以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体として模式的に示している。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における人体温冷刺激装置10の全体の概略斜視図である。
本発明の第1実施形態における人体温冷刺激装置10は、図1に示したように、制御器13によって温度を制御される複数の温冷ユニット11a、11bを、人体27の一部(例えば、下腿部)に対して配置して使用される。温冷ユニット11a、11bは、それぞれ温冷を周期的に繰り返すことで、配置された人体27の部位の血流を促進することができる。本第1実施形態の人体温冷刺激装置10は、このようにして、人体27を遠位側から近位側に向かって段階的に温冷することで、血流の流れに対して効果的に血管のポンピングを実現することができる。
温冷ユニット11a、11bは、図1では、一例として下腿部に配置したが、それに限るものではなく、足部、上腿部、体幹部、前腕部、上腕部、鎖骨部、頚部、顔面部などに配置してもよい。また、温冷ユニット11a、11bは、それらの複数部位に配置してもよい。
後述する本第1実施形態の人体温冷刺激装置10の制御方法を実行することで、温冷による血管の収縮及び拡大による脈動を利用して血流を促進させるときに、複数箇所の血管を連動して脈動させ、血流を確実かつ十分に促進させることができる。
なお、本第1実施形態では、温冷ユニットの個数Nは、2以上の自然数とする必要である。すなわち、本第1実施形態では、温冷ユニットは、少なくとも2以上が必要である。
図2は、本発明の第1実施形態における人体温冷刺激装置10の構成図である。
図2に示すように、人体温冷刺激装置10は、複数の温冷ユニット11a、11bと、血流量検出部12と、制御部13と、駆動指令発生部14とを備えている。人体温冷刺激装置10は、さらには、モード選択スイッチ100と、事前加熱モード用スイッチ101を備えていても良い。
本第1実施形態は、少なくとも2つ以上の温冷ユニット11a、11bを必要とするものである。複数の温冷ユニット11a、11bは、それぞれバンド状の部材で構成され、内部にそれぞれ熱電変換器を備えている。複数の温冷ユニット11a、11bは、人体27の心臓から見て遠位側(図2の紙面下側)から近位側(図2の紙面上側)に向けての血流方向沿い(血管沿い)に、所定の間隔をあけて配置される。バンド状の温冷ユニット11a、11bは、例えば、人体27の腕又は脚などにそれぞれ巻き付けて配置される。
駆動指令発生部14は、複数の温冷ユニット11a、11bの温度指令値を生成して、駆動指令信号として制御部13に出力する。温度指令値は、温冷ユニット11a、11bをそれぞれ所定の温度に上昇又は下降させるための指令値である。
血流量検出部12は、赤外線センサなどにより、近位側温冷ユニット11bの近傍の血流量Qを計測する。本第1実施形態では、血流量検出部12は、後述する近位側温冷ユニット11bに組み込まれて一体化している。
制御部13は、血流量検出部12で計測された血流量Qに基づいて、温冷ユニット11a、11bの温度をそれぞれ独立して個別に制御する。
ここで、任意の2つの温冷ユニット11a、11bのうち、人体27の心臓から見て遠位側(人体27の末梢側、図2の紙面下側)にある温冷ユニットを遠位側温冷ユニット11aとし、近位側(人体27の中枢側、図2の紙面上側)の温冷ユニットを近位側温冷ユニット11bとする。このとき、制御部13は、少なくとも、遠位側駆動部15aと、近位側駆動部15bと、基準流量値発生部の一例としての基準流量値発生器16と、比較部の一例としての比較器17と、時間計測部の一例としての時間計測器18と、基準遅延時間発生部の一例としての基準遅延時間発生器19と、変調部の一例としての変調器20と、遅延部の一例としての遅延器21とで構成される。なお、図2中の22,23,24,25は、それぞれ第1,第2,第3,第4スイッチである。
遠位側駆動部15aは、第1スイッチ22を介して入力された駆動指令発生部14からの駆動指令信号に基づいて、遠位側温冷ユニット11aを温度制御する。
近位側駆動部15bは、第2スイッチ23及び変調器20及び遅延器21を介して入力された駆動指令発生部14からの駆動指令信号に基づいて、近位側温冷ユニット11bを温度制御する。
基準流量値発生器16は、血流量検出部12で計測される近位側温冷ユニット11b近傍の血流量Qの基準値(例えば、予め定められた閾値Qth)を生成する。閾値Qthは、例えば、事前実験などから標準となる値を求めておき、この値を閾値として予め設定しておけばよい。また、必要に応じて、キーボードなどの入力手段を用いて、使用者が閾値Qthを変更できるようにしておいてもよい。
閾値Qthは、例えば、遠位側温冷ユニット11aの温熱を開始する前の平常時の血流を一定時間計測し、そのときの平均血流量Qavg、標準偏差Qsdをもとに、Qth=Qavg+3Qsdとして設定することができる。
比較器17は、血流量検出部12で計測される血流量と基準流量値発生器16で生成された基準値とがそれぞれ入力されて、それぞれ入力された血流量と基準値とを比較して、比較判断結果を出力する。例えば、比較器17は、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された血流量検出部12で計測される流量Qが、基準流量値発生器16において予め定められた閾値Qthを超えるか否かを、比較して判断する。ここで、比較器17が、血流量検出部12で計測される流量Qが閾値Qthを超えたと判断すると、比較器17からの信号により、第4スイッチ25の接点がB側からA側に切り換えられる。
時間計測器18は、駆動指令発生部14からの駆動指令信号と比較器17からの比較判断結果とが入力されて、駆動指令発生部14で駆動指令信号が発生してから比較器17で変化を検出するまでの伝達遅れ時間を、カウントする。そして、カウントした伝達遅れ時間を、第3スイッチ24を介して、基準遅延時間発生器19に出力する。
基準遅延時間発生器19は、駆動指令発生部14から入力された駆動指令信号に対して、時間計測器18で算出した伝達遅れ時間分を遅延させて、遅延した駆動指令信号を第4スイッチ25の接点A側に出力する。
変調器20は、駆動指令発生部14から近位側温冷ユニット11bに向けて発生した駆動指令信号において、高温設定値及び低温設定値及び温冷サイクルが変化するように駆動指令信号を変調し、変調された駆動指令信号を遅延器21に出力する。
遅延器21は、変調器20により変調された駆動指令信号が入力される。それとともに、遅延器21は、第4スイッチ25の接点がA側に接触しているときには、基準遅延時間発生器19から出力される信号が入力され、第4スイッチ25の接点がB側に接触しているときには、比較器17からの判断結果の信号が入力される。この結果、遅延器21は、第4スイッチ25を介して入力される信号を基に、変調器20により変調された駆動指令信号に対して更に遅延を発生させて、当該駆動指令信号を、第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに出力する。
第1スイッチ22は、駆動指令発生部14と遠位側駆動部15aとの間の接続を開閉し、遅延器21および駆動指令発生部14からの信号を遠位側駆動部15aに伝達するか否かを決定するスイッチである。
第2スイッチ23は、遅延器21と近位側駆動部15bとの間の接続を開閉し、遅延器21からの信号を近位側駆動部15bに伝達するか否かを決定するスイッチである。
第3スイッチ24は、時間計測器18と基準遅延時間発生器19との間の接続を開閉し、時間計測器18で計測された伝達遅れ時間を実際に遅延させるか否かを決定するスイッチである。
第4スイッチ25は、判断器17又は基準遅延時間発生器19からの信号に基づき、遅延器21と基準遅延時間発生器19とを接続するか、又は、遅延器21と比較器17とを接続するかのいずれかを行う切り換えスイッチである。すなわち、第4スイッチ25は、接点を基準遅延時間発生器19(接点A)と比較器17(接点B)とで、切り替えるスイッチである。
これら第1スイッチ22、第2スイッチ23、第3スイッチ24の開閉は、駆動指令発生部14からの信号に基づいて行われる。
図3は、第1実施形態にかかる人体温冷刺激装置10において、温冷ユニット11a、11bの温熱及び/又は冷却を実施する際の装置の制御方法の動作手順を示すフローチャートである。
なお、後述する「リアルタイムモード」と「オフラインモード」となどのモード(動作形態)を選択する場合には、以下のステップに入る前に、モード選択スイッチ100で使用者が所望のモードを使用者が選択することで、当該モードを実行するための信号がモード選択スイッチ100から駆動指令発生部14に入力される。
図3に示すように、ステップS01で、駆動指令発生部14において、遠位側温冷ユニット11a及び近位側温冷ユニット11bの温冷駆動指令を、事前に設定する。ステップS01の駆動指令は、具体的には、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わない指令である。
次いで、ステップS02で、閾値Qthを設定するために、血流量測定部12を用いて初期血流量を測定する。
次いで、ステップS03で、駆動指令発生部14から制御部13に出力された駆動指令に基づき、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わない。このとき、図2において、第1スイッチ22及び第2スイッチ23はオンであり、第4スイッチ25はB側に接点を持つ。このようにして、遠位側温冷ユニット11aにより人体27の遠位側(末梢側)の温熱が開始されることにより、遠位側温冷ユニット11aが接触している人体接触面の直下の血液が温められ、その血流が近位方向(図2の紙面上方向)に向けて流れることになる。
次いで、ステップS04で、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された血流量計測部12で計測される血流量Qが、初期血流量に基づいて基準流量値発生器16で定められた閾値Qthを超えるか否かを、比較器17で判断する。比較器17において、血流量計測部12で計測される血流量Qが閾値Qthを超えたと判断する(ステップS04のYes)と、比較判断結果の信号を出力すると共に、ステップS05に進む。
ステップS05では、比較器17からの比較判断結果の信号に基づき、第4スイッチ25の接点がB側からA側に切り換わり、駆動指令発生部14より生じる駆動指令信号が遅延器21に出力される。さらに、その駆動指令信号が遅延器21から第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに入力され、近位側温冷ユニット11bが駆動を開始する。
これらステップS01〜S05により、本第1実施形態の人体温冷刺激装置10は、人体27の血流の状態(血流量)をリアルタイムに観測しながら、温冷ユニット11aにより温められた血流を、順次、遠位側から近位方向に連鎖的に押し出すことができる。その結果、本第1実施形態の人体温冷刺激装置10は、より高い血流のポンピング効果を得ることができる。さらに、本第1実施形態の人体温冷刺激装置10は、血流量検出部12を用いてリアルタイムに血流量を計測しているので、皮下脂肪の量又は血管径の大きさなどによる個人差又は部位差によって温冷刺激の伝達特性が異なる場合でも、温冷刺激の伝達特性に適応した血管ポンピングが可能となる。
ここで、本第1実施形態では、上記に説明したようにリアルタイムに血流量を推定し、温冷ユニット11a,11bの駆動に遅延を与えるモードを、「リアルタイムモード」と呼ぶこととする。
本第1実施形態において、駆動指令発生部14において設定される駆動指令信号に含まれる温度条件は、周期的に温冷を繰り返すように設定されている。ここで、図5に示すように、温度指令値において、最も高い温度の状態を高温と定義して、その温度を高温設定温度とし、最も低い温度の状態を低温と定義して、その温度を低温設定温度とする。また、低温の状態から高温の状態に移ることを温熱と定義し、高温の状態から低温の状態に移ることを冷却と定義する。このとき、高温設定温度は人体27の皮膚温度を上回る値とし、低温設定温度は人体27の皮膚温度を下回る値とすることが望ましい。設定される皮膚温度は、温熱を開始する前の温冷ユニット11a、11bの温度を制御するための温度センサの値としても良いし、一般的な人間の体温(例えば、36℃など)と設定しても良い。これにより、温冷(温熱又は冷却)を実施していることが実感しやすくなり、感覚的な効果を得やすくなる。
また、ここで、高温設定温度は、例えば42℃などのように、43℃未満に設定することが望ましい。これは、一般的に、43℃以上の高温になると、人体ポリモーダル受容器の興奮による痛みが発生する可能性があり、好ましくないためである。このように、温冷ユニット11a、11bの高温設定温度を43℃未満に設定することで、人体ポリモーダル受容器の興奮による痛みの発生を抑えることができる。
さらに、温冷ユニット11a、11bを温熱するときに、皮膚温度より低温領域では温度勾配を大きくすると共に、皮膚温度より高温領域では温度勾配を小さくして、温度勾配を複数の段階にコントロールすることで、急激に温度が変化するときに生じる痛みを軽減することができる。すなわち、駆動指令発生部14は、温冷ユニット11a,11bを温めるときは、皮膚温度までは第1温度勾配で加熱し、温冷ユニット11a,11bが皮膚温度に達した後は、第1温度勾配より低い第2温度勾配で加熱するような駆動指令信号を生成して制御部13に出力し、温冷ユニット11a,11bをそれぞれ独立して制御するのが好ましい。より具体的には、35℃から38℃へは7.5℃/minとし、38℃から40℃へは3.3℃/minとし、40℃から42℃へは2.0℃/minとすることが望ましい。このような複数の段階に分かれた温度勾配を設定することで、特に体温(皮膚温度)を超える温度領域において急激に温度が変化するときに生じる痛みを軽減することができる。
また、冷却に関しては、所定の時間勾配で急速に冷却を行うことが望ましい。具体的には、冷却時は、図4に示すように、15℃まで一気に冷却することが望ましい。このように設定すれば、低温刺激による痛みの発生を抑えることができる。このときの冷却に必要な時間Tcが、温冷サイクル周波数を決定する際の主要因となる。低温保持時間をTckとし、温熱に必要な時間をThとし、温熱保持時間をThkとすると、(Tc+Tck+Th+Thk)が温冷サイクルの1周期となる。なお、冷却に関しても、温熱の順番と同様に、遠位側温冷ユニット11aを冷却した後、近位側温冷ユニット11bを冷却するのが好ましい。冷却動作は、制御動作は温熱動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
また、人体の特性上、皮膚温度を挟んで温熱及び冷却を行う場合、急速な温熱よりも急速な冷却の方が、体で痛みを感じる可能性は小さい。そのため、最高温度までの加熱幅よりも最低温度までの冷却幅の方を大きくする、すなわち、最高温度までの加熱時の温度勾配よりも最低温度までの冷却時の温度勾配を大きくしておくことが望ましい。
また、近位側温冷ユニット11bの駆動指令の開始を遠位側温冷ユニット11aに対して遅延させる時間は、前述のリアルタイムモードによる計測結果に基づくものではなく、事前に血流の熱電特性に基づいて実験等により予め算出した時間を用いてもよい。本第1実施形態では、この方法を「オフラインモード」と呼ぶ。
オフラインモードで温熱又は冷却を行う際について、説明する。
オフラインモードで温熱又は冷却を行う際には、まず、図4に示すように、遠位側温冷ユニット11aの温熱が開始された時間(t=0)から、血流量Qが基準流量値発生器16において予め定められた閾値Qthを超えたと比較器17で判断された時間(t=td)までの時間を、時間計測器18で計測する。ここで、血流量Qは、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された血流量検出部12bで計測される。tが0からtdまでの時間が、伝達遅れ時間である。時間計測器18で計測された伝達遅れ時間tdを、基準遅延時間として基準遅延時間発生器19に設定する。このとき、第1スイッチ22はオン、第2スイッチ23はオフ、第3スイッチ24はオンであり、第4スイッチ25はA方向に接点を有する。次いで、第1スイッチ22をオン、第2スイッチ23をオン、第3スイッチ24をオフとし、第4スイッチ25をA側に接点を有する状態にする。この状態で駆動指令発生部14から駆動指令信号を制御部13に出力すると、基準遅延時間発生器19による伝達遅れ時間tdが経過した後に、基準遅延時間発生器19から遅延器21を介して、近位側駆動部15bに駆動指令信号が伝送される。
さらに、遠位側温冷ユニット11a及び近位側温冷ユニット11bの温熱(又は冷却)の関係は、図5Aに示すように、両温冷ユニット11a,11bの温熱時間(又は冷却時間)が重ならないものとすることが望ましい。このように制御する場合を「分離タイプ」と呼ぶ。分離タイプで温度制御することにより、高速に血流ポンピングを実現することができるので、より短時間で血流を促進することができる。
なお、図2においては、血流量検出部12は、近位側温冷ユニット11b近傍に組み込まれる形で配置されているが、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとの中間位置に血流量検出部12を配置してもよい。
また、遠位側温冷ユニット11a及び近位側温冷ユニット11bの温熱(又は冷却)の関係は、図5Bに示すように、近位側温冷ユニット11bと遠位側温冷ユニット11aの温熱時間(又は冷却時間)が重なるものとしてもよい。このように制御する場合を「重畳タイプ」と呼ぶ。重畳タイプで温度制御することにより、近位側温冷ユニット11bと遠位側温冷ユニット11aが共に温かく、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとを配置した部位が全体として温かい状態にして、リラックス効果を高めることができる。また、重畳タイプで温度制御することにより、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bの温度差を小さくすることができるので、人体温冷刺激装置10の使用者にとって優しくかつ安全でもある。
(第1実施形態の変形例)
以上の説明では、温冷ユニット11a、11bの個数N個(Nは、自然数)がN=2のときについて説明したが、Nが3以上としてもよい。N=3の場合の第1実施形態の変形例について、図6及び図7を用いて説明する。
図6は、N=3の場合の人体温冷刺激装置10Aの構成図である。図6に示すように、人体温冷刺激装置10Aは、遠位側温冷ユニット11c、中間温冷ユニット11d、近位側温冷ユニット11eを人体27の遠位側から配置すると共に、これらの間に血流量検出部12d、12eを配置したものである。中間の血流量検出部12dは、遠位側温冷ユニット11cと中間温冷ユニット11dの間に配置され、中間温冷ユニット11dに組み込まれている。また、近位側の血流量検出部12eは、中間温冷ユニット11dと近位側温冷ユニット11eの間に配置され、近位側温冷ユニット11eに組み込まれている。この変形例の人体温冷刺激装置10Aにおいて、前述のオフラインモードで伝達遅れ時間を計測するときには、図7に示すように、遠位側温冷ユニット11cより順次温熱を行う。
このように、温冷ユニットの個数をN≧3とすると、N=2のときと比較して温冷ユニットをより高密度で配置することができ、血液の流れに対してより連続的な血流のポンピングが可能となる。また、温冷ユニットの個数をN≧3とすると、N=2のときと比較して温冷ユニットをより長い区間に対して配置することができ、より近位側まで血流の促進を実現することができる。
図6に示す人体温冷刺激装置10Aの場合、まず、図7のステップS61において、駆動指令発生部14から制御部13に出力する駆動指令を設定する。
次いで、ステップS62において、血流量検出部12d、12eで初期血流量を計測する。それぞれの血流量検出部12d、12eの初期血流量を計測することで、それぞれの温冷ユニット11d、11eにおける閾値Qth2、Qth3を算出する。
次いで、ステップS63において、遠位側温冷ユニット11cへの温熱を開始して、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱する。このとき、中間及び近位側温冷ユニット11d,11eの温冷は行わない。
次いで、ステップS64において、中間温冷ユニット11dの近傍に設置された血流量検出部12dで計測される血流量Q2が、血流量検出部12dの初期血流量に基づいて基準流量値発生器16において予め定められた閾値Qth2を超えるか否かを、比較器17で判断する。血流量検出部12dで計測される流量Q2が閾値Qth2を超えたことが比較器17において判断される(ステップS64のYes)と、ステップS65に進む。
次いで、ステップS65では、中間温冷ユニット11dにおける伝達遅れ時間を計測する。伝達遅れ時間の計測は、前述の方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
次いで、ステップS66では、駆動指令発生部14から制御部13に出力された駆動指令に基づき、中間温冷ユニット11dへの温熱を開始する。
次いで、ステップS67では、近位側温冷ユニット11eの近傍に設置された近位側の血流量検出部12eで計測される流量Q3が、血流量検出部12eの初期血流量に基づいて基準流量値発生器16において予め定められた閾値Qth3を超えるか否かを、比較器17で判断する。血流量検出部12cで計測される流量Q3が閾値Qth3を超えたことが比較器17において判断される(ステップS67のYes)と、ステップS68に進む。
ステップS68では、近位側温冷ユニット11eにおいて伝達遅れ時間を計測する。伝達遅れ時間の計測は、前述の方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
次いで、ステップS69で、近位側温冷ユニット11eへの温熱を開始する。このようにして、3つの温冷ユニット11c、11d、11eを用いることで、温冷ユニットが2つの場合よりも血流のポンピング作用を強くすることができる。
ここで、中間温冷ユニット11dへの温熱を開始してから近位側温冷ユニット11eにおいて伝達遅れ時間を計測し、中間温冷ユニット11dが常温に戻った後に遠位側温冷ユニット11cへの温熱を開始することで、中間温冷ユニット11dにおいて伝達遅れ時間を計測するよりも、より短時間で伝達遅れ時間を計測することができる。
なお、本第1実施形態では、血流の伝達遅れ時間を、温冷ユニット11の人体接触面を温熱することで算出したが、冷却することで伝達遅れ時間を算出してもよい。冷却することで伝達遅れ時間を算出する場合は、例えば、近位側温冷ユニット11bの血流量検出部12の血流は減少するので、減少量に関する閾値を基準流量値発生器16で予め設定し、比較器17において、血流量の減少量がその基準流量値発生器16で予め設定した閾値を超えているかを判断し、超えたタイミングで近位側温冷ユニット11bの駆動を開始する。
本第1実施形態のさらに別の変形例として、短時間で血流を促進できる「分離タイプ(温熱時間が重ならないタイプ)」とリラックス性を高められる「重畳タイプ(温熱時間が重なるタイプ)」とを組み合わせた温冷バリエーションを用いても良い。この場合、まず「分離タイプ」による温冷を行った後に「重畳タイプ」による温冷を行う方法や、逆に、まず「重畳タイプ」による温冷を行った後に「分離タイプ」による温冷を行う方法が考えられる。前者は、短期間で血流を促進させた後に全体的に温かくするので、高いリラックス効果を実現できる。後者は、温冷ユニット近傍だけでなく全体を温冷した後に局所的に短時間の温冷を行うので、電気刺激のような刺激を擬似的に与えることができる。なお、これらのバリエーションをさらに組み合わせることもできる。
これらのバリエーションは、制御部13のそれぞれのスイッチと連携可能なタイプ切替スイッチを設けるか、又は、プログラムで選択するか、若しくは、シーケンスとして予め決定しておく。
以上のように、本第1実施形態にかかる人体冷却刺激装置10、10Aによれば、制御部13により、温冷ユニット11を血流方向に沿って時間遅れをもって順次独立して個別に温駆動及び/又は冷駆動することで、従来に比べて血流促進効果を一層向上させることができる。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態における人体温冷刺激装置10Bの構成図である。以下、主として、本第2実施形態が前述の第1実施形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
図8に示すように、人体温冷刺激装置10Bは、所定の間隔をあけて人体27に配置された複数の温冷ユニット11a,11bと、サーミスタなど温度を計測できる温度計測部52と、計測された温度に基づいて温冷ユニット11a,11bの温度の制御をそれぞれ独立して個別に行う制御部53と、駆動指令発生部14とで構成されている。すなわち、本第2実施形態の人体温冷刺激装置10Bは、前述の第1実施形態の人体温冷刺激装置10の血流量検出部12の代わりに温度計測部52を有するものである。一般的に、血流が増加すると血行が良い状態となり、結果的に体温が上昇するので、温度計測部52により体温を計測することで、血流量の増加又は減少を温度の上昇又は降下として検出することができる。
温度計測部52は、近位側温冷ユニット11b近傍の人体接触面の温度Tを計測する。温度計測部52は、人体の温度(体温)に基づいて血流量を検出する血流量検出部の一例である。
また、任意の2つの温冷ユニット11a、11bのうち、心臓から見て遠位側(人体27の末梢側)にある温冷ユニットを遠位側温冷ユニット11aとし、近位側(人体27の中枢側)の温冷ユニットを近位側温冷ユニット11bとする。制御部53は、遠位側駆動部15aと、近位側駆動部15bと、基準温度値発生部の一例としての基準温度値発生器56と、比較部の一例としての比較器57と、時間計測部の一例としての時間計測器18と、基準遅延時間発生部の一例としての基準遅延時間発生器19と、変調部の一例としての変調器20と、遅延部の一例としての遅延器21とで構成される。第1実施形態と大きく異なる点は、血流量検出部の一例として機能する温度計測部52と、基準温度値発生器56と、比較器57とである。遠位側駆動部15aと近位側駆動部15bとは、第1実施形態と同様に作用する。
温度計測部52は、人体27の人体接触面の温度を計測しているが、間接的には血流量の変化を検出するものである。以下、説明の便宜上、温度を計測して、温度の閾値と比較しているが、目的は、血流量の変化を検出することである。
基準温度値発生器56は、温度計測部52で計測される温度Tの基準値(例えば、初期体温に基づいて予め定められた閾値Tth)を生成する。
比較器57は、温度計測部52で計測される温度Tと基準温度値発生器56が生成する基準値(例えば、初期体温に基づいて予め定められた閾値Tth)とがそれぞれ入力されて、温度計測部52で計測される温度と基準温度値発生器56が生成する基準値とを比較する。例えば、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された温度計測部52で計測される温度Tが、基準温度値発生器56において予め定められた閾値Tthを超えるか否かが、比較器57で判断される。温度計測部52で計測される温度Tが、基準温度値発生器56において予め定められた閾値Tthを超えたことが比較器57において判断されると、比較器57からの信号により、第4スイッチ25の接点がB側からA側に切り換えられる。
時間計測器18は、駆動指令発生部14からの駆動指令信号と比較器57からの判断結果とが入力されて、駆動指令発生部14より駆動指令信号が発生してから、比較器57が変化を検出するまでの時間をカウントして、第3スイッチ24を介して、基準遅延時間発生器19に出力する。
基準遅延時間発生器19は、駆動指令発生部14からの駆動指令信号が入力されて、駆動指令発生部14から発生する駆動指令信号に対して、時間計測器18で算出した伝達遅れ時間分を遅延して、第4スイッチ25の接点A側に出力する。
さらには、変調器20は、駆動指令発生部14から遠位側温冷ユニット11aに向けて発生する駆動指令信号の高温設定温度と、低温設定温度と、温冷サイクルとを変化させるように、変調された駆動指令信号を遅延器21に出力する。
遅延器21は、変調器20により変調された駆動指令信号が入力されるとともに、第4スイッチ25の接点がA側に接触しているときには、基準遅延時間発生器19から出力される信号が入力され、第4スイッチ25の接点がB側に接触しているときには、比較器57からの判断結果の信号が入力される。この結果、遅延器21は、第4スイッチ25を介して入力される信号を基に、変調器20により変調された駆動指令信号に対して更に遅延を発生させて、当該駆動指令信号を、第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに出力する。
第1スイッチ22〜第3スイッチ24は、第1実施形態と同様に作用する。
第4スイッチ25は、判断器57からの信号に基づき、遅延器21と基準遅延時間発生器19とを接続するか、又は、遅延器21と比較器57とを接続するかのいずれかを行う切り換えスイッチである。
図10Aは、本第2実施形態におけるリアルタイムモードの人体温冷刺激装置10Bにおいて温冷ユニットの温熱及び/又は冷却を実施する際の装置の制御方法の動作手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、駆動指令発生部14において、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとの温冷の駆動指令を事前に設定する。例えば、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わないとする。
次いで、ステップS12で、温度計測部52を用いて人体27の人体接触面の初期体温を計測する。
次いで、ステップS13で、図7に示すように、駆動指令発生部14から制御部53に出力されかつ事前に設定された駆動指令に基づき、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わない。遠位側温冷ユニット11aの人体接触面の温熱が開始されることにより、遠位側温冷ユニット11aが接触している人体接触面の直下の血液が温められ、その血流が近位方向に流れることになる。
次いで、ステップS14で、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された温度計測部52で計測される温度Tが、基準温度値発生器56において予め定められた閾値Tthを超えるか否かが、比較器57で判断される。温度計測部52で計測される温度Tが、基準温度値発生器56において予め定められた閾値Tthを超えたことが比較器57において判断される(ステップS14のYes)と、ステップS15に進む。
ステップS15では、比較器57からの判断結果の信号に基づき、第4スイッチ25がB側からA側に接点を切り換えて、駆動指令発生部14より生じる駆動指令信号が遅延器21に伝わる。さらに、その駆動指令信号が、遅延器21から第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに入り、近位側温冷ユニット11bへの温熱を開始する。
これにより、温度を計測することにより間接的に血流状態をリアルタイムに観測しながら、温められた血流を、順次、遠位側から近位方向に連鎖的に押し出すことができ、より高いポンピング効果を得ることができる。さらに、リアルタイムに体温を介して血流を計測しているので、皮下脂肪の量又は血管径の大きさなどによる個人差又は部位差によって異なる伝達特性に適応した血管ポンピングが可能となる。さらに、第1実施形態のように血流量を測定した場合には、信号のSN比が悪くなりやすく、ノイズの小さい信号を得るためには高額な計測系が必要となるのに対して、本第2実施形態で用いる温度計測部52は非常に安価に低SN比の信号を計測することができ、正確に熱電を計測することができる。
なお、温熱により血流量が上昇し、その結果、人体接触面の温度が上昇するので、温度上昇が発生するまでには時間遅れが生じる。そのため、比較部として機能する比較器57の1つの具体的な例としては、リアルタイムモード及びオフラインモードのいずれにおいても、図11Aに示すように、温度計測部52で計測される温度(センサ値)Tが第1閾値(例えば、前記閾値Tth)を超えるタイミングを観測する比較器81で構成してもよい。
しかしながら、これに限られず、比較器57の別の具体的な例として、図11Bに示すように、温度計測部52で計測される温度を時間で微分して温度変化量を算出する時間微分器85と、時間微分器85が算出した温度変化量が予め定められた第2閾値を超えるタイミングを観測する比較器82とで構成してもよい。これにより、時間微分器85で算出した温度変化量を使用することにより、時間遅延分を除去することができて、より早いタイミングで正確に血流伝達を計測することができる。
また、比較器57のさらに別の具体的な例として、図11Cに示すように、温度計測部52で計測される温度を時間で微分した微分値を算出する時間微分器86と、温度計測部52で計測される温度をと時間微分器86で算出された微分値とを加算する比較器84と、比較器84からの加算値が第3閾値を超えるタイミングを観測する比較器83とで構成するようしてもよい。これにより、時間微分器86で算出した微分値を使用することにより、時間遅延分を除去することができる上に、微分のみでは不安定になりやすい判断を、より安定かつ早期にできるようになる。
また、近位側温冷ユニット11bの駆動指令開始を遠位側温冷ユニット11aに対して遅延させる時間は、前記のリアルタイムモードではなく、事前に血流の温度伝達特性を計測し、予め算出してもよい。一例として、温冷ユニット11a,11bを、それぞれ、一対のペルチェ素子によって構成し、ペルチェ素子を温度センサとして使うことで、初期体温に基づいて温度伝達特性を予め算出するようにしてもよい。
オフラインモードで人体温冷刺激装置10Bの制御を行う際には、まず、図10Bに示すように、図10Aと同様に、ステップS11において、駆動指令発生部14において、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとの温冷駆動指令を事前に設定する。
次いで、ステップS12で温度計測部52を用いて人体27の人体接触面の初期温度を計測した後、ステップS13で、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱する。
次いで、図10BのステップS16では、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わないときに、遠位側温冷ユニット11aの温熱が開始してから、近位側温冷ユニット近傍に設置された温度計測部52で計測される温度Tが基準温度値発生器56において予め定められた閾値Tthを超えたことが比較器57において判断されるまでの時間tdを、時間計測器18で伝達遅れ時間として計測する。
次いで、ステップS17において、時間計測器18で計測された伝達遅れ時間tdを基準遅延時間発生器19で基準遅延時間として設定する(このとき、第1スイッチ22はオン、第2スイッチ23はオフ、第3スイッチ24はオン、第4スイッチ25はA側に接点を有する。)。このステップS17完了後に、駆動指令発生部14からの信号により、後述するステップS18の状態に各スイッチが切り替わる。
次いで、ステップS18において、第1スイッチ22をオン、第2スイッチ23をオン、第3スイッチ24をオフ、第4スイッチ25をA側に接点を有するものとし、駆動指令発生部14から駆動指令信号が出力されてから、基準遅延時間発生器19によって、伝達遅れ時間tdが経過したか否かが判断される。基準遅延時間発生器19によって、駆動指令発生部14から信号を出力されてから伝達遅れ時間tdが経過したと判断されると、ステップS15に進む。
ステップS15においては、基準遅延時間発生器19からの判断結果の信号に基づき、第4スイッチ25がB側からA側に接点を切り換えて、駆動指令発生部14より生じる駆動指令信号が遅延器21に伝わる。さらに、その駆動指令信号が、遅延器21から第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに伝送される。その結果、近位側温冷ユニット11bが駆動を開始する。
これにより、1回の計測により皮下脂肪の量又は血管径の大きさなどによる個人差又は部位差によって異なる伝達特性に適応した伝達遅れ時間を簡易的に算出することができ、温かい血液を簡易的な順次送り出しによる血管ポンピングが可能となる。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態において、温度センサの代替として、近位側温冷ユニット11b内の熱電変換器(例えば、一対のペルチェ素子)が有するゼーベック効果を利用した電圧検出部62を使用してもよい。この場合の人体温冷刺激装置10Cは、図9に示すように、複数の温冷ユニット11a,11bのうちの近位側温冷ユニット11bの中の電圧検出部62と、近位側温冷ユニット11bへの通電を制御する第2スイッチ23と、近位側温冷ユニット11bで計測された温度変化に基づいて遠位側温冷ユニット11aの温度の制御を行う制御部63を有する。
図12は、第2実施形態の変形例における人体温冷刺激装置10Cにおいて、温冷ユニット11a、11bの温熱及び/又は冷却を実施する際の装置の制御方法のフローチャートを示す。
まず、任意の2つの温冷ユニット11a、11bのうち、近位側温冷ユニット11bの通電を行わないように第2スイッチ23を切断し(ステップS21)、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱する(ステップS22)。
その後、遠位側温冷ユニット11aの温熱により流量が増した血流が近位側に流れ、温度が上昇する。このとき、近位側温冷ユニット11b内の電圧検出部62における熱電変換素子のゼーベック効果により、熱電変換素子は電圧を生じる。遠位側温冷ユニット11aの温熱が開始してから、近位側温冷ユニット11b近傍に設置された電圧量検出部62で計測される温度の電圧Vが、基準電圧値発生器66において予め定められた閾値Vthを超えるか否かを、比較器67において判断する(ステップS23)。電圧量検出部62で計測される温度の電圧Vが、閾値Vthを超えたと比較器67で判断される(ステップS23のYes)と、ステップS24に進む。
ステップS24においては、電圧量検出部62で計測される温度の電圧Vが閾値Vthを超えたと比較器67において判断されると、遠位側温冷ユニット11aの温熱が開始してから電圧Vが閾値Vthを超えたと比較器67において判断されるまでの時間tdを、時間計測器18で伝達遅れ時間として計測する。計測された伝達遅れ時間tdを基準遅延時間発生器19に基準遅延時間として設定する。
次いで、第1スイッチ22をオン、第2スイッチ23をオン、第3スイッチ24をオフ、第5スイッチ25をA側の接点に切り替え、駆動指令発生部14から駆動指令信号が出力されてから、基準遅延時間発生器19によって、伝達遅れ時間tdが経過したか否かが判断される。基準遅延時間発生器19によって、駆動指令発生部14から信号を出力されてから伝達遅れ時間tdが経過したと判断されると、基準遅延時間発生器19からの判断結果の信号に基づき、第4スイッチ25がB側からA側に接点を切り換えて、駆動指令発生部14より生じる駆動指令信号が遅延器21に伝わる。さらに、その駆動指令信号が、遅延器21から第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに伝送される。その結果、近位側温冷ユニット11bが駆動を開始する(ステップS25)。
その後、ステップS26では、ステップS01と同様に、駆動指令発生部14において、遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとの温冷駆動指令を事前に設定する。例えば、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わないとする。
次いで、ステップS27で、駆動指令発生部14から制御部63に出力されかつ事前に設定された駆動指令に基づき、遠位側温冷ユニット11aの人体接触面を温熱し、近位側温冷ユニット11bの温冷を行わない(このとき、図9において第1スイッチ22及び第2スイッチ23はオン、第4スイッチ25はB側に接点を持つものとする)。
次いで、ステップS28で、遠位側温冷ユニット11aの温熱が開始されてから伝達遅れ時間tdが経過したことを基準遅延時間発生器19で判断した後、基準遅延時間発生器19からの判断結果の信号に基づき、第4スイッチ25がB側からA側に接点を切り換えて、駆動指令発生部14より生じる駆動指令信号が遅延器21に伝わる。さらに、その駆動指令信号が、遅延器21から第2スイッチ23を介して近位側駆動部15bに伝送される。その結果、近位側温冷ユニット11bが駆動を開始する。
これにより、1回の計測により、皮下脂肪の量又は血管径の大きさなどによる個人差又は部位差によって異なる伝達特性に適応した伝達遅れを、簡易的に算出することができ、温度センサを用いることなく、コストを抑えることができる。
(第3実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態における人体温冷刺激装置10Dの構成図である。
図13に示すように、人体温冷刺激装置10Dは、少なくとも、所定の間隔をあけて人体27に配置された複数の温冷ユニット11a,11bと、ユニット間距離検出部102と、流速選択部124と、制御部103とで構成される。
ユニット間距離検出部102は、それぞれの温冷ユニット11a,11bの間の距離を計測する。
流速選択部124は、温冷ユニット11a,11bを接触させる部位を選択する部位入力部122と、座位又は立位などそのときの人体の姿勢を選択する姿勢入力部123とで構成され、温冷ユニット11a,11bにおける血流の速度を決定する。
制御部103は、ユニット間距離検出部102と流速選択部124と駆動指令発生部14とからの情報を基にそれぞれの温冷ユニット11a,11bの温度をそれぞれ独立して個別に制御する。
なお、流速選択部124では、内蔵する記憶部に、文献値などから人体の部位と静脈の血流速度との関係情報が図14に示すようにテーブル形式で予め登録されている。そして、部位入力部122で入力された部位(脹脛又は前腕など)と姿勢入力部123で入力された姿勢(立位又は座位又は臥位など)とが流速選択部124に入力されると、入力された部位と入力された姿勢とに対応した血流速度を流速選択部124から出力する。なお、流速選択部124の記憶部に登録されたテーブルは、部位及び姿勢に加え、年齢及び性別により異なり、年齢及び性別を選択することで、テーブルを選択するものであっても良い。なお、性別及び年齢以外にも、関節の屈曲進展、体重、又は、体脂肪率にも、血流速度は依存する。また、関節を挟んで複数の温冷ユニット11a,11bが配置される場合、関節を挟む腕又は脚の姿勢(関節を曲げるか、伸ばすか)により温冷が変化するので、関節部は、別条件として追加されている(図14の膝関節、股関節、肘関節など参照)。
なお、人体温冷刺激動作としては、図14の部位と、先に述べた「リアルタイムモード」と「オフラインモード」となどのモードとの組み合わせで、種々の種類の人体温冷刺激動作を実現することができる。
流速選択部124から出力された血流速度とユニット間距離検出部102から出力されるユニット間距離とを掛け合わせることで、簡易的に、ユニット間で血流の伝達遅れ時間tdを遅延時間算出部118で算出することができる。駆動指令発生部14から信号を出力されてから、基準遅延時間発生器19によって伝達遅れ時間tdが経過したと判断されたならば、近位側駆動部15bに駆動指令信号が伝送される。駆動指令を実行する前に伝達遅れ時間分だけ遅らせて駆動指令信号の伝送を行うことで、部位又は姿勢によって異なる伝達特性に適応した伝達遅れを簡易的に算出することができ、温かい血液を簡易的な順次送り出しによる血管ポンピングが可能となる。
さらに、皮膚の厚み、脂肪量、又は、筋肉量により表皮から血管までの熱伝導時間は異なるので、温冷ユニット11a、11bの熱が血管及び血液に伝わる時間を流速選択部のパラメータとしてもよい。具体的には、体脂肪量又は筋肉量をパラメータとした熱伝導時間が事前の実験により取得されており、その熱伝導時間を遠位側温冷ユニット11aでtiとし、近位側温冷ユニット11bでti+1としたときには、時間(td+ti−ti+1)だけ遅らせて、近位側温冷ユニット11bの駆動指令を開始する。これにより、より正確に血流の熱電遅れを推定することができ、連続的な血管ポンピングが可能になる。
なお、第3実施形態において、ユニット距離計測部102においてユニット間距離を計測するものとしたが、一定のユニット間距離となるように予めユニット同士をワイヤなどの剛体などで固定してもよい。この場合には、テーブルから決定される血液速度とユニット間距離を掛け合わせることで、ユニット間で血流の伝達遅れ時間tdを算出することができる。
なお、本第1〜第3実施形態において、駆動指令発生部14からの駆動指令信号に基づき、温冷ユニット11a,11bを人体27に接触させる前に、温冷ユニット11a,11bを事前に人肌温度とおよそ等しくなる36℃程度まで温めておいても良い。これは、例えば、事前加熱モード用スイッチ101などを設けて、事前加熱モード用スイッチ101をオンすることにより駆動指令発生部14から事前加熱制御が行われるように信号を制御部3に出力するようにしてもよい。これにより、温冷ユニット11a,11bを人体27に接触させるときに人体27に与える刺激が少なくなる。また、遅延時間を決定するための血流量の閾値を算出する際には、温冷ユニット11a,11bの温度が皮膚温度と等価になっているときの血流量を基準として算出するので、事前に皮膚温度となっていると短時間で閾値を算出することができる。
(実施形態の第1変形例)
本第1〜第3実施形態の第1変形例として、複数の温冷ユニット11a,11bの遠位側と近位側とを明確に区別するため、マークをそれぞれの複数の温冷ユニット11a,11bに付けるようにしてもよい。例えば、複数の温冷ユニット11a,11bが互いに連結帯11Xで連結されているときに、図15Aのように遠位側温冷ユニット11aに「足」又は「手」などの特徴的なマーク(図15B参照)、若しくは、「遠」などの文字を、印刷などにより形成しておくことが望ましい。これにより、使用者が遠位側温冷ユニット11aと近位側温冷ユニット11bとの配置を逆に配置することがなくなり、意図したタイミングで温冷を実施することができる。なお、近位側温冷ユニット11bに「心臓」などのマーク又は「近」などの文字を印刷などにより形成しておいてもよい。
(実施形態の第2変形例)
また、本第1〜第3実施形態の第2変形例として、1つの温冷ユニットを、人体の周方向沿いに独立して配置された複数の熱電変換素子で構成し、1つの温冷ユニットの周方向の複数の熱電変換素子の中で、温冷のタイミングに遅延を与える構成としても良い。例えば、遠位側温冷ユニット11aにおいては、熱電変換素子11a1、11a2、…を周方向に配置し、近位側温冷ユニット11bにおいては、熱電変換素子11b1、11b2、…を周方向に配置する。遅延の与え方は、一般的な静脈位置を参考にして、静脈の抹消血管側を先に温め、遅延を持って静脈の大静脈側に高温部を移動するように温めるものとする。例えば、足首の場合には、足首の周方向のうちの外側を先に温め、その後、足首の周方向のうちの内側を温めるものとする。これにより、1つの温冷ユニットを画一的に温冷するよりも、より効率的に大静脈に血流を促進することができる。これも、例えば、大静脈血流促進用スイッチ(図示せず)などを設けて、大静脈血流促進用スイッチをオンすることにより駆動指令発生部14から複数の熱電変換素子の中で、温冷のタイミングに遅延を与えるように信号を制御部3に出力するようにしてもよい。
(実施形態の第3変形例)
本第1〜第3実施形態の第3変形例として、温冷ユニット11a、11bを配置する際に、大動脈側及び末梢側がわかるように、配置部位に応じた固定冶具を設けてもよい。例えば、図17に示すように足首27aの場合には踵に引っ掛けられる紐又は帯などの冶具11Yを付けることで、足首27aに対する複数の温冷ユニット11a,11bの配置を簡単に決定することができる。このようにすることで、複数の温冷ユニット11a,11bの位置を規定した状態で、容易に配置することができる。
なお、前記実施形態の変形例として、複数の温冷ユニット11a,11bを腕又は足に巻き付けるタイプ以外に、マッサージチェアや、電気毛布などの応用例が考えられる。
マッサージチェアにおいては、特に、マッサージチェアの脚用マッサージ部に、複数の温冷ユニット11a,11bを含む人体温冷刺激装置を内蔵することで、マッサージと同時に血流を促進させることができる。
電気毛布においては、電気毛布に帯状に、多数の温冷ユニット11a,11b,…を配置することで、電気毛布にくるまれた人の血流を促進させることができる。温冷ユニット11の配置は、電気毛布全体ではなく、胸側の半分を除く脚側の半分だけでも良い。電気毛布では、一般的に電源部が脚側にあるので、電気毛布において、脚側の特定は可能である。
なお、本発明を第1〜第3実施形態及び変形例に基づいて説明してきたが、本発明は、前記の第1〜第3実施形態及び変形例に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
前記各制御部の一部又は全部は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各部は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、前記実施形態又は変形例における制御部を構成する要素の一部又は全部を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、所定の間隔をあけて人体に配置された少なくとも2つ以上の温冷ユニットを制御する制御プログラムであって、コンピュータに、前記2つ以上の温冷ユニットを血流方向に沿って、時間遅れをもって順次に温駆動及び/又は冷駆動する制御部として機能させるための制御プログラムである。
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスク、磁気ディスク、又は、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。