JP6094608B2 - 射出成形装置及び射出成形方法 - Google Patents

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本発明は、射出成形装置及び射出成形方法に関し、特に、導電性材料を射出成形するための射出成形装置及び射出成形方法に関する。
従来、樹脂製の成形品は、射出成形装置によって成形される。一般に、射出成形装置は、ホッパに供給されたペレット状の熱可塑性樹脂をヒータによる加熱とスクリュの回転によるせん断熱により流動可能温度に溶融し、予め型締めされた金型のキャビティ内にスクリュを前進させて溶融樹脂を充填し、充填された溶融樹脂をスクリュの前進力により保圧し、キャビティ内で成形品を冷却した後、金型を開いて成形品を取り出すように構成されている。
このような射出成形装置において、金型のゲート部からキャビティの末端部に向かって充填される溶融樹脂は、キャビティ内を移動しながら、金型のキャビティ形成面に触れた表面部分から冷却されることで樹脂温度が低下し、その結果、特に移動する溶融樹脂の先端部での粘度が高くなって流動性が低下する。そのため、ノズルからキャビティ内に射出される溶融樹脂の射出圧力が不足すると、成形品にウェルドマーク、フローマーク、ひけ、転写不良等の外観不具合が発生するおそれがあった。
近年、バンパ等の大型の樹脂製自動車部品の更なる軽量化や、液晶テレビ等の液晶ディスプレイ用のフレームの大型化及び軽量化等のニーズに応えるため、大型かつ薄肉の成形品を射出成形する技術が求められている。このような大型かつ薄肉の成形品の場合、射出圧力が不足すると、上述の外観不具合に加えて、従来の射出成形装置では、キャビティの末端部まで溶融樹脂が充填されないショートショットが発生するおそれがあった。
これに対する改善策として、射出圧力を高めることが考えられるが、射出成形時に射出圧力の大きさに応じた型締圧力で金型を型締めしておく必要があるので、高い型締圧力を有する大型の射出成形装置と、これら射出圧力と型締圧力に耐えうる大型の金型とが必要となる。また、ゲート数を増やすことや成形品の肉厚を厚くすることも考えられるが、ウェルドマークの発生する可能性のある箇所が増えたり、材料コストが増加する等の新たな課題が生じる。
そこで、例えば特許文献1には、金型の加熱と冷却を繰り返す、所謂ヒートアンドクール成形について開示されている。これによれば、射出時に金型を加熱することで、キャビティ内に射出された溶融樹脂が間接的に加熱され、溶融樹脂の温度低下が抑制されるので、射出圧力を高めたり、ゲート数や成形品の肉厚を変更することなく、その溶融樹脂の流動性の低下を抑制することができる。
また、近年、樹脂製の成形品に対して静電塗装に必要な導電性を付与するために、母材となる絶縁性樹脂に導電性フィラを混合させたり、成形品の強度向上のために、樹脂原料に炭素繊維等を混合させたりした導電性材料を射出成形するための技術が求められている。
このような技術として、例えば特許文献2には、射出成形装置のノズルにおいて、金型のキャビティへ充填する直前にその流路を流れる導電性の溶融材料に通電し、該溶融材料をジュール熱により直接に発熱させる技術が開示されている。
特開2008−055894号公報 特開2003−340896号公報
しかしながら、特許文献1に開示された射出成形装置では、充填される溶融樹脂に比べて熱容量が大きな金型が加熱され、その温度が高くなっているので、その射出、保圧工程の後に金型の冷却によって成形品を冷却する時間が長くなり、その結果、射出工程から成形品の取出工程までの射出成形サイクルが長期化するおそれがある。
また、特許文献2に開示された技術では、ノズルからキャビティ内に射出された溶融樹脂は、上述のように、キャビティ内を移動しながら金型によって冷却されるので、溶融樹脂の流動性の低下によって生じ得る成形品の外観不具合等の課題を解決することができない。
これに対して、導電性材料を射出成形する場合に、成形型のキャビティ内に充填された溶融材料自体を通電加熱することが考えられる。これによれば、キャビティ内での溶融材料の流動性の低下を抑制することができるので、射出成形サイクルの長期化等を抑制しながら、成形品の外観不具合等の発生を抑制することができる。
しかしながら、導電性材料は、同じ成分であってもロット間、同じロットであってもショット間で電気抵抗値がばらつくことがある。この電気抵抗値のばらつきを考慮しないと、例えば、通電工程においては、導電性材料への通電加熱が安定して適切に行われず、ロット間またはショット間で成形品の品質が不安定になるおそれがある。具体的には、通電加熱が不十分であると、流動性の低下を十分に抑制されず、ショートショット等の成形不良が発生するおそれがある。一方で、通電加熱が過剰であると、キャビティ内で溶融材料自体から発生したガスによって成形品に焼け(シルバ)等の外観不具合が発生したり、その後の冷却工程で成形品が十分に冷却されずに取り出し時に変形するおそれがある。
また、射出工程、保圧工程または冷却工程等においても、成形品の外観不具合等の発生をより確実に抑制するには、導電性材料の電気抵抗値のばらつきに応じた条件の制御が必要である。
さらに、一般に、省資源、材料コストの削減のために、ランナや不良成形品等を粉砕した再生材をバージン材に混ぜたものを原料として成形が行われている。再生材を使用した場合、この再生材には不純物が含まれるので、バージン材のみで成形した場合に比べて、その電気抵抗値のばらつきが大きくなるので、成形品の品質が不安定になるおそれがある。
そこで、本発明は、導電性材料を射出成形する場合に、射出成形サイクルの長期化等を抑制しながら、成形品の外観不具合等の発生をより確実に抑制し、安定した品質の成形品を製造することができる射出成形装置及び射出成形方法を提供することを課題とする。
なお、本課題は、アルミ等の金属材料を成形型内で射出成形するダイカストマシン等の射出成形装置の場合にも共通する課題である。
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
導電性材料を流動可能温度に加熱溶融させ、成形型内に射出する加熱射出手段を備えた射出成形装置であって、
前記成形型は、キャビティ形成面の少なくとも一部に互いに絶縁された複数の導電部と、該導電部を前記成形型の外表面に対して電気的に絶縁する第1絶縁部材と、を有すると共に、
前記導電部間に所定の電圧を印加する通電手段と、
前記通電手段によって印加される電圧を制御する通電制御手段と、
前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の電気抵抗値に関するパラメータ値を測定する測定手段と、を有し、
前記通電制御手段は、射出された導電性材料が前記成形型の前記導電部に接触したときに通電加熱されるように、前記通電手段によって前記導電部間に電圧を印加し、
当該射出成形装置による射出工程、通電工程、保圧工程または冷却工程のうち少なくともいずれか一つの工程が前記測定手段によって測定された前記パラメータ値に基づいて条件が制御され
前記導電性材料は、導電性物質を含有する熱可塑性樹脂材料である
ことを特徴とする。
また、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形装置において、
前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
前記通電制御手段は、前記測定手段によって測定された導電性材料の体積抵抗率が高いときは前記通電手段によって前記導電部間に印加される電圧値を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記電圧値を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の温度が所定範囲内になるように制御する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の射出成形装置において、
前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
前記加熱射出手段は、保圧工程において成形型内に充填された導電性材料に所定の保圧力で保圧を行い、
前記加熱射出手段によって保圧される保圧力を制御する加熱射出制御手段を有すると共に、
保圧工程において前記加熱射出制御手段は、前記測定手段によって測定された前記体積抵抗率が高いときは前記加熱射出手段による保圧力を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記保圧力を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の比容積が所定範囲内になるように制御する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形装置において、
前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
冷却工程において成形型内に充填された導電性材料を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段による冷却を制御する冷却制御手段と、を有すると共に、
冷却工程において前記冷却制御手段は、前記測定手段によって測定された前記体積抵抗率が高いときは前記成形型内の導電性材料の温度が高く、前記体積抵抗率が低いときは前記成形型内の導電性材料の温度が低いものとして、前記成形型内の導電性材料の温度が所定範囲内となると前記冷却手段による冷却を完了するように制御する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形装置において、
前記成形型は、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する一対の型から構成され、
前記導電部は、各型の前記キャビティ形成面に設けられ、
少なくとも一方の前記型合わせ面には、前記導電部間を電気的に絶縁する第2絶縁部材を有する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形装置において、
前記加熱射出手段による導電性材料の加熱及び射出を制御する射出制御手段を有し、
前記通電制御手段は、前記射出制御手段から出力される制御信号が示す導電性材料の射出状態に基づいて前記通電手段を制御する
ことを特徴とする。
また、本願の請求項に記載の発明は、
導電性材料を成形型内で射出成形する射出成形方法であって、
加熱射出手段によって導電性材料を流動加熱温度に加熱溶融させる加熱溶融ステップと、
加熱溶融された導電性材料の電気抵抗値に関するパラメータ値を測定する測定ステップと、
加熱溶融させた前記導電性材料を前記成形型内に射出する射出ステップと、
射出された前記導電性材料が前記成形型のキャビティ形成面の少なくとも一部に互いに絶縁して設けられた複数の導電部に接触したときに通電加熱されるように、前記導電部間に電圧を印加する通電ステップと、
前記成形型のキャビティ内に充填された前記導電性材料を保圧する保圧ステップと、
前記成形型を冷却する冷却ステップと、を有し、
前記通電ステップ、前記保圧ステップまたは前記冷却ステップのうち少なくともいずれか一つのステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記パラメータ値に基づいて条件が制御され
前記導電性材料は、導電性物質を含有する熱可塑性樹脂材料である
ことを特徴とする。
また、本願の請求項に記載の発明は、請求項に記載の射出成形装置において、
前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
前記通電ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記導電部間に印加する電圧値が低く設定され、前記体積抵抗率が低いときは前記電圧値が高く設定されることで、前記成形型内に射出された導電性材料の温度が所定範囲内になるように制御される
ことを特徴とする。
また、本願の請求項に記載の発明は、請求項または請求項に記載の射出成形方法において、
前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
前記保圧ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記加熱射出手段による保圧力を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記保圧力を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の比容積が所定範囲内になるように制御される
ことを特徴とする。
また、本願の請求項10に記載の発明は、請求項から請求項のいずれか1項に記載の射出成形方法において、
前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
前記冷却ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記成形型内の導電性材料の温度が高く、前記体積抵抗率が低いときは前記成形型内の導電性材料の温度が低いものとして、前記成形型内の導電性材料の温度が所定範囲内となると導電性材料の冷却を完了するように制御される
ことを特徴とする。
また、本願の請求項11に記載の発明は、請求項から請求項10のいずれか1項に記載の射出成形方法において、
前記通電ステップを実行するタイミングは、前記射出ステップを制御する制御信号が示す導電性材料の射出状態に基づいて制御される
ことを特徴とする。
上記の構成により、本願の請求項1に記載の発明によれば、射出された導電性材料が成形型の導電部に接触したときに通電加熱されるように、通電制御手段によって通電手段が導電部間に印加する電圧を制御するので、この電圧制御によって、キャビティ内を移動する導電性材料の温度が低下しないように導電性材料の温度を制御することができる。よって、本発明によれば、導電性材料の温度低下による流動性の低下を防ぐことができ、比較的低い射出圧力であっても、導電性材料の先端部まで射出圧力を十分に伝えることができる。
その結果、射出圧力の不足に起因するショートショット等の外観不具合の発生を回避することができ、特に大型の薄肉成形品の場合には、射出成形装置及び成形型の小型化が可能である。また、成形型を加熱するのではなく、導電性材料自体を通電加熱するので、充填される導電性材料に比べて熱容量が大きな成形型の温度上昇を抑えることができる。よって、成形品の冷却時間が長くならず、射出成形サイクルの長期化を抑制することができ、成形時のランニングコストを低減することができる。さらに、流動性の向上のために成形品の肉厚を厚くする必要がないので、材料コストが増加することがない。
さらに、本発明によれば、射出工程、保圧工程、通電工程または冷却工程のうち少なくともいずれか一つの工程が測定手段によって測定された導電性材料の電気抵抗値に関するパラメータ値に基づいて条件が制御されるので、ロット間またはショット間で導電性材料の電気抵抗値がばらつく場合にも、射出成形サイクルの各工程においてその電気抵抗値に応じた制御を行うことができ、その結果、電気抵抗値のばらつきに起因する成形品の外観不具合等の発生をより抑制することができる。
したがって、本発明によれば、導電性材料を射出成形する場合に、射出成形サイクルの長期化等を抑制しながら、成形品の外観不具合等の発生をより確実に抑制し、安定した品質の成形品を製造することができる。
また、導電性材料が導電性物質を含有する熱可塑性樹脂材料の場合、例えば、静電塗装に必要な導電性を付与するために、母材となる絶縁性材料に導電性フィラを混入させたり、成形品の強度向上のために、熱可塑性樹脂原料に炭素繊維等を含有させた場合にも、前記効果を奏することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、通電工程において通電制御手段は、測定手段によって測定された導電性材料の体積抵抗率が高いときは通電手段によって導電部間に印加される電圧値を低く設定し、体積抵抗率が低いときは電圧値を高く設定することで、成形型内に射出された導電性材料の温度が所定範囲内になるように制御されるので、特に通電工程における成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した品質の成形品を製造することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、保圧工程において加熱射出制御手段は、測定された体積抵抗率が高いときは加熱射出手段による保圧力を低く設定し、体積抵抗率が低いときは保圧力を高く設定することで、成形型内に射出された導電性材料の比容積が所定範囲内になるように制御するので、保圧工程において保圧力の過不足に起因する成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した高品質の成形品を製造することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、冷却工程において冷却制御手段は、測定された体積抵抗率が高いときは成形型内の導電性材料の温度が高く、体積抵抗率が低いときは成形型内の導電性材料の温度が低いものとして、成形型内の導電性材料の温度が所定範囲内となると冷却手段による冷却を完了するように制御するので、冷却工程において冷却の過不足に起因する成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した高品質の成形品を製造することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、成形型は、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する一対の型から構成され、導電部は、各型のキャビティ形成面に設けられ、少なくとも一方の型合わせ面には、導電部間を電気的に絶縁する絶縁部材を有するので、導電部間に電圧を印加した際、導電部間を直接電流が流れることなく、導電部間にある導電性材料に確実に通電することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、通電制御手段は、射出制御手段から出力される制御信号が示す導電性材料の射出状態に基づいて通電手段を制御するので、導電性材料が射出されるタイミングに合わせて通電を開始し、効率的に導電性材料を通電加熱することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、請求項1に記載の射出成形装置の発明と同様の効果を奏することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、請求項2に記載の射出成形装置の発明と同様の効果を奏することができる。
また、請求項に記載の発明によれば、請求項3に記載の射出成形装置の発明と同様の効果を奏することができる。
また、請求項10に記載の発明によれば、請求項4に記載の射出成形装置の発明と同様の効果を奏することができる。
また、請求項11に記載の発明によれば、請求項に記載の射出成形装置の発明と同様の効果を奏することができる。
本発明の実施形態に係る射出成形装置の全体構成の概略図である。 導電性材料の通電加熱を説明する図1の一部拡大断面図である。 射出成形サイクルを示すフローチャートである。 図3の射出工程を示すフローチャートである。 図3の通電工程を示すフローチャートである。 図3の保圧工程を示すフローチャートである。 図3の冷却工程を示すフローチャートである。 射出成形装置の動作を示すタイムチャートである。 体積抵抗率と樹脂温度との関係を示すグラフである。 樹脂温度と通電電圧との関係等を示すグラフである。 導電性材料の体積抵抗率のロット間のばらつきを示すグラフである。 導電性材料の体積抵抗率のショット間のばらつきを示すグラフである。 導電性材料のPVT特性を示すPVT線図である。 射出圧力と体積抵抗率の関係等を示すグラフである。 型内冷却完了を説明するグラフである。
以下、本発明を適用した射出成形装置の実施形態について、図1〜図15を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の射出成形装置1は、加熱射出装置2と、該加熱射出装置2と対向して配設された型締装置3と、を有する。加熱射出装置2と型締装置3は図示しない基台フレーム上に配置されている。
加熱射出装置2は、射出シリンダ21を備え、該射出シリンダ21の上部には、成形品の原料となるペレット状の熱可塑性樹脂を射出シリンダ21内に供給するためのホッパ22が取り付けられており、射出シリンダ21の周りには、熱可塑性樹脂を流動可能温度に加熱溶融するためのバンドヒータ23が巻かれている。射出シリンダ21内には、スクリュ24が回転可能かつ進退可能に配設されている。
スクリュ24の後方(図1の左方)には、スクリュ24を前進、後退させる駆動源としての射出用シリンダ装置25が配設されている。射出用シリンダ装置25は、図示しない管路を介して供給された作動油によって、射出用シリンダ装置25内の射出用ピストン25aが前進または後退される。
射出用ピストン25aには、スクリュ24の後端が接続されており、射出用ピストン25aが射出用シリンダ装置25内を前進または後退することによって、スクリュ24が射出シリンダ21内を前進または後退される。なお、射出用ピストン25aには、図示しない位置検出器が接続されており、該位置検出器によってスクリュ24のスクリュ位置が検出される。
また、射出用シリンダ装置25の後方には、スクリュ24を回転させる駆動源としての計量モータ26が配設されている。加熱射出装置2を構成するこれら射出シリンダ21、スクリュ24、射出用シリンダ装置25及び計量モータ26は、同一軸上に配設されている。
型締装置3には、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する可動金型41及び固定金型42からなる金型装置4が取り付けられる。型締装置3は、可動金型41が取り付けられる可動側取付板31と、固定金型42が取り付けられる固定側取付板32と、可動側取付板31を前進、後退させる駆動源としての型締用シリンダ装置33と、を有する。なお、固定側取付板32と型締用シリンダ装置33とは、図示しないタイバによって連結されており、可動側取付板31はタイバに沿って前進または後退可能に設けられている。
型締用シリンダ装置33内には、直線的に移動可能な型締用ピストン33aが配設されている。型締用ピストン33aは、管路を介して型締用シリンダ装置33内に供給される作動油によって、型締用シリンダ装置33内を前進または後退させられる。型締用ピストン33aの前端(図1の左端)には、可動側取付板31が接続されており、型締用ピストン33aが型締用シリンダ装置33内を前進または後退することによって、可動側取付板31と共に可動金型41が前進または後退させられる。これによって、型締用ピストン33aを前進(図1の左方)させると、可動側取付板31と共に可動金型41が前進させられ、型閉及び型締が行われる。また、型締用ピストン33aを後退(図1の右方に移動)させると、可動側取付板31と共に可動金型41が後退させられ、型開が行われる。
なお、可動側取付板31の背面(図1の右面)には、図示しないエジェクタ装置が配設されている。金型装置4が型開きした際、このエジェクタ装置を駆動することで、成形品をキャビティC内から押し出して取り出すことができるように構成されている。また、図1は、直動方式の型締装置3を示しているが、該型締装置3は、型締用シリンダ装置33と可動側取付板31の間にトグル機構を設けたトグル方式であってもよい。
金型装置4は、可動金型41と固定金型42間を閉じることにより、その内部にキャビティCが形成されるようになっている。可動金型41及び固定金型42の内部には、冷却水等の冷却液を流すための流路Fがそれぞれ形成されている。
さらに、本実施形態の射出成形装置1は、金型装置4を冷却するための冷却装置5を有する。冷却装置5は、冷却ポンプ51を有し、該冷却ポンプ51は、冷却液の供給配管52と排出配管53を介して可動金型41及び固金金型42にそれぞれ接続されている。各供給配管52及び排出配管53には、冷却液の流れを遮断するための遮断弁54が設けられている。この冷却装置5によれば、全ての遮断弁54を開いた状態で冷却ポンプ51を駆動することで、可動金型41及び固定金型42の各流路Fに冷却水が環流され、可動金型41及び固定金型42が冷却される。なお、可動金型41と固定金型42を個別に冷却するために個別の冷却ポンプ51を設けてもよい。
ここまで、射出成形装置1における従来公知の構成について説明したが、次に、本発明に特徴的な射出成形装置1の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の可動金型41及び固定金型42は、入れ子式の構造をしている。すなわち、可動金型41は、型外形部43と、該型外形部43の内部に絶縁部材45を介して設けられた導電部47とを有する。同様に、固定金型42は、型外形部44と、該型外形部44の内部に絶縁部材46を介して設けられた導電部48とを有する。導電部47、48は、可動金型41及び固定金型42の各キャビティ形成面Csに設けられている。
絶縁部材46は、例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、石英、酸化チタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリアミドイミド等から選ばれる少なくとも1種である。絶縁部材46は、型外形部42、43と導電部47、48間に、例えば、塗布、溶射、スプレー、転写、嵌め込み、インモールド成形、貼り合せ等の方法によって設けることができる。なお、絶縁部材46は、金属部材の表面に例示した樹脂やセラミックスからなる絶縁層を設けたものであってもよい。また、絶縁部材46は、所望の耐圧性能(通電装置61による最大印加電圧)、使用温度(金型装置4の最高温度)等に基づいて選定することができる。
導電部47、48は、導電性が良い点で金属材料であることが好ましく、金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン、ステンレスまたはこれらの合金等が挙げられる。また、導電部は、一金属からなる単層構造体であってもよく、複数の異種金属を重ねて構成された多層構造体であってもよい。
可動金型41の型合わせ面には、導電部47、48間を電気的に絶縁する絶縁部材49が設けられている。本実施形態の場合、絶縁部材49は、可動金型41の型合わせ面のうち、導電部47によって構成された部分を覆うように層状に設けられている。なお、絶縁部材49は、可動金型41の型合わせ面及び固定金型42の型合わせ面42aの少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
また、射出成形装置1は、金型装置4の導電部47、48間に電圧を印加するための通電装置61を備えている。本実施形態の場合、通電装置61は、定電圧を印加可能な直流電源である。なお、通電装置61は、交流電源であってもよい。
加熱射出装置2には、射出シリンダ21内でバンドヒータ23によって溶融された導電性材料Pの体積抵抗率を検知するための抵抗センサ62が設けられている。抵抗センサ62から出力されるセンサ信号は、後述する通電制御部140に入力されるように構成されている。
金型装置4の導電部47、48には、導電部47、48間の電気抵抗値を検知するための型内抵抗値センサ63が接続されている。本実施形態では、型内抵抗値センサ63として、キャビティC内に導電性材料Pが充填される前の状態で、金型装置4の導電部48から導電部47に絶縁層29を介して流れる漏洩電流を検出できる電流センサが設けられている。
制御ユニット100は、加熱射出装置2のバンドヒータ23、射出用シリンダ装置25及び計量モータ26を制御する加熱射出制御部110と、型締装置3の型締用シリンダ装置33を制御する型締制御部120と、冷却装置5の冷却ポンプ51及び各遮断弁54を制御する冷却制御部130と、通電装置61の通電装置61を制御する通電制御部140と、を有する。本実施形態では、通電制御部140は、通電装置61が出力する所定の電圧をオン/オフ制御するものであるが、通電装置61が出力する電圧値を制御可能なものであってもよい。
ここで、射出成形の原料となる導電性材料Pは、絶縁性の熱可塑性樹脂の母材に導電性充填剤を所望の特性に応じて混合したものである。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスルフェンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS、ASA及びポリカーボネイト等から選ばれる少なくとも1種である。導電性充填剤は、例えば、金属繊維、金属粉末、金属フレーク等の金属系導電剤や、例えば、炭素繊維、炭素複合繊維、カーボンブラック、黒鉛等の炭素系導電剤等から選ばれる少なくとも1種である。なお、導電性材料Pは、金属材料自体であってもよい。金属材料は、例えば、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の非鉄金属とその合金から選ばれる少なくとも1種である。
次に、導電性材料Pの通電加熱の原理について、図2(a)を参照しながら説明する。なお、図2等において、符号PLは、金型装置4における可動金型41と固定金型42の型合わせ面同士が対接したパーティングラインを示している。
図2(a)に示すように、射出シリンダ21の先端のノズルから金型装置4のスプールSを介してキャビティC内に射出充填された導電性材料Pは、キャビティC内をその末端部に向かって(図2(a)で上方に)移動しながら、金型のキャビティ形成面Csに触れた表面部分から冷却される。しかし、導電部48が導電部47よりも高電位となるように導電部47、48間に電圧が印加されると、この導電性材料Pには、キャビティCの厚み方向において導電部48側から導電部47側(図2(a)の右方、波形の矢印を参照)に向かって電流が流れる。この通電によって導電性材料Pは、自らの有する電気抵抗によってジュール熱を発生し、すなわち通電加熱される。そのため、導電性材料Pは、その樹脂温度を保ちながら、移動する導電性材料Pの先端部での高粘度化による流動性の低下が抑制された状態で、キャビティCの末端部まで充填される。
このとき、導電部47、48は、型合わせ面では絶縁部材49によって互いに絶縁されているので、導電部48から導電部47に直接電流が流れることはない。
次に、制御ユニット100によって制御される射出成形装置1の制御動作の流れについて、図3〜図7のフローチャートと、その間のスクリュ位置、射出圧力、通電ON/OFF、冷却ポンプ51のON/OFFの変化を示す図8のタイムチャートと、図9〜図15のグラフと、を参照しながら説明する。
まず、時刻t0において、型締制御部120から出力された型締信号に基づいて型締用シリンダ装置33を駆動させて可動金型41を固定金型42に向かって移動させ、金型装置4を型閉し、さらに所定の型締圧力で型締する(ステップS1)。このときの型締圧力は、射出時に金型装置4が開かない程度の高い圧力に設定されている。また、型締信号に基づいて冷却制御部130は、冷却ポンプ51の駆動を停止する(ONからOFFに切り替える)。
次に、ショット毎に抵抗センサ62によって射出シリンダ21内で加熱溶融された導電性材料Pの体積抵抗値を測定する(ステップS2)。
次に、加熱射出制御部110から加熱射出装置2に対して出力される充填開始信号がONか否かを判定する(ステップS3)。
ステップS2においてYES(充填開始信号がON)と判定した時刻t1において、加熱射出制御部110は、図4に示すサブルーチンに従って、加熱射出装置2によって射出を行う(ステップS4)。
次に、通電制御部140は、図4に示すサブルーチンに従って、通電装置61に通電を開始(ON)させる(ステップS4)。
次に、時刻t2において、加熱射出制御部110は、図5に示すサブルーチンに従って、加熱射出装置2に保圧を開始(ON)させる(ステップS5)。
次に、時刻t3において、冷却制御部130は、図6に示すサブルーチンに従って、冷却ポンプ51によって成形品を冷却すると共に、射出シリンダ21内の原料を可塑化する(ステップS6)。
次に、時刻t4において、型締制御部120によって型締装置3を制御し、型締用シリンダ装置33の型締用ピストン33aを後退させて金型装置4の型開きを行う(ステップS7)。
次に、エジェクタ装置によって金型装置4のキャビティC内から成形品を突き出して取り出す(ステップS8)。
最後に、予め計画された成形が終了したか否かを判定し、終了したと判定すれば、当該射出成形サイクルを終了し(ステップS9)、終了していないと判定すれば、ステップS1に戻る。
ここで、ステップS4のサブルーチンである射出工程について、図4を参照しながら説明する。
まず、測定された体積抵抗率に基づいて、加熱射出制御部110は、射出用シリンダ装置25による溶融した導電性材料Pの射出速度(または射出圧力)を設定する。
次に、設定した射出速度によって加熱射出装置2の射出用シリンダ装置25によってスクリュ24を前進(図の右方へ移動)させ、射出シリンダ21の先端のノズルから金型装置4のスプールSを介してキャビティC内へ溶融した導電性材料Pの充填を開始する。
以上により、当該サブルーチンによれば、導電性材料Pの体積抵抗率に基づいて射出工程を制御することができる。
ここで、ステップS5のサブルーチンである通電工程について、図5を参照しながら説明する。
まず、測定された体積抵抗率に基づいて、通電制御部140は、キャビティC内を移動する導電性材料Pの温度が低下して流動性を低下させないために、通電装置61によって導電部47、48間に印加すべき電圧を設定する(ステップS12)。
ここで、図9に示すように、本実施形態の導電性材料Pは、体積抵抗率と温度がほぼ比例の関係にあり、樹脂温度が高くなるにつれて体積抵抗率が高くなる傾向にある。
図10(a)に示すように、当該ショットで測定された体積抵抗率が低い場合には、導電部47、48間の通電電圧を上げることで、導電性材料Pに流れる電流が増えるので、導電性材料Pにおいて発生するジュール熱が増えてキャビティC内を移動する導電性材料Pの温度の低下を抑制することができる。
この傾向に従って、通電制御部140は、射出工程においてキャビティC内を移動する導電性材料Pの温度が、ショット間またはロット間で一定に保たれるように、射出シリンダ21において加熱溶融された導電性材料Pの体積抵抗率に基づいて導電部47、48間に印加される通電電圧を設定する。
具体的には、図11(a)に示すように、導電性材料Pの体積抵抗率がショット数に依らずに通常値で安定しているロットの場合に通電装置61によって導電部47、48間に印加する電圧をE0に設定するものとする。
このとき、図11(b)に示すように、導電性材料Pの体積抵抗率が通常値よりも高い値でショット数に依らずに安定しているロットの場合、キャビティ内で通電加熱された導電性材料Pの温度が図11(a)に示したロットの場合と同等になるように、電圧E0よりも高い電圧E1を導電部47、48間に印加する電圧として設定する。
また、図11(c)に示すように、導電性材料Pの体積抵抗率が通常値よりも低い値でショット数に依らずに安定しているロットの場合、キャビティ内で通電加熱された導電性材料Pの温度が図11(a)に示したロットの場合と同等になるように、電圧E0よりも低い電圧E2を導電部47、48間に印加する電圧として設定する。
さらに、図12に示すように、導電性材料Pの体積抵抗率がショット毎に通常値に対してばらつくロットの場合、キャビティ内で通電加熱された導電性材料Pの温度が図11(a)に示したロットの場合と同等になるように、ショット毎に体積抵抗率に応じた電圧を導電部47、48間に印加する電圧として設定する。
最後に、通電装置61によって導電部47、48間に設定した通電電圧を印加(ON)し(ステップS22)、図3のメインルーチンに戻る。これによれば、図10(b)に示すように、射出工程においてキャビティC内を移動する導電性材料Pの温度をショット間またはロット間でほぼ一定に保つことができる。
以上により、当該サブルーチンによれば、導電性材料Pの体積抵抗率に基づいて通電工程を制御することができる。
また、ステップS6のサブルーチンである保圧工程について、図6を参照しながら説明する。
まず、加熱射出制御部110から加熱充填装置2に対して出力される保圧信号がONか否かを判定する(ステップS31)。
ステップS31においてYES(保圧信号がON)と判定されると、加熱射出制御部110は、加熱射出装置2による導電性材料Pのキャビティ内への充填を終了(OFF)する(ステップS32)。
次に、通電装置61の通電を終了(OFF)する(ステップS33)。
ここで、本実施形態の導電性材料Pは、圧力・比容積・温度の相互関係として、図13に示すようなPVT特性を有している。これによれば、比容積は、圧力と温度の双方に依存し、具体的には、圧力一定の元では温度が下がると比容積が低くなり、温度一定の元では圧力が下がると比容積が高くなる傾向にある。射出成形サイクルにおいては、射出工程では導電性材料Pの温度がほぼ一定で圧力が上がり、保圧工程では導電性材料Pの温度が下がり、比容積がほぼ一定に制御され、冷却工程では圧力がほぼ一定で温度が低下する。
図14(a)に示すように、体積抵抗率が低い場合には、保圧力を高くすることで、キャビティ内に充填された導電性材料Pの比容積の低下を抑制することができる。
この傾向に従って、加熱射出制御部110は、ショット間またはロット間でキャビティC内の導電性材料Pの比容積を所定範囲内で一定にさせるように、ショット毎に体積抵抗率に基づいて保圧力を設定する(ステップS34)。
最後に、加熱射出制御部110は、加熱射出装置2によって設定された保圧力で保圧を開始(ON)し(ステップS35)、図3のメインルーチンに戻る。
以上により、当該サブルーチンによれば、導電性材料Pの体積抵抗率に基づいて保圧工程を制御することができる。
また、ステップS7のサブルーチンである冷却・可塑化工程について、図7を参照しながら説明する。
まず、冷却制御部130から冷却ポンプ51に対して出力される冷却信号がONか否かを判定する(ステップS41)。
次に、ステップS41においてYES(冷却信号がON)と判定されると、加熱射出装置2による保圧を終了(OFF)する(ステップS42)。
次に、加熱射出装置2では、次のショットのために、バンドヒータ23によって導電性材料Pを流動可能温度に加熱溶融すると共に、計量モータ26によってスクリュ24を回転させ、所定の位置まで後退させる。このとき、ホッパ22から供給された原料は、射出シリンダ21内において加熱溶融させられ、スクリュ24の後退に伴ってスクリュ24の前方に貯留される(ステップS43)。
次に、冷却制御部130は、測定された体積抵抗率に基づいて冷却後の導電性材料Pが所望の温度となるように、冷却ポンプ51による型内を冷却する型内冷却時間を設定する(ステップS44)。
次に、冷却制御部130は、冷却ポンプ51による型内の冷却を開始する(ステップS45)。
次に、冷却ポンプ51による型内の冷却を開始してから、設定した型内冷却時間が経過したか否かを判定する(ステップS46)。
最後に、ステップS46で型内冷却時間が経過したと判定すると、型内の冷却を終了し(ステップS47)、図3のメインルーチンに戻る。
以上により、当該サブルーチンによれば、導電性材料Pの体積抵抗率に基づいて冷却工程を制御することができる。
以上のように、本実施形態によれば、射出された導電性材料Pが金型装置4の導電部47、48に接触したときに通電加熱されるように、通電制御部140によって通電装置61が導電部47、48間に印加する電圧を制御するので、この電圧制御によって、キャビティC内を移動する導電性材料Pの温度が低下しないように制御することができる。よって、本発明によれば、導電性材料Pの温度低下による流動性の低下を防ぐことができ、この導電性材料Pの先端部まで射出圧力を十分に伝えることができる。
その結果、比較的低い射出圧力で溶融した導電性材料PをキャビティC内に充填することができるので、射出圧力の不足に起因するショートショット等の外観不具合の発生を回避することができ、特に大型の薄肉成形品の場合には、射出成形装置1及び金型装置4の小型化が可能である。また、導電性材料P自体を通電加熱するので、金型装置4の冷却時間が長くならず、よって、射出成形サイクルを短縮することができ、成形時のランニングコストを低減することができる。さらに、流動性の向上のために成形品の肉厚を厚くする必要がないので、材料コストが増加することがない。
さらに、本実施形態によれば、射出成形サイクルの射出工程、保圧工程、通電工程または冷却工程のうち少なくともいずれか一つの工程が抵抗センサ62によって測定された導電性材料Pの体積抵抗値に基づいて条件が制御されるので、ロット間またはショット間で導電性材料Pの電気抵抗値がばらつく場合にも、射出成形サイクルの各工程においてその電気抵抗値に応じた制御を行うことができ、その結果、電気抵抗値のばらつきに起因する成形品の外観不具合等の発生をより抑制することができる。
したがって、本実施形態によれば、導電性材料Pを射出成形する場合に、射出成形サイクルの長期化等を抑制しながら、成形品の外観不具合等の発生をより確実に抑制し、安定した品質の成形品を製造することができる。
また、本実施形態によれば、抵抗センサ62によって射出シリンダ21内で溶融された導電性材料Pの体積抵抗率を測定し、通電工程において通電制御部140は、測定された導電性材料Pの体積抵抗率が高いときは通電装置61によって導電部47、48間に印加される電圧値を低く設定し、体積抵抗率が低いときは電圧値を高く設定することで、成形型4内に射出された導電性材料Pの温度が所定範囲内になるように制御するので、通電工程において通電される電圧値の過不足に起因する成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した高品質の成形品を製造することができる。
また、本実施形態によれば、抵抗センサ62によって射出シリンダ21内で溶融された導電性材料Pの体積抵抗率を測定し、保圧工程において加熱射出制御部110は、測定された体積抵抗率が高いときは加熱射出装置2による保圧力を低く設定し、体積抵抗率が低いときは保圧力を高く設定することで、成形型4内に射出された導電性材料Pの比容積が所定範囲内になるように制御するので、保圧工程において保圧力の過不足に起因する成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した高品質の成形品を製造することができる。
また、本実施形態によれば、抵抗センサ62によって射出シリンダ21内で溶融された導電性材料Pの体積抵抗率を測定し、冷却工程において冷却制御部130は、測定された体積抵抗率が高いときは成形型内の導電性材料Pの温度が高く、体積抵抗率が低いときは成形型4内の導電性材料の温度が低いものとして、成形型4内の導電性材料Pの温度が所定範囲内となると冷却ポンプ51による冷却を完了するように制御するので、冷却工程において冷却の過不足に起因する成形品の外観不具合等の発生を抑制し、より安定した高品質の成形品を製造することができる。
また、本実施形態によれば、導電性材料Pが導電性物質を含有する樹脂材料の場合、例えば、静電塗装に必要な導電性を付与するために、母材となる絶縁性材料に導電性フィラを混合させたり、成形品の強度向上のために、樹脂原料に炭素繊維等を混合させたりした場合にも適用でき、上述の効果を奏することができる。
また、本実施形態によれば、金型装置4は、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する可動金型41及び固定金型42から構成され、導電部47、48は、各金型41、42のキャビティ形成面Csに設けられ、少なくとも一方の型合わせ面には、導電部47、48間を電気的に絶縁する絶縁部材49を有するので、導電部47、48間に電圧を印加した際、導電部47、48間を直接電流が流れることなく、導電部47、48間にある導電性材料Pに確実に通電することができる。
また、本実施形態によれば、通電制御部140は、加熱射出制御部110から出力される制御信号が示す導電性材料Pの射出状態に基づいて通電装置61を制御するので、導電性材料Pが射出されるタイミングに合わせて通電を開始し、効率的に導電性材料Pを通電加熱することができる。
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、導電性材料として樹脂材料を射出成形するものであるが、これに限るものではなく、少なくとも加熱時に導電性のある溶融材料であればよく、例えば、アルミ等の金属材料を射出成形するダイカストマシンであってもよい。
また、本実施形態では、導電部47、48間に電圧が印加する際、導電部48が導電部47よりも高電位となるようにしたが、これに限るものではなく、導電部48が導電部47よりも低電位となるようにしてもよい。
また、本実施形態では、加熱射出装置2及び型締装置3は、駆動源として油圧アクチュエータを用いたが、これに限るものではなく、電動アクチュエータを用いてもよい。
また、本実施形態では、冷却ポンプ51によって冷却液を環流させることで金型装置4を冷却するものであるが、これに限るものではなく、特に冷却手段を設けずに金型装置4を自然放熱させる、もしくは、例えばペルチェ素子等の冷却手段を用いて金型装置4を積極的に冷却するものであってもよい。
さらに、本実施形態では、射出成形サイクルにおける射出工程、通電工程、保圧工程及び冷却工程において体積抵抗値に基づいて条件を制御したが、これに限るものではなく、これら工程のうち少なくともいずれか一つの工程の条件が制御されてもよい。また、複数の工程について条件を制御する場合には、工程間で互いに補完するように制御してもよい。
以上のように、本発明によれば、導電性材料を射出成形する場合に、射出成形サイクルの長期化等を抑制しながら、成形品の外観不具合等の発生をより確実に抑制し、安定した品質の成形品を製造することができるので、射出成形装置、または該射出成形装置を各種部品の製造に用いる自動車や液晶ディスプレイ等の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
1 射出成形装置
2 加熱射出装置(加熱射出手段)
4 金型装置(成形型)
45、46 第1絶縁部材
47、48 導電部
51 冷却ポンプ(冷却手段)
61 通電装置(通電手段)
62 抵抗センサ(測定手段)
110 加熱射出制御部(射出制御手段)
140 通電制御部(通電制御手段)
C キャビティ
Cs キャビティ形成面
P 導電性材料

Claims (11)

  1. 導電性材料を流動可能温度に加熱溶融させ、成形型内に射出する加熱射出手段を備えた射出成形装置であって、
    前記成形型は、キャビティ形成面の少なくとも一部に互いに絶縁された複数の導電部と、該導電部を前記成形型の外表面に対して電気的に絶縁する第1絶縁部材と、を有すると共に、
    前記導電部間に所定の電圧を印加する通電手段と、
    前記通電手段によって印加される電圧を制御する通電制御手段と、
    前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の電気抵抗値に関するパラメータ値を測定する測定手段と、を有し、
    前記通電制御手段は、射出された導電性材料が前記成形型の前記導電部に接触したときに通電加熱されるように、前記通電手段によって前記導電部間に電圧を印加し、
    当該射出成形装置による射出工程、通電工程、保圧工程または冷却工程のうち少なくともいずれか一つの工程が前記測定手段によって測定された前記パラメータ値に基づいて条件が制御され
    前記導電性材料は、導電性物質を含有する熱可塑性樹脂材料である
    ことを特徴とする射出成形装置。
  2. 前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    前記通電制御手段は、前記測定手段によって測定された導電性材料の体積抵抗率が高いときは前記通電手段によって前記導電部間に印加される電圧値を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記電圧値を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の温度が所定範囲内になるように制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
  3. 前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    前記加熱射出手段は、保圧工程において成形型内に充填された導電性材料に所定の保圧力で保圧を行い、
    前記加熱射出手段によって保圧される保圧力を制御する加熱射出制御手段を有すると共に、
    保圧工程において前記加熱射出制御手段は、前記測定手段によって測定された前記体積抵抗率が高いときは前記加熱射出手段による保圧力を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記保圧力を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の比容積が所定範囲内になるように制御する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形装置。
  4. 前記測定手段は、前記加熱射出手段において加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    冷却工程において成形型内に充填された導電性材料を冷却する冷却手段と、
    前記冷却手段による冷却を制御する冷却制御手段と、を有すると共に、
    冷却工程において前記冷却制御手段は、前記測定手段によって測定された前記体積抵抗率が高いときは前記成形型内の導電性材料の温度が高く、前記体積抵抗率が低いときは前記成形型内の導電性材料の温度が低いものとして、前記成形型内の導電性材料の温度が所定範囲内となると前記冷却手段による冷却を完了するように制御する
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形装置。
  5. 前記成形型は、型閉め時に互いに対接する型合わせ面を有する一対の型から構成され、
    前記導電部は、各型の前記キャビティ形成面に設けられ、
    少なくとも一方の前記型合わせ面には、前記導電部間を電気的に絶縁する第2絶縁部材を有する
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形装置。
  6. 前記加熱射出手段による導電性材料の加熱及び射出を制御する射出制御手段を有し、
    前記通電制御手段は、前記射出制御手段から出力される制御信号が示す導電性材料の射出状態に基づいて前記通電手段を制御する
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の射出成形装置。
  7. 導電性材料を成形型内で射出成形する射出成形方法であって、
    加熱射出手段によって導電性材料を流動加熱温度に加熱溶融させる加熱溶融ステップと、
    加熱溶融された導電性材料の電気抵抗値に関するパラメータ値を測定する測定ステップと、
    加熱溶融させた前記導電性材料を前記成形型内に射出する射出ステップと、
    射出された前記導電性材料が前記成形型のキャビティ形成面の少なくとも一部に互いに絶縁して設けられた複数の導電部に接触したときに通電加熱されるように、前記導電部間に電圧を印加する通電ステップと、
    前記成形型のキャビティ内に充填された前記導電性材料を保圧する保圧ステップと、
    前記成形型を冷却する冷却ステップと、を有し、
    前記通電ステップ、前記保圧ステップまたは前記冷却ステップのうち少なくともいずれか一つのステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記パラメータ値に基づいて条件が制御され
    前記導電性材料は、導電性物質を含有する熱可塑性樹脂材料である
    ことを特徴とする射出成形方法。
  8. 前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    前記通電ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記導電部間に印加する電圧値が低く設定され、前記体積抵抗率が低いときは前記電圧値が高く設定されることで、前記成形型内に射出された導電性材料の温度が所定範囲内になるように制御される
    ことを特徴とする請求項に記載の射出成形方法。
  9. 前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    前記保圧ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記加熱射出手段による保圧力を低く設定し、前記体積抵抗率が低いときは前記保圧力を高く設定することで、前記成形型内に射出された導電性材料の比容積が所定範囲内になるように制御される
    ことを特徴とする請求項または請求項に記載の射出成形方法。
  10. 前記測定ステップは、加熱溶融された導電性材料の体積抵抗率を測定し、
    前記冷却ステップは、前記測定ステップにおいて測定された前記体積抵抗率が高いときは前記成形型内の導電性材料の温度が高く、前記体積抵抗率が低いときは前記成形型内の導電性材料の温度が低いものとして、前記成形型内の導電性材料の温度が所定範囲内となると導電性材料の冷却を完了するように制御される
    ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の射出成形方法。
  11. 前記通電ステップを実行するタイミングは、前記射出ステップを制御する制御信号が示す導電性材料の射出状態に基づいて制御される
    ことを特徴とする請求項から請求項10のいずれか1項に記載の射出成形方法。
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