大きな厚みを有する。この構成によれば、ゲル状媒体層の弾力性をそのまま使って密着状態を簡便に形成できる。機械走査方向(及び電子走査方向)に隙間の大きさが変化するなら、その変化に合わせてゲル状媒体層の厚みを変えればよい。その場合、いずれの箇所においても、隙間よりもゲル状媒体層の厚みが若干大きくなるように、ゲル状媒体層の形状を定めるのが望ましい。
望ましくは、前記振動子ユニットの送受波面と前記生体接触部の内面との間の隙間が小さくなるように、前記振動子ユニット及び前記生体接触部の少なくとも一方に付勢力を与える手段を含む。この構成によれば、ゲル状媒体層の弾力性に加えて付勢力手段によって付勢力を与えて密着度を高められる。いずれにしても、送受波面の全体について常時、密着状態が形成されるようにするのが望ましい。
望ましくは、前記探触子ケースが前記ゲル状媒体層の交換のための交換構造を有する。ゲル状媒体層だけが交換される構造を採用してもよいし、ゲル状媒体層と生体接触壁等の他の構造物が交換される構造を採用してもよい。この構成によれば、ゲル状媒体層の劣化時にそれを新しいものに交換できる。劣化の判断は、目視にて直接的に行うこともできるし、超音波画像に含まれるノイズ等から間接的に判断することもできる。実際の劣化を問わずに定期的に交換するようにしてもよい。
望ましくは、前記探触子ケースには、前記振動子ユニットを収容した運動室が設けられ、前記運動室内には、前記ゲル状媒体層に含有された液体と同じ液体からなる補充液が予め入れられる。補充液を入れておけばゲル状媒体層の乾燥を防止してその湿潤性を維持できる。
望ましくは、前記探触子ケース内には、前記ゲル状媒体層に含有された液体と同じ液体からなる補充液を前記ゲル状媒体層へ供給する補充液供給手段が設けられる。望ましくは、前記補充液供給手段は、前記振動子ユニットの運動時に当該振動子ユニットによって押し潰される補充液含有体を含む。この構成によれば、振動子ユニットの運動を媒体補給に利用できる。
望ましくは、前記振動子ユニットは、素子配列方向に並んだ複数の振動素子を有する1Dアレイ振動子を有し、前記振動子ユニットの送受波面は、前記素子配列方向に伸長した長さを有し、前記機械走査機構は、前記素子配列方向と直交する機械走査方向に前記振動子ユニットを往復運動させ、前記ゲル状媒体層は、前記送受波面の長さ以上の横幅を有し、且つ、前記振動子ユニットの機械走査方向の移動範囲以上の縦幅を有する。この構成によれば、送受波面の運動によっても、送受反面の全面をゲル状媒体層に常に密着させることができる。
望ましくは、前記振動子ユニットの送受波面は丸みをもった縁部を有する。この構成によれば、運動時の負荷抵抗を低減でき、またゲル状媒体層に生じる局所応力を緩和できる。
望ましくは、前記振動子ユニットは前記送受波面を下に向けつつ所定の回転軸を中心として揺動運動し、前記生体接触部及び前記ゲル状媒体層は前記機械走査方向に沿って湾曲した形態を有する。
本発明によれば、超音波探触子の内部構造を簡易化できる。あるいは、それを軽量化することができる。あるいは、液体槽中に振動子ユニットを浸漬させなくても、振動子ユニットの各運動位置において良好な音響伝搬を確保できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波探触子の好適な実施形態が示されており、図1はその断面図である。この超音波探触子は、超音波診断装置に対して図示されていないプローブケーブルを介して接続されるものである。この超音波探触子は生体表面に当接して用いられ、その状態で超音波の送受波を行うものである。これにより受信信号が得られ、その受信信号に基づいて超音波画像が形成される。
図1に示す超音波探触子10は、上ケース12及び下ケース14を有している。上ケース12及び下ケース14は樹脂などにより構成され、それらは上下方向に連結されてプローブケースを構成している。上ケース12の外面は検査者の手により保持され、それはグリップ部を構成する。下ケース14は生体の表面上に当接される接触壁22を有している。
超音波探触子10の内部には内ケース16が設けられている。内ケース16と下ケース14によって囲まれる部屋が運動室18である。運動室18は液体が漏れ出ない程度の密閉空間である。そのためシール構造が採用されている。ただし、従来の超音波探触子のような厳格な密閉構造までは必ずしも必要とされていない。上ケース12の内部空間20には後に説明する走査機構23の一部であるモータ28が設けられている。
超音波探触子10は走査機構23及び振動子ユニット24を有する。走査機構23は、モータ28及びウォームギア30を有している。ウォームギア30は、ギア32及びギア34により構成されている。ギア32はモータ軸28Aに連結されている。モータ28は内ケース16に固定されている。なお、走査機構23が減速用ギア機構等を有していてもよい。
振動子ユニット24は、回転軸26を中心として揺動運動するものである。振動子ユニット24は、その先端部すなわちその下端部に1Dアレイ振動子25を有している。1Dアレイ振動子は電子走査方向に配列された複数の振動素子により構成されるものである。1Dアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームを電子的に走査することによりビーム走査面が構成される。振動子ユニット24の揺動運動により、ビーム走査面も揺動運動し、これにより3次元データ取込領域が構成される。
具体的には、モータ20の回転運動がウォームギア30により回転軸26の回転運動に転換されており、回転軸26の回転によりそれに固定連結された振動子ユニット24が回転運動する。その運動方向が図1においてθによって表されている。振動子ユニット24に整合層、音響レンズ及びバッキング層等の公知の部材を設けるようにしてもよい。
上述したように、下ケース14は接触壁22を有している。この接触壁22は、開口膜として機能するものであり、外面22A及び内面22Bを有する。外面22Aは生体に接触する面である。必要に応じて外面22Aにはエコーゼリー等が塗布される。接触壁22は、丸みをもって形成されており、図1に示す断面図において、接触壁22は回転軸26を中心とした一定の曲率をもって形成されている。接触壁22は均一の厚さを有しているが、もちろん必要に応じてその厚さが連続的に変化してもよい。
本実施形態において、下ケース14における少なくとも接触壁22は透明性を有する部材により構成するようにしてもよい。これにより運動室18の内部、具体的には以下に説明するゲル36を外部から容易に観察することができる。
接触壁22の内面22B上には図示されるようにゲル36が設けられている。このゲル36は電子走査方向及び機械走査方向の両方向に広がって媒体層を構成するものであり、図1に示す実施形態において、その自然状態においてはθ方向に均一の厚みを有している。同様に、以下に図2において示すように、振動子ユニット24の送受波面24Aに接触する範囲において、ゲル36は一定の厚さを有している。送受波面24Aと、内面22Bとの間の隙間は振動子ユニット24の回転角度によらず実質的に同一とされている。そして、送受波面24Aと内面22Bとの間の隙間を埋めて音響伝藩を確保するために所定の厚みをもったゲル36が接触壁22に内貼りされている。ゲル36は本実施形態において接着剤により固定されているが、もちろん枠体やねじなどを利用してそれを固定するようにしてもよい。
ゲル36は保形性を有する。すなわち、振動子ユニット24の押圧により局所的に窪むものの、その窪みは振動子ユニット24が通り過ぎることにより復元する。図示されるように、送受波面24Aが当接される部分のみが窪んで凹部を構成し、その凹部は振動子ユニット24の往復運動に伴い移動する。そのような潰れを許容するようにゲル36が弾力性を有している。また、ゲル36は湿潤性を有している。すなわち、ゲル36は液体としてのオイルを含有した高分子材料により構成されており、送受波面26の押圧部分において液体が内部から滲み出る程度の湿潤性を有している。図1においては、そのように滲み出た液体が符号38Bで示されている。このように液体が滲み出ることにより、ゲル36表面のウェット状態が維持され、送受波面24Aとの間における摩擦を非常に小さくでき、また送受波面24Aとゲル36の上面36Bとの間に空気層が生じることを効果的に防止できる。ちなみに、ゲル36の下面36Aは上述したように接着剤により接触壁22の内面22Bに接合されている。接着剤による固定が困難であれば、後に説明する枠体等を利用するのが望ましい。ゲル36は化学的な安定性を有する低摩擦性をもった柔軟な高分子材料により構成するのが望ましい。このような材料を用いれば送受波面24Aを保全でき、またその運動時における抵抗を緩和することが可能である。
送受波面24Aを円滑に運動させるために、その四辺すなわちリング状角部分を丸みをもって構成するのが望ましい。これによれば送受波面24Aのエッジによりゲル36の上面36Bを不必要に傷つけてしまうといった問題を防止できる。もっとも、ゲル36として耐久性のあるものが用いられており、それは容易には劣化せず、ある程度長期間連続して使用可能である。ただし、ゲル36の劣化等が生じた場合にそれを新しいものに交換できるように構成するのが望ましい。
上述したように運動室18は気密空間として構成され、ゲル36が有する液体の蒸発や流出が防止されている。よって、プローブ製造段階において、運動室18内に少量の同一液体38Aを入れておけば、ゲル36の湿潤状態を長期間にわたって維持することができる。補充液は運動室18内を自由に運動することになるが、それは保湿状態を維持するためだけのものであるため、そのような運動は診断上問題とならない。
図2には、超音波探触子10の他の断面図が示されている。図1に示した断面図と図2に示した断面図は直交関係にある。
内ケース16には2つの軸受16A,軸受16Bが形成されており、それらによって回転軸26が回転自在に保持されている。各軸受16A,軸受16Bの詳細構造は省略されている。回転軸26にはギア34が連結されており、そのギア34はギア32に噛み合っている。振動子ユニット24は図示される例においてリニア型ユニットであり、その下端部分には上述したように1Dアレイ振動子が設けられている。図においてはx方向が電子走査方向すなわち素子配列方向である。送受波面24Aと接触壁22の内面22Bとの間には上述したように実質的に均一の厚みをもったゲル36が設けられており、そのゲル36は振動子ユニット24の運動位置にかかわらず、その送受波面24Aの前面に密着するものである。送受波面24Aはx方向に伸長した長方形の面であり、当該x方向においてゲル36は送受波面24Aの幅よりも大きな横幅を有している。図1に示したように、θ方向においても、ゲル36は振動子ユニット24の運動経路よりも大きな長さを有している。すなわち、振動子ユニットがどのような運動位置にあってもその送受波面の全部がゲルの上面に密着する。
図1及び図2に示した超音波探触子10によれば、探触子ケース内に液体が充填された部屋を設ける必要がなく、図示したような空気が入った運動室18だけを設ければよいので、振動子ユニット24を機械的に走査した場合において生じる液体抵抗すなわち液体に衝突することによる負荷の問題を解消することができる。もっとも、送受波面24Aがゲル36に接触していることから、そこでの負荷は発生するが、その負荷は従来の媒体負荷に比べてかなり小さいため、走査機構を従来におけるものよりも小型化、軽量化することが可能である。これは超音波探触子それ自体の小型化及び軽量化に繋がるものである。上述したゲル36としては、生体の音響インピーダンスに等しいかあるいはそれに近い音響インピーダンスをもった材料により構成するのが望ましく、その際において、上述したような弾力性、湿潤性、低摩擦性、化学的安定性等の各条件を満たす材料を選択するのが望ましい。そのような材料として、現在存在する多数のゲル材料の中から、用途や条件に応じて適切なものを選択するのが望ましい。例えば特許文献1−3に示したようなものを用いることも可能である。オイルをゲル36に含浸させることにより長期間によっても変質が生じ難いという利点を得られる。もっとも、生理食塩水等を液体として利用することも可能である。なお、上述した実施形態においてはゲル36は固定部材として利用されていたが、ゲル36を送受波面24Aに設け、ゲル36を運動部材として利用することも可能である。その場合においては、ゲル36の下面が接触壁22の内面22B上にスリップしながら当接することになる。あるいは、運動部材としてのゲルと非運動部材としてのゲルを摺動接触させるようにしてもよい。
次に、図3には交換構造が示されている。超音波探触子40において、上ケース12の下側には下ケース14が設けられているが、それらは連結部材42によって締結されている。具体的には、上ケース12の下端にねじ溝44が形成されており、連結部材42の上部内面にもねじ溝46が形成されている。下ケース14の上端部48を連結部材42によりくわえ込んだ状態で、連結部材42を回転させれば、ねじ溝44及びねじ溝46の螺合により、上記の上端部48を確実に固定することが可能である。もちろん、そのようなねじの噛み合いによらずにボルト等を利用してもよく、あるいはフック等の機械的な結合構造を利用するようにしてもよい。いずれにしても、超音波探触子の本体に対して下ケース14を着脱可能に構成すれば、下ケース14の内側に設けられたゲル36を容易に交換することができる。その場合において、下ケース14をゲル36とともに交換するようにしてもよいし、下ケース14からゲル36を分離して、ゲル36だけを交換するようにしてもよい。
図3に示す構成例においては、ゲル36におけるθ方向の両端に一対のスポンジ50が設けられている。それらのスポンジ50は、ゲル36が有している液体と同一の液体すなわちオイルを保有した部材であり、振動子ユニット24の運動に伴って、それが往路端及び復路端に達すると、振動子ユニット24の側面52が各スポンジ50を押し潰し、そこからオイルが滲み出る。これにより液体の補給を行える。このような液体の補給はスポンジ50によらずにポンプ等を利用するようにしてもよい。あるいは上述したように予め所定量の液体を運動室18内に入れておくだけであってもよい。
図4には、ゲル36の固定構造が示されている。図示されるようにゲル36を取り囲んで保持する枠体54を利用し、その枠体54を下ケース14の内面に取り付けることにより、ゲル36を固定するようにしてもよい。枠体54の固定にあたっては接着剤、ねじ留め等を利用することが可能である。枠体54によらずに、ゲル36と下ケース14の内面との密着性を維持するための部材を設けるようにしてもい。
ちなみに、ゲルに対して送受波面が当接することによる窪み量は例えば1mmあるいはそれ以下である。ゲル36の厚みは例えば5mm〜10mm程度であってもよい。ゲル36は透明性を有する部材で構成するのが望ましく、接触壁及びゲルの両者が透明性を有していれば、接触壁22の外側から運動室18の内部を観察することが容易となる。
図5には、付勢機構の例が示されている。図示される付勢機構56は、バネ62を用いて、振動子ユニットの送受波面24Aに対してゲル36の上面36Bを密着させるものである。具体的には、上ケース12と下ケース14とは上下方向に運動可能に取り付けられている。内ケース16には台座58が形成され、一方、下ケース14の上端部が台座60として機能している。台座58と台座60との間にはバネ62が設けられている。実際には、運動室を取り囲むように複数のバネが設けられている。それらのバネ62は引っ張り方向に力を発揮するものであり、すなわち内ケース16に対して外ケース14が近づく方向に付勢力が働いている。これによりゲル36を振動子ユニットに密着させることが可能である。このような構成においては、ゲル36の弾性と付勢機構56の付勢力との2つの作用により、密着性をより高めることが可能である。例えばゲル36が経年変化により厚みにばらつき等が生じても、その付勢力によって確実に密着性を維持することが可能である。
図6乃至図11を用いて振動子ユニットのバリエーションについて説明する。図6にはリニア型の振動子ユニット60が示され、その送受波面60Aは平坦な形状を有している。図7にはリニア型の振動子ユニット62が示されており、その送受波面62Aは凸型を有している。図8に示すリニア型の振動子ユニット64はその送受波面64Aが凹型を有している。
図9に示すコンベックス型の振動子ユニット66は、平坦型の送受波面66Aを有している。図10に示すコンベックス型の振動子ユニット68は、凸型を有する送受波面68Aを有している。図11に示すコンベックス型の振動子ユニット70は、凹型の送受波面70Aを有している。凹型の送受波面を採用する場合、密着性が低下しないように、そこにゲルを埋め込んで送受波面を平坦面又は凸面とするようにしてもよい。その場合、埋め込むゲルは可動体の一部となり、その下面が可動体の送受波面を構成する。
10 超音波探触子、12 上ケース、14 下ケース、16 内ケース、18 運動室、22 接触壁、23 走査機構、24 振動子ユニット、36 ゲル。
Claims (14)
- 生体の超音波診断で使用される超音波探触子において、
生体接触部を有する探触子ケースと、
前記探触子ケース内に設けられた可動部材であって、送受波面を有する振動子ユニットと、
前記探触子ケース内において前記振動子ユニットを機械的に走査することによって、前記振動子ユニットにより形成される超音波ビーム又はビーム走査面を機械的に走査する機械走査機構と、
前記生体接触部の内面と前記送受波面との間に設けられ、保形性を有するゲル状の材料で構成され、前記内面と前記送受波面との間における超音波伝搬を確保するためのゲル状媒体層と、
を含むことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記ゲル状媒体層は前記生体接触部の内面上に配置された非運動部材であり、
前記送受波面が前記ゲル状媒体層の表面に接した当接状態が維持されつつ前記振動子ユニットが機械的に走査され、
前記ゲル状媒体層の表面がスリップ面を構成する、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項2記載の超音波探触子において、
前記ゲル状媒体層は弾力性を有し、
前記ゲル状媒体層においては、前記送受波面の押圧力を受けた部分が窪み部分となり、当該窪み部分は前記押圧力の消失後に原形に復帰する、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項3記載の超音波探触子において、
前記ゲル状媒体層は液体湿潤性を有し、
前記窪み部分においてそこに含有されていた液体が滲み出る、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項4記載の超音波探触子において、
前記ゲル状媒体層が含有する液体はオイルである、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記ゲル状媒体層は、その自然状態において、前記生体接触部の内面と前記送受波面との間の隙間よりも大きな厚みを有する、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記振動子ユニットの送受波面と前記生体接触部の内面との間の隙間が小さくなるように、前記振動子ユニット及び前記生体接触部の少なくとも一方に付勢力を与える手段を含む、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記探触子ケースが前記ゲル状媒体層の交換のための交換構造を有する、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記探触子ケースには、前記振動子ユニットを収容した運動室が設けられ、
前記運動室内には、前記ゲル状媒体層に含有された液体と同じ液体からなる補充液が予め入れられた、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記探触子ケース内には、前記ゲル状媒体層に含有された液体と同じ液体からなる補充液を前記ゲル状媒体層へ供給する補充液供給手段が設けられた、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項10記載の超音波探触子において、
前記補充液供給手段は、前記振動子ユニットの運動時に当該振動子ユニットによって押し潰される補充液含有体を含む、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項2記載の超音波探触子において、
前記振動子ユニットは、素子配列方向に並んだ複数の振動素子を有する1Dアレイ振動子を有し、
前記振動子ユニットの送受波面は、前記素子配列方向に伸長した長さを有し、
前記機械走査機構は、前記素子配列方向と直交する機械走査方向に前記振動子ユニットを往復運動させ、
前記ゲル状媒体層は、前記送受波面の長さ以上の横幅を有し、且つ、前記振動子ユニットの機械走査方向の移動範囲以上の縦幅を有する、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項12記載の超音波探触子において、
前記振動子ユニットの送受波面は丸みをもった縁部を有する、ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項12記載の超音波探触子において、
前記振動子ユニットは前記送受波面を下に向けつつ所定の回転軸を中心として揺動運動し、
前記生体接触部及び前記ゲル状媒体層は前記機械走査方向に沿って湾曲した形態を有する、ことを特徴とする超音波探触子。
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